(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112568
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】パリソン肉厚調整装置、それを備えたブロー成形機、及びブロー成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/42 20060101AFI20220727BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B29C49/42
B29C49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008400
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 応之介
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AG07
4F208AH16
4F208AH17
4F208LA01
4F208LA08
4F208LB01
4F208LG04
4F208LG23
4F208LG25
(57)【要約】
【課題】例えばブロー成形機等に好適であって、良質なパリソン肉厚調整装置を提供すること。
【解決手段】一実施形態に係るパリソン肉厚調整装置は、ぞれぞれの一端が支柱に固定されると共に、パリソンの内周面に向かって延伸可能に設けられた複数のアクチュエータを備える。当該複数のアクチュエータのそれぞれの他端が、パリソンの内周面を押圧する量を制御し、パリソンの肉厚をパリソンの円周方向において変化させる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のパリソンの内部に挿入される際、前記パリソンの長手方向に沿って延設された支柱と、
ぞれぞれの一端が前記支柱に固定されると共に、前記パリソンの内周面に向かって延伸可能に設けられた複数のアクチュエータと、を備え、
前記複数のアクチュエータのそれぞれの他端が、前記パリソンの内周面を押圧する量を制御し、前記パリソンの肉厚を前記パリソンの円周方向において変化させる、
パリソン肉厚調整装置。
【請求項2】
前記複数のアクチュエータは、前記支柱を介して対向配置された複数対のアクチュエータである、
請求項1に記載のパリソン肉厚調整装置。
【請求項3】
前記複数のアクチュエータは、前記支柱を中心として、放射状に等間隔で配置されている、
請求項1に記載のパリソン肉厚調整装置。
【請求項4】
前記複数のアクチュエータが、前記支柱の長手方向に沿って、複数段設けられている、
請求項1に記載のパリソン肉厚調整装置。
【請求項5】
前記支柱及び前記複数のアクチュエータを昇降させる昇降装置をさらに備える、
請求項1に記載のパリソン肉厚調整装置。
【請求項6】
溶融樹脂を押し出す押出機と、
前記押出機に連結され、前記溶融樹脂から筒状のパリソンを成形するヘッドと、
前記パリソンの肉厚を調整するパリソン肉厚調整装置と、
前記パリソン肉厚調整装置によって肉厚を調整された前記パリソンを挟み込むと共に、挟み込んだ前記パリソンにガスを吹き込む金型と、を備え、
前記パリソン肉厚調整装置が、
前記パリソンの内部に挿入されると共に、前記パリソンの長手方向に沿って延設された支柱と、
ぞれぞれの一端が前記支柱に固定されると共に、前記パリソンの内周面に向かって延伸可能に設けられた複数のアクチュエータと、を備え、
前記複数のアクチュエータのそれぞれの他端が、前記パリソンの内周面を押圧する量を制御し、前記パリソンの肉厚を前記パリソンの円周方向において変化させる、
ブロー成形機。
【請求項7】
前記複数のアクチュエータは、前記支柱を介して対向配置された複数対のアクチュエータである、
請求項6に記載のブロー成形機。
【請求項8】
前記複数のアクチュエータは、前記支柱を中心として、放射状に等間隔で配置されている、
請求項6に記載のブロー成形機。
【請求項9】
前記複数のアクチュエータが、前記支柱の長手方向に沿って、複数段設けられている、
請求項6に記載のブロー成形機。
【請求項10】
前記パリソン肉厚調整装置が、前記支柱及び前記複数のアクチュエータを昇降させる昇降装置をさらに備える、
請求項6に記載のブロー成形機。
【請求項11】
(a)溶融樹脂からパリソンを押出成形する工程と、
(b)前記パリソンの肉厚を調整する工程と、
(c)押出成形された前記パリソンを金型により挟み込むと共に、挟み込んだ前記パリソンにガスを吹き込む工程と、を備え、
工程(b)において、
前記パリソンの内周面に向かって延伸可能に設けられた複数のアクチュエータのそれぞれが、前記パリソンの内周面を押圧する量を制御し、前記パリソンの肉厚を前記パリソンの円周方向において変化させる、
