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特開2022-112615次亜塩素酸水溶液用防錆剤並びに防錆効果を有する殺菌・洗浄剤及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112615
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】次亜塩素酸水溶液用防錆剤並びに防錆効果を有する殺菌・洗浄剤及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/12 20060101AFI20220727BHJP
   A01N 59/08 20060101ALI20220727BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C23F11/12 101
A01N59/08 A
A01P3/00
C23F11/12 102
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008469
(22)【出願日】2021-01-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(72)【発明者】
【氏名】人見 美希
(72)【発明者】
【氏名】高橋 歩
【テーマコード(参考)】
4H011
4K062
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC06
4H011DA13
4H011DG16
4K062AA03
4K062BA09
4K062BB06
4K062BB09
4K062DA10
4K062FA16
4K062GA10
(57)【要約】
【課題】 高濃度次亜塩素酸水溶液を希釈して次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤を調製するときに使用される防錆剤であって、ポリリン酸等の無機系の防錆剤を含まず、高い防錆効果を付与し、使用時においても溶液のpHや有効塩素濃度を保つことができる次亜塩素酸水溶液用防錆剤を提供する。
【解決手段】 有効成分が、実質的に、(A1)ギ酸の金属塩、及び/又は(A2)分子内に含まれる炭素数:nが2以上であり、酸の価数:vが1又は2である飽和カルボン酸であって、前記炭素数:nを前記カルボン酸の価数:vで除した値:n/vが2~6である飽和カルボン酸の金属塩、からなるA成分;及び非イオン界面活性剤からなるB成分;のみからなり、前記有効成分における前記量成分の質量比:B/Aが0.005~10.0である、次亜塩素酸水溶液用防錆剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を次亜塩素酸水溶液に付与する次亜塩素酸水溶液用防錆剤であって、
有効成分が、実質的に、(A1)ギ酸の金属塩、及び/又は(A2)分子内に含まれる炭素数:nが2以上であり、酸の価数:vが1又は2である飽和カルボン酸であって、前記炭素数:nを前記カルボン酸の価数:vで除した値:n/vが2~6である飽和カルボン酸の金属塩、からなるA成分;及び非イオン界面活性剤からなるB成分;のみからなり、前記有効成分における前記A成分に対する前記B成分の質量比:B/Aが0.005~10.0である、
ことを特徴とする次亜塩素酸水溶液用防錆剤。
【請求項2】
前記有効成分の水溶液からなる請求項1に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤。
【請求項3】
前記A成分が、v=1である飽和モノカルボン酸の金属塩からなり、前記B成分がポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる、請求項1又は2に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤。
【請求項4】
有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5である次亜塩素酸水溶液からなり、且つ接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を有する殺菌・洗浄剤を調製する方法であって、
前記次亜塩素酸水溶液よりも高い有効塩素濃度を有し、pHが3.0~7.5であり、且つ飽和カルボン酸の金属塩及び非イオン界面活性剤を含まない次亜塩素酸水溶液を水又は水性溶媒で希釈する希釈工程を有し、
前記希釈工程における希釈の際に、請求項1~3の何れか1項に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤を希釈後に得られる次亜塩素酸水溶液の質量を基準とする前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%となるように添加する、
ことを特徴とする殺菌・洗浄剤の調製方法。
【請求項5】
前記希釈工程において、希釈後における有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:C(質量ppm)の割合:C/CECが2~1000となるように前記次亜塩素酸水溶液用防錆剤を添加する、請求項4に記載の殺菌・洗浄剤の調製方法。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤が溶解した次亜塩素酸水溶液であって、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5であり、前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%で、且つ、前記有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:C(質量ppm)の割合:C/CECが2~1000である次亜塩素酸水溶液からなる、ことを特徴とする、殺菌・洗浄剤。
【請求項7】
リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩を実質的に含有しない、請求項6に記載の殺菌・洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸水溶液用防錆剤並びに防錆効果を有する殺菌・洗浄剤及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液中の次亜塩素酸は、pHによって存在形態が変化する。次亜塩素酸の25℃における解離定数pKaは7.53であるため、pH=7.5の時に、分子型の次亜塩素酸(HClO)(以下、「分子型次亜塩素酸」とも言う。)と次亜塩素酸イオン(OCl)(以下、「イオン型次亜塩素酸」とも言う。)の比率は1:1となる。即ち、該pHより酸性側に傾くと分子型の次亜塩素酸(HClO)の存在割合が大きくなり、反対にアルカリ側に傾くと次亜塩素酸イオン(OCl)の存在割合が大きくなる。具体的には、pHが3~6程度の弱酸性領域では殆どが分子型の次亜塩素酸(HClO)として存在し(このpH領域にある次亜塩素酸水溶液を特に弱酸性次亜塩素酸水とよぶ)、pH9以上の塩基性領域では殆どが次亜塩素酸イオン(OCl)として存在する。また強酸性領域(たとえばpH3未満)ではpHの低下に伴い塩素分子(Cl)の発生が優勢となる。
【0003】
