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特開2022-112753アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、硬化物、及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112753
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、硬化物、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/16 20060101AFI20220727BHJP
   C08F 20/04 20060101ALI20220727BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20220727BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220727BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220727BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C08G59/16
C08F20/04
C08F8/00
G03F7/027 511
G03F7/038
G03F7/038 501
G02F1/1339 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008677
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】堂前 翔悟
【テーマコード(参考)】
2H189
2H225
4J036
4J100
【Fターム(参考)】
2H189DA06
2H189EA04X
2H189EA06X
2H189FA16
2H189HA12
2H225AC31
2H225AC36
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC52
2H225AC72
2H225AC74
2H225AD06
2H225AD07
2H225AN33P
2H225AN39P
2H225BA05P
2H225BA32P
2H225CA16
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J036AK11
4J036CD03
4J036CD06
4J036DB05
4J036DB06
4J036DB25
4J036HA01
4J036JA09
4J100AL08P
4J100AL10P
4J100CA31
4J100FA05
4J100FA19
4J100HC28
4J100JA32
4J100JA37
4J100JA38
4J100JA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能であり、かつ現像密着性に優れる硬化膜を形成可能なアルカリ可溶性樹脂、及び前記アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(1)で表され、かつカルボキシ基を有するものである。

(式中、Xは炭素数1~30の有機基であり、n個のRは、それぞれ独立に水素、下記一般式(2)で表される有機基A、又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び下記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を有する有機基Bであり、n個のRのうち少なくとも1つは前記有機基Bであり、nは1以上の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、かつカルボキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂。
【化1】
(式中、Xは炭素数1~30の有機基であり、n個のRは、それぞれ独立に水素、下記一般式(2)で表される有機基A、又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び下記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を有する有機基Bであり、n個のRのうち少なくとも1つは前記有機基Bであり、nは1以上の整数である。)
【化2】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよい。)
【化3】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【化4】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【化5】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【請求項2】
前記nは1以上5以下の整数である請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項3】
前記R、前記R、前記R、及び前記Rは、それぞれ独立に(メタ)アクリロイルオキシ基を含む有機基である請求項1又は2に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項4】
前記X、前記X、前記X、及び前記Xは、それぞれ独立に脂環式飽和炭化水素基、脂環式不飽和炭化水素基、又は芳香族炭化水素基である請求項1~3のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性樹脂は、1分子中に前記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、前記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び前記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を合計で3~300個含有する請求項1~4のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20~120mgKOH/gである請求項1~5のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂は、二重結合当量が200~5000である請求項1~6のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項8】
前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が1500~100000である請求項1~7のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項9】
