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特開2022-112578鉄道車両用の手摺り及びその固有振動数の変更方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112578
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】鉄道車両用の手摺り及びその固有振動数の変更方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20220727BHJP
   B60N 3/02 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B61D37/00 Z
B60N3/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008417
(22)【出願日】2021-01-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川島 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕
(72)【発明者】
【氏名】秋山 悟
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩
(57)【要約】
【課題】簡易に手摺りの固有振動数を変更する。
【解決手段】手摺り10は、鉄道車両1の車体2の客室6に設けられる鉄道車両1用のものであって、内部が充填空間15となる手摺本体11と、流動性を有し、充填空間15に充填される充填材18とを備える。手摺本体11には、充填空間15に充填材18を入れるための開口16と、開口16を開閉する栓17とが設けられている。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体の客室に設けられる鉄道車両用の手摺りであって、
内部が充填空間となる中空部材と、
流動性を有し、前記充填空間に充填される充填材とを備え、
前記中空部材には、前記充填空間に前記充填材を入れるための開口および前記充填空間から前記充填材を抜くための開口の少なくとも一方と、前記開口を開閉する栓とが設けられている、鉄道車両用の手摺り。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用の手摺りにおいて、
前記中空部材は、湾曲部または枝分かれ部を有しており、
前記開口は、前記湾曲部または前記枝分かれ部に設けられている、鉄道車両用の手摺り。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両用の手摺りにおいて、
前記開口および前記栓を覆うように前記中空部材に連結される連結部材をさらに備えている、鉄道車両用の手摺り。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の鉄道車両用の手摺りにおいて、
前記充填材は、金属製の粒体または粉体である、鉄道車両用の手摺り。
【請求項5】
内部が充填空間となる中空部材を備え、前記中空部材には、前記充填空間と外部とを連通させる開口と、前記開口を開閉する栓とが設けられ、鉄道車両の車体の客室に設けられる、鉄道車両用の手摺りの固有振動数の変更方法であって、
前記開口を開栓することと、
前記開口から前記充填空間に充填材を入れる、または、前記充填空間に充填されている充填材を前記開口から抜くことと、
前記開口を閉栓することとを含む、鉄道車両用の手摺りの固有振動数の変更方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、鉄道車両用の手摺り及びその固有振動数の変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動する機械に設けられる手摺りとして防振対策が施されたものが知られている。例えば特許文献1に開示の手摺りは、内部空間が密閉されたパイプを備えており、パイプの内部空間には、多数の粒状体が封入されている。この手摺りでは、機械の振動によってパイプが振動した際、粒状体が振動し、粒状体同士の摩擦および粒状体とパイプの内壁面との摩擦により振動エネルギが消費、吸収される。これにより、共振周波数におけるパイプの振動振幅が低減され、共振によるパイプの破損が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5483437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1の防振対策では、確実には共振を回避することができないため、共振によって手摺りが破損する虞がある。手摺りの共振を回避するためには、共振周波数(即ち、振動源の振動数)と異なる固有振動数を有する手摺りを製作すればよい。
【0005】
