(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112782
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008728
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 達也
(72)【発明者】
【氏名】原 宇史
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA05
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】安価で小型化が可能な電流センサを提供する。
【解決手段】帯状の導体10に流れる電流の大きさを、当該電流により発生する磁界の磁束密度を磁気検出素子で検出することにより測定する電流センサ1において、導体10は、複数の折り返し部11と、複数の折り返し部11のうち最も外側にある2つの折り返し部11の外側の端部から夫々延出する2つの延出部13と、2つの延出部13の間で折り返し部11の端部と繋がっている中間部12と、を含む測定部を有し、測定部における中間部12と2つの延出部13とは、導体10の厚さ方向に沿って見たときに少なくとも一部が重複しており、磁気検出素子は、測定部に少なくとも2つ配置されており、導体10の幅方向に沿って見たときに、少なくとも、2つの延出部13の夫々と延出部13に隣り合う中間部12との間に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の導体に流れる電流の大きさを、当該電流により発生する磁界の磁束密度を磁気検出素子で検出することにより測定する電流センサであって、
前記導体は、複数の折り返し部と、複数の前記折り返し部のうち最も外側にある2つの前記折り返し部の外側の端部から夫々延出する2つの延出部と、2つの前記延出部の間で前記折り返し部の端部と繋がっている中間部と、を含む測定部を有し、
前記測定部における前記中間部と2つの前記延出部とは、前記導体の長手方向に垂直な方向である厚さ方向に沿って見たときに少なくとも一部が重複しており、
前記磁気検出素子は、前記測定部に少なくとも2つ配置されており、前記導体の前記長手方向と前記厚さ方向に垂直な方向である幅方向に沿って見たときに、少なくとも、2つの前記延出部の夫々と前記延出部に隣り合う前記中間部との間に配置されている電流センサ。
【請求項2】
前記磁気検出素子の夫々は、前記導体に対して何れも同じ方向を向く検出面を有し、当該検出面に入力される前記磁界の前記検出面に直交する直交成分の前記磁束密度を検出し、
少なくとも2つの前記磁気検出素子の夫々の前記直交成分の前記磁束密度の差分に基づいて前記電流を測定する請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記幅方向に沿って見たときに隣り合う少なくとも2つの前記磁気検出素子は、1つのパッケージに収容された磁電変換ユニットを構成しており、
前記測定部の前記中間部は、前記導体の前記長手方向と前記厚さ方向とに沿う側面から凹状に切り欠かれた第1切欠きを有し、
前記磁電変換ユニットの少なくとも一部は、前記第1切欠きに嵌まり込んで配置されている請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記測定部の前記延出部は、前記厚さ方向に沿って見たときに前記中間部と重複する位置で、前記第1切欠きが形成された前記導体の前記側面と反対側の側面から凹状に切り欠かれた第2切欠きを有する請求項3に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記磁電変換ユニットに収容された全ての前記磁気検出素子の検出面は、前記第1切欠きが形成された前記導体の前記側面よりも切り欠かれた側に位置している請求項3又は4に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体を流れる電流を測定する際に、導体を流れる電流に応じて当該導体の周囲に生じる磁界の磁束密度を磁気検出素子で検出し、その検出された磁束密度に基づいて導体に印加された電流を演算して求める技術が利用されてきた。このような技術を利用した電流センサとして、例えば下記に出典を示す特許文献1,2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、導体に流れる電流を測定する電流センサが開示されている。この電流センサは、磁性体であるU字状の集磁コア(特許文献1では「コア」)と、集磁コアのスリットに挿通される導体と、集磁コアのスリット内に配設され、磁界を検出する検出素子とを備えて構成される。
