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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112730
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20220727BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20220727BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220727BHJP
   F16H 1/46 20060101ALI20220727BHJP
   F16H 37/12 20060101ALI20220727BHJP
   F16D 3/50 20060101ALI20220727BHJP
   F16D 3/79 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
F16H19/04 J
H02K7/06 Z
H02K7/116
F16H1/46
F16H37/12 Z
F16D3/50 A
F16D3/79 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008638
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【テーマコード(参考)】
3J027
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J027FA08
3J027FB34
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC23
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE27
3J062AA33
3J062AB05
3J062AB06
3J062AC07
3J062BA19
3J062BA35
3J062BA37
3J062CA17
3J062CF33
3J062CG03
3J062CG83
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE36
5H607EE54
5H607JJ08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動力が高い駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明の駆動装置の一つの態様は、モータ本体およびモータ本体によって中心軸線周りに回転させられるピニオンギヤ5を有する2つのギヤドモータと、2つのピニオンギヤ5に噛み合い第1方向に動作するラックギヤ3と、2つのギヤドモータおよびラックギヤ3を保持するフレーム10と、モータ本体と前記ピニオンギヤ5との互いの回転を弾性的に緩衝可能な弾性機構と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体および前記モータ本体によって中心軸線周りに回転させられるピニオンギヤを有する2つのギヤドモータと、
2つの前記ピニオンギヤに噛み合い第1方向に動作するラックギヤと、
2つの前記ギヤドモータおよび前記ラックギヤを保持するフレームと、
前記モータ本体と前記ピニオンギヤとの互いの回転を弾性的に緩衝可能な弾性機構と、を備える、
駆動装置。
【請求項2】
前記ギヤドモータは、前記ピニオンギヤに連結され前記ピニオンギヤを回転させる出力部を有し、
前記弾性機構は、前記ピニオンギヤと前記出力部との間に設けられる、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記出力部および前記ピニオンギヤのうち、一方は前記中心軸線に沿って延びる柱部を有し、他方は前記中心軸線に沿って延び前記柱部が挿入される孔部を有し、
前記柱部の外周面には、周方向一方側を向く駆動面が設けられ、
前記孔部の内側面には、周方向他方側を向く支持面が設けられ、
前記駆動面と前記支持面とは、径方向位置が互いにずらされて配置され、
前記弾性機構は、前記駆動面と前記支持面との間に跨って延びて前記駆動面と前記支持面とに接触する板ばね部を有する、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記柱部の外周面には、周方向一方側を向く第1対向面が設けられ、
前記孔部の内側面には、周方向他方側を向き隙間を介して前記第1対向面と対向する第2対向面が設けられる、
請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ギヤドモータは、遊星歯車機構を有し、
前記遊星歯車機構は、
前記モータ本体の回転を伝達する太陽歯車と、
前記遊星歯車機構のギヤケースと一体に回転可能な内歯ギヤと、
前記太陽歯車および前記内歯ギヤに噛み合う遊星歯車と、
前記遊星歯車を回転可能に支持し、かつ、前記ピニオンギヤと一体に回転可能な遊星キャリアと、を有し、
前記弾性機構は、前記ギヤケースの回転を弾性的に固定可能な、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記ギヤケースは、周方向に繰り返し配置された凹部および凸部を有し、
前記弾性機構は、
前記フレームに収容され、前記凹部および前記凸部に引っ掛かることが可能な少なくとも2つの突起を有する回転止め板と、
前記回転止め板を介して前記凹部および前記凸部に弾性力を付与可能な伸縮ばねと、を有し、
前記凹部および前記突起は、前記伸縮ばねの弾性力を前記ギヤケースの回転方向逆方向への回転復元力へ変換可能な斜面部をそれぞれ有する、
請求項5に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の電子機器の薄型化が進む一方で、搭載されるギヤドモータにも薄型化が求められている。特許文献1には、このような薄型の電子機器に搭載するギヤボックス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-47589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような薄型の駆動装置において更なる高出力化が求められる場合がある。本発明者らは、並行して並べた複数個のモータを用いて1つのラックギヤを駆動させることで駆動装置の薄型化と高出力化を実現する駆動装置を想到した。このような構成において、さらなる駆動力の向上が求められている。
【0005】
本発明の一つの態様は、駆動力が高い駆動装置の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、モータ本体およびモータ本体によって中心軸線周りに回転させられるピニオンギヤを有する2つのギヤドモータと、2つのピニオンギヤに噛み合い第1方向に動作するラックギヤと、2つのギヤドモータおよびラックギヤを保持するフレームと、モータ本体と前記ピニオンギヤとの互いの回転を弾性的に緩衝可能な弾性機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によると、駆動力が高い駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の駆動装置の分解斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の駆動装置の縦断面図である。
図3図3は、第1実施形態の駆動装置の横断面図である。
図4図4は、第2実施形態の駆動装置の分解斜視図である。
図5図5は、第2実施形態の駆動装置の上面図である。
