(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112504
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】SOEC及びSOFCのインターコネクトの湿式スプレーコーティング
(51)【国際特許分類】
C25B 1/042 20210101AFI20220726BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20220726BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20220726BHJP
H01M 8/0215 20160101ALI20220726BHJP
H01M 8/021 20160101ALI20220726BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20220726BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220726BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20220726BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20220726BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20220726BHJP
C23C 28/00 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
C25B1/042
H01M8/0228
H01M8/12 101
H01M8/0215
H01M8/021
H01M8/0206
H01M8/12 102A
C25B9/00 A
C25B13/07
C25B13/04 301
C25B9/23
C23C28/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006997
(22)【出願日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/139,907
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/579,416
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング,タッド
(72)【発明者】
【氏名】クフラナ,サンチット
(72)【発明者】
【氏名】ル,ヅグウェ
【テーマコード(参考)】
4K021
4K044
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA15
4K021DB40
4K021DB43
4K021DB53
4K044AA02
4K044BA12
4K044BB01
4K044BB03
4K044CA18
4K044CA24
5H126AA14
5H126BB06
5H126EE03
5H126GG02
5H126GG08
5H126GG13
5H126HH04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属インターコネクトの構成成分のクロミア形成に関連して発生するSOFCスタックの劣化を回避するための、インターコネクトのコーティング方法を提供する。
【解決手段】SOEC又はSOFCのインターコネクトをコーティングする方法を利用するシステム、デバイス、及び方法であり、コーティングの粉末状前駆体をインターコネクト上に湿式スプレーすること、及びインターコネクトを酸化雰囲気で焼結してコーティングを形成することを含む方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物電解セル(SOECs)又は固体酸化物燃料電池(SOFCs)のインターコネクトのコーティング方法であって、
コーティングの粉末状前駆体をインターコネクト上に湿式スプレーすること、及び
前記インターコネクトを酸化雰囲気で焼結して前記コーティングを形成することを含む、方法。
【請求項2】
