(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112488
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】害虫侵入防止用シート製品
(51)【国際特許分類】
A01M 29/12 20110101AFI20220726BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20220726BHJP
A01N 53/06 20060101ALI20220726BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A01M29/12
A01P7/04
A01N53/06 110
A01N25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210228
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2021007829
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩本 友美
(72)【発明者】
【氏名】香谷 康幸
(72)【発明者】
【氏名】浮田 涼子
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA02
2B121CA64
2B121CC21
2B121CC22
2B121EA01
2B121EA21
4H011AC02
4H011BB15
4H011BC19
4H011DA07
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】窓ガラスに貼着しても目立ちにくく、光等の耐候性に優れ、さらに害虫の侵入を効果的に防止することができるシート製品を提供する。
【解決手段】害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層を有するシート製品であって、前記シート製品はその一方の面を薬剤揮散面、他方の面を貼着面となし、JIS A 5759に基づき、前記シート製品の前記貼着面側をガラス板に貼着させて試験片を作製し、前記薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めるとき、15%以上であることを特徴とする害虫侵入防止用シート製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層を有するシート製品であって、前記シート製品はその一方の面を薬剤揮散面、他方の面を貼着面となし、JIS A 5759に基づき、前記シート製品の前記貼着面側をガラス板に貼着させて試験片を作製し、前記薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めるとき、15%以上であることを特徴とする害虫侵入防止用シート製品。
【請求項2】
前記害虫侵入防止成分と樹脂の配合質量比率は5:95~50:50(質量比)であることを特徴とする請求項1に記載の害虫侵入防止用シート製品。
【請求項3】
前記害虫侵入防止成分は、メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫侵入防止用シート製品。
【請求項4】
前記樹脂は、エチレン共重合体樹脂及び/又は合成ゴム樹脂を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の害虫侵入防止用シート製品。
【請求項5】
前記樹脂層は、その薬剤揮散面側に前記害虫侵入防止成分について透過性を有する薬剤透過性シートが積層され、一方、その貼着面側に前記害虫侵入防止成分について非透過性かつ非吸着性である薬剤非透過性シート層が積層されてなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の害虫侵入防止用シート製品。
【請求項6】
前記薬剤透過性シート層は、ポリオレフィン系シート層、有孔ポリオレフィン系シート層、又は不織布である請求項5に記載の害虫侵入防止用シート製品。
【請求項7】
前記薬剤非透過性シート層の、前記樹脂層側の面と反対側の面に、粘着剤からなる粘着剤層を積層し、その粘着剤層上に前記粘着剤と剥離可能であるセパレーターが貼着され、セパレーターが剥離されることで他の物体に貼着可能であることを特徴とする請求項5又は6に記載の害虫侵入防止用シート製品。
【請求項8】
害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層を有するシート製品であって、前記シート製品はその一方の面を薬剤揮散面、他方の面を貼着面となし、JIS A 5759に基づき、前記シート製品の前記貼着面側をガラス板に貼着させて試験片を作製し、前記薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めるとき、15%以上であることを特徴とする害虫侵入防止用シート製品を貼着することを特徴とする害虫侵入防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスに貼着しても目立ちにくく、光等の耐候性に優れ、さらに害虫の侵入を効果的に防止することができるシート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
飛来害虫は、昼夜を問わずに窓やドア等の隙間を見つけ、店舗や家屋等といった建物内に飛来して侵入することが知られている。これらの飛来害虫は、建物内で飛び回ることで滞在する人に不快感を与えるだけでなく、食品等にも止まり、その死骸が食品に混入する場合もあり、衛生的に好ましくない。
【0003】
これらの問題を解決するために、ガラス面に殺虫剤や忌避剤を塗布や貼着等の方法により、害虫の侵入を防ぐ製品などが種々開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、害虫防除成分、特定の高級脂肪酸エステルである被膜形成成分、及びn-パラフィン系溶剤を噴射剤と共に充填してなることを特徴とするガラス面塗布用の飛来害虫侵入防止用エアゾールが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、イベント内容が記載され、店舗の屋外側のガラス面に貼着され、夜間、照明器具の光が当たる虫よけ用ポスターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4119647号公報