ブロー成形品の製造方法。
【請求項12】
前記複数のアクチュエータは、前記パリソンの長手方向に沿って延設された支柱を介して対向配置された複数対のアクチュエータである、
請求項11に記載のブロー成形品の製造方法。
【請求項13】
前記複数のアクチュエータは、前記パリソンの長手方向に沿って延設された支柱を中心として、放射状に等間隔で配置されている、
請求項11に記載のブロー成形品の製造方法。
【請求項14】
前記複数のアクチュエータが、前記パリソンの長手方向に沿って延設された支柱の長手方向に沿って、複数段設けられている、
請求項11に記載のブロー成形品の製造方法。
【請求項15】
工程(b)よりも後、工程(c)よりも前に、
前記複数のアクチュエータを降下させて、前記パリソンの内部から取り出す、
請求項11に記載のブロー成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパリソン肉厚調整装置、それを備えたブロー成形機、及びブロー成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形機(「中空成形機」とも呼ばれる)では、押出機に連結されたヘッドから押し出された筒状のパリソンを一対の金型で挟み込み、金型内のパリソン内部にエアを吹き込むことによりブロー成形品を製造する。このようなブロー成形機において、ヘッドの先端部に、パリソン断面の肉厚を円周方向において変化させることができるパリソン肉厚調整装置を設けたものが知られている。製造するブロー成形品の形状に応じて、パリソン断面の肉厚を逐次調整することにより、ブロー成形品の駄肉を削減し、軽量化することができる。
【0003】
特許文献1に開示されているように、発明者らは、パリソンの外周面を規定するフレキシブルリングを複数のアクチュエータによって様々な形状に変形させることにより、パリソン断面の肉厚を円周方向において変化させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、パリソン断面の肉厚を円周方向において変化させることができるパリソン肉厚調整装置の開発に際し、様々な課題を見出した。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るパリソン肉厚調整装置は、ぞれぞれの一端が支柱に固定されると共に、パリソンの内周面に向かって延伸可能に設けられた複数のアクチュエータを備える。当該複数のアクチュエータのそれぞれの他端が、パリソンの内周面を押圧する量を制御し、パリソンの肉厚をパリソンの円周方向において変化させる。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施形態によれば、例えばブロー成形機等に好適であって、良質なパリソン肉厚調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るブロー成形機の概要を示す模式的断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るブロー成形機の概要を示す模式的断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るブロー成形機の概要を示す模式的断面図である。
【
図4】車両用のプラスチック燃料タンクの外観写真である。
【
図5】比較例に係るブロー成形機の概要を示す模式的断面図である。
【
図6】比較例に係るパリソン肉厚調整装置の平面図である。
【
図7】比較例に係るパリソン肉厚調整装置によるパリソン断面の変形パターンの一例を示す平面図である。
【
図8】比較例に係るパリソン肉厚調整装置によるパリソン断面の変形パターンの一例を示す平面図である。
【
図9】比較例に係るパリソン肉厚調整装置によるパリソン断面の変形パターンの一例を示す平面図である。
【
図10】第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置の平面図である。
【
図11】第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置の部分側面図である。
【
図12】第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置によるパリソン断面の変形パターンの一例を示す平面図である。
【
図13】第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置における変形用アクチュエータ32a~32hを制御するための制御システムを示すブロック図である。
【
図14】第2の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。
【0010】
