(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112836
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】停電検出システムおよび停電検出方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
H02J13/00 301D
H02J13/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008816
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小泉 陽平
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC08
5G064CB19
5G064DA03
(57)【要約】
【課題】高圧配電線路の欠相などによる停電であっても、迅速な停電復旧を可能にする。
【解決手段】配電系統を監視し停電が発生すると、開閉器を制御して停電区間以外への配電を行う配電自動化システム2と、工事停電の範囲や期間を含む工事停電情報を記憶する停電情報記憶装置4と、各需要家宅Hに設置され消費電力を計量するとともに、停電を検知する機能を備えた電力量計3と、配電自動化システム2および電力量計3と通信可能に接続され、かつ、工事停電情報を取得可能なスマートメーター管理運用システム5と、を備え、スマートメーター管理運用システム5は、配電自動化システム2で検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線Lで複数のバンクの電力量計3から停電を検知した旨の情報を受信した場合に、当該バンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報を明示した停電警報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統を監視し停電が発生すると、開閉器を制御して停電区間以外への配電を行う配電自動化システムと、
工事停電の範囲や期間を含む工事停電情報を記憶する工事停電記憶手段と、
各需要家宅に設置され消費電力を計量するとともに、停電を検知する機能を備えた電力量計と、
前記配電自動化システムおよび前記電力量計と通信可能に接続され、かつ、前記工事停電情報を取得可能な停電管理手段と、
を備え、前記停電管理手段は、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で複数のバンクの前記電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合に、当該バンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報を明示した停電警報を出力する、
ことを特徴とする停電検出システム。
【請求項2】
前記停電管理手段は、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一のバンクの複数の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合には、バンク故障を受け付けるための故障票を発行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の停電検出システム。
【請求項3】
前記停電管理手段は、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合において、当該電力量計が設置された需要家宅が契約中の場合には、契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行し、当該電力量計が設置された需要家宅が非契約中の場合には、非契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行する、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の停電検出システム。
【請求項4】
配電系統を監視し停電が発生すると、開閉器を制御して停電区間以外への配電を行う配電自動化システムと、
工事停電の範囲や期間を含む工事停電情報を記憶する工事停電記憶手段と、
各需要家宅に設置され消費電力を計量するとともに、停電を検知する機能を備えた電力量計と、
を備え、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で複数のバンクの前記電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合に、当該バンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報を明示した停電警報を出力する、
ことを特徴とする停電検出方法。
【請求項5】
前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一のバンクの複数の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合には、バンク故障を受け付けるための故障票を発行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の停電検出方法。
【請求項6】
前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合において、当該電力量計が設置された需要家宅が契約中の場合には、契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行し、当該電力量計が設置された需要家宅が非契約中の場合には、非契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行する、