図6図6は、第2実施形態の駆動装置の部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る駆動装置1について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において特に断りのない限り、各中心軸線Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、+Z側を単に「軸方向一方側」と呼び、-Z側を単に「軸方向他方側」と呼ぶ。また、各中心軸線J周りの周方向を単に「周方向」とよび、各中心軸線Jに対する径方向を単に「径方向」と呼ぶ。
【0011】
さらに、本明細書の説明の簡易のために、Y軸方向を単に上下方向と呼び、+Y軸方向を単に上側とよび、-Y方向を単に下側と呼ぶ。なお、本明細書における上下方向は、説明の便宜のために設定する方向であって、駆動装置1の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の駆動装置1の分解斜視図である。図2は、駆動装置1の断面図である。本実施形態の駆動装置1は、Y軸方向に沿う寸法が抑制された薄型の電子機器に搭載される。
【0013】
図1に示すように、駆動装置1は、2つのギヤドモータ2と、ラックギヤ3と、フレーム10と、アタッチメント40と、弾性機構50と、を備える。
【0014】
ギヤドモータ2は、Z軸方向に沿って延びる円柱状である。2つのギヤドモータ2は、X軸方向に隣り合って配置される。以下の説明において、2つのギヤドモータ2を区別する場合、一方を第1のギヤドモータ2Aと呼び、他方を第2のギヤドモータ2Bと呼ぶ。
【0015】
図2に示すように、第1のギヤドモータ2Aは、第1の中心軸線J1に沿って延びる。また、第2のギヤドモータ2Bは、第2の中心軸線J2に沿って延びる。第1の中心軸線J1と第2の中心軸線J2とは、互いに平行に延びる。以下の説明において、第1の中心軸線J1と第2の中心軸線J2とを区別しない場合、これらをまとめて、単に中心軸線Jと呼ぶ。
【0016】
ギヤドモータ2は、モータ本体20と、モータ本体20に接続される遊星歯車機構(伝達機構)30と、遊星歯車機構30に接続されるピニオンギヤ5と、を有する。本実施形態においては、弾性機構50は、遊星歯車機構30とピニオンギヤ5との間に配置される。
【0017】
なお、以下の説明で、第1のギヤドモータ2Aと第2のギヤドモータ2Bとを区別する場合、モータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および弾性機構50についても、互いに区別する。この場合、第1のギヤドモータ2Aのモータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および弾性機構50を、それぞれ、第1のモータ本体20A、第1の遊星歯車機構30A、第1のピニオンギヤ5A、および第1の弾性機構50Aと呼ぶ。また、第2のギヤドモータ2Bのモータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および弾性機構50を、それぞれ、第2のモータ本体20B、第2の遊星歯車機構30B、第2のピニオンギヤ5B、および第2の弾性機構50Bと呼ぶ。
【0018】
第1のモータ本体20Aのモータシャフト29、第1の遊星歯車機構30Aおよび第1のピニオンギヤ5Aは、第1の中心軸線J1周りを回転する。一方で、第2のモータ本体20Bのモータシャフト29、第2の遊星歯車機構30Bおよび第2のピニオンギヤ5Bは、第2の中心軸線J2周りを回転する。
【0019】
モータ本体20は、中心軸線Jに沿って延びる。モータ本体20は、全体として各中心軸線Jを中心とする円柱状である。2つのモータ本体20は、ステップ角が互いに等しいステッピングモータである。なお、ステップ角とは、ステッピングモータにおいて、1パルスで動作するモータ本体20の回転角である。
【0020】
モータ本体20は、各中心軸線J周りに回転するロータ21と、ロータ21を径方向外側から囲むステータ22と、さらにステータ22を径方向外側から囲むモータケース23と、を有する。ロータ21は、各中心軸線Jに沿って延びるモータシャフト29を有する。
【0021】
遊星歯車機構30は、それぞれモータ本体20のモータシャフト29に接続される。遊星歯車機構30は、それぞれモータ本体20の動力を減速してピニオンギヤ5に伝える減速機構である。本実施形態において、第1の遊星歯車機構30Aの減速比と、第2の遊星歯車機構30Bの減速比とは、互いに等しい。
【0022】
遊星歯車機構30は、それぞれ、ギヤケース39と、第1太陽歯車33aと、3つの第1遊星歯車33bと、第1キャリア31と、3つの第2遊星歯車34bと、第2キャリア32と、3つの第3遊星歯車35bと、第3キャリア36と、を有する。
【0023】
ギヤケース39は、フレーム10に固定される。すなわち、遊星歯車機構30は、ギヤケース39においてフレーム10に支持される。ギヤケース39は、内歯ギヤ39aと、軸受支持部39dと、を有する。
【0024】
内歯ギヤ39aは、各中心軸線Jを中心として軸方向に延びる筒状である。内歯ギヤ39aは、第1遊星歯車33b、第2遊星歯車34bおよび第3遊星歯車35bに噛み合う。軸受支持部39dは、内歯ギヤ39aの軸方向一方側(+Z側)の端部に位置する。軸受支持部39dは、中心軸線Jを中心として筒状に延びる。軸受支持部39dの内周面には滑り軸受が装着される。軸受支持部39dは、第2軸受7を保持する。軸受支持部39dは、第2軸受7を介して後述する円柱部36fを回転可能に支持する。
【0025】
ギヤケース39は、軸受支持部39dに対応する外周面に、平面部39bを有する。本実施形態では、平面部39bは、第1方向両側(+X側、-X側)および上下方向両側(+Y側、-Y側)に、計4面設けられる。4つの平面部39bのうち、第1方向両側(+X側、-X側)に設けられた2つの平面部39bを、第1方向平面部39bと呼称する。同様に、上側(+Y側)に設けられた1つの平面部39bを、上側(+Y側)平面部39bと呼称し、下側(-Y側)に設けられた1つの平面部39bを、下側(-Y側)平面部39bと呼称する。
【0026】
第1太陽歯車33aは、モータシャフト29に固定され、モータシャフト29とともに各中心軸線Jを中心として回転する。3つの第1遊星歯車33bは、各中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第1遊星歯車33bは、第1太陽歯車33aに噛み合う。3つの第1遊星歯車33bは、第1太陽歯車33aの回転に伴い、各中心軸線Jの周りを公転回転する。
【0027】
第1キャリア31は、第1円盤部31bと、3本の第1サブシャフト31aと、第2太陽歯車31cと、を有する。第1円盤部31bは、各中心軸線Jを中心として径方向に延びる。3本の第1サブシャフト31aは、第1円盤部31bから軸方向他方側(-Z側)に延びる。第2太陽歯車31cは、各中心軸線Jを中心として第1円盤部31bから軸方向一方側(+Z側)に延びる。
【0028】
3本の第1サブシャフト31aは、それぞれ第1遊星歯車33bを回転可能に支持する。第1キャリア31は、3つの第1遊星歯車33bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0029】
第2太陽歯車31cは、第1キャリア31の一部であるため、第1遊星歯車33bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0030】
3つの第2遊星歯車34bは、各中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第2遊星歯車34bは、第2太陽歯車31cに噛み合う。3つの第2遊星歯車34bは、第2太陽歯車31cの回転に伴い、各中心軸線Jの周方向に公転回転する。
【0031】