【特許文献2】特開2007-143462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の飛来害虫侵入防止用エアゾールは害虫防除効果に優れるものであるが、塗布面がべたつく場合があり、人が頻繁に手で触れる可能性のある窓ガラスに処理する上で、使用しやすい製品とは必ずしも言えない。また、特許文献2に記載の虫よけ用ポスターはイベント内容のポスターとしての機能も果たすものであり、非常に目立つものである。虫よけを使用していることをあまり周りに知られたくない消費者もいるため、建物の窓の外面に使用した際に、あまり目立たずに、飛来害虫の侵入を効果的に防止することができる製品が求められている。また、窓は太陽からの直射光に加えて、反射光や散乱光も生じるため、光の影響を特に受けやすい環境である。そのため、光等の耐候性に優れる製品が求められる。
【0008】
そこで本発明は、窓ガラスに貼着しても目立ちにくく、光等の耐候性に優れ、さらに害虫の侵入を効果的に防止することができるシート製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するにあたり、害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層を有するシート製品であって、前記シート製品の一方の面を薬剤揮散面、他方の面を貼着面となす害虫侵入防止用シートをガラスに貼着して使用する際の300~2500nmの波長域(全波長領域)における日射反射率に着目した。鋭意検討を行った結果、前記シート製品における前記日射反射率を特定の範囲にすることで、上記課題を解決することができた。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層を有するシート製品であって、前記シート製品はその一方の面を薬剤揮散面、他方の面を貼着面となし、JIS A 5759に基づき、前記シート製品の前記貼着面側をガラス板に貼着させて試験片を作製し、前記薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めるとき、15%以上であることを特徴とする害虫侵入防止用シート製品。
(2)前記害虫侵入防止成分と樹脂の配合質量比率は5:95~50:50(質量比)であることを特徴とする(1)に記載の害虫侵入防止用シート製品。
(3)前記害虫侵入防止成分はメトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の害虫侵入防止用シート製品。
(4)前記樹脂は、エチレン共重合体樹脂及び/又は合成ゴム樹脂を含有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか1に記載の害虫侵入防止用シート製品。
(5)前記樹脂層は、その薬剤揮散面側に前記害虫侵入防止成分について透過性を有する薬剤透過性シートが積層され、一方、その貼着面側に前記害虫侵入防止成分について非透過性かつ非吸着性である薬剤非透過性シート層が積層されてなることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1に記載の害虫侵入防止用シート製品。
(6)前記薬剤透過性シート層は、ポリオレフィン系シート層、有孔ポリオレフィン系シート層、又は不織布である(5)に記載の害虫侵入防止用シート製品。
(7)前記薬剤非透過性シート層の、前記樹脂層側の面と反対側の面に、粘着剤からなる粘着剤層を積層し、その粘着剤層上に前記粘着剤と剥離可能であるセパレーターが貼着され、セパレーターが剥離されることで他の物体に貼着可能であることを特徴とする(5)又は(6)のいずれか1に記載の害虫侵入防止用シート製品。
(8)害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層を有するシート製品であって、前記シート製品はその一方の面を薬剤揮散面、他方の面を貼着面となし、JIS A 5759に基づき、前記シート製品の前記貼着面側をガラス板に貼着させて試験片を作製し、前記薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めるとき、15%以上であることを特徴とする害虫侵入防止用シート製品を貼着することを特徴とする害虫侵入防止方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、窓ガラスに貼着しても目立ちにくく、光等の耐候性に優れ、さらに種々の害虫の侵入を防止することができ、特に飛来害虫の侵入を効果的に防止することができるシート製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の害虫侵入防止用シート製品、及びそれを用いた害虫侵入防止方法について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。また、本明細書における範囲を示す表記「~」がある場合は、上限と下限を含有するものとする。
【0013】
本発明は、害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層を有するシート製品であって、前記シート製品はその一方の面を薬剤揮散面、他方の面を貼着面となし、JIS A 5759に基づき、前記シート製品の前記貼着面側をガラス板に貼着させて試験片を作製し、前記薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めるとき、15%以上であることを特徴とする害虫侵入防止用シート製品である。
【0014】
