(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112497
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】同期化された高周波チップを備えたMIMOレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20220726BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20220726BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01S7/40 126
G01S7/03 230
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006103
(22)【出願日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】10 2021 200 520.9
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト・レッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ショール
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021HA04
5J021HA10
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD08
5J070AF03
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK04
(57)【要約】
【課題】チップ間の位相偏移をセンサ使用中に測定可能なMIMOレーダセンサを提供する。
【解決手段】所定の方向(x)に相互にずれている送信/受信アンテナ素子(TX、RX)のアレイと、送信/受信アンテナ素子の異なる選択に割り当てられた少なくとも2つの電子チップC1、C2とを備えたMIMOレーダセンサであって、少なくとも1つの受信アンテナ素子R0が両方のチップC1、C2と接続可能であり、アレイがアンテナ素子コンフィグレーションを有し、コンフィグレーションが、チップC1が割り当てられた送信アンテナ素子T1と、チップC1が割り当てられた受信アンテナ素子R1と、チップC2が割り当てられた送信アンテナ素子T2と、チップC2が割り当てられた受信アンテナ素子R2とからなり、コンフィグレーションでは、送信アンテナ素子T1とT2との間のずれが受信アンテナ素子R1とR2との間のずれと一致する、MIMOレーダセンサ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向(x)に相互にずれている送信および受信アンテナ素子(TX、RX)のアレイと、前記送信および受信アンテナ素子の異なる選択に割り当てられている少なくとも2つの電子チップC1およびC2とを備えたMIMOレーダセンサであって、少なくとも1つの受信アンテナ素子R0が両方のチップC1およびC2と接続可能であること、ならびに前記アレイが、少なくとも1つのアンテナ素子コンフィグレーションを有し、前記コンフィグレーションが、前記チップC1が割り当てられている送信アンテナ素子T1と、前記チップC1が割り当てられている受信アンテナ素子R1と、前記チップC2が割り当てられている送信アンテナ素子T2と、前記チップC2が割り当てられている受信アンテナ素子R2とからなり、かつ前記コンフィグレーションでは、前記送信アンテナ素子T1とT2との間のずれが、前記受信アンテナ素子R1とR2との間のずれと一致することを特徴とする、MIMOレーダセンサ。
【請求項2】
前記チップC1およびC2が同時に前記受信アンテナ素子R0により受信する2つの信号の間の位相差(DELTA_RX)を測定するためにコンフィグレーションされている制御および評価機構(D)を備えた、請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
前記制御および評価機構(D)が、一方は前記送信アンテナ素子T1が送信する場合に前記受信アンテナ素子R2により受信され、もう一方は前記送信アンテナ素子T2が送信する場合に前記受信アンテナ素子R1により受信される2つの信号間の位相差を測定するためにコンフィグレーションされている、請求項2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
