(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112573
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】熱交換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20220727BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20220727BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20220727BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20220727BHJP
B60H 1/32 20060101ALN20220727BHJP
【FI】
F28F9/00 321
F28D1/053 A
F25B39/04 C
B23K1/00 330K
B23K1/00 S
B60H1/32 613F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008408
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】永藤 輝之
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
3L211
【Fターム(参考)】
3L065AA10
3L103AA02
3L103AA11
3L103BB38
3L103CC17
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD34
3L103DD61
3L211BA52
3L211DA25
(57)【要約】
【課題】製造作業が容易でかつブラケットを利用した支持物への取付強度を十分に大きくすることができる熱交換器を提供する。
【解決手段】コンデンサ1(熱交換器)のヘッダタンク5のタンク本体9が内側部材30と、ブラケット8が一体に設けられた外側部材40とからなる。外側部材40が、第1形成部50と、第2形成部60と、第1形成部50および第2形成部60にまたがるように設けられて外方に突出した凸条70とよりなる。凸条70が、4つの凸条形成部71,72,73,74が積層されることにより構成されている。積層方向の一端の凸条形成部71が第1形成部50の風下側縁部に一体に設けられ、同他端の凸条形成部72が第2形成部60の風上側縁部に一体に設けられている。ブラケット8が、第1形成部50および第2形成部60の凸条形成部71,72の長手方向の一部分に一体に設けられたブラケット形成部80によって構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状タンク本体およびタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材からなり、かつ長手方向を同方向に向けた状態で互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部と、少なくともいずれか一方のヘッダタンクのタンク本体に設けられたブラケットとを備えた熱交換器であって、
ブラケットが設けられたヘッダタンクのタンク本体が、タンク本体の熱交換コア部側の内側部分を形成する内側部材と、内側部材にろう付され、かつタンク本体における熱交換コア部とは反対側の外側部分を形成するとともにブラケットが一体に設けられた外側部材とからなり、
タンク本体の外側部材が、外側部材の風上側部分を形成しかつ内側部材の風上側部分に部分的に重ね合わされた第1形成部と、外側部材の風下側部分を形成しかつ内側部材の風下側部分に部分的に重ね合わされた第2形成部と、第1形成部の風下側縁部および第2形成部の風上側縁部にまたがるように設けられて外方に突出した凸条とよりなり、当該凸条が、偶数の板状凸条形成部が積層されることにより構成され、当該積層方向の一端の凸条形成部が第1形成部の風下側縁部に一体に設けられるとともに、同他端の凸条形成部が第2形成部の風上側縁部に一体に設けられており、
ブラケットが、第1形成部および第2形成部の凸条形成部の長手方向の一部分に一体に設けられて外方に延びたブラケット形成部によって構成されている熱交換器。
【請求項2】
外側部材の凸条が、第1形成部に一体に形成された板状の第1凸条形成部と、第2形成部に一体に形成された板状の第2凸条形成部と、両凸条形成部間に両凸条形成部の全長にわたって配置された中間部材とによって構成されており、中間部材が、第1凸条形成部に重ね合わせ状態でろう付された板状の第3凸条形成部と、第2形成部の第2凸条形成部および第3凸条形成部に重ね合わせ状態でろう付された第4凸条形成部と、第3凸条形成部およぶ第4凸条形成部を内側端部において一体に連結する内側連結部とよりなり、
ブラケット形成部が、第1形成部の第1凸条形成部に連なって外方に延びた板状の第1部分と、第2形成部の第2凸条形成部に連なって外方に延びた板状の第2部分と、中間部材の第3凸条形成部に連なって外方に延びた第3部分と、中間部材の第4凸条形成部に連なって外方に延びた第4部分と、第1部分および第3部分の外端部を一体に連結する第1外側連結部と、第2部分および第4部分の外端部を一体に連結する第2外側連結部とよりなり、第1~第4部分が積層されて隣接するものどうしがろう付されている請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
外側部材の凸条が、第1形成部に一体に形成された第1凸条形成部と、第2形成部に一体に形成されかつ第1形成部の第1凸条形成部に重ね合わせ状態でろう付された第2凸条形成部とからなり、
