(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112527
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】変性アルキレンイミン系共重合体およびこれを含む無機粒子用添加剤、セメント分散剤またはセメント組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/04 20060101AFI20220727BHJP
C04B 24/28 20060101ALI20220727BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220727BHJP
C04B 103/40 20060101ALN20220727BHJP
【FI】
C08G73/04
C04B24/28 Z
C04B28/02
C04B103:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019110562
(22)【出願日】2019-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河合 萌
(72)【発明者】
【氏名】川上 宏克
【テーマコード(参考)】
4G112
4J043
【Fターム(参考)】
4G112PB33
4G112PC03
4J043PA02
4J043PA04
4J043QA04
4J043QA05
4J043RA08
4J043YA07
4J043YA13
4J043YA14
4J043YB21
4J043YB24
4J043YB29
4J043ZA01
4J043ZB06
4J043ZB31
4J043ZB60
(57)【要約】
【課題】セメント組成物に添加した際に優れた減水性能を発揮する化合物を提供する。
【解決手段】構成単位(I)および下記構成単位(II)を有する、変性アルキレンイミン系共重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構成単位(I)および下記構成単位(II)を有する、変性アルキレンイミン系共重合体;
【化1】
上記式中、R
1は、置換または非置換の炭素数2~18のアルキレン基を表し、Aは、酸性基またはその塩の基を有する置換基、あるいは加水分解により酸性基またはその塩の基を有する置換基となる置換基を表す、
【化2】
上記式中、R
2は、置換または非置換の炭素数2~18のアルキレン基を表し、Bは、下記式(1)で表される置換基である、
【化3】
式(1)中、R
3Oは炭素数2~8のオキシアルキレン基を表し、R
4は水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~18のアルキル基を表し、nは0または1を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって2~150の数であり、*は、窒素原子との結合位置を示す。
【請求項2】
前記mが20~100の数である、請求項1に記載の変性アルキレンイミン系共重合体。
【請求項3】
前記構成単位(I)および前記構成単位(II)の合計に対して、前記構成単位(I)のモル含有率が72モル%以上95モル%以下である、請求項1または2に記載の変性アルキレンイミン系共重合体。
【請求項4】
重量平均分子量(Mw)が22,000以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性アルキレンイミン系共重合体。
【請求項5】
重量平均分子量(Mw)が30,000以上である、請求項4に記載の変性アルキレンイミン系共重合体。
【請求項6】
主鎖がポリアルキレンイミン由来であり、当該ポリアルキレンイミンの数平均分子量が2,000以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の変性アルキレンイミン系共重合体。
【請求項7】
前記Aが下記式(2);
【化4】
式(2)中、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
yCOOM
1基(ここで、-(CH
2)
yCOOM
1基は-COOR
7基または他の-(CH
2)
yCOOM基と無水物を形成していても良く、yは0~2の整数であり、M
1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す)であり、R
7は、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、-(CH
2)
zOPO
3M
2、-(CH
2)
zPO
3M
2または-(CH
2)
zSO
3M(ここで、zは0~2の整数であり、Mは水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す)であり、*は、窒素原子との結合位置を示す;で表される置換基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の変性アルキレンイミン系共重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の変性アルキレンイミン系共重合体を含む、無機粒子用添加剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の変性アルキレンイミン系共重合体を含む、セメント分散剤。
【請求項10】
請求項1~7のいずれかに記載の変性アルキレンイミン系共重合体を含む、セメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変性アルキレンイミン系共重合体およびこれを含む無機粒子用添加剤、セメント分散剤またはセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントに水を添加したセメントペーストや、これに細骨材である砂を混合したモルタル、更に小石を混合したコンクリートなどのセメント組成物は、構造材や土台、耐火壁など多目的に使用されその使用量も多い。これらのセメント組成物は、セメントと水との水和反応により、凝集、硬化を経て成形体として強度を発生させる。このため、水添加後の時間経過と共に作業性が低下する。一方、作業性の改善の為に生コンクリート中の単位水量を増加させるとコンクリート等の強度低下を招く結果となる。生コンクリート施工時の作業性の改善やコンクリートの耐久性を向上させるため、水の含有量を増やさないで施工性を高めたり、水の量を減らして施工性を維持するために用いるセメント分散剤(減水剤)が要求される。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリ(2-カルボキシエチル)-ポリ(2-ヒドロキシエチル)ポリエチレンイミンまたはその塩をコンクリート混和剤として用いることで、セメント組成物の単位水量を減少させることが可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のセメント混和剤では、セメント組成物の単位水量を減らすことができる減水性が十分ではなかった。
【0006】
そこで本発明は、セメント組成物に添加した際に優れた減水性を発揮する化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記構成単位(I)および下記構成単位(II)を有する、変性アルキレンイミン系共重合体である。
【0008】
【0009】
上記式中、R1は、置換または非置換の炭素数2~18のアルキレン基を表し、Aは、酸性基またはその塩の基を有する置換基、あるいは加水分解により酸性基またはその塩の基を有する置換基となる置換基を表す、
【0010】
【0011】
上記式中、R2は、置換または非置換の炭素数2~18のアルキレン基を表し、Bは、下記式(1)で表される置換基である。
【0012】
【0013】
