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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112745
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】車速検出装置及び車速検出方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20220727BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008666
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚本 準
(72)【発明者】
【氏名】尾形 永
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 実
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】仁田原 知明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 翼
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 成彰
(72)【発明者】
【氏名】小柴 裕輝
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA01
5H125BA07
5H125EE08
5H125EE51
5H125EE52
5H125FF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】各車輪を電動モータで駆動する電動車両において、車速を正確に測定できる車速検出装置及び車速検出方法をを提供する。
【解決手段】電動車両1は、駆動輪3-1~3-4に対して回転力を与えることが可能な電動モータ8-1~8-4と、電動モータの回転を検出する回転角センサ20-1~20-4と、モータ制御部5-1~5-4と、を有する。モータ制御部5-1~5-4は、電動モータに対して印加する駆動電流を、電動車両の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間において停止し、この期間において回転角センサによって検出された検出結果に基づいて、電動車両の速度を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の駆動輪に対して回転力を与えることが可能な電動モータと、
前記電動モータの回転を検出する回転センサから検出結果を取得する取得部と、
前記電動モータに対して印加する駆動電流を、前記電動車両の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間において停止する駆動制御部と、
前記期間において前記回転センサによって検出された検出結果に基づいて、前記電動車両の速度を算出する車速算出部と、
を有する車速検出装置。
【請求項2】
前記駆動輪は複数であって前記電動モータが前記駆動輪のそれぞれに設けられ、
前記回転センサがそれぞれの電動モータに設けられており、
前記車速算出部は、前記期間において前記回転センサのそれぞれから得られる検出結果に基づいて、前記速度を算出する
請求項1に記載の車速検出装置。
【請求項3】
前記車速算出部は、前記回転センサからそれぞれ得られる検出結果に基づくそれぞれの車速の平均値を求めることで、車速を求める
請求項1に記載の車速検出装置。
【請求項4】
前記電動車両の前方において車幅方向の両側が前記駆動輪であって、前記電動車両の後方において車幅方向の両側が前記駆動輪であり、
前記電動モータは前記駆動輪のそれぞれに設けられており、
前記駆動制御部は、前記両側のうち少なくとも一方側において前方と後方の駆動輪が連続しないように前記停止する対象の電動モータへの駆動電流の印加を停止する
請求項1に記載の車速検出装置。
【請求項5】
前記電動モータは、スイッチトリラクタンスモータである請求項1に記載の車速検出装置。
【請求項6】
駆動輪に対して電動モータにより回転力を与えることが可能な電動車両の車速検出方法であって、
前記電動モータに対して印加する駆動電流を、前記電動車両の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間において停止する工程と、
前記電動モータの回転を検出する回転センサから検出結果を取得する工程と、
前記期間において前記回転センサによって検出された検出結果に基づいて、前記電動車両の速度を算出する工程と、