ブラケット形成部が、第1形成部の第1凸条形成部に連なって外方に延びた第1部分と、第2形成部の第2凸条形成部に連なって外方に延びた第2部分と、第1部分および第2部分の外端部を一体に連結する外側連結部とよりなり、第1部分および第2部分が積層されてろう付されている請求項1記載の熱交換器。
【請求項4】
請求項2記載の熱交換器を製造する方法であって、
少なくとも片面がベア面となっているシート材からなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の内側部材を形成する第1素板と、両面にろう材層を有するブレージングシートからなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の外側部材を形成する第2素板と、タンク本体にろう付されてその両端開口を閉鎖する閉鎖部材とを用意すること、
第1素板に加工を施してタンク本体の外面側を向く面がベア面となっている内側部材をつくること、
第2素板の両側縁部を曲げて第1形成部および第2形成部となる2つの屈曲部をつくる工程と、第2素板における2つの屈曲部間の部分を、2つの山折り部分と、両山折り部分間でかつ屈曲部側に位置する1つの谷折り部分とができるように蛇腹状に3箇所で曲げるとともに折りたたむことによって、積層された4つの平板部を有しかつ屈曲部が最も外側の平板部の山折り部とは反対側の縁部に位置する折り曲げ体をつくる工程と、折り曲げ体の両屈曲部に成形加工を施して第1形成部および第2形成部をつくる工程と、折り曲げ体の4つの平板部を、長手方向の一部分が残るように山折り部側から切除することによって、第1形成部の第1凸条形成部と、第2形成部の第2凸条形成部と、中間部材の第3凸条形成部、第4凸条形成部および内側連結部と、ブラケット形成部の第1部分、第2部分、第3部分、第4部分、第1外側連結部および第2外側連結部とを形成する工程とを第2素材に施すことによって外側部材をつくること、
内側部材と外側部材とを、外側部材の第1形成部が内側部材の風上側部分に部分的に重なるとともに、第2形成部が内側部材の風下側部分に部分的に重なるように組み合わせて組み合わせ体を得ること、
その後、前記組み合わせ体の内側部材と外側部材とをろう付してタンク本体を得るとともにタンク本体に閉鎖部材をろう付してヘッダタンクをつくることを含む熱交換器の製造方法。
【請求項5】
外側部材をつくる複数の工程のうちの折り曲げ体をつくる工程と、第1形成部および第2形成部をつくる工程との間に、折り曲げ体の4つの平板部を厚み方向に押圧し、各平板部の厚みを第2素板の厚みよりも薄くする工程を施す請求項4記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
請求項3記載の熱交換器を製造する方法であって、
少なくとも片面がベア面となっているシート材からなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の内側部材を形成する第1素板と、両面にろう材層を有するブレージングシートからなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の外側部材を形成する第2素板と、タンク本体にろう付されてその両端開口を閉鎖する閉鎖部材とを用意すること、
第1素板に加工を施してタンク本体の外面側を向く面がベア面となっている内側部材をつくること、
第2素板の両側縁部を曲げて第1形成部および第2形成部となる2つの屈曲部をつくる工程と、第2素板における2つの屈曲部間の部分を、1つの山折り部分ができるように1箇所で曲げるとともに折りたたむことによって、積層された2つの平板部を有しかつ屈曲部が両平板部の山折り部とは反対側の縁部に位置する折り曲げ体をつくる工程と、折り曲げ体の両屈曲部に成形加工を施して第1形成部および第2形成部をつくる工程と、折り曲げ体の2つの平板部を、長手方向の一部分が残るように山折り部側から切除することによって、第1形成部の第1凸条形成部と、第2形成部の第2凸条形成部と、ブラケット形成部の第1部分、第2部分および外側連結部とを形成する工程とを第2素材に施すことによって外側部材をつくること、
内側部材と外側部材とを、外側部材の第1形成部が内側部材の風上側部分に部分的に重なるとともに、第2形成部が内側部材の風下側部分に部分的に重なるように組み合わせて組み合わせ体を得ること、
その後、前記組み合わせ体の内側部材と外側部材とをろう付してタンク本体を得るとともにタンク本体に閉鎖部材をろう付してヘッダタンクをつくることを含む熱交換器の製造方法。
【請求項7】
外側部材をつくる複数の工程のうちの折り曲げ体をつくる工程と、第1形成部および第2形成部をつくる工程との間に、折り曲げ体の2つの平板部を厚み方向に押圧し、各平板部の厚みを第2素板の厚みよりも薄くする工程を施す請求項6記載の熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器およびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、ろう材による接合を「ろう付」と称するものとする。
【背景技術】
【0003】
車両用空調装置に用いられる熱交換器として、筒状タンク本体およびタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材からなり、かつ長手方向を同方向に向けた状態で互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部と、少なくともいずれか一方のヘッダタンクのタンク本体にろう付されたブラケットとを備えた熱交換器が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載の熱交換器は、ブラケットを利用して支持物に取り付けられる。たとえば、特許文献1記載の熱交換器が車両用空調装置のコンデンサに適用される場合、自動車のエンジンルーム内において、エンジン冷却液を冷却するラジエータの風上側(車両の前方側)に配置され、ブラケットを利用してラジエータに設けられた取付部に取り付けられるのが一般的であり、ブラケット単体の強度は勿論、ブラケットのタンク本体への十分なろう付強度も確保する必要がある。