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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112860
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20220727BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C23C14/50 H
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008861
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】390007216
【氏名又は名称】株式会社シンクロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青山 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】姜 友松
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029BA46
4K029BA58
4K029CA01
4K029CA05
4K029JA03
5F131BA01
5F131BA03
5F131CA06
5F131CA12
5F131EA05
5F131EA21
5F131EB66
(57)【要約】
【課題】パーティクルが膜に混入するのを抑制できる基板保持装置及びこれを用いた成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置Fに用いられる基板保持装置Dにおいて、第1軸S1の回りに回転する回転体2と、前記回転体に回転可能に支持され、成膜対象となる基板を保持する基板保持部材4と、前記基板保持部材に接触しない自転駆動部材5と、を備え、前記基板保持部材は、前記回転体の回転により前記第1軸の回りに公転し、当該公転にともない、前記自転駆動部材により第2軸S2の回りに自転する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜装置に用いられる基板保持装置において、
第1軸の回りに回転する回転体と、
前記回転体に回転可能に支持され、成膜対象となる基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材に接触しない自転駆動部材と、を備え、
前記基板保持部材は、
前記回転体の回転により前記第1軸の回りに公転し、
当該公転にともない、前記自転駆動部材により第2軸の回りに自転する基板保持装置。
【請求項2】
前記自転駆動部材は、磁力により前記基板保持部材を自転させる請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記自転駆動部材は、第1の磁力部を含み、
前記基板保持部材は、前記第1の磁力部に対面する第2の磁力部を含む請求項1又は2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記第2軸は、前記基板保持部材の中心軸に一致する請求項1~3のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記第2軸は、前記基板保持部材の中心軸からオフセットされている請求項1~3のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記第2軸は、前記第1軸に平行である請求項1~5のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記第2軸は、前記第1軸に非平行である請求項1~5のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項8】
前記自転駆動部材は、前記回転体に対して位置が固定された環状筐体を含み、
前記環状筐体は、前記回転体の外側に同軸に設けられ、
前記基板保持部材は、回転軸と、前記回転軸に固定された基板保持部とを含む請求項1~7のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項9】
前記自転駆動部材は、第1の磁力部を含み、
前記基板保持部材は、前記第1の磁力部に対面する第2の磁力部を含み、
前記第1の磁力部は、前記環状筐体の周方向に沿って配設された複数対のS極とN極を含み、
前記第2の磁力部は、前記回転軸の周方向に沿って配設された複数対のS極とN極を含む請求項8に記載の基板保持装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の基板保持装置と、
前記回転体を回転駆動する駆動部と、
前記基板保持部材に保持された基板に膜を形成する成膜機構と、を備える成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置及びこれを用いた成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