本発明における「日射反射率」とは、JIS A 5759(2008 建築窓ガラス用フィルム)に記載されており、300~2500nmの波長域(全波長領域)の各波長の分光反射率を測定し、各波長における重価係数等を加味して算出される反射率を意味するものとする。また、本発明においては、害虫侵入防止用シート製品の貼着面側をガラス板に貼着させて試験片を作製し、薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めることとする。
【0015】
本発明の害虫侵入防止用シート製品は、日射反射率は15%以上であり、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、前記シート製品は、透明、半透明や不透明のいずれでも構わない。
【0016】
本発明の害虫侵入防止成分は、特に限定されないが、ピレスロイド系化合物、ジオール系化合物、アミド系化合物、及び二塩基酸エステル化合物からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0017】
上記ピレスロイド系化合物としては、種々のものが使用可能であるが、その使用時の害虫侵入防止効果及び使用性等から、30℃における蒸気圧が2×10-4~1×10-2mmHgの範囲のものが好適に採用される。
具体的には、4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(メトフルトリン)、4-メチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(プロフルトリン)、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(トランスフルトリン)、4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2,3,3-テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、4-プロパルギル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2,3,3-テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル 2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(エムペントリン)、メパフルトリン、ヘプタフルトリンなどが挙げられるが、なかんずく、メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましく、メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンであることがより好ましい。また、これら化合物には、不斉炭素に基づく光学異性や二重結合に基づく幾何異性が存在するが、それらの各々並びに任意の混合物も勿論本発明に包含される。
【0018】
また、前記ジオール化合物としては、p-メンタン-3,8-ジオール、p-メンタン-1,8-ジオール、及び2-エチル-1,3-ヘキサンジオールがあげられ、前記アミド化合物としては、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)、ディート、イカリジン等が挙げられ、前記二塩基酸エステル化合物としては、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、及びフマル酸ジブチルが例示される。かかる害虫侵入防止成分も常温揮散性を有し、25℃における蒸気圧は概ね1×10-5~1×10-1mmHgの範囲に該当する。
【0019】
本発明では、前記害虫侵入防止成分の揮散性性能と発明の趣旨に支障を及ぼさない限りにおいて、例えば、調香の目的で、α-ピネン、テルピネオール、ゲラニオール、リナロール、シトロネラール、オイゲノール、カンファー、ユーカリプトール、シトラール、メントール、アリルヘプタノエート、アリルヘキサノエート等のテルペン系香料やハッカ油、ラベンダー油、オレンジ油、ユーカリ油、スペアミント油等の天然植物精油等を若干量添加しても構わない。
【0020】
本発明では、前記害虫侵入防止成分を担持させる樹脂としては、害虫侵入防止成分を安定して徐放する性能を有する限り、特に限定されないが、エチレン共重合樹脂、合成ゴム系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、パラフィンワックス樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を適宜用いることができる。
【0021】
なかでも、樹脂に害虫侵入防止成分を担持させた樹脂層は、その薬剤揮散面側に前記害虫侵入防止成分について透過性を有する薬剤透過性シートが積層され、一方、その貼着面側に前記害虫侵入防止成分について非透過性かつ非吸着性である薬剤非透過性シート層が積層されてなるものが好適である。かかる害虫侵入防止成分含有樹脂層を形成する樹脂としては、エチレン共重合体樹脂及び/又は合成ゴム樹脂を含有するホットメルト樹脂が好ましい。前記ホットメルト樹脂とは、加熱によって熱溶融液状化が可能であり、冷却すると再び固形状になる性状を有し、接着剤として利用可能な樹脂である。上記の二枚のシート層を接着させる樹脂としては、樹脂に害虫侵入防止成分が担持されているので、溶媒を揮発させる必要のないホットメルト樹脂が好適である。すなわち、エチレン共重合樹脂と合成ゴム樹脂との少なくとも一方を、害虫侵入防止成分を固定しシート層を接着させるための接着剤に含めて用いることで、害虫侵入防止成分が変質を起こす可能性を十分に低く抑えることができる。これらの樹脂は前記害虫侵入防止成分との反応性が低いため、混合しても前記ホットメルト樹脂が害虫侵入防止成分と反応しにくく、害虫侵入防止成分を長期間にわたって保存できる。
【0022】
