(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112844
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】媒体供給機構
(51)【国際特許分類】
B65H 7/06 20060101AFI20220727BHJP
B65H 3/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B65H7/06
B65H3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008834
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 譲
【テーマコード(参考)】
3F048
3F343
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA05
3F048BB02
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3F343MA03
3F343MA14
3F343MA45
3F343MA54
3F343MB04
3F343MB14
3F343MC09
(57)【要約】
【課題】媒体供給機構において、再供給された媒体を確実に搬送する。
【解決手段】媒体供給機構の制御部31は、供給部(11,21)から供給された媒体Mが搬送路(P1,P2)に進入したことを検知する進入検知センサ(S11,S21)によって媒体Mの進入が検知される時間が予め定められた第1範囲R1よりも早い場合に媒体Mの取り込み(搬送及び取り込みのうちの少なくとも一方)を中止するように取り込み搬送部(131)を制御する。また、制御部31は、進入検知センサによって第1範囲R1を経過しても媒体Mの進入が検知されない場合(時間t14)、媒体Mを再供給するように供給部を制御し(時間t16)、進入検知センサによって再供給された媒体Mの進入が検知される時間(時間t17)が第1範囲R1よりも早い場合(第2範囲R2)、再供給された媒体Mの搬送及び取り込みを中止させない(時間t18)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を供給する供給部と、
前記供給部に連結された搬送路と、
前記搬送路において前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部を駆動する搬送駆動部と、
前記供給部から供給された前記媒体が前記搬送路に進入したことを検知する進入検知センサと、
前記搬送部によって搬送された前記媒体を取り込む取り込み搬送部と、
前記供給部及び前記取り込み搬送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記媒体の進入が検知される時間が予め定められた第1範囲よりも早い場合に前記媒体の搬送及び取り込みのうちの少なくとも一方を中止するように前記搬送駆動部及び前記取り込み搬送部を制御し、
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記第1範囲を経過しても前記媒体の進入が検知されない場合、当該媒体を再供給するように前記供給部を制御し、前記進入検知センサによって前記再供給された媒体の進入が検知される時間が前記第1範囲よりも早い場合、前記再供給された媒体の搬送及び取り込みを中止させない
ことを特徴とする媒体供給機構。
【請求項2】
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記媒体の進入が検知される時間が前記第1範囲である場合、前記媒体が前記取り込み搬送部に到達する到達時間を一定に近づけるように前記搬送駆動部を制御することにより前記媒体の搬送速度を補正し、
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記再供給された媒体の進入が検知される時間が前記第1範囲よりも早い場合、前記取り込み搬送部に到達する到達時間を一定に近づけるための前記搬送速度の補正を行わない
ことを特徴とする請求項1記載の媒体供給機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体供給機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の給紙装置において、検出スイッチにより無給紙ジャムが生じたと判断されると、駆動制御部が、給紙ローラの回転を停止し、戻しローラにより用紙を用紙収容機内へと戻した後、再度、給紙ローラを回転させるように制御する給紙装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積載台に積載された最上位の媒体を含む複数枚の媒体をエアの吹き出しにより浮上させ、浮上した最上位の媒体を搬送ベルトにより搬送する媒体供給部では、搬送ベルトに媒体を吸着させた際の吸着状態が悪く、吸着力が低い状態で搬送される場合などに、吸着された1枚の媒体が少なからず前進しているにも関わらず、規定時間内に搬送路に配置された入口通過検知センサに到達せず、空走と判定される場合がある。このように空送と判定される場合は、上述のようにローラを用いて媒体を供給する供給手法などの他の供給手法においても生じ得る。
【0005】
媒体が入口通過検知センサの間近まで搬送されてしまっている状態で空走と判定されている場合、媒体の再供給(リトライ動作)を行うと、規定時間よりも早く入口通過検知センサに到達してしまうことがある。
【0006】
ところで、再供給でない通常の供給が行われる媒体が規定時間よりも早く入口通過検知センサに到達してしまうと、正常な搬送を行うことが出来なくなるため、ジャムエラー(早着ジャム)としてレジストローラ対等の取り込み搬送部の取り込みを中止することで、例えば印刷を止めることになる。しかしながら、再供給の場合にも早着ジャムを適用してしまうと、再供給により空走を救済しているにも関わらず、取り込みを行い続けることができなくなる。
【0007】