均一な薄膜を形成するための、遊星歯車機構を備える可搬型回転装置として、回転体と、当該回転体上に回転可能に支持される基板ホルダとを備え、回転体は、遊星歯車機構の公転軸としての第1の回転軸を中心に回転し、基板ホルダは、回転体により第1の回転軸の周囲に保持され、遊星歯車機構の自転軸としての第2の回転軸を中心に回転可能に支持されるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5727073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の可搬型回転装置を用いた成膜装置では、成膜時に、歯車の機械的な噛み合いによって発生した金属粉片などのパーティクルが、膜に混入するという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、パーティクルが膜に混入するのを抑制できる基板保持装置及びこれを用いた成膜装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1軸の回りに回転する回転体と、前記回転体に回転可能に支持され、成膜対象となる基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材に接触しない自転駆動部材と、を備え、
前記基板保持部材は、前記回転体の回転により前記第1軸の回りに公転し、当該公転にともない、前記自転駆動部材により第2軸の回りに自転することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板保持部材と自転駆動部材は接触しないので、パーティクルが膜に混入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る基板保持装置を適用した成膜装置の一実施の形態を示す構造図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3A】本発明に係る基板保持部材と第2軸との関係の一実施の形態を示す要部構造図である。
図3B】本発明に係る基板保持部材と第2軸との関係の他の実施の形態を示す要部構造図である。
図4】本発明に係る基板保持装置を適用した成膜装置の他の実施の形態を示す構造図である。
図5】本発明の実施形態に係る環状筐体を示す要部平面図である。
図6A】本発明の実施形態に係る第2の磁力部の一例を示す水平断面図である。
図6B】本発明の実施形態に係る第2の磁力部の他例を示す水平断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る第1の磁力部と第2の磁力部がゼロトルクとなる状態を示す水平断面図である。
図8図1の成膜装置を用いた膜厚実験について使用した基板を示す平面図である。
図9図8のIX-IX線に沿う断面図である。
図10図1の成膜装置を用いた膜厚実験のSiO膜の膜厚分布結果を示すグラフである。
図11図1の成膜装置を用いた膜厚実験のSi膜の膜厚分布結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る基板保持装置は、蒸着装置又はスパッタ装置に代表される種々の成膜装置に用いることができ、その適用対象となる成膜装置は特に限定されない。また、本発明に係る基板保持装置が適用される成膜装置において、成膜される膜の種類についても特に限定されず、光学膜、防汚膜、保護膜その他の用途に使用することができる。さらに、本発明に係る基板保持装置が適用される成膜装置において、成膜される膜の適用機器についても特に限定されず、スマートフォン、タブレット、カメラ、ビデオカメラ等に使用されるタッチパネル、ディスプレー、光学素子、レンズに使用することができる。
【0010】
図1は、本発明に係る基板保持装置Dを適用した成膜装置Fの一実施の形態を示す構造図、図2は、図1のII-II線に沿う断面図であり、基板保持装置Dは、成膜装置Fの真空チャンバ1の内部に設置される。本実施形態の真空チャンバ1は、一般的に使用されるステンレス鋼製容器であり、全体が縦置き円筒形状構造とされている。真空チャンバ1は、閉開可能な蓋体(不図示)を介して内部を密閉空間とするとともに、排気口に接続された排気装置7により、その内部を所定の真空状態にすることができる。
【0011】
本実施形態の成膜装置Fには、基板保持部材4に保持された基板(不図示)を成膜する成膜機構8が設けられている。成膜装置Fを真空スパッタ装置に具現化した場合には、図示する成膜機構8はスパッタ源に相当し、真空チャンバ1の内部においてプラズマ環境を構築し、スパッタ源のターゲットをスパッタし、成膜粒子を形成することで基板に薄膜を堆積する。一方、成膜装置Fを真空蒸着装置に具現化した場合には、成膜機構8は蒸発源に相当し、当該蒸発源は、真空チャンバ1に固定され、蒸着材料を加熱して蒸発させることで基板に薄膜を堆積する。
【0012】