【0004】
特許文献2には、導体を流れる電流による磁界をホールセンサにより検知して電流を測定する、集磁コアを必要としないホールセンサ装置が開示されている。このホールセンサ装置において、導体はホールセンサを取り囲むようにU字形に曲げられており、U字形の導体の3つの導体区分で発生する磁界を重畳して電流を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-185935号公報
【特許文献2】特表2002-516396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、導体を取り囲むように磁性体からなる集磁コアが配置されているため、電流センサのサイズが大きくなり、電流センサを小型化することが困難である。また、集磁コアの磁気飽和を防ぐため、導体を流れる最大電流に応じて集磁コアの大きさを変えて都度設計する必要があり、製品コストが増大するおそれがある。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、集磁コアを設けずに構成されているため、電流を測定するために必要な大きさの磁束密度を検出するためには、ホールセンサを導体に近づける必要があるが、技術的に限界があり困難である。そこでホールセンサよりも感度の高い磁気抵抗センサをホールセンサの代わりに用いることも考えられるが、磁気抵抗センサは磁気飽和領域が存在するので、検出できる磁束密度が限定される。そのため、広範囲に亘る磁束密度を検出して電流を測定することは難しい。また、磁気抵抗センサはホールセンサに比べて高価であり、製品コストが増大する。
【0008】
そのため、安価で小型化が可能な電流センサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電流センサの特徴構成は、帯状の導体に流れる電流の大きさを、当該電流により発生する磁界の磁束密度を磁気検出素子で検出することにより測定する電流センサであって、前記導体は、複数の折り返し部と、複数の前記折り返し部のうち最も外側にある2つの前記折り返し部の外側の端部から夫々延出する2つの延出部と、2つの前記延出部の間で前記折り返し部の端部と繋がっている中間部と、を含む測定部を有し、前記測定部における前記中間部と2つの前記延出部とは、前記導体の長手方向に垂直な方向である厚さ方向に沿って見たときに少なくとも一部が重複しており、前記磁気検出素子は、前記測定部に少なくとも2つ配置されており、前記導体の前記長手方向と前記厚さ方向に垂直な方向である幅方向に沿って見たときに、少なくとも、2つの前記延出部の夫々と前記延出部に隣り合う前記中間部との間に配置されている点にある。
【0010】
このような特徴構成であれば、集磁コア及びシールドコアを不要とし、導体と磁気検出素子のみで電流センサを構成できるので、導体を流れる電流を検出する電流センサを安価に構成することができると共に小型化が可能となる。また、磁気検出素子が測定部における延出部と延出部に隣接した中間部との間に配置されているので、磁気検出素子で検出する対象である、導体を流れる電流により発生する磁界の磁束密度の大きさを増大させて検出することができると共に、磁気検出素子への外乱磁界の影響を抑制することができる。これにより、導体を流れる電流を精度よく測定することができる。これは、磁気検出素子の感度が向上したのと同じ効果である。
【0011】
本構成に係る電流センサにおいて、前記磁気検出素子の夫々は、前記導体に対して何れも同じ方向を向く検出面を有し、当該検出面に入力される前記磁界の前記検出面に直交する直交成分の前記磁束密度を検出し、少なくとも2つの前記磁気検出素子の夫々の前記直交成分の前記磁束密度の差分に基づいて前記電流を測定すると好適である。
【0012】
このような構成であれば、磁気検出素子で検出する対象である、導体を流れる電流により発生する磁界の磁束密度の大きさを更に増大させることが可能となると共に、外乱磁界の影響を更に抑制することができる。これにより、導体を流れる電流の測定精度を更に高めることができる。