なお、媒体が入口通過検知センサにより検知される時間が基準通過時間よりも早い場合に搬送速度を遅くすることで、媒体が取り込み搬送部に到達する時間を一定に近づけることが考えられる。しかしながら、媒体が検知される時間が基準通過時間よりも早くなると、それに応じて搬送速度を遅くする必要が生じ、次に搬送される媒体の搬送速度を設計速度に復帰させる制御が間に合わなくなるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、再供給された媒体を確実に搬送することができる媒体供給機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、媒体供給機構は、媒体を供給する供給部と、前記供給部に連結された搬送路と、前記搬送路において前記媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部を駆動する搬送駆動部と、前記供給部から供給された前記媒体が前記搬送路に進入したことを検知する進入検知センサと、前記搬送部によって搬送された前記媒体を取り込む取り込み搬送部と、前記供給部及び前記取り込み搬送部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記進入検知センサによって前記媒体の進入が検知される時間が予め定められた第1範囲よりも早い場合に前記媒体の搬送及び取り込みのうちの少なくとも一方を中止するように前記搬送駆動部及び前記取り込み搬送部を制御し、前記制御部は、前記進入検知センサによって前記第1範囲を経過しても前記媒体の進入が検知されない場合、当該媒体を再供給するように前記供給部を制御し、前記進入検知センサによって前記再供給された媒体の進入が検知される時間が前記第1範囲よりも早い場合、前記再供給された媒体の搬送及び取り込みを中止させない。
【発明の効果】
【0010】
前記態様によれば、再供給された媒体を確実に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施の形態における印刷システムの内部構成を示す図である。
【
図2】一実施の形態における媒体供給装置及び印刷装置の制御構成を示す図である。
【
図3】一実施の形態における第1供給部(第2供給部)の内部構成を示す図である。
【
図4】一実施の形態における媒体の供給動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】一実施の形態におけるリトライモードを説明するためのタイミングチャートである。
【
図6】比較例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図7】一実施の形態における搬送速度の補正を説明するための搬送速度と経過時間との関係を示す図(その1)である。
【
図8】一実施の形態における搬送速度の補正を説明するための搬送速度と経過時間との関係を示す図(その2)である。
【
図9A】一実施の形態における再供給後の媒体が予定よりも早く入口通過検知センサに到達することを説明するための図(その1)である。
【
図9B】一実施の形態における再供給後の媒体が予定よりも早く入口通過検知センサに到達することを説明するための図(その2)である。
【
図10】一実施の形態における搬送時の媒体の位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る媒体供給機構について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、印刷システム100の内部構成を示す図である。
【0014】
図2は、媒体供給装置1及び印刷装置101の制御構成を示す図である。
【0015】
図3は、第1供給部11(第2供給部12)の内部構成を示す図である。
【0016】
なお、
図1及び
図3並びに後述する
図9A及び
図9Bに示す前後、上下、及び左右の各方向は、説明の便宜上の方向にすぎないが、例えば、前後方向及び左右方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。
【0017】
図1に示す印刷システム100は、媒体供給装置1と印刷装置101とを備える。詳しくは後述するが、本実施の形態における媒体供給機構は、媒体供給装置1と、印刷装置101のレジストローラ対131までの搬送経路の構成(受け入れローラ対132、レジストローラ対131、レジストセンサS30、及び合流搬送路P3)と、印刷装置101の制御部151とを備える。
【0018】
媒体供給機構は、印刷装置101のレジストローラ対131よりも搬送方向における下流側(媒体Mの供給先の一例)に媒体Mを供給する。なお、媒体Mの供給先装置としては、印刷装置101に限られず、搬送装置、後処理装置などの他の装置であってもよい。また、媒体供給装置1は、印刷装置101等の供給先装置に一体に備えられていてもよい。また、媒体Mとしては、例えば用紙(枚葉紙)であるが、フィルム等の他のシート状の媒体などであってもよい。
【0019】
図1に示すように、媒体供給装置1は、第1供給部11と、第2供給部12と、第1個別搬送路P1と、第2個別搬送路P2と、合流搬送路P3と、第1~第9搬送ローラ対21~29と、第1~第4搬送駆動部D1~D4と、第1入口通過検知センサS11と、第1途中通過検知センサS12~S14と、第1出口通過検知センサS15と、第2入口通過検知センサS21と、第2途中通過検知センサS22,S23と、第2出口通過検知センサS24とを備える。また、
図2に示すように、媒体供給装置1は、制御部31と、記憶部32と、インターフェース部33とを更に備える。
【0020】
媒体供給装置1は、上段1aと下段1bとに分かれており、第1供給部11が上段1aに配置され、第2供給部12が下段1bに配置されている。このように、第1供給部11及び第2供給部12は、上下に並んで配置されている。第1供給部11及び第2供給部12は、媒体Mを供給する供給部の一例である。この供給部としては、単一の供給部であっても、3つ以上の供給部であってもよい。
【0021】
図3に示すように、第1供給部11及び第2供給部12のそれぞれは、積載台11a,12aと、搬送ベルト11b,12bと、吸引部11c,12cと、浮上エア吹き出し機構11d,12dと、浮上エアシャッタ11e,12eと、分離エア吹き出し機構11f,12fと、媒体検知センサ11g,12gと、エンドフェンス11h,12hとを有する。なお、第1供給部11と第2供給部12とは同様の構成にすることができるため、
図3では、第1供給部11の符号の後に第2供給部12の符号を括弧書きで記す。同様に、
図3では、第1搬送ローラ対21及び第1入口通過検知センサS11の符号の後に、第6搬送ローラ対26及び第2入口通過検知センサS21の符号を括弧書きで記す。
【0022】
