(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112535
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】微細藻類の培養装置とその集積装置及び培養方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220727BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008349
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】396020132
【氏名又は名称】株式会社システック
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 鐵也
(72)【発明者】
【氏名】梶村 泰介
(72)【発明者】
【氏名】宮下 公一
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DB17
4B029DF04
4B029DF10
4B065AA83X
4B065AC09
4B065BB22
4B065BC06
4B065BC07
4B065BC48
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、大掛かりな設備を要しないで、室内で微細藻類の培養が可能かつ、集積可能な培養装置と集積装置及び培養方法を提供することである。
【解決手段】
本発明による微細藻類の培養装置とその集積装置は、微細藻類と培地を収容し、微細藻類と培地を駆動する液駆動手段を備え、菌遮断性及び透光性を有する容器と、気体供給手段と、照光手段と、を有し、容器を収容する筐体とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類と前記微細藻類を培養する培地とを収容し、菌遮断性及び透光性を有する容器と、前記微細藻類の呼吸のための酸素又は光合成のための二酸化炭素を前記容器内に雑菌の侵入を防ぐフィルタを介して供給する気体供給手段と、前記容器の前記透光性の部分を介して前記微細藻類に前記光合成のための光を供給する照光手段と、前記容器を収容する筐体と、を備えたことを特徴とする微細藻類の培養装置。
【請求項2】
前記容器は、前記微細藻類と前記培地を、揺動させる又は及び、流動させる液駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の微細藻類の培養装置。
【請求項3】
前記培養では、前記容器を多数個集積し、培養を行わせることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の微細藻類の培養装置。
【請求項4】
前記気体供給手段において、前記フィルタの前記容器外の環境を大気中とすることで、前記フィルタを介し前記大気中の酸素及び二酸化炭素を前記培養に供することで配管を廃したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の微細藻類の培養装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の微細藻類の培養装置を用い、
前記培地としては、酒粕溶液を用いたことで、前記酒粕の酵母の作用により細菌又はカビの増殖を回避したことを特徴とする微細藻類の培養方法。
【請求項6】
前記酒粕溶液は、酒粕と清浄水の懸濁液であることを特徴とする請求項5記載の微細藻類の培養方法。
【請求項7】
前記懸濁液の酒粕濃度が1%付近であることを特徴とする請求項6記載の微細藻類の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユーグレナ等の微細藻類の培養装置とその集積装置と培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の培養装置を示す図である。4-Aは、特許文献1に示されたもので、プラスチック無菌バッグであり、ステンレスの口金がシリコンゴム板で封鎖され、注射針を使い液体を出し入れする。4-Bは、特許文献2に示されるもので、2枚のプラスチックシートを重ね合わせ袋状に形成した容器本体に第一と第二の接続部材を備える。
両者ともプラスチックバッグを培養に使用する記述をした文献である。
4-Cでは、特許文献3に示されるもので、上記のようなプラスチックバッグを使い、音響定在波細胞分離器を使用しているが、フィルタとして、中糸繊維(糸)カートリッジを用いた記述がある。4-Dでは、特許文献4に示されるもので、ハウジングの内部に中空糸膜を有する培養容器にコネクタを介して、細胞供給バッグ、培地供給バッグ、細胞分離バッグを一体形成したものである。ここでは、中空糸膜は、細胞を付着する目的で使っている。プラスチックバッグの使用の記述もある。