(第1の実施形態)
<ブロー成形機の全体構成>
まず、
図1~3を参照して、第1の実施形態に係るブロー成形機の全体構成について説明する。
図1~3は、第1の実施形態に係るブロー成形機の概要を示す模式的断面図である。第1の実施形態に係るブロー成形機は、パリソンを押出成形する押出ブロー成形機である。
なお、当然のことながら、
図1及びその他の図面に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正方向が鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0011】
図1に示すように、第1の実施形態に係るブロー成形機1は、押出機10、ヘッド20、パリソン肉厚調整装置30、型締機40を備えている。詳細には後述するように、第1の実施形態に係るブロー成形機は、パリソン肉厚調整装置30を有しているため、製造するブロー成形品の形状に応じて、パリソン断面の肉厚を逐次調整することができる。そのため、ブロー成形品の駄肉を削減し、軽量化することができる。従って、第1の実施形態に係るブロー成形機は、軽量化が特に要求される車両用のプラスチック燃料タンク(PFT:Plastic Fuel Tank)をブロー成形品として製造する用途に好適である。
【0012】
なお、第1の実施形態に係るブロー成形機によって製造されるプラスチック製のブロー成形品は、燃料タンク以外でもよい。例えば、ブロー成形品として、ドラム缶、中容量コンテナ(IBC:Intermediate Bulk Containers)、工業用薬品ボトル、バッグインボックス(BIB:Bag-In-Box)、ダクト、自動車用のスポイラー等を列挙できる。
【0013】
押出機10はスクリュー式押出機であって、x軸方向に延設されたシリンダ11の内部にx軸方向に延設されたスクリュー12が収容されている。シリンダ11のx軸負方向側端部の上側に、パリソン53の原料である樹脂ペレット51を投入するためのホッパ13が設けられている。ホッパ13から供給された樹脂ペレット51は、回転するスクリュー12の根元部から先端部に向かって、すなわちx軸正方向に押し出される。樹脂ペレット51は、シリンダ11の内部において回転するスクリュー12によって圧縮され、溶融樹脂52に変化する。
なお、図示しないが、スクリュー12には、例えば、減速機を介してモータが駆動源として連結される。
【0014】
ヘッド20は、押出機10のx軸正方向側端部に設けられたアダプタ14を介して、押出機10に連結されている。ヘッド本体21は、鉛直方向(z軸方向)に延設された円筒状の筐体であり、上端部の側面において押出機10に連結されている。ヘッド本体21の上側には、コア25を上下動させ、溶融樹脂52の吐出量を調整する吐出量調整装置22が設けられている。ヘッド本体21の内部には、吐出量調整装置22とコア25とを連結するように鉛直方向に延設されたスピンドル23が収容されている。
【0015】
図1に示すように、押出機10からx軸正方向に押し出された溶融樹脂52は、ヘッド20において鉛直下向きに流動方向を変化させ、ヘッド本体21の下端部からパリソン53として押し出される。
【0016】
ここで、ヘッド本体21の下端部には、円錐台状の貫通孔を有する略円柱状のダイ24が設けられている。コア25は、スピンドル23の下端に固定された略円錐台状の部材であり、ダイ24の略円錐台状の貫通孔に挿入されている。ダイ24とコア25との隙間が樹脂流路である。当該樹脂流路を通過した溶融樹脂52が筒状に成形されて、吐出口からパリソン53として押し出される。
【0017】
ここで、ダイ24とコア25とにより吐出口が規定される。すなわち、ヘッド20から押し出されるパリソン53の断面形状は、ダイ24とコア25とによって規定される。吐出量調整装置22によりコア25を上下動させると、吐出口におけるコア25の径が変化する。そのため、パリソン53の断面における内径及び肉厚が変化する。このように、ダイ24とコア25との間隔を逐次変化させることによって、パリソン53の断面の肉厚をパリソン53の長手方向において変化させることができる。
【0018】
パリソン肉厚調整装置30は、ヘッド20から押し出されるパリソン53の内部に挿入されるように、ヘッド20の下側に設置されている。パリソン肉厚調整装置30は、パリソン53の長手方向に沿って延設された支柱31と、支柱31の先端部に固定された複数の変形用アクチュエータ32とを備えている。また、パリソン肉厚調整装置30は、パリソン53の内部から支柱31及び変形用アクチュエータ32を昇降させる昇降装置33を備えている。
【0019】
複数の変形用アクチュエータ32によってパリソン53を内側から押圧し、筒状のパリソン53の断面の肉厚を円周方向において変化させることができる。
