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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112772
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】筆記学習具及び筆記学習セット
(51)【国際特許分類】
   G09B 11/00 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
G09B11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008705
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521033457
【氏名又は名称】青山 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 卓吾
(72)【発明者】
【氏名】青山 浩之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筆圧コントロールの練習を効果的に行う。
【解決手段】筆記見本120を表示した筆記学習セットであって、筆記見本120は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を可視化した筆圧可視化線121を含む。筆圧可視化線121は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、線の濃さと線の太さにより可視化している。筆記見本120の近傍には、所定の筆記位置毎に、かけるべき筆圧を表した筆圧文字画像131や、筆記中にかけるべき筆圧を表した筆圧ペン先画像132,133を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記見本を表示した筆記学習具であって、
前記筆記見本は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を可視化した筆圧可視化線を含むことを特徴とする筆記学習具。
【請求項2】
前記筆圧可視化線は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、線の濃さにより可視化していることを特徴とする請求項1記載の筆記学習具。
【請求項3】
前記筆圧可視化線は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、線の濃さと線の太さにより可視化していることを特徴とする請求項1記載の筆記学習具。
【請求項4】
前記筆圧可視化線は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、複数種類の筆圧可視化手段により可視化していることを特徴とする1~3何れか1項記載の筆記学習具。
【請求項5】
前記筆記見本の近傍には、筆記中にかけるべき筆圧を表した筆圧指示画像が表示されていることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の筆記学習具。
【請求項6】
前記筆圧指示画像には、所定の筆記位置毎のかけるべき筆圧を表した筆圧文字画像を含むことを特徴とする請求項5記載の筆記学習具。
【請求項7】
前記筆圧指示画像には、所定の筆記位置毎のかけるべき筆圧を表した筆圧ペン先画像を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の筆記学習具。
【請求項8】
前記筆記見本に対応して、枠線により囲まれた筆記練習スペースが設けられていることを特徴とする請求項1~7何れか1項記載の筆記学習具。
【請求項9】
前記筆記見本に対応して、筆記位置に応じたかけるべき筆圧の情報をコンピュータを介して呼び出すための筆圧情報コードが設けられていることを特徴とする請求項1~8何れか1項記載の筆記学習具。
【請求項10】
請求項1~9何れか1項記載の前記筆記学習具と筆記具とを具備した筆記学習セットであって、
前記筆記具は、軸筒の前端から突出する筆記芯を傾動しないように支持する固定支持状態と、前記筆記芯を筆圧に応じて傾動するように支持する傾動可能支持状態とを、外部操作により切り替えるように構成されることを特徴とする筆記学習セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆圧の変化を学習するための筆記学習具及び筆記学習セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、例えば毛筆等のように先端が撓む筆記具で書かれる文字や線画等には、筆圧をかけるべき部分や、筆圧を抜くべき部分がある。