を含む車速検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速検出装置及び車速検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度は、一般的には、車輪の回転部分に歯車状のロータを設けてなる車輪速センサを設け、この車輪速センサからのパルスを検出して計測している。また、例えば特許文献1には、電動車両駆動システムにおいて、電動モータの回転数を検出して車速を計測することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-266950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、電動車両では、電動モータの回転数を検出して車速を計測することができる。ところが、駆動輪となる電動モータの車軸の回転数を検出して車速を検出すると、車輪と路面の摩擦力との関係によっては、車輪と路面との間に滑りが生じ、実際の速度とは異なる速度が検出される場合がある。
【0005】
つまり、雪道や泥道では車輪と接地面との摩擦力が不足するため、車輪を駆動すると、車輪の空転やスリップが生じる。また、高速でカーブを走行すると、内側の車輪が浮上する可能性がある。特に、電動車両では、4つの車輪をそれぞれ独立した電動モータで駆動するものが提案されている。この場合、4つの電動モータの回転数から各車輪毎に車速が計測できる。ところが、上述のように、車輪と路面の摩擦力との関係によっては、各車輪から求められる車速では、実際の車速と異なる場合がある。4つの車輪が駆動輪になっていると、各車輪毎に車輪と路面との摩擦力が異なり、各車輪毎の車速にバラツキが生じる場合がある。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明は、各車輪を電動モータで駆動する電動車両において、車速を測定する精度を向上することができる車速検出装置及び車速検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車速検出装置は、電動車両の駆動輪に対して回転力を与えることが可能な電動モータと、前記電動モータの回転を検出する回転センサから検出結果を取得する取得部と、前記電動モータに対して印加する駆動電流を、前記電動車両の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間において停止する駆動制御部と、前記期間において前記回転センサによって検出された検出結果に基づいて、前記電動車両の速度を算出する車速算出部と、を有する。
【0008】
本発明の一態様に係る車速検出方法は、駆動輪に対して電動モータにより回転力を与えることが可能な電動車両の車速検出方法であって、前記電動モータに対して印加する駆動電流を、前記電動車両の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間において停止する工程と、前記電動モータの回転を検出する回転センサから検出結果を取得する工程と、前記期間において前記回転センサによって検出された検出結果に基づいて、前記電動車両の速度を算出する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車輪をそれぞれ独立した電動モータで駆動する電動車両において、測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動車両の模式図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る電動車両において各車輪での車速を求める際のフローチャートである。
図3A】本発明の第1の実施の形態に係る電動車両の車速計測の説明図である。
図3B】本発明の第1の実施の形態に係る電動車両の車速計測の説明図である。
図3C】本発明の第1の実施の形態に係る電動車両の車速計測の説明図である。
図3D】本発明の第1の実施の形態に係る電動車両の車速計測の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動車両1の模式図である。なお、以下の説明では、電動車両1の進行方向に対して前方、後方を単に前方、後方と称する。進行方向に直交する電動車両1の車幅方向を単に車幅方向と称する。また、電動車両1が路面上を走行可能な状態に配置された状態での上下方向を単に上下方向と称する。
【0012】
図1に示すように、電動車両1は、車体2と、4つの車輪3-1~3-4と、各車輪3-1~3-4に個別に設けられた4つの駆動ユニット4-1~4-4と、各駆動ユニット4-1~4-4の駆動制御を行うモータ制御部5-1~5-4と、各駆動ユニット4-1~4-4に電力を供給するバッテリ6-1~6-4と、を備えている。
