(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112680
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】放射線検査装置及び手荷物検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20220727BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008565
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 和朗
(72)【発明者】
【氏名】大橋 享司
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】北島 武
(72)【発明者】
【氏名】児矢野 大佑
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001HA14
2G001JA08
2G001JA09
2G001LA10
2G001PA11
2G001QA01
2G001SA14
(57)【要約】
【課題】小型で低コストであるCT検査装置を実現可能とする。
【解決手段】遮蔽ボックス1内に、X線RLを被検査物8に照射するX線源2と、X線源2からのX線RLのうち、被検査物8を透過した成分を受光するライン状のX線センサ部3と、X線RLが直接入射する照射領域内で、ライン状のX線センサ部3の長軸と交差する方向を回転軸として被検査物8を回転する回転装置4と、を備えて構成したものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽ボックス内に、
放射線を被検査物に照射する放射線源と、
前記放射線源からの放射線のうち、前記被検査物を透過した成分を受光するライン状の放射線センサ部と、
前記放射線が直接入射する照射領域内で、前記ライン状の放射線センサ部の長軸と交差する方向を回転軸として前記被検査物を回転する回転装置と、
を備えて構成した放射線検査装置。
【請求項2】
前記回転装置の前記回転軸は、前記遮蔽ボックスへの前記被検査物の搬送方向と平行な軸であることを特徴とする請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記回転装置は、前記被検査物を保持した状態で回転させながら前記回転軸に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記回転装置の移動範囲は、前記放射線の照射領域外の領域であることを特徴とする請求項3に記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記被検査物は、搬送装置によって前記回転装置の回転軸に沿って前記遮蔽ボックス内に搬入され、前記遮蔽ボックス内から搬出されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の放射線検査装置。
【請求項6】
前記搬送装置は、前記被検査物を前記遮蔽ボックス内に搬入して前記回転装置に受け渡す前段搬送装置と、前記被検査物を前記回転装置から受け取って前記遮蔽ボックス外に搬出する後段搬送装置と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の放射線検査装置。
【請求項7】
前記被検査物は、固定具を使用してトレーに固定されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の放射線検査装置。
【請求項8】
前記放射線源が照射する放射線はX線であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の放射線検査装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の放射線検査装置を備え、被検査物としての手荷物を検査する手荷物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を被検査物に照射して被検査物を検査する放射線検査装置に関し、特に、小型で低コストであるCT(コンピュータ断層撮影)検査装置を実現可能とする放射線検査装置及び手荷物検査装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種のX線検査装置は、試料にX線を照射するX線源と、試料を少なくとも部分的に通り抜けたX線を検出するX線センサと、を有するガントリを試料の周りに回転させて、試料が様々な角度から検査できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のX線検査装置においては、ガントリが高速回転するため装置が大型化するという問題があった。