ことを特徴とする請求項4または5のいずれか1項に記載の停電検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電を検出・検知するシステムおよび方法に関し、特に、配電自動化システムでは検出できない停電を検出する停電検出システムおよび停電検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配電系統の監視や開閉器の制御などを行い、停電が発生すると配電系統上の停電エリアを特定したり、監視、制御の結果に基づいて、停電の発生や給電の復旧などの停電情報を生成したりする配電自動化システムが設置、運用されている。すなわち、フィーダ遮断器(FCB)の遮断や柱上開閉器(DM)の自動遮断を伴う配電線事故は、配電自動化システムの事故検出によって能動的に事故復旧として対応することができる。しかしながら、配電自動化システムでは、FCB遮断やDM自動遮断を伴わない高圧配電線路の断線や欠相などの配電線事故を検出することができない。このため、需要家からの停電・故障情報などを受けて受動的に対応していた。
【0003】
また、各戸に設置された電力メーターから停電情報を受信して停電の原因・要因を判断する、というシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムは、電力メーターから停電情報を受信すると、該当する引込柱の停電件数をカウントアップし、その値が閾値に達した引込柱のエリア内で停電情報を送信していない電力メーターに対して、停電情報の要求を行うことで、停電の原因がこの引込柱であるか否かを判断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高圧配電線路の断線や欠相などの配電線事故を配電自動化システムでは検出できないため、従来、需要家からの停電・故障情報などをもとに現地確認をした上で対応していた。すなわち、需要家からの停電・故障情報などを受けてから通常1名で初動対応し、その後、現地確認して原因が高圧配電線路の断線や欠相によるものと判明した時点で、複数の復旧要員を確保して復旧対応していた。このため、停電復旧までに時間と労力とを要するおそれがあった。同様に、引込線不良や変圧器不良などによる個別の停電が発生しても、配電自動化システムでは検出できないため、迅速な対応ができないおそれがあった。
【0006】
また、特許文献1のシステムでは、停電の原因箇所が引込柱であるか否かを判断することはできるものの、原因が高圧配電線路の断線や欠相であるか否かを検出することはできない。このため、従来と同様に、停電復旧までに時間と労力とを要するおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、高圧配電線路の欠相などによる停電であっても、迅速な停電復旧を可能にする停電検出システムおよび停電検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、配電系統を監視し停電が発生すると、開閉器を制御して停電区間以外への配電を行う配電自動化システムと、工事停電の範囲や期間を含む工事停電情報を記憶する工事停電記憶手段と、各需要家宅に設置され消費電力を計量するとともに、停電を検知する機能を備えた電力量計と、前記配電自動化システムおよび前記電力量計と通信可能に接続され、かつ、前記工事停電情報を取得可能な停電管理手段と、を備え、前記停電管理手段は、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で複数のバンクの前記電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合に、当該バンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報を明示した停電警報を出力する、ことを特徴とする停電検出システムである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の停電検出システムにおいて、前記停電管理手段は、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一のバンクの複数の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合には、バンク故障を受け付けるための故障票を発行する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の停電検出システムにおいて、前記停電管理手段は、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合において、当該電力量計が設置された需要家宅が契約中の場合には、契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行し、当該電力量計が設置された需要家宅が非契約中の場合には、非契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、配電系統を監視し停電が発生すると、開閉器を制御して停電区間以外への配電を行う配電自動化システムと、工事停電の範囲や期間を含む工事停電情報を記憶する工事停電記憶手段と、各需要家宅に設置され消費電力を計量するとともに、停電を検知する機能を備えた電力量計と、を備え、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