積載台11a,12aには、複数枚の媒体Mが積載される。第1供給部11の積載台11aと第2供給部12の積載台12aとには、互いに異なる種類(サイズ、材質、色など)の媒体Mが積載される場合がある。この場合には、印刷対象の媒体Mの種類が変更されるときに、媒体Mを供給する供給部が第1供給部11と第2供給部12とで切り替えられる。積載台11a,12aは、図示しない積載台昇降駆動部の駆動によって昇降する。一例ではあるが、積載台11a,12aに積載された媒体Mの数が減っていくと、第1供給部11又は第2供給部12の図示しない制御部(又は
図2に示す制御部31)は、後述する媒体検知センサ11g,12gが所定の積載面高さに水平に照射した光の反射光の光量に基づいて、積載台11a,12aを上昇させるように積載台昇降駆動部を制御する。
【0023】
搬送ベルト11b,12bは、例えば無端帯状を呈し、2つのプーリに掛け渡されている。搬送ベルト11b,12bには、後述する吸引部11c,12cにより吸引される吸引エアA1を通すための複数の貫通孔が設けられている。搬送ベルト11b,12bは、吸引部11c,12cによる吸引エアA1の吸引によって吸着された媒体Mを、
図3における反時計回りに回転することによって1枚ずつ繰り出す。搬送ベルト11b,12bは、第1供給部11及び第2供給部12の媒体Mを1枚ずつ繰り出す繰り出し部の一例である。なお、この繰り出し部としては、搬送ベルト11b,12bに代えて搬送ローラ等の他の搬送部材が用いられてもよい。
【0024】
吸引部11c,12cは、搬送ベルト11b,12bに設けられた複数の貫通孔を通して図示しない吸引源(例えば吸引ファン)の駆動によって吸引エアA1を吸引する。これにより、吸引部11c,12cは、積載台11a,12aに積載された複数枚の媒体Mのうち浮上している最上位の媒体M1を搬送ベルト11b,12bに吸着させる。
【0025】
浮上エア吹き出し機構11d,12dは、例えば吹き出しファンによって浮上エアA2を吹き出すことによって、積載台11a,12aに積載された複数枚の媒体Mのうち少なくとも最上位の媒体M1を浮上させる。浮上エア吹き出し機構11d,12dは、最上位の媒体M1を含む例えば10枚程度の媒体Mを浮き上がらせるように、斜め上方に浮上エアA2を吹き出すとよい。なお、
図3には、媒体Mの搬送方向における下流側(右側)に配置された浮上エア吹き出し機構11d,12dを図示するが、媒体Mの搬送方向に直交する幅方向(前後方向)の両側にも浮上エア吹き出し機構が配置されているとよい。
【0026】
浮上エアシャッタ11e,12eは、浮上エア吹き出し機構11dによる浮上エアA2の吹き出しを遮断する遮断部の一例であり、吹き出しを遮断する閉位置と吹き出しを遮断しない開位置とに開閉する。この遮断部としては、浮上エア吹き出し機構11d,12dの浮上エアA2の吹き出しを停止する制御部などであってもよいが、浮上エアシャッタ11e,12eを用いることで浮上エアA2の吹き出しの遮断を即座に行うことができる。なお、浮上エアシャッタ11e,12eは、閉位置と開位置との間の1つ以上の位置において、浮上エアA2の風量を調整可能であってもよい。
【0027】
分離エア吹き出し機構11f,12fは、最上位の媒体M1を、この最上位の媒体M1の下部に位置する2番目の媒体M2と分離させるように、例えば吹き出しファンによって分離エアA3を吹き出す。なお、分離エア吹き出し機構11f,12fは、浮上エア吹き出し機構11d,12dと同様に、遮断部の一例である分離エアシャッタを有することによって、分離エアA3の全部又は一部を遮断可能であってもよい。また、
図3には、媒体Mの搬送方向における下流側(右側)に配置された分離エア吹き出し機構11f,12fを図示するが、媒体Mの幅方向(前後方向)の両側にも分離エア吹き出し機構が配置されているとよい。
【0028】
媒体検知センサ11g,12gは、積載台11a,12aに積載された媒体Mを検知する。媒体検知センサ11g,12gは、例えば、水平に照射した検知光の反射光に基づいて検知高さにおける媒体Mの有無を検知する。媒体検知センサ11g,12gが媒体Mの有無を検知することによって、図示しない第1供給部11又は第2供給部12の制御部(又は
図2に示す制御部31)は、積載台11a,12aに積載された最上位の媒体M1の高さを検出することができる。また、媒体検知センサ11g,12gは、浮上している媒体Mに向けて検知光を照射し、その反射光の光量に基づいて、媒体Mの浮上状態(例えば、高さ方向における検知可能範囲での媒体Mの枚数)などを検知してもよい。
【0029】
エンドフェンス11h,12hは、浮上した媒体Mの搬送方向における上流側端部の位置を規制する。図示はしないが、積載台11a,12aに積載された媒体Mの幅方向における端部の位置を規制する1対のサイドフェンスも配置されているとよい。
【0030】
ここで、上述のように、第1供給部11及び第2供給部12は、浮上エア吹き出し機構11d,12dを有し、浮上エアA2の吹き出しによって媒体Mを浮上させて供給するが、媒体Mを浮上させずに供給する供給部であってもよい。なお、浮上エアA2の吹き出しによって媒体Mを浮上させて供給する第1供給部11及び第2供給部12では、複数枚の媒体Mが搬送ベルト11b,12bに吸着されても、1枚の媒体Mが搬送ベルト11b,12bに吸着された場合と比較して搬送抵抗がほとんど変わらない。そのため、複数枚の媒体Mが供給されて搬送抵抗が増加することに起因する空送が生じにくい。したがって、積載台11a,12aに媒体Mを戻すための戻し機構を、コストをかけてまで配置する必要性が高くない。
【0031】
また、図示はしないが、第1供給部11及び第2供給部12は、積載台11a,12aを上下動させるモータ(アクチュエータの一例)等の積載台昇降駆動部や、搬送ベルト11b,12bが掛け渡された2つのプーリのうちの一方である駆動プーリを回転させるモータ(アクチュエータの一例)等の繰り出し駆動部などを有するとよい。
【0032】
図1に戻り、第1個別搬送路P1は、第1供給部11に連結されている。第2個別搬送路P2は、第2供給部12に連結されている。合流搬送路P3は、第1個別搬送路P1と第2個別搬送路P2とが合流した搬送路であり、印刷装置101のレジストローラ対131まで延びる。なお、第1個別搬送路P1と第2個別搬送路P2とは、媒体Mの搬送経路の経路長が異なり、例えば、第2個別搬送路P2の経路長は、第1個別搬送路P1の経路長の半分以下である。
【0033】
第1個別搬送路P1は、大部分が媒体供給装置1の上段1aに配置され、第2個別搬送路P2は、媒体供給装置1の下段1bに配置されている。第1個別搬送路P1は、下段1bに配置された合流搬送路P3において第2個別搬送路P2と合流する。