ところで、特許文献1記載の熱交換器は、ヘッダタンクのタンク本体と閉鎖部材、タンク本体と熱交換コア部を構成する熱交換管、熱交換コア部を構成する熱交換管とフィン、ヘッダタンクのタンク本体とブラケットとを炉中において一括してろう付することにより製造されるが、ブラケットのタンク本体へのろう付強度を十分な大きさにするには、上述した一括ろう付の際のブラケットの位置ずれを防止するために、ブラケットを引っ掛け、機械的かしめ、リベット止め、溶接などの方法でタンク本体に仮止めする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の熱交換器においては、製造時にブラケットをヘッダタンクのタンク本体に仮止めする作業が面倒であり、ひいては製造作業が面倒になるという問題がある。
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、製造作業が容易でかつブラケットを利用した支持物への取付強度を十分に大きくすることができる熱交換器およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)筒状タンク本体およびタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材からなり、かつ長手方向を同方向に向けた状態で互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部と、少なくともいずれか一方のヘッダタンクのタンク本体に設けられたブラケットとを備えた熱交換器であって、
ブラケットが設けられたヘッダタンクのタンク本体が、タンク本体の熱交換コア部側の内側部分を形成する内側部材と、内側部材にろう付され、かつタンク本体における熱交換コア部とは反対側の外側部分を形成するとともにブラケットが一体に設けられた外側部材とからなり、
タンク本体の外側部材が、外側部材の風上側部分を形成しかつ内側部材の風上側部分に部分的に重ね合わされた第1形成部と、外側部材の風下側部分を形成しかつ内側部材の風下側部分に部分的に重ね合わされた第2形成部と、第1形成部の風下側縁部および第2形成部の風上側縁部にまたがるように設けられて外方に突出した凸条とよりなり、当該凸条が、偶数の板状凸条形成部が積層されることにより構成され、当該積層方向の一端の凸条形成部が第1形成部の風下側縁部に一体に設けられるとともに、同他端の凸条形成部が第2形成部の風上側縁部に一体に設けられており、
ブラケットが、第1形成部および第2形成部の凸条形成部の長手方向の一部分に一体に設けられて外方に延びたブラケット形成部によって構成されている熱交換器。
【0010】
2)外側部材の凸条が、第1形成部に一体に形成された板状の第1凸条形成部と、第2形成部に一体に形成された板状の第2凸条形成部と、両凸条形成部間に両凸条形成部の全長にわたって配置された中間部材とによって構成されており、中間部材が、第1凸条形成部に重ね合わせ状態でろう付された板状の第3凸条形成部と、第2形成部の第2凸条形成部および第3凸条形成部に重ね合わせ状態でろう付された第4凸条形成部と、第3凸条形成部およぶ第4凸条形成部を内側端部において一体に連結する内側連結部とよりなり、
ブラケット形成部が、第1形成部の第1凸条形成部に連なって外方に延びた板状の第1部分と、第2形成部の第2凸条形成部に連なって外方に延びた板状の第2部分と、中間部材の第3凸条形成部に連なって外方に延びた第3部分と、中間部材の第4凸条形成部に連なって外方に延びた第4部分と、第1部分および第3部分の外端部を一体に連結する第1外側連結部と、第2部分および第4部分の外端部を一体に連結する第2外側連結部とよりなり、第1~第4部分が積層されて隣接するものどうしがろう付されている上記1)記載の熱交換器。
【0011】
3)外側部材の凸条が、第1形成部に一体に形成された第1凸条形成部と、第2形成部に一体に形成されかつ第1形成部の第1凸条形成部に重ね合わせ状態でろう付された第2凸条形成部とからなり、
ブラケット形成部が、第1形成部の第1凸条形成部に連なって外方に延びた第1部分と、第2形成部の第2凸条形成部に連なって外方に延びた第2部分と、第1部分および第2部分の外端部を一体に連結する外側連結部とよりなり、第1部分および第2部分が積層されてろう付されている上記1)記載の熱交換器。
【0012】
4)上記2)記載の熱交換器を製造する方法であって、
少なくとも片面がベア面となっているシート材からなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の内側部材を形成する第1素板と、両面にろう材層を有するブレージングシートからなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の外側部材を形成する第2素板と、タンク本体にろう付されてその両端開口を閉鎖する閉鎖部材とを用意すること、
第1素板に加工を施してタンク本体の外面側を向く面がベア面となっている内側部材をつくること、
第2素板の両側縁部を曲げて第1形成部および第2形成部となる2つの屈曲部をつくる工程と、第2素板における2つの屈曲部間の部分を、2つの山折り部分と、両山折り部分間でかつ屈曲部側に位置する1つの谷折り部分とができるように蛇腹状に3箇所で曲げるとともに折りたたむことによって、積層された4つの平板部を有しかつ屈曲部が最も外側の平板部の山折り部とは反対側の縁部に位置する折り曲げ体をつくる工程と、折り曲げ体の両屈曲部に成形加工を施して第1形成部および第2形成部をつくる工程と、折り曲げ体の4つの平板部を、長手方向の一部分が残るように山折り部側から切除することによって、第1形成部の第1凸条形成部と、第2形成部の第2凸条形成部と、中間部材の第3凸条形成部、第4凸条形成部および内側連結部と、ブラケット形成部の第1部分、第2部分、第3部分、第4部分、第1外側連結部および第2外側連結部とを形成する工程とを第2素材に施すことによって外側部材をつくること、
