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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112787
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】立体像結像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20220727BHJP
   B23C 5/16 20060101ALI20220727BHJP
   B23C 3/30 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G02B5/08
B23C5/16
B23C3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008736
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【テーマコード(参考)】
2H042
3C022
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA11
2H042DA12
2H042DB07
2H042DB14
2H042DC02
2H042DD04
3C022EE04
3C022EE11
3C022EE17
(57)【要約】
【課題】製造が比較的容易で明るく鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置の製造方法を提供する。
【解決手段】屈折率がη1の第1の透明合成樹脂からなる透明板材15を用意し、透明板材15の一面にアンチ金属箔コート材16を塗布し、透明板材15の一面側に機械加工によって、側面20、21、底面22が鏡面となる断面矩形の溝18を所定ピッチで形成し、溝18の底面22を避けて側面20、21に対して斜めから金属蒸着を行い、透明板材15の一面に付着した金属蒸着膜を粘着材を用いて剥ぎ取り、残ったアンチ金属箔コート材16を溶剤にて除去して第1、第2の光制御パネル11、12を製造し、第1、第2の光制御パネル11、12の溝18に第2の透明合成樹脂29を充填して第1、第2の光制御パネル11、12を接合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された多数の帯状の金属光反射面を備える第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記金属光反射面を平面視して直交させ、重ね合わせる立体像結像装置の製造方法であって、
前記第1、第2の光制御パネルはそれぞれ、
屈折率がη1の第1の透明合成樹脂からなる透明板材を用意する第1工程と、
前記透明板材の一面にアンチ金属箔コート材を塗布する第2工程と、
前記透明板材の一面側に機械加工によって、側面及び底面が鏡面となる断面矩形の溝を所定ピッチで形成する第3工程と、
前記溝の底面を避けて前記溝の側面に対して斜めから金属蒸着を行う第4工程と、
前記第4工程で前記透明板材の一面に付着した金属蒸着膜を粘着材を用いて剥ぎ取る第5工程と、
前記第5工程で残った前記アンチ金属箔コート材を溶剤にて除去する第6工程とを有して製造され、
前記第1、第2の光制御パネルの前記溝に前記第1の透明合成樹脂の屈折率η1の0.9~1.1倍の屈折率η2の第2の透明合成樹脂を充填して前記第1、第2の光制御パネルを接合することを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の立体像結像装置の製造方法において、前記機械加工はエンドミル加工であって、単独又は複数のエンドミルを前記透明板材に対して相対的に平行に移動させて前記溝を形成することを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の立体像結像装置の製造方法において、前記エンドミルは、ダイヤモンドコーティングミルであることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の立体像結像装置の製造方法において、幅が100~600μmで深さが800~2000μmの前記溝を100~600μmの間隔を開けて