で複数のバンクの前記電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合に、当該バンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報を明示した停電警報を出力する、ことを特徴とする停電検出方法である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載の停電検出方法において、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一のバンクの複数の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合には、バンク故障を受け付けるための故障票を発行する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載の停電検出方法において、前記配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一の前記電力量計から前記停電を検知した旨の情報を受信した場合において、当該電力量計が設置された需要家宅が契約中の場合には、契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行し、当該電力量計が設置された需要家宅が非契約中の場合には、非契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および請求項4に記載の発明によれば、配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で複数のバンクの電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合、停電警報が出力される。このため、配電自動化システムでは検出できない停電や工事停電ではない停電が発生しても、迅速に停電復旧することが可能となる。例えば、高圧配電線路の欠相による停電が発生すると、同一配電線で2バンク以上の需要家宅で停電が発生し得る。このため、同一配電線で2バンク以上の電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合に停電警報を出力することで、高圧配電線路の欠相による停電に対して迅速に対応して、迅速に停電復旧することが可能となる。しかも、停電警報には、停電した複数のバンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報が明示されるため、そのバンク周辺を調査することで、停電原因を迅速に究明、確認して早期復旧を図ることが可能となる。
【0015】
請求項2および請求項5に記載の発明によれば、配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一のバンクの複数の電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合には、バンク故障を受け付けるための故障票が発行される。このため、配電自動化システムでは検出できず、かつ、工事停電によらない、変圧器不良などによるバンク固有の停電が発生しても、迅速に停電復旧することが可能となる。すなわち、変圧器不良などによるバンク固有の停電が発生すると、単一のバンクの複数の需要家宅で停電が発生し得る。このため、同一配電線で単一のバンクの複数の電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合に、バンク故障の故障票を発行することで、バンク固有の停電に対して迅速に対応して、迅速に停電復旧することが可能となる。
【0016】
請求項3および請求項6に記載の発明によれば、配電自動化システムで検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線で単一の電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合には、個別故障を受け付けるための故障票が発行される。このため、配電自動化システムでは検出できず、かつ、工事停電によらない、引込線断線などによる需要家固有の停電が発生しても、迅速に停電復旧することが可能となる。すなわち、引込線断線などによる需要家固有の停電が発生すると、単一の需要家宅でのみ停電が発生する。このため、同一配電線で単一の電力量計から停電を検知した旨の情報を受信した場合に、個別故障の故障票を発行することで、需要家固有の停電に対して迅速に対応して、迅速に停電復旧することが可能となる。
【0017】
また、当該電力量計の需要家宅が契約中か非契約中かに応じて、異なる故障票が発行されるため、契約中か非契約中かに応じた適正な対応を迅速に行うことが可能となる。例えば、契約中の場合には、需要家に連絡、訪問して早期に対応、復旧することで、需要家の満足度、信頼度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施の形態に係る停電検出システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1の停電検出システムの配電自動化システムを示す概略構成図である。
【
図3】
図1の停電検出システムのスマートメーター管理運用システムによる停電検出フローを示すフローチャートである。
【
図4】この発明の実施の形態における配電線のバンク構成例を示す図である。
【
図5】
図4のバンク構成における第1の停電例を示す図である。
【
図6】
図4のバンク構成における第2の停電例を示す図である。
【
図7】
