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特開2022-112756合成繊維用処理剤、及び合成繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112756
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤、及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/224 20060101AFI20220727BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20220727BHJP
D06M 13/328 20060101ALI20220727BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/17
D06M13/328
D06M15/53
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008680
(22)【出願日】2021-01-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
(72)【発明者】
【氏名】本郷 勇治
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA21
4L033BA46
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】熱ローラーへのタールの蓄積を抑制するとともに、合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させる。
【解決手段】合成繊維用処理剤は、下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する。
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
【請求項2】
前記平滑剤(A)が、更に下記のエステル化合物(A2)を含むものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
【請求項3】
処理剤中のエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有割合の合計が20~70質量%である請求項2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものである請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
【請求項5】
前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を20~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、ジオール(D)を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、前記イオン性界面活性剤(C)、及び前記ジオール(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を10~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部、及び前記ジオール(D)を0.01~5質量部の割合で含有する請求項6に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成繊維は、製糸工程を経ることにより製造される。製糸工程には、例えば原料樹脂を熱で溶融して紡糸する紡糸工程と、紡糸工程を経た繊維を延伸する延伸工程とが含まれる。製糸工程において、繊維に毛羽や断糸が生じる場合があり、これらを抑制するために、繊維に対して合成繊維用処理剤を付着させることがある。
【0003】
製糸工程を経て得られた合成繊維は、産業資材として多く利用されている。産業資材としては、例えばタイヤ類、ベルト類、ホース類等のゴム製品の補強材が挙げられる。補強材は、合成繊維に接着剤を付着させて補強用コードとして用いられる。補強用コードには、ゴム製品の耐久性を向上させるために、ゴムに対する十分な接着性を有することが要求される。
【0004】
特許文献1には、産業資材用の合成繊維に用いられる合成繊維用処理剤について、芳香族エステル化合物、有機カルボン酸のアルカリ金属塩、及び酸化防止剤を含有することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、産業資材用の合成繊維に用いられる合成繊維用処理剤について、一価アルコールと多価カルボン酸とのエステル化合物を含む平滑剤を含有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-292961号公報
【特許文献2】特開2020-2498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、産業資材用の合成繊維の製糸工程では、近年、高速化とともに高倍率延伸が行われるようになってきており、繊維に対してより高温での熱処理が行われるようになってきている。例えば、熱ローラーを用いた延伸工程において、合成繊維処理剤に起因したタールが熱ローラー上に付着する虞があった。熱ローラー上のタールの付着具合によって、繊維への熱伝導が異なり、繊維物性にも影響を与える虞があった。また、合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性のさらなる性能向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有することを要旨とする。
【0009】
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
上記合成繊維用処理剤は、前記平滑剤(A)が、更に下記のエステル化合物(A2)を含むものであることが好ましい。
【0010】
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
上記合成繊維用処理剤は、処理剤中のエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有割合の合計が20~70質量%であることが好ましい。
【0011】
上記合成繊維用処理剤は、前記ノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものであることが好ましい。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
【0012】
上記合成繊維用処理剤は、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を20~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0013】
上記合成繊維用処理剤は、更に、ジオール(D)を含有することが好ましい。
上記合成繊維用処理剤は、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、前記イオン性界面活性剤(C)、及び前記ジオール(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を10~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部、及び前記ジオール(D)を0.01~5質量部の割合で含有することが好ましい。
【0014】
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、上記合成繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の合成繊維用処理剤によると、熱ローラーへのタールの蓄積を抑制するとともに、合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の処理剤は、下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する。
【0018】
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
処理剤が上記の各成分を含有することにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制するとともに、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。
【0019】
上記エステル化合物(A1)におけるβ位分岐の1価アルコールとしては、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、炭素数が8~24であることが好ましい。
【0020】
上記β位分岐の1価アルコールの具体例としては、例えば2-エチル-1-ヘキサノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-オクチル-1-デカノール、2-デシル-1-テトラデカノール等が挙げられる。
【0021】
上記エステル化合物(A1)における上記二塩基酸としては、飽和脂肪族の二塩基酸であっても、不飽和脂肪族の二塩基酸であってもよい。ただし、チオジプロピオン酸やジチオジプロピオン酸のような、分子中に硫黄原子が含まれる二塩基酸はエステル化合物(A1)における二塩基酸には含めないものとする。
【0022】
上記二塩基酸の具体例としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
上記二塩基酸は、炭素数が4~10であることが好ましい。
【0023】
上記エステル化合物(A1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記平滑剤(A)は、更に下記のエステル化合物(A2)を含むものであることが好ましい。
【0024】
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
平滑剤(A)が、上記エステル化合物(A2)を含むものであることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
【0025】