【0013】
本構成に係る電流センサにおいて、前記幅方向に沿って見たときに隣り合う少なくとも2つの前記磁気検出素子は、1つのパッケージに収容された磁電変換ユニットを構成しており、前記測定部の前記中間部は、前記導体の前記長手方向と前記厚さ方向とに沿う側面から凹状に切り欠かれた第1切欠きを有し、前記磁電変換ユニットの少なくとも一部は、前記第1切欠きに嵌まり込んで配置されていると好適である。
【0014】
このような構成であれば、磁電変換ユニットを配置することにより複数の磁気検出素子を一度に配置することができる。また、磁電変換ユニットの製造時に複数の磁気検出素子の夫々の位置精度を確保した上で磁電変換ユニットを製造して第1切欠きに配置することにより、個別に位置精度を確保して複数の磁気検出素子を配置する場合よりも、短時間に複数の磁気検出素子を精度よく配置することができる。これらにより、電流センサの製造時の工数を削減して安価に製造することができる。
【0015】
本構成に係る電流センサにおいて、前記測定部の前記延出部は、前記厚さ方向に沿って見たときに前記中間部と重複する位置で、前記第1切欠きが形成された前記導体の前記側面と反対側の側面から凹状に切り欠かれた第2切欠きを有すると好適である。
【0016】
このような構成であれば、延出部の周囲に発生する磁界の強い箇所を磁気検出素子の方に近づけることができるので、磁気検出素子で検出される、導体を流れる電流により発生する磁界の磁束密度の大きさを更に増大させることができ、更に精度よく導体の電流を測定することができる。
【0017】
本構成に係る電流センサにおいて、前記磁電変換ユニットに収容された全ての前記磁気検出素子の検出面は、前記第1切欠きが形成された前記導体の前記側面よりも切り欠かれた側に位置していると好適である。
【0018】
このような構成であれば、第1切欠きが形成された導体の側面よりも切り欠かれた側(導体の側面よりも内側)に検出面が位置するので、磁気検出素子への外乱磁界の影響を抑制することができ、導体を流れる電流を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る電流センサを3つ並設した状態を示す分解斜視図である。
【
図2】電流センサを3つ並設した状態を示す分解斜視図である。
【
図3】電流センサを3つ並設した状態を示す斜視図である。
【
図6】3つの電流センサの配置を変更した状態を示す斜視図である。
【
図7】他の実施形態に係る電流センサを3つ並設した状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電流センサの実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。本発明に係る電流センサは、集磁コアを用いることなくコンパクトに構成される。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0021】
〔第1実施形態〕
導体に電流が流れる場合には、当該電流の大きさに応じて導体を軸心として磁界が発生する(アンペールの右ネジの法則)。本実施形態に係る電流センサ1は、このような磁界における磁束の磁束密度を検出し、検出された磁束密度に基づいて導体に流れる電流(電流値)を測定する。電流センサ1は、
図1~
図3に示すように、導体10と、磁電変換ユニット20とを備えて構成される。磁電変換ユニット20には、2つの磁気検出素子21が設けられている(
図4を参照)。
【0022】
本実施形態では、帯状の導体10が、三相モータに接続される3本のバスバーであるとして説明する。より具体的には、導体10は、三相モータの3つの端子の夫々と当該三相モータを流れる電流を制御するインバータの3つの端子の夫々とを電気的に接続する。このため、以下では導体10を3本の導体10の夫々として説明し、3つの導体10の夫々を区別する場合には、導体10A、導体10B、導体10Cとして説明する。本実施形態においては、3つの電流センサ1,1,1、すなわち、導体10Aの電流を測定する電流センサ1と、導体10Bの電流を測定する電流センサ1と、導体10Cの電流を測定する電流センサ1と、が並設されている。3つの電流センサ1,1,1は同じ構造であるため、3つの電流センサ1,1,1について共通する事は、1つの電流センサ1についてのみ説明する。