平行に形成することを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の立体像結像装置の製造方法において、前記溝の幅と隣り合う前記溝の間隔が等しいことを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の立体像結像装置の製造方法において、前記機械加工によって形成される前記溝は、平面視して矩形の前記透明板材の辺に対して45度の角度を有して形成されることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の金属光反射面(鏡面)が平行に並べて配置された第1、第2の光制御パネルを、それぞれの金属光反射面が平面視して直交した状態で、重ね合わせて形成する立体像結像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面から発する光(散乱光)を用いて立体像を形成する装置として、例えば、特許文献1に記載の立体像結像装置(光学結像装置)がある。
この結像装置は、2枚の透明平板の内部に、この透明平板の厚み方向に渡って垂直に多数かつ帯状で、金属反射面(鏡面)からなる光反射面を一定のピッチで並べて形成した第1、第2の光制御パネルを有し、この第1、第2の光制御パネルのそれぞれの光反射面が平面視して直交するように、第1、第2の光制御パネルの一面側を向い合わせて密着させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/131128号公報
【特許文献2】国際公開第2015/033645号公報
【特許文献3】特開第2015-92289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された第1、第2の光制御パネルの製造に際しては、金属反射面が一面側に形成された一定厚みの板状の透明合成樹脂板やガラス板(以下、「透明板」ともいう)を、金属反射面が一方側に配置されるように多数枚積層して積層体を作製し、この積層体から各金属反射面に対して垂直な切り出し面が形成されるように切り出している。
このため、透明板に金属反射面を形成する作業において大型の蒸着炉を必要とし、しかも、1枚又は少数枚の透明板を蒸着炉に入れて脱気して高真空にした後、蒸着処理を行い、大気圧に開放して蒸着した透明板を取り出すという作業を百回以上繰り返す必要があり、極めて手間と時間のかかる作業であった。また、金属蒸着された透明板を積層して積層体を形成し、極めて薄い所定厚で切断する作業を行って、この積層体から第1、第2の光制御パネルを切り出し、更にこれら第1、第2の光制御パネルの切り出し面(両面)の研磨作業等を行う必要があるため、作業性や製造効率が悪かった。
更に、特許文献1には、断面直角三角形の溝を有する第1、第2の光制御パネルを透明合成樹脂から作り、第1、第2の光制御パネルをその反射面を直交させて向かい合わせて密着して光学結像装置を提供することも記載されているが、反射面として全反射を利用するので、溝のアスペクト比も小さく、明るい結像を得ることが困難であるという問題があった。
【0005】
また、特許文献2のように、平行な土手によって形成される断面四角形の溝が一面に形成され、この溝の対向する平行な側面に光反射部が形成された凹凸板材を備えた光制御パネルを2つ用意し、この2つの光制御パネルを、それぞれの光反射部を直交又は交差させた状態で向い合わせる方法が提案されている。
しかしながら、インジェクション成型時に、凹凸板材の土手の高さを高くすると(即ち、溝の深さを深くすると)脱型が極めて困難となるという問題があった。
【0006】
更には、特許文献3に記載には、1)透明な板状光学板の一面に紫外線硬化樹脂を均一な厚みにコーティングして紫外線硬化樹脂層を形成し、2)紫外線硬化樹脂層に紫外線の露光部と非露光部を形成し、3)露光部及び非露光部を有する紫外線硬化樹脂層を現像して非露光部を除去して溝を形成し、これら1)~3)の工程を繰り返して、板状光学板の一面に所定高さで断面矩形の障壁を形成し、4)この障壁(土手)上面と溝の底面にプリンターなど用いて紫外線照射剥離樹脂を塗布しておき、この状態で板状光学板に一面から金属蒸着を行い、5)板状光学板の他面から紫外線を照射し、障壁(土手)上面と溝の底面に形成されている金属蒸着膜を除去する方法が提案されている。しかしながら、特許文献3記載の技術は、障壁の側面を平坦に(即ち、鏡面に)形成することが工程上難しいという問題が発生した。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製造が比較的容易で明るく鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置の製造方法を提供することを目的とする。特に本発明の立体像結像装置の製造方法は普通サイズの立体像結像装置のみでなく大型の立体像結像装置にも適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る立体像結像装置の製造方法は、それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された多数の帯状の金属光反射面を備える第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記金属光反射面を平面視して直交させ、重ね合わせる立体像結像装置の製造方法であって、