前記制御および評価機構(D)が、測定された位相差から、前記アレイの仮想アンテナ素子(VX)間の位相の違いのための補正値を計算し、かつ補正された位相の違いに基づいて角度推定を行うためにコンフィグレーションされている、請求項3に記載のレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に相互にずれている送信および受信アンテナ素子のアレイと、送信および受信アンテナ素子の異なる選択に割り当てられている少なくとも2つの電子チップC1およびC2とを備えたMIMOレーダセンサに関する。
【0002】
本発明はとりわけ自動車用のレーダセンサを取り扱う。
【背景技術】
【0003】
自動車用の運転者支援システムにおける周辺環境監視では、測位されたレーダ目標の間隔および相対速度と共に、これらの目標の方位角および仰角も重要である。例えば方位角についての情報は、オブジェクトを車道の特定の車線に割り当て得るために必要とされる。仰角についての情報は、オブジェクトがその上もしくは下を走行可能であるかどうかまたは重要な障害物であるかどうかの推定を可能にする。これらの目標の方位角および仰角は、受信アンテナ素子の信号の振幅および/または位相の違いから確定され得る。MIMO原理(Multiple Input Multiple Output)に基づき、受信アンテナ素子は、例えば時分割多重または周波数分割多重において、様々な送信アンテナ素子と組み合わされる。各組合せが1つの仮想アンテナ素子に相当し、この仮想アンテナ素子の、別の1つの仮想アンテナ素子に対するずれは、関与する受信アンテナ素子および関与する送信アンテナ素子のずれからの足し算から構築されている。仮想アレイは、現実のアレイより大きなアパーチャを有することができ、よってより高い角度分解能を可能にする。
【0004】
アレイが、非常に大きな数の送信および受信アンテナ素子を有する場合、相応なより大きい仮想アレイを生成でき、かつ相応なより高い角度分解能が達成され得る。ただしこの場合、多数の送信アンテナ素子内への送信信号の供給および数多くの受信アンテナ素子の受信信号の評価は、ただ1つの組み込まれた電子部品だけではもう片づけられない。この場合、レーダセンサの高周波部は、複数の組み込まれたモジュール、例えばここでは簡単に「チップ」と呼ぶMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)を有さなければならない。理想的な場合には、これらのチップが完璧に同期して働くのが望ましく、したがって受信信号間の位相差は、専らレーダ信号の異なる伝播時間によって、かつそれにより測定すべき角度によって決定されており、様々なチップ間での位相差に依存することはない。しかしながら実際には、例えば製造公差に基づいて、それにまたチップごとの温度差に基づいておよび/または異なる経過をたどる老朽化プロセスに基づいて、様々なチップ間で位相差が発生し得る。これによりこれらの位相差は一般的には経時的に一定ではなく、よってチップの1回の較正によって取り除くことはできない。
【0005】
WO2019/170277A1では、複数のMMIC間での位相のオンライン較正方法が説明され、この方法では、チップの温度が温度センサによって測定され、その後、チップの温度依存性のモデルに基づく位相が補正される。
【0006】
DE102014208899A1は、レーダ測定データおよび測定されたアンテナ放射パターンの相違に基づくオンライン較正方法を説明する。
C.Schmidら、「Motion Compensation and Efficient Array Design for TDMA FMCW MIMO Radar Systems(TDMA FMCW MIMOレーダシステムのためのモーション補正と効率的なアレイ設計)」、6th European Conference on Antennas and Propagation(EUCAP)、2012年3月、1746~1750頁は、重なり合う仮想チャネルを有するアンテナ構成を説明し、この構成は、1つの同じMMICの2つの送信アンテナ間の位相ずれを、測定された相対速度に基づいて補正することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2019/170277A1