上記エステル化合物(A2)における炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールとしては、直鎖脂肪族アルコールであってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族アルコールであってもよい。また、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。
【0026】
上記炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールの具体例としては、例えば、グリセリン、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、1,5-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2,4-ジメチルペンタンジオール等が挙げられる。
【0027】
上記エステル化合物(A2)における1価脂肪酸としては、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。
【0028】
上記1価脂肪酸の具体例としては、例えば(1)、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸等の直鎖アルキル脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキル脂肪酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニル脂肪酸等が挙げられる。
【0029】
上記1価脂肪酸は、上記具体例の混合物や、天然由来成分中に含まれるものであってもよい。
天然由来成分としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、豚脂脂肪酸、牛脂脂肪酸、鯨油脂肪酸等が挙げられる。
【0030】
上記エステル化合物(A2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記エステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量に特に制限はないが、処理剤中における含有量の合計が、20~70質量%であることが好ましい。
【0031】
処理剤中におけるエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量の合計が、20~70質量%であることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
【0032】
上記平滑剤(A)は、エステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)以外のその他の平滑剤(A3)を含有してもよい。
その他の平滑剤(A3)としては、例えば2-エチルへキシルオレアート、オレイルオレアート、ジオレイルチオジプロピオナート、ジ(2-オクチル-1-デシル)チオジプロピオナート、トリメチロールプロパンジオレアート、グリセリンジオレアート、ジオレイルアジパート、ジ(1-オクチル)セバタート、ジ(16-メチル-1-ヘプタデシル)セバタート等が挙げられる。
【0033】
上記その他の平滑剤(A3)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記処理剤が含有するノニオン性界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又は脂肪酸類にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸類とアルコール類とのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させたエーテル・エステル化合物、天然油脂にアルキレンオキサイドを付加させた化合物等が挙げられる。
【0034】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0035】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪酸類の具体例としては、例えば(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキル脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキル脂肪酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニル脂肪酸、(4)安息香酸等の芳香族系脂肪酸等が挙げられる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられるアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1~60モル、より好ましくは1~40モル、さらに好ましくは2~30モルである。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール類又は脂肪酸類1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
【0037】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0038】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられる天然油脂の具体例としては、ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等が挙げられる。
他にもノニオン性界面活性剤(B)として、(1)ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型ノニオン性界面活性剤、(2)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
上記処理剤において、ノニオン性界面活性剤(B)に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)は、ヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物から選ばれる少なくとも1つから形成された誘導体を意味するものとする。
【0040】
ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)の具体例としては、例えば硬化ヒマシ油1モルに対してエチレンオキサイド(以下、EOともいう。)を10モル付加したもの、硬化ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸3モルでエステル化した化合物、硬化ヒマシ油1モルに対してEOを25モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸で末端エステル化した化合物、ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したもの、ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸2モルでエステル化した化合物等が挙げられる。これらのヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
上記処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものであることが好ましい。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
【0042】
処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、上記アミン誘導体(B2)を含むものであることにより、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性をより向上させることができる。
【0043】
上記アミン誘導体(B2)における炭素数8~20のアルキルアミンとしては、例えばジブチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン(以下、ラウリルアミンともいう。)、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン(以下、ステアリルアミンともいう。)、オクタデセニルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミン等が挙げられる。
【0044】
上記アミン誘導体(B2)における炭素数2~3のアルキレンオキサイドとしては、例えばEO、プロピレンオキサイド(以下、POともいう。)、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
上記アミン誘導体(B2)の具体例としては、例えばラウリルアミン1モルに対してEOを5モル付加したもの、ステアリルアミン1モルに対してEOを10モル付加したもの等が挙げられる。
【0046】
上記アミン誘導体(B2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ノニオン性界面活性剤(B)は、上記ノニオン性界面活性剤(B1)、及び上記ノニオン性界面活性剤(B2)以外のその他のノニオン性界面活性剤(B3)を含有してもよい。
【0047】
その他のノニオン性界面活性剤(B3)の具体例としては、例えばオレイルアルコール1モルに対してEOを10モル付加したもの、オレイン酸1モルに対してEOを10モル付加したもの、イソトリデシルアルコール1モルに対してEO10モル、PO10モルをランダムに付加したもの、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のジエステル、ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のモノエステル、ノニルフェノール1モルに対してEOを7モル付加したもの等が挙げられる。
【0048】