4-Eでは、特許文献5に示されるもので、酸素透過性のある壁を持つ微生物保存容器を示している。ここでの特徴は、気体透過性の容器が示されたことである。
4-Fでは、酸素や二酸化炭素等の気体透過性のバイオリアクターユニットにポンプで培地と培養のための光合成微生物を送り込む。ユニット外の雰囲気(主に開放系が好ましいとの記述)から、気体をユニット内に浸透させて培養を行うものである。
以上のような培養の発展の経緯で、通気性バッグやユニットを使い培養することは広く行われる技術であるが、4-Fの技術においては、ポンプや送液系が大掛かりで設備費が大きくなると同時に、無菌状態を維持する手段も負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-37271
【特許文献2】特開S63-214178
【特許文献3】特表2017-502666
【特許文献4】特開S63-102667
【特許文献5】特表2013-518781
【特許文献6】特表2018-535690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、大掛かりな設備を要しないで、室内で微細藻類の培養が可能かつ、集積可能な培養装置と集積装置及び培養方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による微細藻類の培養装置とその集積装置は、微細藻類と培地を収容し、微細藻類と培地を駆動する液駆動手段を備え、菌遮断性及び透光性を有する容器と、気体供給手段と、照光手段と、を有し、容器を収容する筐体とを備える。
以下請求項に沿い記述する。
請求項1記載の発明は、微細藻類の培養装置であって、
微細藻類と前記微細藻類を培養する培地とを収容し、菌遮断性及び透光性を有する容器と、前記微細藻類の呼吸のための酸素又は光合成のための二酸化炭素を前記容器内に雑菌の侵入を防ぐフィルタを介して供給する気体供給手段と、前記容器の前記透光性の部分を介して前記微細藻類に前記光合成のための光を供給する照光手段と、前記容器を収容する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の微細藻類の培養装置において、
前記容器は、前記微細藻類と前記培地を、揺動させる又は及び、流動させる液駆動手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の微細藻類の培養装置において、
前記培養では、前記容器を多数個集積し、培養を行わせることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の微細藻類の培養装置において、前記気体供給手段において、前記フィルタの前記容器外の環境を大気中とすることで、前記フィルタを介し前記大気中の酸素及び二酸化炭素を前記培養に供することで配管を廃したことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、微細藻類の培養方法であって、
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の微細藻類の培養装置を用い、
前記培地としては、酒粕溶液を用いたことで、前記酒粕の酵母の作用により細菌又はカビの増殖を回避したことを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の微細藻類の培養方法において、
前記酒粕溶液は、酒粕と清浄水の懸濁液であることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の微細藻類の培養方法において、
前記懸濁液の酒粕濃度が1%付近であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の様に構成されているので、本発明による微細藻類の培養装置では、微細藻類と培地を容器に封止し、培養を行えば、容易に培養ができるので、大掛かりな設備を必要とせずどこでも培養が完成する。容器の殺菌浄化処理、播種処理、培養環境での設定も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明にかかる微細藻類の培養装置の一実施態様を示す図である。
【
図2】本発明にかかる微細藻類の培養装置の培養環境での状態の一実施態様を示す図である。
【
図3】本発明にかかる微細藻類の培養装置と方法において、酒粕を培養液として用いた実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明にかかる微細藻類の培養装置の一実施態様を示す図である。
本発明による微細藻類の培養装置100は、微細藻類・培地150を収容し、外部からの菌の侵入を回避し、気体供給手段140と微細藻類・培地150を駆動する液駆動手段160を有する菌遮断性及び透光性の容器130と、照光手段120を有し、容器130を収容する筐体110とを備える。図は、断面で記述してあるが、当然奥行きがある。
尚、菌遮断性及び透光性の容器130は、