第2キャリア32は、第2円盤部32bと、3本の第2サブシャフト32aと、第3太陽歯車32cと、を有する。第2円盤部32bは、各中心軸線Jを中心として径方向に延びる。3本の第2サブシャフト32aは、第2円盤部32bから軸方向他方側(-Z側)に延びる。第3太陽歯車32cは、各中心軸線Jを中心として第2円盤部32bから軸方向一方側(+Z側)に延びる。
【0032】
3本の第2サブシャフト32aは、それぞれ第2遊星歯車34bを回転可能に支持する。第2キャリア32は、3つの第2遊星歯車34bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0033】
第3太陽歯車32cは、第2キャリア32の一部であるため、第2遊星歯車34bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0034】
3つの第3遊星歯車35bは、各中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第3遊星歯車35bは、第3太陽歯車32cに噛み合う。3つの第3遊星歯車35bは、第3太陽歯車32cの回転に伴い、各中心軸線Jの周方向に公転回転する。
【0035】
第3キャリア36は、第3円盤部36bと、3本の第3サブシャフト36aと、出力部36cと、を有する。第3円盤部36bは、各中心軸線Jを中心として径方向に延びる。3本の第3サブシャフト36aは、第3円盤部36bから軸方向他方側(-Z側)に延びる。出力部36cは、各中心軸線Jを中心として第3円盤部36bから軸方向一方側(+Z側)に延びる。
【0036】
3本の第3サブシャフト36aは、それぞれ第3遊星歯車35bを回転可能に支持する。第3サブシャフト36aは、3つの第3遊星歯車35bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0037】
図1に示すように、出力部36cは、各中心軸線Jを中心として延びる円柱部36fと、円柱部36fの先端面から軸方向(Z軸方向)に沿って延びる嵌合軸部37と、を有する。円柱部36fは、第2軸受7によって回転可能に支持される。また、出力部36cの軸方向一方側(+Z側)を向く端面には、保持穴36dが設けられる。保持穴36dには、シャフト36pが挿入される。
なお、図1において、第3キャリア36がギヤケース39の外側に分解された状態を図示しているが、実際の組み立て工程においてこのような状態は再現されない。
【0038】
嵌合軸部37は、中心軸線Jに沿って延びる柱部37aを有する。柱部37aは、軸方向から見て十字形状を有する。本実施形態では、柱部37aは、径方向外側に突出し軸方向に延びる2つの短突出部37dと、径方向外側に突出し軸方向に延びる2つの長突出部37eと、を有する。短突出部37dと長突出部37eとは、周方向に沿って交互に並ぶ。
【0039】
図3は、2つのピニオンギヤ5、並びにラックギヤ3を含む駆動装置1の断面図である。短突出部37dは、周方向に等間隔に設けられる。さらに、短突出部37dは、周方向一方側(+θ側)を向く第1駆動面(駆動面)37bと、周方向他方側(-θ側)を向く第2駆動面(駆動面)37cと、を有する。第1駆動面37bと第2駆動面37cとは、互いに平行な面である。すなわち、柱部37aの外周面には、周方向一方側(+θ側)を向く第1駆動面37bと周方向他方側(-θ側)を向く第2駆動面37cとが設けられる。
【0040】
長突出部37eは、周方向に等間隔に設けられ、短突出部37dに対しておよそ90度間隔を空けて配置される。長突出部37eは、短突出部37dと比較して、径方向への突出高さが大きい。
【0041】
長突出部37eは、周方向一方側(+θ側)を向く第1対向面37fを有する。また、長突出部37eは、周方向他方側(-θ側)を向く別の第1対向面37gを有する。第1対向面37fと第1対向面37gとは、互いに平行な面である。すなわち、柱部37aの外周面には、周方向一方側(+θ側)を向く第1対向面37fと周方向他方側(-θ側)を向く第1対向面37gとが設けられる。
【0042】
図1に示すように、ピニオンギヤ5は、各中心軸線Jを中心として配置される。ピニオンギヤ5は、モータ本体20によって各中心軸線J周りに回転させられる。ピニオンギヤ5には、軸方向に貫通する貫通孔5hと、軸方向他方側(-Z側)を向く面に開口する嵌合凹部38と、が設けられる。貫通孔5hには、シャフト36pが挿入される。
【0043】
図3に示すように、ピニオンギヤ5の軸方向他方側(-Z側)を向く面には、嵌合凹部38が設けられる。嵌合凹部38には、出力部36cの嵌合軸部37が嵌合する。
【0044】
嵌合凹部38は、柱部37aが挿入される孔部38aを有する。また、孔部38aは、軸方向に沿って延びる。すなわち、ピニオンギヤ5は、中心軸線Jに沿って延び柱部37aが挿入される孔部38aを有する。孔部38aは、軸方向から見て十字形状を有する。本実施形態では、孔部38aは、径方向外側に窪み軸方向に延びる2つの第1溝部38dと、径方向外側に窪み軸方向に延びる2つの第2溝部38eと、を有する。第1溝部38dと第2溝部38eとは、周方向に沿って交互に並ぶ。
【0045】
第2溝部38eは、周方向に等間隔に設けられ、第1溝部38dに対しておよそ90度間隔を空けて配置される。第2溝部38eは、周方向他方側(-θ側)を向く第2対向面38fを有する。また、第2溝部38eは、周方向一方側(+θ側)を向く別の第2対向面38gを有する。
【0046】
孔部38aに柱部37aが挿入された状態において、周方向他方側(-θ側)を向く第2対向面38fは、柱部37aの周方向一方側(+θ側)を向く第1対向面37fと、隙間δ1を介して対向する。本実施形態では、隙間δ1は、径方向内側と比較して径方向外側が広いテーパ状である。すなわち、孔部38aの内側面には、周方向他方側(-θ側)を向き隙間δ1を介して第1対向面37fと対向する第2対向面38fが設けられる。
【0047】
周方向一方側(+θ側)を向く第2対向面38gは、柱部37aの周方向他方側(-θ側)を向く第1対向面37gと、隙間δ2を介して対向する。本実施形態では、隙間δ2は、径方向内側と比較して径方向外側が広いテーパ状である。すなわち、孔部38aの内側面には、周方向一方側(+θ側)を向き隙間δ2を介して別の第1対向面37gと対向する別の第2対向面38gが設けられる。
【0048】
第1溝部38dは、周方向に等間隔に設けられる。第1溝部38dは、幅狭溝部38iと、幅狭溝部38iの径方向内側に位置し幅狭溝部38iより幅寸法が大きい幅広溝部38hと、を有する二段の溝である。さらに、第1溝部38dは、周方向他方側(-θ側)を向く第1支持面(支持面)38bと、周方向一方側(+θ側)を向く第2支持面(支持面)38cと、を有する。第1支持面38bおよび第2支持面38cは、幅狭溝部38iの内側面であって周方向において互いに対向する。第1支持面38bと第2支持面38cとは、互いに平行な面である。すなわち、孔部38aの内周面には、周方向他方側(-θ側)を向く第1支持面38bとの周方向一方側(+θ側)を向く第2支持面38cとが設けられる。
【0049】
第1溝部38dは、径方向内側に、第1支持面38bと第2支持面38cとの間隔よりも周方向幅の広い幅広溝部38hを有する。幅広溝部38hの壁面と弾性機構50との間隔は、隙間δ1よりも広く設けられる。
【0050】
図1に示すように、弾性機構50は、ピニオンギヤ5と出力部36cとの間に設けられる。本実施形態において弾性機構50は、例えば板状のばね鋼をプレス加工することで成形される。弾性機構50は、4つの板ばね部51と1つの頂部52とを有する。
【0051】
4つの板ばね部51は、軸方向に沿って延びる。4つの板ばね部51は、軸方向一方側(+Z側)で頂部52に連結される。図3に示すように、本実施形態の板ばね部51は、軸方向横断面がコの字型である柱状の部材である。コの字型の各辺を構成する部分として、板ばね部51は、第1板ばね側面部51aと、第2板ばね側面部51bと、第3板ばね側面部51cと、を有する。
【0052】