内側部材と外側部材とを、外側部材の第1形成部が内側部材の風上側部分に部分的に重なるとともに、第2形成部が内側部材の風下側部分に部分的に重なるように組み合わせて組み合わせ体を得ること、
その後、前記組み合わせ体の内側部材と外側部材とをろう付してタンク本体を得るとともにタンク本体に閉鎖部材をろう付してヘッダタンクをつくることを含む熱交換器の製造方法。
【0013】
5)外側部材をつくる複数の工程のうちの折り曲げ体をつくる工程と、第1形成部および第2形成部をつくる工程との間に、折り曲げ体の4つの平板部を厚み方向に押圧し、各平板部の厚みを第2素板の厚みよりも薄くする工程を施す上記4)記載の熱交換器の製造方法。
【0014】
6)上記3)記載の熱交換器を製造する方法であって、
少なくとも片面がベア面となっているシート材からなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の内側部材を形成する第1素板と、両面にろう材層を有するブレージングシートからなりかつブラケットが設けられているヘッダタンクのタンク本体の外側部材を形成する第2素板と、タンク本体にろう付されてその両端開口を閉鎖する閉鎖部材とを用意すること、
第1素板に加工を施してタンク本体の外面側を向く面がベア面となっている内側部材をつくること、
第2素板の両側縁部を曲げて第1形成部および第2形成部となる2つの屈曲部をつくる工程と、第2素板における2つの屈曲部間の部分を、1つの山折り部分ができるように1箇所で曲げるとともに折りたたむことによって、積層された2つの平板部を有しかつ屈曲部が両平板部の山折り部とは反対側の縁部に位置する折り曲げ体をつくる工程と、折り曲げ体の両屈曲部に成形加工を施して第1形成部および第2形成部をつくる工程と、折り曲げ体の2つの平板部を、長手方向の一部分が残るように山折り部側から切除することによって、第1形成部の第1凸条形成部と、第2形成部の第2凸条形成部と、ブラケット形成部の第1部分、第2部分および外側連結部とを形成する工程とを第2素材に施すことによって外側部材をつくること、
内側部材と外側部材とを、外側部材の第1形成部が内側部材の風上側部分に部分的に重なるとともに、第2形成部が内側部材の風下側部分に部分的に重なるように組み合わせて組み合わせ体を得ること、
その後、前記組み合わせ体の内側部材と外側部材とをろう付してタンク本体を得るとともにタンク本体に閉鎖部材をろう付してヘッダタンクをつくることを含む熱交換器の製造方法。
【0015】
7)外側部材をつくる複数の工程のうちの折り曲げ体をつくる工程と、第1形成部および第2形成部をつくる工程との間に、折り曲げ体の2つの平板部を厚み方向に押圧し、各平板部の厚みを第2素板の厚みよりも薄くする工程を施す上記6)記載の熱交換器の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
上記1)~3)の熱交換器によれば、ブラケットが設けられたヘッダタンクのタンク本体が、タンク本体の熱交換コア部側の内側部分を形成する内側部材と、内側部材にろう付され、かつタンク本体における熱交換コア部とは反対側の外側部分を形成するとともにブラケットが一体に設けられた外側部材とからなり、タンク本体の外側部材が、外側部材の風上側部分を形成しかつ内側部材の風上側部分に部分的に重ね合わされた第1形成部と、外側部材の風下側部分を形成しかつ内側部材の風下側部分に部分的に重ね合わされた第2形成部と、第1形成部の風下側縁部および第2形成部の風上側縁部にまたがるように設けられて外方に突出した凸条とよりなり、当該凸条が、偶数の板状凸条形成部が積層されることにより構成され、当該積層方向の一端の凸条形成部が第1形成部の風下側縁部に一体に設けられるとともに、同他端の凸条形成部が第2形成部の風上側縁部に一体に設けられており、ブラケットが、第1形成部および第2形成部の凸条形成部の長手方向の一部分に一体に設けられて外方に延びたブラケット形成部によって構成されているので、上記4)~7)記載の方法により製造するにあたって、特許文献1記載の熱交換器のように、タンク本体とは別部品であるブラケットをタンク本体を形成する外側部材に仮止めする必要がなくなる。したがって、熱交換器の製造作業が容易になる。しかも、ブラケットが、ヘッダタンクのタンク本体の外側部材に一体に設けられて外方に延びたブラケット形成部によって構成されているので、ブラケットを利用した支持物への熱交換器の取付強度を十分に大きくすることができる。
【0017】
上記2)の熱交換器によれば、ブラケットが、ブラケット形成部の第1~第4部分が積層されて隣接するものどうしがろう付されることによって形成され、上記3)の熱交換器によれば、ブラケットが、ブラケット形成部の第1~第2部分が積層されてろう付されることによって形成されているので、ブラケットが設けられたヘッダタンクのタンク本体を形成する外側部材の第1形成部および第2形成部の薄肉化を図った上で、ブラケットの厚肉化を図ることが可能になり、ラジエータなどの支持物への熱交換器の取付強度を増大させることができる。しかも、ブラケット単体の強度が増大し、ラジエータなどの支持物への取付強度が増大する。
【0018】
また、タンク本体の外側部材が両面にろう材層を有するブレージングシートからなるので、タンク本体に、冷媒入口部材や冷媒出口部材などの熱交換器部品をろう付することが可能になり、別途ろう材を用いる必要がなくなる。
【0019】
上記4)および6)の熱交換器の製造方法によれば、タンク本体の外側部材に一体に設けられたブラケット形成部によってブラケットを形成することができるので、特許文献1記載の熱交換器のように、タンク本体とは別部品であるブラケットをタンク本体を形成する外側部材に仮止めする必要がなくなる。したがって、熱交換器の製造作業が容易になる。しかも、ブラケットが設けられたヘッダタンクのタンク本体を形成する外側部材の第1形成部および第2形成部の薄肉化を図った上で、ブラケットの厚肉化を図ってラジエータなどの支持物への熱交換器の取付強度を増大させることができる。