また、ガントリは、X線の漏洩を防護するために重量が大きく、回転機構が大掛かりになるためコストが高くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に対処し、小型で低コストであるCT検査装置を実現可能とする放射線検査装置及び手荷物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による放射線検査装置は、遮蔽ボックス内に、放射線を被検査物に照射する放射線源と、前記放射線源からの放射線のうち、前記被検査物を透過した成分を受光するライン状の放射線センサ部と、前記放射線が直接入射する照射領域内で、前記ライン状の放射線センサ部の長軸と交差する方向を回転軸として前記被検査物を回転する回転装置と、を備えて構成したものである。
【0007】
また、本発明による手荷物検査装置は、上記放射線検査装置を備え、被検査物としての手荷物を検査するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放射線が直接入射する照射領域内で、被検査物が回転装置によってライン状の放射線センサ部の長軸と交差する回転軸周りに回転されるように構成されているので、従来のガントリを回転するX線検査装置に比べて回転装置の構成が簡単になる。したがって、被検査物の中身のCT検査を可能にする小型で低コストである放射線検査装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明によるX線検査装置の一実施形態の概略構成を模式的に示す透視図である。
【
図2】上記実施形態の回転装置の概略構成を説明するイメージ図である。
【
図3】上記実施形態の回転装置の概略構成を示す正面図である。
【
図4】本発明によるX線検査装置において使用するトレーの一構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図5】上記実施形態の回転装置の固定機構を説明する図であり、(a)は固定機構が動作するトレーと回転装置の回転部との位置関係を示す平面図であり、(b)は(a)の部分断面平面図である。
【
図6】被検査物のX線検査を終えたトレーが後段コンベア上に引き上げられる様子を示す説明図である。
【
図7】本発明によるX線検査装置の制御回路を示すブロック図である。
【
図8】本発明によるX線検査装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】本発明によるX線検査装置の動作における被検査物の遮蔽ボックス内への搬入段階を示す説明図である。
【
図10】本発明によるX線検査装置の動作における被検査物の回転装置への固定段階を示す説明図である。
【
図11】本発明によるX線検査装置の動作における被検査物へのX線照射段階を示す説明図である。
【
図12】本発明によるX線検査装置の動作における被検査物へのX線照射終了段階を示す説明図である。
【
図13】本発明によるX線検査装置の動作における被検査物の遮蔽ボックス外への搬出段階を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるX線検査装置の一実施形態の概略構成を模式的に示す透視図である。このX線検査装置は、X線を被検査物に照射して被検査物を検査するもので、遮蔽ボックス1と、X線源2と、X線センサ部3と、回転装置4と、前段コンベア5と、後段コンベア6と、制御用PC(パーソナルコンピュータ)7と、を備えて構成されている。
【0011】
上記遮蔽ボックス1は、直方体状の筐体であり、被検査物8の搬入口9や搬出口10を形成する矩形状の開口部を有している。なお、遮蔽ボックス1を構成する各壁部は、外部へのX線漏洩を抑制するために、鉛等のX線吸収部材で形成されている。また、遮蔽ボックス1の搬入口9及び搬出口10には、遮蔽ボックス1内部から放射線としてのX線RLが搬入口9及び搬出口10を通して外部に漏れるのを防止するために図示省略の遮蔽カーテンが設けられている。この遮蔽カーテンとしては、短冊状の鉛入りゴム状部材を配列したものを用いることができる。
【0012】
上記遮蔽ボックス1内部の中央付近の下部側には、X線源2が固定して配置されている。このX線源2は、X線RLを放射するものであり、射出部からX線RLをX線センサ部3に向けて照射するようになっている。なお、X線源2は、パルス発振方式の冷陰極X線源であっても、CW発振方式の熱陰極X線源であってもよい。