式(1)中、R3Oは炭素数2~8のオキシアルキレン基を表し、R4は水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~18のアルキル基を表し、nは0または1を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって2~150であり、*は、窒素原子との結合位置を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物によれば、セメント組成物に添加した際に優れた減水性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味し、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で行う。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。さらに、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。
【0016】
[変性アルキレンイミン系共重合体]
本発明の第一実施形態は、構成単位(I)および構成単位(II)を有する、変性アルキレンイミン系共重合体である。
【0017】
以下、本実施形態の化合物(以下、単に本化合物とも称する)について説明する。
【0018】
本化合物は、好適には、ポリアルキレンイミンの主鎖に、置換基Aおよび置換基Bが付加した構造である。
【0019】
本化合物の重量平均分子量は、20,000以上であることが好ましく、22,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、主鎖であるポリアルキレンイミンの分子量および置換基Bにおけるオキシアルキレン基の付加モル数に大きく依存する。ポリアルキレンイミンの分子量が大きくなるほど、また、置換基Bにおけるオキシアルキレン基の付加モル数が長くなればなるほど、立体障害効果により、セメントの分散性は高くなる傾向にある。ゆえに、セメント組成物に添加した際に優れた減水性を一層発揮する。本化合物の重量平均分子量の上限は特に限定されるものではないが、100,000以下であることが好ましく、75,000以下であることがより好ましい。ポリアルキレンイミンの分子量が大きくなったり、また、置換基Bにおけるオキシアルキレン基の付加モル数が長くなると、セメントの分散性能は高くなるが、セメントに吸着できる化合物量が減少する。本化合物の重量平均分子量が上記上限以下であることで、セメント分散性能と、セメント吸着性能とのバランスがよく、優れた減水性能を一層発揮しやすい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
【0020】
変性アルキレンイミン系共重合体の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.0~2.0であり、さらに好ましくは1.0~1.95である。本発明の好適な形態は、変性アルキレンイミン系共重合体の分散度(Mw/Mn)が1.95以下である。分散度(Mw/Mn)が上記のように狭いものであれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減できる、変性アルキレンイミン系共重合体を提供することができる。
【0021】
ポリアルキレンイミンとしては、例えば、エチレンイミンの重合によって得られるポリエチレンイミンなど、アルキレンイミン(例えば、エチレンイミン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン等)の重合または共重合によって得られるポリアルキレンイミンなどが挙げられる。
【0022】
ポリアルキレンイミンとしては、直鎖状ポリアルキレンイミン(第一級アミノ基、第二級アミノ基を含む)、部分的に分岐したポリアルキレンアミン(第一級アミノ基、第二級アミノ基を含む)、完全に分岐したデンドリマー形ポリアルキレンアミン(第一級アミノ基、第三級アミノ基を含む)がある。アルキレンオキシド基や酸含有基を付加させる必要があることから、第一級アミノ基および第二級アミノ基を含むポリアルキレンイミンであることが好ましく、本発明の効果が一層奏されることから、部分的に分岐したポリアルキレンアミンであることがより好ましい。
【0023】
ポリアルキレンイミンとしては、エポミン(ポリエチレンイミン) SP-018、SP-018、SP-200、SP-110、P-1000(株式会社日本触媒)などの市販品を用いることもできる。
【0024】
ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、特に制限されないが、1,000~50,000であることが好ましく、2,000~15,000であることがより好ましく、5,000~10,000であることが好ましい。本発明の好適な一実施形態は、主鎖がポリアルキレンイミン由来であり、当該ポリアルキレンイミンの数平均分子量が、2,000以上である。ポリアルキレンイミンの分子量がこの範囲であることで、セメントの分散性がより向上し、減水性能がより向上するため好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、プルランを標準物質とした公知の方法で測定できる。具体的には、GPCの測定条件として、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
【0025】
ポリアルキレンイミン由来の構造の本化合物中の含有量は、セメント分散性能の観点からは、5.0モル%以下であることが好ましく、4.0モル%以下であることがより好ましい。ポリアルキレンイミン由来の含有量は、後述の実施例に記載するように、生成物中に含まれる未反応の原料をLC(液体クロマトグラフィー)またはGPCで定量し、反応で消費した原料の比から求めることができる。
【0026】
本化合物を構成する構成単位(I)および(II)について以下説明する。
【0027】
【0028】
上記式中、R1は、置換または非置換の炭素数2~18のアルキレン基を表す。
【0029】
アルキレン基としては、直鎖または分岐鎖であることが好ましく、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらのうち、R1は、炭素原子数2~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数2~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基がさらにより好ましく、エチレン基であることが最も好ましい。
【0030】
R1に場合によって存在する置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などのハロゲン原子;アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、p-t-ブチルベンゾイル基などのアシル基;フェニル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、1-イソプロピルプロポキシ基などの炭素原子数1~20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシル基;クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基などの炭素原子数1~20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたハロゲン化アルキル基;クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、ブロモエトキシ基、クロロプロポキシ基、ブロモプロポキシ基などの炭素原子数1~20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシル基の一部がハロゲン化されたハロゲン化アルコキシル基;ニトロ基;アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基などの炭素原子数1~20個のアルキル部位を有するアルキルアミノ基;アルキルカルボニルアミノ基;アリールアミノ基;アリールカルボニルアミノ基;カルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などのアルコキシル基のアルキル基部分にヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~8個、好ましくは1~5個のアルコキシカルボニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数3~8個、好ましくは5~8個の環状アルコキシカルボニル基;アルキルアミノカルボニル基;アルコキシスルホニル基;アルキルチオ基;カルバモイル基;アリールオキシカルボニル基;オキシアルキルエーテル基;シアノ基などが例示できる。