【0020】
上記5)および7)の熱交換器の製造方法によれば、製造された熱交換器におけるブラケット表面の平坦度を適正化することができる。しかも、タンク本体に要求される耐圧強度を満たした上で、ブラケットの肉厚が過大になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の熱交換器を適用したコンデンサの全体構成を示し、(a)は一部を省略した正面図であり、(b)は平面図である。
【
図2】
図1のコンデンサのヘッダタンクの上部を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図1のコンデンサのヘッダタンクのタンク本体を形成する外側部材をつくる方法を工程順に示す斜視図である。
【
図6】
図1のコンデンサのヘッダタンクの変形例を示す
図2相当の斜視図である。
【
図7】
図1のコンデンサのヘッダタンクの変形例を示す
図3相当の断面図である
【
図8】
図1のコンデンサのヘッダタンクの変形例を示す
図4相当の断面図である。
【
図9】
図6のヘッダタンクのタンク本体を形成する外側部材をつくる方法を工程順に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による熱交換器を、車両用空調装置のコンデンサに適用したものである。
【0023】
以下の説明において、
図1(a)の上下、左右を上下、左右というものとする。また、
図1(a)の紙面表裏方向を前後方向というものとし、
図1(a)の紙面表側(
図1(b)の下側)を前、これと反対側を後というものとする。そして、この実施形態では、前側が風上側、後側が風下側である。
【0024】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0025】
さらに、全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0026】
図1はこの発明の熱交換器を適用したコンデンサの全体構成を示し、
図2~
図4はその要部の構成を示す。
図5は
図1のコンデンサを製造するにあたり、
図1のコンデンサの左ヘッダタンクを製造する工程の一部を示す。
【0027】
図1において、車両用空調装置のコンデンサ(1)は、凝縮部(2)と、凝縮部(2)の下方に設けられた過冷却部(3)と、長手方向を上下方向に向けた状態で凝縮部(2)と過冷却部(3)との間に設けられ、かつ凝縮部(2)で凝縮した気液混相冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を貯留するとともに液相冷媒を過冷却部(3)に供給するアルミニウム製タンク状受液器(4)とからなる。コンデンサ(1)は、圧縮機、膨張弁(減圧器)およびエバポレータとともに、フロン系冷媒を用いる冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両に搭載される。
【0028】
コンデンサ(1)は、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された左右1対のアルミニウム製ヘッダタンク(5)(6)と、両ヘッダタンク(5)(6)間に設けられた熱交換コア部(7)とを備えており、両ヘッダタンク(5)(6)に上下方向に間隔をおいて設けられた複数のブラケット(8)を用いてラジエータなどの支持物に取り付けられることにより車両に設置されている。
【0029】
両ヘッダタンク(5)(6)は、それぞれ上下両端が開口したアルミニウム製筒状タンク本体(9)と、タンク本体(9)の上下両端部に配置されてタンク本体(9)にろう付され、かつタンク本体(9)の上下両端開口を閉鎖するアルミニウム製閉鎖部材(10)とよりなる。両ヘッダタンク(5)(6)内は、タンク本体(9)の下側部分に配置されてタンク本体(9)にろう付されたアルミニウム製仕切部材(11)により上下方向に並んだ2つの区画に仕切られており、コンデンサ(1)における両仕切部材(11)よりも上方に位置する部分が凝縮部(2)となり、両仕切部材(11)よりも下方に位置する部分が過冷却部(3)となっている。
【0030】
左ヘッダタンク(5)のタンク本体(9)における仕切部材(11)よりも上方の部分に,圧縮機により圧縮された気相冷媒が流入する冷媒入口(図示略)が形成され、同じく仕切部材(11)よりも下方の部分に、液相冷媒が膨張弁に向かって流出する冷媒出口(図示略)が形成されている。左ヘッダタンク(5)のタンク本体(9)に、冷媒入口に通じるアルミニウム製冷媒入口部材(12)と、冷媒出口に通じるアルミニウム製冷媒出口部材(13)とが、上下方向に間隔をおいてろう付されている。そして、左ヘッダタンク(5)の仕切部材(11)よりも上方の区画が凝縮部入口ヘッダ(14)、右ヘッダタンク(6)の仕切部材(11)よりも上方の区画が凝縮部出口ヘッダ(15)、右ヘッダタンク(6)の仕切部材(11)よりも下方の区画が過冷却部入口ヘッダ(16)、左ヘッダタンク(5)の仕切部材(11)よりも下方の区画が過冷却部出口ヘッダ(17)となっている。
【0031】
