(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112483
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】気液分離器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220726BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20220726BHJP
B04C 5/04 20060101ALI20220726BHJP
B04C 5/08 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01M8/04 N
B01D45/12
B04C5/04
B04C5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200162
(22)【出願日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2021007959
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】奥野 仁
(72)【発明者】
【氏名】細井 貴己
(72)【発明者】
【氏名】西海 弘章
【テーマコード(参考)】
4D031
4D053
5H127
【Fターム(参考)】
4D031AC01
4D031AC04
4D031BA01
4D031BA03
4D031EA01
4D053AA01
4D053AB01
4D053BA01
4D053BB07
4D053BC01
4D053BD04
4D053CA13
4D053CB14
4D053DA10
5H127AB04
5H127BA28
5H127BA33
5H127EE23
(57)【要約】
【課題】導入口から導入された含水ガスを水平方向に流して気液分離を行わせる気液分離器を構成する。
【解決手段】ハウジング10と、ハウジング10に形成された導入口14と、導入口14に連通し、導入口14から供給された含水ガスを鉛直方向に流通させる流路Vと、流路Vを流通する含水ガスの流れを鉛直方向から水平方向に変換するガス流変換部Auと、ガス流変換部Auからハウジング10の内部に供給された含水ガスを複数の分離羽根17に順次接触させることで含水ガスから水を分離する気液分離部Asと、を備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに形成された導入口と、
前記導入口に連通し、前記導入口から供給された含水ガスを鉛直方向に流通させる流路と、
前記流路を流通する前記含水ガスの流れを鉛直方向から水平方向に変換するガス流変換部と、
前記ガス流変換部から前記ハウジングの内部に供給された前記含水ガスを複数の分離羽根に順次接触させることで前記含水ガスから水を分離する気液分離部と、を備えている気液分離器。
【請求項2】
前記気液分離部が、前記導入口より高い位置に配置され、
前記流路が形成された鉛直方向に長い姿勢の流路部材が、前記ハウジングの内部空間に配置されると共に、前記導入口に導入された前記含水ガスを前記流路で鉛直方向の上側に送り、前記ガス流変換部が、前記流路部材の上端から更に鉛直方向の上側に送り出された前記含水ガスを水平方向に流すように前記ハウジングの上壁の内面に形成された水平姿勢のガイド面と、前記流路部材の上端部において前記含水ガスを前記気液分離部の前記分離羽根に向かう方向に案内するガイド部とで構成されている請求項1に記載の気液分離器。
【請求項3】
前記流路部材が、前記ハウジングの内面に保持されるホルダに一体的に形成されている請求項2に記載の気液分離器。
【請求項4】
ハウジングと、
前記ハウジングの上側に形成された導入口と、
前記導入口に連通し、前記導入口から供給された含水ガスを鉛直方向に流通させる流路と、
前記流路を流通する前記含水ガスの流れを傾斜面に接触させて鉛直方向から水平方向に変換するガス流変換部と、
前記ガス流変換部から前記ハウジングの内部に供給された前記含水ガスを複数の分離羽根に順次接触させることで前記含水ガスから水を分離する気液分離部を備える気液分離器。
【請求項5】
前記分離羽根は、環状領域内に鉛直方向に延びる姿勢で配置されており、
前記気液分離部は、前記ガス流変換部で変換された前記含水ガスを、前記分離羽根に接触させてスワール流として旋回させることにより、前記含水ガスから水を分離する請求項4に記載の気液分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