このような文字や線画の書き方を習得するには、例えば、特許文献1に記載の筆記具等のように、筆圧により先端側がしなるペンを用いるが有効である。
このような筆記具では、筆圧をかけると先端側がしなり、筆圧を抜くとそのしなりがなくなる。このため、筆記者が筆圧をかけた状態、及び筆圧を抜いた状態を手で感じ取ることができる。
一方、筆記練習を行うための文字練習用具には、例えば、特許文献2に記載されるように、手本文字と講師のアドバイス等を記載したものがある。
前者の筆記具と後者の文字練習用具を用いれば、筆記者は、手本文字を見ながら筆記を行って、ペン先をしならせたりしなりを元に戻したりする筆圧コントロールの練習が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-145032号公報
【特許文献2】特開2020―46545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、習字や書道の初心者は、上述した従来の手本文字等を視認しても、筆圧をかけるべき部分や、筆圧を抜くべき部分がどこであるかがわからない。このため、上述した筆圧コントロールの練習を効果的に行うのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
筆記見本を表示した筆記学習具であって、前記筆記見本は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を可視化した筆圧可視化線を含むことを特徴とする筆記学習具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、筆圧コントロールの練習を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る筆記学習セットの一例を示す使用状態図である。なお、図中(a)は傾動可能支持状態で筆記されている様子を示す要部拡大図、(b)はは固定支持状態で筆記されている様子を示す要部拡大図である。
図2】同筆記学習セットに具備される筆記具について、軸筒を切欠いて内部構造を示す要部斜視図であり、(a)はスライダーを前進させた固定支持状態、(b)はスライダーを後退させた傾動可能支持状態を示す。
図3】同筆記具について、スライダーを前進させた固定支持状態で筆記が行われている様子を示す要部縦断面図である。なお、ハッチングは省略している。
図4】同筆記具について、傾動可能支持状態で筆記が行われている様子を示す要部縦断面図であり、(a)筆圧をかける前の状態を示し、(b)は筆圧をかけた後の状態を示す。なお、ハッチングは、筆圧をかけることにより移動した部分を示す。
図5】本発明に係る筆記学習具の一例を示す平面図である。
図6】本発明に係る筆記学習具の他例を示す平面図である。
図7】筆記経過と筆圧の関係を示すグラフであり、(a)は書道経験者が筆記した場合、(b)は書道初心者の練習前に筆記した場合、(c)は書道初心者が練習後に筆記した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、筆記見本を表示した筆記学習具であって、前記筆記見本は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を可視化した筆圧可視化線を含む(図5及び図6参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記筆圧可視化線は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、線の濃さにより可視化している(図5及び図6参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記筆圧可視化線は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、線の濃さと線の太さにより可視化している(図5及び図6参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記筆圧可視化線は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、複数種類の筆圧可視化手段により可視化している(図5及び図6参照)。
【0012】
第5の特徴として、前記筆記見本に対応して、筆記中にかけるべき筆圧を表した筆圧指示画像が表示されている(図5参照)。
【0013】
第6の特徴として、前記筆圧指示画像には、所定の筆記位置毎のかけるべき筆圧を表した筆圧文字画像を含む(図5参照)。
【0014】
第7の特徴として、前記筆圧指示画像には、所定の筆記位置毎のかけるべき筆圧を表した筆圧ペン先画像を含む(図5参照)。
【0015】
第8の特徴として、前記筆記見本の近傍には、枠線により囲まれた筆記練習スペースが設けられている(図5参照)。
【0016】