これら存在形態の中では分子型次亜塩素酸(HClO)が極めて高い殺菌効果を有し、その殺菌効果は次亜塩素酸イオン(OCl)の約80倍であるとも言われている。このような高い殺菌効果を有する分子型次亜塩素酸を多く含むpH3~6の弱酸性次亜塩素酸水は、人体に対する安全性も比較的高いことから、医療、歯科、農業、食品加工等、様々な分野における除菌剤又は殺菌剤として使用されている(特許文献1、2、3及び非特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、塩素系の除菌剤や殺菌剤は、金属腐食性があることで知られており、次亜塩素酸においても同様である。さらに、pHの高い次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩(イオン型次亜塩素酸)水溶液に比べ、分子型の次亜塩素酸水溶液の腐食性は高く、より低濃度、短時間で金属を腐食させてしまう。このようなイオン型次亜塩素酸及び分子型次亜塩素酸(両者をまとめて次亜塩素酸とよぶ)の金属腐食の問題に対して、有機酸及びその塩からなる防錆剤や無機系の防錆剤を添加した殺菌洗浄剤や緩衝化剤を添加した殺菌洗浄剤が提案されている。
【0005】
たとえば特許文献4には、「次亜塩素酸及び次亜塩素酸アルカリ金属塩から選ばれる1種以上(A)と、多価アルコール誘導体型界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上(B)と、有機酸及びその塩から選ばれる1種以上(C)と、防錆剤(D)とを含有する殺菌剤組成物」が開示されており、上記防錆剤は、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上であることが記載されている。
【0006】
また、特許文献5には、「(a)次亜塩素酸又は水中で次亜塩素酸を遊離する1以上の成分、及び(b)緩衝化剤を含有し、使用時の有効塩素濃度が0.0001~12%である水性殺菌剤組成物」が記載されている。そして、特許文献5には、従来から殺菌剤として用いられてきた次亜塩素酸系水溶液へ、緩衝化剤を有効塩素濃度のモル換算値に対して5モル倍以上配合することによって金属の腐食を有効に抑制することが可能となったこと、及び緩衝化剤としては有機酸および有機酸の塩、特に酢酸及び/又は酢酸のアルカリ金属塩が好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-202907号公報
【特許文献2】特開2000-109887号広報
【特許文献3】特開2010-138101号広報
【特許文献4】特開2002-161011号公報
【特許文献5】国際公開2006/057311号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】福崎智司著「次亜塩素酸の科学」米田出版、2012年、p17-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献4で使用されているリン酸やポリリン酸等の無機系の防錆剤は、金属の表面に金属塩を沈着させ、皮膜を形成することで防錆効果を発揮するものである。しかしながら、このような防錆剤を用いた場合には、皮膜のムラにより一部錆びが発生するという問題や、水洗を行った後でも金属表面に沈着物が残留してしまう問題がある。一方、前記特許文献5で防錆効果を付与するために使用されている酢酸及び/又は酢酸のアルカリ金属塩等の緩衝化剤は、ステンレス鋼(SUS)のような錆び難い金属に対しては錆の発生を抑制する効果は認められるものの、スチール鋼といった錆び易い金属に対する防錆効果は十分とはいえないことが本発明者等の検討により明らかとなった。
【0010】
また、次亜塩素酸水溶液系の殺菌剤組成物は、調製後、少なくとも数時間程度は調製時の有効塩素濃度が保たれる必要があり、さらに、取り扱い時の安全性の観点から、中性又は中性に極めて近いpHを有することが望ましい。
【0011】
そこで本発明は、次亜塩素酸水溶液系の殺菌剤組成物を調製するために使用される次亜塩素酸水溶液用防錆剤であって、有効成分にリン酸やポリリン酸等の無機系の防錆剤を含むことなく、該防錆剤を添加した次亜塩素酸水溶液をスチール鋼等の錆び易い金属からなる表面を有する物品に対して使用した場合であっても接触した前記金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を発揮し、しかも、調製後数時間程度は調製時の有効塩素濃度を保つことができ、且つ、水溶液を中性又は中性に極めて近いpHに保つことができる次亜塩素酸水溶液用防錆剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の第一の形態は、接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を次亜塩素酸水溶液に付与する次亜塩素酸水溶液用防錆剤であって、有効成分が、実質的に、(A1)ギ酸の金属塩、及び/又は(A2)分子内に含まれる炭素数:nが2以上であり、酸の価数:vが1又は2である飽和カルボン酸であって、前記炭素数:nを前記カルボン酸の価数:vで除した値:n/vが2~6である飽和カルボン酸の金属塩、からなるA成分;及び非イオン界面活性剤からなるB成分;のみからなり、前記有効成分における前記A成分に対する前記B成分の質量比:B/Aが0.005~10.0である、ことを特徴とする次亜塩素酸水溶液用防錆剤である。
【0013】
上記形態の次亜塩素酸水溶液用防錆剤(以下、「本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤」ともいう。)は、前記有効成分の水溶液からなることが好ましく、また、前記A成分がv=1である飽和モノカルボン酸の金属塩からなり、前記B成分がポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の第二の形態は、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5である次亜塩素酸水溶液からなり、且つ接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を有する殺菌・洗浄剤を調製する方法であって、前記次亜塩素酸水溶液よりも高い有効塩素濃度を有し、pHが3~7.5であり、且つ飽和カルボン酸の金属塩及び非イオン界面活性剤を含まない次亜塩素酸水溶液を水又は水性溶媒で希釈する希釈工程を有し、前記希釈工程における希釈の際に、請求項1~3の何れか1項に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤を希釈後に得られる次亜塩素酸水溶液の質量を基準とする前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%となるように添加する、ことを特徴とする殺菌・洗浄剤の調製方法である。
【0015】
上記形態の調製方法(以下、「本発明の殺菌・洗浄剤の調製方法」ともいう。)は、前記希釈工程において、希釈後における有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:C(質量ppm)の割合:C/CECが2~1000となるように前記次亜塩素酸水溶液用防錆剤を添加する、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明の第三の形態は、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤が溶解した次亜塩素酸水溶液であって、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5であり、前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%で、且つ、前記有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:C(質量ppm)の割合:C/CECが2~1000である次亜塩素酸水溶液からなる、ことを特徴とする、殺菌・洗浄剤である。