前記粉末状前駆体は、Cu、Mn、Co、Fe及び/又はNiから選択される少なくとも2つの金属を含むスピネルの粉末状前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングは、Cu、Mn、Co、Fe及び/又はNiから選択される少なくとも2つの金属の酸化物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼結は、SOECs又はSOFCsのスタックにおいてイン・サイチュで行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記インターコネクトは、クロム-鉄合金を含み、Cu、Fe、又はNiの少なくとも1つの酸化物を含むスピネルコーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティングは、Mn又はCoの少なくとも1つをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングは、開放気孔のない準稠密なコーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングは、閉鎖気孔を有する緻密なコーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化雰囲気は、空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記焼結は、SOFC又はSOECスタックにおいてイン・サイチュで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記インターコネクトを焼結し、前記インターコネクトが、酸化されることなく焼結された後に、前記インターコネクトに前記コーティングの前記湿式スプレーが塗布され、前記酸化雰囲気は空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記焼結は、SOFC又はSOECスタックにおいてイン・サイチュで行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インターコネクトを焼結し、前記インターコネクトが、グリットブラストすることなく焼結された後に、前記インターコネクトに前記コーティングの前記湿式スプレーが塗布され、前記酸化雰囲気は空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記インターコネクト及び前記コーティングは、コンポーネントとして、又はSOFC又はSOECスタックにおいてイン・サイチュで、のいずれかで同時に焼結される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
固体酸化物電解セル(SOECs)又は固体酸化物燃料電池(SOFCs)のインターコネクトのコーティング方法であって、
金属粉末をマンガンコバルト酸化物に添加してコーティング材料を形成すること、
前記コーティング材料をインターコネクト上に湿式スプレーすること、及び
前記インターコネクトを酸化雰囲気で焼結してコーティングを形成することを含む、方法。
【請求項16】
添加される前記金属粉末は、Fe、Mn、Ni、Co、又はCuの1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
添加される前記金属粉末は、焼結助剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングは、開放気孔のない準稠密なコーティングである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティングは、閉鎖気孔を有する緻密なコーティングである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化雰囲気は、空気である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年1月21日に出願された米国仮特許出願第63/139,907号の利益を主張し、当該仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、一般に、電解セルスタック及び燃料電池スタックの構成要素に関し、より具体的には、電解セルスタック及び燃料電池スタックに用いるインターコネクト及びインターコネクトを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、固体酸化物電解(SOE)システムは、機能的なコーティングを必要とする、固体酸化物電解セル(SOECs)及び金属インターコネクト(ICs)から構成されるSOEスタックを含む。同様に、固体酸化物燃料電池(SOFC)にも、機能的なコーティングを必要とする金属インターコネクトが含まれる。
【0004】