第1板ばね側面部51aは、コの字型を構成する部分のうちの周方向一方側(+θ側)に位置する一部分である。第1板ばね側面部51aは、軸方向に沿って延びる板状であり、第1駆動面37bと第1支持面38bとの間で径方向に跨る。すなわち、弾性機構50は、第1駆動面37bと第1支持面38bとの間に跨って延びて第1駆動面37bと第1支持面38bとに接触する板ばね部51を有する。
【0053】
また、第2板ばね側面部51bは、コの字型を構成する部分のうち周方向他方側(-θ側)に位置する一部分である。第2板ばね側面部51bは、軸方向に沿って延びる板状であり、第2駆動面37cと第2支持面38cとの間で径方向に跨る。
【0054】
また、第3板ばね側面部51cは、コの字型を構成する部分のうち径方向外側に位置する一部分であり、第1板ばね側面部51aと第2板ばね側面部51bとを連結する。第3板ばね側面部51cは、軸方向に沿って延びる板状であり、第1溝部38dの底面に沿って配置される。したがって、板ばね部51は、短突出部37dを周方向両側から挟む。
【0055】
頂部52は、軸方向から見て十字形状を有する。頂部52には、軸方向に貫通する貫通孔52hが設けられる。貫通孔52hには、シャフト36pが挿入される。また、本実施形態では、頂部52は、長突出部37eの軸方向一方側に位置し第2溝部38eに収容される2つの羽根部52aと、短突出部37dの軸方向一方側に位置し第1溝部38dに収容される2つの連結部52bと、を有する。羽根部52aと連結部52bとは、周方向に交互に配置される。連結部52bの径方向外側には、板ばね部51の第3板ばね側面部51cが連結される。
【0056】
遊星歯車機構30の出力部36cから伝達される回転力は、2つの短突出部37dを、中心軸線J周りに回転変位させる。短突出部37dの周方向一方側(+θ側)の回転変位は、第1駆動面37bと第1支持面38bとの間の周方向相対変位を引き起こす。したがって、第1駆動面37bと第1支持面38bとの間に跨る第1板ばね側面部51aには、周方向に曲げ変形が生じる。遊星歯車機構30の出力部36cから伝達される回転力と第1板ばね側面部51aの曲げ変形とがつり合った状態において、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。この場合において、第2駆動面37cと第2板ばね側面部51bとの間には隙間が生じ、互いに接触していない。
【0057】
第1駆動面37bと第1支持面38bとの間の相対変位が、隙間δ1の周方向寸法よりも大きい場合、第1対向面37fと第2対向面38fとの少なくとも一部が接触する。この場合においても、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。
【0058】
これにより、第1のピニオンギヤ5Aは、第1の遊星歯車機構30Aと第1の弾性機構50Aとを介して、第1のモータ本体20Aに回転させられる。同様に、第2のピニオンギヤ5Bは、第2の遊星歯車機構30Bと第2の弾性機構50Bとを介して、第2のモータ本体20Bに回転させられる。
【0059】
同様に、短突出部37dの周方向一方側(-θ側)の回転変位は、第2駆動面37cと第2支持面38cとの間の周方向相対変位を引き起こす。したがって、第2駆動面37cと第2支持面38cとの間に跨る第2板ばね側面部51bには、周方向に曲げ変形が生じる。遊星歯車機構30の出力部36cから伝達される回転力と第2板ばね側面部51bの曲げ変形とがつり合った状態において、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。この場合において、第1駆動面37bと第1板ばね側面部51aとの間には隙間が生じ、互いに接触していない。
【0060】
第2駆動面37cと第2支持面38cとの間の相対変位が、隙間δ2の周方向寸法よりも大きい場合、第1対向面37gと第2対向面38gとの少なくとも一部が接触する。この場合においても、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。
【0061】
これにより、第1のピニオンギヤ5Aは、第1の遊星歯車機構30Aと第1の弾性機構50Aとを介して、第1のモータ本体20Aに回転させられる。同様に、第2のピニオンギヤ5Bは、第2の遊星歯車機構30Bと第2の弾性機構50Bとを介して、第2のモータ本体20Bに回転させられる。
【0062】
また、ラックギヤ3に力が加わる場合において、ラックギヤ3からピニオンギヤ5へと反力が生じる。ピニオンギヤ5から出力部36cに伝達される回転力は、2つの第1溝部38dを、中心軸線J周りに回転変位させる。第1溝部38dの周方向一方側(+θ側)の回転変位は、第1支持面38bと第1駆動面37bとの間の周方向相対変位を引き起こす。したがって、第1支持面38bと第1駆動面37bとの間に跨る第1板ばね側面部51aには、周方向に曲げ変形が生じる。ピニオンギヤ5から出力部36cに伝達される回転力と第1板ばね側面部51aの曲げ変形とがつり合った状態において、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。この場合において、第2駆動面37cと第2板ばね側面部51bとの間には隙間が生じ、互いに接触していない。
【0063】
第1支持面38bと第1駆動面37bとの間の相対変位が、隙間δ1の周方向寸法よりも大きい場合、第2対向面38fと第1対向面37fとの少なくとも一部が接触する。この場合においても、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。
【0064】
同様に、第1溝部38dの周方向一方側(-θ側)の回転変位は、第2支持面38cと第2駆動面37cとの間の周方向相対変位を引き起こす。したがって、第2支持面38cと第1駆動面37bとの間に跨る第2板ばね側面部51bには、周方向に曲げ変形が生じる。ピニオンギヤ5から出力部36cに伝達される回転力と第2板ばね側面部51bの曲げ変形とがつり合った状態において、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。この場合において、第1駆動面37bと第1板ばね側面部51aとの間には隙間が生じ、互いに接触していない。
【0065】
第2支持面38cと第2駆動面37cとの間の相対変位が、隙間δ2の周方向寸法よりも大きい場合、第2対向面38gと第1対向面37gとの少なくとも一部が接触する。この場合においても、出力部36cと弾性機構50とピニオンギヤ5とは、一体となって回転する。
【0066】
図2に示すように、シャフト36pは、各中心軸線Jを中心として延びる。シャフト36pの軸方向他方側(-Z側)の端部は、出力部36cに支持され、軸方向一方側(+Z側)の端部は、第1軸受6を介してそれぞれフレーム10に支持される。シャフト36pは、ピニオンギヤ5の各中心軸線J周りの回転を補助する。
【0067】
図1に示すように、ラックギヤ3は、上下方向を板厚方向とする板状である。ラックギヤ3は、MIM(Metal Injection Molding、金属粉末射出成形)によって成形される。2つのピニオンギヤ5は、各中心軸線Jと直交する方向(本実施形態においてX軸方向)に隣り合って配置される。ラックギヤ3は、2つのピニオンギヤ5が並ぶ方向に沿って直線状に延びる。ラックギヤ3は、一対のシャフト36p並びに2つのピニオンギヤ5に対し下側に位置する。
【0068】
ラックギヤ3は、X軸方向に沿って並ぶ複数の歯面を有するギヤ本体部3bと、ギヤ本体部3bのZ軸方向の両側からそれぞれ突出する一対のレール部3aと、を有する。レール部3aは、ラックギヤ3の延在方向(X軸方向)に沿って延びる。
【0069】
図3に示すように、ラックギヤ3のギヤ本体部3bは、2つのピニオンギヤ5に噛み合う。ラックギヤ3は、2つのピニオンギヤ5から出力される動力が伝わることで一方向に動作する。ラックギヤ3は、2つのギヤドモータ2の中心軸線Jと直交する方向に動作する。