前記第1、第2の光制御パネルはそれぞれ、
屈折率がη1の第1の透明合成樹脂からなる透明板材を用意する第1工程と、
前記透明板材の一面(即ち、片面)にアンチ金属箔コート材を塗布する第2工程と、
前記アンチ金属箔コート材が塗布された前記透明板材の一面側に機械加工によって、側面及び底面が鏡面(超仕上げ面、粗度Raが例えば15~100nm)となる断面矩形の溝を所定ピッチで形成する第3工程と、
前記溝の底面を避けて前記溝の側面に対して斜めから金属蒸着(鏡面即ち光反射面を形成)を行う第4工程と、
前記第4工程で前記透明板材の一面に付着した金属蒸着膜を粘着材を用いて剥ぎ取る第5工程と、
前記第5工程で残った前記アンチ金属箔コート材を溶剤にて除去する第6工程とを有して製造され、
前記第1、第2の光制御パネルの前記溝に前記第1の透明合成樹脂の屈折率η1の0.9~1.1倍の屈折率η2の第2の透明合成樹脂を充填して前記第1、第2の光制御パネルを接合する。
【0009】
ここで、アンチ金属箔コート材とは、例えば、塗布又は噴霧前は液状又は半液状物であって、透明板材の表面に塗布して(例えば半硬化又は硬化させ)、金属蒸着(例えば、アルミニウム蒸着)をした後、表面の金属箔(金属蒸着膜)ごと剥離できる素材をいい、最終的に残留したアンチ金属箔コート材を除去するため、溶剤(薬剤)に溶けるものを使用する。従って、例えば、金属箔とアンチ金属箔コート材の接着強度>粘着材と金属箔の接着強度>アンチ金属箔コート材と透明板材の接着強度とするのがよい。
また、金属蒸着とは、真空(多少の残留気体を有する場合も含む)状態で金属を蒸気化又は微小粒子にして対象面に衝突させて蒸着層(光学反射面)を形成する作業で、スパッタリング、金属微小粒子の吹付け、又はイオンビームの照射を含む。
【0010】
本発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記機械加工はエンドミル加工であって、単独又は複数のエンドミルを前記透明板材に対して相対的に平行に(一定方向に)移動させて前記溝を形成するのが好ましい。ここで、複数のエンドミルを同時に使用する場合は、隣り合うエンドミルは進行方向に異なる位置(例えば、千鳥状、ジグザグ状)に配置する方がエンドミルの保持機構の干渉を防ぐことができる。エンドミルの回転は、正転及び逆転を隣り合うエンドミルごと、又は適当に入れ混ぜることにより、切削対象となる透明板材に発生するモーメントを小さくできる。
【0011】
また、本発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記エンドミルは、ダイヤモンドコーティングミルであるのが好ましいが、セラミックス又は通常の金属(例えば、超鋼よりなるものでもよく、溝及び溝底面の切削面又は加工面が鏡面(例えばRa=50~300nm)研磨となるものであればよい。エンドミルとしては粗仕上げ、中仕上げ、鏡面仕上げのエンドミルを順次使用する(中仕上げは省略することもある)のが好ましい。なお、切削工具としては、エンドミルに限定されず、他の加工工具であってもよい。
【0012】
そして、本発明の立体像結像装置の製造方法において、例えば、幅が100~600μmで深さが800~2000μmの前記溝を100~600μmの間隔(即ち、溝と溝の間の土手の幅)を開けて平行に形成するのが好ましく、前記溝の幅と隣り合う前記溝の間隔が等しいことが好ましい。この場合、溝のアスペクト比(高さ/幅)は1.2~5程度とするのが好ましい。
更に、本発明の立体像結像装置の製造方法において、前記機械加工によって形成される前記溝は、平面視して矩形の前記透明板材の辺に対して傾斜して(例えば45度の角度を有して)形成することができる。これによって、ゴーストの無い、かつ矩形の第1、第2の光制御パネルを製造できる。
【0013】