例えば、一般的な固体酸化物燃料電池スタックは、スタック内の隣接するセルの間と、燃料及び酸化剤を配送及び除去するチャネルの間との両方を電気的に接続する金属インターコネクトによって隔てられた複数の燃料電池を含む。金属インターコネクトは、通常、Crベースの合金、例えば、95wt%Cr-5wt%Feの組成を有するCrF、又は94wt%Cr-5wt%Fe-1wt%Yの組成を有するCr-Fe-Yとして知られている合金からなる。CrF合金及びCrFeY合金は、空気雰囲気及び湿潤燃料雰囲気の両雰囲気における通常のSOFCの動作条件、例えば700~900℃で、その強度を維持し、寸法的に安定している。しかしながら、SOFCsの動作中、CrF合金又はCrFeY合金中のクロムは、酸素と反応してクロミアを形成して、SOFCスタックを劣化させる。
【0005】
SOFCスタックに影響を与える2つの主要な劣化メカニズムは、金属インターコネクトの構成成分のクロミア形成に直接関連している。i)インターコネクト上でのクロムの自然酸化物(クロミア、Cr2O3)の形成に起因するスタックオーム抵抗の増加、及びii)SOFCカソードのクロム中毒。
【0006】
Cr2O3は電子伝導体であるが、この材料のSOFCの動作温度(例えば、700~900℃)での導電率は非常に低く、850℃で0.01S/cmのオーダーの値である(対して、金属Crは7.9×104S/cmである)。酸化クロム層は、インターコネクトの表面で時間とともに厚くなり、かくして、インターコネクトのオーム抵抗、つまりは、SOFCスタックのオーム抵抗は、この酸化物層に起因して、時間とともに増加する。
【0007】
金属インターコネクトに形成されるクロミアに関連する第2の劣化メカニズムは、カソードのクロム中毒として知られている。SOFCの動作温度では、クロムの蒸気が、コーティングのクラック又は気孔を通って拡散し、クロムイオンが、インターコネクトのコーティング材料の格子状構造を通って、固相拡散によってSOFCカソード内に拡散し得る。さらに、燃料電池の動作中、周囲の空気(湿った空気)がインターコネクトの空気(カソード)側を流れ、湿潤燃料がインターコネクトの燃料(アノード)側を流れる。SOFCの動作温度で、湿った空気が(カソード側に)存在すると、インターコネクト上のCr2O3層の表面のクロムが水と反応し、ガス状の化学種の酸化クロム水酸化物CrO2(OH)2の形態で蒸発する。酸化クロム水酸化物の化学種は、蒸気の形態でインターコネクトの表面から燃料電池のカソード電極に輸送され、そこで固体の形態でCr2O3が堆積し得る。Cr2O3は、SOFCカソード上及びその内部に堆積し(例えば、粒界拡散によって)、及び/又はカソードと反応して(例えば、Cr-Mnスピネルを形成し)、カソード電極の性能を著しく低下させる。ペロブスカイト材料(例えば、LSM、LSC、LSCF、LSF)などの一般的なSOFCカソード材料は、酸化クロム劣化の種々の原因に対して特に脆弱である。
【発明の概要】
【0008】
それゆえに、本発明の実施形態は、関連技術の限界及び欠点に起因する1つ以上の問題を実質的に回避する、SOEC及びSOFCのインターコネクトの湿式スプレーコーティングを提案する。
【0009】
本発明の付加的な特徴及び利点は、以下の説明に示され、その説明から幾分明瞭になり、又は本発明の実施によって知ることができるであろう。本発明の目的及び他の利点は、とりわけ、本明細書の説明、特許請求の範囲、添付の図面に示された構成によって実現され、達成されるであろう。
【0010】
これらの及び他の利点を達成するために、そして本発明の目的に従って、具体化され、概括的に説明されるように、SOEC及びSOFCのインターコネクトの湿式スプレーコーティングは、コーティングの粉末状前駆体をインターコネクト上に湿式スプレーすること、及びインターコネクトを酸化雰囲気で焼結してコーティングを形成することを含む、SOEC又はSOFCに用いるインターコネクトをコーティングするためのシステム、デバイス、及び方法が含まれる。
【0011】
別の態様では、SOEC及びSOFCのインターコネクトの湿式スプレーコーティングは、金属粉末を酸化マンガンコバルトに添加してコーティング材料を形成すること、コーティング材料をインターコネクト上に湿式スプレーすること、及びインターコネクトを酸化雰囲気で焼結してコーティングを形成することを含む、SOEC又はSOFCに用いるインターコネクトをコーティングするためのシステム、デバイス、及び方法が含まれる。
【0012】
前述の概括的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図していることが理解されるべきである。
【0013】
本発明の理解を深めるために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示し、明細書の記述とともに、本発明の原理を説明するために供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、本発明の種々の実施形態に係るSOFCスタックの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の種々の実施形態に係るインターコネクトの断面図を示している。