【0031】
R1は非置換の炭素数2~18のアルキレン基であることが好ましい。
【0032】
Aは、酸性基またはその塩の基を有する置換基、あるいは加水分解により酸性基またはその塩の基となる置換基を有する置換基を表す。置換基Aが存在することで、本化合物がセメントに吸着し、静電反発作用により分散性能を発揮する。また、置換基Aと置換基Bとが、異なる窒素原子に付加することで、置換基Bによる立体障害効果によるセメント分散機構がより発揮されやすいと考えられる。
【0033】
酸性基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホ基[-SO3H]、リン酸基、ホスホン酸基[-PO(OH)2]などが挙げられる。酸性基の塩の基としては、酸性基のアルキル金属塩、第2族金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などが挙げられる。
【0034】
アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。また、第2族金属塩を構成する第2族金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
【0035】
有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0036】
加水分解により酸性基またはその塩の基となる置換基としては、酸性基を構成する酸のエステル(例えば、カルボン酸エステル、リン酸エステル)などが挙げられる。
【0037】
置換基Aは、ポリアルキレンイミンの窒素原子と反応する原子団由来の置換基をさらに有することが好ましい。具体的には、置換基Aは、ポリアルキレンイミンの窒素原子と反応する原子団由来の置換基と、酸性基またはその塩の基、あるいは加水分解により酸性基またはその塩の基となる置換基と、が結合した構造であることが好ましい。
【0038】
ポリアルキレンイミンの窒素原子と反応する原子団由来の置換基としては、例えば、ビニル基(置換基Aにおいては-CH2-CH2-)、アリル基等の炭素数2~20の不飽和炭化水素基;アルデヒド基(置換基Aにおいては-CH2-)、エポキシ基などの原子団由来の置換基が挙げられる。
【0039】
ポリアルキレンイミンの窒素原子と反応する原子団由来の置換基と、酸性基またはその塩の基、あるいは加水分解により酸性基またはその塩の基となる置換基と、が結合した構造としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル;などの化合物由来の基が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
中でも、Aが下記式(2)で表される置換基であることが好ましい。
【0041】
【0042】
式(2)中、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または-(CH2)yCOOM1基である。
【0043】
-(CH2)yCOOM1基は-COOR7基または他の-(CH2)yCOOM1基と無水物を形成していても良い。好ましくは、無水物を形成しない。yは0~2の整数であり、0(すなわち、-COOM1)であることが好ましい。
【0044】
M1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
【0045】
一価金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。また、二価金属原子としては、例えば、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
【0046】
アンモニウム基は、「-NH3
+」で表される官能基である。そして、有機アンモニウム基としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミン等の有機アミン由来の残基が挙げられる。
【0047】
中でも、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、またはカルボキシル基であることが好ましい。また、R5は、水素原子またはカルボキシル基で、R6が水素原子であることがより好ましく、R5およびR6が、いずれも水素原子であることがさらにより好ましい。
【0048】
式(2)中、R7は、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、-(CH2)zOPO3M2、-(CH2)zPO3M2または-(CH2)zSO3Mである。
【0049】
R7における炭素数1~18のアルキル基としては、特に制限されず、炭素数1~18の直鎖、または分岐のアルキル基であることが好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等の直鎖、または分岐のアルキル基が挙げられる。R7における一価金属原子、二価金属原子、有機アンモニウム基の例は、一般式(2)におけるR5~R6の定義の中の-(CH2)yCOOM1基における「M1」について上記で例示したのと同様である。
【0050】
-(CH2)zOPO3M2、-(CH2)zPO3M2または-(CH2)zSO3Mにおいて、zは0~2の整数である。Zは0または1であることがより好ましい。Mは水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。Mにおける一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基は、一般式(2)におけるR5~R6の定義の中の-(CH2)yCOOM1基における「M1」について上記で例示したのと同様である。
【0051】
中でもR7は、水素原子であることが好ましい。
【0052】
置換基Aの本化合物における含有モル比は、セメントへの吸着性の観点から、50モル%以上であることが好ましく、65モル%以上であることがより好ましい。また、置換基Aの本化合物における含有モル比は、セメントの分散性の観点から、95モル%以下であることが好ましく、93モル%以下であることがより好ましい。
【0053】
(構成単位(II))
構成単位(II)は、アルキレンイミンの窒素原子にオキシアルキレン基が付加された構造を有する。高分子中に、オキシアルキレン基を有する構成単位(II)を有することで、セメント組成物に添加した際にセメントの分散性が向上し、優れた減水性を示す。
【0054】
構成単位(II)は下記構造を有する。
【0055】
【0056】
上記式中、R2は、置換または非置換の炭素数2~18のアルキレン基を表す。
【0057】
アルキレン基としては、直鎖または分岐鎖であることが好ましく、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらのうち、R2は、炭素原子数2~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数2~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基がさらにより好ましく、エチレン基であることが最も好ましい。
【0058】
R2は、非置換の炭素数2~18のアルキレン基であることがより好ましい。
【0059】
場合によって存在する置換基については、上記R1において説明した通りである。
【0060】
Bは、下記式(1)で表される置換基である。
【0061】
【0062】
nは0または1である。-CH2CH(OH)CH2O-の構造は後述の実施例にあるように製造上、当該構造が入り得る場合があり、この場合にn=1となる。よって、n=0の場合と、n=1の場合とで、性能上の差異はない。
【0063】