このように、製造するブロー成形品の形状に応じて、押し出されたパリソン53の断面の肉厚を、パリソン肉厚調整装置30によって逐次調整ながらパリソン53を成形する。このような構成により、製造するブロー成形品の駄肉を削減し、ブロー成形品を軽量化できる。
なお、パリソン肉厚調整装置30の詳細については後述する。
【0020】
型締機40は、一対の金型D1、D2、及び一対の可動プラテンMP1、MP2を備えている。金型D1、D2は、それぞれ可動プラテンMP1、MP2に固定されている。可動プラテンMP1、MP2がx軸方向において反対向きにスライドすることにより、金型D1、D2が開閉する。
図1、
図3は、金型D1、D2が開いた状態を示しており、
図2は、金型D1、D2が閉まった状態を示している。
【0021】
ここで、
図1~
図3に示す例では、型締機40は、y軸方向にスライド可能である。
図1に示すように、ブロー成形機1では、金型D1、D2が開いた状態で、パリソン53が鉛直下向きに所定量押し出される。パリソン肉厚調整装置30によってパリソン53の肉厚を調整している間、型締機40は、パリソン肉厚調整装置30よりもy軸正方向側で待機している。
【0022】
その後、
図2に示すように、
図1においてパリソン肉厚調整装置30から押し出されたパリソン53を一対の金型D1、D2で挟み込み、挟み込まれたパリソン53の内部に冷却エアを吹き込むことにより、ブロー成形品54が製造される。図の例では、金型D1に設けられたブローピンBPからガス(例えば冷却エア)を吹き込む。
【0023】
この際、型締機40がヘッド20の下側までy軸負方向に移動する。また、
図2に示すように、パリソン肉厚調整装置30の支柱31及び変形用アクチュエータ32が、昇降装置33によって降下する。これにより、支柱31及び変形用アクチュエータ32が、パリソン53の内部から取り出される。また、支柱31及び変形用アクチュエータ32が、移動してくる型締機40と干渉することを防止できる。
【0024】
図2に示すように、金型D1、D2が閉まった状態で、金型D1、D2がy軸正方向に移動し、パリソン53の押し出しが継続される。
それに伴い、
図3に示すように、パリソン肉厚調整装置30の支柱31及び変形用アクチュエータ32が、昇降装置33によって上昇する。他方、金型D1、D2が開き、ブロー成形品54が取り出される。
【0025】
なお、型締機40がy軸方向にスライドせずに、パリソン肉厚調整装置30よりもy軸正方向側に固定されていてもよい。その場合、押し出されたパリソン53を所定の長さで切断し、切断したパリソン53を型締機40まで搬送する。
また、ブロー成形品54は、例えば、上述の車両用のプラスチック燃料タンクである。
図3に示したブロー成形品54は単純化されている。
ここで、
図4は、車両用のプラスチック燃料タンクの外観写真である。実際のプラスチック燃料タンクは多数の凹凸を有し、駄肉が発生し易い複雑な形状を有している。
【0026】
<比較例に係るパリソン肉厚調整装置>
次に、
図5、
図6を参照して、発明者が事前に検討した比較例に係るパリソン肉厚調整装置について説明する。
図5は、比較例に係るブロー成形機の概要を示す模式的断面図である。
図6は、比較例に係るパリソン肉厚調整装置の平面図である。
【0027】
図5に示すように、比較例に係るブロー成形機では、ダイ24の下端部にパリソン肉厚調整装置300が設けられている。より詳細には、パリソン肉厚調整装置300は、金属製のフレキシブルリング310を備えており、ダイ24の下端部の内周面にフレキシブルリング310の上端部が固定されている。フレキシブルリング310とコア25とによって、溶融樹脂52の吐出口が規定される。すなわち、パリソン53の断面形状は、フレキシブルリング310とコア25とによって規定される。
【0028】
ここで、
図6に示すように、比較例に係るパリソン肉厚調整装置300では、フレキシブルリング310の外周面に、4つの変形用アクチュエータ320a、320b、320c、及び320dが連結されている。
なお、
図5では、変形用アクチュエータは省略されている。
【0029】
図6に示すように、変形用アクチュエータ320a、320bは、フレキシブルリング310の中心線(
図6の例では、一点鎖線で示したx軸方向に延びた中心線)上に設けられている。変形用アクチュエータ320a、320bは、フレキシブルリング310を介して対向配置されており、それぞれが独立してフレキシブルリング310をx軸方向に押し引きして、変形させることができる。
【0030】
変形用アクチュエータ320c、320dは、変形用アクチュエータ320a、320bが設けられたフレキシブルリング310の中心線(
図6の例では、一点鎖線で示したx軸方向に延びた中心線)と直交するフレキシブルリング310の中心線(