少なくとも請求項1~8のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の感光性樹脂組成物から得られる硬化物。
【請求項11】
前記硬化物は、フォトスペーサー、隔壁材、レンズ材、層間絶縁膜材、保護膜材、光導波路材、又は平坦化膜材である請求項10に記載の硬化物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の硬化物を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、硬化物、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子においては、カラーフィルタ側基板と薄膜トランジスタ(TFT)側基板の間に挟持される液晶層の厚みを保持するために、フォトスペーサーが用いられている。
【0003】
フォトスペーサーは、一般に感光性樹脂組成物を基板に塗布し、乾燥した後に所定の微細パターンを有するフォトマスクを通した光で露光し、現像することにより形成される。
【0004】
近年、液晶表示装置などの画像表示装置の高機能化(例えば、3D立体視化、視野角拡大化など)に伴い、フォトスペーサーの厚膜化(10μm以上)が求められている。
【0005】
また、有機EL等の画像表示装置においては、表示領域内の着色パターンの間隔部又は表示領域周辺部分の縁等に隔壁材が用いられている。隔壁材は、一般的に感光性樹脂組成物を用いるフォトリソグラフィーによって形成されるが、遮光性などの表示特性向上のために、パターンの厚膜化が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1には、膜厚10μm以上の厚膜加工を行っても現像密着性および解像度に優れ、形状が良好な微細フォトスペーサーを形成することができるネガ型感光性樹脂組成物を提供することを目的として、
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光ラジカル重合開始剤および(C)光重合性モノマーを含有し、前記(C)光重合性モノマーが、(C-1)イソシアヌル酸骨格を有する光重合性モノマーおよび(C-2)フルオレン骨格を有する光重合性モノマーを含有するネガ型感光性樹脂組成物が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)及び光カチオン重合開始剤(C)を含有してなる感光性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂(A)が、特定の構造を有するエポキシ樹脂を含むネガ型感光性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-124929号公報
【特許文献2】国際公開第2012/176750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1又は2では、前記感光性樹脂組成物を用いて厚膜パターンを形成するために、アルカリ現像液の中でも現像速度の速いTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液を使用している。しかし、半導体やLCD等の既存のラインでは、水酸化カリウムや炭酸ナトリウムなどの比較的現像速度が遅い希アルカリ現像液を使用している場合も多い。特許文献1又は2の感光性樹脂組成物を用いて厚膜パターンを形成する際に、希アルカリ現像液を使用すると現像時間が長くなって生産性が低下するおそれがあり、また、現像密着性についても改善の余地があった。
【0010】
本発明は、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能であり、かつ現像密着性に優れる硬化膜を形成可能なアルカリ可溶性樹脂、及び前記アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また本発明は、前記感光性樹脂組成物から得られる硬化物、及び前記硬化物を含む画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記のアルカリ可溶性樹脂、及び当該アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、下記一般式(1)で表され、かつカルボキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂、に関する。
【化1】
(式中、Xは炭素数1~30の有機基であり、n個のRは、それぞれ独立に水素、下記一般式(2)で表される有機基A、又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び下記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を有する有機基Bであり、n個のRのうち少なくとも1つは前記有機基Bであり、nは1以上の整数である。)
【化2】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよい。)
【化3】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【化4】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【化5】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【0013】
前記一般式(1)において、前記nは1以上5以下の整数であることが好ましい。
【0014】
前記一般式(2)~(5)において、前記R、前記R、前記R、及び前記Rは、それぞれ独立に(メタ)アクリロイルオキシ基を含む有機基であることが好ましい。
【0015】
前記一般式(1)、(3)~(5)において、前記X、前記X、前記X、及び前記Xは、それぞれ独立に脂環式飽和炭化水素基、脂環式不飽和炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
前記アルカリ可溶性樹脂は、1分子中に前記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、前記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び前記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を合計で3~300個含有することが好ましい。
【0017】
前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20~120mgKOH/gであることが好ましい。