【0070】
本明細書において、ラックギヤ3が動作する方向を第1方向と呼ぶ。本実施形態において、第1方向は、X軸と平行な方向である。ギヤ本体部3bにおいて複数の歯は、第1方向に沿って一定のギヤピッチで並ぶ。
【0071】
図1に示すように、フレーム10は、フレーム本体11を有する。フレーム10は、2つのギヤドモータ2およびラックギヤ3を保持する。フレーム本体11は、例えば、MIMによって成形される。
【0072】
フレーム本体11には、複数の固定部15が設けられる。固定部15は、上下方向と直交する平面(XZ平面)に沿う板状である。固定部15には、板厚方向に貫通する固定孔15aが設けられる。固定孔15aには、駆動装置1を外部部材(例えば、駆動装置1が格納される電子機器)に固定するためのネジが挿入される。フレーム本体11は、固定部15において、外部部材にネジ固定される。
【0073】
また、フレーム本体11は、第1側壁部13と第2側壁部14と区画部16とを有する。第1側壁部13、第2側壁部14、および区画部16は、中心軸線Jに沿って互いに並行して延びる。第1側壁部13と区画部16との間には、第1のギヤドモータ2Aが配置される。区画部16と第2側壁部14との間には、第2のギヤドモータ2Bが配置される。第1側壁部13、および第2側壁部14は、ラックギヤ3の動作方向である第1方向と直交する板状である。区画部16は、第1のギヤドモータ2Aと第2のギヤドモータ2Bとの下側(-Y側)に沿う2つの曲面を有する。第1側壁部13、区画部16、第2側壁部14は、第1方向に沿ってこの順に並ぶ。
【0074】
図3に示すように、第1側壁部13、第2側壁部14、および区画部16は、ラックギヤ3の上側に位置する。第1側壁部13および第2側壁部14の下端面13a、14aは、ラックギヤ3のレール部3aを上側から摺動可能に支持する。これにより、フレーム本体11は、ラックギヤ3の第1方向への移動をガイドする。なお、摺動効率の観点から、第1側壁部13および第2側壁部14の下端面13a、14aとラックギヤ3のレール部3aとの間には、若干の隙間が介在することが好ましい。また、本実施形態において、区画部16の下端面とレール部3aの上面との間には、十分な隙間が介在する。
【0075】
フレーム本体11は、支持枠部12を有する。図1に示すように、支持枠部12は、フレーム本体11に対し軸方向一方側(+Z側)に配置される。支持枠部12は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bを四方から囲む枠状である。支持枠部12に囲まれた平面視矩形状の包囲空間は、上下方向(Y軸方向)に開口する。支持枠部12は、上下方向(Y軸方向)を開口方向とする上側開口部(開口部)12aおよび下側開口部12bを有する。下側開口部12bは、ラックギヤ3によって覆われる。また、上側開口部12aには、アタッチメント40が挿入される。
【0076】
支持枠部12は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの軸方向一方側(+Z側)に位置する第1包囲壁12cと、軸方向他方側(-Z側)に位置する第2包囲壁12dと、第1方向一方側(-X側)に位置する第3包囲壁12eと、第1方向他方側(+X側)に位置する第4包囲壁12fと、を有する。第1~第4包囲壁12c~12fは、Y軸方向から見て矩形状に配置される。本実施形態では、第3包囲壁12eは、第1側壁部13の第1方向他方側(+X側)に設けられる。第4包囲壁12fは、第2側壁部14の第1方向一方側(-X側)に設けられる。
【0077】
図1に示すように、第1および第2包囲壁12c、12dの下端部には、それぞれラックガイド部18が設けられる。一対のラックガイド部18は、支持枠部12の下側開口部12bに位置する。一対のラックガイド部18は、それぞれ互いに向き合う方向に突出する。また、一対のラックガイド部18は、それぞれ一様な断面でラックギヤ3が延びる方向(X軸方向)に沿って並行に延びる。
【0078】
第1包囲壁12cには、上側に開口する一対の切欠12gが設けられる。第1包囲壁12cの一対の切欠12gには、それぞれ第1軸受6が挿入される。したがって、第1包囲壁12cは、第1軸受6を介して一対のシャフト36pを支持する。
【0079】
第2包囲壁12dには、上側に開口する一対の切欠12hが設けられる。第2包囲壁12dの一対の切欠12hには、それぞれ第1および第2のギヤドモータ2A、2Bの出力部36cが挿入される。
【0080】
支持枠部12は、第2包囲壁12dの軸方向他方側(-Z側)に、保持枠17を有する。保持枠17は、第1側壁部13、第2側壁部14、および区画部16に沿う位置にそれぞれ第1回転保持部17a、第2回転保持部17b、および第3回転保持部17cを有する。第1回転保持部17aと第3回転保持部17cとは、第1のギヤケース39Aの2つの第1方向平面部39bを第1方向の両側から挟み保持する。第2回転保持部17bと第3回転保持部17cとは、第2のギヤケース39Bの2つの第1方向平面部39bを第1方向の両側から挟み保持する。
【0081】
保持枠17は、第1~第3回転保持部17a~17cよりも下側(-Y側)に、第4回転保持部17dおよび第5回転保持部17eを有する。第4回転保持部17dは、第1のギヤケース39Aの下側(-Y側)平面部39bを、下側(-Y側)から支持する。第5回転保持部17eは、第2のギヤケース39Bの下側(-Y側)平面部39bを、下側(-Y側)から支持する。
【0082】
第1側壁部13および第2側壁部14は、支持枠部12の軸方向他方側(-Z側)の端部に、段差面13b、14bを有する。第1側壁部13および第2側壁部14は、段差面13b、14bよりも軸方向一方側(+Z側)で薄く、軸方向他方側(-Z側)で厚い。
【0083】
ラックガイド部18は、ラックギヤ3に対し下側(-Y側)に位置する。ラックガイド部18には、複数の摺動台座18aを有する。本実施形態において、摺動台座18aは2つ設けられる。複数の摺動台座18aは、ラックギヤ3の駆動方向(X軸方向、第1方向)に沿って並ぶ。摺動台座18aは、上側(+Y側)に突出する。摺動台座18aは、上側を向く先端面18fを有する。複数の摺動台座18aの先端面18fは、同一平面上に配置される。摺動台座18aは、先端面18fにおいてラックギヤ3のレール部3aを下側から摺動可能に支持する。これにより、支持枠部12は、ラックギヤ3のX軸方向(第1方向)に沿う移動をガイドする。
【0084】
第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bからラックギヤ3への動力伝達によって、ラックギヤ3は第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bから下側の力を受ける。本実施形態によれば、ラックガイド部18は、摺動台座18aの先端面18fにおいてラックギヤ3のレール部3aを支持する。
【0085】
フレーム10は、軸方向他方側(-Z側)に頭壁部19を有する。頭壁部19は、XY平面に沿って延びる板状である。頭壁部19には、上側に開口する一対の切欠19aが設けられる。頭壁部19の一対の切欠19aには、それぞれ第1および第2のモータ本体20Aおよび20Bが固定される。
【0086】
アタッチメント40は、支持枠部12の上側開口部12aを覆う天板部41と、天板部41から下側に突出し支持枠部12の上側開口部12aに挿入される第1補強壁(挿入部)45および第2補強壁(挿入部)46と、を有する。これにより第1補強壁45および第2補強壁46は、包囲空間に配置される。アタッチメント40は、MIMによって成形される。
【0087】
天板部41は、上下方向と直交する平面(XZ平面)に沿う板状である。天板部41には、板厚方向に貫通する2つの窓部41wが設けられる。2つの窓部41wは、それぞれ第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの直上に位置し、これらを露出させる。