図6の例では、一点鎖線で示したy軸方向に延びた中心線)上に設けられている。変形用アクチュエータ320c、320dは、フレキシブルリング310を介して対向配置されており、それぞれが独立してフレキシブルリング310をy軸方向に押し引きして、変形させることができる。
【0031】
このように、比較例に係るパリソン肉厚調整装置300では、4つの変形用アクチュエータ320a、320b、320c、320dによりフレキシブルリング310とコア25との隙間である吐出口(すなわちパリソン断面)を様々な形状に変形させることができる。
ここで、
図7~
図9は、それぞれ比較例に係るパリソン肉厚調整装置によるパリソン断面の変形パターンの一例を示す平面図である。
【0032】
図7に示す変形パターンでは、変形用アクチュエータ320a、320bがいずれもフレキシブルリング310を引くと共に、変形用アクチュエータ320c、320dがいずれもフレキシブルリング310を押す。そのため、円状であったフレキシブルリング310がx軸方向に拡大し、y軸方向に縮小した楕円状に変形している。
【0033】
従って、変形用アクチュエータ320a、320bがフレキシブルリング310に連結された部位(x軸に平行な中心線上の部位)においてパリソン断面の肉厚が最大となる。一方、変形用アクチュエータ320c、320dがフレキシブルリング310に連結された部位(y軸に平行な中心線上の部位)においてパリソン断面の肉厚が最小となる。
【0034】
図示しないが、同様に、変形用アクチュエータ320a、320bがいずれもフレキシブルリング310を押すと共に、変形用アクチュエータ320c、320dがいずれもフレキシブルリング310を引く変形パターンも可能である。この場合、フレキシブルリング310がy軸方向に拡大し、x軸方向に縮小した楕円状に変形する。
【0035】
図8に示す変形パターンでは、4つの変形用アクチュエータ320a、320b、320c、320dがいずれもフレキシブルリング310を押す。そのため、円状であったフレキシブルリング310がx軸方向及びy軸方向において縮小し、四角形状に変形している。
【0036】
従って、変形用アクチュエータ320a、320bがフレキシブルリング310に連結された部位(x軸に平行な中心線上の部位)及び、変形用アクチュエータ320c、320dがフレキシブルリング310に連結された部位(y軸に平行な中心線上の部位)においてパリソン断面の肉厚が最小となる。
【0037】
一方、変形用アクチュエータ320a、320b、320c、320dがフレキシブルリング310に連結された部位同士の中間に位置する部位(x軸に平行な中心線と45°で交差する2本の中心線上の部位)においてパリソン断面の肉厚が最大となる。
【0038】
図9に示す変形パターンでは、4つの変形用アクチュエータ320a、320b、320c、320dがいずれもフレキシブルリング310を引く。そのため、円状であったフレキシブルリング310がx軸方向及びy軸方向において拡大し、四角形状に変形している。
【0039】
従って、変形用アクチュエータ320a、320bがフレキシブルリング310に連結された部位(x軸に平行な中心線上の部位)及び、変形用アクチュエータ320c、320dがフレキシブルリング310に連結された部位(y軸に平行な中心線上の部位)においてパリソン断面の肉厚が最大となる。
【0040】
一方、変形用アクチュエータ320a、320b、320c、320dがフレキシブルリング310に連結された部位同士の中間に位置する部位(x軸に平行な中心線と45°で交差する2本の中心線上の部位)においてパリソン断面の肉厚が最小となる。
【0041】
上述の通り、比較例に係るパリソン肉厚調整装置300では、金属製のフレキシブルリング310を種々の形状に変形させるため、フレキシブルリング310が折れ曲がったり、破損したりする虞があった。
また、フレキシブルリング310を変形させる際、フレキシブルリング310がダイ24から剥離して隙間が生じ、溶融樹脂52が漏れる虞があった。
さらに、フレキシブルリング310の変形パターンは限られているという問題もある。
【0042】
<第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置>
次に、
図10~
図12を参照して、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置について説明する。
図10は、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置の平面図である。
図11は、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置の部分側面図である。
図12は、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置によるパリソン断面の変形パターンの一例を示す平面図である。
