(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112473
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173125
(22)【出願日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008811
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジ ス
(72)【発明者】
【氏名】ベイク、スン イン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、エウン ハ
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082FF05
5E082FG26
(57)【要約】
【課題】セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含むセラミック電子部品であって、上記誘電体層は、複数の結晶粒と、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界と、を含み、上記結晶粒のSiの含量をG1、上記結晶粒界のSiの含量をGB1としたときに、GB1/G1は質量比で5以上である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含むセラミック電子部品であって、
前記誘電体層は、複数の結晶粒と、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界と、を含み、
前記結晶粒のSiの含量をG1、前記結晶粒界のSiの含量をGB1としたときに、GB1/G1は質量比で5以上である、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層は、BaTiO3を主成分として含み、副成分としてDy、Mn、Siを含む、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記結晶粒界の平均厚さが1.1nm以上である、請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記結晶粒界の平均厚さが3.0nm未満である、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記GB1/G1は質量比で5以上6.5未満である、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記G1は0.4wt%以下であり、前記GB1は1.6wt%以上である、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記結晶粒界のDyの含量をGB2としたときに、GB2/GB1は質量比で2.3以下である、請求項2から6の何れか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記GB2/GB1は質量比で1.5以上2.3以下である、請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記結晶粒界のMnの含量をGB3としたときに、GB3/GB1は質量比で0.5以下である、請求項2から6の何れか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記GB3/GB1は質量比で0.2以上0.5以下である、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記結晶粒界のDyの含量をGB2としたときに、GB2/GB1は質量比で2.3以下である、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品の1つである積層セラミックキャパシター(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピューター、スマートフォン、及び携帯電話などの種々の電子製品のプリント回路基板に取り付けられ、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサーである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシターは、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易であるという利点を有するため、種々の電子装置の部品として用いられることができる。コンピューター、モバイル機器などの各種電子機器の小型化、高出力化に伴い、積層セラミックキャパシターに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシターの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させる必要がある。現在、誘電体層の厚さは、約0.6μmレベルまで達している状態であり、薄層化が進みつつある。しかし、誘電体層の厚さが薄くなるほど、信頼性が低下し、絶縁抵抗、破壊電圧などの特性が低下するという問題がある。
【0005】
特に、多量のデータを処理するためのAP(application processor)の高性能化により、積層セラミックキャパシターの温度安定性に対する要求が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の様々な目的の1つは、信頼性に優れたセラミック電子部品を提供することにある。
【0007】
本発明の様々な目的の1つは、高温信頼性に優れたセラミック電子部品を提供することにある。
【0008】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含むセラミック電子部品であって、上記誘電体層は、複数の結晶粒と、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界と、を含み、上記結晶粒のSiの含量をG1、上記結晶粒界のSiの含量をGB1としたときに、GB1/G1は質量比で5以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の様々な効果の一効果として、誘電体組成物及びそれを含むセラミック電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0011】
但し、本発明の多様で且つ有益な利点と効果は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図4】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図6】試験番号3の誘電体層を透過型電子顕微鏡(TEM)によりスキャンした画像、Dy、Si、及びMnに対してマッピング(mapping)した画像である。
【
図7】
図6の矢印に沿ってライン分析を行った結果である。
【
図8】試験番号1の誘電体層を透過型電子顕微鏡(TEM)によりスキャンした画像、Dy、Si、及びMnに対してマッピング(mapping)した画像である。
【
図9】
図8の矢印に沿ってライン分析を行った結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0014】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のために任意で示したものであり、本発明が必ずしも図示されたものに限定されない。また、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0015】