【0023】
電流センサ1の導体10は、
図1~
図3に示すように、折り返し部11と中間部12と延出部13と、を有する。本実施形態では、電流センサ1は、折り返し部11を2つ有する。また、延出部13は、2つであり、2つの折り返し部11の外側の端部11Bから夫々延出している。中間部12は1つであり、2つの折り返し部11の内側の端部11A同士を繋いでいる。すなわち、導体10の折り返し部11、中間部12、延出部13は、導体10を直線状に伸ばしたときに、その長手方向(延出方向)に沿って、延出部13、折り返し部11、中間部12、折り返し部11、延出部13の順に形成されている。なお、
図1、
図2において、内側の端部11Aと外側の端部11Bを、夫々破線で示している。
【0024】
導体10の「長手方向」とは、帯状の導体10の延出する方向であり、
図1~
図3におけるX方向である。また、導体10の「厚さ方向」を、導体10の長手方向に垂直な方向であって、且つ、導体10A、導体10B、導体10Cが隣接する方向として定義する。すなわち、導体10の厚さ方向とは、
図1~
図3におけるY方向である。更に、導体10の「幅方向」を、導体10の長手方向及び厚さ方向の両方に垂直な方向として定義する。すなわち、導体10の幅方向とは、
図1~
図3におけるZ方向である。
【0025】
本実施形態では、導体10について、X方向を導体10の「長手」若しくは「長さ」、Y方向を導体10の「厚さ」若しくは「厚み」、Z方向を導体10の「幅」として定義する。また、導体10のX方向とZ方向とに平行な平面を導体10の板面10Dと、X方向とY方向とに平行な平面を導体10の側面10Eと、夫々定義する。
【0026】
図1、
図2に示すように、本実施形態では、導体10のうち、折り返し部11、中間部12、及び、延出部13のうちY方向視(厚さ方向に沿って見る)で折り返し部11及び中間部12と重複する部分、を測定部14と定義する。測定部14は、Z方向視(幅方向に沿って見る)においてS字状(
図2参照)に形成されている。本実施形態では、3つ電流センサ1,1,1における導体10A、導体10B、導体10Cの夫々の測定部14,14,14がY方向視で重複するように配置されている。
【0027】
測定部14の中間部12には、導体10の一方の側面10Eから幅方向に矩形状に切り欠かれた凹状の第1切欠き15が形成されている。また、測定部14の2つの延出部13の夫々には、導体10の他方(反対側)の側面10Eから幅方向に矩形状に切り欠かれた凹状の第2切欠き16,16が形成されている。第1切欠き15と第2切欠き16の側面10EからZ方向に沿う切欠き深さ及びX方向に沿う切欠き長さは同じである。なお、導体10に第1切欠き15と第2切欠き16とを設けることにより、当該箇所において導体10における電流が流れる方向(X方向)に垂直な断面積が小さくなって発熱しやすくなる。そのため、第1切欠き15と第2切欠き16の切欠き量は、発熱による導体10の温度上昇の影響を考慮して決めることが好ましい。
【0028】
第1切欠き15には、後述する磁電変換ユニット20が嵌まり込んでいる(
図3、
図4参照)。本実施形態においては、導体10A,10B,10Cに夫々対応した3個の磁電変換ユニット20,20,20が、1枚の基板30に表面実装されている。なお、図面においては、磁電変換ユニット20,20,20の端子の記載を省略している。
【0029】
本実施形態では、
図4に示すように、夫々の磁電変換ユニット20には、複数(本実施形態では2つ)の磁気検出素子21,21が内蔵されている。磁気検出素子21とは、磁束の磁束密度を検出する機能を有するデバイスであって、例えばホール素子が相当する。本実施形態では、磁電変換ユニット20は
図4に示されるような、複数の端子(不図示)を有する樹脂パッケージ(パッケージの一例)23内に2つの磁気検出素子21,21を内包して構成される。磁気検出素子21として、ホール素子の代わりに磁気抵抗素子を用いてもよい。
【0030】
磁電変換ユニット20を用いることにより2つの磁気検出素子21,21を一度に配置することができる。また、磁電変換ユニット20の製造時に2つの磁気検出素子21,21の夫々の位置精度を確保した上で磁電変換ユニット20を製造して第1切欠き15に配置することにより、個別に位置精度を確保して2つの磁気検出素子21,21を配置する場合よりも、短時間に2つの磁気検出素子21,21を精度よく配置することができる。これらにより、電流センサ1の製造時の工数を削減して安価に製造することができる。