ここで、エチレン共重合樹脂とは、エチレンと、これと共重合反応を起こすビニル基やビニリデン基などの反応基を有する他のモノマーとの共重合樹脂を意味し、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合樹脂(すなわち、エチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合樹脂)、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合樹脂などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」又は「メタクリル」を示す。その中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン-メタクリル酸メチル共重合樹脂を樹脂中に30質量%以上含むと、前述の効果が好適に発揮され望ましい。変質を抑えて保持された害虫侵入防止成分は、樹脂層中の含有量と薬剤透過性シートの透過性によって制御されながら徐放できる。更に、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン-メタクリル酸メチル共重合樹脂を樹脂中に30質量%以上含むと、前記害虫侵入防止成分との反応がより低くなるため好ましく、樹脂中に40質量%以上含むと一層好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン-メタクリル酸メチル共重合樹脂が樹脂中の全てを占めるものであるとより好ましい。なお、エチレン共重合樹脂の、エチレン単量体成分と酢酸ビニル(モノマー)やメタクリル酸メチル(モノマー)などの他の単量体成分とのモル比は、5:95~95:5であると好ましい。この範囲を外れると、エチレン共重合樹脂ではなく、単独重合体の性質が強くなりすぎ、発明の効果を発揮し得なくなる恐れがある。
【0023】
一方、前記合成ゴム樹脂とは、スチレン-ブタジエン-スチレン(以下、「SBS」と略する)ブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブテン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体が挙げられる。なお、前記合成ゴム樹脂の割合が増えると、積層シート断面でのブロッキングが生じやすくなるため、合成ゴム樹脂を単独で用いるよりも、前記エチレン共重合樹脂と併用してブロッキングを抑える方が好ましい。
【0024】
前記ホットメルト樹脂としては、前記エチレン共重合樹脂及び前記合成ゴム系樹脂以外に、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジンエステル系樹脂、パラフィンワックス樹脂を、その他の成分として含んでもよい。ただし、熱溶融工程での前記害虫侵入防止成分との相溶性、害虫侵入防止成分及び接着剤そのものの温度安定性、接着強度が好適なものでなければならない。
【0025】
前記ホットメルト樹脂の軟化点は、70℃以上であると好ましい。軟化点が前記範囲内にあると、高温環境で保管した場合でも、ブロッキングやデラミネーション、積層シート断面からの樹脂のブリードアウトなどが起こる可能性がより少なくなる。一方で、軟化点が180℃以下であることが好ましい。軟化点が前記範囲内にあると、前記樹脂層を形成させるために熱溶融液状化にする際に、前記害虫侵入防止成分が反応して薬効が失われる可能性がより少なく優れたものとなる。なお、ここで軟化点は環球法による。
【0026】
前記樹脂層を形成する前記害虫侵入防止成分と前記樹脂との配合質量比率は、5:95~50:50であるのが好ましく、5:95~30:70であるとより好ましく、10:90~20:80がさらに好ましい。前記範囲内にあることで、害虫侵入防止効果、接着力、及び光等の耐候性により優れたものとなる。
【0027】
前記樹脂層の厚みは、特に限定されないが、40~400μmであることが好ましく、50~200μmであることがより好ましく、60~150μmであることがさらに好ましい。前記範囲内にあることで、害虫侵入防止効果、及び光等の耐候性により優れたものとなる。
【0028】
更に、前記樹脂層には、前記害虫侵入防止成分と前記樹脂の他に、害虫侵入防止成分を変質させず、かつ揮散を著しく妨げないものであれば、その他の各種成分を追加してもよい。例えば、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、分散剤、香料、顔料、染料などが挙げられる。これらの成分は、上記の熱溶融液状化した混合物を調製する際に混合しておくとよい。
【0029】
前記顔料又は染料として、特に限定されないが、白色、青色、赤色、黄色、緑色等の顔料又は染料が挙げられる。白色の顔料又は染料としては、酸化チタンであるチタンCR97等が挙げられる。青色の顔料又は染料としては、ダイピロキサイドカラーブルー9453(大日精化工業社製)、Fastogen Blue 5485(大日本インキ化学工業社製)、Fastogen Blue RS(大日本インキ化学工業社製)、シアニンブルー5240KB(大日精化工業社製)、SUMIPLAST BLUE OA(住化ケムテックス株式会社製)等が挙げられる。赤色の顔料又は染料としては、トダカラー120ED(戸田工業社製)、Fastogen Super Magenta RH(大日本インキ化学工業社製)、Fastogen Red 7100Y(大日本インキ化学工業社製)、ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。黄色の顔料又は染料としては、Symuler Fast Yellow 4192(大日本インキ化学工業社製)、シコパールイエロー L-1110(BASF社製)等を挙げることができる。緑色の顔料又は染料としては、ダイピロキサイドカラーグリーン9310(大日精化工業社製)、ファーストゲングリーン2YK(大日本インキ化学工業社製)、リオノールグリーン6YKP-N(東洋インキ製造社製)等が挙げられる。この場合、前記顔料又は染料の含有量は、特に限定されないが、前記害虫侵入防止成分に対して0.005~5重量%であると望ましい。
【0030】
本発明のシート製品の薬剤揮散面側の色は、特に限定されないが、例えば、青色(濃青色、青色、薄青色、水色等を含む)、緑色(濃緑色、緑色、薄緑色等を含む)、黄色(濃黄色、黄色、薄黄色等を含む)、赤色(濃赤色、赤色、薄赤色、桃色等を含む)、白色が挙げられる。これらの中でも、青色(濃青色、青色、薄青色、水色等を含む)、緑色(濃緑色、緑色、薄緑色等を含む)、白色であることが好ましく、青色(青色、濃青色、水色、薄青色等を含む)、又は白色であることがより好ましい。なお、本明細書における各色は、JIS Z 8102(2001 物体色の色名)に準ずるものとする。