式(1)中、R3Oは炭素数2~8のオキシアルキレン基を表す。すなわち、R3は、炭素数2~8のアルキレン基である。アルキレン基としては、直鎖または分岐鎖であることが好ましい。炭素数2~8のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基などが挙げられる。R3は、炭素数2~4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2または3のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることがさらにより好ましい。
【0064】
また、R3Oが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、R3Oの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上(上限100モル%)がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上(上限100モル%)がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
【0065】
mは、2~150の数である。mが2以上であることで、セメント分散性能が顕著に向上する。mは、20~100の数であることがセメント分散性能の一層の向上の観点から好ましい。なお、mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
【0066】
R4は水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~18のアルキル基を表す。炭素数1~18のアルキル基は、特に制限されず、直鎖、または分岐のアルキル基であることが好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等の直鎖、または分岐のアルキル基が挙げられる。R4に場合によって存在する置換基としては、R1の欄に記載したものと同様である。中でも、R4は水素原子または炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基であることがさらにより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。また、R4がアルキル基である場合、当該アルキル基は非置換であることが好ましい。
【0067】
構成単位(I)および構成単位(II)の合計に対して、構成単位(I)のモル含有率が、例えば、60モル%以上98モル%以下である。セメント分散性能の一層の向上の観点から、構成単位(I)および構成単位(II)の合計に対して、構成単位(I)のモル含有率が72モル%以上95モル%以下であることが好ましい。構成単位(I)のモル含有率が72モル%以上であることで、セメントへの本化合物の吸着性能が向上し、セメント分散性が一層向上し、減水性がより向上する。構成単位(I)のモル含有率が、95モル%以下であることで、ポリアルキレンイミン主鎖および構成単位(II)がある程度以上存在することとなり、セメント分散性が一層向上し、減水性がより向上する。
【0068】
(その他の構成単位)
本実施形態の化合物は、構成単位(I)および構成単位(II)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位は、重合体中、0~10モル%であることが好ましく、0~5モル%であることがより好ましく、0~1モル%であることがさらにより好ましい。
【0069】
(製造方法)
本化合物の製造方法は従来公知の製造方法により製造することができる。例えば、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンに単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物をエポキシ付加させた後、置換基Aを構成する単量体、例えば、アクリル酸などの不飽和カルボン酸系単量体をマイケル付加することにより得ることができる。
【0070】
単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物は、例えば、特開2015-163571号公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、アルコキシポリアルキレングリコールとエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる。単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物を用いることが反応性の観点から、好ましい。単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物の反応の一例を、下記式(A)に示す。式中、nは、アルコキシポリアルキレングリコールの平均付加モル数を表す。また、Rは式(1)中のR4に対応し、水素原子または炭素数1~18のアルキル基を表す。
【0071】
【0072】
上記(A)の反応に用いられるアルコキシポリアルキレングリコールとしては、上述の化合物を用いることができ、好ましくはメトキシポリエチレングリコールである。
【0073】
置換基Aを構成する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩、などの不飽和カルボン酸系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などが挙げられる。これらの塩は、一般式(2)におけるR6が一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基を表す場合にそれぞれ対応している。本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。置換基Aを構成する単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0074】
また、本化合物の製造方法は、上記製造方法に限定されず、ポリエチレンイミンに例えば酸化エチレンを反応させてEO付加させた後、例えば、アクリル酸をマイケル付加することにより得ることができる。
【0075】
[無機粒子用添加剤]
本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変性アルキレンイミン系共重合体を含む、無機粒子用添加剤である。
【0076】
無機粒子用添加剤としては、セメント用添加剤(セメント分散剤)、シリカ分散剤、無機顔料用分散剤、セラミックス用分散剤などが挙げられる。
【0077】
ここで、無機粒子用添加剤は、第一実施形態の変性アルキレンイミン系共重合体を主成分とする。ここで、主成分とは、無機粒子用添加剤の80質量%以上であることを指し、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上である(上限は100質量%、すなわち、変性アルキレンイミン系共重合体のみからなる無機粒子用添加剤)。
【0078】
[セメント分散剤]
本発明の第三実施形態は、第一実施形態の変性アルキレンイミン系共重合体を含む、セメント分散剤である。第一実施形態の変性アルキレンイミン系共重合体を含む、セメント分散剤は、減水作用を有しつつ、セメント組成物に添加した際にセメントが硬化するまでの時間(凝結時間)が、例えば高性能AE減水剤として知られるポリカルボン酸系高性能AE減水剤(例えば、後述の製造例31)と比較して、比較的短い。また、凝結時間が短縮され、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(例えば、後述の製造例31)と同等以上の一日強度を有する。よって、本実施形態のセメント分散剤によれば、優れた減水性を有しつつ、凝結時間を短縮することができるため、施工時の作業効率性が向上する。また、第一実施形態の変性アルキレンイミン系共重合体を含む、セメント分散剤は、減水作用を有しつつ、セメント組成物に添加した際に、例えば高性能AE減水剤として知られるポリカルボン酸系高性能AE減水剤(例えば、後述の製造例31)と比較して、空気連行性が低く、セメントに過度に空気が混じりこむことを抑制することができる。