第9の特徴として、前記筆記見本に対応して、筆記位置に応じたかけるべき筆圧の情報をコンピュータを介して呼び出すための筆圧情報コードが設けられている(図5参照)。
【0017】
第10の特徴は、前記筆記学習具と筆記具とを具備した筆記学習セットであって、前記筆記具は、軸筒の前端から突出する筆記芯を傾動しないように支持する固定支持状態と、前記筆記芯を筆圧に応じて傾動するように支持する傾動可能支持状態とを、外部操作により切り替えるように構成される(図1図4参照)。
【0018】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書中、軸方向とは、軸筒10の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、前記軸方向の一方側であって筆記芯の先方向を意味する。また、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
【0019】
図1は、本発明に係る筆記学習セットAの一例を示す使用状態図である。
この筆記学習セットAは、筆記具1と筆記学習具2,3とを具備している。
【0020】
<筆記具について>
筆記具1は、軸筒10と、軸筒10内に収容されて前端側の筆記部21を軸筒10の前端から突出させた筆記芯20と、軸筒10の前端側に進退可能に内在されるとともに筆記芯20を前端部から突出させて挿通した筒状のスライダー30(図3参照)と、スライダー30を軸筒10に対し後方へ付勢する付勢部材40とを備え、筆記芯20をスライダー30の前端部から出没させる出没操作機構(図示せず)とを備える。
この筆記具1は、軸筒10の前端から突出する筆記芯20を傾動しないように支持する固定支持状態a1(図2(a)及び図3参照)と、筆記芯20を傾動するように支持する傾動可能支持状態a2(図2(b)及び図4(a)(b)参照)とを切り替えるように構成される。
【0021】
軸筒10は、筒状の後軸部11と、後軸部11の前側に回転可能に接続された回転軸部12とを備え(図1図4参照)、回転軸部12の回転によりスライダー30を前進させたり後退させたりする。
【0022】
後軸部11は、その前端側に、回転軸部12を回転可能に支持する支持軸11bを有する(図2参照)。この後軸部11の内周面には、筆記芯20が筆圧を受けて撓んだ際に、この撓んだ筆記芯20における長手方向の途中箇所を径方向に受けるように、縮径された円筒面状の接触支持部11c(図4参照)が設けられている。
【0023】
支持軸11bは、長尺円筒状に形成され、その前半部側を、筒状の回転軸部12に挿入し、回転軸部12を回転自在且つ進退不能に支持している。
この支持軸11bの前端縁には、スライダー30を進退させるカム部11b1(図2参照)が設けられる。
【0024】
カム部11b1は、図2に示すように、前方を開口した前側凹部11b11と、前側凹部11b11に対し周方向に離れ且つ後方側に位置する後側凹部11b12と、これら前側凹部11b11及び後側凹部11b12の間にわたる傾斜面部11b13等を有する。
【0025】
また、回転軸部12は、後端側が後軸部11に対し回転自在に接続された回転軸本体12aと、この回転軸本体12aの前端側に一体的に接続された先端カバー12bとから形成される(図2図4参照)。なお、図示例以外の他例としては、先端カバー12bを回転軸本体12aに一体に形成した態様や、先端カバー12bを省いた態様とすることが可能である。
【0026】
回転軸本体12aは、長尺円筒状に形成される。この回転軸本体12aの内周面には、その前端側で径方向内側へ突出する環状係合部12a1と、環状係合部12a1よりも後側で付勢部材40の前端部を受ける環状の段部12a2と、段部12a2よりも後側でスライダー30を前後方向へ案内する複数の直線状のガイド溝12a3とが設けられる。
【0027】
筆記芯20は、インク収容管22の前端側に筆記部21としてのボールペンチップを接続した周知構造のボールペンリフィールである。
インク収容管22は、弾性的に撓むことが可能な合成樹脂材料(例えばポリプロピレン等)により形成される。
【0028】
スライダー30は、固定支持状態a1と傾動可能支持状態a2の切り替えに伴い、所定の操作により前進位置と後退位置の間で進退するように構成される(図2図4参照)。
このスライダー30は、図示例によれば、スライダー本体部31と、スライダー本体部31の後側に接続された受け部32との二部材から構成されるが(図3及び図4参照)、これらを単一の部材とすることが可能である。
【0029】
スライダー本体部31の外周面には、後方へ向かって徐々に縮径するカム斜面31aと、カム斜面31aの後端部に接続されて後方へ延設された小径部31bと、この小径部31bの後側に接続された大径部31cとが設けられる。