本発明の立体像結像装置の製造方法において、機械加工の切削具として側面及び底面を平坦に加工するエンドミルを使用する場合、隣り合う溝の間隔が狭いので、複数のエンドミルを並べて配置することはできず、エンドミルの進行方向に位置をずらして配置する。これによって複数の溝を同時に加工できる。この場合、透明板材は一般に金属のように硬質ではないので、1回~3回のパスで側面及び底面が鏡面となった溝を形成できる。
【0014】
このようにして製造した第1、第2の光制御パネルの各溝の全部に第2の透明合成樹脂を充填し、第1、第2の光制御パネルの各溝を直交させて、貼り合わせて立体像結像装置とする。ここで、第1の透明合成樹脂からなる透明板材の屈折率をη1とし、第2の透明合成樹脂の屈折率をη2とすると、η2=(0.9~1.1)η1の範囲にあるので、第1、第2の透明合成樹脂を通過する光の直線性がある程度確保できて、鮮明で歪みの無い立体像を形成できる。なお、η1とη2の関係は、η2=(0.95~1.05)η1、更には、η2=(0.99~1.01)η1とするのがより好ましい。
ここで、第1、第2の光制御パネルの各溝を埋めて、第1、第2の光制御パネルを接合する第2の透明合成樹脂に融点が第1の透明合成樹脂の融点より低いものや、第2の透明合成樹脂に液状、糊状の透明合成樹脂であって、紫外線を照射すると硬化するもの(紫外線硬化樹脂)を使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の立体像結像装置の製造方法においては、第1~第4工程において、第1、第2の光制御パネルはそれぞれ、透明板材の一面にアンチ金属箔コート材を塗布し、透明板材の一面側に機械加工によって、側面及び底面が鏡面となる断面矩形の溝を所定ピッチで平行に形成し、溝の底面を避けて溝の側面に対して斜めから金属蒸着を行うので、溝の側面及び透明板材の非加工の一面(即ち、土手の天井面)にのみ金属蒸着が行われる。金属蒸着は真空中で行われるので、気流の流れはなく、金属粒は噴射方向の面のみに付着する。この場合、溝の側面だけでなく透明板材の非加工の一面にもかかるように金属噴射を行うと、溝の底面への噴射を避けて、溝の側面への噴射が効率的に行える。
【0016】
そして、第5工程で透明板材の一面に付着した金属蒸着膜を粘着材を用いて剥ぎ取っているので、金属蒸着膜は剥ぎ取れるがアンチ金属箔コート材の一部は透明板材の一面に付着したまま残る。そのため、第6工程で溶剤にて除去すると、透明板材の表面が露出し、清浄な透光表面となる。
特に、側面及び底面が鏡面となる断面矩形の溝はエンドミル加工によって行えるので、効率的であり、更に複数のエンドミルを進行方向の切削位置をずらして切削加工を行うと更に高効率に鏡面溝加工が行えれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)、(B)、(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図2】(D)、(E)、(F)、(G)はそれぞれ同立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図3】(H)、(I)はそれぞれ同立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図4】(J)、(K)はそれぞれ同立体像結像装置の製造方法で製造された光制御パネルの正断面図、及び立体像結像装置の側断面図である。
図5】(A)、(B)は同製造方法で製造した立体像結像装置を用いた本発明の他の実施の形態に係る立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図6】(A)、(B)は本発明の更に他の実施の形態に係る立体像結像装置の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施の形態に係る製造方法によって製造される立体像結像装置10は、図4(K)に示すように、それぞれ立設状態で同一間隔で平行配置された多数の帯状の金属光反射面を備える同一構成の第1、第2の光制御パネル11、12が、それぞれの金属光反射面13、14が平面視して直交するようにして接合されている。以下、第1の光制御パネル11の製造方法(第2の光制御パネル12の場合も同様)について説明する。
【0019】