図面において、第1方向は、積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は、長さ(L)方向、第3方向は、幅(W)方向と定義されることができる。
【0016】
セラミック電子部品
図1は、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図3は
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、
図5は
図2のP領域を拡大した図である。
【0017】
以下、
図1から
図6を参照して、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100について詳細に説明する。また、セラミック電子部品の一例として積層セラミックキャパシターについて説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、セラミック材料を用いる様々なセラミック電子部品、例えば、インダクター、圧電体素子、バリスター、またはサーミスターなどにも適用可能である。
【0018】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含むセラミック電子部品であって、上記誘電体層111は、複数の結晶粒111aと、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界111bと、を含み、上記結晶粒のSiの含量をG1、上記結晶粒界のSiの含量をGB1としたときに、GB1/G1は質量比で5以上である。
【0019】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。
【0020】
本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図示されたように、本体110は、六面体形状またはそれに類似の形状からなることができる。また、本体110は、焼成過程で本体110に含まれるセラミック粉末の収縮により、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0021】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2と、上記第1及び第2面1、2と連結されて第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結されて第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
【0022】
本体110を成す複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認が困難な程度に一体化されることができる。
【0023】
誘電体層111は、複数の結晶粒111aと、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界111bと、を含み、上記結晶粒のSiの含量をG1、上記結晶粒界のSiの含量をGB1としたときに、GB1/G1は質量比で5以上である。
【0024】
セラミック電子部品の1つである積層型キャパシター(MLCC:multi-layer ceramic capacitor)は高容量化及び薄層化する傾向にある。誘電体層の薄層化を実現するためには、基本的に、誘電体結晶粒を小さくし、誘電体結晶粒の粒界抵抗を高めることで、基本的な電荷移動を抑制する技術が必要である。
【0025】
本発明の一実施形態によると、高い仕事関数(work function)を有するSi元素の結晶粒111a及び結晶粒界111bでの分布を制御することで、信頼性を向上させることができる。具体的に、結晶粒に含まれたSiの含量に対する結晶粒界に含まれたSiの含量の割合(GB1/G1)を質量比で5以上に制御することにより、結晶粒界のエネルギー準位を高めて信頼性を向上させることができる。
【0026】
この際、GB1/G1の上限は特に限定する必要はなく、例えば、GB1/G1は6.5未満であることができる。
【0027】
一方、GB1/G1を制御する方法は特に限定されず、例えば、焼結時における還元雰囲気を調節することで、結晶粒界の元素分布及び結晶粒界の厚さなどを制御することができる。
【0028】
誘電体層111は、BaTiO3を主成分として含み、副成分としてDy、Mn、Siを含むことができる。
【0029】
ジスプロシウム(Dy)は、主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO3)に添加した時に、Ba-サイトを置換してドナー(donor)の役割を果たすことで、酸素空孔の濃度を減らし、信頼性を改善する役割を果たすことができる。
【0030】
Mnは可変電子価(multi-valence)を有する元素である。Mnは、焼成温度を減少させ、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。また、Mnは、主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO3)に添加した時に、Ti-サイトを置換することができる。
【0031】
Siは高い仕事関数(work function)を有するため、結晶粒界に分布時に、結晶粒界のエネルギー準位を高め、信頼性を向上させることができる。また、Siは、主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO3)に添加した時に、Ti-サイトを置換することができる。
【0032】
一方、上記副成分として、Niをさらに含むことができる。
【0033】
一実施形態において、結晶粒界111bの平均厚さは1.1nm以上であることができる。
【0034】
結晶粒界111bの平均厚さが1.1nm未満である場合には、GB1/G1の制御による信頼性の向上効果が不十分になる恐れがある。
【0035】
この際、結晶粒界111bの平均厚さの上限は特に限定する必要はなく、例えば、結晶粒界の平均厚さは3.0nm未満であることができる。
【0036】
一実施形態において、結晶粒に含まれたSiの含量(G1)は0.4wt%以下であり、結晶粒界に含まれたSiの含量(GB1)は1.6wt%以上であることができる。ここで、G1は結晶粒を基準とした値であり、GB1は結晶粒界を基準とした値である。すなわち、結晶粒におけるSiの質量の割合が0.4wt%以下であり、結晶粒界におけるSiの質量の割合が1.6wt%以上である。
【0037】
G1が0.4wt%未満であるか、GB1が1.6wt%未満である場合には、結晶粒と結晶粒界とのエネルギー準位差が小さいため、信頼性の向上効果が不十分になる恐れがある。
【0038】
一実施形態において、上記結晶粒界のDyの含量をGB2としたときに、GB2/GB1は、質量比で2.3以下であることができる。
【0039】
GB2/GB1が2.3を超える場合には、粒界の電荷密度(charge density)が増加し、信頼性が低下する恐れがある。
【0040】
この際、GB2/GB1の下限は特に限定する必要はなく、例えば、GB2/GB1は1.5以上であることができる。
【0041】
一実施形態において、上記結晶粒界のMnの含量をGB3としたときに、GB3/GB1は質量比で0.5以下であることができる。
【0042】
GB3/GB1が0.5を超える場合には、粒界の電荷密度(charge density)が増加し、信頼性が低下する恐れがある。
【0043】
この際、GB3/GB1の下限は特に限定する必要はなく、例えば、GB3/GB1は0.2以上であることができる。
【0044】
本発明によると、GB1/G1を制御することで、結晶粒界でのSiの分布を高めて結晶粒界のエネルギー準位を高め、GB2/GB1及び/またはGB3/GB1を制御することで、結晶粒界でのドナー(donor)及びアクセプター(acceptor)の分布を減少させることにより、結晶粒界の耐電圧特性を向上させ、高温信頼特性を向上させることができる。