【特許文献2】DE102014208899A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.Schmidら、「Motion Compensation and Efficient Array Design for TDMA FMCW MIMO Radar Systems(TDMA FMCW MIMOレーダシステムのためのモーション補正と効率的なアレイ設計)」、6th European Conference on Antennas and Propagation(EUCAP)、2012年3月、1746~1750頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、チップ間の位相偏移をレーダセンサの使用中に直接的に測定可能なMIMOレーダセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば、少なくとも1つの受信アンテナ素子R0が両方のチップC1およびC2と接続可能であること、ならびにアレイが、少なくとも1つのアンテナ素子コンフィグレーションを有し、コンフィグレーションが、チップC1が割り当てられている送信アンテナ素子T1と、チップC1が割り当てられている受信アンテナ素子R1と、チップC2が割り当てられている送信アンテナ素子T2と、チップC2が割り当てられている受信アンテナ素子R2とからなり、かつコンフィグレーションでは、送信アンテナ素子T1とT2との間のずれが、受信アンテナ素子R1とR2との間のずれと一致することによって解決される。
【0011】
チップが送信または受信アンテナ素子に「割り当てられ」ているという記述は、ここでは、送信アンテナ素子がチップによって供給されるように、またはチップが受信アンテナ素子の受信信号を処理するように、レーダセンサを動作させることを意味する。チップ間の位相差は、送信チャネル部分DELTA_TXおよび受信チャネル部分DELTA_RXから構築される。この両方の部分は、当該の仮想アンテナ素子に関してチップがまさに送信するのか、受信するのか、または送信および受信するのかに依存したチップ内での異なる信号経路に基づいて生じる。
【0012】
本発明によれば、少なくとも1つのアンテナ素子R0は両方のチップC1およびC2と接続可能なので、チップの1つ、例えばチップC1だけが送信する状態では、両方のチップ内で得られた受信信号の位相を相互に比較することにより、受信チャネル部分DELTA_RXが測定され得る。両方の信号に関して送信チャネル部分は同じなので、測定された位相差は受信チャネル部分DELTA_RXのはずである。
【0013】
送信アンテナ素子T1とT2との間のずれは受信アンテナ素子R1とR2との間のずれと一致するので、4つのアンテナ素子T1、R1、T2、R2のコンフィグレーションは、送信アンテナ素子T1と受信アンテナ素子R2との組合せが、送信アンテナ素子T2と受信アンテナ素子R1との組合せと同じ仮想アンテナ素子を生じさせるという点で冗長である。よってチップごとの位相差がない場合、目標の測位角度には依存せず、両方の組合せで同じ位相が得られるはずである。ここで、これらの両方の組合せで実際に測定される位相を相互に比較すると、チップ間の総位相差DELTA_TX+DELTA_RXが得られる。これにより、受信チャネル部分DELTA_RXも、両方の部分の合計も既知であるので、送信チャネル部分DELTA_TXも計算される。その後、これらの既知である部分DELTA_RXおよびDELTA_TXを用いて、各仮想アンテナ素子のために、つまり送信および受信アンテナ素子の各組合せのために、その組合せにおいて両方のチップのどちらが送信して、どちらのチップが受信された信号を処理するかには依存せず、位相差が補正される。
【0014】
以下に、1つの例示的実施形態を図面に基づいてより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるMIMOレーダセンサのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面は、簡略化した例として、2つの送信アンテナ素子TXおよび7つの受信アンテナ素子RXを具備するアンテナアレイを備えたMIMOレーダセンサ(FMCWレーダ)を示す。受信アンテナ素子RXは方向xにおいて、示した例ではそれぞれ同じ間隔で相互にずれている。方向xが水平方向の場合、(ある特定の間隔セルおよび速度セル内の)与えられたレーダ目標に関し、7つの受信アンテナ素子内で受信される信号の位相の比較により、レーダ目標の方位角が(ある程度の精度限界内で)測定され得る。方向xが鉛直方向の場合、相応な目標の仰角が測定され得る。
【0017】
