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特開2022-112839工作機械、工作機械の制御方法、および工作機械の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112839
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】工作機械、工作機械の制御方法、および工作機械の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20220727BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20220727BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 L
B23Q11/00 U
B23Q17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008826
(22)【出願日】2021-01-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 純一
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
【Fターム(参考)】
3C011BB01
3C011BB34
3C011EE09
3C029EE01
(57)【要約】
【課題】切り屑によるフィルタの目詰まりを従来よりも確実に検知するための技術を提供する。
【解決手段】ワークを加工することが可能な工作機械は、クーラントを貯蔵するための貯蔵用タンクと、貯蔵用タンクに貯蔵されているクーラントを、ワークの加工によって発生した切り屑に向けて吐出するための吐出部と、切り屑に向けて吐出されたクーラントから切り屑を除去するためのフィルタと、フィルタを通過したクーラントを貯蔵用タンクに戻すための回収用ポンプと、所定時間当たりに吐出部から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値を取得するための第1取得部と、所定時間当たりにフィルタを通過して貯蔵用タンクに戻されるクーラントの量を表わす第2指標値を取得する第2取得部と、第1指標値と第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、フィルタの異常を報知するための報知部とを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工することが可能な工作機械であって、
クーラントを貯蔵するための貯蔵用タンクと、
前記貯蔵用タンクに貯蔵されているクーラントを、前記ワークの加工によって発生した切り屑に向けて吐出するための吐出部と、
前記切り屑に向けて吐出されたクーラントから切り屑を除去するためのフィルタと、
前記フィルタを通過したクーラントを前記貯蔵用タンクに戻すための回収用ポンプと、
所定時間当たりに前記吐出部から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値を取得するための第1取得部と、
前記所定時間当たりに前記フィルタを通過して前記貯蔵用タンクに戻されるクーラントの量を表わす第2指標値を取得する第2取得部と、
前記第1指標値と前記第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、前記フィルタの異常を報知するための報知部とを備える、工作機械。
【請求項2】
前記工作機械は、表示部をさらに備え、
前記報知部は、前記切り屑による前記フィルタの目詰まりが発生していることを示す警告を前記表示部に表示する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記予め定められた異常条件は、前記第2指標値から前記第1指標値の差分値が所定値を超えている場合に満たされる、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械は、さらに、前記フィルタを通過したクーラントを受けるための回収用タンクを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記吐出部は、
クーラントノズルと、
前記貯蔵用タンクから前記クーラントノズルにクーラントを送るための吐出用ポンプとを含み、
前記回収用ポンプは、前記回収用タンクから前記貯蔵用タンクにクーラントを送る、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第1指標値は、前記吐出用ポンプを駆動するためのモータの駆動周波数を含み、
前記第2指標値は、前記回収用ポンプを駆動するためのモータの駆動周波数を含む、請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
ワークを加工することが可能な工作機械の制御方法であって、
前記工作機械は、
クーラントを貯蔵するための貯蔵用タンクと、
前記貯蔵用タンクに貯蔵されているクーラントを、前記ワークの加工によって発生した切り屑に向けて吐出するための吐出部と、
前記切り屑に向けて吐出されたクーラントから切り屑を除去するためのフィルタと、
前記フィルタを通過したクーラントを前記貯蔵用タンクに戻すための回収用ポンプとを備え、
前記制御方法は、
所定時間当たりに前記吐出部から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値を取得するステップと、
前記所定時間当たりに前記フィルタを通過して前記貯蔵用タンクに戻されるクーラントの量を表わす第2指標値を取得するステップと、
前記第1指標値と前記第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、前記フィルタの異常を報知するステップとを備える、制御方法。
【請求項8】
ワークを加工することが可能な工作機械の制御プログラムであって、
前記工作機械は、
クーラントを貯蔵するための貯蔵用タンクと、
前記貯蔵用タンクに貯蔵されているクーラントを、前記ワークの加工によって発生した切り屑に向けて吐出するための吐出部と、
前記切り屑に向けて吐出されたクーラントから切り屑を除去するためのフィルタと、
前記フィルタを通過したクーラントを前記貯蔵用タンクに戻すための回収用ポンプとを備え、
前記制御プログラムは、前記工作機械に、
所定時間当たりに前記吐出部から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値を取得するステップと、
前記所定時間当たりに前記フィルタを通過して前記貯蔵用タンクに戻されるクーラントの量を表わす第2指標値を取得するステップと、
前記第1指標値と前記第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、前記フィルタの異常を報知するステップとを実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械の異常を検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの加工によって生じた切り屑をクーラントで除去するための技術に関し、特開2018-161688号公報(特許文献1)は、「クーラントのオーバーフローをより確実に防ぐチップコンベアを備える工作機械」を開示している。
【0003】
