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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112758
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】車止め
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20220727BHJP
   E01F 13/00 20060101ALI20220727BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
E01F13/00 301
E04H6/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008683
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 武留
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆志
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA06
2D101DA04
2D101DA05
2D101EA01
2D101FA23
2D101FB04
(57)【要約】
【課題】軽量であり腐食を防止できる車止めを提供する
【解決手段】中空の車止め本体1と、車止め本体の内部に挿入される補強部材2Aと、補強部材2Aを保持するための保持材3とを備える車止めAであって、補強部材2Aは、車止め本体1における地中に埋設される埋設部1aと地上に露出する露出部1bとにわたって配置され、保持材3は補強部材2Aの下端部を支持している。補強部材2Aは、横断面視において点対称の部材であって、中心から外側に向かって放射状に延びる複数の板材21~28を有している。補強部材2Aの下端部が車止め本体1の下端部より上位にあると埋設部1aに用いられるコンクリートとの間に空間ができるので、コンクリートと接触することがない。このため、補強部材2Aの材料がアルカリ腐食しやすいものであっても、腐食することはない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の車止め本体と、
前記車止め本体の内部に挿入される補強部材と、該補強部材を保持するための保持材とを備える車止めであって、
前記補強部材は、前記車止め本体における地中に埋設される埋設部と地上に露出する露出部とにわたって配置され、
該保持材は前記補強部材の下端部を支持している
ことを特徴とする車止め。
【請求項2】
前記補強部材は、その下端部が前記車止め本体の下端部より上位で保持されている
ことを特徴とする請求項1記載の車止め。
【請求項3】
前記補強部材は、横断面視において点対称の部材であって、
中心から外側に向かって放射状に延びる複数の板材を有している
ことを特徴とする請求項1または2記載の車止め。
【請求項4】
前記複数の板材が連結板で互いに連結されている
ことを特徴とする請求項3記載の車止め。
【請求項5】
前記補強部材は、横断面視において、前記車止め本体の内壁面に最接近する部分が点当たり形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の車止め。
【請求項6】
前記補強部材が、アルミニウムの押出形材である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の車止め。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車止めに関する。さらに詳しくは、本発明は、自動車の進入禁止区域の表示と自動車の強制停止機能をもたせた車止めに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の従来技術は、駐車場の路盤中にほぼ垂直に植え込まれる二本の杭棒部分と、路盤より突き出た二本の杭棒部分の上端部にほぼ直角に連結された水平連結棒部分とからなる車止め部材である。杭棒部分および水平連結棒部分は鉄筋や鋼棒などを用いた金属棒で構成したものである。
しかるに、この従来技術は、中実の金属棒(鋼棒)を用いるため、重量が重いという欠点がある。
【0003】
特許文献2の従来技術は、金網柵などに用いられる支柱用鋼管であり、補強パイプの外面上における放射位置に多数のスペーサを縦方向に溶接一体化することにより補強部材を形成し、この補強部材を管本体の内部に挿入して、スペーサの下端を管本体の下端開口部を通じてその内面に溶接一体化したものである。