図1(A)に示すように厚みtが例えば0.5~2mm広さが1~1.5m四方の透明合成樹脂(第1の透明合成樹脂の一例)からなる透明板材15を用意し、図示しない定盤に吸着固定などの手段で固定する。ここで、透明合成樹脂としては透明性の強い、例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、AS樹脂、シリコーン樹脂などがあり、比較的融点の高い熱可塑性樹脂(例えば、ゼオネックス(ZEONEX:登録商標、ガラス転移温度:120~160℃)、シクロオレフィンポリマー、非晶質フッ素樹脂、光学用ポリカーボネイト、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等)が使用できるが、特に、透明度の高いものを使用するのが好ましい(以上、第1工程)。
【0020】
次に、図1(A)に示すように、この透明板材15の片面(一面)に液状、糊状のアンチ金属箔コート材16を塗布又は噴霧する。アンチ金属箔コート材16としては、透明板材15に密着して接合するものではなくて、後処理で剥げ、しかも剥げ残りが揮発性を有する溶剤に溶けるものを使用する(以上、第2工程)。
【0021】
この後、図1(B)、(C)に示すように、粗仕上げ、鏡面仕上げのエンドミル17を用いて(エンドミル加工(機械加工)によって)、透明板材15の片面側に断面矩形の溝18を所定ピッチで形成する。鏡面加工に使用するエンドミル17の直径は最終的に仕上げられた溝18の幅と同じである。そして、一本のエンドミル17を用いて多数本の溝18を形成してもよいが、溝18の本数のエンドミル17を用意し、全部の溝18をワンパスで製造するのが好ましい。この場合、エンドミル17を進行方向に直交する方向に並べると、エンドミル17のチャック17a(エンドミル17の装着機構又はシャンク)が干渉するので、隣り合うエンドミル17の位置を、平面視して図1(C)に示すように例えばジグザグに配置するのが好ましい。なお、精密エンドミル加工であるので、溝18の側面20、21だけでなく底面22も鏡面に加工される。また、エンドミル17は透明板材に対して相対的に平行移動させる。
【0022】
エンドミル17は、超鋼等を材料とする金属製であってもよいが金属の芯材の周囲にダイヤモンドや硬質のセラミックスでコーティングしたものであってもよい。また、エンドミルとしては粗仕上げ、中仕上げ、鏡面仕上げのものを順次使用するのが好ましい。以上で形成する溝18の幅wは100~600μm、深さdは800~2000μm、隣り合う溝18の間隔w1は100~600μm程度で、溝18の側面20、21、及び底面22の粗度Raは15~100nm程度とするのが好ましいが、本発明はこれらの数字で限定されるものではない。溝18が形成された状態の透明板材10の断面を図2(D)に示す。ここで、溝18の幅をw、隣り合う溝18の間隔をw1としてw=w1とし、溝18の深さをd、透明板材15の厚みをtとして、d/t>0.2とするのが好ましい(以上、第3工程)。
【0023】
次に、図2(E)、(F)を参照しながら溝18の中に金属反射面13、14を形成する方法について説明する。
金属の一例であるアルミニウムを真空中で高温に加熱し、金属蒸気を発生させて例えばノズルから吹き出し、図2(E)、(F)に示すように、溝18の側面20、21に対して斜めに噴射する。この場合、水平面に対する傾斜角θは(0.7~1)arctan(w/d)以下であるのが好ましい。傾斜角θが小さいと底面22にもアルミニウムが蒸着されるので、底面22への蒸着を避けるために、側面20、21の(上端から)70~100%が被覆できる範囲でできる限り傾斜角θを小さくするのが好ましい。これによって溝18の上部の蒸着アルミニウムの厚みが下部より厚くなるが、厚い部分でも金属蒸着膜の厚みは極めて薄いので光反射に問題は生じない。これによって、図2(G)に示すように、溝18の側面20、21及び溝18と溝18の間に形成される土手26の天井面24にアルミニウム蒸着による金属光反射面13、14、25が形成される。ここで、金属反射面25を形成する金属蒸着膜は断面矩形の土手26の天上面24上に塗布したアンチ金属箔コート材16の上に形成される(以上、第4工程)。
なお、図では、説明のために金属蒸着膜の厚みを大きく描いているが、実際は極めて薄く無視できる程の厚みである。
【0024】
そして、図3(H)に示すように、アンチ金属箔コート材16及び金属反射面25が形成された側の透明板材15の上に粘着材が片面に形成されたシート27を載せ、僅少の圧力をかけて土手26の上に形成された金属反射面25を形成する金属蒸着膜に接合する。この後、粘着材が塗布されたシート27を片側から剥がすと土手26の天井面24に付着している金属蒸着膜及びアンチ金属箔コート材16が、土手26の天井面24から剥がれ、土手26を形成する透明板材15が図3(I)に示すように露出する(以上、第5工程)。
【0025】