また、スライダー本体部31の前端側の内周面には、突出した際の筆記部21の外周面に接して、筆記部21をスライダー本体部31に相対し径方向へ移動しないように支持する円筒状の接触支持面31dが設けられる。
【0030】
カム斜面31aは、スライダー30に径方向の力成分が加わった際に、軸筒10側の摺接部12a11に摺接して、スライダー30を傾けながら前方へ動かす運動方向変換手段として機能する。
【0031】
小径部31bは、スライダー30が後退位置にある際に、軸筒10側の環状係合部12a1との間に、スライダー30を傾動可能に支持(傾動可能支持状態a2)にするための隙間sを確保する(図4(a)(b)参照)。
【0032】
大径部31cは、スライダー30が前進位置にある際に、軸筒10側の環状係合部12a1に嵌り合って、スライダー30を傾動しないように支持(固定支持状態a1)にする(図3参照)。
【0033】
また、受け部32は、前端側と後端側に小径部分を有する略円筒状に形成され、付勢部材40の後端部を受けて後方へ付勢される。この受け部32は、後端側の小径部分を、支持軸11bの前端側に対し、遊びを有する状態で嵌め合わせている。前記小径部分の前側には、被ガイド凸部32a(図2参照)が設けられる。
【0034】
被ガイド凸部32aは、受け部32の前後方向中央側の最大径部分の外周面から径方向外側へ突出するとともに後方へ延設された突条である。この被ガイド凸部32aの最後端部は、カム部11b1の前側凹部11b11及び後側凹部11b12に嵌り合う。
この被ガイド凸部32aは、軸筒10側の複数のガイド溝12a3にそれぞれ対応するように、周方向に間隔を置いて複数(図示例によれば等間隔に二つ)設けられる。
【0035】
また、付勢部材40は、図示例によれば圧縮コイルスバネであり、受け部32前端側の小径部分に環状に装着され、回転軸部12に対しスライダー30を後方へ付勢している。この付勢部材40の付勢力(バネ荷重)は、筆記芯20前端側が適当な筆圧でしなるように設定してある。
【0036】
また、出没操作機構(図示せず)は、外部操作により、スライダー30前端から筆記部21を出没させるものであればよい。図示例では、後端のノック部54(図1参照)が押し動かされた際に、筆記芯20を所定量前進してスライダー30から突出させて係止し、同ノック部54が再度押し動かされた際に、前記係止を解除して筆記芯20を元の状態まで後退しスライダー30内に没入するように構成される。
【0037】
<筆記学習具について>
図5に示す筆記学習具2は、薄板状の表示基体110と、この表示基体110の表面に表示された筆記見本120と、筆記見本120の近傍に表示され筆記中にかけるべき筆圧を表した複数の筆圧指示画像130と、筆記見本120に対応して表示された筆記練習スペース140と、筆圧に対応する線の濃淡の目安を示す筆圧バロメーター150と、筆記位置に応じたかけるべき筆圧の情報をコンピュータを介して呼び出すために表示された筆圧情報コード160とを具備する。
【0038】
表示基体110は、図示例によれば、適宜な厚みを有する矩形状の紙である。
この表示基体110は、単一枚数としてもよいし、複数枚重ねたものや、複数枚を製本したものであってもよい。
【0039】
筆記見本120は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を可視化した筆圧可視化線121を含む。この筆記見本120は、図示例によれば文字であり、表示基体110上に印刷されている。
【0040】
筆圧可視化線121は、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、複数の筆圧可視化手段(図示例によれば、第一の筆圧可視化手段と第二の筆圧可視化手段の二つ)により可視化している。
第一の筆圧可視化手段は、かけるべき筆圧に応じて、筆記見本120を構成する線の濃さ(明暗)を、グレースケール状に変化させるものである。
第二の筆圧可視化手段は、かけるべき筆圧に応じて、筆記見本120を構成する線の太さ(線幅)を、徐々に変化させるものである。
【0041】
具体的に説明すれば、図5に示すように、筆記見本120は、かけるべき筆圧が比較的強い部分で濃く且つ太い線で表現され、かけるべき筆圧が比較的弱い部分では、薄く且つ細い線で表現されている。
【0042】
そして、筆記見本120は、かけるべき筆圧の変化に伴って、グラデーションのように、明暗と太さが段階的に変化する。
すなわち、筆記見本120は、かけるべき筆圧が徐々に強くなるにしたがって、徐々に濃く且つ太くなり、かけるべき筆圧が徐々に弱くなるにしたがって、徐々に薄く且つ細くなる。
【0043】
また、筆圧指示画像130は、筆記見本120における筆圧をかけるべき部分の近傍や、筆記見本120における筆圧を抜くべき部分の近傍に配置される。
図示例の筆圧指示画像130は、所定の筆記位置毎のかけるべき筆圧を表した筆圧文字画像131と、所定の筆記位置毎のかけるべき筆圧を表した筆圧ペン先画像132(又は133)とを含む。