【0017】
上記形態の殺菌・洗浄剤(以下、「本発明の殺菌・洗浄剤」ともいう。)は、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩を実質的に含有しない、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、これを配合することにより次亜塩素酸水溶液に防錆効果を付与ことができる。しかも、リン酸やポリリン酸の無機系の防錆剤を有効成分に含んでいないため、これらに起因する前記問題が発生することはない。しかも、得られる防錆効果は、酢酸及び/又は酢酸のアルカリ金属塩等の緩衝化剤を添加したときよりも高く、スチール鋼等の錆び易い金属からなる表面を有する物品に対して使用した場合であっても接触した前記金属表面における錆の発生を有効に抑制することも可能である。さらに、次亜塩素酸水溶液に本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤を配合してから少なくとも数時間程度は調製時の有効塩素濃度を保つことができ、更に水溶液を中性又は中性に極めて近いpHに保つことができる。
【0019】
一般に、長期間保管したときの安定性(有効塩素濃度低下防止)及び保管スペースの省スペース化等の観点から、次亜塩素酸水溶液系の殺菌剤組成物は、希釈して使用されることを前提とした高有効塩素濃度の次亜塩素酸水溶液であって、有効塩素濃度が高い状態で保管することができる次亜塩素酸水溶液(以下、「濃厚原液」とも言う。)を、使用時に所定の濃度になるように希釈して使用すること、すなわち、用事に所期の殺菌・洗浄剤となるように調製(このように用事に都度調製することを「用事調製」という。)して使用することが行われている。
【0020】
本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、2種類の有効成分が、前記効果を奏する様な所定の配合比で予め混合され、これらの混合物からなる有効成分は高濃度の状態で長期間安定に保存できるため、防錆効果を有する次亜塩素酸水溶液系の殺菌剤組成物を用事調製するために使用する次亜塩素酸水溶液用防錆剤として、極めて有効である。すなわち、上記用事調製における希釈の際に、少量配合することという極めて簡便な方法(すなわち本発明の殺菌・洗浄剤の調製方法)により、少なくとも調製直後から数時間程度は殺菌に有効な有効塩素濃度を保つことができ、更に取り扱い易い中性又は中性に極めて近いpHを有するという特長を有する本発明の殺菌・洗浄剤を簡単に調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、本発明者等の検討によって得られた“弱酸性次亜塩素酸水に、非イオン界面活性剤を添加することで、防錆効果を付与することができる”という知見、及び“特定の飽和カルボン酸の金属塩と非イオン界面活性剤とを、所定の配合割合で併用すると、相乗効果により、夫々を単独で使用したときよりも防錆効果が高くなり、さらに非イオン界面活性剤を単独使用したときに見られるpHの低下も防止できるようになる”という知見に基づき成されたものである。なお、前記特許文献3には、洗浄性を向上させるために水性殺菌剤組成物には、アルキルエーテル硫酸エステル等の界面活性剤を0.001~10%配合しても良いとされているが、非イオン界面活性剤が防錆効果を有することは認識されていない。したがって、前記知見は、本発明者等によって初めて確認されたことであると言える。
【0022】
なお、特定の飽和カルボン酸の金属塩と非イオン界面活性剤とを所定の配合割合で併用したときに上記のような効果が得られる理由は明らかではなく、また、本発明は論理に何ら拘束されるものではないが、本発明者等は、次のような理由であると推定している。すなわち、非イオン界面活性剤が共存することにより、カルボン酸アニオンが金属表面に吸着した状態で安定に存在できるようになったこと、及び非イオン界面活性剤自体も(カルボン酸アニオンが吸着していない)金属表面に付着して防錆効果を発揮すること、により防錆効果が高まり、また、特定の飽和カルボン酸の金属塩と非イオン界面活性剤の相互作用により非イオン界面活性剤の酸化、即ち(塩酸の発生を伴う)分子状次亜塩素酸の還元(分解)が抑制されてpHの低下が起こらないようになったものと推定している。
【0023】
以下、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤、本発明の殺菌・洗浄剤の調製方法及び本発明の殺菌・洗浄剤について、詳しく説明する。なお、本明細書においては、x~yの表現は、数値x以上、数値y以下であることを意味し、yのみに単位が付されている場合はxも同一の単位を有していることを意味する。
【0024】
1.本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤
本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を次亜塩素酸水溶液に付与する次亜塩素酸水溶液用防錆剤である。前記したように、次亜塩素酸水溶液系の殺菌剤組成物は、濃厚原液を水で希釈することにより用事調製して使用されることが多い。本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、このような用事調製時の希釈の際に添加して使用することを前提にした添加剤であり、それ自体が独立して包装されて(容器等に充填されて)製品化され、流通に供せられるものである。
【0025】
そして、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、その有効成分、すなわち、防錆に寄与する成分が、実質的に、(A1)ギ酸の金属塩、及び/又は(A2)分子内に含まれる炭素数:nが2以上であり、酸の価数:vが1又は2である飽和カルボン酸であって、前記炭素数:nを前記カルボン酸の価数:vで除した値:n/vが2~6である飽和カルボン酸の金属塩、からなるA成分;及び非イオン界面活性剤からなるB成分;のみからなることを最大の特徴としている。すなわち、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤における有効成分は、前記A成分が前記(A1)及び/又は前記(A2)からなり、且つ前記A成分に対する前記B成分の質量比:B/Aが0.005~10.0である前記混合物からなる必要がある。カルボン酸金属塩であっても(A1)及び(A2)以外のカルボン酸金属塩を用いた場合や、A成分とB成分の上記質量比が上記範囲外となる場合には、本発明の効果を得ることが困難となる。防錆効果、pH低下、有効塩素濃度減少の観点から、上記質量比は、0.02~5.0、特に0.05~1.0であることが好ましい。
【0026】
なお、有効成分が実質的に前記混合物のみからなるとは、防錆機能を有する他の成分を実質的に含まない、具体的には有効成分全体の質量に占める前記混合物の質量が、99.0質量%以上、特に99.9質量%以上であることを意味する。また、有効成分がリン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩、具体的にはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等を含む場合には、希釈後の次亜塩素酸水溶液に白濁が生じることがあることから、これらの含有量は有効成分全体の質量を基準として100ppm以下、特に10ppm以下であることが好ましく、全く含まないことが最も好ましい。