気液分離器として、例えば、燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスに含まれる水を分離するものが特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の気液分離器では、ハウジングの上面に形成された膨出壁の内部に複数の衝突壁を鉛直方向に延びる姿勢で配置して気液分離部が形成され、この気液分離部の衝突壁に対して水平方向から含水ガスを供給するように導入口が形成されている。
【0004】
特許文献1の気液分離器では、気液分離部を構成する複数の衝突壁が、複数の縦長の板状材で構成され、これらを平面視で環状の領域に対し設定間隔で配置し、環状の領域の内部の領域を旋回させるように含水ガスを供給してスワール流を作り出し、含水ガスと衝突壁との衝突によって水の分離を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の気液分離器は、車両の燃料電池の近傍に配置されるものであり、例えば、燃料電池が、積層状態で配置された複数の燃料電池セルの両端位置にエンドプレートを配置したものでは、エンドプレートに気液分離器が支持されることになる。
【0007】
燃料電池のエンドプレートは、燃料ガスと酸化ガスとを供給する管路や、バルブ類を備えるため、これらの配置を考慮して気液分離器を配置した場合には、含水ガスが導入される導入口を特許文献1のようにハウジングの上部でかつ水平方向に向けて配置することが困難になることも予想される。
【0008】
特に、複数の燃料電池セルを有する燃料電池では、燃料電池セルの積層方向を縦向きにすることや、左右方向や前後方向にすることもあるため、エンドプレートに対する気液分離器の配置と、エンドプレートから含水ガスを排出する位置との関係から、導入口を、ハウジングの下部など衝突壁からずれた位置に配置したり、ハウジングに対して鉛直方向に向けて配置する設計も必要とされる。
【0009】
また、含水ガスを衝突壁に接触させて水を分離する構成気液分離部では、特許文献1にも記載されるように、含水ガスを水平方向に流して旋回させるスワール流を作り出すことが気液分離の性能を高める点で好ましい。
【0010】
このような理由から、導入口の配置位置の自由度を向上させ、導入口から導入された含水ガスを水平方向に流して気液分離を行わせる気液分離器が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る気液分離器の特徴構成は、ハウジングと、前記ハウジングに形成された導入口と、前記導入口に連通し、前記導入口から供給された含水ガスを鉛直方向に流通させる流路と、前記流路を流通する前記含水ガスの流れを鉛直方向から水平方向に変換するガス流変換部と、前記ガス流変換部から前記ハウジングの内部に供給された前記含水ガスを複数の分離羽根に順次接触させることで前記含水ガスから水を分離する気液分離部と、を備えている点にある。
【0012】
この特徴構成によると、導入口から導入された含水ガスは、流路において鉛直方向に流通し、この鉛直方向への流通が、ガス流変換部によって水平方向への流れとなるように流通方向が変換され気液分離部に供給される。また、気液分離部では、含水ガスが水平方向に流れる状態で分離羽根に順次接触することにより、例えば、スワール流を作り出すことも可能となり、効率的な気液分離を実現する。
従って、導入口の位置が気液分離器のハウジングの上部に制限されることがなくなり、導入口の配置位置の自由度を向上させながら、導入口から導入された含水ガスを分離羽根に対して水平方向に流して気液分離を行わせる気液分離器が構成された。
【0013】
上記構成に加えた構成として、前記気液分離部が、前記導入口より高い位置に配置され、前記流路が形成された鉛直方向に長い姿勢の流路部材が、前記ハウジングの内部空間に配置されると共に、前記導入口に導入された前記含水ガスを前記流路で鉛直方向の上側に送り、前記ガス流変換部が、前記流路部材の上端から更に鉛直方向の上側に送り出された前記含水ガスを水平方向に流すように前記ハウジングの上壁の内面に形成された水平姿勢のガイド面と、前記流路部材の上端部において前記含水ガスを前記気液分離部の前記分離羽根に向かう方向に案内するガイド部とで構成されても良い。
【0014】
これによると、導入口から導入された含水ガスは、鉛直方向に長い姿勢の流路部材の流路を鉛直方向の上側に送られる。また、ガス流変換部が、ハウジングの上壁の内面に形成された水平姿勢のガイド面と、流路部材の上端部において含水ガスを前記気液分離部の方向に案内するガイド部とで構成されている。このため、流路部材の上端から更に鉛直方向の上側に送り出された含水ガスは、ハウジングの上壁の内面の水平姿勢のガイド面に沿って水平方向に送られると共に、流路部材の上端のガイド部によって気液分離部に向かう方向に送られることになり、このように送られた含水ガスが気液分離部の分離羽根に接触して気液分離が実現する。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記流路部材が、前記ハウジングの内面に保持されるホルダに一体的に形成されても良い。