しかるに、この従来技術は、多数のスペーサ(金属円柱)を溶接にて固着するため、製作工数が非常に多くかかるという問題がある。また、溶接付けを用いていることから線膨張係数の異なる材料を使用することができない。さらに、溶接付けした部分は腐食が生じやすいため、腐食を防止するためのメッキ処理または、防サビ剤の塗布が必要になり、手間と製造コストがかかる。
【0004】
特許文献3の従来技術は、建築鉄骨や道路標識、自転車・バイクのフレームなどに汎用的に用いられる管体の補強材である。
補強材は放射状の板材からなるもので、この補強材を対向して配置した2本の管体の接合部分に挿入して用いられる。
しかるに、この従来技術は補強材を差し込むだけで特別の固定手段は用いられていない。したがって、縦向きで用いられたとき落下の可能性があり、車止めに使った場合に基礎のコンクリートに接触すると、補強材が腐食するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59-27217号公報
【特許文献2】実開昭56-57343号公報
【特許文献3】実開昭60-71707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、軽量で製作容易であり腐食を防止できる車止めを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の車止めは、中空の車止め本体と、前記車止め本体の内部に挿入される補強部材と、該補強部材を保持するための保持材とを備える車止めであって、前記補強部材は、前記車止め本体における地中に埋設される埋設部と地上に露出する露出部とにわたって配置され、該保持材は前記補強部材の下端部を支持していることを特徴とする。
第2発明の車止めは、第1発明において、前記補強部材は、その下端部が前記車止め本体の下端部より上位で保持されていることを特徴とする。
第3発明の車止めは、第1または第2発明において、前記補強部材は、横断面視において点対称の部材であって、中心から外側に向かって放射状に延びる複数の板材を有していることを特徴とする。
第4発明の車止めは、第3発明において、前記複数の板材が連結板で互いに連結されていることを特徴とする。
第5発明の車止めは、第1、第2、第3または第4発明において、前記補強部材は、横断面視において、前記車止め本体の内壁面に最接近する部分が点当たり形状に形成されていることを特徴とする。
第6発明の車止めは、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記補強部材が、アルミニウムの押出形材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、補強部材は保持材によって、その下端部が支えられているので、車止めの施工時に補強部材が落下することはなく作業性が良くなる。また、補強部材の下端部を保持材により保持しているため、補強部材を溶接等により車止め本体へ固定する必要がなく生産性が向上する。さらに、補強部材と車止め本体とが固定されていないため、補強部材に車止め本体と線膨張が異なる材質を使用できる。
第2発明によれば、補強部材の下端部が車止め本体の下端部より上位にあることで、埋設部に用いられるコンクリートと補強部材の下端部との間に空間ができ、補強部材がコンクリートに接触することがない。このため、補強部材の材質がアルカリ腐食しやすいものであっても、腐食を防止することができる。
第3発明によれば、補強部材が放射状に延びる複数の板材を有するので、車止め本体の周りのどの方向から外力が加わっても、大きな抵抗力を発揮することができる。したがって、車止めの強制停止機能を高めることができる。
第4発明によれば、補強部材を構成する複数の板材が連結板で連結されていることから、個々の板材の屈曲抵抗も座屈抵抗も大きくなるので、車の衝突等により生じる外力に対する抵抗力が大きくなる。
第5発明によれば、補強部材の先端部が点接触形状(点当たり形状)であるため、補強部材の先端部と車止め本体の内周面(内壁面)との接点を減らすことができ、補強部材の車止め本体への挿入が容易に行える。
第6発明によれば、アルミニウムの押出形状を用いると、軽量でかつ寸法精度の高い補強部材が得られる。このため、車止めの組立が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る車止めAの説明図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図2図1に示す車止めAの説明図であり、(A)は側面図、(B)は底面図である。
図3図1(B)に示す補強部材2Aの一部拡大断面図である。