【0027】
また、本発明の本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、前記有効成分のみからなるものであっても良いが、取り扱い易さの観点から、有効成分の濃度が1000質量ppm~80質量%、好ましくは2000質量ppm~60質量%である水溶液であることが好ましい。
【0028】
以下に、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤の適用対象となる次亜塩素酸水溶液、有効成分となるA成分及びB成分等について詳しく説明する。
【0029】
1-1.次亜塩素酸水溶液
本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤の適用対象となる次亜塩素酸水溶液は、分子型次亜塩素酸(HClO)が溶解した水溶液であれば特に限定されず、イオン型次亜塩素酸又は塩素が共存して溶解しても良いが、安全性及び有効塩素濃度当たりの殺菌力の強さの観点から有効塩素濃度の50%以上が分子型次亜塩素酸である水溶液で有ることが好ましい。前記したように次亜塩素酸水中の有効塩素の存在形態は水溶液のpHに依存し、各種の存在割合はpHによってほぼ一義的に決まることから、適用対象として好適な次亜塩素酸水溶液を、そのpHで規定すれば、pH=3.0~7.5、特にpH=3.5~7.2である次亜塩素酸水溶液に適用することが好ましい。
【0030】
また、適用対象となる次亜塩素酸水溶液の有効塩素濃度は、殺菌効果及び防錆効果の観点から、2~2000質量ppmであることが好ましい。有効塩素濃度が2質量ppm未満であると、十分な殺菌効果が得られ難い傾向があり、2000質量ppmを越えると、殺菌効果が飽和し、さらに防錆効果が得られ難くなる。殺菌効率の観点からは、有効塩素濃度は、10~1500質量ppmであることが好ましく、30~1000質量ppmがより好ましい。
【0031】
なお、前記有効塩素濃度(質量ppm)とは、水溶液中に溶解した塩素分子、酸化力がある塩素化合物(たとえば分子型次亜塩素酸)及び酸化力がある塩素原子含有イオン(たとえばイオン型次亜塩素酸)の総塩素換算濃度を意味し、より具体的には、各成分の質量基準濃度を質量基準の塩素濃度に換算した後に、それらを総和して得られる濃度を意味する。本発明では、有効塩素濃度としては、ヨウ素試薬による吸光光度法により測定される濃度を採用しており、たとえば有効塩素濃度測定キットAQ-202型(柴田科学株式会社)を使用して測定することができる。
【0032】
このような分子型次亜塩素酸水は、例えば、塩化ナトリウム水溶液を電気分解する電解法、塩基性の次亜塩素酸塩水溶液に塩酸を加える塩酸法、次亜塩素酸塩水溶液からなる原料水溶液をイオン交換樹脂で処理するイオン交換法により製造することができる。
【0033】
1-2.A成分:特定の飽和カルボン酸金属塩
本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、有効成分の一つとして、(A1)ギ酸の金属塩、及び/又は(A2)分子内に含まれる炭素数:nが2以上であり、酸の価数:vが1又は2である飽和カルボン酸であって、前記炭素数:nを前記カルボン酸の価数:vで除した値:n/vが2~6である飽和カルボン酸の金属塩からなるA成分を使用する。ここで飽和カルボン酸とは、分子内に炭素-炭素不飽和結合、具体的には炭素-炭素二重結合及び炭素-炭素三重結合を有さない飽和カルボン酸を意味する。また、上記nは、カルボキシル基の炭素原子を含めてカルボン酸分子に含まれるすべての炭素の数を表し、上記vは、カルボン酸1分子から放出することのできるHの数を、すなわち分子内に含まれるカルボキシル基の数を意味する。別言すれば、(A2)は、n/vが2~6である、飽和モノカルボン酸又は飽和ジカルボン酸の金属塩であると言える。金属カルボン酸金属塩であっても不飽和カルボン酸の金属塩を用いた場合や、飽和カルボン酸金属塩であっても上記条件を満足しない場合には、次亜塩素酸水溶液用の有効塩素濃度が、数時間度で大幅に低下してしまう。
【0034】
防錆効果の観点から、A成分としては、n/vが2~4である(A2)を使用することが好ましく、中でもv=1であるものを使用することが更に好ましい。好適に使用できる飽和カルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸等を挙げることができる。
【0035】
塩を構成する金属は、特に制限されず、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛等が使用できる。防錆効果の安定性の観点からは、二価以上の多価金属を選択することが好ましく、安全性や取扱の観点からカルシウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属を使用することが特に好ましい。
【0036】
A成分として特に好適に使用される飽和カルボン酸の金属塩を具体的に例示すると、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム等が挙げることができる。なお、これら飽和カルボン酸の金属塩を複数組み合わせて使用してもよい。
【0037】
1-3.B成分:非イオン界面活性剤
本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤は、有効成分のもう一方としてB成分:非イオン界面活性剤を使用する。界面活性剤であってもアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤を使用した場合には、これらイオン性界面活性剤自体が防錆効果を有しないことに起因すると思われるが、A成分の防錆効果をより高めることができず、また、有効塩素濃度が、数時間度で大幅に低下することがある。
【0038】
B成分:非イオン界面活性剤としては、水に溶解したときにイオンとならない化合物からなる界面活性剤であれば特に制限されず、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレフィン系エーテル、フッ素系ノニオン界面活性剤などが使用できる。これらの中でも有効塩素濃度を低下させにくいという理由から分子内に炭素-炭素多重結合を含まない非イオン界面活性剤を使用することが好ましく、物性の安定性、入手のし易さから、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる非イオン界面活性剤を使用することが特に好ましい。
【0039】
2.本発明の殺菌・洗浄剤の調製方法