【0016】
これによると、例えば、気液分離器を組み立てる際に、ハウジングの内面にホルダを支持することにより、ハウジングに対し、ホルダを介して流路部材を支持することが可能となる。その結果、流路部材をハウジングの内面に溶着や接着することなく、位置決め状態でハウジングに固定し含水ガスを適正に流すことが可能となる。
【0017】
本発明に係る気液分離器の特徴構成は、ハウジングと、前記ハウジングの上側に形成された導入口と、前記導入口に連通し、前記導入口から供給された含水ガスを鉛直方向に流通させる流路と、前記流路を流通する前記含水ガスの流れを傾斜面に接触させて鉛直方向から水平方向に変換するガス流変換部と、前記ガス流変換部から前記ハウジングの内部に供給された前記含水ガスを複数の分離羽根に順次接触させることで前記含水ガスから水を分離する気液分離部を備える点にある。
【0018】
この特徴構成によると、導入口から導入された含水ガスは、流路において鉛直方向に流通し、この鉛直方向への流通が、ガス流変換部の傾斜面に接触することによって水平方向へ流通方向が変換され、気液分離部に供給される。また、気液分離部では、含水ガスが水平方向に流れる状態で分離羽根に順次接触することにより、効率的な気液分離を実現する。
従って、導入口をハウジングの上部に鉛直方向に向けて形成しても、導入口から導入された含水ガスを分離羽根に対して水平方向に流して気液分離を行わせる気液分離器が構成された。
【0019】
上記構成に加えた構成として、前記分離羽根は、環状領域内に鉛直方向に延びる姿勢で配置されており、前記気液分離部は、前記ガス流変換部で変換された前記含水ガスを前記分離羽根に接触させてスワール流として旋回させることにより、前記含水ガスから水を分離するように構成されている。
【0020】
これによると、含水ガスは、ガス流変換部によって水平方向に流れが変換された後に環状領域内に鉛直方向に延びる姿勢で配置された複数の分離羽根に接触する。特に、この構成ではガス流変換部で変換された含水ガスを環状領域内の複数の分離羽根に接触させてスワール流として旋回させることにより効率的な気液分離を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】燃料電池のエンドプレートと気液分離器とを示す斜視図である。
【
図3】気液分離器の気液分離部の部位の横断平面図である。
【
図6】別実施形態(a)の気液分離器の斜視図である。
【
図7】別実施形態(a)の気液分離器の一部を切り欠いた斜視図である。
【
図8】別実施形態(a)の筒状体の上部の横断面図である。
【
図10】別実施形態(b)の気液分離器の一部を切り欠いた斜視図である。
【
図11】別実施形態(b)の気液分離器の一部を切り欠いた正面図である。
【
図12】別実施形態(b)の案内部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1には、燃料電池車(FCV)に搭載される燃料電池1のエンドプレート2の外面に備えた気液分離器Aが示されている。気液分離器Aは、導入路3を介して供給されるアノードオフガス(含水ガスの一例)に含まれる水を分離し、水が分離した脱水ガスを排出路4から排出し(アノードガスに合流させて燃料電池1に戻し)、分離した水を底部から排出するように構成されている。
【0023】
燃料電池1は、複数の燃料電池セル1aを積層し、積層方向の両端位置にアルミニウム材等の金属材で形成されるエンドプレート2を配置している。
図1には一対のエンドプレート2の一方だけを示しており、このエンドプレート2が配置された部位から燃料電池セル1aに対してアノードガス(水素ガス)を供給し、燃料電池セル1aで反応したアノードオフガスが排出される。これと同様に、このエンドプレート2が配置された部位から燃料電池セル1aに対してカソードガス(空気)を供給し、燃料電池セル1aで反応したカソードオフガスが排出される。
【0024】
図1~
図4に示すように、気液分離器Aは、樹脂製のハウジング10の内部にアノードオフガスから水を分離する気液分離部Asと、気液分離部Asで分離した水を回収する貯水部Atとを備え、貯水部Atから延出する排出流路19を開閉する電磁開閉弁5をハウジング10の底部に備えている。また、ハウジング10は、鉛直姿勢の中心軸(図示せず)に沿って鉛直方向に延びる内部空間を有している。この鉛直方向は、厳密に重力が作用する方向に平行な方向だけを意味するものではなく、重力の作用方向を基準に上下関係を決めることが可能な方向を含むものである。