ところが、アンチ金属箔コート材16は一部が土手26の天井面24に残り、そのままでは通過する光の邪魔になるので、溶剤を使って、土手26の天井面24に残ったアンチ金属箔コート材16を完全に除去する。なお、透明板材15と平行な溝18の底面22も清浄となっている。これによって、第1、第2の光制御パネル11、12の母材が完成する(以上、第6工程)。
【0026】
次に、図4(J)に示すように、この母材の溝18内に液状又は半液状の第2の透明合成樹脂29を充填する。第2の透明合成樹脂29は、例えば、ゼオノア(ZEONOR:登録商標、ガラス転移温度:100~102℃のもの、屈折率η2:1.53、シクロオレフィンポリマー)を使用することができるが、この場合、以下のように第2の透明合成樹脂29の屈折率η2を第1の透明合成樹脂の屈折率η1と合わせる必要がある。その他の透明合成樹脂で、融点が第1の透明合成樹脂より低く、透明度が高く、屈折率が第1の透明合成樹脂と同一又は近似するものであれば代替可能である。なお、第1の透明合成樹脂の屈折率をη1とし、第2の透明合成樹脂29の屈折率をη2とした場合、η2=(0.9~1.1)η1(より好ましくは、η2=(0.96~1.04)η1、更には、η2=(0.99~1.01)η1)とするのがよい。
また、第2の透明合成樹脂29は固化させた状態で使用するので、紫外線硬化樹脂を使用するのが好ましいが、自硬性、熱硬化性、2液混合型硬化性の樹脂を用いることもできる。
以上の工程を経て、第1、第2の光制御パネル11、12が製造されるので、第2の透明合成樹脂29が硬化する前に、図4(K)に示すように第1の光制御パネル11の金属反射面13、14に対して第2の光制御パネル12の金属反射面13、14を平面視して直交するようにして接合する。この作業は空気の侵入を防ぐため真空中で行った方がよい。
【0027】
図5(A)、(B)を参照して、本発明の他の実施の形態に係る立体像結像装置の製造方法について説明するが、以上の方法で製造された立体像結像装置10の平面視して2等辺直角三角形の角部34~37を斜め45度に傾斜して切断し、立体像結像装置10の約0.7倍の大きさの立体像結像装置33を製造する。この立体像結像装置33は、第1、第2の光制御パネルのそれぞれの溝が、平面視して矩形の透明板材の辺に対して45度の角度θ1を有して形成されており、水平に並ぶ反射面がないので、鏡像反射による虚像(ゴースト)が見えないという特徴がある。
【0028】
この立体像結像装置の製造方法においては立体像結像装置10の角部34~37は使用しないので、角部34~37のエンドミル加工(機械加工)は省略することもできる。
また、角部34~37は使用しないので、図6(A)、(B)に示すように、平面視して矩形の透明板材39を2枚用意し、それぞれ片面にアンチ金属箔コート材の薄膜(図示せず)を形成した後、エンドミルを斜め(例えば、θ2=45度)に走行させて、透明板材39の片側から斜めに同一幅で等間隔の溝40を形成し第1、第2の光制御パネルを製造することもできる。この場合、切削前にアンチ金属箔コート材を用いること、溝40の側面に斜めから金属蒸着すること、溝40を第2の透明合成樹脂で埋めること等は前記実施の形態と同じである。
なお、溝の傾斜角は縁面に対して30~60度の範囲で傾斜させると前記したゴーストが見えにくいという特徴があるが、2枚の透明板材に形成する溝は平面視して直角に交叉するように溝の角度を決める必要がある。なお、溝の傾斜角が45度の場合は同一形状の透明板材を第1、第2の光制御パネルとして使用できる。
【0029】
以上の実施の形態においては、金属反射面の形成にアルミニウムを使用したが、鈴、銀などの白色系の金属であれば代替可能である。
また、エンドミルによる溝加工はNCを用いて行うのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
第1、第2の光制御パネルを組み合わせた立体像結像装置が比較的安価に製造可能となり、映像の分野での立体像の鑑賞を更に広めることができる。特に、大型の立体像結像装置を提供できる。
【符号の説明】
【0031】
10:立体像結像装置、11、12:光制御パネル、13、14:金属光反射面、15:透明板材、16:アンチ金属箔コート材、17:エンドミル、17a:チャック、18:溝、20、21:側面、22:底面、24:天井面、25:金属光反射面、26:土手、27:シート、29:第2の透明合成樹脂、33:立体像結像装置、34~37:角部、39:透明板材、40:溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6