(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112885
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】防水構造部材
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008891
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】517292929
【氏名又は名称】株式会社デルタプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】安保 次雄
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087FF08
5E087FF13
5E087HH01
5E087LL04
5E087LL14
5E087MM05
5E087RR12
5E087RR47
(57)【要約】
【課題】成型したシール材の防水機能の有効性を確認する。
【解決手段】ハウジング1内の中筒1aの先端の外面には、相手側電気コネクタのハウジングとの間を防水構造とするシール部1fが付設されている。このシール部1fは中筒1aに設けた孔部1hを介して中筒1aの内面にも接続され、内面には端子ホルダ2との間を防水構造とするシール部1gが、シール部1fと一体化して設けられている。これらのシール部1f、1gを形成する空所はハウジング1の外面に開口する溢出孔1iに連通し、空所に注入されたシール材の余剰分が溢出孔1iから押し出される。
この余剰のシール材を視認して、シール部1f、1gにはシール材が確実に充填され、防水機能を有することが確認できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材を充填してシール部を形成して防水構造とする防水構造部材であって、
前記シール材を充填することで前記シール部を形成する空所と、該空所に連通し前記シール材を注入する充填口と、前記空所に連通する前記充填口とは異なる、外面に設けた溢出孔とを備え、
前記充填口から前記空所に充填した前記シール材の余剰分を前記溢出孔から溢出させることを特徴とすることを特徴とする防水構造部材。
【請求項2】
接続端子を収容した筒部を備えるハウジングを有し、前記筒部の外側に相手側電気コネクタのハウジングを挿入し、接続端子同士による電気的接続を行う電気コネクタに適用し、
前記筒部の外面に前記シール部を形成し、前記相手側のハウジングに接して前記相手側のハウジングとの間を防水構造とすることを特徴とする請求項1に記載の防水構造部材。
【請求項3】
前記筒部の内面にも前記シール部を形成し、前記筒部の内外両面の前記シール部同士を連結し、前記筒部の内側に挿入した端子ホルダに接して該端子ホルダとの間を防水構造とすることを特徴とする請求項2に記載の防水構造部材。
【請求項4】
前記シール部は二色成型により成型したことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の防水構造部材。
【請求項5】
前記のシール部は断面を波形状としたことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の防水構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電気回路部材等に用いられ、内部に防水用のシール部を成型した防水構造部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電気コネクタでは、設置個所によっては内部に水が浸入しないように、シール材を用いて防水構造とすることが必要である。
【0003】
この場合に、電気コネクタのハウジングは接続端子を固定し、相手側防水構造部材のハウジングとの嵌合に際して、例えば合成ゴム等から成る環状のシール材を挿着して防水構造としている。
【0004】
また、ハウジング自体が接続端子を固定せずに、ハウジング内に内在する端子ホルダなどの別体の部材により接続端子を保持する場合には、ハウジングと端子ホルダとの間をも更に防水構造としなければならない。この場合には、相手側電気コネクタに対するシール部と、端子ホルダに対するシール部との2個所に、環状のシール材の挿着が必要とされる。
【0005】
これらのシール材は手作業によりハウジング内に取り付けをすることが多く、しかも電気コネクタが小型になると、シール材も小さくなり、シール材の管理や組立て作業に時間を必要とする。しかも、無理な姿勢で挿入したり、或いは挿入をし忘れることもあり、その場合には、内部への浸水が生じて重大な事故の発生に繋がる虞れがある。
【0006】
この課題の解決のために、例えば特許文献1においては、このようなシール材の外部からの挿着を不要とし、シール部をハウジング内に射出成型により成型することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この特許文献1では作業工程が簡素化されるが、シール部の成型の確認は、所要個所にシール部が存在するか否かの確認を目視に依存しており、シール材が必要個所に確実に行き渡り、防水機能を十分に果たし得るか否かの確認が難しい。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、シール材により防水用のシール部を内部に成型すると共に、溢出孔からのシール材の溢れ出しを視認して、防水機能の有効性を確認ができる防水構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る防水構造部材は、シール材を充填してシール部を形成して防水構造とする防水構造部材であって、前記シール材を充填することで前記シール部を形成する空所と、該空所に連通し前記シール材を注入する充填口と、前記空所に連通する前記充填口とは異なる、外面に設けた溢出孔とを備え、前記充填口から前記空所に充填した前記シール材の余剰分を前記溢出孔から溢出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る防水構造部材は、シール材の成型により防水構造とし、余剰のシール材を外部に溢れ出させるので、シール材の充填状態の有効性を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図7】溢出孔からシール材が溢れ出た状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の電気コネクタを実施例として詳細に説明する。