【0034】
第1~第9搬送ローラ対21~29のそれぞれは、互いに対向して配置された駆動ローラ及び従動ローラを有し、媒体Mをニップしながら搬送する。
【0035】
第1~第5搬送ローラ対21~25は、媒体供給装置1の上段1aの第1個別搬送路P1において媒体Mを搬送する。第6及び第7搬送ローラ対26,27は、媒体供給装置1の下段1bの第2個別搬送路P2において媒体Mを搬送する。第8及び第9搬送ローラ対28,29は、媒体供給装置1の下段1bの合流搬送路P3において媒体Mを搬送する。また、後述する印刷装置101の受け入れローラ対132は、印刷装置101の合流搬送路P3において媒体Mを搬送する。なお、第1~第5搬送ローラ対21~25と第6及び第7搬送ローラ対26,27とは、第1個別搬送路P1及び第2個別搬送路P2(複数の個別搬送路)において媒体Mを搬送する複数の個別搬送部の一例である。また、第8及び第9搬送ローラ対28,29並びに受け入れローラ対132は、合流搬送路P3において媒体Mを搬送する合流搬送部の一例である。第1個別搬送路P1、第2個別搬送路P2、及び合流搬送路P3は、供給部(第1供給部11又は第2供給部12)に連結された搬送路の一例であり、第1~第9搬送ローラ対21~29及び受け入れローラ対132は、搬送路において媒体Mを搬送する搬送部の一例である。
【0036】
第1~第4搬送駆動部D1~D4は、第1~第9搬送ローラ対21~29の駆動ローラを回転させるモータ(アクチュエータの一例)である。第1搬送駆動部D1は、第1及び第2搬送ローラ対21,22の駆動ローラを回転させる。第2搬送駆動部D2は、第3~第5搬送ローラ対23~25の駆動ローラを回転させる。第3搬送駆動部D3は、第6及び第7搬送ローラ対26,27の駆動ローラを回転させる。第4搬送駆動部D4は、第8及び第9搬送ローラ対28,29の駆動ローラを回転させる。第1及び第2搬送駆動部D1,D2と第3搬送駆動部D3とは、複数の個別搬送部(第1~第7搬送ローラ対21~27)を駆動する個別搬送駆動部の一例である。第4搬送駆動部D4、及び受け入れローラ対132を駆動する図示しない搬送駆動部は、合流搬送部(第8及び第9搬送ローラ対28,29並びに受け入れローラ対132)を駆動する合流搬送駆動部の一例である。そして、第1~第4搬送駆動部D1~D4と、受け入れローラ対132を駆動する図示しない搬送駆動部とは、搬送部(第1~第9搬送ローラ対21~29及び受け入れローラ対132)を駆動する搬送駆動部の一例でもある。なお、第1~第9搬送ローラ対21~29による媒体Mの搬送速度は例えば一定である。但し、第1個別搬送路P1と、第2個別搬送路P2と、合流搬送路P3とで搬送速度が異なってもよいし、或いは、第1個別搬送路P1、第2個別搬送路P2、及び合流搬送路P3のうちの少なくとも1つ以上の内部で搬送速度が異なってもよい。
【0037】
第1入口通過検知センサS11、第1途中通過検知センサS12~S14、第1出口通過検知センサS15、第2入口通過検知センサS21、第2途中通過検知センサS22,S23、及び第2出口通過検知センサS24は、媒体Mの通過を検知する例えば反射型又は透過型の光電センサである。
【0038】
第1入口通過検知センサS11は、第1搬送ローラ対21の搬送方向における下流側において第1搬送ローラ対21に隣接して配置されている。第1途中通過検知センサS12は、第2搬送ローラ対22の搬送方向における下流側において第2搬送ローラ対22に隣接して配置されている。第1途中通過検知センサS13は、第3搬送ローラ対23の搬送方向における下流側において第3搬送ローラ対23に隣接して配置されている。第1途中通過検知センサS14は、第4搬送ローラ対24の搬送方向における下流側において第4搬送ローラ対23に隣接して配置されている。第1出口通過検知センサS15は、第5搬送ローラ対25の搬送方向における下流側において第5搬送ローラ対25に隣接して配置されている。
【0039】
そして、第1入口通過検知センサS11は、媒体Mの通過を検知し、第1出口通過検知センサS15は、第1個別搬送路P1の出口近傍において媒体Mの通過を検知するといえる。
【0040】
第2入口通過検知センサS21は、第6搬送ローラ対26の搬送方向における下流側において第6搬送ローラ対26に隣接して配置されている。第2途中通過検知センサS22は、第7搬送ローラ対27の搬送方向における下流側において第7搬送ローラ対27に隣接して配置されている。第2途中通過検知センサS23は、第8搬送ローラ対28の搬送方向における下流側において第8搬送ローラ対28に隣接して配置されている。第2出口通過検知センサS24は、第9搬送ローラ対29の搬送方向における下流側において第9搬送ローラ対29に隣接して配置されている。
【0041】
そして、第2入口通過検知センサS21は、第2個別搬送路P2の入口近傍において媒体Mの通過を検知し、第2出口通過検知センサS24は、合流搬送路P3のうち媒体供給装置1の出口近傍において媒体Mの通過を検知するといえる。
【0042】
なお、第1入口通過検知センサS11及び第2入口通過検知センサS21は、供給部(第1供給部11又は第2供給部12)から供給された媒体Mが搬送路(第1個別搬送路P1又は第2個別搬送路P2)に進入したことを検知する進入検知センサの一例である。この進入検知センサは、搬送路(第1個別搬送路P1又は第2個別搬送路P2)における検知位置が特に制限されないため、第1途中通過検知センサS12又は第2途中通過検知センサS22などであってもよいが、媒体Mに空送が生じているかなどを判定するために用いられるため、第1供給部11又は第2供給部12の近くに配置されていることが望ましい。
【0043】
また、第1途中通過検知センサS12~S14、第1出口通過検知センサS15、第2途中通過検知センサS22,S23、第2出口通過検知センサS24、及びレジストセンサS30は、進入検知センサ(第1入口通過検知センサS11又は第2入口通過検知センサS21)よりも媒体Mの搬送方向における下流側で且つ取り込み搬送部(レジストローラ対131)よりも搬送方向における上流側において媒体Mの通過を検知する通過検知センサの一例である。
【0044】