図1では、レーダセンサによって測位され得るレーダ目標Zが象徴的に示されている。実際には目標Zは、アンテナアレイの平面に対して図平面に垂直な方向にかなりの間隔を有している。例として、ここでは、レーダセンサが目標Zの方位角を測定し得るように方向xが水平方向であると仮定している。さらに、図面内で認識可能な、一方での送信アンテナ素子TXと他方での受信アンテナ素子RXとの間の鉛直方向のずれが、信号伝播長への影響を有さないように、目標が鉛直方向に広がっていると仮定している。これにより信号伝播長は、方向xでのアンテナ素子のずれによってのみ決定される。
【0018】
両方の送信アンテナ素子TXは、区別し易くするためにラベルT1またはT2で表されている。送信アンテナ素子T1が信号を送信し、上記信号が目標Zで反射され、その後、受信アンテナ素子RXの1つによって受信される場合、信号伝播路のx成分は、方向xでの送信アンテナ素子T1と目標Zとの間隔および方向xでの目標Zと受信アンテナ素子RXとの間隔からの合計に相応する。これに対し、レーダ信号が送信アンテナ素子T1ではなく送信アンテナ素子T2によって送信される場合、すべての信号伝播路が、同じ数値分、つまり送信アンテナ素子T1とT2との間隔分だけ減少する。
【0019】
図面では、送信および受信アンテナ素子のすべての組合せのための異なる信号伝播路が、仮想アレイVXによって表される。最初の7つの仮想アンテナ素子V1~V7は、目標Zに対し、現実の受信アンテナ素子RXと同じ間隔を有し、かつそれにより、信号が送信アンテナ素子T1によって送信される場合を表している。残りの仮想アンテナ素子では、目標Zに対する間隔が短くなっており、つまりT1とT2との間隔分だけ短くなっている。よってこれらの仮想アンテナ素子はT2で送信される場合に相当する。
【0020】
ここで示されたアンテナアレイの特殊性は、送信アンテナ素子T1とT2とが互いに対し、受信アレイ内の最初の受信アンテナ素子R1と最後の受信アンテナ素子R2と同じ間隔を有することにある。これにより結果として、仮想アンテナ素子V7がここでは2つの異なるやり方で、つまり一つにはT1での送信およびR2での受信によって、もう一つにはT2での送信およびR1での受信によって合成され得ることになる。この「冗長」に基づき、仮想アンテナアレイVXは、2×7=14個の素子ではなく、最大で13個、示された例では12個の素子のみ有する。よって最後の仮想アンテナ素子V12は、T2で送信され、かつ最後から2番目の受信アンテナ素子で受信される場合に相当する。
【0021】
送信信号を生成し、かつ送信アンテナ素子T1およびT2内に送信信号を供給するために、ならびに受信アンテナ素子RX内で受信された信号を処理するために、この例では2つの別々のチップC1およびC2が設けられており、これらのチップは例えばMMICであり得る。チップC1は、送信アンテナ素子T1に供給し、かつ第1の受信アンテナ素子R1で始まりここではR0で表された第4の受信アンテナ素子で終わる最初の4つの受信アンテナ素子の受信信号を処理する。チップC2は、送信アンテナ素子T2に供給し、かつ最後の4つの受信アンテナ素子R0~R2の受信信号を処理する。受信アンテナ素子R0の出力部は、電力分配器を介して両方のチップC1およびC2に接続されている(または少なくとも一時的に接続可能である)。
【0022】
制御および評価機構Dは、チップC1およびC2の動作を制御し、かつ様々な受信チャネル内で受信された信号を評価する。送信アンテナ素子T1およびT2は交互にアクティブ化され、したがって時分割多重において全部で12個の仮想アンテナ素子が測定され得る。FMCW原理に基づき、各アンテナ素子のために、受信された信号が中間周波数帯にダウンコンバートされ、デジタル化され、かつ1つの測定サイクル中ずっと時間信号として記録される。上記時間信号から高速フーリエ変換によってスペクトルが形成され、スペクトル内では、各々の測位された目標が、目標の間隔および相対速度に依存する周波数でのピークとして現れる。これらのデータに基づき、既知のやり方で、各々の測位された目標の間隔および相対速度が計算される。目標についての角度情報は、同じ測位された目標に関して様々な仮想アンテナ素子において得られる信号の複素振幅を比較することで得られる。このために、仮想アンテナ素子上への複素振幅の分布が、予め測定されて保存されたアンテナ放射パターンと比較される。
【0023】
チップC1およびC2の各々で、送信部内でも受信部内でもある程度の位相遅延が発生する。これらの信号遅延はチップごとに異なる可能性があり、例えばチップの温度に依存して変化し得るので、両方のチップ間で位相差が生じ、この位相差は、アンテナ放射パターンと比較する前に計算によって補正されなければならない。このために、両方のチップ間の位相差を時々測定する必要がある。
【0024】