当該工作機械は、チップコンベアの内部にフロートスイッチを有する。当該フロートスイッチは、チップコンベアで回収されたクーラントの液面レベルを検知し、当該液面レベルが所定以上である場合に、クーラントのオーバーフローが発生していると判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-161688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クーラントは、工作機械の内部で循環している。より具体的には、クーラントは、貯蔵用タンクに貯蔵されており、当該貯蔵用タンクから工作機械内に吐出される。これにより、切り屑が工作機械内から除去される。クーラントに含まれる切り屑は、工作機械内に設けられるフィルタを用いて除去される。クーラントは、切り屑の除去後、上記貯蔵用タンクに戻る。
【0006】
上記フィルタは、切り屑で目詰まりすることがある。フィルタの目詰まりが発生すると、クーラントが工作機械内で循環しなくなる。
【0007】
上記特許文献1に開示される工作機械は、クーラントの液面レベルに基づいて、フィルタの目詰まりが発生しているか否かを判断している。そのため、当該工作機械は、クーラントが工作機械内に多量に吐出された場合に、フィルタの目詰まりを誤って検知してしまう可能性がある。
【0008】
本開示は上述のような問題点を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、切り屑によるフィルタの目詰まりを従来よりも確実に検知するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一例では、ワークを加工することが可能な工作機械は、クーラントを貯蔵するための貯蔵用タンクと、上記貯蔵用タンクに貯蔵されているクーラントを、上記ワークの加工によって発生した切り屑に向けて吐出するための吐出部と、上記切り屑に向けて吐出されたクーラントから切り屑を除去するためのフィルタと、上記フィルタを通過したクーラントを上記貯蔵用タンクに戻すための回収用ポンプと、所定時間当たりに上記吐出部から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値を取得するための第1取得部と、上記所定時間当たりに上記フィルタを通過して上記貯蔵用タンクに戻されるクーラントの量を表わす第2指標値を取得する第2取得部と、上記第1指標値と上記第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、上記フィルタの異常を報知するための報知部とを備える。
【0010】
本開示の一例では、上記工作機械は、表示部をさらに備える。上記報知部は、上記切り屑による上記フィルタの目詰まりが発生していることを示す警告を上記表示部に表示する。
【0011】
本開示の一例では、上記予め定められた異常条件は、上記第2指標値から上記第1指標値の差分値が所定値を超えている場合に満たされる。
【0012】
本開示の一例では、上記工作機械は、さらに、上記フィルタを通過したクーラントを受けるための回収用タンクを備える。
【0013】
本開示の一例では、上記吐出部は、クーラントノズルと、上記貯蔵用タンクから上記クーラントノズルにクーラントを送るための吐出用ポンプとを含む。上記回収用ポンプは、上記回収用タンクから上記貯蔵用タンクにクーラントを送る。
【0014】
本開示の一例では、上記第1指標値は、上記吐出用ポンプを駆動するためのモータの駆動周波数を含む。上記第2指標値は、上記回収用ポンプを駆動するためのモータの駆動周波数を含む。
【0015】
本開示の他の例では、ワークを加工することが可能な工作機械の制御方法が提供される。上記工作機械は、クーラントを貯蔵するための貯蔵用タンクと、上記貯蔵用タンクに貯蔵されているクーラントを、上記ワークの加工によって発生した切り屑に向けて吐出するための吐出部と、上記切り屑に向けて吐出されたクーラントから切り屑を除去するためのフィルタと、上記フィルタを通過したクーラントを上記貯蔵用タンクに戻すための回収用ポンプとを備える。上記制御方法は、所定時間当たりに上記吐出部から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値を取得するステップと、上記所定時間当たりに上記フィルタを通過して上記貯蔵用タンクに戻されるクーラントの量を表わす第2指標値を取得するステップと、上記第1指標値と上記第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、上記フィルタの異常を報知するステップとを備える。
【0016】
本開示の他の例では、ワークを加工することが可能な工作機械の制御プログラムが提供される。上記工作機械は、クーラントを貯蔵するための貯蔵用タンクと、上記貯蔵用タンクに貯蔵されているクーラントを、上記ワークの加工によって発生した切り屑に向けて吐出するための吐出部と、上記切り屑に向けて吐出されたクーラントから切り屑を除去するためのフィルタと、上記フィルタを通過したクーラントを上記貯蔵用タンクに戻すための回収用ポンプとを備える。上記制御プログラムは、上記工作機械に、所定時間当たりに上記吐出部から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値を取得するステップと、上記所定時間当たりに上記フィルタを通過して上記貯蔵用タンクに戻されるクーラントの量を表わす第2指標値を取得するステップと、上記第1指標値と上記第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、上記フィルタの異常を報知するステップとを実行させる。
【0017】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】工作機械の外観を示す図である。
図2】工作機械内の様子を表わす図である。
図3図2とは異なる方向から工作機械内の様子を表わす図である。
図4】工作機械における駆動機構の構成例を示す図である。
図5】チップコンベアの外観を示す図である。
図6】チップコンベアの断面を示す図である。
図7】クーラントの循環機構の一例を示す図である。
図8】工作機械100の機能構成の一例を示す図である。
図9】指標値D(t)の推移と指標値R(t)の推移とを示す図である。
図10】報知部による報知態様の一例を示す図である。
図11】制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図12】工作機械が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0020】
<A.工作機械100の外観>
図1を参照して、実施の形態に従う工作機械100について説明する。図1は、工作機械100の外観を示す図である。
【0021】
本明細書でいう「工作機械」とは、ワークを加工する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。本明細書では、工作機械100の一例として、横形のマシニングセンタを例に挙げて説明を行うが、工作機械100は、これに限定されない。たとえば、工作機械100は、縦形のマシニングセンタであってもよい。あるいは、工作機械100は、旋盤であってもよいし、付加加工機であってもよいし、その他の切削機械や研削機械であってもよい。さらに、工作機械100は、これらを複合した複合機であってもよい。
【0022】