本実施形態の基板保持装置Dは、第1軸S1の回りに回転する回転体2と、基板を保持する基板保持部材4と、自転駆動部材5と、を備える。以下、これらの構成について説明する。
【0013】
本実施形態の回転体2は、第1軸S1の回りに回動する支持筒(ドラム)21と、当該支持筒21の中心に固定されたシャフト3とを含み、シャフト3の一端に接続された駆動部6によって回転駆動される。支持筒21は、第1軸S1に沿った方向の上端及び下端に、上部取付板22a及び下部取付板22bが設けられている。なお、本発明に係る回転体2は、ドラム状の支持筒21にのみ限定されず、たとえば図4に示すような傘状のラックであってもよい。
【0014】
ちなみに、図4は、本発明に係る基板保持装置を適用した成膜装置Fの他の実施の形態を示す構造図である。図4に示す実施形態において、公転軸となる第1軸S1は、真空チャンバ1に対して鉛直方向に延在するように設けられ、第2軸S2は外側下がりの傾斜になるように設けられ、第2軸S2の延長線は、第1軸S1と交差する。本実施形態の回転体2は、シャフト3に回転駆動された傘状ラックであり、基板保持部材4は、当該傘状ラックの回転体2に傾斜して取り付けられ、回転体2の下方には、蒸着源などの成膜機構8が設けられている。
【0015】
図1及び図2に戻り、本実施形態の基板保持部材4は、回転体2の外周部分に、複数、等間隔で、回転可能に支持されている。そのため、基板保持部材4は、シャフト42と、当該シャフト42に固定された基板保持部40とを備える。このシャフト42の上端は、回転体2の上部取付板22aに回転可能に取り付けられ、シャフト42の下端は、下部取付板22bに回転可能に取り付けられている。これらシャフト42と上部取付板22aとの間、及び/又は、シャフト42の下端と下部取付板22bとの間に、軸受を設けてもよい。一方、基板保持部材4の基板保持部40は、その全体が長方形の板状構造とされ、基板を保持するための基板保持面を備える基板固定治具である。成膜対象となる基板は、成膜前に基板保持部40に取り付けられ、成膜後に取り外される。
【0016】
このように基板保持部材4は、回転体2の外周部分に回転可能に支持されているので、回転体2が駆動部6により第1軸S1を中心にして回転すると、当該基板保持部材4も第1軸S1を中心にして回転(公転)するとともに、後述する自転駆動部材5の作用により、回転体2に支持されながら第2軸S2を中心に回転(自転)する。以下、基板保持部材4の、前者の回転を公転、後者の回転を自転ともいう。
【0017】
図3Aは、本発明に係る基板保持部材4と第2軸S2との関係の一実施の形態を示す要部構造図、図3Bは、同じく他の実施の形態を示す要部構造図である。本実施形態の基板保持部材4の回転軸となる第2軸S2は、図3A及び図3Bに示すように第1軸S1と平行になるように構成してもよいし、図4に示すように第1軸S1と非平行になるように構成してもよい。また、第2軸S2は、図3A及び図4に示すように基板保持部材4の中心軸に一致してもよいし、図3Bに示すように基板保持部材4の中心軸からオフセットしてもよい。
【0018】
本実施形態の自転駆動部材5は、基板保持部材4に接触せず、回転体2の回転による基板保持部材4の第1軸S1の回りの回転(公転)に伴って、当該基板保持部材4を第2軸S2の回りに回転(自転)させる。特に限定はされないが、本実施形態の自転駆動部材5は、磁力を用いて基板保持部材4を自転させる。具体的には、自転駆動部材5は、回転体2に対して位置が固定された環状筐体50を含み、当該環状筐体50は、回転体2の外側に位置し、回転体2と同軸になるように、真空チャンバ1の天井面に固定されている。これにより、回転体2が回転しても、環状筐体50の位置は固定されたまま、回転体2と干渉しないで所定間隔を維持する。
【0019】
本実施形態の自転駆動部材5は、図2に示すように、第1の磁力部51を含み、当該第1の磁力部51は、環状筐体50の内周面に、その周方向に沿って配設された複数対のS極510とN極511を含む。一方において、基板保持部材4は、第1の磁力部51に所定間隔をもって対面する第2の磁力部41を含み、当該第2の磁力部41は、図6A又は図6Bに示すようにシャフト42の上端に設けられた固定鉄芯420の外周面に、周方向に沿って配設された複数対のS極410とN極411を含む。これら第1の磁力部51と第2の磁力部41は、第1軸S1方向に沿った高さが等しく設定されている。そして、基板保持部材4が公転する場合に、複数対のS極510とN極511を含む第1の磁力部51は、複数対のS極410とN極411を含む第2の磁力部41に対して、当該第2の磁力部41を第2軸S2の回りに回転させる磁力モーメントを生成する。これにより、当該磁力モーメントの作用によって、第2の磁力部41(延いては基板保持部材4)は、第1の磁力部51に沿って基板保持部材4が公転する過程において自転することになる。
【0020】