【0088】
天板部41は、支持枠部12に搭載される。天板部41の下面は、支持枠部12の上端面に接触する。また、天板部41の下面は、支持枠部12に溶接等の接合手段によって固定される。
【0089】
天板部41の軸方向他方側(-Z側)の端部は、ギヤケース39の上側(+Y側)平面部39bを、上側(+Y側)から支持する。したがって、ギヤケース39の4つの平面部39bは、保持枠17と天板部41とによって、回転が規制された状態で固定される。
【0090】
本実施形態によれば、アタッチメント40は、支持枠部12に固定される。より具体的には、アタッチメント40の天板部41が、上側開口部12aの縁に固定される。天板部41と支持枠部12との固定部は、第1~第4包囲壁12c~12fの上端面にバランスよく配置される。
【0091】
第1補強壁45および第2補強壁46は、軸方向と直交する平面(XY平面)に沿って延びる。第1補強壁45と第2補強壁46とは、軸方向に対向する。第1補強壁45は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの軸方向一方側(+Z側)に位置する。また、第2補強壁46は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの軸方向他方側(-Z側)に位置する。すなわち、アタッチメント40を支持枠部12に装着した状態で、第1補強壁45と第2補強壁46との間には、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bが配置される。
【0092】
第1補強壁45は、支持枠部12の第1包囲壁12cに沿って延びて接触する。一方で、第2補強壁46は、支持枠部12の第2包囲壁12dに沿って延びて接触する。
【0093】
第1補強壁45には、下側に開口する一対の切欠45aが設けられる。切欠45aは、下側に開口する。第1補強壁45の一対の切欠45aには、それぞれ第1および第2のギヤドモータ2A、2Bの出力部36cが挿入される。
【0094】
第2補強壁46には、軸方向に貫通する一対の保持孔46aが設けられる。保持孔46aは、それぞれ第1又は第2の中心軸線J1、J2を中心とする円形である。保持孔46aには、第1軸受6が挿入される。したがって、第2補強壁46は、第1軸受6を介して一対のシャフト36pを支持する。
【0095】
第1補強壁45および第2補強壁46は、下端部において下側を向くガイド面47を有する。ガイド面47は、それぞれラックギヤ3のレール部3aの直上に位置する。第1補強壁45および第2補強壁46は、ラックギヤ3の動作を上側からガイドする。すなわち、第1補強壁45および第2補強壁46は、ラックギヤ3の動作を上側(+Y側)からガイドするガイド面47を有する。なお、ラックギヤ3が、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bから動力を伝達され第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bから下向きの力を受ける際、ガイド面47とラックギヤ3との間には、隙間が生じる。
【0096】
本実施形態によれば、駆動装置1は、モータ本体20およびモータ本体20によって中心軸線J周りに回転させられるピニオンギヤ5を有する2つのギヤドモータ2と、2つのピニオンギヤ5に噛み合い第1方向に動作するラックギヤと、2つのギヤドモータ2およびラックギヤ3を保持するフレーム10と、モータ本体20とピニオンギヤ5との互いの回転を弾性的に緩衝可能な弾性機構50と、を備える。この構成においては、ラックギヤ3と第1のピニオンギヤ5Aとの間の駆動力が、ラックギヤ3と第2のピニオンギヤ5Bとの間の駆動力よりも大きい場合、弾性機構50が駆動力の差を吸収することで、第2のギヤドモータ2Bが空転する可能性を低減することができる。したがって、第1のギヤドモータ2Aのみが仕事をする可能性を低減でき、実装した2つのモータの駆動力の損失が小さく駆動力が高い駆動装置が得られる。さらに、モータ本体20がステッピングモータである場合において、ピニオンギヤ5へかかる負荷が過大となることに起因してステッピングモータに脱調が生じる可能性を低減できる。
【0097】
本明細書において、「弾性的に緩衝する」とは、弾性機構50が一定量の大きさの入力を吸収した状態で出力し、入力を停止すると入力前の状態に戻ることを意味する。本段落の「入力」および「出力」は、モータ本体20に起因する回転力の流れに従う入力および出力に限定されない。入力とは、例えば、ピニオンギヤ5からの入力を含み、また、出力とは、本実施形態の出力部36cの意味する出力とは完全には一致しない。
【0098】
また、本実施形態によれば、ギヤドモータ2は、ピニオンギヤ5に連結されピニオンギヤ5を回転させる出力部36cを有し、弾性機構50は、ピニオンギヤ5と出力部36cとの間に設けられる。この構成においては、弾性機構50を搭載するために出力部36cおよびピニオンギヤ5のみを変更すれば十分であるため、従来と同様の部品を採用することが容易である。すなわち、比較的低コストで本発明を実施できる。例えば、出力軸とピニオンギヤとの間に伸縮ばねを挿入し、その両端をそれぞれ出力軸とピニオンギヤとに連結していてもよい。さらに、別の例では、出力軸とピニオンギヤとの間にエラストマーなどの弾性材料からなる中間ケースを挿入していてもよい。
【0099】
また、本実施形態によれば、出力部36cは中心軸線Jに沿って延びる柱部37aを有し、ピニオンギヤ5は中心軸線Jに沿って延び柱部37aが挿入される孔部38aを有し、柱部37aの外周面には、周方向一方側(+θ側)を向く駆動面37bが設けられ、孔部38aの内側面には、周方向他方側(-θ側)を向く支持面38bが設けられ、駆動面37bと支持面38bとは、径方向位置が互いにずらされて配置され、弾性機構50は、駆動面37bと支持面38bとの間に跨って延びて駆動面37bと支持面38bとに接触する板ばね部51を有する。この構成においては、一方のギヤドモータ2のみが仕事をしている場合、すなわち、一方のピニオンギヤ5からの回転に対する反力が大きい場合、支持面38bが駆動面37bに対して周方向に相対変位する。これにより、板ばね部51が曲げ変形を受け、2つのピニオンギヤ5からの回転に対する反力の差を低減できる。さらに、板ばね部51が曲げ変形を受けている状態で、モータ本体20からの回転をピニオンギヤ5へと伝達することができる。したがって、一方のギヤドモータ2のみが仕事をしている状態を緩和できる。
【0100】
また、本実施形態によれば、柱部37aの外周面には、周方向一方側(+θ側)を向く第1対向面37fが設けられ、孔部38aの内側面には、周方向他方側(-θ側)を向き隙間δ1を介して第1対向面37fと対向する第2対向面38fが設けられる。この構成においては、支持面38bと駆動面37bとの間の周方向相対変位を、隙間δ1の周方向寸法によって制限できる。すなわち、第1対向面37fおよび第2対向面38fは、板ばね部51の曲げ変形を一定量許容し、かつ、一定量以上の曲げ変形を許容しない。したがって、弾性機構50に対して過剰な負荷がかかることを抑制でき、弾性機構50の損傷リスクを低減できる。
【0101】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の駆動装置101の分解斜視図である。図5は、駆動装置101の上面図である。
【0102】
以下図4を基に、駆動装置101について説明する。本実施形態の駆動装置101は、上述の実施形態と比較して、弾性機構150の構成が主に異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