上記その他のノニオン性界面活性剤(B3)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記処理剤が含有するイオン性界面活性剤(C)としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性化合物としての両性界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば(1)酢酸塩、オクチル酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(2)オクチルリン酸エステル塩、ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩である有機リン酸塩、(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩である有機リン酸塩、(4)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、ペンタデカンスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、2級アルキルスルホン酸(C14~17)塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等の有機スルホン酸塩、(5)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(6)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(7)ヒマシ油脂肪酸硫酸エステル塩、ゴマ油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、ナタネ油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(8)ヒマシ油の硫酸エステル塩、ゴマ油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(9)オクチル酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸等が挙げられる。
【0050】
上述したアニオン界面活性剤を構成する対イオンとしてはアルカリ金属塩、アミン塩等が挙げられる。アルカリ金属塩の具体例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アミン塩の具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)3-アミノプロペン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0051】
カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0052】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
上記イオン性界面活性剤(C)の具体例としては、例えば炭素数が14~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、オレイン酸ナトリウム塩、オレイルアルコール1モルに対してEOを5モル付加した化合物のリン酸エステル、イソセチルリン酸エステル-ナトリウム塩、オレイルリン酸エステル-ナトリウム塩等が挙げられる。
【0053】
上記イオン性界面活性剤(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)の含有量に特に制限はないが、平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を20~70質量部、ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及びイオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0054】
上記処理剤は、更に、ジオール(D)を含有することが好ましい。
ジオール(D)としては、2個の水酸基が異なる炭素に結合している脂肪族、あるいは脂環式化合物を用いることができる。
【0055】
ジオール(D)の具体例としては、例えばポリエチレングリコール(平均分子量400)、ポリエチレングリコール(平均分子量200)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量400)、エチレングリコール等が挙げられる。
【0056】
上記ジオール(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、及びジオール(D)の含有量に特に制限はないが、平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、及びジオール(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を10~70質量部、ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部、及びジオール(D)を0.01~5質量部の割合で含有することが好ましい。
【0057】
上記処理剤は、平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、及びジオール(D)以外のその他成分(E)を含有していてもよい。
その他成分(E)としては、例えば処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分が挙げられる。その他成分(E)は、本発明の効果を阻害しない範囲内において配合されていてもよい。
【0058】
その他成分(E)の具体例としては、例えばポリエーテル変性シリコーン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、乳酸カリウム塩等が挙げられる。
【0059】
(第2実施形態)
本発明に係る合成繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。
【0060】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0061】
処理剤を合成繊維に付着させる際の処理剤の形態としては、例えば、有機溶媒や水を溶媒として希釈した状態や、希釈しない状態等で付与してもよい。
処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に付着させる割合は、特に制限はないが、合成繊維に対し0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。
【0062】
合成繊維としては、特に限定されないが、例えばポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、セルロース系繊維、リグニン系繊維等が挙げられる。これらの繊維は、2種以上から成る複合合成繊維であってもよい。
【0063】
ポリエステル系繊維の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらポリエステル系樹脂を含有して成る複合ポリエステル系繊維等が挙げられる。特に、ポリアミド系繊維とポリエステル繊維への適用が好ましい。さらにポリエステル系繊維としては、塩基性又は酸性可染性ポリエステル繊維、帯電防止性ポリエステル繊維、難燃性ポリエステル繊維等の改質ポリエステル繊維等が適用されてもよい。
【0064】
ポリオレフィン系繊維の具体例としては、例えばポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリブテン系繊維が挙げられる。さらにポリプロピレン系繊維としては、種々の単量体を共重合した改質ポリプロピレン繊維、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合ポリプロピレン繊維等が適用されてもよい。
【0065】
処理剤を付着させた繊維をゴム接着用途に使用する時は、延伸前や巻取り前にエポキシ化合物やエポキシ化合物を含む界面活性剤溶液を付着させてもよく、巻取り後にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス溶液(RFL溶液)に浸漬処理させても良い。付与するゴム接着用の接着剤にはエポキシ化合物やイソシアネート化合物やRFL溶液等が挙げられるが、特にエポキシ化合物を含有する接着剤が好ましい。
【0066】
また、本実施形態の処理剤が付着された繊維を撚り合わせて使用しても良い。
第1実施形態の処理剤、及び第2実施形態の合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
(1)処理剤は、下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する。
【0068】
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
処理剤が上記の各成分を含有することにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制するとともに、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。したがって、補強用コードとして好適に使用することが可能になる。
【0069】
(2)平滑剤(A)は、更に下記のエステル化合物(A2)を含むものである。
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
【0070】
平滑剤(A)が、上記エステル化合物(A2)を含むものであることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
(3)処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものである。
【0071】
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、上記アミン誘導体(B2)を含むものであることにより、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性をより向上させることができる。
【0072】
(4)処理剤中におけるエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量の合計が、20~70質量%である。
処理剤中におけるエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量の合計が、20~70質量%であることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
【実施例0073】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を意味する。