殺菌・洗浄剤とは、物品に付着した汚れを落とすための洗浄剤、及び/又は物品に付着した細菌などの微生物を死滅させ、或いは除去する(殺菌或いは除菌する)ための殺菌剤を意味する。本発明の殺菌・洗浄剤の調製方法の目的物である殺菌・洗浄剤は、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5である次亜塩素酸水溶液からなり、且つ接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を有する殺菌・洗浄剤であり、上記次亜塩素酸水溶液よりも高い有効塩素濃度を有し、pHが3.0~7.5である濃厚原液を水又は水性溶媒で希釈して有効塩素濃度が目的物の有効塩素濃度となるように調製する(希釈工程)に際して、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤を添加する。ここで、上記濃厚原液は、飽和カルボン酸の金属塩及び非イオン界面活性剤、更には、リン酸やポリリン酸等の無機系の防錆剤を含まないものが使用される。なお、原料水溶液及び目的物である殺菌・洗浄剤の溶媒となる水及び希釈するための水としては、水は精製水、水道水等、特に制限なく使用することができる。また、希釈の際にアルコールなどの水溶性有機溶媒を含む水溶液からなる水性溶媒を用いることもできる。
【0040】
このような濃厚原液は、例えば、特許文献1に記載されているような方法により好適に製造することができる。すなわち、次亜塩素酸の金属塩の水溶液からなる原料水溶液と、弱酸性イオン交換樹脂と、を混合して金属イオンと水素イオンとのイオン交換を行うことにより、混合液中に溶解する分子状の次亜塩素酸を生成させるイオン交換工程と;前記イオン交換工程後における混合液から弱酸性イオン交換樹脂を分離し、分子状の次亜塩素酸が溶解した水溶液からなる目的水溶液を得る分離工程;と、を含み、前記イオン交換工程において、混合する原料水溶液と弱酸性イオン交換樹脂との量比を、弱酸性イオン交換樹脂の総イオン交換当量(EIE)と、原料水溶液中の金属イオンの総化学当量(EMI)との比:(EMI/EIE)が0.05以上0.5以下となるような量比とし、混合時の液温を5℃以上40℃以下とし、混合時間を10分以上120分以下とする方法により好適に製造することができる。
【0041】
調製目的物である殺菌・洗浄剤を構成する次亜塩素酸水溶液の有効塩素濃度は、10~1500質量ppmであることが好ましく、30~1000質量ppmがより好ましい。また、pHは6.0~7.2であることがより好ましい。また、前記濃厚原液における有効塩素濃度は、100質量ppm~3.0質量%、特に100質量ppm~1000質量ppmであることが好ましい。
【0042】
本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤はかなりの高濃度(例えば25質量%)で配合しても効果を奏するため、前記希釈時に(希釈工程において)配合する本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤の添加量は、次亜塩素酸水溶液用防錆剤を希釈後に得られる次亜塩素酸水溶液の質量を基準とする前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%、好ましくは1000質量ppm~10質量%、特に好ましくは5000質量ppm~5質量%なるように添加すればよいが、効果及び過剰使用防止の観点から、このような条件を満たし且つ前記有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:C(質量ppm)の割合:C/CECが2~1000、特に50~100となるようにして添加することが好ましい。
【0043】
3.本発明の殺菌・洗浄剤
本発明の殺菌・洗浄剤は、本発明の方法における調製目的物である殺菌・洗浄剤でもあり、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5であり、前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%で、且つ、前記有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:C(質量ppm)の割合:C/CECが2~1000である次亜塩素酸水溶液からなる、ことを特徴とする、殺菌・洗浄剤である。
【0044】
本発明の殺菌・洗浄剤は、必要に応じて、銀イオン、亜鉛イオン、銅イオンのような抗菌性を示す金属イオンや、金属イオン供給源となる炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩などからなる発泡性を含むことができるが、それらの金属イオンの総量C(質量ppm)は、C/CEC≦0.35で示される条件を満足することが好ましく、C/CEC≦0.25であることが特に好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲又は配合方法であれば、各種添加材等を含むことができる。例えば、殺菌対象物への付着性を向上させるため、ゲル状やペースト状にするために増粘剤を添加することも可能である。増粘剤としては、無機粒子を使用することが好適であり、平均一次粒子径が5nm以上100nm以下の無機粉体を使用することが好ましい。平均一次粒子径が5nm以上100nm以下の無機粒子を使用することが好ましい。
【0045】
上述した任意成分は、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤に配合してもよいし、次亜塩素酸水溶液に配合してもよい。
【0046】
本発明の本発明の殺菌・洗浄剤は、本発明の方法以外の方法で調製することもできる。例えば濃厚原液を希釈する際に、A成分とB成分を別々に添加して調製してよいし、濃厚原液を用いるか否かに拘わらず、所定の有効濃度及びpHを有する次亜塩素酸水溶液に直接A成分とB成分との混合物を或いは、A成分とB成分とを別々に添加して調製しても良い。
【0047】
本発明の殺菌・洗浄剤は、殺菌性の強い次亜塩素酸を(殺菌の)有効成分として含み、しかも取り扱い易い中性又は中性に極めて近いpHを有するばかりでなく、非イオン界面活性剤を含むため洗浄力も高い。このため、病院、食品加工工場、教育施設、介護施設等の幅広い分野での殺菌に有用である。特に、金属を腐食(金属にさびを発生)させ難いという、従来の次亜塩素酸水-特に分子型次亜塩素酸系殺菌性組成物には見られない優れた特長を有すため、プラスチック、ゴム、タイル、レンガ、セメント、ガラス、木、布、不織布、ビニール、皮、セラミック等からなる物品に加えて金属が含まれる物品、たとえば、錆び易いスチール、コバルトクロム、ニッケル、銀、亜鉛、真鍮等を含む物品に対しての使用も可能である。本発明の殺菌・洗浄剤は、少なくとも一部の表面が錆びやすいスチール、コバルトクロム、ニッケル、銀、亜鉛、真鍮等で形成された物品を洗浄及/又は殺菌するための殺菌・洗浄剤として特に好適に使用することができる。
【0048】
本発明の殺菌・洗浄剤の使用方法は特に限定されず、例えば噴霧、塗布、浸漬等により、対象物に殺菌・洗浄剤を接触させて用いてもよい。具体的には、例えば、殺菌したい場所へ、トリガー等の噴霧器を用いてスプレー噴霧した後拭きとる方法、殺菌対象物を殺菌・洗浄剤に浸漬した後水洗するという方法、超音波噴霧器により殺菌性組成物をミスト化して空間内に噴霧する方法、殺菌・洗浄剤を布や不織布等しみ込ませることができる材料にしみ込ませて対象物を擦る方法、殺菌・洗浄剤を刷毛やシリンジを使用し、殺菌対象物に塗布し水洗や拭きとる方法等が挙げられる。また、殺菌対象物を殺菌・洗浄剤に浸漬する方法において、超音波を使用し、洗浄効果を高めることも可能である。さらに、医療器具を洗浄殺菌するために使用されるウォッシュディスペンサーを使用する場合の洗浄液として、本発明の殺菌・洗浄剤を使用しても良い。
【実施例0049】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。
【0050】