図1に示されるように、工作機械100は、カバー130と、操作盤140とを含む。カバー130は、スプラッシュガードとも呼ばれ、工作機械100の外観を成すとともに、ワークWの加工エリアAR(図2参照)を区画形成している。
【0023】
操作盤140は、汎用のコンピュータであり、加工に関する各種情報を表示するためのディスプレイ142を有する。ディスプレイ142は、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、またはその他の表示機器である。また、ディスプレイ142は、タッチパネルで構成されており、工作機械100に対する各種操作をタッチ操作で受け付ける。
【0024】
<B.工作機械100の内部構成>
次に、図2および図3を参照して、工作機械100の内部構成について説明する。図2は、工作機械100内の様子を表わす図である。図3は、図2とは異なる方向から工作機械100内の様子を表わす図である。
【0025】
図2および図3に示されるように、工作機械100は、その内部に、クーラントの吐出部125と、主軸頭131と、工具134と、テーブル136と、チップコンベア150とを含む。主軸頭131は、主軸132と、ハウジング133とを含む。
【0026】
説明の便宜のために、以下では、主軸132の軸方向を「Z軸方向」とも称する。重力方向を「Y軸方向」とも称する。Y軸方向およびZ軸方向の両方に直交する方向を「X軸方向」と称する。
【0027】
吐出部125は、工作機械100内に設けられ、ワークWの加工により生じた切り屑をチップコンベア150に排出するためにクーラントを吐出する。吐出部125は、1つ以上の吐出機構で構成される。図2および図3には、吐出部125の一例として、吐出機構125A,125Bが示されている。
【0028】
吐出機構125Aは、主軸頭131に設けられている。吐出機構125Aは、主軸頭131のハウジング133を通じて主軸端面からクーラントを吐出するサイドスルー仕様であってもよいし、主軸頭131の主軸中心を通じて主軸頭131に保持された工具の刃先からクーラントを吐出するセンタースルー仕様であってもよい。吐出機構125Aは、主に、ワークの加工点にクーラントを吐出することにより、主軸132および工具134に付着した切り屑を除去したり、ワークの加工点の発熱を抑えたりすることを目的としている。吐出機構125Aは、X軸方向を回転軸とした回転方向(すなわち、A軸方向)に駆動可能に構成されるとともに、Z軸方向を回転軸とした回転方向(すなわち、C軸方向)に駆動可能に構成される。これにより、吐出機構125Aは、A軸方向およびC軸方向におけるクーラントの吐出方向を変える。
【0029】
吐出機構125Bは、吐出機構125Aよりも上方に設けられている。吐出機構125Bは、たとえば、カバー130の天井部分に取り付けられる。吐出機構125Bは、主に、カバー130から加工エリアARの全体にクーラントを供給することにより、ワークWの加工に伴って生じた切り屑を加工エリアAR内からチップコンベア150に排出することを目的としている。
【0030】
主軸132は、ハウジング133の内部に設けられる。主軸132には、被加工物であるワークWを加工するための工具が装着される。図2および図3の例では、ワークWのミーリング加工に用いられる工具134が主軸132に装着されている。
【0031】
切り屑のチップコンベア150は、ワークWの加工によって生じた切り屑を加工エリアARの外へ排出するための機構である。チップコンベア150の詳細については後述する。
【0032】
<C.工作機械100の駆動機構>
次に、図4を参照して、工作機械100における各種の駆動機構について説明する。図4は、工作機械100における駆動機構の構成例を示す図である。
【0033】
図4に示されるように、工作機械100は、制御部50と、吐出用ポンプ109と、モータドライバ111A,111R,111X~111Zと、モータ112A,112R,112X~112Zと、移動体113と、吐出機構125A,125Bと、主軸頭131と、工具134と、テーブル136とを含む。
【0034】
本明細書でいう「制御部50」とは、工作機械100を制御する装置を意味する。制御部50の装置構成は、任意である。制御部50は、単体の制御ユニットで構成されてもよいし、複数の制御ユニットで構成されてもよい。図4の例では、制御部50は、PLC(Programmable Logic Controller)としてのCPUユニット20と、CNC(Computer Numerical Control)ユニット30とで構成されている。CPUユニット20およびCNCユニット30は、通信経路B(たとえば、フィールドバスまたはLANケーブルなど)を介して互いに通信を行う。
【0035】
CPUユニット20は、予め設計されているPLCプログラムに従って、工作機械100内の各種ユニットを制御する。当該PLCプログラムは、たとえば、ラダープログラムで記述されている。
【0036】
一例として、CPUユニット20は、PLCプログラムに従って、吐出用ポンプ109を制御し、吐出部125によるクーラントの吐出を制御する。これにより、クーラントの吐出のオン/オフ、およびクーラントの吐出量などが制御される。
【0037】
他の例として、CPUユニット20は、PLCプログラムに従って、モータドライバ111Aを制御する。モータドライバ111Aは、モータ112Aの目標回転速度の入力をCPUユニット20から受け、モータ112Aを制御する。これにより、チップコンベア150の駆動のオン/オフ、およびチップコンベア150による切り屑の搬送速度などが制御される。なお、モータ112Aは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0038】
CNCユニット30は、CPUユニット20からの加工開始指令を受けたことに基づいて、予め設計されている加工プログラムの実行を開始する。当該加工プログラムは、たとえば、NC(Numerical Control)プログラムで記述されている。CNCユニット30は、当該加工プログラムに従ってモータドライバ111R,111X~111Zを制御し、テーブル136に固定されているワークWを加工する。
【0039】
モータドライバ111Rは、CNCユニット30から目標回転速度の入力を逐次的に受け、モータ112Rを制御する。モータ112Rは、Z軸方向を中心として主軸132を回転駆動する。モータ112Rは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0040】
モータ112Rがサーボモータである場合、モータドライバ111Rは、モータ112Rの回転角度を検知するためのエンコーダ(図示しない)のフィードバック信号からモータ112Rの実回転速度を算出する。そして、モータドライバ111Rは、算出した実回転速度が目標回転速度よりも小さい場合にはモータ112Rの回転速度を上げ、算出した実回転速度が目標回転速度よりも大きい場合にはモータ112Rの回転速度を下げる。このように、モータドライバ111Rは、モータ112Rの回転速度のフィードバックを逐次的に受けながらモータ112Rの回転速度を目標回転速度に近付ける。
【0041】
モータドライバ111Xは、CNCユニット30から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ112Xを制御する。モータ112Xは、主軸頭131が取り付けられている移動体113をボールネジ(図示しない)を介して送り駆動し、X方向の任意の位置に主軸132を移動する。モータドライバ111Xによるモータ112Xの制御方法は、モータドライバ111Rと同様であるので、その説明については繰り返さない。なお、モータ112Xは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0042】