【0074】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示される各成分を使用し、平滑剤(A1-1)、(A2-1)がそれぞれ15質量部、25質量部、ノニオン性界面活性剤(B1-2)、(B1-3)、(B1-4)、(B2-1)、(B2-2)、(B3-5)、(B3-6)がそれぞれ、12.1質量部、10.2質量部、10質量部、1質量部、2質量部、5質量部、16質量部、イオン性界面活性剤(C-1)、(C-4)がそれぞれ、2質量部、1質量部、ジオール(D-1)が0.7質量部、その他成分(E-1)、(E-3)がそれぞれ、0.1質量部、0.2質量部となるようにビーカーに加えた。これらを撹拌してよく混合し、合成繊維用処理剤を調製した。
【0075】
(実施例2~16及び比較例1~6)
実施例2~16及び比較例1~6の各合成繊維用処理剤は、表1に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0076】
なお、各実施例及び比較例において、成分(A)~(D)の合計が100質量部となるように合成繊維用処理剤を調製した。
合成繊維用処理剤に使用する平滑剤(A)の種類、質量部、ノニオン性界面活性剤(B)の種類、質量部、イオン性界面活性剤(C)の種類、質量部、ジオール(D)の種類、質量部、その他成分(E)の種類、質量部は、表1の「平滑剤(A)」欄、「ノニオン性界面活性剤(B)」欄、「イオン性界面活性剤(C)」欄、「ジオール(D)」欄、「その他成分(E)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0077】
【表1】
表1の種類欄に記載するA1-1~A1-8、rA-1~rA-3、A2-1~A2-4、A3-1~A3-6、B1-1~B1-5、B2-1、B2-2、B3-1~B3-8、C-1~C-6、D-1~D-4、E-1~E-3の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0078】
(平滑剤(A))
エステル化合物(A1)
A1-1:2-エチル-1-ヘキサノールとアジピン酸のジエステル化合物
A1-2:2-ヘキシル-1-デカノールとアジピン酸のジエステル化合物
A1-3:2-オクチル-1-ドデカノールとアジピン酸のジエステル化合物
A1-4:2-エチル-1-ヘキサノールとセバシン酸のジエステル化合物
A1-5:2-オクチル-1-デカノールとセバシン酸のジエステル化合物
A1-6:2-デシル-1-テトラデカノールとセバシン酸のジエステル化合物
A1-7:2-エチル-1-ヘキサノールとフマル酸のジエステル化合物
A1-8:2-エチル-1-ヘキサノールとマレイン酸のジエステル化合物
rA-1:オレイルアルコールとアジピン酸のジエステル化合物
rA-2:1-オクタノールとセバシン酸のジエステル化合物
rA-3:16-メチル-1-ヘプタデカノールとセバシン酸のジエステル化合物
エステル化合物(A1)におけるβ位分岐の1価アルコールの種類、炭素数、及び分岐の位置と、二塩基酸の種類と炭素数について、表2の「β位分岐の1価アルコール」欄、「二塩基酸」欄にそれぞれ示す。
【0079】
【表2】
エステル化合物(A2)
A2-1:グリセリンとパーム油脂肪酸の完全エステル化合物(パーム油)
A2-2:トリメチロールプロパンとオレイン酸の完全エステル化合物
A2-3:1,2-ブタンジオールとヤシ油脂肪酸の完全エステル化合物
A2-4:1,4-ブタンジオールとオレイン酸の完全エステル化合物
エステル化合物(A2)における多価アルコールの種類、炭素数、及び価数と、1価脂肪酸の種類について、表3の「多価アルコール」欄、「1価脂肪酸」欄にそれぞれ示す。
【0080】
【表3】
その他の平滑剤(A3)
A3-1:2-エチルへキシルオレアート
A3-2:オレイルオレアート
A3-3:ジオレイルチオジプロピオナート
A3-4:ジ(2-オクチル-1-デシル)チオジプロピオナート
A3-5:トリメチロールプロパンジオレアート
A3-6:グリセリンジオレアート
なお、上記平滑剤(rA-1)、(rA-2)(rA-3)は、その他の平滑剤(A3)に含まれるものとする。
【0081】
(ノニオン性界面活性剤(B))
ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)
B1-1:硬化ヒマシ油1モルに対してEOを10モル付加したもの
B1-2:硬化ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸3モルでエステル化した化合物
B1-3:硬化ヒマシ油1モルに対してEO25モルを付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸で末端エステル化した化合物(平均分子量5000)
B1-4:ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加した化合物
B1-5:ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸2モルでエステル化した化合物
アミン誘導体(B2)
B2-1:ラウリルアミン1モルに対してEOを5モル付加したもの
B2-2:ステアリルアミン1モルに対してEOを10モル付加したもの
アミン誘導体(B2)におけるアルキルアミンの種類、炭素数、及びモル数と、アルキレンオキサイドの種類、炭素数、及びモル数について、表4の「アルキルアミン」欄、「アルキレンオキサイド」欄にそれぞれ示す。
【0082】
【表4】
その他のノニオン性界面活性剤(B3)
B3-1:オレイルアルコール1モルに対してEOを10モル付加したもの
B3-2:オレイン酸1モルに対してEOを10モル付加したもの
B3-3:イソトリデシルアルコール1モルに対してEO10モル、PO10モルをランダムに付加したもの
B3-4:ソルビタンモノオレアート
B3-5:ソルビタントリオレアート
B3-6:ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のジエステル、
B3-7:ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のモノエステル
B3-8:ノニルフェノール1モルに対してEOを7モル付加したもの
(イオン性界面活性剤(C))
C-1:炭素数が14~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩
C-2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
C-3:オレイン酸ナトリウム塩
C-4:オレイルアルコール1モルに対してEOを5モル付加した化合物のリン酸エステル
C-5:イソセチルリン酸エステル-ナトリウム塩
C-6:オレイルリン酸エステル-ナトリウム塩
(ジオール(D))
D-1:ポリエチレングリコール(平均分子量400)
D-2:ポリエチレングリコール(平均分子量200)
D-3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量400)
D-4:エチレングリコール
(その他成分(E))
E-1:ポリエーテル変性シリコーン
E-2:1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
E-3:乳酸カリウム塩
試験区分2(合成繊維の製造)
試験区分1で作製した処理剤を、イオン交換水を用いて希釈して15%溶液を作製した。この溶液を、オイリングローラー給油法にて不揮発分として付着量が1.0質量%となるように、1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に付着させて合成繊維を製造した。なお、イオン交換水に代えて、有機溶剤を用いて15%溶液を作製してもよい。
【0083】
試験区分3(評価)
実施例1~16及び比較例1~6の処理剤について、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を評価した。また、処理剤のタール蓄積性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1の“接着性”、“タール蓄積性”欄に示す。
【0084】
(接着性)
試験区分2で作製した合成繊維2本を用いて、下撚り40回/10cm、上撚り40回/10cmの撚数で撚り、撚糸コードとした。この撚糸コードを、第1接着剤として、エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製のデナコールEX512)と、ブロックドイソシアネート(第一工業製薬社製のエラストロンBN-27)とが固形分比で5:5となるように配合された接着剤に浸漬した後、245℃で熱処理した。更に第2接着剤として、レゾルシン(キシダ化学社製のレソルシノール)と、ホルマリン(キシダ化学社製のホルムアルデヒド液(37%))と、ラテックス(日本ゼオン社製のNipol2518FS)とが固形分比で1.5:0.5:8となるように配合された溶液(RFL溶液)に撚糸コードを浸漬した後、245℃で熱処理した。
【0085】
以上の手順によって、接着剤で処理した補強用コードを作製した。JIS-L1017(化学繊維タイヤコード試験方法)に記載のTテスト(A法)に準拠して、補強用コードの接着力を測定し、以下の基準で評価した。
【0086】
・接着性の評価基準
◎(優れる):接着力が16kg以上である場合
○○(良好):接着力が15.5kg以上、16kg未満である場合
○(可):接着力が15kg以上、15.5kg未満である場合
×(不良):15kg未満である場合
(タール蓄積性)
試験区分1で作製した処理剤を、イオン交換水を用いて希釈して15%溶液を作製した。この希釈液を、オイリングローラー給油法にて不揮発分として付着量が3.0質量%となるように、1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に付着させた。この繊維を、初期張力2kg、糸速1m/分で、表面温度250℃の梨地クロムピンに接触させて6時間走行させた。その後、ピンに蓄積した汚れの量を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、ピンに蓄積した汚れの量が少ないほど、タール蓄積が抑制されることを意味する。
【0087】
・タール蓄積性の評価基準
◎(優れる):タールの付着が観察されなかった場合
○○(良好):茶色のタールが僅かに観察された場合
○(可):茶色のタールが観察された場合
×(不良):黒色のタールが観察された場合