実施例及び比較例で使用した原材料の略号及び調製方法等について以下に説明する。具体的には、下記1~3に実施例及び比較例で使用した化合物とその略号を示し、下記4に次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤を調製するための「濃厚原液」として使用した高濃度(分子型)次亜塩素酸水溶液の調製方法について説明する。
【0051】
1.カルボン酸の金属塩
1-1:A成分
(1)A1
Na-Fo:ぎ酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(2)A2
Ca-Ac:酢酸カルシウム一水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Na-Ac:酢酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Mg-Ac:酢酸マグネシウム四水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Zn-Ac:酢酸亜鉛二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Sr-Ac:酢酸ストロンチウム0.5水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Ca-Pr:プロピオン酸カルシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Na-Pr:プロピオン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Na-Bu:酪酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)
Na-He:ヘキサン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)
Na-Su:こはく酸二ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)。
【0052】
1-2:A成分に該当しないカルボン酸金属塩
(1)飽和カルボン酸金属塩
Na-Oc:オクタン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Na-No:ノナン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)
Na-De:デカン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)
Na-Ox:しゅう酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Na-Ci:クエン酸三ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(2)不飽和カルボン酸金属塩
Na-Me:メタクリル酸ナトリウム(東京化成工業株式会社)
Na-Ma:マレイン酸二ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)。
【0053】
2.非イオン界面活性剤
2-1.B成分:非イオン界面活性剤
(1)分子内に多重結合を含まない非イオン界面活性剤
PGLE:ラウリン酸ポリグリセリル-10(株式会社ダイセル製)
PGLAL:ポリグリセリル-4ラウリルエーテル(株式会社ダイセル製)
POE9AE:ポリオキシエチレン(9)アルキルエーテル(アルキル鎖の炭素数:12~14)(日光ケミカルズ株式会社製)
(2)分子内に多重結合を含む非イオン界面活性剤
POE10OE:ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(日光ケミカルズ株式会社製)。
【0054】
2-2.イオン性界面活性剤(両性界面活性剤)
C-40H:2-アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)。
【0055】
3.無機系防錆剤有効成分
PPA:ポリリン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)。
【0056】
4.濃厚原液の調製方法
有効塩素濃度12.0質量%NaClO水溶液(ネオラックススーパー:供給元 島田商店)イオン交換水で希釈して有効塩素濃度が11000ppmとなるよう調整して、原料水溶液を2400ml調製した。次に、弱酸性イオン交換樹脂アンバーライトIRC-76(H形、オルガノ株式会社製)を200ml計りとり、原料水溶液を全量添加し、20分間フッ素樹脂製撹拌羽を用いて弱酸性イオン交換樹脂が均一に分散するように撹拌して混合を行った。撹拌中、混合液のpHをモニターし、pHが低下して6.3に到達した時点で撹拌を停止した。撹拌終了後、樹脂が沈降するまで静置させ、デカンテーションにより上澄み液である次亜塩素酸水溶液を、樹脂が入りこまないように#200の濾布を通して、濃厚原液をポリエチレン容器に回収した。pHが4.8になるまで、3時間液を室温にて放置した。放置後の濃厚原液の有効塩素濃度:CECを、有効塩素濃度測定キットAQ-202型(柴田科学株式会社製)を用いて測定したところ、9000ppmであった。水溶液のpHから次亜塩素酸の殆どは分子型次亜塩素酸として溶解している。
【0057】
なお、有効塩素濃度測定キットAQ-202型(柴田科学株式会社製)を用いた有効塩素濃度測定は、その定量幅の関係から、有効塩素濃度:CECが300ppmを越えることが予想される場合には、イオン交換水を用いてCECが300ppm以下となるように希釈した測定用試料について測定を行い、測定値に希釈倍率乗ずることにより(希釈前の)評価対象水溶液の有効塩素濃度:CECを求める必要がある。上記測定では、希釈倍率:50倍で測定用試料を調製している。
【0058】
実施例1
先ず、カルボン酸塩Ca-A:を0.4g及び水道水:9.6gを10分間、均一になるまで撹拌して調製したA成分水溶液と、非イオン界面活性剤PGLE:0.04g及び水道水9.96gを10分間、均一になるまで撹拌し調製しB成分水溶液を均一に混合して、B/A比が0.10である防錆剤水溶液を調製した。これとは別に、前記濃厚原液(CEC:9000ppmの分子型次亜塩素酸水溶液):0.9gを水道水:19.1g添加して1分間撹拌して希釈次亜塩素酸水溶液を調製した。次に、前記希釈次亜塩素酸水溶液と前記防錆剤水溶液とを質量比1:1で(具体的には20gずつ)混合して次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤を調製した。得られた次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤について、外観評価、錆試験評価、pH評価、安定性評価及び殺菌性評価を行った。評価方法の詳細を以下に示し、結果を表1示す。なお表中の「↑」は、「同上」を意味し、次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤の各成分濃度におけるCEC、C、C及びB/Aは、夫々調製直後の有効塩素濃度、A成分濃度、B成分濃度、及びA成分質量に対するB成分質量の比を表している。また、n/vにおけるnは、カルボン酸の炭素数を表し、vはカルボン酸の価数を表している。
【0059】
(1)外観評価
50ccガラス瓶に調製直後の次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤(評価水溶液)40mlを入れ、ガラス瓶の溶液が入った部分の後ろに文字を印刷した紙をかざし、その外観を目視にて評価した。