【
図3】
図3は、本発明の種々の実施形態に係るインターコネクトをコーティングする方法を示している。
【
図4A】
図4Aは、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示す。
【
図4B】
図4Bは、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示す。
【
図4C】
図4Cは、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示す。
【
図4D】
図4Dは、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示す。
【
図5A】
図5Aは、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示す。
【
図5B】
図5Bは、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能な限り、同様の参照番号が同様の要素に用いられる。
【0016】
一般に、エアプラズマスプレー(APS)コーティングは、インターコネクトの劣化を低減するための良好な結果を提供する。例えば、コーティング材料は、エアプラズマスプレー(APS)などのスプレー法を利用し塗布することができ、又はコーティング材料インキを用いるウェットコーティング法などのコーティング方法を利用して塗布することができる。APS工程は、粉末状のコーティング材料が、コーティング装置に供給される溶射工程である。コーティング粒子はプラズマジェットに導入され、そこで溶融されてから基板に向かって加速される。基板に到達すると、溶融された液滴は平らにならされ、冷却されてコーティングを形成する。プラズマは、直流(DCプラズマ)又は誘導(RFプラズマ)のいずれかによって生成することができる。さらに、不活性ガス又は真空を必要とする雰囲気制御プラズマスプレー(CAPS)とは異なり、エアプラズマスプレーは空気雰囲気で行われる。いくつかの利点があるにもかかわらず、APS法は、コストが高いことからあまり好ましくない。
【0017】
図1Aは、本発明の種々の実施形態に係る固体酸化物燃料電池(SOFC)スタック100の斜視図であり、
図1Bは、同スタック100の部分断面図である。一例として、SOFCスタックが用いられるが、本発明の実施形態は、SOE/SOECシステム及びインターコネクト10を含む他の任意のコンポーネントに、さらに適用可能である。
【0018】
図1A及び
図1Bに示されるように、スタック100は、インターコネクト10によって隔てられた燃料電池1を含む。
図1Bに示されるように、各燃料電池1は、カソード電極3、固体酸化物電解質5、及びアノード電極7を含む。
【0019】
カソード電極3、電解質5、及びアノード電極7には、種々の材料を用いることができる。例えば、アノード電極3は、ニッケル含有相及びセラミック相を含むサーメットを含むことができる。ニッケル含有相は、還元状態のニッケルのみで構成されるようにすることができる。この相は、酸化状態にあるときに、酸化ニッケルを形成し得る。したがって、アノード電極7は、酸化ニッケルをニッケルに還元するために、動作に先立って、還元雰囲気中でアニールされるのが好ましい。ニッケル含有相は、ニッケル及び/又はニッケル合金に加えて、他の金属を含むことができる。セラミック相は、イットリア安定化ジルコニア及び/又はスカンジア安定化ジルコニアなどの安定化ジルコニア、及び/又はガドリニアドープセリア、イットリアドープセリア及び/又はサマリアドープセリアなどのドープセリアを含むことができる。
【0020】
電解質5は、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)又はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの安定化ジルコニアを含むことができる。これに代えて、電解質は、ドープセリアなどの別のイオン伝導性材料を含むことができる。
【0021】
カソード電極3は、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)などの導電性ペロブスカイト材料などの導電性材料を含むことができる。他の導電性ペロブスカイト、例えば、LSCoなど、又は金属、例えばPtを用いることもできる。カソード電極3は、アノード電極7と同様のセラミック相を含んでいてもよい。電極及び電解質は、それぞれ、1つ以上の上記材料からなる1つ以上の副層を含むことができる。
【0022】
スタック100などの燃料電池スタックは、多くの場合、平面状の構成要素、管、又は他の形状の形態の複数のSOFC1から構築される。