【0043】
図10、
図11に示すように、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30では、ぞれぞれの一端が支柱31に固定されると共に、パリソン53の内周面に向かって延伸可能に設けられた複数の変形用アクチュエータ32a~32hを備えている。
ここで、
図11に示すように、変形用アクチュエータ32a~32hは、支柱31の上端部に固定されている。そのため、
図2に示すように支柱31及び変形用アクチュエータ32をパリソン53の内部から取り出す際の移動距離を短くできる。
【0044】
なお、変形用アクチュエータ32a~32hは、支柱31の上端部以外に固定されていてもよい。また、
図10、
図11において、パリソン53については断面で示されている。さらに、理解を容易にするため、
図11では、変形用アクチュエータ32a、32b以外のアクチュエータは省略されている。
【0045】
図10に示す例では、支柱31を介して対向配置された4対(8本)の変形用アクチュエータ32a~32hが、支柱31を中心として、放射状に配置されている。また、隣接する変形用アクチュエータ同士のなす角度が全て等しくなるように、等間隔に配置されている。
図10に示した例では、8本の変形用アクチュエータ32a~32hが、45°間隔で配置されている。
【0046】
図10に示すように、変形用アクチュエータ32a、32bは、一点鎖線で示したx軸方向に延びた支柱31の中心線上に支柱31を介して対向配置されている。変形用アクチュエータ32a、32bは、それぞれ独立してパリソン53の内周面に向かって延伸できる。
【0047】
同様に、変形用アクチュエータ32c、32dは、一点鎖線で示したy軸方向に延びた支柱31の中心線上に支柱31を介して対向配置されている。変形用アクチュエータ32c、32dは、それぞれ独立してパリソン53の内周面に向かって延伸できる。
【0048】
図10に示すように、変形用アクチュエータ32e、32fは、x軸方向に延びた支柱31の中心線を、z軸正方向から見て、x軸正方向からy軸正方向に向かって45°回転させた中心線(不図示)上に設けられている。変形用アクチュエータ32e、32fは、支柱31を介して対向配置されており、それぞれ独立してパリソン53の内周面に向かって延伸できる。
【0049】
同様に、変形用アクチュエータ32g、32hは、x軸方向に延びた支柱31の中心線を、z軸正方向から見て、x軸正方向からy軸負方向に向かって45°回転させた中心線(不図示)上に設けられている。変形用アクチュエータ32g、32hは、支柱31を介して対向配置されており、それぞれ独立してパリソン53の内周面に向かって延伸できる。
【0050】
なお、変形用アクチュエータの本数は、複数であれば、奇数本でもよく、ブロー成形品54の形状に応じて適宜決定される。また、隣接する変形用アクチュエータの間隔は等間隔でなくてもよい。
例えば、変形用アクチュエータ32a~32hのうちの1本(例えば変形用アクチュエータ32e)あるいは複数本(例えば変形用アクチュエータ32e、32h)が取り除かれた構成等でもよい。
【0051】
変形用アクチュエータ32a~32hは、例えばモータ、空気圧、油圧等を駆動源(不図示)とするシリンダである。
図12に示すように、変形用アクチュエータ32a~32hは、それぞれ外筒321、シリンダロッド322、押圧部323を備えている。押圧部323は、シリンダロッド322の先端部に設けられており、パリソン53の内周面を押圧する。
図12に示すように、押圧部323は、例えばパリソン53の内周面に沿って、球面状や円弧状に形成されているが、特に限定されない。
【0052】
図10、
図11に示す状態では、シリンダロッド322が外筒321に収容されている。
図12に示すように、変形用アクチュエータ32a~32hのそれぞれにおいて、外筒321からシリンダロッド322を突出させ、押圧部323によってパリソン53の内周面を押圧する。この変形用アクチュエータ32a~32hによってパリソン53の内周面を押圧する量(以下、「押圧量」と呼ぶ)を制御し、パリソン53の断面の肉厚をパリソン53の円周方向において変化させることができる。
【0053】
図12には、ヘッド20から押し出された変形前のパリソン53の断面形状(
図10に示した変形前のパリソン53の断面形状)が二点鎖線で示されている。
図12に示す例では、変形用アクチュエータ32fによる押圧量が最も大きく、その部位におけるパリソン53の肉厚が最も薄くなっている。また、変形用アクチュエータ32eによる押圧量が次に大きく、その部位におけるパリソン53の肉厚が2番目に薄くなっている。
【0054】