【0013】
各車輪3-1~3-4は、ホイールにタイヤ(いずれも図示しない)が装着される。各車輪3-1~3-4の車軸11-1~11-4には、駆動ユニット4-1~4-4が連結されている。車輪3-1~3-4のうち、車輪3-1及び3-2は、車体2の前方で、かつ車幅方向両側に配置された一組の前輪である。また、前輪となる車輪3-1及び3-2のホイールには、ステアリング10が連結されている。車輪3-3及び3-4は、車体2の後方で、かつ車幅方向両側に配置された一組の後輪である。
【0014】
駆動ユニット4-1~4-4は、電動モータ8-1~8-4と、電動モータ8-1~8-4による回転力を車軸11-1~11-4に伝達する伝達ギア9-1~9-4と、を備えている。
【0015】
電動モータ8-1~8-4は、いわゆるSRモータ(スイッチトリラクタンスモータ)である。SRモータは、ロータとステータとの両方に突極を設けたモータである。SRモータは、ステータに設けられている複数のステータ突極にそれぞれ巻線が巻回されており、この巻線に電流を供給することによりステータ突極を励磁する。そして、ステータ突極に生じた磁気的吸引力によって、ロータに設けられている複数のロータ突極を吸引して回転力を発生させる。
【0016】
電動モータ8-1~8-4には、回転角センサ20-1~20-4が設けられている。回転角センサ20-1~20-4は、ロータの回転角に応じた検出信号を出力する。電動モータ8-1~8-4のステータの各コイルの励磁は、回転角センサ20-1~20-4の検出信号に応じたタイミングで切り替えられる。また、回転角センサ20-1~20-4の検出信号から、電動モータ8-1~8-4の回転速度が検出できる。
【0017】
回転角センサ20-1~20-4としては、例えばレゾルバが用いられる。レゾルバは、2組のコイルを組み合わせた角度変位検出センサである。また、回転角センサ20-1~20-4としては、ホールセンサを用いても良い。
【0018】
伝達ギア9-1~9-4は、電動モータ8-1~8-4の回転を減速させて車軸11-1~11-4に伝達する。
【0019】
モータ制御部5-1~5-4は、三相ブリッジ回路を含んで構成されており、電動モータ8-1~8-4のうち自身が接続された電動モータに対して駆動電流を印加することで、電動モータ8-1~8-4を回転駆動する。三相ブリッジ回路は、直列に接続された2つの図示しないスイッチング素子からなる回路を高電位側と接地電位との間に並列に複数組(U相、V相、W相の3組)接続された回路である。各スイッチング素子は、例えばFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が用いられる。
【0020】
モータ制御部5-1~5-4とバッテリ6-1~6-4とは、それぞれ、スイッチ21-1~21-4を介して接続されている。スイッチ21-1~21-4は、モータ制御部5-1~5-4とバッテリ6-1~6-4とを接続、遮断する。
【0021】
バッテリ6-1~6-4は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛電池等のうちいずれかの二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタを用いることもできる。
【0022】
このように、第1の実施の形態に係る電動車両1は、前後、左右の4つの車輪3-1~3-4に対して、それぞれ、電動モータ8-1~8-4を含む駆動ユニット4-1~4-4が個別に設けられている。また、電動モータ8-1~8-4には回転角センサ20-1~20-4が設けられている。この回転角センサ20-1~20-4の検出信号から、電動モータ8-1~8-4の回転速度が検出できる。そして、電動モータ8-1~8-4の回転速度と、伝達ギア9-1~9-4の減速比と、車輪3-1~3-4の径とから、電動車両1の車速を求めることができる。
【0023】
ここで、回転角センサ20-1~20-4として、12ビットのレゾルバを用いたとすると、回転速度の分解能は以下のようになる。
【0024】
360度/4096=0.088度
【0025】
そして、伝達ギア9-1~9-4の減速比を1/13.5とすると、車軸11-1~11-4での回転速度の分解能は、以下のようになる。
【0026】
0.088度/13.5=0.0651度
【0027】
これに対して、車軸11-1~11-4の回転を48歯の車輪速センサで検出した場合の回転速度の分解能は、以下のようになる。
【0028】
360度/48=7.5度
【0029】
以上のように、回転角センサ20-1~20-4の検出信号を用いて車速を計測すると、車輪速センサを用いた場合に比べて、概算で1152倍(7.5度/0.065度=1152)の分解能の向上が図れる。また、回転角センサ20-1~20-4の検出信号を用いて車速を計測すると、車輪の回転部分に車輪速センサを設ける必要がなくなり、バネ下荷重を削減でき、車両の信頼性の向上が図れる。