本実施形態の駆動装置101は、上述の実施形態と同様に、2つのギヤドモータ102と、ラックギヤ3と、フレーム110と、アタッチメント140と、弾性機構150と、を備える。ギヤドモータ102は、モータ本体20、遊星歯車機構130、ピニオンギヤ105、を有する。以下の説明において、2つのギヤドモータ102を区別する場合、一方を第1のギヤドモータ102Aと呼び、他方を第2のギヤドモータ102Bと呼ぶ。
【0104】
本実施形態の遊星歯車機構130は、上述の実施形態と比較して、嵌合軸部137の構成が異なる。嵌合軸部137は、長突出部37eと同様の突出部を、およそ90度間隔で周方向に4つ有する。
【0105】
さらに、本実施形態の遊星歯車機構130は、上述の実施形態と比較して、ギヤケース139の構成が異なる。ギヤケース39は、フレーム10に固定されるが、ギヤケース139は、フレーム110に固定されない。また、ギヤケース139には、平面部39bは設けられない。
【0106】
ギヤケース139は、軸方向他方側(-Z側)に位置する大径部139aと、大径部139aよりも軸方向一方側(+Z側)に位置しかつ外径の小さい小径部139bとを有する。図5に示すように、大径部139aと小径部139bとの間の段差面は、軸方向の凹凸を周方向に繰り返して配置される凹部151および凸部152を有する。凹部151は、軸方向と直交する平面である凹部底面151aを有する。凸部152は、軸方向と直交する平面である凸部頂面152aを有する。凹部151および凸部152は、凹部底面151aと凸部頂面152aとをつなぐ平面である斜面部153を有する。
【0107】
図4に示すように、本実施形態のピニオンギヤ105は、上述の実施形態と比較して、嵌合凹部138の構成が異なる。嵌合凹部138には、嵌合軸部137が直接嵌合する。これにより、ピニオンギヤ105は、遊星歯車機構130を介して、モータ本体20に回転させられる。
【0108】
本実施形態の弾性機構150は、ギヤケース139の小径部139bの上側(+Y側)に配置される回転止め板154と、回転止め板154とフレーム110とに両端を固定される伸縮ばね155と、を有する。
【0109】
回転止め板154は、第1方向に延びる板状の部材である。回転止め板154は、2つのギヤドモータ2の上側に位置し、2つのギヤドモータ2を跨って配置される。回転止め板154は、突起154aと、曲面154bと、スライド部154cと、谷面154dと、フック154eと、を有する。
【0110】
回転止め板154は、軸方向他方側(-Z側)の端面から、軸方向他方側(-Z側)に突出する2つの突起154aを有する。突起154aは、凹部151と噛み合う形状であり、凹部底面151aと斜面部153とによって囲まれる形状とおよそ等しい山型である。
【0111】
回転止め板154は、下側(-Y側)においてギヤドモータ2にそれぞれ接触する2つの曲面154bを有する。曲面154bの曲率は、ギヤケース139の小径部139bの曲率とおよそ等しく、小径部139bと面で接触可能である。
【0112】
回転止め板154は、第1方向両端部にXZ平面にそれぞれ延びる板状の2つのスライド部154cを有する。スライド部154cは、回転止め板154全体の寸法と比較して薄い板状であり、回転止め板154の上下方向における中間部に配置される。
【0113】
回転止め板154は、第1方向中央部かつ上側(+Y側)に、平坦な谷面154dを有する。谷面154dは、回転止め板154の上端面よりも下側(-Y側)に配置され、突起154aよりも下側(-Y側)に配置される。
【0114】
回転止め板154は、谷面154dの軸方向他方側(-Z側)の端面に、伸縮ばね155を引っ掛けることが可能なフック154eを有する。
【0115】
伸縮ばね155は、上側から見て、2つのギヤドモータ2の間に配置される。伸縮ばね155は、軸方向に延びる。伸縮ばね155は、自然長さに対して伸長された状態で、軸方向一方側(+Z側)において回転止め板154に対して固定され、軸方向他方側(-Z側)においてフレーム110に対して固定される。
【0116】
本実施形態のアタッチメント140は、上述の実施形態と比較して、天板部141の構成が異なる。天板部141の軸方向他方側(-Z側)の端部は、ギヤケース139と接触しない。天板部141は、軸方向他方側(-Z側)の端部かつ第1方向両端に、それぞれのスライド部に上側(+Y側)から接触する2つの押さえ部141aを有する。
【0117】
天板部141は、軸方向他方側(-Z側)の端部に、2つの切欠141bを有する。切欠141bは、回転止め板154と軸方向に対向する。また、回転止め板154の谷面154dは、2つの切欠141bの間に噛み合うようにして配置される。切欠141bは、凹部底面151aと凸部頂面152aとの間の軸方向距離と回転止め板154の軸方向寸法とを合わせた寸法よりも大きい。
【0118】
本実施形態のフレーム110は、上述の実施形態と比較して、頭壁部119の構成が異なる。頭壁部119は、第1方向中央部に、伸縮ばね155を引っ掛けることが可能なフック119bを有する。
【0119】
さらに、本実施形態のフレーム110は、上述の実施形態と比較して、支持枠部12の構成が異なる。保持枠117は、ギヤケース139の回転を直接阻害しない。保持枠117は、回転止め板154のスライド部154cに下側(-Y側)から接触する回転止め板保持部117aを有する。
【0120】
回転止め板保持部117aは、第3包囲壁12eおよび第4包囲壁12fの上面(+Y側面)よりもスライド部154cの上下方向寸法だけ下側(-Y側)に位置する。したがって、スライド部154cは、アタッチメント140の押さえ部141aとフレーム110の回転止め板保持部117aとによって、上下方向への移動が規制された状態で挟まれる。
【0121】
また、回転止め板保持部117aの軸方向寸法は、凹部底面151aと凸部頂面152aとの間の軸方向距離とスライド部154cの軸方向寸法とを合わせた寸法よりも大きい。加えて、上述のように、切欠141bは、凹部底面151aと凸部頂面152aとの間の軸方向距離と回転止め板154の軸方向寸法とを合わせた寸法よりも大きい。したがって、回転止め板154は、軸方向の移動に関して、少なくとも凹部底面151aと凸部頂面152aとの間の距離だけ移動可能に配置される。
【0122】
回転止め板154の第1方向寸法は、第1側壁部13と第2側壁部14との間隔または回転止め板保持部117a同士の間隔から、わずかに隙間を設けて設計される。以上より、本実施形態では、回転止め板154は、軸方向の移動およびY軸回りのわずかな回転が許容されて配置される。
【0123】
遊星歯車機構130に関して、ギヤケース139がフレーム110およびモータ本体20に対して固定されている場合、モータ本体20のモータシャフト29から出力される回転力は、第3キャリア36へと伝達される。本実施形態では、ギヤケース139は、フレーム110およびモータ本体20に対して完全には固定されない。ギヤケース139は、凹部151、凸部152、および斜面部153に対して、回転止め板154を介して、伸縮ばね155によりモータ本体20へと押し付けられ弾性的に固定される。
【0124】
第1のピニオンギヤ105Aから伝達される回転力は、第1の嵌合凹部138Aと第1の嵌合軸部137Aとを介して第1の第3キャリア36Aへと伝達される。第1の第3キャリア36Aが回転すると、第1の第3キャリア36Aの第1の第3サブシャフト36aAに支持された第1の第3遊星歯車35bAが第1の中心軸線J1の周りを公転回転する。第1の第3遊星歯車35bAの公転回転は、第1の内歯ギヤ39aAを介して第1のギヤケース139Aを第1の中心軸線J1の周りで回転させる回転力を生じる。
【0125】
図6は、駆動装置101の部分上面図である。なお、図5は、平常時の駆動装置101を示し、図6は、一方のピニオンギヤ(第1のピニオンギヤ105A)に、ラックギヤ3から過大な力が付与された上位の駆動装置101を示す。
【0126】