図4のバンク構成における第3の停電例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態に係る停電検出システム1を示す概略構成図である。この停電検出システム1は、停電を検出、通知するシステムであり、特に、配電自動化システム2では検出できない停電も検出可能で、主として、配電自動化システム2と、各需要家宅Hに設置されたスマートメーター(電力量計)3と、停電情報記憶装置(工事停電記憶手段)4と、スマートメーター管理運用システム(停電管理手段)5と、を備える。配電自動化システム2とスマートメーター管理運用システム5は、通信網NWを介して通信可能に接続され、各スマートメーター3とスマートメーター管理運用システム5は、通信網NWを介して通信可能に接続されている。ここで、通信網NWは、1つの通信網であってもよいし異なる複数の通信網であってもよい。
【0021】
また、電柱101を介して配電線Lが架設され、電柱101に設置された柱上変圧器102から引き出された引込線31がスマートメーター3に接続され、スマートメーター3を介して需要家宅Hに電力が供給されている。
【0022】
配電自動化システム2は、配電系統を監視し停電が発生すると、開閉器やフィーダ遮断器等を制御して停電区間以外への配電を行うシステムであり、電力事業者などに広く導入されている配電自動化システムと同等の構成となっている。すなわち、
図2に示すように、配電自動化サーバ、配電遠制装置(遠方監視制御装置)および、監視制御卓21、系統計画卓(ワークステーション)などを備え、それぞれがLAN(Local Area Network)で接続されている。また、電柱101に取り付けられた柱上開閉器(DM)103と、配電遠制装置とが伝送線路(専用回線)22によって接続され、さらに、総合制御所23を介して配電用変電所24と配電遠制装置とが伝送線路22によって接続されている。
【0023】
そして、配電線Lの運用状態を常時監視し、例えば、配電線事故による停電が発生すると、柱上開閉器103などを開閉制御しながら停電区間を特定し、停電区間以外の配電線Lへの配電(自動逆送)を行う。このようにして、柱上開閉器103などの開閉制御によって停電区間が画定され、柱上開閉器103などを境にして停電区間と非停電区間とが分かれることになる。また、変電所事故(特高事故、瞬時電圧低下など)による停電が発生すると、停電が発生した地域に対して周辺の配電線Lからの配電(自動逆送)を行ったりするものである。このような配電自動化システム2では、地絡事故や短絡事故による事故停電などは検出できるが、高圧配電線路(配電線L)の断線や欠相などによる停電や、柱上変圧器102の不良(ヒューズ切れ等)や引込線31の不良(断線等)などによる個別の停電を検出することはできない。
【0024】
スマートメーター3は、設置された需要家宅Hにおける消費電力を計量するとともに、通信機能と停電、復電を検知する機能を備えた電力量計である。すなわち、引込線31や配電線Lによる電力線通信(PLC)などを利用して、他のスマートメーター3やスマートメーター管理運用システム5などと通信可能となっている。また、電源側つまり引込線31側の電圧を常時監視して、電圧が所定値未満に低下したことを検知することで停電を検知し、停電を検知した旨の情報(以下、適宜「停電情報」という)をスマートメーター管理運用システム5に送信する。この際、停電情報に、スマートメーター3の識別情報であるメーター番号と停電日時を含む。また、電源側の電圧が所定値以上に回復したことを検知することで停電復旧を検知し、停電復旧を検知した旨の情報(以下、適宜「復旧情報」という)をマートメーター管理運用システム5に送信する。この際、復旧情報に、スマートメーター3のメーター番号と復旧日時を含む。
【0025】
停電情報記憶装置4は、工事停電の範囲や期間を含む工事停電情報を記憶する記憶装置である。すなわち、停電を伴う工事・作業が計画されると、その工事によって停電する配電系統範囲や停電する期間・日時を含む工事停電情報が記憶されるものである。ここで、停電工事を計画、管理するシステムで停電情報記憶装置4を構成し、このシステムに工事停電情報を記憶するようにしてもよい。
【0026】
スマートメーター管理運用システム5は、配電自動化システム2および各スマートメーター3と通信可能に接続され、かつ、停電情報記憶装置4にアクセスして工事停電情報を取得可能なシステムであり、各スマートメーター3を管理運用するとともに、配電自動化システム2では検出されない停電を検知、通知する後述の停電管理手段としての機能を備える。
【0027】
この実施の形態では、各スマートメーター3の管理運用に関する説明を省略するが、各スマートメーター3のメーター番号ごとに、該スマートメーター3が属するバンクの識別情報(電柱101の識別情報・電柱番号)や、電力事業者と需要家が契約中(需要家宅Hに給電中)か非契約中(需要家宅Hに非給電中)かを示す契約状態、契約している需要家の氏名・名称、需要家の連絡先情報(メールアドレスや電話番号など)、設置位置、などを記憶するデータベースを備える。また、このデータベースには配電系統図が記憶され、後述する電源側と各バンクとの位置関係がわかるようになっている。このように、この実施の形態では、スマートメーター管理運用システム5に配電系統図が記憶されているが、他のシステムや装置に配電系統図を記憶してスマートメーター管理運用システム5がアクセスできるようにしてもよい。
【0028】
次に、停電管理手段(停電検出方法)について、
図3に示すフローチャートに従って説明する。ここで、
図4に示すように、同一配電線?に電源側から順に、第1のバンク(変圧器)B1、第2のバンクB2、第3のバンクB3、第4のバンクB4、第5のバンクB5が配置され、各バンクB1~B5にそれぞれ複数のスマートメーター3が接続されているものとする。