【0044】
筆圧文字画像131は、筆圧の強さを、文字や言葉、文章等の画像により表現したものである。
この筆圧文字画像131の具体例としては、図5に示すように、「強く」、「弱く」、「弱く入る」、「徐々に弱く」等が挙げられる。他例としては、「強い」、「弱い」、「強く入る」、「筆圧を徐々に加えて」、「筆圧を徐々に抜いて」等であってもよい。
【0045】
筆圧ペン先画像132は、筆圧の強さを、しなり加減の異なるペン先の画像により表現したものである。
具体的に説明すれば、筆記見本120において筆圧をかけるべき部分の近傍には、先端側がしなったペン先を表現した筆圧ペン先画像132が印刷される。
また、筆記見本120において筆圧を抜くべき部分の近傍には、先端側がしなっていない略直線状のペン先を表現した筆圧ペン先画像133が印刷される。
【0046】
図示例によれば、上記したように二種類の筆圧ペン先画像132,133を用いているが、これら筆圧ペン先画像は、ペン先のしなり加減の異なる三以上の画像としてもよい。前記三以上の画像とは、例えば、上記した筆圧ペン先画像132,133、及び、しなり加減が筆圧ペン先画像132と筆圧ペン先画像133の中間程度である筆圧ペン先画像(図示せず)とすればよい。
【0047】
図示例の筆圧ペン先画像132,133は、上述した筆記具1のペン先側部分であり、筆記部21を筆記学習具2に接して、所定の筆記角度で筆記されている状態を示す。
【0048】
筆圧ペン先画像132は、傾動可能支持状態a2において、筆記部21が筆記学習具2に押し付けられて、筆記芯20の先端側が軸筒10に対し傾斜している状態を示している。すなわち、この状態は、図4(b)に対応している。
【0049】
筆圧ペン先画像133は、傾動可能支持状態a2において、筆記部21が筆記学習具2に対し軽く接して、筆記芯20が軸筒10の軸心と略平行な状態(言い換えれば、筆記芯20と軸筒10の軸心が略一致した状態)を示している。すなわち、この状態は、図4(a)に対応している。
【0050】
また、筆記練習スペース140は、筆記者が筆圧指示画像130を視認しながら、筆記具1により文字を書くためのスペースである。
この筆記練習スペース140は、図示例によれば、表示基体110状に、矩形状の枠線141を印刷したものである。
【0051】
筆圧バロメーター150は、書いた文字の筆圧の強さを色の変化で示したもの、言い換えれば、筆圧の強弱によって、筆記された線の濃淡がどのように変化するのかを示したものである。
この筆圧バロメーター150は、図示例によれば、筆圧に対応するように濃淡の異なる複数の濃淡見本151と、代表的な濃淡見本151の近傍に表示されてこの濃淡見本151を筆記するためにかけるべき筆圧を表した筆圧文字画像131及び筆圧ペン先画像132,133とを有する。
【0052】
また、筆圧情報コード160は、筆記見本120に対応して表示基体110上に表示されている。
この筆圧情報コード160は、コンピュータに入力装置を介して入力可能な文字や記号、図柄等である。
【0053】
ここで、前記コンピュータには、スマートフォンや、筆圧情報コード160を入力するための入力装置を備えたパーソナルコンピュータ、筆圧情報コード160を入力するための入力装置を備えた電子辞書等を含む。
前記コンピュータは、インターネットに接続されていることが好ましいが、筆圧情報コード160に関連付けされた筆圧情報データを記憶した記憶装置を具備していればインターネットに接続されていない態様とすることも可能である。
【0054】
また、前記入力装置は、例えば、スマートフォンに具備されたカメラ及びアプリ(ソフトウェア)による画像読取器、パーソナルコンピュータに接続された画像読取器等とすればよい。この入力装置の他例としては、手動入力するためのキーボードであってもよい。
【0055】
筆圧情報コード160は、筆記見本120を、所定の筆圧情報に関連付けるように表現されたコードである。図5に示す一例では、この筆圧情報コード160を、QRコード(登録商標)としている。この筆圧情報コード160の他例としては、図示しないバーコードや図形、文字列、ARマーカー等とすることも可能である。
【0056】
前記コンピュータは、予めインストールされたプログラムにより動作し、筆圧情報コード160が入力されると、この筆圧情報コード160に関連付けされた筆圧情報データを、インターネット接続されたサーバコンピュータ等から呼び出し、その筆圧情報データを、ディスプレイ画面上に表示する。
【0057】
前記筆圧情報データの好ましい一例としては、筆圧の強弱を表現した動画データとする。
この動画データは、例えば、筆記見本120の文字が一画ずつ線が書かれてゆく動画であって、その時の筆圧の入れ方や筆圧の高さ等を、線の濃さや3D画像により表現した動画とすればよい。