【0018】
前記アルカリ可溶性樹脂は、二重結合当量が200~5000であることが好ましい。
【0019】
前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が1500~100000であることが好ましい。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも前記アルカリ可溶性樹脂、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有する。
【0021】
本発明の硬化物は、前記感光性樹脂組成物から得られるものである。
【0022】
前記硬化物は、フォトスペーサー、隔壁材、レンズ材、層間絶縁膜材、保護膜材、光導波路材、又は平坦化膜材であることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、前記硬化物を含む画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、一分子内に多数の分岐点を有する樹枝状高分子(ハイパーブランチポリマー)であり、前記一般式(1)で表され、かつカルボキシ基を有している。本発明のアルカリ可溶性樹脂は、この特徴ある構造によって、厚膜化した場合でも現像密着性に優れる硬化膜を得ることができる。また、本発明のアルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物は、厚膜パターンの形成時において、希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像できるため、フォトスペーサー等の硬化物の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(1)で表され、かつカルボキシ基を有する。
【化6】
(式中、Xは炭素数1~30の有機基であり、n個のRは、それぞれ独立に水素、下記一般式(2)で表される有機基A、又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び下記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を有する有機基Bであり、n個のRのうち少なくとも1つは前記有機基Bであり、nは1以上の整数である。)
【化7】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよい。)
【化8】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【化9】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【化10】
(式中、Rは炭素数15以下の有機基であり、β位の炭素原子と結合して環を形成していてもよく、Xは炭素数1~30の有機基である。)
【0026】
本発明において(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル又はメタクリロイルを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートをそれぞれ意味する。また、上記X~X、及びR~Rの炭素数は、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含む。さらに、本発明のアルカリ可溶性樹脂は、その構造中に少なくとも1つのカルボキシ基を有する。具体的には、一般式(1)においてnが1の場合には、Rは有機基Bのみであるので、有機基Bが1以上のカルボキシ基を有する態様が挙げられる。また、一般式(1)においてnが2以上の場合には、少なくとも1つのRが水素である態様、少なくとも1つの有機基Aがカルボキシ基を有する態様、少なくとも1つの有機基Bがカルボキシ基を有する態様、及びこれらの態様を組み合わせた態様が挙げられる。
【0027】
前記一般式(1)において、前記Xは炭素数1~30の有機基であり、好ましくは炭素数4~25の有機基であり、より好ましくは炭素数6~12の有機基である。前記有機基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、脂環式飽和又は不飽和炭化水素基(橋かけ環、縮合環を含む)、芳香族炭化水素基(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、アントラセン環、及びフェナントレン環など)、前記炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子など)で置換された有機基、及びこれらの2種以上が結合した有機基などが挙げられる。また、前記炭化水素基又は前記有機基は、種々の置換基(例えば、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、及びシリル基など)や官能基(例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、及びシロキサン結合など)を有していてもよい。前記Xは、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、脂環式飽和炭化水素基、脂環式不飽和炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。
【0028】
前記一般式(1)において、n個のRは、それぞれ独立に水素、下記一般式(2)で表される有機基A、又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び下記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を有する有機基Bである。
【0029】