【0031】
2つの磁気検出素子21,21の夫々は、上述した検出対象である磁束密度に応じた磁束が入力される検出面22,22を有する。2つの磁気検出素子21,21は、夫々の検出面22,22が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、本実施形態における検出面22は、空間上の面を示すものではなく、単に磁束密度を検出する機能部、すなわち検出部分を示すものである。したがって、検出面22は、検出部分と読み替えてもよい。
【0032】
ここで、導体10に電流が流れる場合には、当該電流の大きさに応じて導体10の周囲に磁界が発生する。磁気検出素子21は、このような磁界における磁束の磁束密度を検出する。磁電変換ユニット20は、
図3、
図4に示すように、検出面22が中間部12の第1切欠き15の底面15Aに対向するように設けられる。また、2つの磁気検出素子21,21は、X方向視(長手方向に沿って見る)で、中間部12を挟んで両側に対称になるように設けられる。すなわち、夫々の磁気検出素子21は、測定部14の延出部13と中間部12との間に配置されている。また、夫々の磁気検出素子21は、Z方向視で導体10(中間部12)と重複しないように配置されている。この状態で、導体10に
図3において矢印で示される向きの電流が流れると、磁電変換ユニット20に対向する中間部12及び延出部13の夫々には、
図4において一点鎖線で示すような向きの磁束が生じる。中間部12と2つの延出部13とでは電流の向きが逆になっているので、2つの磁気検出素子21の夫々の検出面22に入力される、中間部12の周囲に発生する磁束と延出部13の周囲に発生する磁束の向きとは同じになる。したがって、2つの磁気検出素子21,21の夫々の検出面22には、中間部12の周囲の磁束と、延出部13の周囲の磁束とが合算された磁束が入力される。換言すると、中間部12の周囲の磁束は、延出部13の周囲の磁束により強められる。
【0033】
2つの磁気検出素子21,21のうちの一方(
図4において左側)の磁気検出素子21の検出面22には、磁気検出素子21から基板30に向かう方向(
図4において下から上方向)の磁束が入力される。2つの磁気検出素子21,21のうちの他方(
図4において右側)の磁気検出素子21の検出面22には、基板30から磁気検出素子21に向かう方向(
図4において上から下方向)の磁束が入力される。
【0034】
2つの磁気検出素子21,21の夫々は、検出面22に入力される磁束のうち、検出面22に直交する直交成分の磁束密度を検出する。すなわち、2つの磁気検出素子21,21は、
図4におけるZ方向に沿う方向の磁束成分の磁束密度を検出する。本実施形態においては、磁気検出素子21の検出面22が側面10Eよりも第1切欠き15の切り欠かれた側(導体10の側面10Eよりも内側)に位置するように、磁気検出素子21(磁電変換ユニット20)が配置されている。
【0035】
第1切欠き15及び第2切欠き16を設けることにより、中間部12及び延出部13の周囲の夫々の回転磁界の中心が導体10の断面中心からずれると共に、回転磁界の方向が導体10の断面に対する対称形状ではなくなる。具体的には、
図4において、電流の流れる方向を示す記号が中間部12と延出部13の夫々の回転磁界の中心を表し、一点鎖線が回転磁界の方向を表す。この結果、第1切欠き15の底面15A(延出部13の側面10Eよりも内側)の近傍における磁束の垂直成分が、延出部13の側面10Eよりも外側における磁束の垂直成分よりも大きくなる。したがって、延出部13の側面10Eよりも内側に磁気検出素子21の検出面22を配置することにより、検出面22により多くの磁束の垂直成分が入力されるようになる。これにより、基板30の取付位置ずれや磁気検出素子21の実装位置ずれに起因して導体10に対する検出面22の位置がずれたとしても、検出面22で検出される磁束密度のばらつきが小さくなり、磁気検出素子21の検出感度のロバスト性が向上する。
【0036】
上述したように、2つの磁気検出素子21,21の夫々の検出面22に入力される磁束の直交成分の向きは互いに逆方向である。そして、磁電変換ユニット20は、2つの検出面22,22に入力される磁束の直交成分の磁束密度の差分に応じた信号を出力するように構成されている。具体的には、磁電変換ユニット20においては、