【0030】
上述の第1の実施の形態に係る電動車両1は、電動モータ8-1~8-4の回転角を計測する回転角センサ20-1~20-4の検出信号を用いて、電動車両1の車速を算出することで、車速の検出精度の向上を図るようにしている。
【0031】
ところで、車輪3-1~3-4の中で駆動輪となる車輪では、特に、雪道や泥道の走行時や高速でのコーナー通過時等において、車輪と路面の摩擦力との関係によっては、車輪と路面との間に滑りが生じることがある。このため、電動モータ8-1~8-4を駆動状態(電動モータに駆動電流を印加した状態)にして回転角センサ20-1~20-4の検出信号を用いて車速を計測すると、車速の測定精度が低下してしまう場合がある。
【0032】
そこで、第1の実施の形態に係る電動車両1は、回転角センサ20-1~20-4の検出信号を用いて車速を計測する際に、電動モータ8-1~8-4に対する駆動電流を瞬時的に停止している。つまり、電動モータ8-1~8-4の駆動電流を停止すると、その電動モータ8-1~8-4に繋がれている車輪3-1~3-4は従動輪の状態となる。これにより、車輪と路面との間の滑りの影響を低減して、回転角センサ20-1~20-4の検出信号から、高い精度で正確に車速を求めることができる。
【0033】
なお、SRモータでは、通電していない状態でのコギングトルクが発生しない。このため、いずれかの電動モータ8-1~8-4の駆動電流を停止し、車輪3-1~3-4を従動輪とした場合には、この従動輪に余計な負荷がかかることはなく、車輪3-1~3-4は、フリーラン状態となる。電動モータとしてマグネットモータを用いる場合において、電動モータに駆動電流の印加を停止した場合には、瞬間的に、逆起電力が生じるため多少のブレーキがかかったような状態になるが、速度を算出することはできる。
【0034】
車速計測時に、電動モータ8-1~8-4への駆動電流を停止し、車輪3-1~3-4を従動輪とする期間は、電動車両1の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間とすることが好ましい。この期間は非常に短く、例えば1ms程度である。例えば、人によって認識されない程度の期間は、100ms~200ms程度以下であり、1ms程度の非常に短い期間では、電動車両1の搭乗者は、駆動輪への駆動電流の停止をすることで生じる電動車両1の挙動の変化を殆ど認識できない。
【0035】
また、第1の実施の形態に係る電動車両1では、4つの車輪3-1~3-4に対してそれぞれ電動モータ8-1~8-4が設けられており、各車輪3-1~3-4を独立して駆動できる。すなわち、スイッチ21-1~21-4を全てオンとしたときには、全ての電動モータ8-1~8-4に駆動電流を供給して、全ての車輪3-1~3-4が駆動輪となる。これに対して、例えば、スイッチ21-1をオフとし、他のスイッチ21-2~21-4をオンとしたときには、電動モータ8-1に対する駆動電流は停止し、他の電動モータ8-2~8-4には駆動電流は供給される。したがって、左前側の車輪3-1は従動輪となり、他の車輪3-2~3-4は駆動輪となる。同様に、スイッチ21-1~21-4を制御することで、各車輪3-1~3-4の駆動を制御できる。
【0036】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電動車両1において各車輪3(3-1~3-4)での車速を求める際のフローチャートである。
【0037】
(ステップS101)モータ制御部5(モータ制御部5-1~5-4のうちの何れか、以下同様)は、車速計測の処理を開始すると、電動車両1の挙動の変化が認識されない時間に応じた所定期間だけ、当該モータ制御部5(5-1~5-4)に対応する(接続された)モータ8(8-1~8-4)への駆動電流の供給を停止し、当該モータ制御部5(5-1~5-4)に対応する車輪3(3-1~3-4)を従動輪の状態とする。
【0038】
(ステップS102)モータ制御部5(5-1~5-4)は、当該モータ制御部5(5-1~5-4)に対応する回転角センサ20(20-1~20-4)の検出信号を取得する。
【0039】
(ステップS103)モータ制御部5(5-1~5-4)は、当該モータ制御部5(5-1~5-4)に対応する回転角センサ20(20-1~20-4)の検出信号から、車速を算出する。車速は、回転角センサ20(20-1~20-4)から得られる回転速度と、伝達ギア9(9-1~9-4)の減速比と、車輪3(3-1~3-4)の径とから算出することができる。
【0040】