図1は実施例の電気コネクタのハウジングを前方から見た斜視図、
図2は後方から見た斜視図、
図3は正面図、
図4は端子ホルダの斜視図、
図5はハウジングの拡大断面図である。
【0014】
電気コネクタは、合成樹脂製のハウジング1と、このハウジング1の後方からハウジング1内に挿入する同様な合成樹脂製の端子ホルダ2とから構成されている。端子ホルダ2は、
図6に示すような例えば受型の接続部Taを有する所謂雌端子である2個の接続端子Tを内装可能とされている。接続端子Tの後端には、電線Tbが圧着により接続され、電線Tbにはシリコンゴムから成る防止用のシール筒Tcが挿入されている。そしてハウジング1は、同数の挿入型の所謂雄端子である接続端子を内蔵した相手側のハウジングHと嵌合して、雌雄の接続端子同士による電気的な接続を行う。
【0015】
このハウジング1の大きさは、組み立てた状態で、例えば幅15.5mm、高さ11.3mm、奥行き21.5mmとされており、内蔵する接続端子Tの大きさ、収容個数等に応じて適宜の大きさのものを採用することができる。
【0016】
ハウジング1の中央部には中筒1aが設けられ、その外側に中筒1aを大きく囲むように、間隙を設けて外筒1bが配置され、外筒1bの後部は中筒1aの後方に連結され、中筒1aと外筒1bは一体に成型されている。
【0017】
中筒1aの後部は後方に向けて開口され、端子ホルダ2の後方の枠部2aを保持する筒状のホルダ保持部1cとされ、使用時には中筒1aと外筒1bとの間に、相手側電気コネクタのハウジングHが挿入される。
【0018】
中筒1aの更に前方には、中筒1aよりも小径で筒状の端子保持部1dが、中筒1a、外筒1bと一体に形成されており、端子保持部1dは中筒1aの内側から図示を省略した複数のリブにより、端子ホルダ2の挿入の邪魔にならないように支持されている。
【0019】
端子保持部1dは端子ホルダ2に保持された接続端子Tの接続部Taを保持するためのものであり、接続部Taは端子ホルダ2の挿通孔2bから前方に突出され、端子保持部1d内に収容される。端子保持部1dの前端部には、相手側コネクタの接続端子の挿入端が挿入される挿入口1eが形成されている。端子ホルダ2をハウジング1内に挿入すると、端子ホルダ2は図示しない錠止機構によりハウジング1に固定される。
【0020】
中筒1aの内外両面には、シリコンゴムから成り、二色成型により付設されたシール部1f、1gにより包囲されている。中筒1aの外面には、相手側のハウジングHと接し、ハウジングHとの間を防水構造とするシール部1fが面状に形成され、中筒1aの内面には、端子ホルダ2の外面と接し、端子ホルダ2との間を防水構造とするシール部1gが形成されている。シール部1f、1g同士は中筒1aに設けられた複数個の孔部1hにより連通して一体化されている。
【0021】
ハウジング1の外面には溢出孔1iが開口されており、シール材1jを注入しシール部1f、1gが形成される空所が、溢出孔1iと通路を介して連通している。シール部1f、1gを形成する型の一部には、図示しない充填口が設けられており、成型に際しては、充填口から空所の容積よりも余分にシール材1jを注入し、空所内を埋め尽くしたシール材1jの余剰分が、溢出孔1iから溢れ出すようにされている。シール部1f、1gはハウジング1の射出成型後に、更に架橋することが好ましい。
【0022】
溢出孔1iは空所にシール材1jを注入した場合に、押し出される空気の出口ともされ、充填口から注入されたシール材1jが空所内を充填して、最後に到達する個所とされている。また、溢出孔1iはハウジング1の外面の見易い個所で、かつ必要以上の量のシール材1jが溢れ出た場合に、切り取り易い個所に設けることも重要である。
【0023】
シール部1f、1gは、水の浸入を効果的に阻止するために断面は波形状とされている。シール部1fは相手側のハウジングHとの間に介在し、電気コネクタ同士の頻繁な着脱に際して、摺接されて大きく動き易いので、シール部1gよりも補強のために断面が大きくされ、波形状も大きくされている。
【0024】
ハウジング1の成型に併せたシール部1f、1gの成型に際し、
図7に示すように溢出孔1iからシール材1jが溢れ出し、固化したことを視認して、シール部1f、1gが確実に形成されているか否かの防水構造の有効性を確認できる。また、シール材1jの着色をハウジング1の色と区別できるようにしておけば、この確認は容易である。
【0025】
溢出孔1iからのシールの溢出量が多目であれば切り取ればよい。また、溢出孔1iからシール材1jが漏れ出ていなければ、シール材1jが空所内に十分に行き渡らず、シール部1f、1gに欠陥が生じている可能性を示している。
【0026】
このようにしてシール部1f、1gが形成されたハウジング1内に、端子ホルダ2が挿入され、電気コネクタが組み立てられると、中筒1aの内面に設けられたシール部1gにより、端子ホルダ2はハウジング1つまり中筒1aの内面との間が防水構造とされる。
【0027】
電気コネクタ同士を結合し、相手側ハウジングHが中筒1aと外筒1bとの間に挿入されると、相手側のハウジングHは中筒1aの外面に設けられたシール部1fに接して中筒1aの外面との間が防水構造とされる。相手側接続端子の挿入端が端子保持部1dの挿入口1eを介して接続端子Tの接続部Ta内に挿入され、接続端子同士の接続がなされる。なお実際には、ハウジング1と相手側ハウジングとの結合状態を維持する錠止機構が存在するが、その説明は省略している。
【0028】
ハウジング1の後方からの浸水は接続端子Tのシール筒Tc、シール部1gにより阻止され、前方の相手側電気コネクタ側からの浸水はシール部1fにより阻止され、ハウジング1内、つまり接続端子Tの接続部Ta周囲の防水性が確保される。
【0029】
実施例においては、中筒1aと端子ホルダ2の間をも防水構造としたが、端子ホルダ2を使用せずに、ハウジング1に端子ホルダ2の機能を有する端子収容部を直接に形成した場合には、中筒1aの内面のシール部1gは不要となる。
【0030】
なお、実施例においては電気コネクタへの適用について説明したが、本発明は電気コネクタに限定されず、シール部により確実な防水構造を必要とする例えば筐体等の部材に対しても、同様に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 ハウジング
1a 中筒
1b 外筒
1f、1g シール部
1i 溢出孔
1j シール材
2 端子ホルダ
T 接続端子