【0031】
次に、積層タイプの害虫侵入防止用シート製品を構成する各シート層について説明する。害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層は、その薬剤揮散面側に前記害虫侵入防止成分について透過性を有する薬剤透過性シートが積層されているもの、又は、その薬剤揮散面側に前記害虫侵入防止成分について透過性を有する薬剤透過性シートが積層され、一方、その貼着面側に前記害虫侵入防止成分について非透過性かつ非吸着性である薬剤非透過性シート層が積層されてなるもの等が挙げられる。
なかでも、害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層は、その薬剤揮散面側に前記害虫侵入防止成分について透過性を有する薬剤透過性シートが積層され、一方、その貼着面側に前記害虫侵入防止成分について非透過性かつ非吸着性である薬剤非透過性シート層が積層されてなるものが好適である。
【0032】
前記薬剤非透過性シート層としては、前記害虫侵入防止成分について非透過性かつ非吸着性のシート層が用いられる。これは、薬剤透過性シート層から害虫侵入防止成分を揮散させる場合、反対面の薬剤非透過性シート層からの揮散を防いだ方が有用だからである。なお、非透過性とは完全に透過させないものだけではなく、わずかに透過するとしても害虫侵入防止成分の薬効を発揮する程度の量までは透過しないものも含む。
【0033】
前記薬剤非透過性シート層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル製シートや、アクリロニトリル、アルミ箔、ポリアミドなどからなるシートを挙げることができる。
【0034】
前記薬剤非透過性シート層の厚さは、5μm以上が好ましく、10μm以上であるのがより好ましく、20μm以上であるとさらに好ましい。前記範囲内にあることで、上記の材質であっても前記害虫侵入防止成分を透過させてしまう恐れがなく、強度が不足して傷を生じ、その傷から害虫侵入防止成分を揮散させてしまう可能性が無視できるものとなる。一方、厚ければその分透過性が低減されるので、透過の点から特に上限は無いが、重量や剛性を好適に調整できる観点から150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、70μm以下であるとさらに好ましい。
【0035】
前記薬剤透過性シート層としては、前記害虫侵入防止成分について透過性を有するシート層が用いられ、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸などの生分解性の樹脂や、塩化ビニルなどの各種のフィルムが例示される。これらの中でも害虫侵入防止成分を効果的に浸透、透過することができるポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0036】
前記薬剤透過性シート層は、その厚みを変えることにより、前記害虫侵入防止成分が浸透、透過する速度を制御することができる。害虫侵入防止成分の含有量にもよるが、ほとんどの場合、5~150μmであるとよく、10~100μmであるとより好ましく、20~70μmであるとさらに好ましい。前記範囲内にあることで、熱溶融させた混合物をコーティングする際に変形したり破れたりする可能性や、保管中及び使用中にピンホールが開いたり破れたりする可能性が無視できるものとなり、また、透明性が損なわれたり、剛性が高くなりすぎたりすることもない。
【0037】
これらの薬剤透過性シート層としてポリオレフィンを使用し、前記害虫侵入防止成分として、例えば、プロフルトリンやエムペントリンを用いた場合には、1ヶ月~4ヶ月程度の使用期間を設定できるので特に好ましい。このポリオレフィンからなるシートとしては、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどが例示される。これらのピレスロイド系化合物は、前記薬剤透過性シート層に浸透、透過して表面から揮発する。
【0038】
また、前記薬剤性透過性シート層は、揮散性を適宜変更するため、前後の面を貫く孔を人為的に空けた有孔シートを用いることも出来る。この孔の直径は適宜調整できるものであるが、100~500μm程度の間で調整するとよい。なお、このような有孔フィルムとする場合には、薬剤透過性シートを構成する樹脂自体が薬剤非透過性であっても、孔を通じて前記害虫侵入防止成分を透過できるので、材料選択の幅が広がる。ただし、樹脂自体が透過性である有孔ポリオレフィン系シートを用いる方が、調整が容易であり利用しやすい。更に、薬剤透過性シート層としては、種々の不織布を用いることができる。このような不織布の材質としては、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、又はそれらの混抄品などを例示することが出来る。なお、このような不織布とする場合には、前記繊維を絡み合わせて布状とした不織布自体がその構造特性上不透明な白色であるため、前記害虫侵入防止成分を樹脂に担持させた樹脂層および不織布に染料や顔料を含まなない場合は前記シート製品の薬剤揮散面側の色は白色となる。
【0039】
前記薬剤透過性シート層として前記有孔シート及び/又は不織布を使用し、例えば、メトフルトリンやトランスフルトリンを用いる組み合わせは、同様に1ヶ月~4ヶ月程度の使用期間を設定するうえで好適である。これらの薬剤は、フィルムから浸透・透過することに加えて、孔の部分、又は不織布の間隙からも揮散することで十分な徐放性を確保する。
【0040】
前記樹脂層とこれらの前記各シート層とから、この発明にかかる害虫侵入防止用シート製品を形成させる方法としては、前記シート層の一方に、熱溶融液状化させた前記樹脂混合物を塗工し、その混合物が固まる前に、シート層の他方を積層させる、あるいは、前記シート層の一方に、熱溶融液状化させた前記樹脂混合物を塗工し、樹脂の固化後に、シート層の他方を積層させる等の一般的な方法を用いることができる。最初に塗工するシート層は、前記薬剤非透過性シート層でも前記薬剤透過性シート層でもよいが、シワが発生し難いなどの理由から薬剤非透過性シート層に塗工する方が好ましい。
【0041】