しかしながら、振動源の振動数を予め把握することが困難な場合があり、その場合予め共振周波数と異なる固有振動数の手摺りを製作することは困難である。また、例えば鉄道車両に設けられる手摺りの場合、同じ形状および質量の手摺りが複数の車両に設けられる一方、車両に搭載される振動源である機器は各車両によって異なることから共振周波数が車両ごとに異なる。そのため、ある車両の手摺りは共振しないが、ある車両の手摺りは共振するということが起こり得る。このような場合、従来では、パイプの肉厚を増減させる等の加工を行うことによって固有振動数を変更しており、手間が著しく懸かっていた。
【0006】
本願に開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、手摺りにおいて簡易に固有振動数を変更することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示の技術は、鉄道車両の車体の客室に設けられる鉄道車両用の手摺りであって、内部が充填空間となる中空部材と、流動性を有し、前記充填空間に充填される充填材とを備えている。そして、前記中空部材には、前記充填空間に前記充填材を入れるための開口および前記充填空間から前記充填材を抜くための開口の少なくとも一方と、前記開口を開閉する栓とが設けられている。
【0008】
また、本願に開示の別の技術は、内部が充填空間となる中空部材を備え、前記中空部材には、前記充填空間と外部とを連通させる開口と、前記開口を開閉する栓とが設けられ、鉄道車両の車体の客室に設けられる、鉄道車両用の手摺りの固有振動数の変更方法である。この固有振動数の変更方法は、前記開口を開栓することと、前記開口から前記充填空間に充填材を入れる、または、前記充填空間に充填されている充填材を前記開口から抜くことと、前記開口を閉栓することとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示の鉄道車両用の手摺りによれば、簡易に固有振動数を変更することができる。
【0010】
本願に開示の鉄道車両用の手摺りの固有振動数の変更方法によれば、簡易に固有振動数を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、鉄道車両を車幅方向に視て示す概略断面図である。
図2図2は、鉄道車両を車両長手方向に視て示す概略断面図である。
図3図3は、手摺りを車幅方向に視て示す正面図である。
図4図4は、手摺りの要部を示す部分断面図である。
図5図5は、手摺りの固有振動数の変更方法を示すフローチャートである。
図6図6は、その他の実施形態に係る充填動作時の手摺りの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、鉄道車両1を車幅方向に視て示す概略断面図である。図2は、鉄道車両1を車両長手方向に視て示す概略断面図である。
【0014】
鉄道車両1は、車体2を備えている。車体2は、屋根3と、床4と、2つの側壁5とを有している。2つの側壁5は、屋根3と床4とを接続している。車体2の内部空間、即ち、屋根3と床4と2つの側壁5とによって区画された空間は、客室6となっている。
【0015】
鉄道車両1には、手摺り10が設けられている。具体的に、手摺り10は、車体2の客室6に設けられる鉄道車両1用の手摺りである。本実施形態において、手摺り10は、立っている乗客が自身の体を支えるためのものである。
【0016】
図3は、手摺り10を車幅方向に視て示す正面図である。図4は、手摺り10の要部を示す部分断面図である。図3および図4にも示すように、手摺り10は、手摺本体11と、充填材18と、上側支持部21と、下側支持部22とを備えている。
【0017】
手摺本体11は、乗客が主として掴む部分である。手摺本体11は、客室6におけるドア7と対向する空間に位置しており(図1参照)、車幅方向における中央に位置している(図2参照)。
【0018】
手摺本体11は、内部が充填空間15となる中空部材である。具体的に、手摺本体11は、環状に形成されたパイプ(例えば、ステンレス製のパイプ、以下のパイプについても同様。)である。より詳しくは、手摺本体11は、車両高さ方向(即ち、鉛直方向)に延びる長円形の環状に形成されている。
【0019】
つまり、手摺本体11は、2つの円弧部(上側円弧部13および下側円弧部14)と、この2つの円弧部を接続する2つの直線部12とを有している。下側円弧部14は、上側円弧部13の下方に位置している。上側円弧部13および下側円弧部14は、互いに同径の半円状に形成されている。2つの直線部12は、互いに平行に車両高さ方向に延びている。上側円弧部13および下側円弧部14は、湾曲部の一例である。
【0020】
こうして形成された手摺本体11の内部空間が、充填空間15を構成している。つまり、充填空間15は、環状に形成された閉空間である。充填空間15は、充填材18が充填される空間である。充填材18は、流動性を有しており、本実施形態では、金属製の粒体または粉体が充填材18として用いられる。充填材18は、液体、ゲル状の粘性体等であってもよい。
【0021】