コンデンサ(1)の熱交換コア部(7)は、幅方向を前後方向(通風方向)に向けるとともに長手方向を左右方向に向け、さらに高さ方向を上下方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部が両ヘッダタンク(5)(6)に接続された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(18)と、隣り合う熱交換管(18)どうしの間および上下両端の熱交換管(18)の外側に配置されて熱交換管(18)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(19)と、上下両端のコルゲートフィン(19)の外側に配置されてコルゲートフィン(19)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(20)とからなる。そして、仕切部材(11)よりも上側の熱交換管(18)の左端部が凝縮部入口ヘッダ(11)に接続されるとともに、同右端部が凝縮部出口ヘッダ(15)に接続され、仕切部材(11)よりも下側の熱交換管(18)の右端部が過冷却部入口ヘッダ(16)に接続されるとともに、同左端部が過冷却部出口ヘッダ(17)に接続されている。
【0032】
受液器(4)は長手方向を上下方向に向けた中空密閉状であって、凝縮部出口ヘッダ(15)および過冷却部入口ヘッダ(16)に通じており、凝縮部出口ヘッダ(15)から流入した気液混相冷媒を液相冷媒と気相冷媒とに分離し、液相冷媒を過冷却部入口ヘッダ(16)に流出させる。
【0033】
したがって、圧縮機で圧縮された高温高圧の気液混相冷媒が入口部材(12)を通って凝縮部入口ヘッダ(11)に入った後、仕切部材(11)よりも上側の熱交換管(18)を流れて凝縮部出口ヘッダ(15)に入り、ついで受液器(4)内に入る。受液器(4)内に入った気液混相冷媒は気液2相に分離され、液相冷媒が受液器(4)から過冷却部入口ヘッダ(16)に入り、仕切部材(11)よりも下側の熱交換管(18)を流れて過冷却部出口ヘッダ(17)に入る。過冷却部出口ヘッダ(17)に入った冷媒は出口部材(13)を通って流出し、膨張弁を経てエバポレータに送られる。
【0034】
以下、左ヘッダタンク(5)のタンク本体(9)およびブラケット(8)について、
図2~
図4を参照して詳細に説明する。
【0035】
図2~
図4に示すように、左ヘッダタンク(5)のタンク本体(9)は、タンク本体(9)の熱交換コア部(7)側の内側部分(左ヘッダタンク(5)では右側部分)を形成する内側部材(30)と、内側部材(30)にろう付され、かつタンク本体(9)における熱交換コア部(7)とは反対側の外側部分(左ヘッダタンク(5)では左側部分)を形成するとともに上下両ブラケット(8)が一体に設けられた外側部材(40)とからなる。
【0036】
左ヘッダタンク(5)のタンク本体(9)の内側部材(30)は、片面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートによってろう材層が内側を向くように略コ字形に形成されたものであり、熱交換管(18)の端部が挿入される挿通穴(図示略)が形成された管接続部(31)と、管接続部(31)の前後両側縁部に一体に設けられた前後両側壁形成部(32)(33)とからなり、開口を左方に向けて配置されている。
【0037】
左ヘッダタンク(5)のタンク本体(9)の外側部材(40)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートによって横断面略半長円形に形成されたものであり、内側部材(30)の前側壁部(32)(風上側部分)の前面に重なった前平板部(51)および前平板部(51)の左側縁に連なって設けられかつ左方に向かって後方に湾曲した湾曲部(52)からなる第1形成部(50)と、内側部材(30)の後側壁部(33)(風下側部分)の後面に重なった後平板部(61)および後平板部(61)の左側縁に連なって設けられかつ左方に向かって前方に湾曲した湾曲部(62)からなる第2形成部(60)と、第1形成部(50)の風下側縁部(左側縁部)および第2形成部(60)の風上側縁部(左側縁部)にまたがるように設けられて外方に突出した凸条(70)とよりなる。
【0038】
外側部材(40)の凸条(70)は、第1形成部(50)の前湾曲部(52)に一体に形成された板状の第1凸条形成部(71)と、第2形成部(60)の後湾曲部(62)に一体に形成された板状の第2凸条形成部(72)と、両凸条形成部(71)(72)間に両凸条形成部(71)(72)の全長にわたって配置された中間部材(73)とによって構成されている。中間部材(73)は、第1凸条形成部(71)に重ね合わせ状態でろう付された板状の第3凸条形成部(74)と、第2形成部(60)の第2凸条形成部(72)および第3凸条形成部(74)に重ね合わせ状態でろう付された第4凸条形成部(75)と、第3凸条形成部(74)およぶ第4凸条形成部(75)を右端部において一体に連結する右側連結部(76)(内側連結部)よりなる。したがって、外側部材(40)の凸条(70)は、第1~第4凸条形成部(71)(72)(74)(75)が積層されて隣接するものどうしがろう付されることにより形成されており、積層方向の一端の第1凸条形成部(71)が第1形成部(50)の風下側縁部に一体に設けられるとともに同他端の第2凸条形成部(72)が第2形成部(60)の風上側縁部に一体に設けられている。
【0039】
左ヘッダタンク(5)の2つのブラケット(8)は、外側部材(40)の第1形成部(50)の第1凸条形成部(71)および第2形成部(60)の第2凸条形成部(72)の長手方向の一部分に一体に設けられて外方に延びたブラケット形成部(80)によって構成されており、上側ブラケット(8)にはコンデンサ(1)を自動車のラジエータなどの支持部に固定するためのボルトなどの締結具を通す貫通穴(8a)が形成されている。
【0040】
ブラケット形成部(80)は、外側部材(40)の第1形成部(50)の第1凸条形成部(71)に連なって外方に延びた板状の第1部分(81)と、外側部材(40)の第2形成部(60)の第2凸条形成部(72)に連なって外方に延びた板状の第2部分(82)と、中間部材(73)の第3凸条形成部(74)に連なって外方に延びた第3部分(83)と、中間部材(73)の第4凸条形成部(75)に連なって外方に延びた第4部分(84)と、第1部分(81)および第3部分(83)の外端部を一体に連結する第1外側連結部(85)と、第2部分(82)および第4部分(84)の外端部を一体に連結する第2外側連結部(86)とよりなる。ブラケット形成部(80)の第1~第4部分(81)(82)(83)(84)は積層されて隣接するものどうしがろう付されている。