こうして調製された本発明の害虫侵入防止用シート製品の大きさとしては、適宜選択して使用することが出来るが、使用する場所により、2cm×2cm~30cm×30cm程度の大きさとすれば使い易い。
【0042】
本発明の害虫侵入防止用シート製品は、前記薬剤非透過性シート層の樹脂層とは反対側の面に、粘着剤からなる粘着剤層を設け、その上に更に、その粘着剤と剥離可能なセパレーターを貼着した実施形態とすることが出来る。(すなわち、前記薬剤非透過性シート層は、樹脂層と粘着剤層との間に積層されており、その粘着剤層上に前記粘着剤と剥離可能であるセパレーターが貼着される。)この実施形態の場合、害虫侵入防止用シート製品は、前記セパレーターを剥がして、前記粘着剤層の接着効果により各種の窓ガラスの外面等に貼着することができる。
【0043】
これらに使用される粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤など各種の粘着剤が例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。ただし、これらの粘着剤は、前記害虫侵入防止成分が吸着しても変質しないものが必要である。また、粘着剤の代わりに両面粘着テープを使用することも可能である。またセパレーターについては、紙やフィルム材質のものなど一般的なセパレーターとして各種のセパレーターが例示されるが、特にこれらに限定されない。
また、前記粘着剤層にも、前記樹脂層と同様に、その他の成分を含有させてもよい。例えば、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、分散剤、香料、顔料、染料などが挙げられる。
【0044】
本発明は、本発明の害虫侵入防止用シート製品を店舗や家屋等といった建物の窓ガラスの外面等に設置し、害虫侵入防止用シート製品から1~400mg/日/m2、好ましくは2~200mg/日/m2の割合で害虫侵入防止成分を揮散させ、店舗や家屋等といった建物内への害虫の侵入を1ヶ月~4ヶ月程度にわたり防止することを特徴とする。ここで、設置方法としては、前述の粘着剤層を用いて貼着して使用するものである。
【0045】
本発明の害虫侵入防止用シート製品を保管するにあたっては、その周囲を包装密封することによって、密封した容器内で上記害虫侵入防止成分の蒸気を飽和させ、それ以上の上記樹脂層からの揮散を防ぐことができる。そして、使用時に開封し、店舗や家屋等といった建物の窓ガラスの外面等に施用すれば良い。
【0046】
本発明の害虫侵入防止用シート製品の使用場所としては、飛来害虫、匍匐害虫等の害虫の店舗や家屋等といった建物内への侵入を防止するという目的を達成することができれば、特に限定されないが、コンビニエンスストア、レストラン、スーパーマーケット等の店舗のドア、自動ドア、ガラス製のドア、ガラス製の自動ドア、窓ガラス、暖簾等が挙げられるが、目立ちにくく、光安定性に優れるので、ガラス製のドア、ガラス製の自動ドア、窓ガラス等の外面での使用に適している。
【0047】
本発明の害虫侵入防止方法によれば、店舗や家屋等といった建物内への害虫の侵入を確実に防止することができる。対象とする害虫としては、蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、チョウバエ類、イガ類、カメムシ類、コバエ類等の飛来害虫に加えて、匍匐害虫であるゴキブリ類、アリ類(クロアリ、アカアリ、アミメアリ、ヒアリ等を含む)、チャタテムシ、シバンムシ、コクゾウムシ、カツオブシムシ、ダニ類等のほかヤスデ、ヨトウムシ、サシバエ、サンドフライ、ヌカカ、シラミ、ヒメカツオブシムシ、ナンキンムシ、シミ、ゲジゲジ、ワラジムシ、ダンゴムシ、ムカデ、ナメクジ等が挙げられるが、蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、チョウバエ類、イガ類、カメムシ類、コバエ類等の飛来害虫を対象にするのに適している。
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明の害虫侵入防止用シート製品について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0049】
[製造例]
(実施例1)
害虫侵入防止成分であるメトフルトリン、及び樹脂[エチレン-メタクリル酸メチル共重合樹脂:住友化学(株)製「WH303」軟化点146℃、以下「EMMA」と略記]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[ポリエチレンテレフタレート製フィルム:ユニチカ(株)製「エンブレット」、厚さ;50μm、以下「PET-A」と略記]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりメトフルトリン量が0.2gになるように塗工した。
樹脂の固化後、薬剤透過性シート層[ポリエチレンテレフタレート製不織布:ユニセル(株)製「RT-0113W」、目付60g/m2、厚さ120μm、以下「不織布」と略記]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層を設け、実施例1の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は白色であった。当該害虫侵入防止用シート製品を3cm×3cmに裁断し、JIS A 5759に基づき、前記シート製品の前記貼着面側をガラス板(JIS R 3202フロート板ガラス、厚さ3mm、日本板硝子(株)製)に貼着させて試験片を作製し、前記薬剤揮散面側の外面を光源に向け300~2500nmの波長域における分光反射率を測定して日射反射率を求めるとき、日射反射率が35%であった。
【0050】
(実施例2)
害虫侵入防止成分であるトランスフルトリン、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりトランスフルトリン量が0.2gになるように塗工した。
樹脂の固化後、薬剤透過性シート層[不織布]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層を設け、実施例2の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は白色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、35%であった。