手摺本体11には、充填空間15に充填材18を入れるための開閉自在な開口16が設けられている。開口16は、上側円弧部13に設けられている。より詳しくは、開口16は、上側円弧部13の中央に設けられている。また、開口16は、手摺本体11(充填空間15)における最上位に設けられている。開口16は、充填空間15を外部と連通させる。開口16は、車両高さ方向(鉛直方向)に開口している。
【0022】
また、手摺本体11には、開口16を開閉する栓17が着脱可能に設けられている。栓17を開口16に装着する(閉栓する)と、開口16が閉鎖され、栓17を開口16から外す(開栓する)と、開口16が開放される。こうして、開口16は開閉される。本実施形態において、開口16はねじ孔であり、栓17は開口16と螺合するボルトである。
【0023】
上側支持部21および下側支持部22は、手摺本体11を支持する。上側支持部21および下側支持部22は、車両高さ方向に直線状に延びるパイプである。下側支持部22は、手摺本体11と床4とに接続されている。より詳しくは、下側支持部22は、下端が床4に固定され、上端が手摺本体11の下側円弧部14の中央に接合されている。上側支持部21は、開口16および栓17を覆うように手摺本体11に連結される連結部材である。上側支持部21は、手摺本体11と屋根3とに接続されている。より詳しくは、上側支持部21は、上端が屋根3に固定され、下端が手摺本体11の上側円弧部13の頂部(中央)に接合されている。こうして、入口16および栓17が上側支持部21によって覆われることで入口16および栓17が隠れるため、手摺り10の外観は損なわれない。
【0024】
手摺本体11、上側支持部21および下側支持部22は、客室6において車両長手方向に複数配列されている。また、手摺り10は、隣接する上側支持部21同士を接続する接続部23を備えている。接続部23は、車両長手方向に直線状に延びるパイプである。このように、上側支持部21、下側支持部22および接続部23が設けられることにより、手摺り10全体の必要な剛性が確保される。
【0025】
このように構成された手摺り10では、開口16から充填空間15に充填材18を充填することにより、手摺り10全体の質量が変化(増大)する。手摺り10全体の質量が変化(増大)することにより、手摺り10の固有振動数が変更される(低下する)。つまり、手摺り10は、充填空間15における充填材18の量(充填量)を変更させることによって、即ち手摺り10の質量を変更させることによって、手摺り10の固有振動数を変更するように構成されている。
【0026】
〈固有振動数の変更方法〉
前述のように構成された鉄道車両1用の手摺り10の固有振動数の変更方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、手摺り10の固有振動数の変更方法を示すフローチャートである。
【0027】
先ず、固有振動数の変更方法が行われる前に、手摺り10が対象の鉄道車両1に取り付けられる。つまり、上側支持部21が屋根3に固定され、下側支持部22が床4に固定され、手摺本体11が上側支持部21と下側支持部22とに接合(溶接接合)される。このとき、手摺本体11は、充填空間15に充填材18が全く充填されていない状態、または、充填空間15に充填材18が幾分か充填されている状態(即ち、充填空間15は満量でない状態)である。
【0028】
そして、車体2の振動、即ち車体2に搭載されている機器(振動源)の振動によって、手摺り10が共振するか否かを確認する。手摺り10が共振した場合、手摺り10の固有振動数が共振周波数と相違するように変更される。つまり、図5に示すように固有振動数の変更が行われる。本実施形態において、固有振動数の変更方法は、手摺本体11を取り外すことと、開口16を開栓することと、開口16から充填空間15に充填材18を入れることと、開口16を閉栓することと、手摺本体11を取り付けることとを含む。
【0029】
先ず、手摺本体11を取り外す取外し動作が行われる(ステップS1)。具体的に、この取外し動作では、互いに接合されている手摺本体11と上側支持部21および下側支持部22とが一体となって車体2から取り外される。以降、一体形成された手摺本体11、上側支持部21および下側支持部22を、手摺本体11等とも言う。
【0030】
より詳しくは、取外し動作では、先ず、上側支持部21と2つの接続部23とが分離される。続いて、手摺本体11等を上方へ引き上げることにより、下側支持部22が床4から分離される。続いて、手摺本体11等を少し傾けて下方へ引き下げることにより、上側支持部21が屋根3から分離される。こうして、手摺本体11等が車体2から取り外される。
【0031】
手摺本体11等が車体2から取り外されると、手摺本体11の開口16を開栓する開栓動作が行われる(ステップS2)。つまり、開口16から栓17が外され、開口16が開放される。具体的に、開栓動作では、工具等を上側支持部21の内部に挿入して栓17を外す。続いて、開口16から充填空間15に充填材18を入れる充填動作が行われる(ステップS3)。具体的に、充填動作では、充填材18を上側支持部21に流し込む。上側支持部21に流し込まれた充填材18は、開口16から充填空間15に流れて充填される。このとき、開口16が上側円弧部13に設けられているので、充填材18が上側円弧部13から2つの直線部12へ略等分に分流する。そのため、充填材18が充填空間15に満遍なく充填される。