モータドライバ111Yは、CNCユニット30から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ112Yを制御する。モータ112Yは、主軸頭131が取り付けられている移動体113をボールネジ(図示しない)を介して送り駆動し、Y方向の任意の位置に主軸132を移動する。モータドライバ111Yによるモータ112Yの制御方法は、モータドライバ111Rと同様であるので、その説明については繰り返さない。なお、モータ112Yは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0043】
モータドライバ111Zは、CNCユニット30から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ112Zを制御する。モータ112Zは、主軸頭131が取り付けられている移動体113をボールネジ(図示しない)を介して送り駆動し、Z方向の任意の位置に主軸132を移動する。モータドライバ111Zによるモータ112Zの制御方法は、モータドライバ111Rと同様であるので、その説明については繰り返さない。なお、モータ112Zは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0044】
<D.チップコンベア150の構成>
次に、図5および図6を参照して、工作機械100に備えられるチップコンベア150について説明する。図5は、チップコンベア150の外観を示す図である。図6は、チップコンベア150の断面を示す図である。
【0045】
チップコンベア150は、加工エリアARを構成する区画形成するカバー130に併設されている。チップコンベア150は、加工エリアARから排出されるワークの切り屑およびクーラントを受ける。
【0046】
チップコンベア150は、回収用タンク11を有する。回収用タンク11は、クーラントを貯留可能なように構成されている。チップコンベア150は、切り屑をチップバケット(図示しない)に向けて搬送するとともに、クーラントを濾過することにより清浄なクーラントを回収用タンク11に排出する。
【0047】
チップコンベア150は、カバー体21をさらに有する。カバー体21は、チップコンベア150の外観を成す。カバー体21は、内部に空間を形成する筐体形状を有する。
【0048】
カバー体21は、その構成部位として、水平部22と、立ち上がり部26と、切り屑受け入れ部23と、切り屑排出部27とを有する。
【0049】
カバー体21は、全体として、水平部22および立ち上がり部26の間で屈曲した形状を有する。水平部22は、回収用タンク11内に載置されている。水平部22は、水平方向に延在する板形状の外観を有する。水平部22は、矩形形状の平面視を有する。立ち上がり部26は、水平部22のその長手方向における一方端から立ち上がり、斜め上方向に延伸する。
【0050】
切り屑受け入れ部23は、水平部22に設けられている。切り屑受け入れ部23は、水平部22の頂面上に設けられた筐体から構成されている。切り屑受け入れ部23には、接続口24が設けられている。接続口24は、切り屑受け入れ部23を貫通する貫通孔からなる。切り屑受け入れ部23には、接続口24を通じて、加工エリアARの設備である切り屑搬送装置12が接続されている。切り屑搬送装置12は、たとえば、一方向に延びる樋体と、その樋体に設置されるスパイラルコンベアとを含んで構成されている。
【0051】
切り屑排出部27は、水平部22から斜め上方向に延伸する先の立ち上がり部26の端部に設けられている。切り屑排出部27は、鉛直下方向に向けて開口するカバー体21の開口部からなる。切り屑排出部27の下方には、切り屑を回収するためのチップバケット(不図示)が設置される。加工エリアARから排出されたワークの切り屑は、切り屑受け入れ部23よりカバー体21内に受け入れられる。切り屑は、続いて説明する切り屑搬送機構によりカバー体21の内部で搬送され、切り屑排出部27より排出されてチップバケットに回収される。
【0052】
チップコンベア150は、切り屑搬送部35をさらに有する。切り屑搬送部35は、カバー体21に収容されている。切り屑搬送部35は、カバー体21内で切り屑を搬送するための装置である。
【0053】
より具体的に説明すると、切り屑搬送部35は、一対の無端チェーン34と、駆動スプロケット37と、従動スプロケット38とを有する。
【0054】
駆動スプロケット37は、水平部22から斜め上方向に延伸する先の立ち上がり部26の端部に設けられている。駆動スプロケット37は、切り屑排出部27の上方に配置されている。駆動スプロケット37は、図6を示す紙面に直交する方向(以下、この方向を「チップコンベア150の幅方向」ともいう)に延びる軸を中心に回転可能に支持されている。駆動スプロケット37には、上述のモータ112A(図4参照)の出力軸が連結されている。駆動スプロケット37は、モータ112Aから動力が伝達されることにより回転する。
【0055】
従動スプロケット38は、水平部22および立ち上がり部26の間の屈曲部に設けられている。従動スプロケット38は、チップコンベア150の幅方向に延びる軸(中心軸AX)を中心に回転可能に支持されている。
【0056】
一対の無端チェーン34は、チップコンベア150の幅方向に距離を隔てて平行に配置されている。無端チェーン34は、カバー体21の内部において、水平部22および立ち上がり部26の間に渡って環状に配索されている。無端チェーン34は、カバー体21の内部において、切り屑受け入れ部23に対向する位置と、切り屑排出部27に対向する位置との間で往復するように配索されている。
【0057】
無端チェーン34は、カバー体21内で配索される経路上において、駆動スプロケット37および従動スプロケット38に掛け回されるとともに、複数のガイド部材によって案内されている。モータ112Aからの動力を受けて駆動スプロケット37が回転すると、無端チェーン34は、図6中の矢印A(ハッチングが付された矢印)に示す方向に回動する。
【0058】
チップコンベア150は、濾過機構40をさらに有する。濾過機構40は、加工エリアARから受け入れたクーラントを濾過することによって、清浄なクーラントをカバー体21内から回収用タンク11に排出するように構成されている。
【0059】
より具体的に説明すると、濾過機構40は、ドラム状のフィルタ46を有する。フィルタ46は、カバー体21に収容されている。フィルタ46は、水平部22および立ち上がり部26の間の屈曲部に設けられている。フィルタ46は、クーラントに含まれる切り屑などの異物を捕獲可能に構成されている。フィルタ46は、たとえば、円筒形状を有し、その内側に内部空間47を形成している。
【0060】
ドラム状のフィルタ46は、その中心軸がチップコンベア150の幅方向に延びるように配置されている。フィルタ46は、その中心軸が、従動スプロケット38の回転中心である中心軸AXと一致するように配置されている。フィルタ46は、中心軸AXの軸方向における両端において、従動スプロケット38に接続されている。
【0061】
なお、上述では、ドラム状のフィルタ46について説明を行ったが、フィルタ46の形状は、ドラム状に限定されない。一例として、フィルタ46の形状は、矩形であってもよいし、円形であってもよい。