【0051】
(実施例3)
害虫侵入防止成分であるトランスフルトリン、及び樹脂[エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂:アロンエバーグリップリミテッド製「エバーグリップ PK222」、軟化点79℃、エチレン-酢酸ビニル共重合体含有率:40%]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、130℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[ポリエチレンテレフタレート製フィルム:ユニチカ(株)製「エンブレット」、厚さ25μm、以下「PET-B」と略記]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりトランスフルトリン量が0.2gになるように塗工した。
樹脂の固化後、薬剤透過性シート層[不織布]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-B]の裏面に粘着剤層を設け、実施例3の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は白色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、35%であった。
【0052】
(実施例4)
害虫侵入防止成分であるメトフルトリン、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=30:70(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりメトフルトリン量が0.2gになるように塗工した。
樹脂の固化後、薬剤透過性シート層[不織布]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層を設け、実施例4の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は白色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、35%であった。
【0053】
(実施例5)
害虫侵入防止成分であるメトフルトリン、青色染料、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりメトフルトリン量が0.2g、青色染料の量が0.002gとなるよう塗工した。
樹脂の固化後、薬剤透過性シート層[不織布]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層を設け、実施例5の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は青色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、29%であった。
【0054】
(実施例6)
害虫侵入防止成分であるメトフルトリン、緑色染料、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりメトフルトリン量が0.2g、緑色染料の量が0.01gとなるよう塗工した。
樹脂の固化後、樹脂層の上に薬剤透過性シート層[不織布]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層を設け、実施例6の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は緑色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、17%であった。
【0055】
(実施例7)
害虫侵入防止成分であるメトフルトリン、白色顔料、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりメトフルトリン量が0.2g、白色顔料の量が0.002gとなるよう塗工した。
その混合物が固まる前に、薬剤透過性シート層[有孔ポリプロピレン製フィルム:ニダイキ(株) 製、 「機孔I」、厚さ30μm、直径250μmの孔が25cm2当たり200個空いている]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層とセパレーターを設け、実施例7の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は白色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、43%であった。
【0056】
(実施例8)
害虫侵入防止成分であるプロフルトリン、白色顔料、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりプロフルトリン量が0.4g、白色顔料の量が0.004gになるように塗工した。
その混合物が固まる前に、薬剤透過性シート層[ポリエチレン製フィルム:東洋紡績(株)製「リックス」、厚さ50μ m 、以下「PE50」と略記]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層とセパレーターを設け、実施例8の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は白色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、42%であった。
【0057】
(実施例9)
害虫侵入防止成分であるプロフルトリン、白色顔料、及び樹脂[合成ゴム接着剤:旭化成(株)製SBSブロック共重合体「タフプレンA」、軟化点96 ℃]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、130℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりプロフルトリン量が0.4g、白色顔料の量が0.004gになるように塗工した。