【0032】
前述の充填動作が行われることにより、充填空間15における充填量が増大し、手摺本体11の質量、引いては手摺り10全体の質量が増大する。そのため、手摺り10の固有振動数は低下し、手摺り10の固有振動数と共振周波数(振動源の振動数)とが相違する。これにより、手摺り10の共振が回避される。
【0033】
続いて、開口16を閉栓する閉栓動作が行われる(ステップS4)。つまり、開口16に栓17が装着され、開口16が閉鎖される。具体的に、閉栓動作では、工具等を上側支持部21の内部に挿入して栓17を装着する。続いて、手摺本体11等を再度車体2に取り付ける取付動作が行われる(ステップS5)。つまり、上側支持部21が屋根3に連結されると共に2つの接続部23と連結され、下側支持部22が床4に連結される。以上により、共振しない手摺り10が鉄道車両1に設けられる。
【0034】
以上のように、前記実施形態の鉄道車両1の手摺り10は、鉄道車両1の車体2の客室6に設けられるものであって、内部が充填空間15となる手摺本体11(中空部材)と、流動性を有し、充填空間15に充填される充填材18とを備えている。手摺本体11には、充填空間15に充填材18を入れるための開口16と、開口16を開閉する栓17とが設けられている。
【0035】
また、前記実施形態の鉄道車両1用の手摺り10の固有振動数の変更方法は、内部が充填空間15となる手摺本体11(中空部材)を備え、手摺本体11には、充填空間15と外部とを連通させる開口16と、開口16を開閉する栓17とが設けられ、鉄道車両1の車体2の客室6に設けられる手摺り10の固有振動数を変更する方法である。固有振動数の変更方法は、開口16を開栓することと、開口16から充填空間15に充填材18を入れることと、開口16を閉栓することとを含む。
【0036】
これらの構成によれば、手摺り10が共振すると分かった場合、手摺本体11の開口16を開栓して充填材18を充填空間15に入れることにより、手摺り10の質量を増大させることができる。ここで、充填材18は流動性を有するため、容易に充填材18を充填空間15に入れることができる。手摺り10の質量が増大することにより、手摺り10の固有振動数が低下する(変更される)。このように、手摺り10の固有振動数を簡易に変更することができる。したがって、初めに振動源の振動数が把握できない場合であっても、手摺り10の共振を容易に回避することができる。
【0037】
また、手摺り10は鉄道車両1の客室6に設けられるものであることから、車両によって振動源の振動数が異なる場合であっても、車両ごとに手摺り10の固有振動数を共振周波数と相違する振動数に簡易に変更することができる。そのため、手摺り10を一から製作し直すといった手間を回避することができる。
【0038】
また、前記実施形態の手摺り10において、手摺本体11は、上側円弧部13(湾曲部)を有している。そして、開口16は、上側円弧部13に設けられている。
【0039】
前記の構成によれば、開口16が上側円弧部13に設けられていることから、充填材18を上側円弧部13から2つの直線部12へ略等分に分流させることができる。そのため、充填空間15に満遍なく充填材18を充填させることができる。したがって、充填空間15において充填材が一部に偏在してしまう場合に比べて、手摺り10の質量の変更幅を大きくすることができる。そのため、固有振動数の変更幅も大きくすることができ、手摺り10の固有振動数を確実に共振周波数と相違させることができる。
【0040】
また、前記実施形態の手摺り10は、開口16および栓17を覆うように手摺本体11に連結される上側支持部21(連結部材)をさらに備えている。
【0041】
前記の構成によれば、開口16および栓17を上側支持部21によって外見的に隠すことができる。そのため、開口16等が外部に露出することによって手摺り10の外観が損なわれることを防止することができる。
【0042】
また、前記実施形態の手摺り10において、充填材18は、金属製の粒体または粉体である。
【0043】
前記の構成によれば、金属製の粒体または粉体は比重が比較的大きいため、少しの充填量でも手摺り10の質量の変更量を大きく稼ぐことができる。したがって、充填材18の充填動作が簡易となる。
【0044】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0045】
例えば、前記実施形態の手摺り10において、開口16は、充填空間15に充填材18を入れるためのものとしたが、これに代えて、充填空間15から充填材18を抜くための開口としてもよい。その場合、手摺本体11の開口16を開栓し、充填空間15に充填されている充填材18を開口16から抜くことにより、手摺り10の質量を減少させることができる。これにより、手摺り10の固有振動数を増加させて共振周波数と相違させることができる。このように、手摺り10の固有振動数を簡易に変更することができる。