前記一般式(2)で表される有機基A、前記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、前記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び前記一般式(5)で表される繰り返し構造単位において、前記R、前記R、前記R、及び前記Rは、それぞれ独立に炭素数15以下の有機基であり、好ましくは炭素数2~12の有機基であり、より好ましくは炭素数4~10の有機基である。前記R、前記R、前記R、及び前記Rは、それぞれβ位の炭素原子と結合して環を形成していてもよい。前記有機基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、脂環式飽和又は不飽和炭化水素基(橋かけ環、縮合環を含む)、芳香族炭化水素基(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、アントラセン環、及びフェナントレン環など)、前記炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子など)で置換された有機基、及びこれらの2種以上が結合した有機基などが挙げられる。また、前記炭化水素基又は前記有機基は、種々の置換基(例えば、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、及びシリル基など)や官能基(例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、及びシロキサン結合など)を有していてもよい。前記R、前記R、前記R、及び前記Rは、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、それぞれ独立に(メタ)アクリロイルオキシ基を含む有機基であることが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であり、さらに好ましくは(メタ)アクリロイルオキシメチル基である。
【0030】
前記一般式(2)で表される有機基Aとしては、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、下記のいずれかの有機基であることが好ましい。
【化11】
【0031】
前記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、前記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び前記一般式(5)で表される繰り返し構造単位において、前記X、前記X、及び前記Xは、それぞれ独立に炭素数1~30の有機基であり、好ましくは炭素数4~25の有機基であり、より好ましくは炭素数6~12の有機基である。前記有機基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、脂環式飽和又は不飽和炭化水素基(橋かけ環、縮合環を含む)、芳香族炭化水素基(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、アントラセン環、及びフェナントレン環など)、前記炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子など)で置換された有機基、及びこれらの2種以上が結合した有機基などが挙げられる。また、前記炭化水素基又は前記有機基は、種々の置換基(例えば、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、及びシリル基など)や官能基(例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、及びシロキサン結合など)を有していてもよい。前記X、前記X、及び前記Xは、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、それぞれ独立に脂環式飽和炭化水素基、脂環式不飽和炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。
【0032】
前記一般式(1)において、前記nは1以上の整数であり、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、好ましくは1以上5以下の整数であり、より好ましくは2以上5以下の整数であり、さらに好ましくは3以上5以下の整数である。
【0033】
前記一般式(1)において、n個のRのうち少なくとも1つは前記有機基Bであり、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、n個のRのうち、好ましくは2個以上のRが前記有機基Bであり、より好ましくは3個以上のRが前記有機基Bである。
【0034】
前記アルカリ可溶性樹脂は、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、1分子中に前記一般式(3)で表される繰り返し構造単位、前記一般式(4)で表される繰り返し構造単位、及び前記一般式(5)で表される繰り返し構造単位からなる群より選択される1種以上の繰り返し構造単位を合計で3~300個含有することが好ましく、より好ましくは合計で3~150個であり、さらに好ましくは合計で3~100個である。繰り返し構造単位の数は、用いる原材料の量(比率)や反応条件により調整することができる。また、繰り返し構造単位の数は、アルカリ可溶性樹脂の製造の際に用いた原料の分子量、予想されるアルカリ可溶性樹脂の構造、及びアルカリ可溶性樹脂の分子量を用いて決定することができる。具体的な繰り返し構造単位の数の決定方法は、後述の実施例において記載する。
【0035】
前記有機基Bが有する末端官能基は特に制限されず、例えば、末端にカルボキシ基を有する有機基、及び末端に(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和基を有する有機基が挙げられ、好ましくは末端にカルボキシ基を有する有機基である。
【0036】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有化合物と、カルボン酸無水物及び/又はカルボキシ基を1つ以上有するカルボン酸無水物とを含むモノマー組成物を重合する方法(1)、エポキシ基含有(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有化合物と、カルボン酸無水物及び/又はカルボキシ基を1つ以上有するカルボン酸無水物と、カルボキシ基を1つ以上有するカルボキシ基含有化合物とを含むモノマー組成物を重合する方法(2)、あるいは前記方法(1)又は方法(2)で得られたポリマーに、さらにカルボン酸無水物及び/又はカルボキシ基を1つ以上有するカルボン酸無水物を反応させる方法(3)などにより合成することができる。
【0037】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、1500~100000であることが好ましく、より好ましくは1500~50000である。前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算による値であり、JIS 7252-4に準拠して測定した値である。後述の実施例において記載された重量平均分子量も、本項の記載に従って求めた値である。
【0038】
前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は特に制限されないが、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にする観点から、20~120mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは30~90mgKOH/gである。