その混合物が固まる前に、薬剤透過性シート層[PE50]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層とセパレーターを設け、実施例9の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は白色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、43%であった。
【0058】
(比較例1)
害虫侵入防止成分であるメトフルトリン、黒色染料、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりメトフルトリン量が0.2g、黒色染料の量が0.02gとなるよう塗工した。
樹脂の固化後、薬剤透過性シート層[不織布]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層を設け、比較例1の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は黒色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、9%であった。
【0059】
(比較例2)
害虫侵入防止成分であるプロフルトリン、及び樹脂[EMMA]を、害虫侵入防止成分:樹脂=15:85(質量比)の割合で、190℃にまで加熱溶融させて混合後、薬剤非透過性シート層[PET-A]の表面に、シート面積(10cm×10cm)あたりプロフルトリン量が0.4gになるように塗工した。
その混合物が固まる前に、薬剤透過性シート層[PE50]を樹脂層の上に貼り、更に[PET-A]の裏面に粘着剤層とセパレーターを設け、比較例2の害虫侵入防止用シート製品を得た。当該害虫侵入防止用シート製品の薬剤揮散面側の色は無色であった。当該害虫侵入防止用シート製品の日射反射率は、実施例1と同様の方法で求めるとき、7%であった。
【0060】
[試験例]
実施例1~9、及び比較例1~2の害虫侵入防止用シート製品を用いて、以下に示す方法で光安定性試験、視認性評価試験、侵入防止効果評価試験をそれぞれ実施した。試験結果は表1に示す。
<光安定性評価試験>
実施例1の害虫侵入防止用シート製品を3cm×3cmに裁断したものを2つ準備した(試験サンプル1、試験サンプル2とする。)。それぞれ別のガラスサンプル管に密閉した。試験サンプル1を日光下で90日保管し、試験サンプル2を遮光下で90日保管した。その後、試験サンプル1及び試験サンプル2をそれぞれアセトンで抽出し、ガスクロマトグラフィーにより分析して有効成分の回収率を求め、下記の式(1)により、光下/遮光下での有効成分回収率比を算出した。
有効成分回収率比(%)=(試験サンプル1の有効成分の回収率)/(試験サンプル2の有効成分の回収率)×100・・・式(1)
さらに、実施例2~9、及び比較例1~2でも同様の試験を行い、光下/遮光下での有効成分回収率比を算出し、試験結果を以下の基準で評価した。
(評価基準)
A;90%<(有効成分回収率比)≦100%
B;85%<(有効成分回収率比)≦90%
C;(有効成分回収率比)≦85%
【0061】
<視認性評価試験>
実施例1~9、及び比較例1~2の害虫侵入防止用シート製品を、それぞれ10cm×10cmに裁断し、建物の1階の窓に貼り付けた。20~60代の10名の男女に建物からおよそ3m離れた1階の外から1階の窓を見てもらい、害虫侵入防止用シート製品の視認性を以下基準で点数を回答してもらった。(3点;窓に貼り付けても目立たない。2点;窓に貼り付けるとほとんど目立たない。1点;窓に貼り付けると少し目立つ。)10名の点数を集計した平均点を以下の基準で評価した。
(評価基準)
A;2.5点<(平均点)≦3.0点
B;1.5点<(平均点)≦2.5点
C;1.0点≦(平均点)≦1.5点
【0062】
<侵入防止効果評価試験>
引き違い窓(縦80cm×横80cmが2枚)を有する6畳の部屋において、実施例1の害虫侵入防止用シート製品を10cm×30cmに裁断し、窓の外面に貼り付けた。50日後、及び90日後に6畳の部屋の窓付近に高さ1mの位置に2つの粘着トラップ(20cm×20cm)を空中に吊るし、開口面積が約6400cm2となる状態で窓を24時間開放した。24時間後に、各粘着トラップに捕まった飛来害虫数を計数した。また、害虫侵入防止用シート製品を貼り付けていない同じ造りの部屋でも同様の試験を行った。害虫侵入防止用シート製品を貼り付けていない無処理対照区の捕獲虫数(匹)をC、害虫侵入防止用シート製品を貼り付けた処理区の捕獲虫数(匹)をTとして、下記の式(2)により飛来害虫それぞれの忌避率を求めた。
忌避率(%)={(C-T)/C}×100・・・式(2)
実施例2~9、及び比較例1~2でも同様の試験を行って、試験結果を以下の基準で評価した。
(評価基準)
A;80%<(忌避率)≦100%
B;60%<(忌避率)≦80%
C;(忌避率)≦60%
【0063】
【0064】
表1の試験結果より、日射反射率が15%以上である実施例1~9の害虫侵入防止用シート製品はいずれも、光安定性評価試験、視認性評価試験、侵入防止効果試験において良好な結果(全てB以上の評価)を示した。さらに、日射反射率が20%以上であり、害虫侵入防止成分がメトフルトリン及び/又はトランスフルトリンである実施例1~5、及び実施例7の害虫侵入防止用シート製品では、使用90日後の侵入防止効果試験においても優れた効果を示した。中でも、日射反射率が30%以上であり、害虫侵入防止成分がメトフルトリン及び/又はトランスフルトリンであり、樹脂層を形成する害虫侵入防止成分と樹脂との配合質量比率が、10:90~20:80である実施例1~3、及び実施例7の害虫侵入防止用シート製品は光安定性試験、視認性評価試験、侵入防止効果試験のいずれにおいてもとりわけ良好な結果を示した。
【0065】
一方、日射反射率が15%未満であり、害虫侵入防止成分がメトフルトリンである比較例1では、光安定性評価試験、視認性評価試験、使用90日後の侵入防止効果評価試験において不十分な結果となった。また、日射反射率が15%未満であり、害虫侵入防止成分がプロフルトリンである比較例2では、光安定性評価試験、使用50日後及び使用90日後の侵入防止効果評価試験において不十分な結果となった。