【0046】
また、前記実施形態の手摺本体11には、充填空間15に充填材18を入れるための開口および充填空間15から充填材18を抜くための開口の両方を設けるようにしてもよい。
【0047】
また、手摺本体11の形状は、前述した長円形の環状以外の環状に形成されてもよい。例えば、手摺本体11は、楕円形または卵型の環状に形成されてもよい。
【0048】
また、手摺本体11は、複数に枝分かれする枝分かれ部を有するものであってもよい。その場合、開口16は、枝分かれ部に設けられることが好ましい。開口16が枝分かれ部に設けられることにより、充填材18を開口16から各枝に分流させることができる。そのため、充填空間に満遍なく充填材を充填させることができる。
【0049】
また、手摺本体11は、内部が充填空間15となる中空部材であれば、如何なる形状であってもよい。
【0050】
また、前記実施形態の手摺り10では、内部が充填空間15となる中空部材として手摺本体11のみを対象としたが、加えて上側支持部21や下側支持部22も前記中空部材としてもよい。また、手摺本体11に代えて、上側支持部21や下側支持部22を前記中空部材としてもよい。
【0051】
また、前記実施形態の手摺り10では、開口16を下側円弧部14に設けるようにしてもよい。その場合は、取り外した手摺本体11を上下に反転させることにより、開口16を上側円弧部13に設けた場合と同様、容易に充填材18を充填空間15に入れることができる。そして、この場合、下側支持部22は、下側円弧部14に設けられた開口および栓を覆うように手摺本体11に連結するようにしてもよい。つまり、下側支持部22を連結部材として用いるようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施形態の手摺り10では、固有振動数を変更する際、上側支持部21を介して充填材18を入れるようにしたが、手摺本体11と上側支持部21とを分離し、充填材18を直接開口16から入れるようにしてもよい。その場合、図6に示すように漏斗31を用いることにより、効率よく充填材18を充填することができる。図6は、その他の実施形態に係る充填動作時の手摺り10の要部を示す断面図である。
【0053】
また、開口16および栓17が手摺り10の外観を損なわないような形状等を有している場合は、開口16および栓17は手摺本体11において外観的に露出する位置に設けてもよい。
【0054】
また、前記実施形態の手摺り10では、充填材18の充填量を変更することにより、手摺り10の質量を変更したが、充填材18の粒の大きさを変えることにより、または、充填材18の材質を変更することにより、手摺り10の質量を変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 鉄道車両
2 車体
6 客室
10 手摺り
11 手摺本体(中空部材)
13 上側円弧部(湾曲部)
15 充填空間
16 開口
17 栓
18 充填材
21 上側支持部(連結部材)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体の客室に設けられる鉄道車両用の手摺りであって、
内部が充填空間となる中空部材と、
流動性を有し、前記充填空間に充填される充填材とを備え、
前記中空部材には、前記充填空間に前記充填材を入れて前記充填空間における充填量を変更するための開口および前記充填空間から前記充填材を抜いて前記充填空間における充填量を変更するための開口の少なくとも一方と、前記開口を開閉する栓とが設けられている、鉄道車両用の手摺り。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用の手摺りにおいて、
前記中空部材は、湾曲部または枝分かれ部を有しており、
前記開口は、前記湾曲部または前記枝分かれ部に設けられている、鉄道車両用の手摺り。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両用の手摺りにおいて、
前記開口および前記栓を覆うように前記中空部材に連結される連結部材をさらに備えている、鉄道車両用の手摺り。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の鉄道車両用の手摺りにおいて、
前記充填材は、金属製の粒体または粉体である、鉄道車両用の手摺り。
【請求項5】
内部が充填空間となる中空部材を備え、前記中空部材には、前記充填空間と外部とを連通させる開口と、前記開口を開閉する栓とが設けられ、鉄道車両の車体の客室に設けられる、鉄道車両用の手摺りの固有振動数の変更方法であって、
前記開口を開栓することと、
前記開口から前記充填空間に充填材を入れる、または、前記充填空間に充填されている充填材を前記開口から抜くことと、
前記開口を閉栓することとを含む、鉄道車両用の手摺りの固有振動数の変更方法。