【0039】
前記アルカリ可溶性樹脂の二重結合当量は特に制限されないが、現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、200~5000であることが好ましく、より好ましくは200~2000である。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも本発明のアルカリ可溶性樹脂、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有する。
【0041】
前記感光性樹脂組成物は、本発明のアルカリ可溶性樹脂以外の公知のアルカリ可溶性樹脂Xを含んでいてもよい。前記感光性樹脂組成物が本発明のアルカリ可溶性樹脂と、アルカリ可溶性樹脂Xとを含む場合、本発明のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、アルカリ可溶性樹脂全体に対して70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0042】
前記感光性樹脂組成物中の全固形分の含有量に対する本発明のアルカリ可溶性樹脂の含有割合は特に制限されないが、厚膜パターンの形成時において希アルカリ現像液を使用した場合でも短時間で現像可能にし、かつ現像密着性に優れる硬化膜を得る観点から、通常30~90質量%程度であり、好ましくは35~85質量%であり、より好ましくは40~80質量%である。
【0043】
前記重合性モノマーは特に制限されず、例えば、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びN-ビニルピロリドン等の単官能モノマーや、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、及びジアリルベンゼンホスホネート等の多官能芳香族ビニル系モノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。これら重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記重合性モノマーの含有量は特に制限されないが、本発明の効果を十分に得る観点から、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して10~200質量部であることが好ましく、より好ましくは20~150質量部であり、さらに好ましくは40~120質量部である。
【0045】
前記光重合開始剤は特に制限されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オンや2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。これら光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記光重合開始剤の含有量は特に制限されないが、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.3~5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.4~4.0質量部であり、さらに好ましくは0.5~3.0質量部である。
【0047】
前記感光性樹脂組成物には、光重合開始助剤を添加してもよい。光重合開始助剤としては、例えば、1,3,5-トリス(3-メルカプトプロピオニルオキシエチル)-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-イソシアヌレート(昭和電工社製、カレンズMT(登録商標)NR1)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)等の3官能チオール化合物;ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工社製、カレンズMT(登録商標)PEI)等の4官能チオール化合物;ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-プロピオネート)等の6官能チオール化合物等の多官能チオールが挙げられる。これら光重合開始助剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記感光性樹脂組成物には、熱重合開始剤を添加してもよい。熱重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物等が挙げられる。これら熱重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記感光性樹脂組成物には、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等のラジカル重合性オリゴマー;エポキシ樹脂等の硬化性樹脂を添加してもよい。
【0050】
前記感光性樹脂組成物は、溶媒を含有してもよい。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、溶媒の含有量は、当該組成物を使用する際の最適粘度に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
前記感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、染料、顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤、及び分散剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0052】
本発明の硬化物は、前記感光性樹脂組成物を硬化することにより得られる。前記硬化物の製造方法としては、例えば、前記感光性樹脂組成物を成型金型(樹脂金型)へ注入したり、あるいは前記感光性樹脂組成物を基材(基板)や各種機能層上へコーティングして所望の形状にした後に、光(例えば、紫外線)を照射して前記感光性樹脂組成物を硬化する方法が挙げられる。硬化の条件は、使用する前記感光性樹脂組成物に応じて適宜調整する。
【0053】
前記硬化物は、フォトスペーサー、隔壁材、レンズ材、層間絶縁膜材、保護膜材、光導波路材、又は平坦化膜材として好適に用いられ、特にフォトスペーサー又は隔壁材として好適に用いられる。
【0054】