図1に示される燃料電池スタックは、垂直にスタックされているが、燃料電池スタックは水平に、又は他の任意の方向にスタックすることができる。燃料及び空気は、電気化学的に活性な表面に供給することができる。例えば、燃料は、各インターコネクト10に形成された燃料導管22(例えば、燃料ライザー開口部)を通して供給することができる。
【0023】
各インターコネクト10は、スタック100内の隣接する燃料電池1を電気的に接続する。特に、インターコネクト10は、1つの燃料電池1のアノード電極7を、隣接する燃料電池1のカソード電極3に電気的に接続することができる。
図1Bでは、下側の燃料電池1が、2つのインターコネクト10の間に配置されている。インターコネクト10を隣接する燃料電池1のアノード電極7に電気的に接続するために、Niメッシュを用いることができる。
【0024】
各インターコネクト10は、燃料チャネル8Aを少なくとも部分的に画定する燃料側リブ12Aと、酸化剤(例えば、空気)チャネル8Bを少なくとも部分的に画定する空気側リブ12Bとを含む。インターコネクト10は、スタック内の1つのセルの燃料電極(すなわち、アノード7)に流れる燃料、例えば、炭化水素燃料を、スタック内の隣接するセルの空気電極(すなわち、カソード3)に流れる酸化剤、例えば、空気から隔てるガス-燃料セパレータとして作用することができる。スタック100の両端部には、空気又は燃料を、それぞれエンド電極に供給するための空気エンドプレート又は燃料エンドプレート(図示せず)があってもよい。
【0025】
各インターコネクト10は、セル内の固体酸化物電解質と同様の熱膨張係数(例えば、差違が0~10%)を有する金属又は金属合金(例えば、クロム-鉄合金)などの導電性材料からなるか、又はこれを含むことができる。例えば、インターコネクト10は、金属又は金属合金(例えば、4~6重量%の鉄、任意で1重量%以下のイットリウム及び残部がクロムの合金などのクロム-鉄合金)を含むことができ、1つの燃料電池1のアノード側又は燃料側を、隣接する燃料電池1のカソード側又は空気側に電気的に接続することができる。ニッケルコンタクト層などの導電性コンタクト層を、アノード電極7と各インターコネクト10との間に設けることができる。別の任意の導電性コンタクト層を、カソード電極3と各インターコネクト10との間に設けることができる。
【0026】
図2は、本発明の種々の実施形態に係るインターコネクト10の断面図を示している。
図2に示されるように、インターコネクト10は、複数のリブ12Aと、インターコネクト10のリブ12Aの頂部に配設された任意のコンタクト層14とを含む。
【0027】
図2にさらに示されるように、コーティング材料は、焼結に先立って、インターコネクト10の空気側に塗布されて、保護コーティング層40を形成することができる。以下に論じられるように、コーティング層40を形成するための方法は、インターコネクト10の焼結を含むことができる。場合によっては、焼結により、インターコネクト材料と任意のコンタクト層14の鉄との部分的な相互拡散が生じることがある。コーティング層40及び任意のコンタクト層14は、同時に焼結されてもよい。
【0028】
コーティング材料は、例えば、Cu、Mn、Co、Fe及び/又はNiから選択される少なくとも2つ(例えば、2つ又は3つ)の金属の酸化物を含む以下のスピネル組成物を含むことができる。例えば、Cu1.3Mn1.7O4、MnCu0.5Co1.5O4、MnCo1.7Fe0.3O4、CoFe2O4、MnCo1.7Cu0.3O4、Mn1.4Co1.4Cu0.2O4、Cu0.77Ni0.45Mn1.78O4、NiCo2-xFexO4など。材料の選択は、スピネルの電子伝導率、出発酸化物の蒸気圧、及び材料の焼結性のバランスをとることによって決定される。空気酸化されたコーティングは、コーティングでのクロムの蒸発及びクロムの自然酸化物の生成を効果的に抑制するために、フルデンスに緻密化される必要はないと考えられる。アノード反応が、空気流で起こり、三相界面での酸化反応に起因するクロム中毒の影響を受けにくいSOECの場合に、特にそのように考えられる。
【0029】
インターコネクト10などのインターコネクトは、粉末冶金法によって作製される。金属粉末を高温及び水素中で圧縮及び焼結した後でも、従来のインターコネクトはフルデンスに緻密化されていない。適宜、インターコネクトは酸化されて、残存する気孔が埋められる。従来の方法では、インターコネクトをグリットブラストして酸化層の一部を除去している。酸化とグリットブラストの両方が、付加的なコストを加算する。本発明の実施形態を適用することにより、インターコネクト10は、イニシャル酸化ステップ及びグリットブラストを必要としない。代わりに、湿式スプレーコーティング粉末状前駆体が、インターコネクト10に塗布される。次いで、湿式スプレーが塗布されたインターコネクト10が酸化される。いくつかの実施形態では、湿式スプレーが塗布されたインターコネクト10は、スタック(例えば、スタック100)内で酸化される。いくつかの実施形態では、インターコネクト10を焼結してから、それに続いて、湿式スプレーが塗布された後に酸化される。