さらに、前記動画データの他例としては、文字とは別にインジケーターで筆圧の強弱を表現した動画や、ペン先のしなり加減の画像を文字が書かれる経過に応じて表示した動画、筆圧の強いところで大きい音(例えば、筆記音など)を発し筆圧の弱いところで小さい音を発するようにした動画、前記した複数種類の動画を適宜に組み合わせてなる動画とすることが可能である、
【0058】
なお、筆圧情報コード160の他例としては、前記QRコード(登録商標)にかえてARマーカーを用い、このARマーカーに関連づけされたAR画像を、前記コンピュータの画面に表示するようにしてもよい。
【0059】
図5に例示する複数の濃淡見本151は、一方向へゆくにしたがって徐々に薄くなるように、一列に並べられている。
同図の筆圧バロメーター中、筆圧ペン先画像132は、最も濃い濃淡見本151の近傍に配設され、しなった状態のペン先を表している。
また、同図の筆圧バロメーター中、筆圧ペン先画像133は、最も薄い濃淡見本151の近傍に配設され、しならない状態のペン先を表している。
【0060】
また、図6に示す筆記学習具3は、表示基体110(例えば、紙面)上に、異なる文字からなる複数種類の筆記見本120と、各筆記見本120を筆記練習するための筆記練習スペース140とを表示したものである。
【0061】
図6中の筆記見本120(図示例によれば「明」と「木」の文字)は、図5に示す筆記見本120と同様に、筆記位置に応じたかけるべき筆圧を、複数の筆圧可視化手段(具体的には、異なる濃淡及び太さ)により可視化した筆圧可視化線121によって構成される。
【0062】
図6中の筆記練習スペース140は、各筆記見本120の近傍に一列に並ぶ複数の枠線141から構成される。各枠線141は、その枠内に、筆記見本120に対応する単一の文字が記入されるように形成される。
【0063】
図6中、「トレーニングモード」とは、筆記具1を傾動可能支持状態a2で用いることを示し、「ノーマルモード」とは、筆記具1を固定支持状態a1で用いることを示す。
【0064】
次に、上記構成の筆記学習セットAについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、筆記具1の動作について説明すれば、ノック部54の操作により筆記部21が突出して、スライダー30が前進位置にある状態では、図3に拡大視するように、スライダー30の大径部31cが、軸筒10側の環状係合部12a1に嵌り合う。このため、筆記芯20及びスライダー30は、傾動することのない固定支持状態a1に保持される。
この固定支持状態a1によれば、筆記具1を把持して筆記を行う筆記者は、通常の筆記具と同様の硬い筆感を得ることができる。
【0065】
また、筆記具1は、前記固定支持状態a1において、図2(a)(b)に示すように、回転軸部12が回転操作されると、被ガイド凸部32aが、前側凹部11b11から抜け出て、傾斜面部11b13を周方向斜め後方へ滑り動き、後側凹部11b12に嵌り合う。
【0066】
すると、図4(a)(b)に示すように、回転軸本体12aの環状係合部12a1とスライダー本体部31の小径部31bとの間に、スライダー30の径方向への微動を可能にする隙間sが確保される。このため、筆記芯20及びスライダー30が、傾動可能支持状態a2になる。
【0067】
この傾動可能支持状態a2では、筆記部21が被筆記面に押し付けられて、筆記部21に径方向の力が加わると、この径方向の力が接触支持面31dを介してスライダー本体部31に伝達し、スライダー30が、カム斜面31aを環状係合部12a1の前端に摺接させて、軸筒10に相対し前進しながら傾動する(図4(b)参照)。
このため、筆記具1を把持して筆記を行う筆記者は、ペン先がしなやかに傾く筆のような独特の筆感を得ることができる。
【0068】
そして、筆記者が筆記具1を用いて筆記学習具2の筆記練習スペース140に筆記を行う際、筆記者は、筆記見本120の濃淡及び太さを視認することにより、筆記見本120のどの位置で筆圧を強くし、どの位置で筆圧を抜くのか、筆圧を徐々に強くするのか、筆圧を徐々に抜くのか等を把握することができる。
特に、図5に示す筆記学習具2を用いれば、筆記者は、筆圧指示画像(詳細には、筆圧文字画像131及び筆圧ペン先画像132,133)を視認することによっても、筆圧のかけ具合を把握することができる。
【0069】
よって、上記構成の筆記学習セットAによれば、筆圧を徐々に強くしたり弱めたり等、筆圧コントロールの練習を効果的に行うことができる。
【0070】
<実験結果>
この実験では、筆記者が筆記具1を固定支持状態a1にして「小」の文字を筆記し、その筆記中に、筆記経過時間と、筆記具1に加えられた筆圧とを記録した。図7(a)~(c)の各グラフは、縦軸が加えられた筆圧、横軸が筆記経過時間である。
【0071】
図7(a)は、書道経験者が、「小」の文字を筆記した場合である。
図7(b)は、書道初心者が、筆記練習をする前に同文字を筆記した場合である。