【0079】
本実施形態のセメント分散剤のJIS A 6204:2011にしたがって測定される減水率は、6%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましい。このような減水率を有することで、十分な減水性を発揮することができる。
【0080】
セメント分散剤は、第一実施形態の変性アルキレンイミン系共重合体を主成分とする。ここで、主成分とは、セメント分散剤の80質量%以上であることを指し、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上である(上限は100質量%、すなわち、変性アルキレンイミン系共重合体のみからなるセメント分散剤)。
【0081】
また、セメント分散剤は、AE減水剤であることが好ましく、高性能AE減水剤であることがより好ましい。このような分類は、JIS A 6204:2011に定義される。
【0082】
[セメント組成物]
本発明の第四実施形態は、第一実施形態の変性アルキレンイミン系共重合体およびセメントを含む、セメント組成物である。
【0083】
セメント組成物中の、変性アルキレンイミン系共重合体の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100質量部に対するセメント用添加剤の含有割合として、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.02~5質量部であり、さらに好ましくは0.05~3質量部である。このような含有割合とすることにより、低い粘性、高い流動性、強度の増大等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。
【0084】
セメント組成物は、好ましくは、水を含む。セメント組成物は、好ましくは、骨材を含む。
【0085】
セメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、セメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0086】
セメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m3~185kg/m3であり、使用セメント量が250kg/m3~800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.1~0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m3~180kg/m3であり、使用セメント量が270kg/m3~800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.12~0.65である。
【0087】
骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂(陸砂等)、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
【0088】
セメント組成物は任意の他の成分を添加してもよい。例えば、他のセメント分散剤を用いてもよい。セメント分散剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0089】
セメント分散剤としては、従来公知のセメント分散剤を用いることができる。セメント分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変成リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系等の分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤;特公昭59-18338号公報、特開平7-223852号公報に記載されるようなポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体;特開平10-236858号公報、特開2001-220417号公報、特開2002-121055号公報、特開2002-121056号公報に記載のような不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、マレイン酸系単量体または(メタ)アクリル酸系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤;特開2006-52381号公報に記載のような(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸基とを有する各種リン酸系分散剤、特表2008-517080号公報に記載のリン酸系分散剤などが挙げられる。
【0090】
セメント組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のセメント添加剤を含有することができる。このような他のセメント添加剤としては、例えば、以下の(1)~(12)に例示するような他のセメント添加剤が挙げられる。
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β-1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)硬化遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース、異性化糖などの単糖類;マルトース、シュークロース、ラクトースなどの二糖類;ラフィノースなどの三糖類;デキストリンなどのオリゴ糖エリスリトール、キシリトール、D-アラビニトール、L-アラビニトール、リビトール、ボレミトール、ペルセイトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、D-トレイトール、L-トレイトール、D-イジトール、D-グリシドール、D-エリトローD-ガラクト-オクチトールなどの糖または糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)オキシアルキレン系消泡剤:ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(6)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
(7)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホネート等。
(8)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(9)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(10)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(11)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(12)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0091】
その他の公知のセメント添加剤としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、その他のセメント添加剤はその添加目的を考慮してセメント組成物中に適当量配合される。
【0092】
セメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。セメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
【0093】
セメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
【実施例0094】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0095】
(製造例1)
(1)単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数6モル)の製造