表1の結果から、本発明によれば、合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。また、合成繊維用処理剤に起因したタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のエステル化合物(A1)と下記のエステル化合物(A2)とを含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
(ただし、前記二塩基酸が、分子中に硫黄元素を有する有機酸である態様を除く。)
【請求項2】
下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)と下記のアミン誘導体(B2)とを含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
(ただし、前記二塩基酸が、分子中に硫黄元素を有する有機酸である態様を除く。)
【請求項3】
処理剤中のエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有割合の合計が20~70質量%である請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものである請求項1又は3に記載の合成繊維用処理剤。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
【請求項5】
前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を20~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、ジオール(D)を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、前記イオン性界面活性剤(C)、及び前記ジオール(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を10~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部、及び前記ジオール(D)を0.01~5質量部の割合で含有する請求項6に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成繊維は、製糸工程を経ることにより製造される。製糸工程には、例えば原料樹脂を熱で溶融して紡糸する紡糸工程と、紡糸工程を経た繊維を延伸する延伸工程とが含まれる。製糸工程において、繊維に毛羽や断糸が生じる場合があり、これらを抑制するために、繊維に対して合成繊維用処理剤を付着させることがある。
【0003】
製糸工程を経て得られた合成繊維は、産業資材として多く利用されている。産業資材としては、例えばタイヤ類、ベルト類、ホース類等のゴム製品の補強材が挙げられる。補強材は、合成繊維に接着剤を付着させて補強用コードとして用いられる。補強用コードには、ゴム製品の耐久性を向上させるために、ゴムに対する十分な接着性を有することが要求される。
【0004】
特許文献1には、産業資材用の合成繊維に用いられる合成繊維用処理剤について、芳香族エステル化合物、有機カルボン酸のアルカリ金属塩、及び酸化防止剤を含有することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、産業資材用の合成繊維に用いられる合成繊維用処理剤について、一価アルコールと多価カルボン酸とのエステル化合物を含む平滑剤を含有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-292961号公報
【特許文献2】特開2020-2498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、産業資材用の合成繊維の製糸工程では、近年、高速化とともに高倍率延伸が行われるようになってきており、繊維に対してより高温での熱処理が行われるようになってきている。例えば、熱ローラーを用いた延伸工程において、合成繊維処理剤に起因したタールが熱ローラー上に付着する虞があった。熱ローラー上のタールの付着具合によって、繊維への熱伝導が異なり、繊維物性にも影響を与える虞があった。また、合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性のさらなる性能向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、下記のエステル化合物(A1)と下記のエステル化合物(A2)とを含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することを要旨とする。
【0009】
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
【0010】
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
(ただし、前記二塩基酸が、分子中に硫黄元素を有する有機酸である態様を除く。)
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)と下記のアミン誘導体(B2)とを含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することを要旨とする。
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
(ただし、前記二塩基酸が、分子中に硫黄元素を有する有機酸である態様を除く。)
上記合成繊維用処理剤は、処理剤中のエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有割合の合計が20~70質量%であることが好ましい。
【0011】
上記合成繊維用処理剤は、前記ノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものであることが好ましい。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
【0012】
上記合成繊維用処理剤は、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を20~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0013】
上記合成繊維用処理剤は、更に、ジオール(D)を含有することが好ましい。
上記合成繊維用処理剤は、前記平滑剤(A)、前記ノニオン性界面活性剤(B)、前記イオン性界面活性剤(C)、及び前記ジオール(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記平滑剤(A)を10~70質量部、前記ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及び前記イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部、及び前記ジオール(D)を0.01~5質量部の割合で含有することが好ましい。
【0014】
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、上記合成繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の合成繊維用処理剤によると、熱ローラーへのタールの蓄積を抑制するとともに、合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の処理剤は、下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する。
【0018】
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
処理剤が上記の各成分を含有することにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制するとともに、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。
【0019】
上記エステル化合物(A1)におけるβ位分岐の1価アルコールとしては、飽和脂肪族アルコールであっても、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、炭素数が8~24であることが好ましい。
【0020】
上記β位分岐の1価アルコールの具体例としては、例えば2-エチル-1-ヘキサノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-オクチル-1-デカノール、2-デシル-1-テトラデカノール等が挙げられる。
【0021】
上記エステル化合物(A1)における上記二塩基酸としては、飽和脂肪族の二塩基酸であっても、不飽和脂肪族の二塩基酸であってもよい。ただし、チオジプロピオン酸やジチオジプロピオン酸のような、分子中に硫黄原子が含まれる二塩基酸はエステル化合物(A1)における二塩基酸には含めないものとする。
【0022】
上記二塩基酸の具体例としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
上記二塩基酸は、炭素数が4~10であることが好ましい。
【0023】
上記エステル化合物(A1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記平滑剤(A)は、更に下記のエステル化合物(A2)を含むものであることが好ましい。
【0024】
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
平滑剤(A)が、上記エステル化合物(A2)を含むものであることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
【0025】
上記エステル化合物(A2)における炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールとしては、直鎖脂肪族アルコールであってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族アルコールであってもよい。また、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。
【0026】