フォトスペーサー又は隔壁材の形成方法は特に制限されず、例えば、前記感光性樹脂組成物をガラス又は透明プラスチックフィルム等の基板に塗布し、乾燥して塗膜を形成し、次いで、フォトリソグラフィーにより形成することができる。フォトリソグラフィーにおいては、例えば、塗膜上にフォトマスクを配置し、紫外線を照射することにより塗膜を光硬化させ、紫外線照射後の塗膜にアルカリ水溶液を散布し、未露光部を溶解、除去して残った露光部を水洗して現像することにより、フォトスペーサー又は隔壁材を形成する。その後、ポストベークを行ってもよい。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、膜厚が10μm以上、20μm以上、30μm以上、さらには50μm以上のフォトスペーサー又は隔壁材を、高い現像密着性で、さらには高解像度で製造することができる。また、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、アスペクト比が4.0以上のフォトスペーサー又は隔壁材を製造することができる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、希アルカリ現像液(例えば、pH11以下の現像液)を用いた場合でも短時間で現像できるため、フォトスペーサー及び隔壁材等を生産性よく製造することができる。
【実施例0056】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0057】
実施例1
[アルカリ可溶性樹脂1の合成]
下記の製造方法により、前記一般式(1)において、Xは下記式(6)で表される有機基であり、nは3であり、3個のRは、それぞれ独立に水素、下記式(2a)で表される有機基A、又は下記式(3a)及び式(3b)で表される繰り返し構造単位の少なくとも1種、及び/又は下記式(4a)、式(4b)、式(4c)、及び式(4d)で表される繰り返し構造単位の少なくとも1種を有し、かつ末端に水素及び/又は下記式(7)で表される官能基を有する有機基Bであり、3個のRのうち少なくとも1つは前記有機基Bである、アルカリ可溶性樹脂1を合成した。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、及び窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、メタクリル酸グリシジル(GMA)60.0g、トリメリット酸無水物45.0g、トリメリット酸3.6g、テトラブチルアンモニウムクロライド2.7g、ハイドロキノン0.1g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート101.0gを入れ、窒素雰囲気下、100℃で5時間反応させて、アルカリ可溶性樹脂1を含む溶液を得た。GPCにて重量平均分子量を測定した結果、アルカリ可溶性樹脂1の重量平均分子量(Mw)は5,700であった。なお、分子量測定は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(東ソー社製、品番:HLC-8120、カラム:G-5000HXLおよびG-3000HXLの2連結、検出器:RI、移動相:テトラヒドロフラン)にて行った。以下でも同様の方法で重量平均分子量を測定した。また、アルカリ可溶性樹脂1の酸価は57mgKOH/gであり、二重結合当量は260であった。
また、得られた重量平均分子量により、アルカリ可溶性樹脂1分子中に含まれる前記式(3a)又は式(3b)で表される繰り返し構造単位、及び前記式(4a)、式(4b)、式(4c)、又は式(4d)で表される繰り返し構造単位の合計数を計算した。
アルカリ可溶性樹脂1は、ハイパーブランチポリマーの集合体である。このハイパーブランチポリマーは、核となる部分がトリメリット酸由来であり、枝となる部分は、トリメット酸無水物とメタクリル酸グリシジルが交互に反応した構造を有する。枝部分は、前記式(3a)及び式(3b)で表される繰り返し構造単位、及び前記式(4a)、式(4b)、式(4c)、及び式(4d)で表される繰り返し構造単位を含みうる。
前記トリメット酸の分子量が210.14g/mol、トリメット酸無水物の分子量が192.13g/mol、メタクリル酸グリシジルの分子量が142.15g/molであるため、用いた原料すべてが反応したとすると、
(核部分の分子量+枝部分の分子量)=1つのハイパーブランチポリマーの分子量
となる。ハイパーブランチポリマーの分子量を前記重量平均分子量とすると、枝部分の分子量は、重量平均分子量5,700から核部分の分子量(すなわち、トリメリット酸の分子量)の210.14を引いた5489.86となる。そして、1つのハイパーブランチポリマーには、GMA由来の構造がX個、トリメリット酸無水物由来の構造がY個含まれているとすると、
X個×142.15g/mol+Y個×192.13g/mol=5489.86
かつ、用いたGMAとトリメット酸無水物のモル比から、
X:Y=100:55.5
が成り立つので、これらを解くと、X=22、Y=12.21となる。
以上より、前記分子量が平均値であること、一つの繰り返し構造単位には必ず1つのトリメット酸無水物由来の構造が存在することから、ハイパーブランチポリマーの繰り返し構造単位の平均数は、12.21個とし、これをアルカリ可溶性樹脂1の繰り返し構造単位の合計数とする。
【0058】
[感光性樹脂組成物1の調製]
アルカリ可溶性樹脂1を100質量部含む溶液、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)60質量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、Irgacure OXE01)1.0質量部、光重合開始剤(LAMBSON社製、SPEEDCURE TPO)1.6質量部、密着付与剤(信越化学工業社製、KBM-403)1.6質量部、及び界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製、FZ-2122)0.2質量部を混合して、組成物中の固形分が45質量%である感光性樹脂組成物1を調製した。
【0059】
実施例2
[アルカリ可溶性樹脂2の合成]
下記の製造方法により、前記一般式(1)において、Xは前記式(6)で表される有機基であり、nは3であり、3個のRは、それぞれ独立に水素、前記式(2a)で表される有機基A、又は前記式(3a)及び式(3b)で表される繰り返し構造単位の少なくとも1種、及び/又は前記式(4a)、式(4b)、式(4c)、及び式(4d)で表される繰り返し構造単位の少なくとも1種、及び下記式(8)で表される繰り返し構造単位を有し、かつ末端に水素及び/又は前記式(7)で表される官能基を有する有機基Bであり、3個のRのうち少なくとも1つは前記有機基Bである、アルカリ可溶性樹脂2を合成した。
【化17】