【0025】
この気液分離器Aは、導入路3からのアノードオフガスが導入される導入口14と、水が除去されたアノードオフガスを送り出す排出口15とをハウジング10に形成している。導入口14は、気液分離部Asより低い位置に配置され、気液分離器Aは、導入口14から供給されたアノードオフガスを気液分離部Asの位置まで流通させて供給する流路部材6と、この流路部材6からのアノードオフガスを、気液分離部Asに向けて水平方向に送り出すガス流変換部Auとを有している。
【0026】
流路部材6は、導入口14から供給されたアノードオフガスを鉛直方向に流通させる流路Vを形成している。また、気液分離部Asでは、ハウジング10の鉛直姿勢の中心軸に対して直交する水平方向に供給されたアノードオフガスによって該中心軸を中心にスワール流を作り出すが、この水平方向は、厳密に水平方向だけを意味するものではなく、気液分離部Asにおいてスワール流を作り出すために必要なガスの流れを示す方向であれば良い。
【0027】
〔気液分離器〕
図2に示すように、気液分離器Aは、樹脂で成る上部ハウジング11と、樹脂で成る下部ハウジング12とでハウジング10が構成され、上部ハウジング11に一体形成された上部フランジ11aと、下部ハウジング12に一体形成された下部フランジ12aとを複数の締結ボルト13で締結している。また、上部ハウジング11と下部ハウジング12との断面(中心軸に沿う方向視における断面)が略等しい形状に成形されている。
【0028】
図1~
図3に示すように、上部ハウジング11の内部に気液分離部Asが配置され、上部ハウジング11の上面から上方に突出した突出部11bに対して水平方向に開口する排出口15が形成されている。気液分離部Asは、上部ハウジング11の内部で、上部ハウジング11の上壁11cの下面から下方に延びる仕切壁16と、上部ハウジング11の内壁とで区画される分離空間を有し、この分離空間に対し上壁11cの下面から鉛直方向下方に延びる姿勢で板状の複数の分離羽根17を備えている。複数の分離羽根17は
図3に示すように、平面視で環状となる環状領域Cに配置されている。
【0029】
図3に示すように、平面視において複数の分離羽根17が円環状となる環状領域Cに対して設定間隔で配置され、平面視において複数の分離羽根17が、ガス流変換部Auから水平方向に供給されるアノードオフガスを分離空間の中央方向に案内する姿勢に設定されている。
【0030】
この気液分離器Aでは、
図2に示すように仕切壁16の下端位置を、複数の分離羽根17の下端位置より下側に突出させており、分離空間のガスが排出口15に短絡的に流れる不都合を抑制している。
【0031】
下部ハウジング12の内部の底部に形成された貯水空間によって貯水部Atが配置されている。
図2、
図4に示すように貯水空間にフィルタ18が配置されている。フィルタ18は、平面視で円環状のフレーム部18aの内周に網状部18bを備えている。更に、貯水空間の下端部に連通する排出流路19の外端位置を開閉するように前述した電磁開閉弁5が備えられている。この電磁開閉弁5は、非通電時に閉塞状態を維持し、通電により排出流路19を開放して水を排出するように構成されている。
【0032】
〔気液分離器:流路部材〕
図5に示すように、流路部材6は、流路の断面形状がU字状となる鉛直方向に沿う姿勢で、ハウジング10の内部に配置されている。この流路部材6はハウジング10の内面に保持される環状のホルダ7に一体形成されている。尚、流路部材6とホルダ7とは樹脂材で一体的に形成されている。
【0033】
図2~
図5に示すように、流路部材6は、鉛直方向に沿う開放領域の開口縁をハウジング10の縦内面10sに近接(接触させても良い)させることにより、この流路部材6とハウジング10の内面との間に流路空間6aを形成しており、この流路空間6aでアノードオフガスを鉛直方向に流通させる流路Vが形成されている。
【0034】
ホルダ7は、平面視でハウジング10の内面に沿う環状であり、
図2に示すようにホルダ7の下部の一部を下部ハウジング12の内周に嵌め込む状態で、上部ハウジング11と、下部ハウジング12との境界に保持されている。このように保持されることでハウジング10の内部での流路部材6の位置が決まる。
【0035】
流路部材6は、導入口14の内方に隣接する位置から、上部ハウジング11の上壁11cの内面(下面)に近接する位置に達するように上下方向(鉛直方向)での長さが決められている。また、導入口14から供給されるアノードオフガスを流路空間6a(流路V)に案内する導入面6bを流路部材6の下端に形成している。