【0062】
カバー体21には、クーラント排出部28が形成されている。クーラント排出部28は、カバー体21を貫通する貫通孔からなる。クーラント排出部28は、フィルタ46の内部空間47と、カバー体21の外側の外部空間とを連通させるように設けられている。切り屑受け入れ部23を通じてカバー体21内に受け入れられたクーラントは、フィルタ46の内部空間47に進入することにより濾過される。濾過されたクーラントは、クーラント排出部28を通じて回収用タンク11に排出される。
【0063】
<E.クーラントの循環機構>
次に、図7を参照して、クーラントを循環機構について説明する。図7は、クーラントの循環機構の一例を示す図である。
【0064】
吐出部125から吐出されたクーラントは、工作機械100内を循環する。工作機械100は、クーラントの循環機構の構成として、貯蔵用タンク10と、吐出用ポンプ109と、バルブ110と、吐出部125と、チップコンベア150と、液面センサ151と、回収用ポンプ152と、流路R1,R2A~R2C,R3とを含む。吐出部125は、たとえば、吐出機構125A~125Cを含む。
【0065】
貯蔵用タンク10には、クーラントが貯蔵されている。貯蔵用タンク10は、流路R1の一端に繋がっている。流路R1の他端は、流路R2A~R2Cと繋がっている。
【0066】
流路R2Aは、吐出機構125Aと繋がっている。吐出機構125Aは、たとえば、流路R2Aに繋がっているクーラントノズル(図示しない)を有し、流路R2Aを通じて圧送されたクーラントを当該クーラントノズルから主軸頭131に向けて吐出する。これにより、主軸頭131に付着したワークの切り屑がチップコンベア150に排出される。
【0067】
流路R2Bは、吐出機構125Bと繋がっている。吐出機構125Bは、流路R2Bを通じて圧送されたクーラントを加工エリアAR全体に向けて吐出する。これにより、加工エリアAR内にあるワークの切り屑がチップコンベア150に排出される。
【0068】
流路R2Cは、吐出機構125Cと繋がっている。吐出機構125Aは、流路R2Aを通じて圧送されたクーラントをベッドBDの壁面に向けて吐出する。これにより、ベッドBD上に溜まっている切り屑がチップコンベア150に排出される。
【0069】
吐出用ポンプ109は、その駆動に伴って、貯蔵用タンク10に貯留されたクーラントを、流路R1を介して、流路R2A~R2Cのそれぞれに圧送する。これにより、吐出用ポンプ109は、貯蔵用タンク10から吐出部125のクーラントノズルにクーラントを送る。
【0070】
バルブ110は、たとえば、流路R1,R2A~R2Cに設けられている。バルブ110は、貯蔵用タンク10から吐出機構125A~125Cに向けて圧送されるクーラントの流量を制御する制御弁である。バルブ110は、上述の制御部50によって制御される。なお、バルブ110は、吐出用ポンプ109と一体的に構成されてもよいし、別に構成されてもよい。
【0071】
チップコンベア150は、回収用タンク11と、フィルタ46とを有する。フィルタ46は、クーラントに含まれる切り屑などの異物を捕獲可能に構成されている。フィルタ46によって切り屑が除去されたクーラントは、チップコンベア150のカバー体21内から回収用タンク11に排出される。このように、回収用タンク11は、フィルタ46を通過したクーラントを受けるように構成される。
【0072】
液面センサ151は、回収用タンク11に溜まっているクーラントの液面までの高さを検知する。当該検知された高さは、上述の制御部50に出力される。制御部50は、当該高さが一定になるように回収用ポンプ152によるクーラントの汲み上げ量を調整する。
【0073】
回収用ポンプ152は、流路R3に繋がっている。回収用ポンプ152は、フィルタ46を通過して回収用タンク11に溜まっているクーラントを汲み上げ、流路R3を通じて貯蔵用タンク10に戻す。これにより、貯蔵用タンク10は、回収用タンク11から貯蔵用タンク10にクーラントを送る。
【0074】
<F.概要>
引き続き図7を参照して、フィルタ46の目詰まりの検知方法の概要について説明する。
【0075】
上述のように、加工エリアARに吐出されたクーラントは、チップコンベア150のカバー体21内から、フィルタ46を通過して回収用タンク11に排出される。この過程で、フィルタ46は、クーラントから切り屑を除去する。このとき、フィルタ46の目詰まりが発生すると、クーラントは、工作機械100内で循環しなくなる。そこで、工作機械100は、フィルタ46の目詰まりを検知し、当該目詰まりが発生した場合には、フィルタ46の異常を報知する。
【0076】
より具体的には、フィルタ46の目詰まりが発生している場合には、クーラントがフィルタ46を通過できなくなるため、クーラントの吐出量に対してクーラントの回収量が少なくなる。この点に着目して、工作機械100は、所定時間当たりに吐出部125から吐出されたクーラントの量を表わす第1指標値と、所定時間当たりにフィルタ46を通過して貯蔵用タンク10に戻されるクーラントの量を表わす第2指標値とを取得する。第1指標値および第2指標値の具体例については後述する。
【0077】
その後、工作機械100は、当該第1指標値と当該第2指標値との比較結果が予め定められた異常条件を満たす場合に、フィルタ46の異常を報知する。工作機械100は、当該異常条件が満たされたか否かにより、クーラントの吐出量に対する回収量が所定量よりも少ないか否かを判断する。当該異常条件の具体例については後述する。
【0078】
このように、工作機械100は、クーラントの吐出量に対する回収量に着目することで、フィルタ46の目詰まりを検知する。これにより、工作機械100は、クーラントの吐出量が少量か多量かに関わらずフィルタ46の目詰まりを検知することができる。
【0079】
<G.機能構成>
次に、図8を参照して、工作機械100の機能構成について説明する。図8は、工作機械100の機能構成の一例を示す図である。
【0080】
工作機械100の制御部50は、機能構成の一例として、第1取得部51と、第2取得部52と、判断部54と、報知部56とを含む。以下では、これらの機能構成について順に説明する。
【0081】
なお、第1取得部51は、CPUユニット20(図4参照)に実装されてもよいし、CNCユニット30(図4参照)に実装されてもよい。同様に、第2取得部52は、CPUユニット20に実装されてもよいし、CNCユニット30に実装されてもよい。同様に、判断部54は、CPUユニット20に実装されてもよいし、CNCユニット30に実装されてもよい。同様に、報知部56は、CPUユニット20に実装されてもよいし、CNCユニット30に実装されてもよい。
【0082】
(G1.第1取得部51)
まず、上述の図7を参照して、図8に示される第1取得部51の機能について説明する。
【0083】
第1取得部51は、所定時間当たりに吐出部125から吐出されたクーラントの量を表わす指標値D(t)(第1指標値)を取得する。当該所定時間の長さは、プログラムの設計時などに予め決められていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。一例として、当該所定時間の長さは、約1~10分である。
【0084】
指標値D(t)は、吐出部125から吐出されたクーラントの量の時系列データを一定区間(単位時間)ごとに平均または積算したデータである。指標値D(t)は、クーラントの吐出量と相関する種々の物理量を含み得る。典型的には、指標値D(t)は、フィルタ46よりも上流側に設けられる種々のセンサを用いて検知される。以下では、指標値D(t)の具体例について説明する。