【0030】
本発明の種々の実施形態によれば、SOE又はSOFCのインターコネクトのコーティング工程は、湿式スプレー及びその場(イン・サイチュ)でのスタック焼結を利用する。この工程より、インターコネクトのコーティングのコストが削減され、大量生産が可能になる。湿式スプレーコーティング法は、APSよりも効率的であり、インターコネクトのグリットブラスト表面処理の必要性を排除し、SOFCスタック及び/又はSOECスタックに対して、インターコネクトの酸化ステップをイン・サイチュで実行することを可能にする。
【0031】
図3は、本発明の種々の実施形態に係るインターコネクトをコーティングする方法300を示している。
【0032】
310において、湿式スプレーステップは、流体担体中の粉末状前駆体(例えば、任意のバインダーを含む流体溶媒中の粉末の懸濁液又は混合物)をインターコネクトに塗布することを含む。例えば、インキに懸濁された金属粉末を用いることができ、金属粉末には、例えば、Mn、Co、Cu、Fe、Ni、それらの組み合わせ、それらの合金などが含まれる。次に、320において、インターコネクトに対する湿式スプレーコーティング工程の後に、機能的なインターコネクトを提供するべく、酸化雰囲気(例えば、空気)での酸化/焼結ステップが続いて、還元雰囲気(例えば、水素雰囲気)での高コストな還元アニール工程を必要としない。種々の金属粉末、合金粉末、金属粉末の組み合わせのいずれかを塗布して、空気雰囲気(周囲の空気)にさらされると、酸化及び焼結が同時に行われ、塗布された金属の体積膨張によってもたらされる緻密なコーティング層(例えば、コーティング層40)が生成される。
【0033】
種々の実施形態において、例えば、湿式スプレーされたコーティング材料は、酸化ステップを利用して、コーティング材料を、クロムベースのインターコネクト(例えば、4~6体積%の鉄を含み残部がクロムのクロム-鉄合金)の表面と反応させる。インターコネクトは、上記のように、カソード及びアノードに面する側に、フローチャネルによって隔てられたリブを有する合金プレートを含むことができる。インターコネクトは、任意で、流体ライザー開口部及び/又は流体フロープレナムを含んでいてもよい。
【0034】
コーティング材料は、例えば、Cu、Mn、Co、Fe及び/又はNiから選択される少なくとも2つ(例えば、2つ又は3つ)の金属の酸化物を含む以下のスピネル組成物を含むことができる。例えば、Cu1.3Mn1.7O4、MnCu0.5Co1.5O4、MnCo1.7Fe0.3O4、CoFe2O4、MnCo1.7Cu0.3O4、Mn1.4Co1.4Cu0.2O4、Cu0.77Ni0.45Mn1.78O4、NiCo2-xFexO4など。材料の選択は、スピネルの電子伝導率、出発酸化物の蒸気圧、及び材料の焼結性のバランスをとることによって決定される。場合によっては、空気酸化されたコーティングは、コーティングでのクロムの蒸発及びクロムの自然酸化物の生成を効果的に抑制するために、フルデンスに緻密化される必要はない。アノード反応が、空気流で起こり、三相界面での酸化反応に起因するクロム中毒の影響を受けにくいSOECの場合に、特にそうである。
【0035】
いくつかの実施形態では、元素金属粉末(すなわち、合金でない)のブレンドがインターコネクトの基材上に堆積される。ここで、元素金属粉末のブレンドを含むインターコネクトは、金属を金属酸化物に酸化するために熱工程を経る。出発金属粉末には、粒子の公称径が0.3~10μmの範囲、例えば、d50が2~3μmのオーダーである、Ni、Fe、Mn、Co、及びCuが含まれる。1つ以上の粉末が含まれるインキは、10~40%の固形分含量で配合され、超音波スプレーノズルを用いて基材に塗布されるようにすることができる。この工程は、1回以上のコーティング塗布(例えば、1~10回のコーティング塗布)を、各コーティング塗布の間(又は、その後)の乾燥ステップとともに、含むことができる。乾燥は、内蔵された加熱プレートを用いてイン・サイチュで行ってもよく、コーティングされたインターコネクトを外部のオーブン/炉内で乾燥させてもよい。大量生産の実施形態では、インターコネクトは、一連のスプレーステーション及びインラインの乾燥オーブン/炉を通って、コンベヤーベルト上を移動する。乾燥後、インターコネクトは、空気雰囲気で、1時間~5時間の処理時間で、約940℃~950℃の熱処理が施されるが、5時間~6時間の異なる時間で、約800℃~1000℃とすることもできる。
【0036】