【0036】
この流路部材6の上端は、上方に開放する上端開口6cを形成し、この上端開口6cよりアノードオフガスを気液分離部Asの分離羽根17に案内するガイド部6dを形成している。
【0037】
特に、この気液分離器Aでは、流路部材6の上端開口6cから上方に送り出されたアノードオフガスを水平方向に流すように上部ハウジング11の上壁11cの内面(下面)に形成された水平姿勢のガイド面11dと、流路部材6の上端においてアノードオフガスを気液分離部Asに案内する水平姿勢のガイド部6dとでガス流変換部Auが構成されている(
図2参照)。
【0038】
このような構成から、導入口14に供給されたアノードオフガスは、ハウジング10の内部において流路部材6の流路Vにおいて、下端の導入面6bから流路空間6aに沿って上側(鉛直方向の上側)に送られ、流路部材6の上端位置からガス流変換部Auによって気液分離部Asの方向に送り出される。
【0039】
また、ガス流変換部Auでは、流路部材6の上端開口6cから上方に送り出されたアノードオフガスを、流路部材6の上端のガイド部6dが気液分離部Asの1つの分離羽根17に向かう方向(
図3に矢印で示す方向)で、且つ、水平方向に送り出す。
【0040】
このようにアノードオフガスが送られる方向は、気液分離部Asの分離空間においてスワール流を作り出す方向であり、複数の分離羽根17が環状領域Cに鉛直方向に延びる姿勢で配置されている。このため、アノードオフガスは、
図3に示す方向視において時計回りに回転するように複数の分離羽根17に順次接触することでスワール流として旋回し、この旋回を重ねるに伴い下方に移動することにより水が分離され、分離した水は貯水部Atに貯えられ、水が分離したアノードオフガスは、仕切壁16の下端の下側を通過した後に、排出口15から送り出される。
【0041】
〔実施形態の作用効果〕
エンドプレート2の外面には、アノードオフガスを給排するため前述した導入路3や排出路4の他に、カソードガス(空気)を給排する配管を備えており、また、これらのガスの流れを制御するバルブを備え、カソードガスを加湿するための加湿器等が支持されるため、気液分離器Aの配置に制限がある。
【0042】
配管類の長さを短縮し、気液分離器Aを保護する観点から、エンドプレート2のプレート面に直交する方向視でエンドプレート2の外周縁より内側に気液分離器Aを配置することが有効であり、このような配置も望まれている。
【0043】
このような課題を考慮すると、導入口14を、ハウジング10のうち気液分離部Asより低い位置に配置する設計も必要となる。上記実施形態の構成は、導入口14を気液分離部Asより低い位置に配置したものにおいても、アノードオフガスに含まれる水を良好に分離することが可能となる。
【0044】
特に、実施形態に示した気液分離器Aでは、ハウジング10の内部空間に対しホルダ7を介して流路部材6を備えることにより、流路部材6やホルダ7をハウジング10に溶着や接着することなく、この流路部材6を適正な位置、適正な姿勢で配置し、導入口14から導入されるアノードオフガスを上方に送り、ガス流変換部Auで水平方向に流れを変換して気液分離部Asに供給することが可能となる。
【0045】
また、ガス流変換部Auが、ハウジング10の上壁11cの内面に形成されたガイド面11dと、流路部材6の上端に形成されたガイド部6dとで構成されるため、ガス流変換部Auとして特別の部材を用いる必要がない。このように構成されるガス流変換部Auからアノードオフガスを複数の分離羽根17の1つに向けて水平方向に正確に送り出してスワール流を作り出して良好な水の分離を実現している。
【0046】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0047】
(a)
図6、
図7に示すように、ハウジング10を構成する上部ハウジング11の内部に気液分離部Asを配置し、この上部ハウジング11の上壁11cに対して鉛直上方に向かう姿勢で導入口14を形成し、この導入口14から連通して上壁11cを鉛直方向に沿う姿勢で貫通し上側から下側にアノードオフガス(含水ガスの一例)を送る流路Vを有している。また、この流路Vを流れるアノードオフガスを水平方向に変換するガス流変換部Auを、上部ハウジング11の内部に備えている。
【0048】
この別実施形態(a)では、
図6~
図9に示すように、上部ハウジング11の上壁11cの下面に下側に突出する円環状のスリーブ11sを形成し、このスリーブ11sに嵌まり込む筒状体21の内部の分離空間に気液分離部Asが備えられている。また、筒状体21には、鉛直方向に沿う姿勢の平坦な仕切壁16と、複数の分離羽根17と、ガス流変換部Auとして機能する傾斜面21aとが形成されている。