図4図2(A)のIV-IV線断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る車止めの補強部材2Bの横断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る車止めの補強部材2Cの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る車止めAを示している。
この車止めAは、車止め本体1と補強部材2Aおよび保持材3とからなる。図示の車止め本体1は、1本の横中空管部11とその両端に湾曲部分を介して接続された2本の縦中空管部12,13とからなる。つまり、図示の車止め本体1は逆U字形である。ただし、本発明には、車止め本体1の縦中空管部12,13の間にさらに横中空管部が接続された車止め本体や、横中空管部の両端に直角に縦中空管部が接続された車止め本体、縦向きに延びる縦中空管のみの車止め本体も含まれる。
【0011】
車止め本体1の材質としては、鉄やステンレス等の金属や、樹脂などが挙げられ、車止めAの強度を確保する観点からは、鉄やステンレス等の金属が好ましい。金属を使用する場合、外表面には、錆等を防止する目的で、メッキやポリエステル粉体焼付塗装などが施されていてもよい。
横中空管部11および縦中空管部12,13は、図1および図2に示したような断面が円形のもの以外に、断面が矩形のものであってもよい。
【0012】
車止め本体1は、地表面GLより下方の地中に埋設される埋設部1aと地表面GLより上方の地上に露出する露出部1bとに分けられる。埋設部1aは地中に形成したコンクリート基礎5内に埋め込まれている。
そして、補強部材2Aは、前記車止め本体1を構成する縦中空管部12,13に挿入される。挿入された状態の補強部材2Aの下端部は保持材3で支えられる(支持される)。
【0013】
車止め本体1の寸法に制限はなく、任意の寸法を採用できるが、代表的には、横幅W(図1(B)における左右の幅)が約700~3000mmであり、高さH(図1(B)における上下の高さ)が約800~1050mmである。そして、埋設部1aは約250~400mmである。図1の車止め本体1は、横幅Wが2000mm、高さHが800mm、埋設部1aが250mmのものを示している。
基礎5は公知の構造であり、コンクリートを打設したコンクリート部51とクラッシャラン52とからなる。
【0014】
補強部材2Aは、既述のとおり縦中空管部12,13の下端部より挿入され、車止め本体1における埋設部1aと露出部1b(具体的には、縦中空管部12,13における埋設部1aと露出部1b)とにわたって配置される。そして、補強部材2Aの下端部は、保持材3により車止め本体1の下端部(具体的には、縦中空管部12,13の下端部)よりも上位で保持されている。換言すれば、縦中空管部12,13の埋設部1aを取りまく基礎のコンクリートと接触しないようにされている。
たとえば、補強部材2Aの下端部と縦中空管部12,13の下端部との間は、50mm以上であることが好ましく、100mm以上であることがより好ましく、150mm以上であることがさらに好ましい。
【0015】
また、車止めAの強度(強制停止機能)を高めるという観点から、補強部材2Aの下端部と地表面GLとの間(補強部材2Aが埋設部1aに配置される長さ)は、50mm以上であることが好ましく、100mm以上であることがより好ましく、150mm以上であることがさらに好ましい。補強部材2Aがこのような位置で配置されていると、車等の衝突による外力が生じても、補強部材2Aの下端部が地表面より上部に移動することがない。そのため、最も外力が加わる地表面付近の衝突抵抗力を高めることができる。
【0016】
したがって、本実施形態において、補強部材2Aは、補強部材2Aの下端部と地表面GLとの間が50mm~200mmとなる位置で配置することが好ましい。換言すれば、埋設部1aの1/5~4/5程度にわたって補強部材2Aを配置することが好ましい。
【0017】
補強部材2Aは、図4に示すように、中心0から外側に向かって放射状に延びる複数枚の板材を有する。その形状は横断面視において点対称の部材である。本明細書で「点対称」とは、補強部材の横断面の中心に対称点が存することを意味する。
本実施形態の補強部材2Aは、横断面視で8枚の板材21~28が中心0(対称点)から外側に向かって放射状に延びた形状である。
【0018】
この構造であると、車の衝突によって加わる外力が縦中空管部12,13の円周方向におけるどの位置から加わっても、充分大きな抵抗力を発揮する。
仮に、1枚の板材21に真向から外力が加わると、その板材21の座屈抵抗で外力を受け止めるが、座屈抵抗は大きいので、大きな抵抗力を発揮する。
また、2枚の板材21,22の間に外力が加わると、2枚の板材21,22の屈曲抵抗で外力を受け止めるが、屈曲抵抗の2枚分は大きいので、大きな抵抗力を発揮する。
【0019】
補強部材2Aを構成する板材の枚数は座屈抵抗の観点から、偶数であることが好ましい。