図7(c)は、同書道初心者が、筆記学習セットAを用いて筆記練習をした後に同文字を筆記した場合である。なお、図中、「トレーニングモード」とは、筆記具1が傾動可能支持状態a2にあることを意味する。
【0072】
上記実験結果より、初心者であっても、筆記学習セットAを用いて練習を行なった場合には、筆圧のかけ方が書道経験者のものに近くなるものといえる。
【0073】
<変形例>
上記実施態様によれば、筆記見本120の線の濃さ及び太さが変化するようにしたが、この筆記見本は、筆記位置に応じてかけるべき筆圧を可視化すれば、以下の他例のようにすることが可能である。
すなわち、筆圧可視化手段の他例としては、筆記位置の変化に伴う筆圧の変化に応じて、筆記見本120の線の太さを変えずに、線の濃さのみを変化させる態様としてもよい。
【0074】
また、筆圧可視化手段の他例としては、筆記位置の変化に伴う筆圧の変化に応じて、筆記見本120の線の種類を変化するようにしてもよい。ここで、線の種類は、実線や、破線、一点鎖線、二点鎖線等である。
【0075】
また、筆圧可視化手段の他例としては、筆記見本120を構成する線を破線とし、この破線を構成する複数の短線の間隔を、筆記位置の変化に伴う筆圧の変化に応じて変化させるようにしてもよい。
さらに、筆圧可視化手段の他例としては、筆記見本120を構成する線を間隔を置いた多数のドットとし、これらドットの大きさを、筆記位置の変化に伴う筆圧の変化に応じて変化させるようにしてもよい。
さらに、筆圧可視化手段の他例としては、筆記見本120を立体的な3D画像とし、この3D画像の高さを、筆記位置の変化に伴う筆圧の変化に応じて変化させるようにしてもよい。
【0076】
さらに、筆圧可視化手段の他例としては、筆記位置の変化に伴う筆圧の変化に応じて、線の色が変化する態様(図示せず)や、線を波線とし、この波線の振れ幅及び/又は周期が変化する態様(図示せず)とすることが可能である。さらには、これら複数種類の筆圧可視化手段を適宜に組み合わせることが可能である。
【0077】
なお、筆記見本120の好ましい態様としては、複数種類の筆圧可視化手段(例えば、濃さと太さの変化)により筆圧を可視化するものとし、単一種類の筆圧可視化手段(例えば、太さの変化のみ)により筆圧を可視化するものを除く。
【0078】
また、上記実施態様によれば、好ましい一例として、表示基体110に紙を用いたが、表示基体110は、筆記具1によって筆記が可能なものであればよく、例えば、布シートや、木板等としてもよい。
【0079】
さらに、表示基体110の他例としては、筆記見本120を表示可能なディスプレイ装置を具備した表示電子機器であってもよい。前記表示電子機器には、コンピュータや、タブレットパソコン、スマートフォン、ゲーム機器、電子辞書等を含む。
表示基体110を前記表示電子機器とした場合、好ましくは前記ディスプレイ装置としてタッチ入力可能な液晶ディスプレイ装置を用い、上記構成の筆記具1に換えて電子入力ペンを用いる。
【0080】
また、表示基体110を前記電子機器にした場合には、前記電子機器が筆記者によりペン入力された文字と筆記見本120とを比較して、ペン入力された文字を点数評価するようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施態様によれば、筆記見本120を文字としたが、この筆記見本の他例としては、絵や、イラスト、記号、マーク、その他の図柄等とすることも可能である。
【0082】
また、上記実施態様によれば、筆記練習スペース140を構成する枠線141内を空白にしたが、他例としては、一部又は全部の枠線141内に筆記見本120を薄く表示して、筆記者がなぞり書きするようにしてもよい。
【0083】
また、上記構成の筆記学習セットAは、特に好ましい態様として、固定支持状態a1と傾動可能支持状態a2とを切替可能な筆記具1を具備したが、この筆記学習セットの他例としては、上記筆記具1に換えて毛筆や毛筆状の筆記具を具備するようにしてもよい。さらに、他例としては、上記筆記具1に換えて、通常のボールペンや、サインペン、鉛筆、シャープペンシル等、先端側が殆どしなることのない筆記具を具備することも可能である。
【0084】
また、上記筆記学習セットAは、筆記具1と筆記学習具2を具備したが、他例としては、上記構成に、替え芯やその他の文具等を加えた態様とすることも可能である。
【0085】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0086】
1:筆記具
2:筆記学習具
120:筆記見本
121:筆圧可視化線
131:筆圧文字画像
132,133:筆圧ペン先画像
140:筆記練習スペース
141:枠線
150:筆圧バロメーター
A:筆記学習セット
a1:固定支持状態
a2:傾動可能支持状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7