単官能型エポキシPEGは、特開2015-163571号公報に記載の方法で調製した。具体的には下記のとおりである。
【0096】
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを44.5部、濃度60%の水素化ナトリウム13.2部を仕込んだ。エチレンオキサイドの平均付加モル数が6であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(6モル)ともいう。)88.9部にテトラヒドロフラン44.5部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
【0097】
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン111.0部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、9.9部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
【0098】
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
【0099】
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数6モル)を得た。
【0100】
(2)ポリエチレンイミン変性体の製造方法
還流冷却器、温度計、攪拌機を備えたガラス製の200mlセパラブルフラスコにポリエチレンイミン(エポミンSP-075、数平均分子量7,500、日本触媒社製分子量7,500)5.0gを仕込み、純水43.2gを加えて溶解させた後、上記(1)で得られた単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数6モル)12.2gを加えて溶解させた。この溶液を90℃まで昇温し、1時間撹拌した。
【0101】
撹拌終了後、室温まで冷却し、アクリル酸2.6gを加えた後、90℃まで昇温し、5時間撹拌することで、ポリエチレンイミン変性体1を得た。得られた生成物(ポリエチレンイミン変性体1)の重量平均分子量は29,500であった。
【0102】
(製造例2)
(1)単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数25モル)の製造
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを50.0部、濃度60%の水素化ナトリウム2.0部を仕込んだ。
【0103】
エチレンオキサイドの平均付加モル数が25であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(25モル)ともいう。)50.0部にテトラヒドロフラン50.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン16.4部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、1.5部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
【0104】
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
【0105】
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、単官能型エポキシPEGを得た。
【0106】
(2)ポリエチレンイミン変性体の製造方法
還流冷却器、温度計、攪拌機を備えたガラス製の200mlセパラブルフラスコにポリエチレンイミン(エポミンSP-018、数平均分子量1,800、日本触媒社製)4.5gを仕込み、純水30.9gを加えて溶解させた後、単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数25モル)30.9gを加えて溶解させた。この溶液を90℃まで昇温し、1時間撹拌した。撹拌終了後、室温まで冷却し、アクリル酸3.8gを加えた後、90℃まで昇温し、5時間撹拌することで、ポリエチレンイミン変性体を得た。得られた生成物(ポリエチレンイミン変性体)の重量平均分子量は21,826であった。
【0107】
(製造例3~5)
各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例2と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0108】
(製造例6~9)
ポリエチレンイミンとして(エポミンSP-030、数平均分子量3,000、日本触媒社製)を用い、各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例2と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0109】
(製造例10~13)
ポリエチレンイミンとして(エポミンSP-050、数平均分子量5,000、日本触媒社製)を用い、各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例2と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0110】
(製造例14~15)
ポリエチレンイミンとして(エポミンSP-075、数平均分子量7,500、日本触媒社製)を用い、各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例2と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0111】
(製造例16~19)
ポリエチレンイミンとして(エポミンSP-200、数平均分子量10,000、日本触媒社製)を用い、各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例2と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0112】
(製造例20)
(1)単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数97モル)の製造
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを80.0部、濃度60%の水素化ナトリウム1.9部を仕込んだ。
【0113】
エチレンオキサイドの平均付加モル数が97であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(97モル)ともいう。)172.5部にテトラヒドロフラン80.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン15.1部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、1.4部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
【0114】
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
【0115】
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、単官能型エポキシPEGを得た。
【0116】
(2)ポリエチレンイミン変性体の製造方法
還流冷却器、温度計、攪拌機を備えたガラス製の200mlセパラブルフラスコにポリエチレンイミン(エポミンSP-018、数平均分子量1,800、日本触媒社製)2.5gを仕込み、純水46.6gを加えて溶解させた後、単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数97モル)46.6gを加えて溶解させた。この溶液を90℃まで昇温し、1時間撹拌した。撹拌終了後、室温まで冷却し、アクリル酸2.4gを加えた後、90℃まで昇温し、5時間撹拌することで、ポリエチレンイミン変性体を得た。得られた生成物(ポリエチレンイミン変性体)の重量平均分子量は36,309であった。