【0085】
(a)指標値D(t)の具体例1
一例として、指標値D(t)は、吐出用ポンプ109への出力を含む。より具体的には、吐出用ポンプ109は、モータ(図示しない)を有する。吐出部125からのクーラントの吐出量は、当該モータに出力される交流電流の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう。)に基づいて調整される。典型的には、当該駆動周波数が高いほどクーラントの吐出量が多くなり、当該駆動周波数の周波数が低いほど、クーラントの吐出量が少なくなる。このようにクーラントの吐出量は、吐出用ポンプ109に出力する駆動周波数に相関する。そのため、吐出用ポンプ109の駆動周波数は、指標値D(t)になり得る。
【0086】
(b)指標値D(t)の具体例2
他の例として、指標値D(t)は、フィルタ46よりも上流側に設けられる液面センサ(図示しない)の出力値を含む。当該液面センサは、たとえば、チップコンベア150のカバー体21の内部に設けられ、カバー体21に溜まっているクーラントの液面までの高さを検知する。当該高さは、カバー体21の底面からクーラントの液面までの距離で表わされてもよいし、クーラントの液面から液面センサまでの距離で表わされてもよい。当該液面の高さは、吐出部125からのクーラントの吐出量に相関する。より具体的には、クーラントの吐出量が多いほど当該液面が高くなり、クーラントの吐出量が少ないほど当該液面が低くなる。そのため、カバー体21におけるクーラントの液面までの高さは、指標値D(t)になり得る。
【0087】
(c)指標値D(t)の具体例3
他の例として、指標値D(t)は、工作機械100内に備えられる流量計(図示しない)の出力値を含む。当該流量計は、フィルタ46の通過前におけるクーラントの流量を検知する。当該流量計は、たとえば、フィルタ46よりも上流側にある流路上に設けられる。すなわち、吐出部125から吐出されたクーラントは、当該流路を通過後、フィルタ46を通過する。そのため、クーラントの吐出量が多いほど流量計の出力値が大きいなり、クーラントの吐出量が少ないほど流量計の出力値が小さくなる。このように、流量計の出力値は、クーラントの吐出量と相関するため、指標値D(t)になり得る。
【0088】
(d)指標値D(t)の具体例4
他の例として、指標値D(t)は、工作機械100の加工モードを示す値を含む。吐出用ポンプ109のモータに出力される交流電流の周波数は、工作機械100における加工モードに応じて変えられる。より具体的には、出力周波数は、加工モードごとに予め決められており、工作機械100は、加工プログラムに従って加工モードを変える。このように、工作機械100の加工モードは、クーラントの吐出量と相関するため、指標値D(t)になり得る。
【0089】
(e)指標値D(t)の具体例5
他の例として、指標値D(t)は、工作機械100内に備えられるミストセンサ(図示しない)の出力値を含む。当該ミストセンサは、たとえば、工作機械100内の加工エリアAR内に設けられ、空気中のミスト量を検知する。当該ミストセンサは、たとえば、光センサである。吐出部125からのクーラントの吐出量が多くなると、加工エリアAR内のミスト量が増加する。そのため、クーラントの吐出量が多いほどミストセンサの出力値が大きいなり、クーラントの吐出量が少ないほどミストセンサの出力値が小さくなる。このように、ミストセンサの出力値は、クーラントの吐出量と相関するため、指標値D(t)になり得る。
【0090】
(f)指標値D(t)の具体例6
他の例として、指標値D(t)は、工作機械100内に備えられるカメラから得られた画像に基づいて推定されてもよい。当該カメラは、工作機械100内の加工エリアARを撮影するように設けられる。吐出部125から吐出されたクーラントが多くなると、カメラから得られた画像に写るエッジ部分が増加する。すなわち、当該画像に占めるエッジの量は、クーラントの吐出量と相関する。第1取得部51は、当該画像に占めるエッジの量を指標値D(t)として取得する。
【0091】
(G2.第2取得部52)
次に、上述の図7を参照して、図8に示される第2取得部52の機能について説明する。
【0092】
第2取得部52は、所定時間当たりにフィルタ46を通過して貯蔵用タンク10に戻されるクーラントの回収量を表わす指標値R(t)(第2指標値)を取得する。当該所定時間の長さは、プログラムの設計時などに予め決められていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。一例として、当該所定時間の長さは、約1~10分である。
【0093】
指標値R(t)は、フィルタ46を通過したクーラントの量の時系列データを一定区間(単位時間)ごとに平均または積算したデータである。指標値R(t)は、クーラントのフィルタ46の通過量と相関する種々の物理量を含み得る。典型的には、指標値R(t)は、フィルタ46よりも下流側に設けられる種々のセンサを用いて検知される。以下では、指標値R(t)の具体例について説明する。
【0094】
(a)指標値R(t)の具体例1
一例として、指標値R(t)は、回収用タンク11に設けられている液面センサ151の出力値を含む。液面センサ151は、回収用タンク11の内部に設けられ、回収用タンク11に溜まっているクーラントの液面までの高さを検知する。当該高さは、回収用タンク11の底面からクーラントの液面までの距離で表わされてもよいし、クーラントの液面から液面センサ151までの距離で表わされてもよい。当該液面の高さは、フィルタ46の通過後におけるクーラントの量に相関する。より具体的には、フィルタ46の通過量が多いほど当該液面が高くなり、フィルタ46の通過量が少ないほど当該液面が低くなる。このように、フィルタ46の通過量は、液面センサ151の出力値に相関するため、指標値R(t)になり得る。
【0095】
(b)指標値R(t)の具体例2
他の例として、指標値R(t)は、回収用ポンプ152への出力を含む。上述のように、工作機械100の制御部50は、液面センサ151による出力値が一定になるように回収用ポンプ152を制御する。その結果、制御部50は、フィルタ46の通過後におけるクーラントの量が多いほど回収用ポンプ152によるクーラントの汲み上げ量を多くする。この場合、フィルタ46の通過後におけるクーラントの量は、回収用ポンプ152への出力値に相関する。
【0096】
より具体的には、回収用ポンプ152は、モータ(図示しない)を有する。回収用ポンプ152へのクーラントの回収量は、当該モータに出力される交流電流の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう。)に基づいて調整される。典型的には、制御部50は、フィルタ46の通過量が多いほど当該駆動周波数を高くし、フィルタ46の通過量が少ないほど当該駆動周波数を低くする。このように、フィルタ46の通過量は、回収用ポンプ152の駆動周波数に相関する。そのため、回収用ポンプ152の駆動周波数は、指標値R(t)になり得る。
【0097】
(c)指標値R(t)の具体例3
他の例として、指標値R(t)は、工作機械100内に備えられる流量計(図示しない)の出力値を含む。当該流量計は、フィルタ46の通過後におけるクーラントの流量を検知する。当該流量計は、たとえば、フィルタ46よりも下流側にある流路上に設けられる。すなわち、吐出部125から吐出されたクーラントは、フィルタ46を通過後、当該流路を通過する。その結果、フィルタ46の通過量が多いほど流量計の出力値が大きいなり、フィルタ46の通過量が少ないほど流量計の出力値が小さくなる。このように、流量計の出力値は、フィルタ46の通過量と相関するため、指標値R(t)になり得る。