【0013】
上記遮蔽ボックス1の中央付近の上部側には、X線源2に対向するようにX線センサ部3が固定して配置されている。このX線センサ部3は、X線源2から放射されたX線RLのうち被検査物8を透過した成分を受光するもので、例えば受光素子を一方向に延びるようにライン状に並べて配置したラインセンサである。これにより、被検査物8が遮蔽ボックス1の中央付近にてX線RLが直接入射する照射領域内をライン状のX線センサ部3の長軸と交差する方向に通過する際に、X線RLによる被検査物8への照射がなされ、X線センサ部3が受けた結果に基づき被検査物8内部の検査ができるようになる。なお、被検査物8が通過するX線センサ部3の長軸と交差する方向とは、具体的には、X線センサ部3の長軸と許容範囲内で直交する方向である。
【0014】
上記遮蔽ボックス1内には、X線源2からX線センサ部3に向かうX線RLの照射領域外に位置させて回転装置4が設けられている。この回転装置4は、X線RLが直接入射する照射領域内で、ライン状のX線センサ部3の長軸と交差する方向を回転軸として被検査物8を回転するもので、回転部11と、回転/移動機構12と、固定機構13と、エアバック装置14と、を備え、被検査物8を保持した状態で回転させながら上記回転軸に沿って移動可能に構成されている。この場合、回転装置4の移動範囲は、X線RLの照射領域外の領域である。詳細には、回転装置4の移動範囲は、X線RLの照射領域と後段コンベア6との間の領域である。
【0015】
ここで、上記回転部11は、被検査物8を回転中心部に保持して、被検査物8を回転しながら回転軸に沿ってゆっくりと移動させるものであり、具体的には、中央部に被検査物8が通り抜け可能な大きさの開口部15を有する円形を成した金属製又は樹脂製の部材の外周面に一定の間隔をおいて複数の歯を設けたものである。これにより、回転部11の歯を、モータ16の回転に連動して回転する後述の回転/移動機構12のギアの歯と噛み合わせることで、モータ16の回転力を上記ギアを介して回転部11に伝達し、回転部11を回転させることができる。
【0016】
上記回転/移動機構12は、回転部11を回転させると共に、回転部11の回転軸に沿って回転部11を前進及び後退させるものであり、
図2にイメージ図で示すように、例えば、はすば歯車17と、誘導歯車18とを組み合わせて実現することができる。はすば歯車17は、モータ16の回転に連動して回転するもので、
図3に示すように、少なくとも回転部11の移動距離と等しい長さを有し、その全長に亘って歯を形成した細長い歯車であり、回転軸が回転部11の回転軸AXに平行となるように配置されて、回転部11の外周面に設けられた歯と噛み合って回転するようになっている。また、誘導歯車18は、回転部11の回転軸AXに平行に設けられた断面円形の棒状のレール19に回転自在に、且つレール19に沿って移動自在に設けられており、回転部11の回転中心に対して上記はすば歯車17とは反対側に配置されて、回転部11の外周面に設けられた歯と噛み合って回転するようになっている。なお、誘導歯車18の両端面には、
図3に示すように、回転部11の両端面の外周領域を両側から挟むようにフランジ20が設けられている。
【0017】
回転/移動機構12をこのように構成することにより、回転部11を前進させる正方向にモータ16が回転駆動されると、はすば歯車17の回転に伴って回転部11が回転する。このとき、回転部11には、
図2に示すように、回転力RFと共に、回転軸AXに沿った方向の推進力(前進力)DFが作用する。一方、誘導歯車18は、回転部11の回転に伴って回転すると共に、回転部11の移動方向が上記レール19に沿った方向となるように回転部11を誘導する。このようにして、回転部11は、回転軸AX周りに回転しながら、回転軸AXに沿って前進することができる。なお、モータ16の回転方向を上記正方向とは反対の逆方向にすれば、回転部11を上記方向とは反対方向に回転させると共に、後退させて移動開始位置まで戻すことができる。
【0018】
回転装置4は、上述のような外周面に複数の歯を設けた回転部11と、はすば歯車17及び誘導歯車18を組み合わせた回転/移動機構12とを備えて構成したものに限られず、回転部11を回転軸AX周りに回転しながら回転軸AXに沿って移動可能であれば如何なる構成であってもよい。
【0019】
上記固定機構13は、被検査物8を回転部11に固定して保持するもので、被検査物8を載せて搬送する後述のトレー21の搬送方向Dの前部を回転部11に固定するようになっている。詳細には、固定機構13は、