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、及び窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、メタクリル酸グリシジル60.0g、トリメリット酸無水物34.7g、トリメリット酸3.6g、テトラブチルアンモニウムクロライド2.7g、ハイドロキノン0.1g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート101.0gを入れ、窒素雰囲気下、100℃で5時間反応させた。得られた溶液に、更に無水コハク酸10.6g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.6gを入れ、窒素雰囲気下、70℃で6時間反応させて、アルカリ可溶性樹脂2含む溶液を得た。GPCにて重量平均分子量を測定した結果、アルカリ可溶性樹脂2の重量平均分子量(Mw)は5,300であった。また、アルカリ可溶性樹脂2の酸価は59mgKOH/gであり、二重結合当量は260であった。また、実施例1と同様の方法でアルカリ可溶性樹脂2の繰り返し構造単位の合計数を計算したところ、13.56個であった。
【0060】
[感光性樹脂組成物2の調製]
アルカリ可溶性樹脂1を100質量部含む溶液の代わりに、アルカリ可溶性樹脂2を100質量部含む溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物2を調製した。
【0061】
比較例1
[アルカリ可溶性樹脂3の合成]
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、及び窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、メタクリル酸25.0g、メタクリル酸ベンジル62.5g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート131.3gを入れたのち、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)5.6gを添加し、窒素雰囲気下、80℃で8時間反応させた。得られた溶液に、更にメタクリル酸グリシジル18.4g、ハイドロキノン0.2g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.5gを添加し、100℃で19時間反応させて、アルカリ可溶性樹脂3を含む溶液を得た。GPCにて重量平均分子量を測定した結果、アルカリ可溶性樹脂3の重量平均分子量(Mw)は9,800であった。また、アルカリ可溶性樹脂3の酸価は80mgKOH/gであり、二重結合当量は820であった。
【0062】
[感光性樹脂組成物3の調製]
アルカリ可溶性樹脂1を100質量部含む溶液の代わりに、アルカリ可溶性樹脂3を100質量部含む溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物3を調製した。
【0063】
比較例2
[アルカリ可溶性樹脂4の合成]
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、及び窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、メタクリル酸25.0g、メタクリル酸シクロヘキシル59.71g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート127.1gを入れたのち、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)5.6gを添加し、窒素雰囲気下、80℃で8時間反応させた。得られた溶液に、更にメタクリル酸グリシジル18.4g、ハイドロキノン0.2g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.5gを添加し、100℃で19時間反応させて、アルカリ可溶性樹脂4を含む溶液を得た。GPCにて重量平均分子量を測定した結果、アルカリ可溶性樹脂4の重量平均分子量(Mw)は9,900であった。また、アルカリ可溶性樹脂4の酸価は82mgKOH/gであり、二重結合当量は800であった。
【0064】
[感光性樹脂組成物4の調製]
アルカリ可溶性樹脂1を100質量部含む溶液の代わりに、アルカリ可溶性樹脂4を100質量部含む溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物4を調製した。
【0065】
[現像性の評価]
10cm×10cm四方の各ガラス基板上に、スピンコーターを用いて感光性樹脂組成物1~4をそれぞれ塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃のホットプレート上で2分間加熱して溶剤を完全に除去した。その後、得られた塗膜に対して、0.3%NaCO水溶液を用いてアルカリ現像を行い、塗膜が溶解除去される時間を最小現像時間として現像性の評価を行った。この値が小さいほど現像性に優れる。
【0066】
[フォトスペーサーの作製]
10cm×10cm四方の各ガラス基板上に、スピンコーターを用いて感光性樹脂組成物1~4をそれぞれ塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃のホットプレート上で2分間加熱して溶剤を完全に除去した。その後、得られた塗膜に対して、1cmあたり100個、直径4~20μmまで1μm刻みで開口部を有するフォトスペーサー形成用マスクを通して、超高圧水銀灯の光を100mJ/cm照射した(i線換算で照度21mW/cm)。なお、マスクと基板との間隔(露光ギャップ)は100μmにて露光を行った。その後、0.3%NaCO水溶液を用いてアルカリ現像を行った。現像時間は前述の方法で測定した最小現像時間の1.5倍とした。その後、水洗し、230℃で30分間ポストベークを行い、フォトスペーサーを形成した。
【0067】
[現像密着性の評価]
前述の方法で形成したフォトスペーサーのうち、現像で除去されることなく形成されている最小のパターンの線幅を現像密着性として評価を行った。この値が小さいほど現像密着性に優れる。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から、パターン高さが30μm程度である厚膜パターンの形成において希アルカリ現像液を使用した場合、ハイパーブランチポリマーを含む実施例1及び2の感光性樹脂組成物1及び2は、ハイパーブランチポリマーを含まない比較例1及び2の感光性樹脂組成物3及び4に比べて短時間で現像できており、かつ現像密着性に優れる硬化膜を形成できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のアルカリ可溶性樹脂、及び当該アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物は、フォトスペーサー、隔壁材、レンズ材、層間絶縁膜材、保護膜材、光導波路材、又は平坦化膜材の原料として好適に用いられる。