【0117】
(製造例21~22)
各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例20と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0118】
(製造例23~24)
ポリエチレンイミンとして(エポミンSP-050、数平均分子量5,000、日本触媒社製)を用い、各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例20と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0119】
(製造例25~27)
ポリエチレンイミンとして(エポミンSP-075、数平均分子量7,500、日本触媒社製)を用い、各化合物の仕込み比等を適宜変更したこと以外は製造例20と同様にして、表1に記載の生成物(ポリエチレンイミン変性体)を得た。
【0120】
(製造例28)
(1)単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数47モル)の製造
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを66.7部、濃度60%の水素化ナトリウム4.4部を仕込んだ。
【0121】
エチレンオキサイドの平均付加モル数が47であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(47モル)ともいう。)211.7部にテトラヒドロフラン66.7部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン37.8部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、3.3部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
【0122】
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
【0123】
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、単官能型エポキシPEGを得た。
【0124】
(2)ポリエチレンイミン変性体の製造方法
還流冷却器、温度計、攪拌機を備えたガラス製の200mlセパラブルフラスコにポリエチレンイミン(エポミンSP-018、数平均分子量1,800、日本触媒社製)9.0gを仕込み、純水46.8gを加えて溶解させた後、単官能型エポキシPEG(エチレンオキシドの平均付加モル数47モル)31.2gを加えて溶解させた。この溶液を90℃まで昇温し、1時間撹拌した。撹拌終了後、室温まで冷却し、アクリル酸12.9gを加えた後、90℃まで昇温し、5時間撹拌することで、ポリエチレンイミン変性体を得た。得られた生成物(ポリエチレンイミン変性体)の重量平均分子量は22,468であった。
【0125】
(製造例29)
製造例28において、アクリル酸をマレイン酸20.8g添加に変更したこと以外は、製造例28と同様にしてポリエチレンイミン変性体を得た。
【0126】
(製造例30)
SUS316製の1Lオートクレーブにポリエチレンイミン(エポミンSP-200、数平均分子量10,000、日本触媒社製)300.0gを仕込み、撹拌下、温度を145℃に保ち、エチレンオキシド51.9gを加え、1時間撹拌した。得られた化合物46.9gにエチレンオキシド34.6gを加え、特開2003-055450号公報の実施例1の方法に準じてエチレンオキシド付加を行った。得られた化合物42.5gを、還流冷却器、温度計、攪拌機を備えたガラス製の200mlセパラブルフラスコに仕込み、純水34.8gを加えて溶解させた後、アクリル酸4.5gを加え、90℃まで昇温し、5時間撹拌することで、ポリエチレンイミン変性体を得た。得られた生成物(ポリエチレンイミン変性体)の重量平均分子量は33,668であった。
【0127】
(製造例31:比較例、特開昭61-83663号公報 実施例34の追試)
SUS316製の1Lオートクレーブにポリエチレンイミン(エポミンSP-200、数平均分子量10,000、日本触媒社製)49.4gを仕込み、純水100.0gを加えて溶解させた後、撹拌下、温度を20~40℃に保ち、エチレンオキシド32.9gを加え、2時間撹拌した。この溶液にアクリル酸16.5gを加えた後、80℃まで昇温し、3時間撹拌することで、ポリエチレンイミン変性体を得た。得られた生成物(ポリエチレンイミン変性体)の重量平均分子量は30,439であった。このポリエチレンイミン変性体はmで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数が1.0である。
【0128】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
ポリエチレンイミン変性体の重量平均分子量は、以下の測定法により測定した。
【0129】
装置:Waters Alliance e2695(Waters社製)
解析ソフト:Empowerプロフェッショナル+GPCオプション(Waters社製)
カラム:TSKgel ガードカラムα(内径6.0×40mm)+α5000+α4000+α3000(各内径7.8×長さ300mm)(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶媒:100mMホウ酸水溶液15170gに水酸化ナトリウム30.4gとアセトニトリル3800gを混合した溶液
流速:1.0mL/min
試料導入量:100μL
試料濃度:0.5質量%
検出器:示差屈折率計(RI)検出器 Waters 2414(Waters社製)
較正曲線:標準物質として東ソー社製ポリエチレングリコール(Mp=300000、200000、107000、50000、27700、11840、6450、1470、1010、400)を使用し、Mpと溶出時間を基礎に三次式で作成
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
ポリエチレンイミンの数平均分子量は、以下の測定法により測定した。
【0130】
測定装置;株式会社島津製作所製
使用カラム;昭和電工株式会社製SHODEX OHpak SB-807
HQ(2本)+SB-806M/HQ(2本)
溶離液;0.5モル%-硝酸ナトリウム、0.5モル%-酢酸に調製したもの
標準物質;プルランP-82(和光純薬工業株式会社製)
検出器;示差屈折計(株式会社島津製作所製)。
【0131】
(評価1:化合物添加量)
<モルタル試験条件>
温度:20℃±1℃
相対湿度:60±10%
モルタル配合:C/S/W=535g/1350g/214g
水/セメント比:0.4
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:試料と消泡剤のイオン交換水溶液
とし、Wについては消泡剤MA-404(BASFジャパン社製)を各試料の固形分に対して20質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。モルタルの調製はJIS-R5201-1997に準拠して次のように行った。ホバート型ミキサー(型番N-50;ホバート社製)を用い、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に2速で60秒間混練を行い、モルタルを調製した。得られたモルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで左右各10回かき混ぜた後、直ちにフロー測定板(30cm×30cm)に置かれたミニスランプコーン(JISマイクロコンクリートスランプコーン、上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)に半量詰めて15回突き棒で突き、更にモルタルをミニスランプコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回突き棒で突き、最後に不足分を補い、ミニスランプコーンの表面をならした。その後、最初にミキサーを始動させてから5分30秒後にミニスランプコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値をモルタルフロー値とした。重合体の添加量を適宜変えて以上の操作を繰り返し、フロー値が200mmとなる添加量(標準添加量)を求めた。なお、重合体の添加量は、セメント質量に対する重合体固形分の質量%である。