図1に示すように、回転部11の移動開始位置において、搬送されて来る上記トレー21の搬送方向Dの前部を両側から挟んで保持可能に回転部11の左右に設けられている。より詳細には、固定機構13は、
図4に示すように、トレー21の搬送方向Dの前部の左右両側面に設けられた凹部22に、
図5(b)に示すように、回転部11に設けられた固定機構13の先端部を嵌合させてトレー21を回転部11に固定するようになっている。
【0020】
上記エアバック装置14は、回転部11の移動開始位置において、回転部11の上部に備えられており、例えば布製のエアバックを収容すると共に、エアバックを膨張させて固定機構13によって保持されたトレー21上の被検査物8を上方から押さえ付けて、被検査物8の動きを規制するようになっている。
【0021】
被検査物8は、前述したようにトレー21に載せて搬送される。この場合、回転部11には、固定機構13によりトレー21の搬送方向Dの前部が固定して保持される。同時に、エアバックが膨らんで被検査物8がトレー21に押し付けられる。これにより、回転部11の回転移動中に被検査物8が動かないように規制される。被検査物8がトレー21に、例えばバンド、シート又はネット等の固定具を使用して物理的に固定されるようにしてもよい。この場合、エアバックは無くてもよい。被検査物8をトレー21に固定する固定具は、面で固定することができるシートを使用するのがより望ましい。好ましくは、トレー21は、発泡体やプラスチック等のX線RLを透過し易い樹脂材料で形成されるのが望ましい。
【0022】
上記回転部11に、トレー21が正しく固定できなかった場合に、警報して被検査物8の検査を中止させる安全装置を設けるのが望ましい。このような安全装置として、例えば固定機構13とトレー21の凹部22との嵌合状態を検知する嵌合検知センサ、例えば近接センサ等を回転部11に設けるのがよい。この場合、嵌合検知センサによる検知信号に基づいて固定機構13がトレー21の凹部22に正しく嵌合したか否かを制御用PC7で判断し、嵌合検知センサが嵌合を検知しなかったときに警報を発すると共に、被検査物8の検査を中止するようにするとよい。
【0023】
また、回転部11に備えられた固定機構13への給電及び嵌合検知センサからの検知信号の受信は、例えば、回転部11と共に回転軸AXに沿って移動する図示省略の固定部を備え、回転部11の端面に設けたスリップリングと固定部に設けたブラシとの接触により行うとよい。又は、回転部11に備えた受電アンテナと固定部に備えた送電アンテナとの間の電磁結合により非接触で行ってもよい。
【0024】
上記遮蔽ボックス1の被検査物8の搬入側には、前段コンベア5が設けられている。この前段コンベア5は、被検査物8を遮蔽ボックス1の搬入口9を通って上記回転装置4の回転軸AXに平行に遮蔽ボックス1内に搬入し、回転装置4の回転部11に受け渡すもので、輪状にした幅広のベルト部5aを一対の図示省略のローラに掛け渡したベルトコンベアであり、前段コンベア回転機構23(
図7を参照)によりローラが回転されることによりベルト部5aが回転するようになっている。そして、前段コンベア回転機構23は、前段コンベアコントローラ24(
図7を参照)によって制御されて前段コンベア5を駆動する。この場合、前段コンベアコントローラ24の具体的な制御は、例えば被検査物8が前段コンベア5の所定の載置位置でベルト部5a上に載置されるとベルト部5aを定常速度で回転させ、被検査物8が回転装置4の回転部11に受け渡されると、ベルト部5aを停止又は低速回転させるものである。
【0025】
ここで、
図1に示すように、前段コンベア5の遮蔽ボックス1内の端部側には、支え板25が設けられている。この支え板25は、被検査物8を前段コンベア5から回転装置4の回転部11に受け渡すための橋渡しとなるもので、例えば上記回転部11に設けられた、例えばフォトセンサ等の検知部26により被検査物8の回転部11への受け渡しが完了したことが検知されると、支え板25が前段コンベア5の上記端部側に、該端部の縁部に沿って平行に設けられた軸を中心に回動し、被検査物8の下支えを解放するようになっている。なお、本実施形態においては、
図1に示すように、検知部26が回転部11の固定機構13に対応した位置に設けられている場合について説明する。しかし、検知部26の取り付け位置は、これに限られず、被検査物8の回転部11への受け渡し完了が検知可能であれば、いずれの位置に設けられてもよい。
【0026】