上記炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールの具体例としては、例えば、グリセリン、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、1,5-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2,4-ジメチルペンタンジオール等が挙げられる。
【0027】
上記エステル化合物(A2)における1価脂肪酸としては、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。
【0028】
上記1価脂肪酸の具体例としては、例えば(1)、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸等の直鎖アルキル脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキル脂肪酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニル脂肪酸等が挙げられる。
【0029】
上記1価脂肪酸は、上記具体例の混合物や、天然由来成分中に含まれるものであってもよい。
天然由来成分としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、豚脂脂肪酸、牛脂脂肪酸、鯨油脂肪酸等が挙げられる。
【0030】
上記エステル化合物(A2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記エステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量に特に制限はないが、処理剤中における含有量の合計が、20~70質量%であることが好ましい。
【0031】
処理剤中におけるエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量の合計が、20~70質量%であることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
【0032】
上記平滑剤(A)は、エステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)以外のその他の平滑剤(A3)を含有してもよい。
その他の平滑剤(A3)としては、例えば2-エチルへキシルオレアート、オレイルオレアート、ジオレイルチオジプロピオナート、ジ(2-オクチル-1-デシル)チオジプロピオナート、トリメチロールプロパンジオレアート、グリセリンジオレアート、ジオレイルアジパート、ジ(1-オクチル)セバタート、ジ(16-メチル-1-ヘプタデシル)セバタート等が挙げられる。
【0033】
上記その他の平滑剤(A3)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記処理剤が含有するノニオン性界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又は脂肪酸類にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、脂肪酸類とアルコール類とのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させたエーテル・エステル化合物、天然油脂にアルキレンオキサイドを付加させた化合物等が挙げられる。
【0034】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0035】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪酸類の具体例としては、例えば(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキル脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキル脂肪酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニル脂肪酸、(4)安息香酸等の芳香族系脂肪酸等が挙げられる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられるアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1~60モル、より好ましくは1~40モル、さらに好ましくは2~30モルである。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール類又は脂肪酸類1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
【0037】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0038】
ノニオン性界面活性剤(B)の原料として用いられる天然油脂の具体例としては、ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等が挙げられる。
他にもノニオン性界面活性剤(B)として、(1)ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型ノニオン性界面活性剤、(2)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
上記処理剤において、ノニオン性界面活性剤(B)に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)は、ヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、及びこれらの脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物から選ばれる少なくとも1つから形成された誘導体を意味するものとする。
【0040】
ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)の具体例としては、例えば硬化ヒマシ油1モルに対してエチレンオキサイド(以下、EOともいう。)を10モル付加したもの、硬化ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸3モルでエステル化した化合物、硬化ヒマシ油1モルに対してEOを25モル付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸で末端エステル化した化合物、ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したもの、ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸2モルでエステル化した化合物等が挙げられる。これらのヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
上記処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものであることが好ましい。
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
【0042】
処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、上記アミン誘導体(B2)を含むものであることにより、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性をより向上させることができる。
【0043】
上記アミン誘導体(B2)における炭素数8~20のアルキルアミンとしては、例えばジブチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン(以下、ラウリルアミンともいう。)、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン(以下、ステアリルアミンともいう。)、オクタデセニルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミン等が挙げられる。
【0044】
上記アミン誘導体(B2)における炭素数2~3のアルキレンオキサイドとしては、例えばEO、プロピレンオキサイド(以下、POともいう。)、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
上記アミン誘導体(B2)の具体例としては、例えばラウリルアミン1モルに対してEOを5モル付加したもの、ステアリルアミン1モルに対してEOを10モル付加したもの等が挙げられる。
【0046】
上記アミン誘導体(B2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ノニオン性界面活性剤(B)は、上記ノニオン性界面活性剤(B1)、及び上記ノニオン性界面活性剤(B2)以外のその他のノニオン性界面活性剤(B3)を含有してもよい。
【0047】
その他のノニオン性界面活性剤(B3)の具体例としては、例えばオレイルアルコール1モルに対してEOを10モル付加したもの、オレイン酸1モルに対してEOを10モル付加したもの、イソトリデシルアルコール1モルに対してEO10モル、PO10モルをランダムに付加したもの、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のジエステル、ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のモノエステル、ノニルフェノール1モルに対してEOを7モル付加したもの等が挙げられる。
【0048】