【0029】
まず、スマートメーター3から停電情報を受信して、第1の所定時間(例えば、5分)以上停電が継続した場合(復旧情報を受信しない場合)に停電イベントが発生したと認識する(ステップS1)。このように、所定時間以上停電が継続した場合に停電イベントが発生したと認識するのは、後述する停電警報などを頻繁に出力したり誤って出力したりするのを防止するためである。
【0030】
次に、この停電が既知の停電であるか否かを判定する(ステップS2)。すなわち、この停電情報が、配電自動化システム2で検出された停電区間や工事停電中のエリアから送信されたものか否かを、配電自動化システム2による停電区間や停電情報記憶装置4の工事停電情報に基づいて判定する。この際、工事停電情報の工事停電期間中に送信されたものか否かも考慮して判定する。そして、既知の停電である場合(ステップS2で「Y」の場合)には、この停電情報をロック・破棄して処理を終了する(ステップS3)。
【0031】
一方、既知の停電でない場合(ステップS2で「N」の場合)には、第2の所定時間内(同じ停電の場合に複数のスマートメーター3から停電情報が送信されると想定される時間内)に複数の停電イベントが発生しているか、つまり、複数のスマートメーター3から停電情報を受信しているか否かを判定する(ステップS4)。そして、複数の停電イベントが発生している場合(ステップS4で「Y」の場合)であって、同一配電線Lの複数のバンクで停電イベントが発生している場合(ステップS5で「複数バンク」の場合)には、停電警報を出力して停電通知する(ステップS6)。
【0032】
すなわち、停電未知のエリア(配電自動化システム2による停電区間以外でかつ工事停電中でないエリア)において、同一配電線Lで複数のバンクのスマートメーター3から停電情報を受信した場合には、配電線Lの欠相などによる停電が発生したと判断して、停電警報を出力する。例えば、
図5に示すように、第1のバンクと第2のバンクB2の間の配電線Lにおいて、3相のうちの1相のみで欠相が発生した場合、柱上変圧器102の接続相によって停電するバンク(例えば、第2のバンクB2と第4のバンクB4と第5のバンクB5)と、停電しないバンク(例えば、第3のバンクB3)が発生し、このような欠相による停電は、配電自動化システム2では検出されない。このため、これらのバンクB2、B4、B5のスマートメーター3から停電情報を受信した場合には、配電線Lの欠相による停電が発生したとして、停電警報を出力する。
【0033】
ここで、停電警報には、停電した配電線Lを特定する情報とともに、停電情報を送信したバンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報を明示する。例えば、
図5の場合、第2のバンクB2の識別情報を停電警報に明示する。また、停電警報の出力方法は、どのようなものであってもよいが、例えば、配電自動化システム2の監視制御卓21のディスプレイ211に表示された配電系統図において、停電した配電線Lを特定表示させるとともに、最も電源側に近いバンクの識別情報を点滅表示させてもよい。つまり、最も電源側に近いバンク(欠相バンク)を明示すれば、どのような方法であってもよい。また、予め設定・登録された携帯端末やコンピュータなどに停電警報を送信してもよい。また、停電警報に、停電したすべてのバンクの識別情報を含むとともに、最も電源側に近いバンクの識別情報を欠相バンクの識別情報として明示するようにしてもよい。
【0034】
一方、複数の停電イベントが発生している場合(ステップS4で「Y」の場合)であって、同一配電線Lで単一のバンクでのみ停電イベントが発生している場合(ステップS5で「単独バンク」の場合)には、バンク故障を受け付けるための故障票を自動発行する
(ステップS7)。すなわち、停電未知のエリアにおいて、同一配電線Lで単一のバンクの複数のスマートメーター3から停電情報を受信した場合には、バンクごとの故障を受け付けるための故障票を自動的に発行する。例えば、
図6に示すように、同一配電線Lの第2のバンクB2において、変圧器不良などによるバンク固有の停電が発生した場合、配電自動化システム2では検出されない。このため、第2のバンクB2のみの複数のスマートメーター3から停電情報を受信した場合には、バンク固有の停電(柱上変圧器102以下の停電)が発生したとして、故障票を発行する。
【0035】
ここで、故障票とは、カスタマーセンターや営業所などで需要家からの個別の故障・問い合わせなどを受け付けるための受付票であり、所定の書式に、バンク固有の停電と判断されたバンク・電柱101の識別情報、このバンクに属する需要家の氏名・名称、停電発生日時などを記入して作成される。そして、このような故障票がカスタマーセンターや営業所などのサーバ・コンピュータに送信・発行され、該当するバンク・電柱101や需要家に対する個別対応などが行われる。例えば、需要家からカスタマーセンターに問い合わせがあった際に、迅速かつ適正な対応ができるようになる。
【0036】
また、単一の停電イベントが発生している場合(ステップS4で「N」の場合)であって、第3の所定時間(例えば、30分)以内に復電した場合、つまり、同スマートメーター3から「復旧情報」を受信した場合(ステップS8で「Y」の場合)には、スマートメーター3の取替などによる一時的停電であると判断して対処・処理しない(ステップS9)。
【0037】
一方、第3の所定時間以内に復電しない場合(ステップS8で「N」の場合)には、個別故障を受け付けるための故障票を自動発行する。すなわち、停電未知のエリアにおいて、同一配電線Lで単一のスマートメーター3のみから停電情報を受信した場合には、スマートメーター3・需要家ごとの個別の故障を受け付けるための故障票を自動的に発行する。例えば、