図6に示すように、第2のギヤケース139Bが第2の中心軸線J2の周りで回転するとき、回転止め板154の第2の突起154aBに対向する第2の凹部151Bは、第2の中心軸線J2の周りで周方向移動する。これにより、第2の突起154aBは、第2の斜面部153Bへと乗り上げる。回転止め板154は、例えば、第1のスライド部154cAと段差面13bとの接触を支点として、第1方向から斜めに傾けられる。したがって、フック154eが軸方向一方側(+Z側)へと変位するため、伸縮ばね155が軸方向一方側(+Z側)へと引張変形を受ける。伸縮ばね155の復元力と第2のギヤケース139Bを回転させる力とがつり合った状態において、第2の出力部36cBと第2のピニオンギヤ105Bとは、一体となって回転する。
【0127】
第2のピニオンギヤ105Bから第2の出力部36cBに伝達される回転力が過大であるとき、例えば、落下の衝撃等の場合においてラックギヤ3に過大な力が付与されたとき、前段と同様に回転止め板154の第2の突起154aBに対向する第2の凹部151Bは、第2の中心軸線J2の周りで周方向移動する。ここで、第2の突起154aBは、第2の斜面部153Bへと乗り上げた後、第2の凸部頂面152aBへと到達する。伸縮ばね155の復元力は、第2のギヤケース139Bを回転させる力を完全に相殺することができず、第2のギヤケース139Bは第2の中心軸線J2の周りで回転する。
【0128】
第2のギヤケース139Bの回転は、第2の突起154aBと、第2の凹部151B、第2の凸部152B、および第2の斜面部153Bと、の間の摩擦および引っ掛かり等の抵抗により徐々に減速された後、伸縮ばね155の復元力と第2のギヤケース139Bを回転させる力とがつり合った状態において、第2の出力部36cBと第2のピニオンギヤ105Bとは、一体となって回転する。
【0129】
本実施形態によれば、ギヤドモータ102は、遊星歯車機構130を有し、遊星歯車機構130は、モータ本体20の回転を伝達する太陽歯車32cと、遊星歯車機構130のギヤケース139と一体に回転可能な内歯ギヤ39aと、太陽歯車32cおよび内歯ギヤ39aに噛み合う遊星歯車35bと、遊星歯車35bを回転可能に支持し、かつ、ピニオンギヤ105と一体に回転可能な遊星キャリア36と、を有し、弾性機構150は、ギヤケース139の回転を弾性的に固定可能である。この構成においては、ラックギヤ3と第2のピニオンギヤ105Bとの間の駆動力が、ラックギヤ3と第1のピニオンギヤ105Aとの間の駆動力よりも大きい場合、弾性機構150が駆動力の差を吸収することで、第1のギヤドモータ102Aが空転する可能性を低減することができる。したがって、第2のギヤドモータ102Bのみが仕事をする可能性を低減でき、実装した2つのモータの駆動力の損失が小さく駆動力が高い駆動装置が得られる。さらに、モータ本体20がステッピングモータである場合において、ピニオンギヤ105へかかる負荷が過大となることに起因してステッピングモータに脱調が生じる可能性を低減できる。
【0130】
本明細書において、「弾性的に固定する」とは、弾性機構150が、入力に対してつり合うまでは回転を許容し、つり合いが取れたところでギヤケース139を回転しないように固定し、入力がなくなると、元の位相までギヤケース139を回転させ戻す、ことを意味する。「弾性的に固定する」とは、上述の「弾性的に緩衝する」と共通の概念を有しており、前者は入力によって回転するギヤケース139を固定するという視点による表現であり、後者は入力そのものを緩衝して伝達するという視点による表現である。本段落の「入力」は、モータ本体20に起因する回転力の流れに従う入力に限定されず、入力とは、例えば、ピニオンギヤ105からの入力を含む。
【0131】
また、本実施形態によれば、ギヤケース139は、周方向に繰り返し配置された凹部151および凸部152を有し、弾性機構150は、フレーム110に収容され、凹部151および凸部152に引っ掛かることが可能な少なくとも2つの突起154aを有する回転止め板154と、回転止め板154を介して凹部151および凸部152に弾性力を付与可能な伸縮ばね155と、を有し、凹部151および突起154aは、伸縮ばね155の弾性力をギヤケース139の回転方向逆方向への回転復元力へ変換可能な斜面部153をそれぞれ有する。この構成においては、一方のギヤドモータ102のみが仕事をしている場合、すなわち、一方のピニオンギヤ105からの回転に対する反力が大きい場合、一方のギヤケース139は他方のギヤケース139よりも多く回転する。これにより、一方の突起154aは他方の突起154aよりも多く斜面部153に乗り上げ、回転止め板154は、第1方向から斜めに傾けられた状態で伸縮ばね155の復元力を受ける。これにより、回転量の差を回転止め板154および伸縮ばね155によって吸収することで、2つのピニオンギヤ105からの回転に対する反力の差を低減できる。さらに、回転止め板154がギヤケース139を固定するため、モータ本体20からの回転をピニオンギヤ105へと伝達することができる。したがって、一方のギヤドモータ102のみが仕事をしている状態を緩和できる。
【0132】
さらに、ギヤケース139が凸部152を有することにより、突起154aが斜面部153へと乗り上げた後にもギヤケース139が回転する場合、突起154aは、凸部152へと到達する。すなわち、伸縮ばね155の引張変形量は、凹部底面151aと凸部頂面152aとの間の軸方向距離が最大値となるため、伸縮ばね155の復元力は、上限を有する。したがって、ピニオンギヤ105から伝達される回転力が過大であるとき、伸縮ばね155の復元力は、ギヤケース139を回転させる力を完全に相殺することができず、ギヤケース139は中心軸線Jの周りで回転する。この構成においては、落下の衝撃等の、ピニオンギヤ105からの過大な回転力が与えられたとき、ギヤケース139がフレーム110に対して空転することにより、ギヤドモータ102および弾性機構150の損傷リスクを低減できる。
【0133】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0134】
例えば、駆動装置は、第1および第2のギヤドモータに加えて、さらに第3のギヤドモータを備え、ラックギヤの動力をさらに高めてもよい。また、上述の実施形態では、モータ本体がステッピングモータである場合について説明した。しかしながら、上述の構成を有することで、モータ本体として他種のモータを採用した場合であっても駆動力を高める効果を得ることができる。
【0135】
また、第1実施形態において、遊星歯車機構30が記載されているが、これに限られない。遊星歯車機構30は、例えば、他の伝達機構であってもよく、さらに、駆動装置は伝達機構を有しなくてもよい。弾性機構50は、減速機構の出力部ではなくモータ本体20の出力部としてのモータシャフト29に配置されていてもよい。
【0136】
また、第2実施形態において、弾性機構150は、ギヤケース139に対して軸方向他方側(-Z側)に弾性力を負荷するが、この限りではない。例えば、弾性機構150は、ギヤケース139に対して径方向内側に弾性力を負荷してもよく、ギヤケース139の凹部151および凸部152は、径方向の凹凸を周方向に繰り返して配置されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1,101…駆動装置、2,102…ギヤドモータ、3…ラックギヤ、5,105…ピニオンギヤ、10,110…フレーム、130…遊星歯車機構、32c…太陽歯車(第3太陽歯車)、35b…遊星歯車(第3遊星歯車)、36…遊星キャリア(第3キャリア)、36c…出力部、37a…柱部、37b…駆動面、37f…第1対向面、38a…孔部、38b…支持面、38f…第2対向面、139…ギヤケース、39a…内歯ギヤ、50,150…弾性機構、51…板ばね部、151…凹部、152…凸部、153…斜面部、154…回転止め板、154a…突起、155…伸縮ばね、J…中心軸線、δ1,δ2…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6