【0049】
つまり、筒状体21の仕切壁16と、筒状体21の外壁との間に分離空間が形成され、この分離空間の内部に複数の分離羽根17が配置されている。傾斜面21aは、導入口14に供給されるアノードオフガスをガス流変換部Auが分離羽根17に向け水平方向に供給するように流路Vに対して傾斜する姿勢で形成されている。
【0050】
この別実施形態(a)では、
図8に示すように複数の分離羽根17が鉛直方向に延びる板状で平面視において環状となる環状領域Cに配置されている。また、平面視で円環状の領域に含まれる位置にガス流変換部Auとしての傾斜面21aが形成されている。これにより、導入口14から流路Vを鉛直方向に流通して筒状体21に供給されたアノードオフガスは傾斜面21aに接触することで水平方向に案内され、複数の分離羽根17に順次接触することでスワール流となり、旋回を重ねるに伴い下方に移動し、良好な水の分離を可能にしている。
【0051】
尚、この別実施形態(a)では、下部ハウジング12の内部に形成された貯水部Atに対し、実施形態と同様にフィルタ18を備えても良い。
【0052】
(b)
図10~
図12に示すように、前述した別実施形態(a)と同様にハウジング10を構成する上部ハウジング11の内部に気液分離部Asを配置し、この上部ハウジング11の上壁11cに対して鉛直上方に向かう姿勢で導入口14を形成し、導入口14から連通して上壁11cを鉛直方向に沿う姿勢で貫通して上側から下側にアノードオフガス(含水ガスの一例)を送る流路Vを形成している。また、この流路Vに流れるアノードオフガスを水平方向に変換するガス流変換部Auを上部ハウジング11に備えている。
【0053】
この別実施形態(b)では、上部ハウジング11の上壁11cの下面から下方に延びる仕切壁16と、上部ハウジング11の内壁とで区画される分離空間を形成しており、この分離空間において上壁11cの下面から下方に延びる板状の複数の分離羽根17が環状領域Cに形成されている。
【0054】
また、上部ハウジング11の上壁11cの下面に、流路Vと同軸芯で下側に突出する嵌合筒部11eが形成され、この嵌合筒部11eに嵌合する案内部材25を備えており、この案内部材25にガス流変換部Auが備えられている。つまり、案内部材25は、嵌合筒部11eに嵌合する導入筒部25aと、流路Vに対して直交する姿勢の排出開口部25bと、導入筒部25aに供給されたアノードオフガスを排出開口部25bに案内するように流路Vに対して傾斜する姿勢の案内面25c(傾斜面の一例)とを備えており、この案内面25cでガス流変換部Auが構成されている。
【0055】
これにより、上部ハウジング11の上壁11cの下面に案内部材25を取り付け、導入口14から流路Vに上側から下側にアノードオフガスを導入することにより、このアノードオフガスが案内部材25の内部の案内面25cに接触し、流通方向が水平方向に変換され、複数の分離羽根17に順次接触することでスワール流となり、旋回を重ねに伴い下方に移動し、良好な水の分離を可能にしている。
【0056】
尚、この別実施形態(b)の変形例として、内部に案内面25cを敢えて形成せず、導入筒部25aに供給されたアノードオフガスを排出開口部25bから送り出すように屈曲するパイプとなる案内部材25を用いることでガス流変換部Au構成することも可能である。
【0057】
(c)実施形態に示した流路部材6として筒状の部材を用いることも可能である。また、このように流路部材6に筒状の部材を用いる構成において、筒状の部材の上端を屈曲させることで、アノードオフガスを気液分離部Asに水平方向から供給するように、ガス流変換部Auを構成することも可能である。また、上部ハウジング11の内面においてハウジング10の中心軸に対して傾斜する姿勢の案内面を形成することでガス流変換部Auを構成することも考えられる。
【0058】
(d)実施形態に示した流路部材6(別実施形態(c)で説明した筒状の部材を含む)をハウジング10の内部に保持するためにホルダ7を用いる構成に代えて、例えば、流路部材6の上端を、上部ハウジング11の内面に嵌合させる構成や、流路部材6の下端を下部ハウジング12の内面に嵌合させる構成を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、気液分離器に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
6 流路部材
6d ガイド部
7 ホルダ
10 ハウジング
11c 上壁
11d ガイド面
14 導入口
17 分離羽根
21a 傾斜面
25c 案内面(傾斜面)
As 気液分離部
Au ガス流変換部
C 環状領域
V 流路