たとえば、板材の枚数は4枚から12枚が好ましく、6~10枚がより好ましく、8枚がさらに好ましい。板材がこのような枚数であると、高い衝突抵抗力を外力の方向に依存せずに発揮することができる。なお、板材の枚数が、4枚より下回ると対抗力に方向依存性が出てしまい、12枚を越えると、重量が嵩み、コストが増加してしまう。
【0020】
また、各板材21~28の先端部、つまり車止め本体1(縦中空管部12,13)の内壁面に最接近する部分は、点当たり形状に構成されている。
本明細書において点当たり形状とは、面当たりで接触する場合の接触面積よりも狭い面積で接触する形状をいう。補強部材2A(具体的には、各板材21~28)の先端部を点当たり形状とすることで、補強部材2Aの先端部と車止め本体1の内壁面との接点を減らすことができ、補強部材2Aの車止め本体1(縦中空管部12,13)への挿入が容易に行える。
図4に示す本実施形態では、各板材21~28の先端部の横断面形状は、半円形に近い丸みを帯びた形状であるが、このほか三角形や台形状などであってもよい。
補強部材2Aは、長さが約500~750mmであり、外径が縦中空管部12,13の内径(内壁面間の距離)より少し小さい大きさである。図1の補強部材2Aは、長さが500mmのものを示している。
【0021】
補強部材2Aは、材料はアルミニウムで、製法は押出成形が好ましく用いられる。アルミニウムの押出形材は、重量が軽く、製造コストが低廉で、寸法精度が高いという利点がある。
【0022】
保持材3は、図示の例はピン状の部材であるが、ナットの螺合が可能なボルト等の棒状の部材であってもよい。また、縦中空管部12,13内に挿入して基礎5の上面に置いただけの置物であってもよい。さらに、縦中空管部12,13の下端部を覆う蓋やキャップのような部材であってもよい。これらの保持材3の材料は、コンクリートに接触しても腐食しない材料であればよく任意に使用できる。これらの材料にはステンレス鋼や、プラスチックなどの樹脂製のものを例示できる。
【0023】
本実施形態のように、保持材3を用いることによって、補強部材2Aを縦中空管部12,13に溶接や、ネジやリベットなどで固定する必要がなくなる。図示のように、補強部材2Aを縦中空管部12,13内に挿入して保持材3で支持した構成で出荷することもできるため、施工現場で組立てする必要がなく、生産性が高くなる。
【0024】
第2実施形態に係る車止めの補強部材2Bを図5に基づき説明する。
補強部材2Bは、8枚の板材21~28を中心0から外側に向かって放射状に延ばし、かつ各板材21~28の隣接する先端同士を8枚の連結板31~38で連結した形状である。
本発明で云う連結板とは、複数の板材を連結するものであり、図5に示したような板材の先端同士を連結するもの以外に、板材の中間付近を連結したものであってもよい。
各連結板31~38の連接点は、鈍角三角形状でかつ角が丸みを帯びた形状となっているので、図4に示す補強部材2Aと同様に点当たり形状となっている。このため、補強部材の車止め本体への挿入が容易に行える。
【0025】
本実施形態の補強部材2Bでは、内側の板材21~28を外側の連結板31~38で連結しており、板材21~28の屈曲変形にも座屈変形にも大きな抵抗力を与えることができる。
よって、補強部材2Bは、車の衝突等による外力に対し、大きな抵抗力を発揮することができる。
【0026】
第3実施形態に係る車止めの補強部材2Cを図6に基づき説明する。
補強部材2Cは、8枚の板材21~28を中心に0から外側に向かって放射状に延ばし、かつ各板材21~28の隣接する先端同士を4枚の連結板41~44で連結した形状である。
各連結板41~44の連接点は、直角三角形状でかつ角が丸みを帯びた形状となっているので、図4に示す補強部材2Aと同様に点当たり形状となっている。このため、補強部材の車止め本体への挿入が容易に行える。
【0027】
本実施形態の補強部材2Cでは、内側の板材21~28を外側の連結板41~44で連結しており、板材21~28の屈曲変形にも座屈変形にも大きな抵抗力を与えることができる。
よって、補強部材2Cは、車の衝突等による外力に対し、大きな抵抗力を発揮することができる。
【0028】
第1実施形態に係る車止め(補強部材2Aを用いた車止めA)と、補強部材を用いない車止めとを、横方向から外力を加え耐久荷重を確認する試験を行った。
その結果、補強部材を用いない車止めに比べ、補強部材2Aを用いた車止めAは、約2~3倍の耐久荷重を発揮することが分かった。
したがって、本発明の車止めAは、自動車に対する高い強制停止機能を発揮できると云える。
【符号の説明】
【0029】
A 車止め
1 車止め本体
2A、2B、2C 補強部材
3 保持材
5 基礎
21~28 板材
31~38 連結板
41~44 連結板
図1
図2
図3
図4
図5
図6