【0098】
(G3.判断部54)
次に、図9を参照して、図8に示される判断部54の機能について説明する。図9は、第1取得部51によって取得された指標値D(t)の推移と、第2取得部52によって取得された指標値R(t)の推移とを示す図である。
【0099】
判断部54は、クーラントの吐出量を表わす指標値D(t)と、フィルタ46通過後における指標値R(t)との比較結果が予め定められた異常条件を満たすか否かを判断する。当該異常条件は、クーラントの吐出量に対してフィルタ46を通過するクーラント量が少ない場合に満たされる。当該異常条件は、たとえば、指標値R(t)から指標値D(t)の差分値が所定値thを超えている場合に満たされる。
【0100】
一例として、時刻T1において、判断部54は、指標値D(T1)から指標値D(T1)を差分し、その差分値ΔC1を算出する。差分値ΔC1は、所定値thよりも小さいので、判断部54は、予め定められた異常条件が満たされていないと判断する。
【0101】
他の例として、時刻T2において、判断部54は、指標値D(T2)から指標値D(T2)を差分し、その差分値ΔC2を算出する。差分値ΔC2は、所定値thよりも大きいので、判断部54は、予め定められた異常条件が満たされたと判断する。
【0102】
なお、上述では、同時刻の指標値D(t),R(t)を比較することで、異常条件が満たされているか否かが判断される例について説明を行ったが、判断部54は、異なる時刻の指標値D(t),R(t)を比較してもよい。一例として、クーラントが吐出されてからフィルタ46を通過するまでの間には時間が多少かかる。この時間を考慮して、判断部54は、指標値D(t)と、指標値R(t+ΔT)とを比較してもよい。所定時間ΔTの長さは、プログラムの設計時などに予め決められていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。
【0103】
この場合、判断部54は、指標値D(t)から指標値D(t+ΔT)を差分し、当該差分値が所定値thよりも大きい場合に、異常条件が満たされたと判断する。一方で、判断部54は、当該差分値が所定値thよりも小さい場合に、異常条件が満たされていないと判断する。
【0104】
(G4.報知部56)
次に、図10を参照して、図8に示される報知部56の機能について説明する。図10は、報知部56による報知態様の一例を示す図である。
【0105】
報知部56は、上述の判断部54によって異常条件が満たされたと判断された場合に、フィルタ46に異常が発生していることを報知する。一例として、報知部56は、操作盤140のディスプレイ142に警告144を表示する。警告144は、チップコンベア150のフィルタ46に目詰まりが発生しているメッセージを含む。これにより、作業者は、チップコンベア150のフィルタ46に目詰まりが発生していることを把握することができる。
【0106】
他の例として、報知部56は、フィルタ46に目詰まりが発生していることを示す警告をブザー音や音声などの音で報知する。これにより、作業者は、ディスプレイ142を見ていなくともフィルタ46の異常に気付くことができる。
【0107】
他の例として、報知部56は、フィルタ46に目詰まりが発生していることを示す警告をメールなどにより他の通信端末に送信する。これにより、工作機械100から離れた場所にいえる作業者や管理者がフィルタ46の異常に気付くことができる。
【0108】
<H.制御部50のハードウェア構成>
次に、図11を参照して、図4に示される制御部50のハードウェア構成について説明する。図11は、制御部50のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0109】
図11に示されるように、制御部50は、CPUユニット20と、CNCユニット30とを含む。CPUユニット20およびCNCユニット30は、たとえば、通信経路Bを介して接続されている。
【0110】
以下では、CPUユニット20のハードウェア構成と、CNCユニット30のハードウェア構成とについて順に説明する。
【0111】
(H1.CPUユニット20のハードウェア構成)
CPUユニット20は、制御回路201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、通信インターフェイス204,205と、補助記憶装置220とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス209に接続される。
【0112】
制御回路201は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0113】
制御回路201は、制御プログラム222などの各種プログラムを実行することでCPUユニット20の動作を制御する。制御プログラム222は、工作機械100内の各種装置を制御するための命令を規定している。制御回路201は、制御プログラム222の実行命令を受け付けたことに基づいて、補助記憶装置220またはROM202からRAM203に制御プログラム222を読み出す。RAM203は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム222の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0114】
通信インターフェイス204は、LAN(Local Area Network)ケーブル、WLAN(Wireless LAN)、またはBluetooth(登録商標)などを用いた通信を実現するためのインターフェイスである。一例として、CPUユニット20は、通信インターフェイス305を介して、吐出用ポンプ109、バルブ110、回収用ポンプ152などの外部機器との通信を実現する。
【0115】
通信インターフェイス205は、フィールドバスに接続される各種ユニットとの通信を実現するためのインターフェイスである。当該フィールドバスに接続されるユニットの一例として、CNCユニット30やI/Oユニット(図示しない)などが挙げられる。
【0116】
補助記憶装置220は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置220は、制御プログラム222などを格納する。制御プログラム222の格納場所は、補助記憶装置220に限定されず、制御回路201の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM202、RAM203、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0117】
なお、制御プログラム222は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う各種の処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム222の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム222によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム222の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態でCPUユニット20が構成されてもよい。