図5に示されるように、2つの磁気検出素子21,21が配線されている。すなわち、2つの磁気検出素子21,21の検出結果の夫々は、増幅器AMP1の反転端子と非反転端子とに入力され、差動磁束が検出される。更に、この差動磁束は後段の増幅器AMP2により増幅され、磁電変換ユニット20の信号として出力される。これにより、磁電変換ユニット20が中間部12に流れる電流に起因して生じる磁束の磁束密度を増大させて検出することが可能となる。
【0037】
一方、2つの磁気検出素子21,21の夫々の検出面22に入力される外乱磁界(例えば、導体10Bに配置された磁電変換ユニット20の2つの磁気検出素子21,21の夫々の検出面22,22に入力される導体10Aで発生した磁界)の磁束の直交成分の向きは何れも同方向である。そのため、これらの外乱磁界の磁束の直交成分は、増幅器AMP1に入力されると相殺されるので、外乱磁界は抑制されて出力される。このように、電流センサ1の構成であれば、磁気検出素子21で検出されるべき導体10の周囲の磁界の磁束密度は増大され、外乱磁界の磁束密度は相殺されて抑制されるので、磁気検出素子21の感度が向上したのと同じ効果が得られる。
【0038】
このように、本実施形態の電流センサ1は、集磁コアを不要とし、導体10と磁電変換ユニット20(磁気検出素子21)のみで構成されているので、電流センサ1を安価に構成することができると共に小型化が可能となる。
【0039】
電流センサ1においては、S字形状に形成された2つの折り返し部11、中間部12、2つの延出部13からなる測定部14を有しており、磁気検出素子21が測定部14における延出部13と延出部13に隣接した中間部12との間に配置されているので、導体10の中間部12を流れる電流により発生する磁束を、延出部13を流れる電流により発生する磁束により増大させて検出することができると共に、磁気検出素子21への外乱磁界の影響を抑制することができる。これにより、導体10を流れる電流を精度よく測定することができる。
【0040】
更に、磁電変換ユニット20が、磁気検出素子21,21の2つの検出面22,22に入力される磁束の直交成分の磁束密度の差分に応じた信号を出力するように構成されているので、磁気検出素子21,21で検出する対象である、導体10を流れる電流により発生する磁界の磁束密度の大きさを更に増大させることが可能となると共に、磁気検出素子21,21への外乱磁界の影響を更に抑制することができる。これにより、導体10を流れる電流を更に精度よく測定することができる。また、磁気検出素子21の検出面22が導体10の一方の側面10Eよりも第1切欠き15の切り欠かれた側(導体10の側面10Eよりも内側)に位置するように磁電変換ユニット20を配置することにより、磁気検出素子21への外乱磁界の影響を更に抑制することができ、導体10を流れる電流を更に精度よく測定することができる。
【0041】
また、測定部14の2つの延出部13の夫々に対して、第1切欠き15が形成された側面10Eと反対側の側面10Eから幅方向に矩形状に凹状に切り欠いた第2切欠き16,16を形成することにより、延出部13の周囲に発生する磁界の強い箇所を磁気検出素子21,21の方に近づけることができるので、磁気検出素子21,21で検出される、導体10の中間部12を流れる電流により発生する磁界の磁束密度の大きさを更に増大させることができ、更に精度よく導体10の電流を測定することができる。
【0042】
本実施形態における3つの電流センサ1,1,1の配置について、導体10A、導体10B、導体10Cの夫々の測定部14がY方向視で重複するように配置された構成を説明したが、これに限られるものではない。
図6に示すように、3つの電流センサ1,1,1の導体10A、導体10B、導体10Cの夫々の測定部14をX方向に沿ってずらして、Y方向視で重複しないように配置してもよい。測定部14をこのように配置することで、導体10Aから導体10CまでのY方向の全長を短くすることができる。
【0043】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、電流センサ1における、導体10の測定部14に第1切欠き15と第2切欠き16,16を設けたが、第1切欠き15と第2切欠き16,16の代わりに、
図7、