上記遮蔽ボックス1の被検査物8の搬出側には、後段コンベア6が設けられている。この後段コンベア6は、X線検査を終えた被検査物8を回転装置4の回転部11から受け取り、遮蔽ボックス1の搬出口10を通って遮蔽ボックス1外に搬出するもので、前段コンベア5と同様に構成されている。詳細には、
図6に示すように、輪状にした幅広のベルト部6aを一対のローラ27に掛け渡したベルトコンベアであり、後段コンベア回転機構28(
図7を参照)によりローラ27が回転されることによりベルト部6aが回転するようになっている。より詳細には、
図6に示すように、後段コンベア6のベルト部6aの表面には突起29が設けられており、ベルト部6aの回転に伴って上記突起29をトレー21の裏面に設けられた脚部30(
図4を参照)に係合させて、トレー21をベルト部6a上に引き上げることができるようになっている。そして、後段コンベア回転機構28は、後段コンベアコントローラ31(
図7を参照)によって制御されて後段コンベア6を駆動する。この場合、後段コンベアコントローラ31の具体的な制御は、例えば回転装置4による被検査物8のX線検査が終了し、トレー21及び被検査物8の固定が解除されるとベルト部6aを定常速度で回転させ、被検査物8が所定の回収位置でベルト部6a上から回収されるとベルト部6aを停止するものである。
【0027】
なお、前段コンベア5及び後段コンベア6は、ベルトコンベアに限られず、ローラコンベア等であってもよいが、以下の説明においては、ベルトコンベアの場合について述べる。
【0028】
図7に示すように、上記前段コンベア回転機構23、前段コンベアコントローラ24、後段コンベア回転機構28、後段コンベアコントローラ31、回転装置4、検知部26、エアバック装置14、X線源2及びX線センサ部3に制御基板32を介して電気的に接続して制御用PC7が設けられている。この制御用PC7は、X線検査装置全体が適切に駆動するように装置全体を統合して制御するもので、予め設定されたプログラムによって各部の駆動を制御するようになっている。
【0029】
次に、このように構成されたX線検査装置の動作を、
図8のフローチャート及び
図9~14を参照して説明する。
先ず、前段コンベア5の所定の載置位置でベルト部5a上に被検査物8を載せたトレー21が載置される(ステップS1)。これにより、上記載置位置に設けられた図示省略のセンサによりそれが検知され、前段コンベアコントローラ24によって制御されて前段コンベア回転機構23が駆動し、ベルト部5aが定常速度で回転する。そして、被検査物8が前段コンベア5によって遮蔽ボックス1に向けて搬送される(ステップS2)。
【0030】
前段コンベア5により搬送されたトレー21及び被検査物8は、
図9に示すように、遮蔽ボックス1の搬入口9を通って遮蔽ボックス1内に搬入される。このとき、前段コンベア5の遮蔽ボックス1内の端部側に設けられた支え板25の面は、図示省略の電動機構によって前段コンベア5のベルト部5aの搬送面と略面一となるように保たれている。
【0031】
次に、被検査物8を載せたトレー21は、搬送方向Dの後端部が前段コンベア5に押され、支え板25上を滑って前進する。そして、トレー21の搬送方向Dの前部が回転装置4の回転部11に達すると(ステップS3)、それを回転部11に設けられた検知部26が検知して固定機構13を起動し、この固定機構13によってトレー21の上記前部が回転部11に固定される。この時、前段コンベア5は、前段コンベアコントローラ24によって制御されて停止される。同時に、
図10に示すように回転部11に設けられたエアバック装置14からエアがエアバック33に所定量だけ注入され、エアバック33が膨らんで被検査物8をトレー21に押し付ける。これにより、被検査物8の回転部11への固定が完了する(ステップS4)。
【0032】
被検査物8の回転部11への固定が完了すると、
図11に示すように、支え板25の電動機構がオフされ、支え板25が前段コンベア5の遮蔽ボックス1内の端部の縁部に平行に設けられた軸を中心に回動して垂下する。同時に、X線源2からX線RLがX線センサ部3に向けて放射され、被検査物8のX線検査が開始される(ステップS5)。これにより、X線源2から放射されたX線RLのうちトレー21及び被検査物8を透過した成分がX線センサ部3により受光され、被検査物8の中身が撮影される。
【0033】
回転装置4の回転部11は、
図2に示すように、外周面に一定間隔で設けられた歯が回転/移動機構12のはすば歯車17の歯と噛み合って、モータ16の回転に伴って回転を開始する。同時に、回転部11は、回転軸AXを挟んではすば歯車17と反対側に設けられた誘導歯車18の歯と噛み合って、