なお、図1及び図2に示す実施形態では、環状筐体50は、回転体2の外側に位置し、環状筐体50の内周面に複数対のS極510とN極511を含む第1の磁力部51が設けられ、当該環状筐体50の内側に基板保持部材4の固定鉄芯420に複数対のS極410とN極411を含む第2の磁力部41が設けられているが、この位置関係を逆に構成してもよい。すなわち、環状筐体50を、回転体2の内側に位置せしめ、環状筐体50の外周面に複数対のS極510とN極511を含む第1の磁力部51を設け、当該環状筐体50の外側に基板保持部材4の固定鉄芯420に複数対のS極410とN極411を含む第2の磁力部41を設けてもよい。
【0021】
図5は、本発明の実施形態に係る環状筐体50を示す要部平面図である。環状筐体50への取り付け作業を容易にするために、S極510とN極511は、いずれも直方体とされ、これらS極510とN極511は、同じ形状とされ、且つ極性が逆とされている。特に限定はされないが、第1の磁力部51と第2の磁力部41の第1軸S1方向に沿った長さは、45~55mmである。一方、環状筐体50の内周面には、第1の磁力部51のS極510とN極511が取り付けられる取付溝501が形成されている。この取付溝501は、矩形状の溝とされ、第1の磁力部51のS極510とN極511は、取付溝501に対し、接着又は締まり嵌めにより固定されている。
【0022】
また、第1の磁力部51の磁気リークが外部に拡散し、第1の磁力部51と第2の磁力部41との間の磁力作用に影響することを避けるために、第1の磁力部51はヨークを含んでもよい。また、第1の磁力部51は永久磁石で構成するほか、必要に応じて電磁石で構成してもよい。
【0023】
図6Aは、本発明の実施形態に係る第2の磁力部41の一例を示す水平断面図、図6Bは、他例を示す水平断面図である。本実施形態の第2の磁力部41は、基板保持部材4のシャフト42の上端の固定鉄芯420に設けられ、その周方向に沿って複数対のS極410とN極411を含む。これらS極410とN極411は、円周方向に沿って交互に分布する。本実施形態のS極410とN極411は、同じ形状とされ、且つ極性が逆とされている。固定鉄芯420は、所望の磁場を形成するために、シャフト42の上端に設けられている。1つのS極410とN極411は扇状構造とされ、第2の磁力部41を構成する外表面400は弧状表面とされている。なお、1つのS極410とN極411の内表面401は、図6Aに示すように平面であってもよく、図6Bに示すように弧状面であってもよい。
【0024】
第1の磁力部51の一対のS極510及びN極511の周方向の長さと、第2の磁力部41の一対のS極410及びN極411の周方向の長さは、ほぼ等しくされている。ただし、取付要求を考慮し、隣接するS極510とN極511との間に隙間が発生する可能性がある場合には、第2の磁力部41の外表面400の円周方向に沿った長さを、第1の磁力部51の円周方向に沿った長さよりも少し長くしてもよい。
【0025】
本実施形態において、第1の磁力部51の1つのS極510又はN極511に対応する中心角をA、第2の磁力部41の1つのS極410又はN極411に対応する中心角をBとすると、基板保持部材4は、角度Aだけ公転する時に角度Bだけ自転することになる。本実施形態の環状筐体50の直径と第2の磁力部41の直径を種々に設定することで、歯車機構におけるギヤ比に相当する回転比を調節することができる。
【0026】
図7は、本発明の実施形態に係る第1の磁力部51と第2の磁力部41がゼロトルクとなる状態を示す水平断面図である。基板保持部材4の回転過程において、第1の磁力部51の円周方向に沿った中間位置と、第2の磁力部41の円周方向に沿った中間位置とが、図7に示すように対面するタイミングは勿論存在する。このとき、第1の磁力部51のN極511は、第2の磁力部41のS極410と対面し、径方向に沿った作用力は生じるが回転方向のトルクはゼロである。しかしながら、第2の磁力部41が第1の磁力部51に沿って公転することで、次のタイミングにて、当該トルクがゼロの状態は解消され、相応する磁力モーメントが生る。そして、この磁力モーメントの作用により第2の磁力部41は回転し、基板保持部材4が自転することになる。
【0027】
次に、図1に示す成膜装置Fを用いて成膜した膜の均一性を検証した結果を説明する。図8は、この実験で使用した基板を示す平面図、図9は、図8のIX-IX線に沿う断面図である。この基板は、図8の平面視のように長径が100mm程度の楕円形状であり、図9の断面図に示すように外周部分がドーナツ状の環状隆起部とされ、中央部分が上に凸のドーム形状とされた複雑な形状を有する。図8に示す丸数字は、成膜後に膜厚測定を行った部位を示す。図1に示す成膜装置Fを用いて、SiO膜とSi膜をそれぞれ基板に形成し、膜厚測定をした結果を図10及び図11に示す。図10は、SiO膜の膜厚分布結果を示すグラフ、図11は、Si膜の膜厚分布結果を示すグラフである。なお、縦軸は正規化した膜厚を示す。図10の結果から、SiO膜の膜厚分布は±1.8%の範囲にあり、Si膜の膜厚分布は±1.4%の範囲にあり、いずれも良好な結果であった。
【0028】