【0041】
右ヘッダタンク(6)は左ヘッダタンク(5)と同様の構成のものが左右逆向きに配置されたものであり、冷媒入口および冷媒出口の代わりに、凝縮部出口ヘッダ(17)を受液器(4)に通じさせる連通口および過冷却部入口ヘッダ(18)を受液器(4)に通じさせる連通口が形成されている。左ヘッダタンク(5)の内側部材(30)は右ヘッダタンク(6)の左側を形成し、外側部材(40)は同じく右側を形成する。
【0042】
以下、上述したコンデンサ(1)を製造する方法について、
図5を参照して説明する。
【0043】
まず、片面がベア面となっているアルミニウムブレージングシートからなりかつ両ヘッダタンク(5)(6)のタンク本体(9)の内側部材(30)を形成する第1素板と、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなりかつ両ヘッダタンクのタンク本体(9)の外側部材(40)を形成する第2素板(90)と、タンク本体(9)にろう付されてその両端開口を閉鎖する閉鎖部材(10)と、その他のアルミニウム製熱交換器用部材とを用意する。
【0044】
ついで、第1素板に曲げ加工や穴開け加工を施すことによって、管挿通穴を有する管接続部(31)および前後両側壁(32)(33)からなり、かつタンク本体(9)の外面側を向く面がベア面となっている内側部材(30)をつくる。
【0045】
また、第2素板(90)に次の工程(a)~(e)を施すことによって、外側部材(40)をつくる。
【0046】
工程(a)は、第2素板(90)の両側縁部を同方向に曲げて第1および第2形成部(50)(60)の平板部(51)(61)および湾曲部(52)(62)となる2つの屈曲部(91)をつくる工程である(
図5(a)参照)。
【0047】
工程(b)は、第2素板(90)における2つの屈曲部(91)間の部分を、2つの山折り部分(92)と両山折り部分(92)間でかつ屈曲部(91)側に位置する1つの谷折り部分(93)とができるように蛇腹状に3箇所で曲げ(
図5(b)参照)、さらに折りたたむことによって、積層された4つの平板部(95)(96)(97)(98)を有しかつ屈曲部(91)が最も外側の平板部(95)(98)における山折り部(92)とは反対側の縁部に位置する折り曲げ体(94)をつくる工程である(
図5(c)参照)。
【0048】
工程(c)は、折り曲げ体(94)の4つの平板部(95)(96)(97)(98)を厚み方向に押圧し、各平板部(95)(96)(97)(98)の厚みを第2素板(90)の厚みよりも薄くする工程である。
【0049】
工程(d)は、折り曲げ体(94)の両屈曲部(91)に成形加工を施して第1および第2形成部(50)(60)をつくる工程である(
図5(d)参照)。
【0050】
工程(e)は、折り曲げ体(94)の4つの平板部(95)(96)(97)(98)を、長手方向の一部分が残るように山折り部(92)側から切除することによって、第1形成部(50)の第1凸条形成部(71)と、第2形成部(60)の第2凸条形成部(72)と、中間部材(73)の第3凸条形成部(74)、第4凸条形成部(75)および内側連結部(76)と、ブラケット形成部(80)の第1部分(81)、第2部分(82)、第3部分(83)、第4部分(84)、第1外側連結部(85)および第2外側連結部(86)と、ブラケット(8)とを形成する工程である(
図5(e)参照)。
【0051】
上述のようにして第2素板(90)に工程(a)~(e)を施して外側部材(40)をつくった後に、内側部材(30)と外側部材(40)とを、外側部材(40)の第1形成部(50)の平板部(51)が内側部材(30)の前側壁部(32)の外側に重なるとともに、第2形成部(60)の平板部(61)が内側部材(30)の後側壁部(33)の外側に重なるように組み合わせて組み合わせ体を得る。
【0052】
ついで、両ヘッダタンク用組み合わせ体を間隔をおいて配置するとともに、両ヘッダタンク用組み合わせ体間に熱交換管(18)、コルゲートフィン(19)およびサイドプレート(20)を配置し、熱交換管(18)の両端部を両組み合わせ体の内側部材(30)の管挿通穴内に挿入し、さらに閉鎖部材(10)、仕切部材(11)、冷媒入口部材(12)、冷媒出口部材(13)などの熱交換器用部材を組み合わせる。
【0053】
その後、組み合わせ体の内側部材(30)と外側部材(40)とをろう付してタンク本体(9)を得るとともにタンク本体(9)に閉鎖部材(10)および仕切部材(11)をろう付してヘッダタンク(5)(6)をつくり、これと同時に他の熱交換器用部材を一括してろう付する。
【0054】
こうして、コンデンサ(1)が製造される。
【0055】
図6~
図8は
図1のコンデンサ(1)の左ヘッダタンクの変形例を示し、
図9は
図6の左ヘッダタンクのタンク本体を形成する外側部材をつくる方法を工程順に示す。
【0056】
図6~
図8において、左ヘッダタンク(5)のタンク本体(101)におけるタンク本体(101)の熱交換コア部(7)側の内側部分(左ヘッダタンク(5)では右側部分)は、
図2~
図4に示すものと同様な構成の内側部材(30)によって形成され、タンク本体(101)における熱交換コア部(7)とは反対側の外側部分は、内側部材(30)にろう付された外側部材(110)によって形成されている。
【0057】