図8に示すように、中間部12と2つの延出部13,13に夫々貫通孔17,17,17を形成し、中間部12の貫通孔17を跨ぐように磁電変換ユニット20を実装した基板30を配置するように構成してもよい。本実施形態における磁電変換ユニット20の磁気検出素子21を配置したのは、検出面22が導体10の幅の中央に位置する箇所であり、これにより、上記実施形態と比較して、検出面22で検出する中間部12及び延出部13の周囲に発生する磁界の磁束密度が大きくなると共に、外乱磁界の大きさ(影響)が小さくなる。これにより、磁気検出素子21の感度が更に向上したのと同じ効果を得ることができる。
【0044】
上記実施形態では、測定部14は、Z方向視においてS字状に形成されていたが、これに限られるものではない。例えば、測定部14が、Z方向視においてW字状に形成されていてもよい。この場合、導体10の折り返し部11、中間部12、延出部13は、導体10を直線状に伸ばしたときに、その長手方向(延出方向)に沿って、延出部13、折り返し部11、中間部12、折り返し部11、中間部12、折り返し部11、延出部13の順に形成されている。すなわち、本実施形態では、折り返し部11を3つ有する。また、延出部13は2つであり、3つの折り返し部11のうち最も外側にある2つの折り返し部11の外側の端部から夫々延出している。中間部12は2つあり、2つの延出部13の間で折り返し部11の端部と繋がっている。すなわち、中間部12は、2つの延出部13と繋がっている2つの折り返し部11の内側の端部から夫々延出し、中央にある他の折り返し部11の端部に夫々繋がっている。
【0045】
本実施形態においては、電流センサ1は、磁気検出素子21を3つ有する。例えば、1つの磁電変換ユニット20に3つの磁気検出素子21,21,21が内蔵された構成である。そのうち2つの磁気検出素子21,21は、X方向視で、測定部14の延出部13と中間部12との間に夫々配置され、残り1つの磁気検出素子21は2つの中間部12,12の間に配置されている。この配置であれば、3つの磁気検出素子21,21,21のうちY方向で隣接する2つの磁気検出素子21,21の組合わせが2つ(二組)できる。そして二組の磁気検出素子21,21の組合わせから
図5の構成により夫々出力される2つ(二組)の差分信号について、更にそれらの信号の差分信号を出力するように構成する。このように構成することにより、上記実施形態において増大して検出した磁束密度よりも更に大きな磁束密度を検出することができる。
【0046】
なお、測定部14を、Z方向視においてW字状に更に折り返し部11と中間部12を夫々一つずつ追加して、Z方向視においてS字状が2つ連続するような形状に形成してもよい。
【0047】
上記実施形態では、折り返し部11は、Z方向視で、延出部13と中間部12とに垂直な平板状であったが、これに限られるものではない。折り返し部11は、Z方向視で、延出部13と中間部12とを滑らかにつなぐU字状の湾曲板状であってもよい。
【0048】
上記実施形態では、導体10が3本である場合の例を挙げて説明したが、導体10は2本以下であってもよいし、4本以上であってもよい。何れの場合であっても、集磁コアを備えることなく、導体10を流れる電流を検出することが可能である。
【0049】
上記実施形態では、導体10は、三相モータに接続される3本のバスバーである場合の例を挙げて説明したが、導体10は、三相モータに接続される3本のバスバー以外であってもよい。また、導体10が三相モータに接続される3本のバスバーである場合には、3本のバスバーは延出部13がX方向に沿って一列に並んでいなくてもよい。
【0050】
上記実施形態では、磁電変換ユニット20が基板30に実装される場合の例を挙げたが、この基板30は三相モータの駆動を制御する制御ICが実装される基板と併用することも可能である。
【0051】
上記の各実施形態の構成は、可能な限り組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電流センサに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 電流センサ
10 導体
11 折り返し部
11A 端部
11B 端部
12 中間部
13 延出部
14 測定部
15 第1切欠き
16 第2切欠き
20 磁電変換ユニット
21 磁気検出素子
22 検出面
23 樹脂パッケージ(パッケージ)