図2に示す制御部31は、媒体供給装置1全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有し、媒体供給装置1の各部を制御する。例えば、制御部31は、後述するインターフェース部33が印刷装置101のインターフェース部153(制御部151)から受ける媒体Mの供給信号に基づいて、第1供給部11、第2供給部12、及び第1~第4搬送駆動部D1~D4を制御する。なお、第1供給部11及び第2供給部12の制御は、印刷装置101からの供給信号を、第1供給部11及び第2供給部12のそれぞれに配置された制御部が受ける場合には、これらの制御部によって行われてもよい。また、媒体供給装置1が印刷装置101などの供給先装置に一体に備えられる場合などには、供給先装置の制御部(例えば、後述する印刷装置101の制御部151)が制御部31として機能してもよい。
【0045】
記憶部32は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)などのメモリを有する。なお、媒体供給装置1が印刷装置101などの供給先装置に一体に備えられる場合などには、供給先装置の記憶部(例えば、後述する印刷装置101の記憶部152)が記憶部32として機能してもよい。
【0046】
インターフェース部33は、印刷装置101等の外部機器との間で各種情報の授受を行う。例えば、インターフェース部33は、印刷装置101のインターフェース部153から、媒体Mの供給信号、レジストセンサS30の検知結果などの情報を受け、制御部31は、これらの情報に基づき、媒体供給装置1の各部の動作を制御する。また、インターフェース部33は、後述するリトライモードの通知などの情報を印刷装置101のインターフェース部153に送る。
【0047】
次に、印刷装置101について説明する。
【0048】
図1及び
図2に示すように、印刷装置101は、印刷部110と、吸着搬送部120と、搬送部130と、レジストセンサS30と、供給先搬送路P11と、循環反転搬送路P12と、反転部140と、制御部151と、記憶部152と、インターフェース部153とを備える。なお、
図1には、合流搬送路P3及び供給先搬送路P11を実線で示し、循環反転搬送路P12を破線で示す。
【0049】
印刷部110は、例えば、印刷に用いられる各色分の図示しないラインヘッド型インクジェットヘッドを有する。なお、印刷部110の印刷方式は、インクジェット印刷方式以外の印刷方式であってもよい。
【0050】
図1に示すように、吸着搬送部120は、印刷部110に対向するように配置されている。吸着搬送部120は、媒体Mを吸着しながら、搬送ベルトによって媒体Mを搬送する。
【0051】
搬送部130は、印刷部110に向けて搬送される媒体Mが突き当てられることで媒体Mの斜行を補正するレジストローラ対131と、媒体供給装置1から続く合流搬送路P3において媒体Mを搬送する受け入れローラ対132と、供給先搬送路P11又は循環反転搬送路P12において媒体Mを搬送する複数の搬送ローラ対133とを有する。レジストローラ対131、受け入れローラ対132、及び複数の搬送ローラ対133は、媒体Mをニップしながら搬送する。
【0052】
レジストローラ対131は、上述の搬送部(第1~第9搬送ローラ対21~29及び受け入れローラ対132)によって搬送された媒体Mを例えば印刷装置101の供給先搬送路P11に取り込む取り込み搬送部の一例である。なお、レジストローラ対131は、合流搬送路P3における基準到達位置の一例でもあり、例えば所定間隔の基準到達時間に媒体Mが到達し、例えば所定間隔の取り込み時間に媒体Mが取り込まれる。この基準到達時間及び取り込み時間は、幅のある時間であってもよい。また、基準到達時間及び取り込み時間は、例えば、媒体Mのサイズや印刷内容に対応する印刷部110の印刷時間、連続的に搬送される媒体M間の隙間などに基づいて、媒体Mごとに設定されてもよい。媒体Mがレジストローラ対131に基準到達時間よりも遅れて到達することは、ジャムの判断材料になるとともに、印刷部110による印刷開始時間の遅れや斜行補正の精度のばらつきなどを生じさせる。なお、基準到達位置は、レジストローラ対131以外の任意の位置であってもよい。
【0053】
レジストセンサS30は、レジストローラ対131の搬送方向における上流側の合流搬送路P3においてレジストローラ対131の近傍に配置されている。レジストセンサS30は、合流搬送路P3に配置され、媒体Mの到達時間を検知する到達検知センサの一例である。この到達検知センサとしては、媒体供給装置1の合流搬送路P3に配置された上述の第2出口通過検知センサS24などであってもよい。なお、上述のように、本実施の形態における媒体供給機構は、媒体供給装置1と、印刷装置101のうちレジストローラ対131までの搬送経路の構成(受け入れローラ対132、レジストローラ対131、レジストセンサS30、及び合流搬送路P3)と、印刷装置101の制御部151とを備えるため、受け入れローラ対132及びレジストセンサS30は、媒体供給機構の一部といえる。
【0054】
上述の基準到達位置の一例であるレジストローラ対131には、媒体Mを検知するセンサが設けられていない。そのため、レジストセンサS30の検知結果に基づいて媒体Mがレジストローラ対131に到達したか否かを判別することができる。
【0055】
供給先搬送路P11は、媒体供給装置1から続く合流搬送路P3に連結され、レジストローラ対131から搬送方向における下流側に延びている。なお、
図1に示す印刷システム100において、印刷装置101の搬送方向における下流側に他の印刷装置や媒体排出装置が配置される場合には、これらの装置の搬送路に供給先搬送路P11が連結される。
【0056】
循環反転搬送路P12には、印刷部110によって片面の印刷が行われた媒体Mに対して反対側の面にも印刷が行われる場合などに媒体Mが搬送される。
【0057】
反転部140は、循環反転搬送路P12に搬送された媒体Mの表裏を反転させる反転経路やスイッチバックローラ対などを有する。
【0058】
図2に示す制御部151は、印刷装置101全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU)を有し、印刷装置101の各部を制御する。例えば、制御部151は、予定よりも早く供給された媒体Mの取り込みを中止するようにレジストローラ対131を制御する。
【0059】
記憶部152は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAMなどのメモリを有する。
【0060】