他の既知の湿式コーティング工程は、コーティングを緻密化するために、N2、H2、又はN2/H2雰囲気を必要とするが、本発明の実施形態は、空気雰囲気を利用する。本発明の実施形態では、空気雰囲気で十分であり、その低廉なコストによる有益性がある。
【0037】
熱処理中に、金属粉末は金属酸化物に酸化され、インターコネクト上に酸化物コーティングを形成する。金属から金属酸化物への体積膨張が、気孔(例えば、ボイド、ギャップ、及びオープンスペース)を埋めて、連結された開放気孔のない準稠密なコーティングを形成する。例えば、50%Fe-50%Mn粉末ブレンドの場合、酸化に際し、第一に、Feは比体積が相当に大きいFeOx(FeO、Fe2O3、Fe3O4)に酸化され、同様に、MnはMnOx(MnO、Mn2O3、Mn3O4)に酸化され、これも比体積が大きい。時間、温度とともに、Fe酸化物とMn酸化物とは相互拡散して、Fe-Mn-Oスピネルなどの他の酸化物、例えば、MnFe2O4又は(Mn、Fe)3O4を形成する。最終的なコーティングは単相である必要はなく、Fe又はMnが豊富な領域を含む酸化物FexMnyOzと、いくつかのスピネル相との混合物からなる。
【0038】
導電性スピネル相を形成するために、Ni、Fe、Mn、Co、及びCuの金属粉末の二元、三元、又は四元の組み合わせを含む、いくつかの遷移金属粉末ブレンドが研究されている。いくつかの例には、Mn-Fe、Mn-Co、Ni-Fe、Ni-Co、Cu-Mn、Mn-Co-Fe、Mn-Co-Cu、Ni-Mn-Co、Ni-Mn-Fe、及びMn-Co-Fe-Cuが含まれるが、これらに限定されない。各金属の割合は、2~95%の範囲とすることができ、d50の粒子サイズは、0.3~10μmであるのが好ましく、より好ましくは0.3~3μmである。金属粉末の形状は、球形、棒状、又は不規則であってもよい。
【0039】
図4A~
図4Dは、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示す。
図4Aは、インターコネクト410A上のMn-Fe;50-50重量%コーティング440Aを示す。
図4Bは、インターコネクト410B上のMn-Co;50-50重量%コーティング440Bを示す。
図4Cは、インターコネクト410C上のMn-Fe-Co;50-25-25重量%コーティング440Cを示す。
図4Dは、インターコネクト410D上のMn-Fe-Cu;50-40-10重量%コーティング440Dを示す。
図4A~
図4Dに示されるように、それぞれのコーティング440A~440Dは、接続された開放気孔のない、少なくとも準稠密なコーティング、又は閉鎖気孔を有する緻密なコーティングを達成している。
【0040】
種々のコーティングを作製するために、金属粉末、有機溶媒、分散剤、及び任意の有機バインダーを十分に混合することによって、スラリーが調製される。固形分含量は10~40%、好ましくは20~30%であり、分散剤は約0.1~5%、任意のバインダーは約2~10%である。混合は、ステア、シェイク、又はボールミルによって行われる。次に、スラリーは、20℃~200℃の間の基板温度で、インターコネクトの表面にスプレーされる。1回以上のコーティング工程が、その間(又は、その後)の乾燥とともに、所望のコーティング厚で形成するために利用することができる。次に、インターコネクトは、塗布されたコーティングとともに、例えば、空気中において、950℃で5時間焼結される。
【0041】
別の実施形態では、緻密なコーティングを促進するために、金属粉末が酸化物粉末に添加される、別のコーティング工程が開発された。MCO(マンガンコバルト酸化物)相は、SOEC及びSOFCのインターコネクトのコーティング材料であるが、湿式スプレーと、それに続く空気雰囲気だけでの熱処理によって、塗布されたMCOコーティングを緻密化することは困難である。ここでは、Fe、Mn、Ni、Co、Cuなどの金属粉末をMCO粉末に添加して、焼結助剤として機能させている。空気中での熱処理に際し、金属から金属酸化物への体積膨張は、部分的に焼結されたMCO粉末間にある気孔(例えば、ボイド、ギャップ、及びオープンスペース)を埋めることを助長する。また、金属粉末の酸化は、相互拡散を促進し、したがって、コーティングの焼結を促進する。組成物Mn1.5Co1.5O4などのMCO粉末を用いることができるが、Mn2CoO4、Mn1.5Co1.5O4、Co2MnO4などの任意の(MnxCo1-x)3O4(例えば、0≦X≦1)が好適である。金属とMCOのブレンドは、5%~95%の範囲の金属、例えば、50%Fe-50%MCOであってもよい。
【0042】