【0045】
一方、誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。
【0046】
但し、一般に、誘電体層を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、特に、誘電体層の厚さが0.45μm以下である場合には、信頼性が低下する恐れがある。
【0047】
上述のように、本発明の一実施形態によると、結晶粒に含まれたSiの含量に対する結晶粒界に含まれたSiの含量の割合(GB1/G1)を質量比で5以上に制御することで、結晶粒界のエネルギー準位を高め、信頼性を向上させることができるため、誘電体層111の厚さが0.5μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0048】
したがって、誘電体層111の厚さが0.45μm以下である場合に、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0049】
上記誘電体層111の厚さtdは、上記第1内部電極121と第2内部電極122との間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0050】
上記誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。
【0051】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の誘電体層において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0052】
上記等間隔である30個の地点で測定した厚さは、第1及び第2内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定されることができる。
【0053】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0054】
また、上記容量形成部Acは、キャパシターの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層することで形成されることができる。
【0055】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112と、上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113と、を含むことができる。
【0056】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層することで形成されることができ、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0057】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0058】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0059】
一方、カバー部112、113の厚さは、特に限定する必要はない。但し、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であることができる。
【0060】
また、上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0061】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と、第6面6に配置されたマージン部115と、を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0062】
マージン部114、115は、
図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0063】
マージン部114、115は、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0064】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上に、マージン部が形成される箇所を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0065】
また、内部電極121、122による段差を抑えるために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に幅方向に積層することでマージン部114、115が形成されてもよい。
【0066】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層される。
【0067】
内部電極121、122は第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0068】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4から離隔して第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3から離隔して第4面4を介して露出することができる。
【0069】
この際、第1及び第2内部電極121、122は、その間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。
【0070】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成することで形成されることができる。
【0071】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0072】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷することで形成されることができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0073】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。
【0074】
但し、一般に、内部電極を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、特に、内部電極の厚さが0.5μm以下である場合には、信頼性が低下する恐れがあった。
【0075】
上述のように、本発明の一実施形態によると、結晶粒に含まれたSiの含量に対する結晶粒界に含まれたSiの含量の割合(GB1/G1)を質量比で5以上に制御することで、結晶粒界のエネルギー準位を高め、信頼性を向上させることができるため、内部電極121、122の厚さが0.50μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0076】
したがって、内部電極121、122の厚さが0.50μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0077】
上記内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0078】
上記内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。
【0079】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0080】
上記等間隔である30個の地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定されることができる。
【0081】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置される。