インターフェース部153は、媒体供給装置1や、印刷データを送信するユーザ端末等の外部機器との間で、各種情報の授受を行う。例えば、インターフェース部153は、上述のように、媒体Mの供給信号、レジストセンサS30の検知結果などの情報を媒体供給装置1のインターフェース部33に送り、このインターフェース部33からリトライモードの通知などの情報を受ける。
【0061】
次に、印刷システム100の動作の概要について上述の説明と重複する事項については適宜省略しながら説明する。
【0062】
まず、
図2に示す制御部31は、インターフェース部33が受けた印刷装置101(インターフェース部153)からの媒体Mの供給信号に基づいて、
図1に示す第1供給部11の媒体Mと第2供給部12の媒体Mとを切り替えながら、或いは、第1供給部11又は第2供給部12の一方のみの媒体Mを供給するように第1供給部11及び第2供給部12を制御する。
【0063】
制御部31は、第1供給部11から供給された媒体Mを第1個別搬送路P1において搬送するように第1搬送駆動部D1及び第2搬送駆動部D2を用いて第1~第5搬送ローラ対21~25を制御する。媒体Mは、第1個別搬送路P1において搬送される際には、第1入口通過検知センサS11、第1途中通過検知センサS12~S14、及び第1出口通過検知センサS15によって通過を検知される。
【0064】
また、制御部31は、第2供給部12から供給された媒体Mを第2個別搬送路P2において搬送するように第3搬送駆動部D3を用いて第6及び第7搬送ローラ対26,27を制御する。媒体Mは、第2個別搬送路P2において搬送される際には、第2入口通過検知センサS21及び第2途中通過検知センサS22によって通過を検知される。
【0065】
そして、制御部31は、第1個別搬送路P1又は第2個別搬送路P2から搬送されてくる媒体Mを合流搬送路P3において搬送するように第4搬送駆動部D4を用いて第8及び第9搬送ローラ対28,29を制御する。媒体Mは、合流搬送路P3において搬送される際には、第2途中通過検知センサS23及び第2出口通過検知センサS24によって通過を検知される。
【0066】
これにより、媒体Mは、媒体供給装置1の合流搬送路P3に連結された印刷装置101の合流搬送路P3に供給され、レジストセンサS30によって通過(到達)を検知され、レジストローラ対131に突き当てられて斜行が補正された後、印刷部110によって印刷が行われる。
【0067】
次に、
図4を参照しながら、本実施の形態における媒体Mの供給動作の詳細について説明する。
【0068】
図4は、媒体Mの供給動作を説明するためのフローチャートである。
【0069】
なお、
図4に示すフローチャートの各処理は、
図2に示す媒体供給装置1の制御部31が例えば印刷装置101の制御部151から媒体Mの供給信号を受けることによって開始する。
【0070】
まず、媒体供給装置1の制御部31は、印刷装置101の制御部151から印刷終了や印刷中断に伴って送られる供給終了指示を受信したかを判定する(ステップS41)。
【0071】
制御部31は、供給終了指示を受信した場合(ステップS41:YES)、第1供給部11、第2供給部12、及び第1~第9搬送ローラ対21~29による媒体Mの搬送を停止させ(ステップS42)、
図4に示す供給動作を終了する。
【0072】
制御部31は、供給終了指示を受信せず(ステップS41:NO)、供給信号を受信すると(ステップS43)、第1供給部11又は第2供給部12の搬送ベルト11b,12bを起動させる(ステップS44,例えば
図5の時間t10,t13,t16)。
【0073】
また、制御部31は、搬送ベルト11b,12bの起動からの経過時間Tを更新し(ステップS45)、媒体Mが進入検知センサ(第1入口通過検知センサS11又は第2入口通過検知センサS21)を通過したかを判定する(ステップS46)。
【0074】
制御部31は、媒体Mが進入検知センサを通過しない場合(ステップS46:NO)、経過時間Tが補正範囲の終期である時間T2よりも遅いかを判定する(ステップS47)。ここで、補正範囲は、T1以上で且つT2以下(T1≦T≦T2)であり、
図5に示す第1範囲R1である。なお、この第1範囲R1や後述する第2範囲R2は、搬送ベルト11b,12bの起動からの経過時間Tに限らず、搬送ベルト11b,12bを起動させる制御を行ったとき、搬送ベルト11b,12bが所定の回転速度に達したときなどの他の条件を起点とした時間の範囲であってもよい。
【0075】
制御部31は、経過時間TがT2以下である場合(ステップS47:NO)、上述のステップS45に戻る。
【0076】
制御部31は、経過時間Tが第1範囲R1の終期である時間T2よりも遅い場合(ステップS47:YES)、搬送ベルト11b,12bを停止させる(ステップS48,例えば
図5に示す時間t14)。
【0077】
また、制御部31は、リトライモードを印刷装置101の制御部151に通知し(ステップS49)、上述のステップS41から処理を繰り返す。
【0078】
ここで、媒体供給装置1の制御部31が印刷装置101の制御部151にリトライモードを通知する場合、制御部151は、媒体Mの取り込みを中止するようにレジストローラ対131を制御する(例えば、
図5の時間t15)。一方、制御部31は、次に媒体Mを供給する予定だった供給タイミングで媒体Mの再供給を行うように搬送ベルト11b,12bを制御する(例えば、
図5の時間t16)。なお、媒体Mの取り込みを中止するのに代えて或いは媒体Mの取り込みを中止するのとともに、搬送部(第1~第9搬送ローラ対21~29及び受け入れローラ対132)の搬送を中止してもよい。
【0079】
制御部31は、媒体Mが進入検知センサを通過した場合(ステップS46:YES,例えば、
図5の時間t11,t17)、経過時間Tが第1範囲R1の始期である時間T1よりも早いかを判定する(ステップS50)。
【0080】
制御部31は、経過時間Tが第1範囲R1の始期である時間T1以上であると判定すると(ステップS50:NO)、経過時間TがT1≦T≦T2の関係を満たす第1範囲R1になるため(例えば
図5の時間t11)、媒体Mがレジストローラ対131に到達する到達時間を一定に近づけるように第1~第4搬送駆動部D1~D4を制御することにより媒体Mの搬送速度を補正する(ステップS51)。また、印刷装置101の制御部151は、例えば
図5に示す時間t12において、媒体Mを取り込むようにレジストローラ対131(レジストローラ対131を駆動するレジスト駆動部)を制御する。そして、媒体供給装置1の制御部31は、上述のステップS41から処理を繰り返す。
【0081】
ここで、媒体Mの搬送速度の補正について
図7及び
図8を参照しながら説明する。