○:目視にて溶液越しに文字を確認でき、明らかな白濁はない
×:目視にて溶液越しに文字を確認できず、明らかな白濁がある
【0060】
(2)錆び試験
40mlの次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤(評価水溶液)を入れた50ccガラス瓶内に直径5mmのスチールボール(「Eggsスチールボール球5mm(泰豊トレーディング株式会社)」)2つを浸漬した。所定時間経過後、錆びの有無を目視にて確認し、以下AAA~Dで評価した。なお、実施例1及び後述する実施例2~5及び20では、試験を5回行い、再現性を確認している。
【0061】
AAA:6時間以上錆びが確認されなかった。
AA:3時間以上6時間未満で錆びが確認された。
A:1時間以上3時間未満で錆びが確認された。
B:30分以上1時間未満で錆びが確認された。
C:10分以上30分未満で錆びが確認された。
D:10分未満で錆びが確認された。
【0062】
(3)pH評価(金属接触前後のpH変化の評価)
上記(2)錆試験で使用した次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤(評価水溶液)について、スチールボール浸漬前の状態であって次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤調製直後~30分が経過するまでの間(初期)、並びに(c)スチールボールの浸漬を開始してから1日経過後、の2時点において、それぞれ評価水溶液pHを測定した。なお、測定は、pHメーターF-55型(株式会社堀場製作所製)を用いて行った。
【0063】
(4)有効塩素濃度(金属接触時における安定性評価)
上記(2)錆試験で使用した次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤(評価水溶液)について、スチールボール浸漬前の状態であって(a)次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤調製直後、(b)調製後10分~30分が経過するまでの間(初期)、並びにスチールボールの浸漬を開始してから(c)2時間経過後及び(d)1日経過後、の4時点において、それぞれ有効塩素濃度を測定した。
【0064】
有効塩素濃度測定は、水質検査試験紙(日産アクアチェックHC:測定可能濃度;600、400、200、100、50、25、0ppm若しくは日産アクアチェック5:測定可能濃度:10、4、2、1、0.5.0ppm)を用いて行った。これら方法は、溶液に試験紙を浸した際の呈色具合を色見本と目視にて比較することにより有効塩素濃度を測定するものである。例えば「200~100」の記載は目視にて、色見本の200ppmと100ppmの間の呈色具合が確認されたことを意味する。
【0065】
(5)殺菌性評価
歯科用アルギン酸塩印象材(トクヤマA-1α、株式会社トクヤマデンタル製)を使用し、縦19mm×横57mm×厚さ3mmのアルジネート板を作製した。アルジネート板の片面に唾液を100μl塗布後軽く水洗し、アルジネート板を別途同様に調製した次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤(評価水溶液)200mlに浸漬した。30秒間浸漬後、アルジネート板を取り出し、ブレインハートインフュージョン培地に、アルジネート板の唾液処理面を軽く押し付け、培地全体に唾液処理面を接触させた。アルジネート板を取り除き、37℃のインキュベータにて1週間培養後、目視にて菌(コロニ―)の有無を確認したところ、コロニーは確認されなかった。なお、参照として、上記評価水溶液に代えて滅菌水を用いて同様の評価を行ったとこと、コロニーが確認されたことから、上記評価水溶液には殺菌性(除菌性)があることが確認された。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例2~40
使用する界面活性剤、カルボン酸塩の種類、及び配合量を表1~表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の手順で殺菌剤組成物を調製し、同様の評価を行った。評価結果を表1~3に示す。なお、殺菌性評価については、実施例40のみおいて行い、実施例1と同様にコロニーが発生しないことを確認している。
【0068】
表1~3に示されるように、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤を用いて、本発明の本発明の殺菌・洗浄剤の調製方法のより調製された本発明の殺菌・洗浄剤は、広いC/CECの範囲で錆試験評価がA~AAAと優れた防錆性を有し、調製後も有効塩素濃度が低下し難く、たとえば金属と接触する様な状態であっても、1日程度以上は殺菌に有効な有効塩素濃度を維持知ることができる。しかも、金属と接触してもpHが低下することなく中性を保つことができるので、安全に取り扱うことができる。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
比較例1
前記濃厚原液(CEC:9000ppmの分子型次亜塩素酸水溶液)を水道水で希釈して有効塩素濃度CECが200ppmの希釈次亜塩素酸水溶液を調製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0072】
比較例2
比較例1において希釈の際に非イオン界面活性剤PGLEの濃度が1000ppmとなるようにPGLEを配合する以外は比較例1と同様にして有効塩素濃度CECが200ppmの希釈次亜塩素酸水溶液を調製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0073】
比較例3~19
実施例1における調製方法に準じて、飽和カルボン酸金属塩又は不飽和カルボン酸金属塩及び界面活性剤として表4に示すものを使用し、下記濃度が表4に示すようにして次亜塩素酸水溶液系殺菌・洗浄剤(評価水溶液)を調製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示されるように、防錆剤を配合しない比較例1では錆試験評価がDと最低で、次亜塩素酸の僅かな自己分解に起因すると思われるが、少しではあるが1日後のpHが低下している。また、防錆有効成分としてA成分を含まずB成分のみを配合した比較例2では、防錆効果は認められるものの、その程度は低く、pHや有効塩素濃度が経時的に低下している。また、防錆成分としてB成分を含まずA成分のみを配合した比較例3及び4では、C/CECが大きくなると防錆効果が認められるが、その評価はC/CEC=50であってもBであり、十分とは言えない。また、A成分と、B成分に該当しない界面活性剤とを併用した比較例5~6では、大量に配合すると防錆効果は向上するが、有効塩素濃度が短時間で低下している。
【0076】
また、A成分とB成分を併用した場合であってもその割合が、本発明で規定する範囲がとなる比較例8~11では、防錆効果、pH安定性、有効塩素濃度安定性の全てを両立させることができず、少なくとも何れ1つの評価は低くなっている。また、比較例12に見られるように、A成分とB成分を併用した場合であってもその割合が、本発明で規定する範囲である場合であっても、無機系の防錆剤成分であるPPAを配合した場合には白濁が生じてしまい、外観評価が×となっている。さらに、比較例13~19に示されるように、A成分以外のカルボン酸金属塩を用いた場合には、B成分と併用しても防錆効果、pH安定性、有効塩素濃度安定性の全てを両立させることができない。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を次亜塩素酸水溶液に付与する次亜塩素酸水溶液用防錆剤であって、