(ステップS104)モータ制御部5(5-1~5-4)は、所定時間経過したか否かを判定し、所定時間経過したら、処理をステップS105に進める。
【0041】
(ステップS105)モータ制御部5(5-1~5-4)は、所定期間経過後、モータ8(8-1~8-4)への駆動電流の供給を再開し、当該モータ制御部5(5-1~5-4)に対応する車輪3(3-1~3-4)の駆動を再開する。
モータ制御部5は、このような車速計測の処理について、一定期間毎に繰り返して行うことができ、また、任意のタイミングで実行することもできる。また、モータ制御部5は、このような車速計測の処理を、電動車両1が直進している場合だけでなく、右折または左折をしている場合や、カーブを走行している場合であっても実行することができる。
【0042】
次に、車輪3-1~3-4の中でどの車輪をどのタイミングで従動輪の状態として車速を計測するかについて説明する。
【0043】
電動車両1が1つの電動モータで駆動されている場合には、1つの回転角センサの検出信号から車速が得られることになるので、構成は単純となる。ところが、本実施形態では、各車輪3-1~3-4は、それぞれ、電動モータ8-1~8-4により独立して駆動される。このため、複数の回転角センサ20-1~20-4の検出信号を監視する必要がある。このように、複数の車輪3-1~3-4があり、複数の車輪3-1~3-4を駆動する複数の電動モータ8-1~8-4がある場合、従動輪となる車輪のタイミングが異なるようにすることで、駆動電流の停止に伴って駆動力が瞬間的に低下する車輪の数を減らすことができ、駆動力の低下を抑制することができる。
【0044】
ただし、駆動輪が4輪であり、電動車両が直進している場合において、対角線上にある駆動輪(左前輪と右後輪、あるいは右前輪と左後輪)について、同じタイミングで駆動電流を停止して回転センサによって検出を行うようにした場合には、駆動輪として駆動している車輪が左右にそれぞれあるため、駆動力によって電動車両に与えられるモーメントが生じない。この場合には、複数の電動モータについて駆動電流の停止をして車速を求めることもできる。
【0045】
駆動電流の供給を停止する対象の電動モータは、例えば左側の前後が連続するようなパターンである場合には、電動車両の左側において駆動電力が供給されない期間が連続することになるため、右側の駆動力の方が左側に比べて相対的に強くなり、姿勢に影響が生じる可能性がある。反対の場合(右側前後の電動モータが連続して駆動電流の供給が停止する場合得)も同様である。そのため、左右のうち一方側において前後の駆動輪が連続しないような順序となるように駆動電流を停止する。これにより、電動車両の姿勢への影響を低減することができる。
【0046】
図3A図3B図3C図3Dは、第1の実施の形態に係る電動車両1の車速計測の説明図である。図3A図3B図3C図3Dにおいて、車輪3-1~3-4のうち近傍に矢印が付されている車輪は、駆動電流が供給されており、駆動輪となっている状態を示す。矢印が付されていない車輪は、駆動電流が停止されており、従属輪となっている状態を示す。この例では、所定時間が経過する毎(例えば0.2ms毎)に、左前側の車輪3-1、右後側の車輪3-4、左後側の車輪3-3、右前側の車輪3-2の順に、駆動電流を停止し、各車輪での車速を計測している。図3A図3B図3C図3Dにおいて、図1における一部の構成については図示を省略している。
【0047】
つまり、まず、図3Aに示す時点T1では、左前側の車輪3-1を駆動する電動モータ8-1に対する駆動電流が停止され、回転角センサ20-1の検出値を取得して、左前側の車輪3-1からの車速VfrLが求められる。次に、図3Bに示す時点T2では、右後側の車輪3-4を駆動する電動モータ8-4に対する駆動電流が停止され、回転角センサ20-4の検出値を取得して、右後側の車輪3-4からの車速VrrRが求められる。次に、図3Cに示す時点T3では、左後側の車輪3-3を駆動する電動モータ8-3に対する駆動電流が停止され、回転角センサ20-3の検出値を取得して、左後側の車輪3-3からの車速VrrLが求められる。次に、図3Dに示す時点T4では、右前側の車輪3-2を駆動する電動モータ8-2に対する駆動電流が停止され、回転角センサ20-2の検出値を取得して、右前側の車輪3-2からの車速VfrRが求められる。各車輪3-1~3-4での車速が回転角センサ20-1~20-4の検出信号により求められたら、電動車両1の車速Vは、例えば、各車輪3-1、3-4、3-3、3-2で検出された車速VfrL、VrrR、VrrL、VfrRの平均値から算出できる。
【0048】
V=(VfrL+VrrR+VrrL+VfrR)/4
【0049】
ここで、この例では、従動輪となる車輪が左右交互となる。また、左側では、従動輪となる車輪が前輪側(車輪3-1)、後輪側(車輪3-3)の順となり、右側では、従動輪となる車輪が後輪側(車輪3-4)、前輪側(車輪3-2)の順となる。これにより、電動車両の姿勢への影響を低減することができる。