外側部材(110)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートによって形成されたものであり、内側部材(30)の前側壁部(32)の前面に重なった前平板部(121)および前平板部(121)の左側縁に連なって設けられかつ左方に向かって後方に湾曲した湾曲部(122)からなる第1形成部(120)と、内側部材(30)の後側壁部(33)の後面に重なった後平板部(131)および後平板部(131)の左側縁に連なって設けられかつ左方に向かって前方に湾曲した湾曲部(132)からなる第2形成部(130)と、第1形成部(120)の風下側縁部(左側縁部)および第2形成部(130)の風上側縁部(左側縁部)にまたがるように設けられて外方に突出した凸条(140)とよりなる。
【0058】
外側部材(110)の凸条(140)は、第1形成部(120)の前湾曲部(122)に一体に形成された板状の第1凸条形成部(141)と、第2形成部(130)の後湾曲部(132)に一体に形成された板状の第2凸条形成部(142)とが積層されてろう付されることにより形成されており、積層方向の一端の第1凸条形成部(141)が第1形成部(120)の風下側縁部に一体に設けられるとともに同他端の第2凸条形成部(142)が第2形成部(130)の風上側縁部に一体に設けられている。
【0059】
左ヘッダタンク(5)の2つのブラケット(8)は、外側部材(110)の第1形成部(120)の第1凸条形成部(141)および第2形成部(130)の第2凸条形成部(142)の長手方向の一部分に一体に設けられて外方に延びたブラケット形成部(150)によって構成されている。ブラケット形成部(150)は、外側部材(110)の第1形成部(120)の第1凸条形成部(141)に連なって外方に延びた板状の第1部分(151)と、外側部材(110)の第2形成部(130)の第2凸条形成部(142)に連なって外方に延びた板状の第2部分(152)と、第1部分(151)および第2部分(152)の外端部を一体に連結する外側連結部(153)とよりなる。ブラケット形成部(150)の第1および第2部分(152)は積層されて隣接するものどうしがろう付されている。
【0060】
以下、上述した左ヘッダタンク(5)のタンク本体(101)の外側部材(110)をつくる方法について、
図9を参照して説明する。
【0061】
まず、片面がベア面となっているアルミニウムブレージングシートからなりかつタンク本体(101)の内側部材(30)を形成する第1素板と、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなりかつタンク本体(101)の外側部材(110)を形成する第2素板(160)とを用意する。
【0062】
ついで、第1素板に曲げ加工や穴開け加工を施すことによって、管挿通穴を有する管接続部(31)および前後両側壁(32)(33)からなり、かつタンク本体(101)の外面側を向く面がベア面となっている内側部材(30)をつくる。
【0063】
また、第2素板(160)に次の工程(a)~(e)を施すことによって、外側部材(110)をつくる。
【0064】
工程(a)は、第2素板(160)の両側縁部を曲げて第1および第2形成部(120)(130)の平板部(121)(131)および湾曲部(122)(132)となる2つの屈曲部(161)をつくる工程である(
図9(a)参照)。
【0065】
工程(b)は、第2素板(160)における2つの屈曲部(161)間の部分を、1つの山折り部分(162)ができるように1箇所で曲げ(
図9(b)参照)、さらに折りたたむことによって、積層された2つの平板部(164)(165)を有しかつ屈曲部(161)が両平板部(164)(165)における山折り部(162)とは反対側の縁部に位置する折り曲げ体(163)をつくる工程である(
図9(c)参照)。
【0066】
工程(c)は、折り曲げ体(163)の2つの平板部(164)(165)を厚み方向に押圧し、各平板部(164)(165)の厚みを第2素板(160)の厚みよりも薄くする工程である。
【0067】
工程(d)は、折り曲げ体(163)の両屈曲部(161)に成形加工を施して第1および第2形成部(120)(130)をつくる工程である(
図9(d)参照)。
【0068】
工程(e)は、折り曲げ体(163)の2つの平板部(164)(165)を、長手方向の一部分が残るように山折り部(162)側から切除することによって、第1形成部(120)の第1凸条形成部(141)と、第2形成部(130)の第2凸条形成部(142)と、ブラケット形成部(150)の第1部分(151)、第2部分(152)および外側連結部(153)と、ブラケット(8)とを形成する工程である(
図9(e)参照)。
【0069】
上記実施形態においては、この発明による熱交換器が車両用空調装置のコンデンサ(1)に適用されているが、これに限定されるものではなく、他の用途の熱交換器にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明による熱交換器は、車両用空調装置のコンデンサとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0071】
(1):コンデンサ(熱交換器)
(5)(6)(100):ヘッダタンク
(7):熱交換コア部
(8):ブラケット
(9)(101):タンク本体
(10):閉鎖部材
(30):内側部材
(40)(110):外側部材
(50)(120):第1形成部
(60)(130):第2形成部
(70)(140):凸条
(71)(72)(74)(75)(141)(142):凸条形成部
(73):中間部材
(76):内側連結部
(80):ブラケット形成部
(81)(82)(83)(84):第1~第4部分
(85)(86):外側連結部
(90):第2素板
(91):屈曲部
(92):山折り部分
(93):谷折り部分
(94):折り曲げ体
(95)(96)(97)(98):平板部
(150):ブラケット形成部
(151)(152):第1~第2部分
(153):外側連結部
(160):第2素板
(161):屈曲部
(162):山折り部分
(163):折り曲げ体
(164)(165):平板部