このように、変形用アクチュエータ32a~32hのそれぞれによる押圧量が大きくなる程、その部位におけるパリソン53の肉厚が薄くなる。そのため、パリソン53の肉厚をパリソン53の円周方向において変化させられる。
本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30では、パリソン53を降下させながら、所定の降下量毎に変形用アクチュエータ32a~32hによって、各断面における肉厚を逐次調整する。
【0055】
次に、
図13を参照して、変形用アクチュエータ32a~32hを制御するための制御システムについて説明する。
図13は、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置における変形用アクチュエータ32a~32hを制御するための制御システムを示すブロック図である。
【0056】
図13に示すように、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置は、変形用アクチュエータ32a~32hの動作を制御する制御部100を備えている。制御部100は、変形用アクチュエータ32a~32hと通信可能に接続されている。
【0057】
図13に示すように、制御部100は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、及びI/O(Input/Output)104を備えている。すなわち、制御部100は、コンピュータとしての機能を有しており、上記各種制御プログラム等に基づいて、変形用アクチュエータ32a~32hの動作を制御する。
【0058】
CPU101は、例えば、制御処理及び演算処理等を行う演算部である。
ROM102は、例えば、CPU101によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶する記憶部である。
RAM103は、処理データ等が一時的に記憶する記憶部である。
I/O104は、入出力装置であり、外部からデータ及び信号を入力し、外部にデータ及び信号を出力する。
【0059】
ROM102又はRAM103には、例えばパリソン53の各部位における肉厚と、変形用アクチュエータ32a~32hのそれぞれによる押圧量との関係が記憶されている。この関係は、例えば実際にパリソン53を用いた実験やコンピュータシミュレーション等によって得られる。
【0060】
制御部100が、上記各種制御プログラム等に基づいて、変形用アクチュエータ32a~32hの各駆動源(不図示)を制御することによって、変形用アクチュエータ32a~32hのそれぞれの伸縮動作が制御される。そのため、変形用アクチュエータ32a~32hのそれぞれによるパリソン53の押圧量を制御できる。その結果、パリソン53の断面の肉厚をパリソン53の円周方向において変化させることができる。
【0061】
なお、例えば
図12に示す変形用アクチュエータ32fによって押圧する部位におけるパリソン53の肉厚は、変形用アクチュエータ32fによる押圧量に最も影響される。そのため、最も単純な制御方法としては、変形用アクチュエータ32fによる押圧量のみを用いて、その部位の肉厚を制御してもよい。
【0062】
より高精度にその部位の肉厚を制御するには、例えば変形用アクチュエータ32fに隣接する変形用アクチュエータ32b、32dによる押圧量も加えて用いてもよい。
さらに高精度にその部位の肉厚を制御するために、例えば全ての変形用アクチュエータ32a~32hによる押圧量を用いてもよい。
【0063】
以上の通り、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置では、押し出されたパリソン53の内周面を変形用アクチュエータ32a~32hによって押圧することによって、パリソン53の断面の肉厚をパリソン53の円周方向において変化させる。
【0064】
すなわち、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置では、
図5に示す比較例に係るパリソン肉厚調整装置300が備えるフレキシブルリング310を用いないため、フレキシブルリング310に起因する不具合が生じ得ない。
また、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置では、変形用アクチュエータ32a~32hがそれぞれ独立して自由に動作する。そのため、フレキシブルリング310を用いる場合よりも、パリソン53の断面の形状(肉厚)をより自由に変化させることができる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るブロー成形機について説明する。第2の実施形態に係るブロー成形機の全体構成は、
図1~