【0132】
表1に各製造例で得られた化合物の組成、重量平均分子量、分散度および添加量の結果を記載する。
【0133】
【0134】
【0135】
上記において、仕上り組成(mol%)は、生成物中に含まれる未反応の原料である酸モノマーをLC(液体クロマトグラフィー)で定量し、また未反応の原料である単官能型エポキシPEGをGPCで定量し、反応で消費した原料の量比を仕上がり組成比とした。
【0136】
以上の結果より、実施例である製造例1~30のポリエチレンイミン変性体は、比較例である製造例31のポリエチレンイミン変性体と比較して、添加量が少なく、優れた減水性能を発揮することがわかった。
【0137】
また、ポリエチレングリコールの平均付加モル数が20以上であり、構成単位(I)および(II)の合計に対して、構成単位(I)のモル含有率が72モル%以上95モル%以下である、製造例3~5、7~15、17~21、23~29のポリエチレンイミン変性体は、優れた減水性能を発揮することがわかった。さらに、ポリエチレンイミン由来の重量平均分子量が30,000以上であり、ポリエチレンイミンの数平均分子量が2,000以上である、製造例10~15、17~19、23~27のポリエチレンイミン変性体は、特に優れた減水性能を発揮することがわかった。
【0138】
(製造例32:比較例 ポリカルボン酸共重合体の製造)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水182.5gを仕込み、撹拌下に反応装置を窒素置換し、80℃に昇温した。次に、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数:6モル)175.4g、メタクリル酸24.6g、3-メルカプトプロピオン酸1.2gをイオン交換水23.2gで溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。それと同時に、イオン交換水47.6gに過硫酸アンモニウム1.6gを溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて1時間攪拌を続け重合反応を終了し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7まで中和した。得られた生成物(ポリカルボン酸系共重合体)の重量平均分子量は73,653であった。
【0139】
(評価2:空気連行性の評価)
試験は、温度20℃±1℃、相対湿度が60%±15%の環境下で行った。モルタル配合は、C/S/W=587/1350/264(g)とした。
ただし、
C:セメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製)
S:細骨材(大井川産陸砂)
W:試料と消泡剤のイオン交換水溶液
とし、Wについては消泡剤MA-404(BASFジャパン社製)を各試料の固形分に対して20質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。以降のモルタルの調製を下記のように行い、フロー値の測定は評価1と同様にして行った。重合体の添加量を適宜変えて以上の操作を繰り返し、フロー値が200mmとなる添加量(標準添加量)を求めた。
【0140】
試験環境およびモルタル配合は同様に、Wを(消泡剤を添加しない)試料のイオン交換水溶液に変更し、上記で求めた添加量(標準添加量)で重合体を各試料に添加してモルタルを調製し、モルタル空気量から空気連行性の評価を行った。各試料の添加量は、セメント質量に対する各試料の固形分の質量%で表2に示した。
【0141】
モルタルの調製
モルタルの調製は次のように行った。モルタルミキサー(ホバート社製ミキサー、型番:N-50)を用い、混練容器へCおよびSを投入し、1速で10秒間混練した。さらに1速で混練しながら、Wを10秒かけて投入した。Wの投入を始めてから1分後にミキサーを停止し、20秒間モルタルの掻き落としを行った。その後、さらに1速で30秒間混練を行い、モルタルを調製した。
【0142】
モルタル空気量の測定
モルタル空気量の測定は、次のように行った。モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。さらにモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
【0143】
結果を表2に示す。
【0144】
【0145】
上記結果より、実施例のポリエチレンイミン変性体は、少ない添加量で混錬時に巻き込む空気量が少なく、空気連行性に優れることがわかった。一方、比較例1では、空気連行性が大幅に低下し、また、比較例2では、空気連行性には優れるものの、減水性能が顕著に低下する結果となった。
【0146】
(評価3:モルタルの凝結時間の測定)
各試料を添加してモルタルを調製し、モルタルの凝結時間を測定した。
試験は、温度20℃±1℃、相対湿度が60%RH±15%RHの環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=587/1350/264(g)とした。
ただし、
C:セメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製)
S:細骨材(大井川産陸砂)
W:試料と消泡剤のイオン交換水溶液
とし、Wについては消泡剤MA-404(BASFジャパン社製)を各試料の固形分に対して20質量%加え、さらにイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。評価例2と同様にフロー値が200mmとなる添加量(標準添加量)を求め、各試料の添加量としてセメント質量に対する各試料の固形分の質量%で表3に示した。
【0147】
(モルタルの調製およびフロー値の測定)
モルタルの調製はJIS-R5201-1997に準拠して次のように行った。ホバート型ミキサー(型番N-50;ホバート社製)を用い、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に2速で60秒間混練を行い、モルタルを調製した。得られたモルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで左右各10回かき混ぜた後、モルタルをフローテーブル上に置いたフローコーンに2層に分けて詰めた。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るように、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い、表面をならし、1番始めに低速で始動させてから6分後に、フローコーンを垂直に持ち上げて取り去り、15秒間に15回の落下運動を与え、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。
【0148】
凝結時間の測定
JIS A 6204:2011に準じて、凝結の始発時間および終結時間を測定した。
【0149】
1日圧縮強度の測定
上記方法により調製したモルタルを、水平なテーブル上に置いた円筒形型枠(直径5cm、高さ10cm)に型枠容量の3分の1まで詰め、突き棒を使って20回突いた後、型枠容器に振動を加え、粗い気泡を抜いた。さらに型枠のすりきりいっぱいまでモルタルを詰め、突き棒を使って20回突いた後、型枠容器に振動を加えた。乾燥を防ぐため、上面をPETフィルムで覆い、室温20℃の環境にて24時間養生を行ったものを供試体とした。この方法により作製した供試体を用いて、コンクリート試験の圧縮強度測定方法(JIS A1108:2006年)に準じて圧縮強度を測定した。
【0150】
結果を表3に示す。
【0151】
【0152】
以上の結果より、実施例のポリエチレンイミン変性体は、凝結始発時間が早く、作業時間の短縮につながることがわかった。また、一日強度もポリカルボン酸系共重合体よりも高いものであった。