図1のみならず、本願全体において、容器130は、菌遮断性及び透光性を有するものとする。
【0015】
照光手段120は、発光ダイオードを使うことができる。光の波長等は、先行技術として記述されているので利用できる。例えば、赤色光と青色光の同時照射が培養収率がよいという文献もある。Eco-Engineering,19(1),27-32,2007「ユーグレナの光合成生育に与える光質とCO2濃度の影響」
培養では、微細藻類が光合成しながら、培地を養分にして増殖するので、例えば、1日の内、12時間は、CO2を供給して、光の照射を行い、光合成させ、残り12時間は、酸素(空気)を供給して光を遮断する。CO2や酸素(空気)の濃度は、また、上記文献やその他の資料を参照できる。尚、光照射の明/暗の時間配分として、12時間/12時間から14時間/10時間が培養条件として好ましい。16時間/8時間でも可能である。
【0016】
CO2や酸素(空気)は、各々、この図では、気体供給手段140から供給されるが、外からの菌類の侵入を防ぐため、フィルタを介して行うのがよい。尚、フィルタとしては、0.2μ孔のものを使用した。
フィルタを介しての気体供給について更に検討すると、気体供給手段140として、ボンベから配管を介して供給する以外に、フィルタを介して雑菌の侵入を防いでいればよく、容器130の外の大気中の酸素や二酸化炭素がフィルタを介して入ってくるため、これを利用することができて、気体供給手段140しては、必ずしもボンベ配管は必要ではなく、設備上の負担を小さくすることが出来極めて都合がよい。
尚、容器130の菌遮断性についてであるが、容器内が外気に接すること無く、容器130に設けられたバルブ等を介して微細藻類を取り出し、入れることができる微細藻類の取り出し、入れ口を有しているのは、培養装置の性格上当然の事である。更に、無菌状態の空間で開閉でき、微細藻類の取り出し、入れ、閉じた状態では、容器130内を無菌状態を維持するものでもよい。
【0017】
なお、容器130は、照光手段120に面する側は、少なくとも光を透過する透光性が必要である。又、容器130は、フィルタ部分以外は菌遮断状態の密閉性であり、微細藻類・培地150を入れ又は出す、または、洗浄など清浄化のために、蓋が開き、閉めができる構造が好ましい。容器130は、微細藻類・培地150を入れる前に、殺菌や防カビのため、次亜塩素酸水など電解水で洗浄や紫外線照射処理により清浄化する。
液駆動手段160は、回動(サーキュレーション)や振動などの手段である。
【0018】
培地としては、酒粕を無菌の水、好ましくは純水に溶いたものが都合がよい。酒粕は、微細藻類の栄養源になるだけでなく、酵母を含むので、酵母が働いて他の菌類やカビが増えることを抑制してくれるからである。
図3は、本発明にかかる微細藻類の培養装置と方法において、酒粕を培養液として用いた実験結果を示す図である。
酒粕の用い方として、酒粕を混ぜた清浄水(無菌であること)の濾過液や上澄み液を用いる場合と、酒粕と清浄水の懸濁液を用いた場合とを比較実験した結果を3-Aに示す。培養開始時と10日後の465nmと710nm吸光度を比較した結果、懸濁液の方が培養に対する効果が大きいことが得られた。データの見方として、吸光度が大きい方が、ユーグレナの増殖が進んでいることを示している。尚、目視に於いても、懸濁液の方が明らかに濃い緑色を示していた。
更に、懸濁液の酒粕濃度を0.5%、1.0%、2.0%に調整し、同様にユーグレナの培養を行った。5日後のユーグレナの増殖は1.0%>0.5%≧2.0%であった。
比較実験の結果を3-Bに示す。
【0019】
図2は、本発明にかかる微細藻類の培養装置の培養環境での状態の一実施態様を示す図である。
図1の装置を2段に重ねて使用したものである。このように縦横奥行き方向に複数個自在に集積して使用することができる。
なお、温度を所望の範囲にする温度調節装置があるとよい。
【0020】
以上の記述以外に、照光手段120は、自然光を利用でも対応できる。
なお、培地として、ブドウ糖を含有することもできる。
更に、以上で関連する微細藻類、培地として、代表的な記述として、以下の文献に記述があり、必要に応じ利用することができることを示し、個々の重複した記述を省くこととする。
微細藻類について、特許文献6(特表2018-535690)
培地について、特開2015-192649、特許第6031158号
勿論、これ以外の例の適用も可能である。
なお、本願の培養装置は、主にユーグレナの培養に適する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように本発明にかかる微細藻類の培養装置と集積装置及び培養方法は、容器130と主に、酒粕水溶液による培地と、照光手段により光合成培養が行われ、簡単な構成の装置によるため、産業上利用して極めて好都合である。
【0022】
100 微細藻類の培養装置
110 筐体
120 照光手段
130 容器
140 気体供給手段
150 微細藻類・培地
160 液駆動手段