上記その他のノニオン性界面活性剤(B3)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記処理剤が含有するイオン性界面活性剤(C)としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性化合物としての両性界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば(1)酢酸塩、オクチル酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(2)オクチルリン酸エステル塩、ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩である有機リン酸塩、(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩である有機リン酸塩、(4)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、ペンタデカンスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、2級アルキルスルホン酸(C14~17)塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等の有機スルホン酸塩、(5)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(6)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(7)ヒマシ油脂肪酸硫酸エステル塩、ゴマ油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、ナタネ油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(8)ヒマシ油の硫酸エステル塩、ゴマ油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(9)オクチル酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸等が挙げられる。
【0050】
上述したアニオン界面活性剤を構成する対イオンとしてはアルカリ金属塩、アミン塩等が挙げられる。アルカリ金属塩の具体例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アミン塩の具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)3-アミノプロペン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0051】
カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0052】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
上記イオン性界面活性剤(C)の具体例としては、例えば炭素数が14~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、オレイン酸ナトリウム塩、オレイルアルコール1モルに対してEOを5モル付加した化合物のリン酸エステル、イソセチルリン酸エステル-ナトリウム塩、オレイルリン酸エステル-ナトリウム塩等が挙げられる。
【0053】
上記イオン性界面活性剤(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)の含有量に特に制限はないが、平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を20~70質量部、ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、及びイオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0054】
上記処理剤は、更に、ジオール(D)を含有することが好ましい。
ジオール(D)としては、2個の水酸基が異なる炭素に結合している脂肪族、あるいは脂環式化合物を用いることができる。
【0055】
ジオール(D)の具体例としては、例えばポリエチレングリコール(平均分子量400)、ポリエチレングリコール(平均分子量200)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量400)、エチレングリコール等が挙げられる。
【0056】
上記ジオール(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、及びジオール(D)の含有量に特に制限はないが、平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、及びジオール(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を10~70質量部、ノニオン性界面活性剤(B)を10~70質量部、イオン性界面活性剤(C)を0.1~10質量部、及びジオール(D)を0.01~5質量部の割合で含有することが好ましい。
【0057】
上記処理剤は、平滑剤(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、及びジオール(D)以外のその他成分(E)を含有していてもよい。
その他成分(E)としては、例えば処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分が挙げられる。その他成分(E)は、本発明の効果を阻害しない範囲内において配合されていてもよい。
【0058】
その他成分(E)の具体例としては、例えばポリエーテル変性シリコーン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、乳酸カリウム塩等が挙げられる。
【0059】
(第2実施形態)
本発明に係る合成繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。
【0060】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0061】
処理剤を合成繊維に付着させる際の処理剤の形態としては、例えば、有機溶媒や水を溶媒として希釈した状態や、希釈しない状態等で付与してもよい。
処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に付着させる割合は、特に制限はないが、合成繊維に対し0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。
【0062】
合成繊維としては、特に限定されないが、例えばポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、セルロース系繊維、リグニン系繊維等が挙げられる。これらの繊維は、2種以上から成る複合合成繊維であってもよい。
【0063】
ポリエステル系繊維の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらポリエステル系樹脂を含有して成る複合ポリエステル系繊維等が挙げられる。特に、ポリアミド系繊維とポリエステル繊維への適用が好ましい。さらにポリエステル系繊維としては、塩基性又は酸性可染性ポリエステル繊維、帯電防止性ポリエステル繊維、難燃性ポリエステル繊維等の改質ポリエステル繊維等が適用されてもよい。
【0064】
ポリオレフィン系繊維の具体例としては、例えばポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリブテン系繊維が挙げられる。さらにポリプロピレン系繊維としては、種々の単量体を共重合した改質ポリプロピレン繊維、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合ポリプロピレン繊維等が適用されてもよい。
【0065】
処理剤を付着させた繊維をゴム接着用途に使用する時は、延伸前や巻取り前にエポキシ化合物やエポキシ化合物を含む界面活性剤溶液を付着させてもよく、巻取り後にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス溶液(RFL溶液)に浸漬処理させても良い。付与するゴム接着用の接着剤にはエポキシ化合物やイソシアネート化合物やRFL溶液等が挙げられるが、特にエポキシ化合物を含有する接着剤が好ましい。
【0066】
また、本実施形態の処理剤が付着された繊維を撚り合わせて使用しても良い。
第1実施形態の処理剤、及び第2実施形態の合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
(1)処理剤は、下記のエステル化合物(A1)を含む平滑剤(A)、ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)を含むノニオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する。
【0068】
エステル化合物(A1):β位分岐の1価アルコールと二塩基酸のジエステル化合物。
処理剤が上記の各成分を含有することにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制するとともに、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。したがって、補強用コードとして好適に使用することが可能になる。
【0069】
(2)平滑剤(A)は、更に下記のエステル化合物(A2)を含むものである。
エステル化合物(A2):炭素数3~8の鎖状構造を有する2~4価の多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物。
【0070】
平滑剤(A)が、上記エステル化合物(A2)を含むものであることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
(3)処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、更に下記のアミン誘導体(B2)を含むものである。
【0071】
アミン誘導体(B2):炭素数8~20のアルキルアミン1モルに対し、炭素数2~3のアルキレンオキサイドを合計で1~20モルの割合で付加させた化合物。
処理剤に含有されるノニオン性界面活性剤(B)が、上記アミン誘導体(B2)を含むものであることにより、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性をより向上させることができる。
【0072】
(4)処理剤中におけるエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量の合計が、20~70質量%である。
処理剤中におけるエステル化合物(A1)、及びエステル化合物(A2)の含有量の合計が、20~70質量%であることにより、処理剤に起因するタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。
【実施例0073】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を意味する。