有効成分の99.0質量%以上が、(A1)ギ酸の金属塩、及び/又は(A2)分子内に含まれる炭素数:nが2以上であり、酸の価数:vが1又は2である飽和カルボン酸であって、前記炭素数:nを前記カルボン酸の価数:vで除した値:n/vが2~6である飽和カルボン酸の金属塩、からなるA成分;と、非イオン界面活性剤からなるB成分;と、の混合物からなり、
前記混合物における前記A成分に対する前記B成分の質量比:B/Aが0.005~10.0であり、且つ
前記有効成分に含まれる、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩の総含有量が、前記有効成分全体の質量を基準として100ppm以下である、
ことを特徴とする次亜塩素酸水溶液用防錆剤。
【請求項2】
前記有効成分の水溶液からなる請求項1に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤。
【請求項3】
前記A成分が、v=1である飽和モノカルボン酸の金属塩からなり、前記B成分がポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる、請求項1又は2に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤。
【請求項4】
有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5である次亜塩素酸水溶液からなり、且つ接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を有する殺菌・洗浄剤を調製する方法であって、
前記次亜塩素酸水溶液よりも高い有効塩素濃度を有し、pHが3.0~7.5であり、且つ飽和カルボン酸の金属塩及び非イオン界面活性剤を含まない次亜塩素酸水溶液を水又は水性溶媒で希釈する希釈工程を有し、
前記希釈工程における希釈の際に、請求項1~3の何れか1項に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤を希釈後に得られる次亜塩素酸水溶液の質量を基準とする前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%となるように添加する、
ことを特徴とする殺菌・洗浄剤の調製方法。
【請求項5】
前記希釈工程において、希釈後における有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:CA(質量ppm)の割合:CA/CECが2~1000となるように前記次亜塩素酸水溶液用防錆剤を添加する、請求項4に記載の殺菌・洗浄剤の調製方法。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤が溶解した次亜塩素酸水溶液であって、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5であり、前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%で、且つ、前記有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:CA(質量ppm)の割合:CA/CECが2~1000である次亜塩素酸水溶液からなる、ことを特徴とする、殺菌・洗浄剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
【特許文献1】特開2019-202907号公報
【特許文献2】特開2000-109887号公報
【特許文献3】特開2010-138101号公報
【特許文献4】特開2002-161011号公報
【特許文献5】国際公開2006/057311号
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の第一の形態は、接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を次亜塩素酸水溶液に付与する次亜塩素酸水溶液用防錆剤であって、有効成分の99.0質量%以上が、(A1)ギ酸の金属塩、及び/又は(A2)分子内に含まれる炭素数:nが2以上であり、酸の価数:vが1又は2である飽和カルボン酸であって、前記炭素数:nを前記カルボン酸の価数:vで除した値:n/vが2~6である飽和カルボン酸の金属塩、からなるA成分;と、非イオン界面活性剤からなるB成分;と、の混合物からなり、前記混合物における前記A成分に対する前記B成分の質量比:B/Aが0.005~10.0であり、且つ前記有効成分に含まれる、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩の総含有量が、前記有効成分全体の質量を基準として100ppm以下である、ことを特徴とする次亜塩素酸水溶液用防錆剤である。

【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、本発明の第二の形態は、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5である次亜塩素酸水溶液からなり、且つ接触した金属表面における錆の発生を抑制する防錆効果を有する殺菌・洗浄剤を調製する方法であって、前記次亜塩素酸水溶液よりも高い有効塩素濃度を有し、pHが3.0~7.5であり、且つ飽和カルボン酸の金属塩及び非イオン界面活性剤を含まない次亜塩素酸水溶液を水又は水性溶媒で希釈する希釈工程を有し、前記希釈工程における希釈の際に、請求項1~3の何れか1項に記載の次亜塩素酸水溶液用防錆剤を希釈後に得られる次亜塩素酸水溶液の質量を基準とする前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%となるように添加する、ことを特徴とする殺菌・洗浄剤の調製方法である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、本発明の第三の形態は、本発明の次亜塩素酸水溶液用防錆剤が溶解した次亜塩素酸水溶液であって、有効塩素濃度が2~2000質量ppmであり、pHが5.5~7.5であり、前記有効成分の濃度が1000質量ppm~25質量%で、且つ、前記有効塩素濃度:CEC(質量ppm)に対する前記A成分の濃度:C(質量ppm)の割合:C/CECが2~1000である次亜塩素酸水溶液からなる、ことを特徴とする、殺菌・洗浄剤(以下、「本発明の殺菌・洗浄剤」ともいう。)である。

【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
なお、有効成分が実質的に前記混合物のみからなるとは、防錆機能を有する他の成分を実質的に含まない、具体的には有効成分全体の質量に占める前記混合物の質量が、99.0質量%以上、好ましくは99.9質量%以上であることを意味する。また、有効成分がリン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩、具体的にはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等を含む場合には、希釈後の次亜塩素酸水溶液に白濁が生じることがあることから、これらの含有量は有効成分全体の質量を基準として100ppm以下である必要があり、特に10ppm以下であることが好ましく、全く含まないことが最も好ましい。