【0082】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0083】
図1を参照すると、外部電極131、132はサイドマージン部114、115の第2方向の両端面を覆うように配置されることができる。
【0084】
本実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的によって変わり得る。
【0085】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらには、多層構造を有することができる。
【0086】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132aと、電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bと、を含むことができる。
【0087】
電極層131a、132aのより具体的な例としては、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0088】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよい。
【0089】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を用いることができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0090】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0091】
めっき層131b、132bのより具体的な例としては、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0092】
セラミック電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0093】
但し、小型化及び高容量化をともに達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させる必要があるため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有するセラミック電子部品100において、本発明による信頼性及び絶縁抵抗の向上効果がより顕著になることができる。
【0094】
したがって、製造誤差、外部電極のサイズなどを考慮すると、セラミック電子部品100の長さが1.1mm以下、幅が0.55mm以下である場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、セラミック電子部品100の長さは、セラミック電子部品100の第2方向のサイズを意味し、セラミック電子部品100の幅は、セラミック電子部品100の第3方向のサイズを意味することができる。
【0095】
(実施例)
本発明の実施例は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分として含み、Dy、Si、及びMnを副成分として含む誘電体組成物を準備した後、上記誘電体組成物を含むセラミックグリーンシートを用いて、焼成時における還元雰囲気を調節することで結晶粒界を制御して誘電体層を形成したプロトタイプの積層セラミックキャパシター(Proto-type MLCC)を用意した。
【0096】
上記のように完成したプロトタイプの積層セラミックキャパシター(Proto-type MLCC)の試験片である試験番号1~3に対して、結晶粒界の厚さ、結晶粒及び結晶粒界の元素含量を測定して下記表1に記載し、高温IR劣化を測定して下記表1に記載した。
【0097】
結晶粒界の厚さは、結晶粒間の境界を垂直に通る10nmの範囲をラインプロファイル(line profile)し、Siの含量の半値幅(FWHM、full width at half maximum)から測定した。ここで、半値幅とは、山型からなる分布を示す曲線において、最大値の1/2に対応する分布の幅を意味する。
【0098】
結晶粒界のSi、Dy、及びMnの含量(GB1、GB2、GB3)は、上記ラインプロファイルにおいて結晶粒界に含まれたSi、Dy、及びMnの平均値を測定したものであり、結晶粒のSi、Dy、及びMnの含量(G1、G2、G3)は、上記ラインプロファイルにおいて結晶粒界に含まれたSi、Dy、及びMnの平均値を測定したものである。
【0099】
高温IR劣化は、各試験番号当たり40個のサンプルチップを準備し、105℃で72時間、定格電圧の1.5倍に該当する電圧を印加した後、絶縁抵抗が1kΩ未満に低下したサンプルチップを不良と判断し、不良と判定されたチップの百分率を記載した。
【0100】
【0101】
試験番号1及び2は、GB1/G1が5未満と、高温信頼性に劣っていた。これに対し、試験番号3は、GB1/G1が5以上と、高温信頼性に優れることが確認できる。
【0102】
また、試験番号1及び2は、高温IR劣化の評価後における絶縁抵抗が、初期値と比べて約1/10000程度に低下し、試験番号3は、高温IR劣化の評価後における絶縁抵抗が、初期値と比べて約1/1000程度に低下したことから、試験番号3が高温信頼性に優れることが確認できる。
【0103】
また、GB1/G1値が増加するにつれて、結晶粒界の厚さが増加することが確認でき、試験番号3の結晶粒界の厚さは1.1nm以上であることが確認できる。
【0104】
また、GB1/G1値が増加するにつれて、結晶粒界でのDy/Siの含量比(GB2/GB1)と結晶粒界でのMn/Siの含量比(GB3/GB1)が減少することが確認でき、試験番号3のGB2/GB1は2.3以下であり、GB3/GB1は0.5以下であることが確認できる。
【0105】
図6は、試験番号3の誘電体層を透過型電子顕微鏡(TEM)によりスキャンした画像、Dy、Si、及びMnに対してマッピング(mapping)した画像である。
図7は、
図6の矢印に沿ってライン分析を行った結果である。
図7の(b)は、
図7の(a)で0wt%~2.0wt%の部分を拡大したものである。
【0106】
図8は、試験番号1の誘電体層を透過型電子顕微鏡(TEM)によりスキャンした画像、Dy、Si、及びMnに対してマッピング(mapping)した画像である。
図9は、
図8の矢印に沿ってライン分析を行った結果である。
図9の(b)は、
図9の(a)で0wt%~2.0wt%の部分を拡大したものである。
【0107】
試験番号1は、結晶粒界の厚さが薄く、結晶粒界に主にDyが分布しており、Mn、Siなどは非常に少量のみ分布している。かかる構造では、結晶粒界のエネルギー準位を高く確保できないため、優れた信頼性を確保することが困難である。
【0108】
試験番号3は、結晶粒界の厚さが1.23nmと十分に厚く、結晶粒界でのSiの分布が高くて結晶粒界のエネルギー準位が高く、GB2/GB1及びGB3/GB1は低く、結晶粒界でのドナー(donor)及びアクセプター(acceptor)の分布が少ないため、優れた高温信頼特性を確保することができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態及び添付図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定しようとする。よって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者による多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0110】
100 セラミック電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 サイドマージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層