この測定は、仮想アンテナ素子V7が、各測定サイクル内で2回、つまり1回はアンテナ組合せT1,R2で、および1回はアンテナ組合せT2,R1で測定されることによって可能になる。これらの両方の測定の際に得られた信号を比較すると総位相差DDが得られ、総位相差DDは、測位された目標の角度情報には依存せず、かつ4つの部分から構成されている。すなわち、
DD=DT1+DR2-DT2-DR1=DELTA_RX+DELTA_TX (1)
式中、DT1は、チップC1の送信部内の信号遅延に起因する部分であり、DR2は、チップC2の受信部内の信号遅延に起因する部分であり、DT2は、チップC2の送信部内の信号遅延に起因する部分であり、かつDR1は、チップC1の受信部内の信号遅延に起因する部分である。最初の2つの被加数は、T1およびR2で測定される場合の総信号遅延を決定し、ほかの2つの被加数は、T2およびR1で測定される場合の総信号遅延に相当する。
【0025】
仮想アンテナ素子V4は、組合せT1,R0に相当する。受信アンテナ素子R0は両方のチップに接続されているので、このアンテナ素子に対しては2つの信号が得られ、両方のチップの各々からそれぞれ1つの信号が得られる。両方の信号に関し、送信するチップC1の送信部内の信号遅延に起因する部分は同じなので、これらの両方の信号間の位相差はDR2-DR1と同じである。これにより位相差の測定は、総位相差の受信チャネル部分DELTA_RXをもたらす。
【0026】
これに対応して、組合せT2,R0に相当する仮想アンテナ素子V10に関しても2つの信号が得られる。よって選択的に、これらの両方の信号をDELTA_RXの測定のために使用してもよく、または両方の方式がチェックのために利用される。DELTA_RX=DR2-DR1と、DDとが既知であれば、方程式(1)に基づいて送信チャネル部分DELTA_TX=DT1-DT2も計算さすることができる。
【0027】
両方の量DELTA_RXおよびDELTA_TXを用いて、仮想アンテナ素子の各ペアのために、チップの位相差によって引き起こされる誤差が補正され得る。角度推定の際、例えば仮想素子V1およびV12の位相が比較される場合、V1に関してはチップC1で送信および受信され、しかしながらV12に関しては送信も受信もチップC2で行われるので、補正値はDELTA_TX+DELTA_RXである。これに対して仮想素子V1およびV6の位相を比較する場合、送信信号は両方の場合ともチップC1によるものであり、かつ受信信号だけが様々なチップから得られ、したがって補正値はDELTA_RXである。これに対して仮想素子V5およびV11の信号を比較する場合、両方の場合ともチップC2で受信され、しかし送信される信号は様々なチップによるものであり、したがって補正値はDELTA_TXである。
【0028】
決定された補正値DELTA_TXおよびDELTA_RXはそれぞれ、両方のチップC1およびC2のすべての送信または受信チャネルの間の位相関係に対して有効である。つまりこれらの補正値は、
図1では示されていない送信もしくは受信アンテナ組合せまたは仮想アンテナ素子にも適用され得る。
【0029】
上述の原理は、はるかにより大きな数の送信および受信アンテナ素子を備えたアンテナアレイへと一般化することができ、これらの送信および受信アンテナ素子は、水平方向にも鉛直方向にもずれていてもよく、かつ場合によってはアンテナ素子の制御のために3つ以上のチップが必要とされる。例えば全部で3つのチップC1、C2、およびC3が存在している場合、受信アンテナ素子R0に倣って接続されている受信アンテナ素子が少なくとも2つ存在しなければならず、かつアンテナ素子T1、T2、R1、およびR2のコンフィグレーションに相応するアンテナコンフィグレーションが少なくとも2つ存在しなければならない。それによりこの場合、2種のチップペア、例えば(C1,C2)および(C2,C3)のために位相差が測定される。この場合、ペア(C1,C3)の位相差は、それらの位相差の合計であり、しかしながら、アンテナアレイ内でR0に相当する3つの「分割される」アンテナ素子およびT1、T2、R1、R2に倣った3つの様々なコンフィグレーションが存在する場合、選択的に、直接的に測定してもよい。
【符号の説明】
【0030】
C1、C2 電子チップ
D 制御および評価機構
TX;T1、T2 送信アンテナ素子
RX;R0、R1、R2 受信アンテナ素子
VX;V1、V4、V7、V10、V12 仮想アンテナ素子
Z レーダ目標
DELTA_RX チップ間の位相差の受信チャネル部分
DELTA_TX チップ間の位相差の送信チャネル部分
x 所定の方向
【外国語明細書】