図7に示すように、同一配電線Lの第1のバンクB1の特定の需要家宅Hにおいて、引込線断線などによる需要家固有の停電が発生した場合、配電自動化システム2では検出されない。このため、第1のバンクB1の1つのスマートメーター3のみから停電情報を受信した場合には、スマートメーター3固有の停電が発生したとして、故障票を発行する。
【0038】
このとき、当該スマートメーター3が設置された需要家宅Hが契約中(給電中)の場合(ステップS10で「契約中」の場合)には、契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行する(ステップS11)。一方、当該スマートメーター3が設置された需要家宅Hが非契約中(非給電中)の場合(ステップS10で「廃止中」の場合)には、非契約中の個別故障を受け付けるための故障票を発行する(ステップS12)。
【0039】
ここで、これらの故障票は、上記のステップS7における故障票と同等に、個別の故障・問い合わせなどを受け付けるための受付票であり、所定の書式に、個別故障と判断されたスマートメーター3のメーター番号、停電発生日時などを記入して作成される。また、契約中の故障票には、契約中の旨と該当する需要家の氏名・名称、連絡先情報などが記入され、非契約中の故障票には、非契約中の旨などが記入されて作成される。そして、カスタマーセンターや営業所などのサーバ・コンピュータに送信・発行されることで、該当する需要家に対する個別対応などが行われる。
【0040】
以上のように、この停電検出システム1および停電検出システム1による停電検出方法によれば、配電自動化システム2で検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線Lで複数のバンクのスマートメーター3から停電情報を受信した場合、停電警報が出力される。このため、配電自動化システム2では検出できない停電や工事停電ではない停電が発生しても、迅速に停電復旧することが可能となる。例えば、高圧配電線路の欠相による停電が発生すると、同一配電線Lで2バンク以上の需要家宅Hで停電が発生し得る。このため、同一配電線Lで2バンク以上のスマートメーター3から停電情報を受信した場合に停電警報を出力することで、高圧配電線路の欠相による停電に対して迅速に対応して、迅速に停電復旧することが可能となる。
【0041】
しかも、停電警報には、停電した複数のバンクのなかで最も電源側に近いバンクの識別情報が明示されるため、そのバンク周辺を調査することで、停電原因を迅速に究明、確認して早期復旧を図ることが可能となる。すなわち、欠相によって複数のバンクで停電が発生した場合、停電した最も電源側に近いバンクよりも電源側で欠相が生じている可能性が高い。このため、停電した最も電源側に近いバンクの識別情報を停電警報に明示することで、そのバンク周辺を調査して早期復旧を図ることが可能となる。
【0042】
また、配電自動化システム2で検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線Lで単一のバンクの複数のスマートメーター3から停電情報を受信した場合には、バンク故障を受け付けるための故障票が発行される。このため、配電自動化システム2では検出できず、かつ、工事停電によらない、変圧器不良などによるバンク固有の停電が発生しても、迅速に停電復旧することが可能となる。すなわち、変圧器不良などによるバンク固有の停電が発生すると、単一のバンクの複数の需要家宅Hで停電が発生し得る。このため、同一配電線Lで単一のバンクの複数のスマートメーター3から停電情報を受信した場合に、バンク故障の故障票を発行することで、バンク固有の停電に対して迅速に対応して、迅速に停電復旧することが可能となる。
【0043】
さらに、配電自動化システム2で検出された停電区間以外でかつ工事停電中でないエリアにおいて、同一配電線Lで単一のスマートメーター3から停電情報を受信した場合には、個別故障を受け付けるための故障票が発行される。このため、配電自動化システム2では検出できず、かつ、工事停電によらない、引込線断線などによる需要家固有の停電が発生しても、迅速に停電復旧することが可能となる。すなわち、引込線断線などによる需要家固有の停電が発生すると、単一の需要家宅Hでのみ停電が発生する。このため、同一配電線Lで単一のスマートメーター3から停電情報を受信した場合に、個別故障の故障票を発行することで、需要家固有の停電に対して迅速に対応して、迅速に停電復旧することが可能となる。
【0044】
また、当該スマートメーター3の需要家宅Hが契約中か非契約中かに応じて、異なる故障票が発行されるため、契約中か非契約中かに応じた適正な対応を迅速に行うことが可能となる。例えば、契約中の場合には、需要家に連絡、訪問して早期に対応、復旧することで、需要家の満足度、信頼度を高めることが可能となる。
【0045】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、スマートメーター管理運用システム4に停電管理手段を設けているが、停電管理手段を別のシステムなどに組み込んだり、独立のサーバ・コンピュータで構成したりしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 停電検出システム
2 配電自動化システム
21 監視制御卓
211 ディスプレイ(表示部)
3 スマートメーター(電力量計)
4 停電情報記憶装置(工事停電記憶手段)
5 スマートメーター管理運用システム(停電管理手段)
101 電柱
102 柱上変圧器
103 柱上開閉器(開閉器)
H 需要家宅
L 配電線
B1~B5 バンク
NW 通信網