【0118】
(H2.CPUユニット20のハードウェア構成)
引き続き図11を参照して、CNCユニット30のハードウェア構成について説明する。
【0119】
CNCユニット30は、制御回路301と、ROM302と、RAM303と、通信インターフェイス305と、通信インターフェイス305と、補助記憶装置320とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス309に接続される。
【0120】
制御回路301は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0121】
制御回路301は、加工プログラム322などの各種プログラムを実行することでCNCユニット30の動作を制御する。加工プログラム322は、ワーク加工を実現するためのプログラムである。制御回路301は、加工プログラム322の実行命令を受け付けたことに基づいて、ROM302からRAM303に加工プログラム322を読み出す。RAM303は、ワーキングメモリとして機能し、加工プログラム322の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0122】
通信インターフェイス305は、LAN、WLAN、またはBluetoothなどを用いた通信を実現するためのインターフェイスである。一例として、CNCユニット30は、通信インターフェイス305を介してCPUユニット20との通信を実現する。また、CNCユニット30は、通信インターフェイス305または他の通信インターフェイスを介して、ワーク加工のための各種駆動ユニット(たとえば、モータドライバ111R,111X~111Zなど)との通信を実現する。
【0123】
補助記憶装置320は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置320は、加工プログラム322などを格納する。加工プログラム322の格納場所は、補助記憶装置320に限定されず、制御回路301の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM302、RAM303、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0124】
<I.フローチャート>
次に、図12を参照して、工作機械100の制御構造について説明する。図12は、工作機械100が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【0125】
図12に示される処理は、工作機械100の制御部50が上述の制御プログラム222を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0126】
ステップS110において、制御部50は、フィルタ46の目詰まりに係る異常確認処理の実行タイミングが到来したか否かを判断する。
【0127】
一例として、異常確認処理の実行タイミングは、吐出部125からのクーラントの吐出が行われている一のタイミングである。クーラントの吐出が行われているか否かは、たとえば、制御プログラム222(図11参照)に基づいて判断される。制御プログラム222は、たとえば、吐出部125の駆動に係る種々の命令コードを含む。当該命令コードは、吐出部125からのクーラントの吐出のオン/オフを指定するための命令コードなどを含む。制御部50は、吐出部125が駆動されていることを示す特定の命令コードが実行されていることに基づいて、クーラントの吐出中であると判断し、異常確認処理の実行タイミングが到来したと判断する。
【0128】
制御部50は、フィルタ46の目詰まりに係る異常確認処理の実行タイミングが到来したと判断した場合(ステップS110においてYES)、制御をステップS112に切り替える。そうでない場合には(ステップS110においてNO)、制御部50は、ステップS110の処理を再び実行する。
【0129】
ステップS112において、制御部50は、第1取得部51(図8参照)として機能し、上述の指標値D(t)を取得する。指標値D(t)は、所定時間当たりに吐出部125から吐出されたクーラントの量を表わす。指標値D(t)については上述の通りであるので、その説明については繰り返さない。
【0130】
ステップS114において、制御部50は、第2取得部52(図8参照)として機能し、上述の指標値R(t)を取得する。指標値R(t)は、所定時間当たりにフィルタ46を通過して貯蔵用タンク10に戻されるクーラントの回収量を表わす。指標値R(t)については上述の通りであるので、その説明については繰り返さない。
【0131】
ステップS120において、制御部50は、上述の判断部54(図8参照)として機能し、ステップS112で取得した指標値D(t)と、ステップS114で取得した指標値R(t)とを比較し、予め定められた異常条件が満たされたか否かを判断する。一例として、制御部50は、指標値D(t)から指標値R(t)を差分し、当該差分値が所定値を超えている場合に、予め定められた異常条件が満たされたと判断する。制御部50は、予め定められた異常条件が満たされたと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御部50は、制御をステップS124に切り替える。
【0132】
ステップS122において、制御部50は、上述の報知部56(図8参照)として機能し、フィルタ46の目詰まりが発生していることを報知する。
【0133】
ステップS124において、制御部50は、上述の報知部56(図8参照)として機能し、フィルタ46が正常に機能していることを報知する。なお、ステップS124の処理は、実行されなくともよい。
【0134】
制御部50は、ステップS122,S124の実行後、制御をステップS112に戻す。図12に示される処理は、たとえば、ユーザによって停止操作を受け付けた場合や、加工が終了したことに基づいて停止される。
【0135】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0136】
10 貯蔵用タンク、11 回収用タンク、12 搬送装置、20 CPUユニット、21 カバー体、22 水平部、23 切り屑受け入れ部、24 接続口、26 立ち上がり部、27 切り屑排出部、28 クーラント排出部、30 CNCユニット、34 無端チェーン、35 切り屑搬送部、37 駆動スプロケット、38 従動スプロケット、40 濾過機構、46 フィルタ、47 内部空間、50 制御部、51 第1取得部、52 第2取得部、54 判断部、56 報知部、100 工作機械、109 吐出用ポンプ、110 バルブ、111A,111R,111X,111Y,111Z モータドライバ、112A,112R,112X,112Y,112Z モータ、113 移動体、125 吐出部、125A,125B,125C 吐出機構、130 カバー、131 主軸頭、132 主軸、133 ハウジング、134 工具、136 テーブル、140 操作盤、142 ディスプレイ、144 警告、150 チップコンベア、151 液面センサ、152 回収用ポンプ、201,301 制御回路、202,302 ROM、203,303 RAM、204,205,305 通信インターフェイス、209,309 内部バス、220,320 補助記憶装置、222 制御プログラム、322 加工プログラム。
図1
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図12