【0050】
このように、本実施形態では、電動モータ8-1~8-4の回転角を検出する回転角センサ20-1~20-4の検出信号を用いて車速を計測しているため、回転速度の精度が向上される。このため、低速時においても高い精度で正確に速度検出をすることができる。
【0051】
また、本実施形態では、駆動輪として用いる車輪の回転に基づいて車速を検出する場合であっても、一時的に従動輪の状態にして車速を検出することで、測定精度を向上することができるため、駆動輪として用いる車輪であっても、車速を検出する対象とすることができる。言い換えると、従動輪としてのみ用いられる車輪に対して回転センサを設けなければならない、という制約をなくすことができる。
【0052】
なお、上述の例では、モータ制御部5-1~5-4が回転角センサ20-1~20-4の検出信号を取得し、電動モータ8-1~8-4の回転数と伝達ギア9-1~9-4の減速比と車輪3-1~3-4の径とから、各車輪での車速を算出している。すなわち、モータ制御部5-1~5-4が、電動モータ8-1~8-4の回転角を検出する回転角センサ20-1~20-4から検出結果を取得する取得部と、所定期間において回転角センサ20-1~20-4によって検出された検出結果に基づいて電動車両1の速度を算出する車速算出部を構成している。また、スイッチ21-1~21-4が電動モータ8-1~8-4に対して印加する駆動電流を、電動車両の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間において停止する駆動制御部となっている。
【0053】
回転角センサ20-1~20-4から検出結果を取得する取得部と、所定期間において回転角センサ20-1~20-4によって検出された検出結果に基づいて電動車両1の速度を算出する車速算出部とについては、モータ制御部5-1~5-4に設けられていてもよいし、電動車両1の全体動作を制御するECU(Electronic Control Unit)(図示せず)に設けられていてもよい。また、各車輪での車速はモータ制御部5-1~5-4で計測し、
各計測結果をECUに通信回線(有線または無線)を介して送信し、ECUが、各車輪での車速を平均化して電動車両1の車速を算出するようにしてもよい。また、モータ制御部5-1~5-4の中で特定のモータ制御部が、それ以外のモータ制御部において得られた計測結果を取得し、当該特定のモータ制御部が、得た各車輪の計測結果から平均値を求めることで電動車両1の車速を算出するようにしてもよい。
【0054】
勿論、電動モータ8-1~8-4の回転を検出する回転角センサ20-1~20-4から検出結果を取得する取得部と、電動モータ8-1~8-4に対して印加する駆動電流を、電動車両1の挙動の変化が認識されない時間に応じた期間において停止する駆動制御部と、この期間において回転角センサ20-1~20-4によって検出された検出結果に基づいて、電動車両1の速度を算出する車速算出部とを専用回路で実現しても良い。
【0055】
また、上述の例では、各車輪での回転速度の平均値を求めることで車速を求めるが、平均値ではなく車輪速の中央値を用いるようにしても良い。また、複数の回転センサのそれぞれから得られた車輪速のうち、いずれか1つが突出して異なる値である場合には、そのような値を除外して残りの車輪速から車速を求めるようにしてもよい。
【0056】
また、上述の例では、4つの車輪をそれぞれ独立した電動モータで駆動する際の車速を計測しているが、1つのモータで前輪又は後輪を駆動する車両や、2つのモータで前輪と後輪とを駆動する車両の場合にも適用できる。
【0057】
また、上述のような回転角センサ20-1~20-4の検出信号を用いた車速の計測と、車輪速センサやGNSS(Global Navigation Satellite System)等による車速計測とを組み合わせても良い。
【0058】
上述した実施形態における取得部、車速算出部、車速算出部、駆動制御部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0059】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…電動車両、3,3-1~3-4…車輪、4,4-1~4-4…駆動ユニット、5,5-1~5-4…モータ制御、6,6-1~6-4…バッテリ、8,8-1~8-4…電動モータ、9,9-1~9-4…伝達ギア、11,11-1~11-4…車軸,20,20-1~20-4…回転角センサ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D