以上説明したとおり、本実施形態の基板保持装置D及び成膜装置Fには、基板保持部材4に接触しない自転駆動部材5が設けられ、これら基板保持部材4と自転駆動部材5との相互作用により、基板保持部材4は、公転する過程において自転する。これにより、基板保持部材4に保持された基板も公転及び自転しながら真空チャンバ1内を移動するので、成膜機構8からの成膜材料が基板に対して万遍なく堆積することになる。その結果、均一な膜厚に成膜された基板を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態の基板保持装置D及び成膜装置Fでは、基板保持部材4と自転駆動部材5は互いに接触しないので、潤滑材が不要で保守性に優れる。また、機械的磨耗が生じないので、成膜時に機械磨耗による汚染物質が膜に混入するのを抑制することができる。これと同時に、混入物が抑制される結果、成膜質量の精度が向上する。
【0030】
また、本実施形態の基板保持装置D及び成膜装置Fでは、基板保持部材4が公転及び自転するので、基板保持部材4に保持した基板に対して360°の成膜を行うことができる。したがって、基板の全面に成膜を施す必要がある場合でも、複数回に分けて成膜することなく、1回の成膜処理で基板の全面を成膜することができ、成膜効率が向上する。
【0031】
さらに、本実施形態の基板保持装置D及び成膜装置Fでは、基板の形状に対して許容性が高く、矩形その他の標準形状の基板だけではなく、図8及び図9に示すような複雑な異形基板に対しても成膜することができる。
【符号の説明】
【0032】
F…成膜装置
D…基板保持装置
1…真空チャンバ
2…回転体
21…支持筒(ドラム)
22a…上部取付板
22b…下部取付板
3…シャフト
4…基板保持部材
40…基板保持部
400…外表面
401…内表面
41…第2の磁力部
410…S極
411…N極
42…シャフト
420…固定鉄芯
5…自転駆動部材
50…環状筐体
501…取付溝
51…第1の磁力部
510…S極
511…N極
6…駆動部
7…排気装置
8…成膜機構
S1…第1軸
S2…第2軸
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸の回りに回転する回転体と、
前記回転体に回転可能に支持され、成膜対象となる基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材に接触しない自転駆動部材と、を含む基板保持装置と、
前記回転体を回転駆動する駆動部と、
前記基板保持部材に保持された基板に膜を形成する成膜機構と、を備える成膜装置において、
前記基板保持部材は、
前記回転体の回転により前記第1軸の回りに公転し、
当該公転にともない、前記自転駆動部材により第2軸の回りに自転し、
前記第2軸は、前記基板保持部材の中心軸からオフセットされてい成膜装置
【請求項2】
前記自転駆動部材は、磁力により前記基板保持部材を自転させる請求項1に記載の成膜装置
【請求項3】
前記自転駆動部材は、第1の磁力部を含み、
前記基板保持部材は、前記第1の磁力部に対面する第2の磁力部を含む請求項1又は2に記載の成膜装置
【請求項4】
前記第2軸は、前記第1軸に平行である請求項1~のいずれか一項に記載の成膜装置
【請求項5】
前記第2軸は、前記第1軸に非平行である請求項1~のいずれか一項に記載の成膜装置
【請求項6】
前記自転駆動部材は、前記回転体に対して位置が固定された環状筐体を含み、
前記環状筐体は、前記回転体の外側に同軸に設けられ、
前記基板保持部材は、回転軸と、前記回転軸に固定された基板保持部とを含む請求項1~のいずれか一項に記載の成膜装置
【請求項7】
前記自転駆動部材は、第1の磁力部を含み、
前記基板保持部材は、前記第1の磁力部に対面する第2の磁力部を含み、
前記第1の磁力部は、前記環状筐体の周方向に沿って配設された複数対のS極とN極を含み、
前記第2の磁力部は、前記回転軸の周方向に沿って配設された複数対のS極とN極を含む請求項に記載の成膜装置
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、成膜装置に関するものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、パーティクルが膜に混入するのを抑制できる成膜装置を提供することである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、第1軸の回りに回転する回転体と、前記回転体に回転可能に支持され、成膜対象となる基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材に接触しない自転駆動部材と、を含む基板保持装置と、前記回転体を回転駆動する駆動部と、前記基板保持部材に保持された基板に膜を形成する成膜機構と、を備える成膜装置において、
前記基板保持部材は、前記回転体の回転により前記第1軸の回りに公転し、当該公転にともない、前記自転駆動部材により第2軸の回りに自転し、前記第2軸は、前記基板保持部材の中心軸からオフセットされることによって、上記課題を解決する。