【0074】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示される各成分を使用し、平滑剤(A1-1)、(A2-1)がそれぞれ15質量部、25質量部、ノニオン性界面活性剤(B1-2)、(B1-3)、(B1-4)、(B2-1)、(B2-2)、(B3-5)、(B3-6)がそれぞれ、12.1質量部、10.2質量部、10質量部、1質量部、2質量部、5質量部、16質量部、イオン性界面活性剤(C-1)、(C-4)がそれぞれ、2質量部、1質量部、ジオール(D-1)が0.7質量部、その他成分(E-1)、(E-3)がそれぞれ、0.1質量部、0.2質量部となるようにビーカーに加えた。これらを撹拌してよく混合し、合成繊維用処理剤を調製した。
【0075】
(実施例2~15、参考例1、及び比較例1~6)
実施例2~15、参考例1、及び比較例1~6の各合成繊維用処理剤は、表1に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0076】
なお、各実施例及び比較例において、成分(A)~(D)の合計が100質量部となるように合成繊維用処理剤を調製した。
合成繊維用処理剤に使用する平滑剤(A)の種類、質量部、ノニオン性界面活性剤(B)の種類、質量部、イオン性界面活性剤(C)の種類、質量部、ジオール(D)の種類、質量部、その他成分(E)の種類、質量部は、表1の「平滑剤(A)」欄、「ノニオン性界面活性剤(B)」欄、「イオン性界面活性剤(C)」欄、「ジオール(D)」欄、「その他成分(E)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0077】
【表1】
表1の種類欄に記載するA1-1~A1-8、rA-1~rA-3、A2-1~A2-4、A3-1~A3-6、B1-1~B1-5、B2-1、B2-2、B3-1~B3-8、C-1~C-6、D-1~D-4、E-1~E-3の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0078】
(平滑剤(A))
エステル化合物(A1)
A1-1:2-エチル-1-ヘキサノールとアジピン酸のジエステル化合物
A1-2:2-ヘキシル-1-デカノールとアジピン酸のジエステル化合物
A1-3:2-オクチル-1-ドデカノールとアジピン酸のジエステル化合物
A1-4:2-エチル-1-ヘキサノールとセバシン酸のジエステル化合物
A1-5:2-オクチル-1-デカノールとセバシン酸のジエステル化合物
A1-6:2-デシル-1-テトラデカノールとセバシン酸のジエステル化合物
A1-7:2-エチル-1-ヘキサノールとフマル酸のジエステル化合物
A1-8:2-エチル-1-ヘキサノールとマレイン酸のジエステル化合物
rA-1:オレイルアルコールとアジピン酸のジエステル化合物
rA-2:1-オクタノールとセバシン酸のジエステル化合物
rA-3:16-メチル-1-ヘプタデカノールとセバシン酸のジエステル化合物
エステル化合物(A1)におけるβ位分岐の1価アルコールの種類、炭素数、及び分岐の位置と、二塩基酸の種類と炭素数について、表2の「β位分岐の1価アルコール」欄、「二塩基酸」欄にそれぞれ示す。
【0079】
【表2】
エステル化合物(A2)
A2-1:グリセリンとパーム油脂肪酸の完全エステル化合物(パーム油)
A2-2:トリメチロールプロパンとオレイン酸の完全エステル化合物
A2-3:1,2-ブタンジオールとヤシ油脂肪酸の完全エステル化合物
A2-4:1,4-ブタンジオールとオレイン酸の完全エステル化合物
エステル化合物(A2)における多価アルコールの種類、炭素数、及び価数と、1価脂肪酸の種類について、表3の「多価アルコール」欄、「1価脂肪酸」欄にそれぞれ示す。
【0080】
【表3】
その他の平滑剤(A3)
A3-1:2-エチルへキシルオレアート
A3-2:オレイルオレアート
A3-3:ジオレイルチオジプロピオナート
A3-4:ジ(2-オクチル-1-デシル)チオジプロピオナート
A3-5:トリメチロールプロパンジオレアート
A3-6:グリセリンジオレアート
なお、上記平滑剤(rA-1)、(rA-2)(rA-3)は、その他の平滑剤(A3)に含まれるものとする。
【0081】
(ノニオン性界面活性剤(B))
ヒドロキシ脂肪酸誘導体(B1)
B1-1:硬化ヒマシ油1モルに対してEOを10モル付加したもの
B1-2:硬化ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸3モルでエステル化した化合物
B1-3:硬化ヒマシ油1モルに対してEO25モルを付加したものをアジピン酸で架橋し、ステアリン酸で末端エステル化した化合物(平均分子量5000)
B1-4:ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加した化合物
B1-5:ヒマシ油1モルに対してEOを20モル付加したものをオレイン酸2モルでエステル化した化合物
アミン誘導体(B2)
B2-1:ラウリルアミン1モルに対してEOを5モル付加したもの
B2-2:ステアリルアミン1モルに対してEOを10モル付加したもの
アミン誘導体(B2)におけるアルキルアミンの種類、炭素数、及びモル数と、アルキレンオキサイドの種類、炭素数、及びモル数について、表4の「アルキルアミン」欄、「アルキレンオキサイド」欄にそれぞれ示す。
【0082】
【表4】
その他のノニオン性界面活性剤(B3)
B3-1:オレイルアルコール1モルに対してEOを10モル付加したもの
B3-2:オレイン酸1モルに対してEOを10モル付加したもの
B3-3:イソトリデシルアルコール1モルに対してEO10モル、PO10モルをランダムに付加したもの
B3-4:ソルビタンモノオレアート
B3-5:ソルビタントリオレアート
B3-6:ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のジエステル、
B3-7:ポリエチレングリコール(平均分子量600)とオレイン酸のモノエステル
B3-8:ノニルフェノール1モルに対してEOを7モル付加したもの
(イオン性界面活性剤(C))
C-1:炭素数が14~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩
C-2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
C-3:オレイン酸ナトリウム塩
C-4:オレイルアルコール1モルに対してEOを5モル付加した化合物のリン酸エステル
C-5:イソセチルリン酸エステル-ナトリウム塩
C-6:オレイルリン酸エステル-ナトリウム塩
(ジオール(D))
D-1:ポリエチレングリコール(平均分子量400)
D-2:ポリエチレングリコール(平均分子量200)
D-3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量400)
D-4:エチレングリコール
(その他成分(E))
E-1:ポリエーテル変性シリコーン
E-2:1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
E-3:乳酸カリウム塩
試験区分2(合成繊維の製造)
試験区分1で作製した処理剤を、イオン交換水を用いて希釈して15%溶液を作製した。この溶液を、オイリングローラー給油法にて不揮発分として付着量が1.0質量%となるように、1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に付着させて合成繊維を製造した。なお、イオン交換水に代えて、有機溶剤を用いて15%溶液を作製してもよい。
【0083】
試験区分3(評価)
実施例1~15、参考例1、及び比較例1~6の処理剤について、処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を評価した。また、処理剤のタール蓄積性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1の“接着性”、“タール蓄積性”欄に示す。
【0084】
(接着性)
試験区分2で作製した合成繊維2本を用いて、下撚り40回/10cm、上撚り40回/10cmの撚数で撚り、撚糸コードとした。この撚糸コードを、第1接着剤として、エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製のデナコールEX512)と、ブロックドイソシアネート(第一工業製薬社製のエラストロンBN-27)とが固形分比で5:5となるように配合された接着剤に浸漬した後、245℃で熱処理した。更に第2接着剤として、レゾルシン(キシダ化学社製のレソルシノール)と、ホルマリン(キシダ化学社製のホルムアルデヒド液(37%))と、ラテックス(日本ゼオン社製のNipol2518FS)とが固形分比で1.5:0.5:8となるように配合された溶液(RFL溶液)に撚糸コードを浸漬した後、245℃で熱処理した。
【0085】
以上の手順によって、接着剤で処理した補強用コードを作製した。JIS-L1017(化学繊維タイヤコード試験方法)に記載のTテスト(A法)に準拠して、補強用コードの接着力を測定し、以下の基準で評価した。
【0086】
・接着性の評価基準
◎(優れる):接着力が16kg以上である場合
○○(良好):接着力が15.5kg以上、16kg未満である場合
○(可):接着力が15kg以上、15.5kg未満である場合
×(不良):15kg未満である場合
(タール蓄積性)
試験区分1で作製した処理剤を、イオン交換水を用いて希釈して15%溶液を作製した。この希釈液を、オイリングローラー給油法にて不揮発分として付着量が3.0質量%となるように、1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に付着させた。この繊維を、初期張力2kg、糸速1m/分で、表面温度250℃の梨地クロムピンに接触させて6時間走行させた。その後、ピンに蓄積した汚れの量を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、ピンに蓄積した汚れの量が少ないほど、タール蓄積が抑制されることを意味する。
【0087】
・タール蓄積性の評価基準
◎(優れる):タールの付着が観察されなかった場合
○○(良好):茶色のタールが僅かに観察された場合
○(可):茶色のタールが観察された場合
×(不良):黒色のタールが観察された場合
表1の結果から、本発明によれば、合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維におけるゴムとの接着性を向上させることができる。また、合成繊維用処理剤に起因したタールの熱ローラーへの蓄積を抑制することができる。