図3に示すように、誘導歯車18を回転自在に、且つ移動自在に支持するレール19に沿って誘導され、回転軸AXに平行にゆっくりと後段コンベア6側に向かって前進する(ステップS6)。これにより、被検査物8は、X線RLが直接入射する照射領域内を、ライン状のX線センサ部3の長軸と交差する方向を回転軸AXとして螺旋状に回転及び前進しながらX線撮影され、被検査物8の中身のCT画像が取得される。このCT画像は、制御用PC7のディスプレイに3次元画像として表示され、検査員により被検査物8の中身が非接触により検査される。
【0034】
図12に示すように、回転装置4が移動範囲の終端(搬送方向Dの終端)に達するとX線照射が終了し、被検査物8の撮影が完了する(ステップS7)。そして、回転部11による被検査物8の回転が停止される(ステップS8)。なお、X線RLの照射は、X線源2をターンオン及びターンオフ制御して行ってもよく、シャッタを使用してターンオン及びターンオフしてもよい。
【0035】
回転装置4が移動範囲の終端に達すると、トレー21の搬送方向Dの前端部が後段コンベア6の遮蔽ボックス1内の端部に乗り上げる。また、エアバック装置14によりエアバック33のエアが抜き取られ、エアバック33による被検査物8に対する押圧が解除される。同時、回転部11に備えた固定機構13がオフ駆動してトレー21の固定が解除される(ステップS9)。この場合、後段コンベア6の遮蔽ボックス1内の端部側に、回転装置4の回転軸AXに沿って平行に、搬送方向Dと反対方向に伸びる別の支え板を設けて、固定解除されたトレー21を下支えするようにしてもよい。
【0036】
回転部11によるトレー21及び被検査物8の固定が解除されると、後段コンベアコントローラ31によって後段コンベア回転機構28が駆動され、後段コンベア6のベルト部6aが定常速度で回転を開始する。これにより、
図6に示すように、トレー21の裏面にて搬送方向Dの前端部に設けられた脚部30が後段コンベア6のベルト部6aの表面に設けられた突起29に係合して、トレー21がベルト部6a上に引き上げられる。その後、
図13に示すように、被検査物8を載せたトレー21は、後段コンベア6によって遮蔽ボックス1の搬出口10を通って遮蔽ボックス1外に搬出される。そして、被検査物8を載せたトレー21が後段コンベア6の所定の回収位置に達すると、それを図示省略のセンサにより検知して後段コンベア6が停止される(ステップS10)。これにより、トレー21及び被検査物8が後段コンベア6から回収されて(ステップS11)、X線検査装置による被検査物8の内部のX線検査が終了する。
【0037】
なお、回転装置4は、被検査物8の後段コンベア6への受け渡しが完了すると、回転/移動機構12が逆回転されて移動開始位置まで戻される。また、支え板25は、電動機構のオン駆動によって水平状態に保持され、次の被検査物8が搬送されて来るまで待機する。
【0038】
本発明によれば、被検査物8がX線照射領域を通過する際に、回転装置4によって被検査物8の搬送方向Dと平行な回転軸AX周りに回転されるように構成されているので、従来のガントリを回転するX線検査装置に比べて回転装置4の構成が簡単になる。したがって、被検査物8の中身のCT検査を可能にする小型で低コストであるX線検査装置を実現することができる。
【0039】
なお、上記実施形態において、回転部11が被検査物8を保持した状態で螺旋状に回転しながら前進するヘリカルスキャン方式の回転装置4について述べたが、本発明はこれに限られず、回転部11が被検査物8を1回転させる毎にステップ移動する方式の回転装置4であってもよい。さらに、回転装置4は、X線撮影中に回転軸AXを中心にして被検査物8を予め定められた所定の角度だけ傾けるようにしてもよい。そして、本発明において「回転」は、上記のように回転軸AXを中心に所定の角度だけ傾ける場合も含む概念である。
【0040】
また、上記実施形態においては、X線検査装置について説明したが、本発明はこれに限られず、被検査物8が手荷物であり、上記X線検査装置の機能を有する手荷物検査装置であってもよい。
【0041】
上記実施形態は、本発明が理解及び実施できる程度に概略的に示したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲を逸脱しない限り種々に変更及び修正をすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…遮蔽ボックス
2…X線源(放射線源)
3…X線センサ部(放射線センサ部)
4…回転装置
5…前段コンベア(前段搬送装置)
6…後段コンベア(後段搬送装置)
8…被検査物
21…トレー
RL…X線(放射線)
AX…回転装置の回転軸
D…被検査物の搬送方向