図3に示した第1の実施形態に係るブロー成形機の全体構成と同様であるため、説明を省略する。第2の実施形態に係るブロー成形機は、パリソン肉厚調整装置の構成が第1の実施形態に係るブロー成形機と異なる。
【0066】
図14を参照して、第2の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置について説明する。
図14は、第2の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30の部分側面図である。
図14は、
図11に対応している。
図10、
図11に示すように、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30では、8本の変形用アクチュエータ32a~32hが支柱31を中心として、放射状に等間隔で配置されている。
【0067】
これに対し、
図14に示すように、第2の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30では、支柱31を中心として放射状に配置された8本の変形用アクチュエータ32a~32hが、支柱31の長手方向に沿って、3段設けられている。すなわち、第2の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30は、8本の変形用アクチュエータ32a~32hを3セット、合計24本備えている。
【0068】
各段における8本の変形用アクチュエータ32a~32hは、同時に駆動されるが、別々に動作する。そのため、パリソン53の長手方向に沿った3つの断面において同時に、各断面におけるパリソン53の肉厚が調整される。すなわち、パリソン53の長手方向に沿った複数の断面において同時に、各断面におけるパリソン53の肉厚をパリソン53の円周方向において変化させることができる。
【0069】
ここで、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30でも、パリソン53を降下させながら、所定の降下量毎に変形用アクチュエータ32a~32hによって、各断面における肉厚を逐次調整する。本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30は、変形用アクチュエータ32a~32hが3段設けられている。そのため、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30での降下量の3倍の降下量毎に3段の変形用アクチュエータ32a~32hを同時に駆動し、各断面における肉厚を逐次調整する。
【0070】
以上の通り、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30では、複数の変形用アクチュエータが、支柱31の長手方向に沿って複数段設けられている。そのため、パリソン53の長手方向に沿った複数の断面において同時に、各断面におけるパリソン53の肉厚をパリソン53の円周方向において変化させることができる。その結果、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30は、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30よりも、パリソン53の各断面における肉厚をより精度良く調整できる。
【0071】
本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30のように、支柱31を中心として配置された複数の変形用アクチュエータを支柱31の長手方向に沿って複数段設けてもよい。
なお、本実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30における複数の変形用アクチュエータの段数は3段であるが、これに限定されず、適宜設定される。
第2の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30におけるその他の構成は、第1の実施形態に係るパリソン肉厚調整装置30と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 ブロー成形機
10 押出機
11 シリンダ
12 スクリュー
13 ホッパ
14 アダプタ
20 ヘッド
21 ヘッド本体
22 吐出量調整装置
23 スピンドル
24 ダイ
25 コア
30 パリソン肉厚調整装置
31 支柱
32、32a~32h 変形用アクチュエータ
33 昇降装置
40 型締機
51 樹脂ペレット
52 溶融樹脂
53 パリソン
54 ブロー成形品
100 制御部
321 外筒
322 シリンダロッド
323 押圧部
BP ブローピン
D1、D2 金型
MP1、MP2 可動プラテン