【0082】
図7及び
図8は、搬送速度の補正を説明するための搬送速度と経過時間との関係を示す図である。
図7及び
図8では、第2供給部12から供給される媒体Mを例に説明する。
【0083】
まず、
図7の例では、媒体Mの第2入口通過検知センサS21の通過時間(時間t41a)は、媒体Mと搬送ベルト12bとの滑りが多く搬送率が低くなることによって、予め決定された理論値である基準通過時間としての基準通過時間(時間t41)よりも遅れている。制御部31は、媒体Mの遅れを取り戻して媒体Mがレジストローラ対131に突き当てられる突き当て時間(到達時間)を一定(基準突き当て時間(基準到達時間))に近づけるために、第2入口通過検知センサS21と第2出口通過検知センサS24との間(第2個別搬送路P2及び合流搬送路P3)において、第2出口通過検知センサS24とレジストセンサS30との間の搬送速度v0よりも速くなるように搬送速度v1を決定している。
【0084】
一方、
図8の例では、媒体Mと搬送ベルト12bとの滑りが少なく搬送率が高くなることによって、媒体Mの第2入口通過検知センサS21の通過時間(時間t41b)が予め決定された理論値である基準通過時間(時間t41)よりも早くなっている。この場合、制御部31は、媒体Mがレジストローラ対131に突き当てられる突き当て時間(到達時間)を一定(基準突き当て時間(基準到達時間))に近づけるために、第2入口通過検知センサS21と第2出口通過検知センサS24との間(第2個別搬送路P2及び合流搬送路P3)において、第2出口通過検知センサS24とレジストセンサS30との間の搬送速度v0よりも遅くなるように搬送速度v2を決定する。なお、
図8の太線部分は、後述するが、搬送速度が補正されない場合を表す。
【0085】
上述の媒体Mの第2入口通過検知センサS21の通過時間(時間t41a,t41b)の基準通過時間(時間t41)からのズレは、浮上エアによって浮上し、分離エアによって下位の媒体Mと分離した最上位の媒体Mが搬送ベルト12bによって吸着搬送される場合に限らず、捌き板などによって最上位の媒体Mと下位の媒体Mとを分離させる場合にも、捌き板と媒体Mとの間に働く摩擦などによって生じるものである。
【0086】
図4に戻り、制御部31は、経過時間Tが時間T1よりも早い第2範囲R2(0<T<T1)であると判定すると(ステップS50:YES)、リトライモードによる媒体Mの再供給かを判定する(ステップS52)。
【0087】
制御部31は、リトライモードによる媒体Mの再供給であれば(ステップS52:YES)、再供給された媒体Mの搬送やレジストローラ対131による取り込みを中止させない(時間t18)。また、制御部31は、上述の媒体Mの速度補正も行わず(ステップS53)、上述のステップS41から処理を繰り返す。なお、リトライモードによる媒体Mの再供給で且つ経過時間Tが時間T1よりも早い第2範囲R2(0<T<T1)である場合、先行する媒体Mとの間に、供給を失敗した分の1枚分の媒体Mの隙間が生まれるため、搬送速度を遅くする補正が不要になるが、予定よりも早く搬送されているため、搬送速度を遅くする補正(例えば、許容される最も遅い速度に変更する補正)が行われてもよい。
【0088】
ここで、リトライモードによる媒体Mの再供給で且つ経過時間Tが時間T1よりも早い第2範囲R2(0<T<T1)である場合は、例えば、
図9Aに示すように、媒体Mが第1入口通過検知センサS11(第2入口通過検知センサS21)の間近まで搬送されてしまっている状態で空走と判定され、その後に媒体Mの再供給が行われ、
図9Bに示すように媒体Mがすぐに第1入口通過検知センサS11(第2入口通過検知センサS21)に到達する場合である。
【0089】
制御部31は、リトライモードによる媒体Mの再供給でなければ(ステップS52:NO)、ジャムエラーを印刷装置101の制御部151に通知する(ステップS54)。そして、媒体供給装置1の制御部31は、上述のステップS41から処理を繰り返す。この場合、印刷装置101の制御部151は、供給終了指示を制御部31に送り、媒体Mの供給を停止させる。
【0090】
なお、リトライモードによる媒体Mの再供給で且つ経過時間Tが時間T1よりも早い第2範囲R2(0<T<T1)である場合に、搬送速度の補正(搬送速度を遅くする補正)が行われずに、
図8に太い実線で示すように媒体Mが搬送速度v0のまま搬送されて、第2出口通過検知センサS24の通過時間t42bが基準通過時間t42から早まり、レジストセンサS30の到達時間t43bが基準到達時間t43から早まり、レジストローラ対131の突き当て時間t44b(到達時間)が基準突き当て時間t44よりも早まることになる。しかしながら、
図10に示すように、予定(破線)より早く搬送されているn+1枚目の媒体Mは、その前のn枚目の媒体Mの供給との間に、供給を失敗した分の1枚分の媒体Mの隙間が生まれるため、レジストローラ対131への突き当て時などに、n枚目の媒体Mにn+1枚目の媒体Mが接触しない。
【0091】
また、リトライモードによる媒体Mの再供給で且つ経過時間Tが時間T1よりも早い第2範囲R2(0<T<T1)である場合には、制御部31は、第1入口通過検知センサS11、第1途中通過検知センサS12~S14、第1出口通過検知センサS15、第2入口通過検知センサS21、第2途中通過検知センサS22,S23、第2出口通過検知センサS24、及びレジストセンサS30の通過許容時間を早くすることで、予定よりも早く搬送されている媒体Mについて、搬送過程で搬送の遅れが生じたことをいち早く発見できるようにしてもよい。
【0092】
以上説明した本実施の形態では、媒体供給機構は、媒体Mを供給する供給部(例えば、第1供給部11及び第2供給部12)と、この供給部に連結された搬送路(例えば、第1個別搬送路P1、第2個別搬送路P2、及び合流搬送路P3)と、この搬送路において媒体Mを搬送する搬送部(例えば、第1~第9搬送ローラ対21~29及び受け入れローラ対132)と、この搬送部を駆動する搬送駆動部(例えば、第1~第4搬送駆動部D1~D4及び搬送部130の搬送駆動部)と、供給部から供給された媒体Mが搬送路に進入したことを検知する進入検知センサ(例えば、第1入口通過検知センサS11及び第2入口通過検知センサS21)と、搬送部によって搬送された媒体Mを取り込む取り込み搬送部(例えば、レジストローラ対131)と、供給部及び取り込み搬送部を制御する制御部(例えば、制御部31,151)とを備える。この制御部は、進入検知センサによって媒体Mの進入が検知される時間が予め定められた第1範囲R1よりも早い場合に媒体Mの取り込み(搬送及び取り込みのうちの少なくとも一方の一例)を中止するように取り込み搬送部を制御する。また、制御部は、進入検知センサによって第1範囲R1を経過しても媒体Mの進入が検知されない場合(例えば、