2つ以上の金属と混合されたMCOも検討された。例えば、50%Ni0.9Fe2.1~50%MCO、これは事実上、50%(30%Ni-70%Fe)-50%MCO、又は15%Ni-35%Fe-50%MCOである。MCOの出発粉末サイズは1~30μmの範囲であるが、場合によっては、0.5~3μmに粉砕された。一部のコーティングでは、MCOは、金属粉末とブレンドする前に粉砕されて、インキに配合されたが、他の場合には、MCOと金属粉末とが一緒に粉砕されてインキを調製した。上記のように、MCO-Feインキは、1回以上のコーティング及びその後の乾燥ステップを含むスプレー工程によって、インターコネクト上に堆積され、次いで、例えば、空気雰囲気において、940℃~950℃で1時間~5時間処理された。例えば、金属粉末をプラスしたMCOを用いることができる。例えば、LSM、LSC、及びLSCFなどのペロブスカイトを含む他の酸化物を用いることができる。例えば、NiFe2O4、Cu2MnO4、及びCu1.5Mn1.5O4を含むスピネルを用いてもよい。
【0043】
図5は、本発明の種々の実施形態に係る焼結後のインターコネクトコーティングの断面の顕微鏡写真を示している。
図5Aは、インターコネクト510A上のMCO-Ni
0.9Fe
2.1コーティング540Aを示している。
図5Bは、インターコネクト510B上のMCO-Feコーティング540Bを示している。
図5A~5Bに示されるように、それぞれのコーティング540A~540Bは、接続された開放気孔のない、少なくとも準稠密なコーティング、又は閉鎖気孔を有する緻密なコーティングを達成している。
【0044】
本明細書に記載の種々の実施形態において、方法300などの湿式スプレーコーティング工程は、APSコーティング工程と比較して有益である。湿式スプレーをAPSと比較すると、湿式スプレーの粉末使用量又は粉末効率は、APSの約20%未満と比較して、約80%を超えることができ、無駄な材料が少なくなり、コストが削減される。さらに、APSコーティングは機械的結合に依存しているため、表面処理と粗面化が必要であるが、材料がインターコネクト合金及び自然に形成された酸化物と相互拡散して化学結合を形成するため、湿式スプレーコーティングを滑らかな表面に塗布することができ、したがって、グリットブラストの必要性が除外される。湿式スプレーコーティングを反応させる酸化ステップの他に、グリットブラストを必要としないという、この差異は、コーティング工程がスタック/インターコネクト製造工程に統合される実施形態をもたらす。例えば、光沢があって酸化されていない、焼結されたインターコネクトコンパクトは、引き続き、湿式スプレー工程によってコーティングされ、スタックに組み立てられるようにすることができる。次いで、シールをセットする必要があるスタック焼結ステップの間に、コーティング及びインターコネクトの酸化ステップが、スタックにおいてイン・サイチュで行われるようにすることができる。これは、例えば、2015年6月23日に発行され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,065,127B2号に記載されている。実施形態の工程は、炉における個々のインターコネクトの酸化を排除し、グリットブラストを排除し、湿式スプレー後の別個のコーティング酸化ステップの必要性を排除する。
【0045】
方法300などの湿式スプレーコーティング工程は、コーティング工程自体のコストを大幅に削減するだけでなく、スタック焼結の相乗的な特性によってインターコネクトコンポーネントのコストを削減する。APS工程をより効率的で、より高い粉末収率の湿式スプレー工程に置き換えることで、コーティングの材料費を60%削減することが期待される。さらに、グリットブラスト工程を排除することで、総コーティングコストがさらに30%削減され、材料使用量の削減と組み合わせて、総コーティングコストが50%削減される。インターコネクトの酸化ステップとスタックの焼結ステップとを組み合わせると、インターコネクトの製造シーケンスにおいて、まる1つの工程が不要になる。粉末の使用量の削減、イン・サイチュでのスタックの焼結、及びグリットブラストの排除を組み合わせることで、コーティングされたインターコネクトコンポーネントの最終的なコストが25%以上削減される。
【0046】
方法300などの湿式スプレー工程は、SOEC又はSOFCスタックのいずれかのインターコネクト、又はインターコネクト10などのインターコネクトを利用する任意の他のコンポーネントをコーティングするために利用することができる。インターコネクトは、そのカソード側又はアノード側(例えば、空気側の面及び/又は燃料側の面)にコーティングすることができる。
【0047】
本発明の意図又は範囲から逸脱することなく、本発明のSOEC及びSOFCのインターコネクトの湿式スプレーコーティングにおいて、種々の修正及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内にあるという条件で、本発明の修正及び変形をカバーすることが意図されている。
【外国語明細書】