図5の時間t14)、この媒体Mを再供給するように供給部を制御し(例えば、時間t16)、進入検知センサによって再供給された媒体Mの進入が検知される時間(例えば、時間t17)が第1範囲R1よりも早い場合(第2範囲R2)、再供給された媒体Mの搬送及び取り込みを中止させない(例えば、時間t18)。
【0093】
ところで、
図6(比較例)に示すように、所定の時間(例えば第1範囲R1の終期の時間t24)に媒体Mが進入検知センサ(入口通過検知センサ)に到達せず、レジストローラ対131の取り込みを中止した場合(時間t25)、媒体Mが進入検知センサの間近まで搬送されてしまっている状態で空走と判定されていることがある。このときにも、リトライモードにより再供給された媒体Mの進入が検知される時間が第1範囲R1よりも早い場合(時間t27)にレジストローラ対131の取り込みを中止すると(時間t28)、再供給により空走を救済しているにも関わらず、媒体Mの取り込みを行い続けることができなくなる。それに対し、本実施の形態では、リトライモードによる媒体Mの再供給で且つ媒体Mの進入が検知される時間が第1範囲R1よりも早い第2範囲R2(0<T<T1)である場合に、再供給された媒体Mの搬送及び取り込みを中止させないため(例えば、
図5の時間t18)、媒体Mの取り込みを行うことができる。よって、本実施の形態によれば、再供給された媒体Mを確実に搬送することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、制御部は、進入検知センサによって媒体Mの進入が検知される時間が第1範囲R1である場合、媒体Mが取り込み搬送部に到達する到達時間を一定に近づけるように搬送駆動部を制御することにより媒体Mの搬送速度を補正する(例えば、
図7の搬送速度v1及び
図8の搬送速度v2)。また、制御部は、進入検知センサによって再供給された媒体Mの進入が検知される時間が第1範囲R1よりも早い場合(第2範囲R2)、取り込み搬送部に到達する到達時間を一定に近づけるための搬送速度の補正を行わない。
【0095】
これにより、進入検知センサによって媒体Mが検知される時間が第1範囲R1である場合には、取り込み搬送部に到達する時間を一定に近づけることで、例えば、印刷部110による印刷開始時間の遅れや斜行補正の精度のばらつきなどが生じるのを回避することができる。また、進入検知センサによって再供給された媒体Mが検知される時間が第1範囲R1よりも早い場合には、先行する媒体Mとの間に、例えば供給を失敗した分の1枚分の媒体Mの隙間が生まれるため、搬送速度の補正(搬送速度を遅くする補正)を行わない簡単な制御で、先行する媒体Mとの接触を回避することができる。
【0096】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0097】
[付記1]
媒体を供給する供給部と、
前記供給部に連結された搬送路と、
前記搬送路において前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部を駆動する搬送駆動部と、
前記供給部から供給された前記媒体が前記搬送路に進入したことを検知する進入検知センサと、
前記搬送部によって搬送された前記媒体を取り込む取り込み搬送部と、
前記供給部及び前記取り込み搬送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記媒体の進入が検知される時間が予め定められた第1範囲よりも早い場合に前記媒体の搬送及び取り込みのうちの少なくとも一方を中止するように前記搬送駆動部及び前記取り込み搬送部を制御し、
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記第1範囲を経過しても前記媒体の進入が検知されない場合、当該媒体を再供給するように前記供給部を制御し、前記進入検知センサによって前記再供給された媒体の進入が検知される時間が前記第1範囲よりも早い場合、前記再供給された媒体の搬送及び取り込みを中止させない
ことを特徴とする媒体供給機構。
【0098】
[付記2]
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記媒体の進入が検知される時間が前記第1範囲である場合、前記媒体が前記取り込み搬送部に到達する到達時間を一定に近づけるように前記搬送駆動部を制御することにより前記媒体の搬送速度を補正し、
前記制御部は、前記進入検知センサによって前記再供給された媒体の進入が検知される時間が前記第1範囲よりも早い場合、前記取り込み搬送部に到達する到達時間を一定に近づけるための前記搬送速度の補正を行わない
ことを特徴とする付記1記載の媒体供給機構。
【符号の説明】
【0099】
1 媒体供給装置
1a 上段
1b 下段
11 第1供給部
11a 積載台
11b 搬送ベルト
11c 吸引部
11d 浮上エア吹き出し機構
11e 浮上エアシャッタ
11f 分離エア吹き出し機構
11g 媒体検知センサ
11h エンドフェンス
12 第2供給部
12a 積載台
12b 搬送ベルト
12c 吸引部
12d 浮上エア吹き出し機構
12e 浮上エアシャッタ
12f 分離エア吹き出し機構
12g 媒体検知センサ
12h エンドフェンス
21~29 第1~第9搬送ローラ対
31 制御部
32 記憶部
33 インターフェース部
100 印刷システム
101 印刷装置
110 印刷部
120 吸着搬送部
130 搬送部
131 レジストローラ対
132 受け入れローラ対
133 搬送ローラ対
140 反転部
151 制御部
152 記憶部
153 インターフェース部
A1 吸引エア
A2 浮上エア
A3 分離エア
D1~D4 第1~第4搬送駆動部
M 媒体
P1 第1個別搬送路
P2 第2個別搬送路
P3 合流搬送路
P11 供給先搬送路
P12 循環反転搬送路
R1 第1範囲
R2 第2範囲
S11 第1入口通過検知センサ
S12 第1途中通過検知センサ1
S13 第1途中通過検知センサ2
S14 第1途中通過検知センサ3
S15 第1出口通過検知センサ
S21 第2入口通過検知センサ
S22 第2途中通過検知センサ1
S23 第2途中通過検知センサ2
S24 第2出口通過検知センサ
S30 レジストセンサ