(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112898
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
B62D 49/00 20060101AFI20220727BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B62D49/00 P
B62D25/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008919
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】森 敦紀
(72)【発明者】
【氏名】錦織 昇
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆行
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA23
3D203BA02
3D203BB35
3D203DA02
3D203DA13
3D203DA38
(57)【要約】
【課題】ボンネットの前後長さを短くし、トラクタ前方の視認性を向上させる。
【解決手段】車体フレームに搭載されるエンジンと、エンジンの上方を開閉可能に覆うボンネットと、エンジンの後方を覆う遮熱板70と、エンジンの後方に配置されるステアリングコラムと、ステアリングコラムの後方に配置される運転席と、を備えるトラクタであって、車体フレームに立設され、エンジンの後部を跨ぐ正面視逆U字状の支持フレーム50をさらに備え、支持フレーム50は、支持フレーム50の上部に設けられ、ボンネットが取付けられるボンネット取付部52と、支持フレーム50の下側後部に設けられ、ステアリングコラムが取付けられるステアリングコラム取付部55と、を備え、遮熱板70は、ボンネット取付部52とステアリングコラム取付部55との間に、エンジンと前後方向にオーバーラップする状態で設けられる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるエンジンと、
前記エンジンの上方を開閉可能に覆うボンネットと、
前記エンジンの後方を覆う遮熱板と、
前記エンジンの後方に配置されるステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムの後方に配置される運転席と、を備えるトラクタであって、
前記車体フレームに立設され、前記エンジンの後部を跨ぐ正面視逆U字状の支持フレームをさらに備え、
前記支持フレームは、
前記支持フレームの上部に設けられ、前記ボンネットが取付けられるボンネット取付部と、
前記支持フレームの下側後部に設けられ、前記ステアリングコラムが取付けられるステアリングコラム取付部と、を備え、
前記遮熱板は、前記ボンネット取付部と前記ステアリングコラム取付部との間に、前記エンジンと前後方向にオーバーラップする状態で設けられることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記運転席の前方に配置されるメーターパネルをさらに備え、
前記遮熱板は、
前記メーターパネルの前方に位置する上部遮熱板と、
前記上部遮熱板の下端部から後斜め下方に延在する中部遮熱板と、
前記中部遮熱板の下端部から下方に延在し、前記エンジンの後部に近接する下部遮熱板と、を備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記上部遮熱板は、
前記メーターパネルの前方に位置する中央上部遮熱板と、
前記中央上部遮熱板の左右両側方に位置する左右上部遮熱板と、を備えて構成され、
前記中央上部遮熱板は、前記左右上部遮熱板に対して前方にオフセットして配置されることを特徴とする請求項2に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記中部遮熱板の後面部は、電子制御ユニットを取付可能な電子制御ユニット取付部を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの後方を覆う遮熱板を備えるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの後方を覆う遮熱板を備えるトラクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなトラクタによれば、運転部におけるエンジンの熱の影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遮熱板の近傍には、ボンネットを取り付けるためのボンネット取付部や、ステアリングコラムを取り付けるためのステアリングコラム取付部だけでなく、これらを支持する支持フレームが配置されるため、ボンネットの前後長さが長くなり、トラクタ前方の視認性が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されるエンジンと、前記エンジンの上方を開閉可能に覆うボンネットと、前記エンジンの後方を覆う遮熱板と、前記エンジンの後方に配置されるステアリングコラムと、前記ステアリングコラムの後方に配置される運転席と、を備えるトラクタであって、前記車体フレームに立設され、前記エンジンの後部を跨ぐ正面視逆U字状の支持フレームをさらに備え、前記支持フレームは、前記支持フレームの上部に設けられ、前記ボンネットが取付けられるボンネット取付部と、前記支持フレームの下側後部に設けられ、前記ステアリングコラムが取付けられるステアリングコラム取付部と、を備え、前記遮熱板は、前記ボンネット取付部と前記ステアリングコラム取付部との間に、前記エンジンと前後方向にオーバーラップする状態で設けられることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のトラクタであって、前記運転席の前方に配置されるメーターパネルをさらに備え、前記遮熱板は、前記メーターパネルの前方に位置する上部遮熱板と、前記上部遮熱板の下端部から後斜め下方に延在する中部遮熱板と、前記中部遮熱板の下端部から下方に延在し、前記エンジンの後部に近接する下部遮熱板と、を備えて構成されることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載のトラクタであって、前記上部遮熱板は、前記メーターパネルの前方に位置する中央上部遮熱板と、前記中央上部遮熱板の左右両側方に位置する左右上部遮熱板と、を備えて構成され、前記中央上部遮熱板は、前記左右上部遮熱板に対して前方にオフセットして配置されることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載のトラクタであって、前記中部遮熱板の後面部は、電子制御ユニットを取付可能な電子制御ユニット取付部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、遮熱板は、支持フレームのボンネット取付部とステアリングコラム取付部との間に、エンジンと前後方向にオーバーラップする状態で設けられるので、ボンネットの前後長さを短くし、トラクタ前方の視認性を向上させることができる。また、支持フレームは、ボンネット、ステアリングコラム及び遮熱板の支持部材に兼用されるので、構造の簡略化及び部品点数の削減が図れる。
請求項2の発明によれば、遮熱板は、メーターパネルの前方に位置する上部遮熱板と、上部遮熱板の下端部から後斜め下方に延在する中部遮熱板と、中部遮熱板の下端部から下方に延在し、エンジンの後部に近接する下部遮熱板と、を備えて構成されるので、運転席とメーターパネルとの間に適切な距離を確保しつつ、遮熱板をエンジンと前後方向にオーバーラップする状態で設けることができる。
請求項3の発明によれば、上部遮熱板は、メーターパネルの前方に位置する中央上部遮熱板と、中央上部遮熱板の左右両側方に位置する左右上部遮熱板と、を備えて構成され、中央上部遮熱板は、左右上部遮熱板に対して前方にオフセットして配置されるので、上部遮熱板の機能を維持しつつ、メーターパネルをさらに前方に配置することが可能になり、その結果、メーターパネルの視認性をさらに向上させることができる。
請求項4の発明によれば、中部遮熱板の後面部は、電子制御ユニットを取付可能な電子制御ユニット取付部を備えるので、中部遮熱板及びその後方空間を利用して電子制御ユニットを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図である。
【
図3】トラクタの前部の内部構成を示す斜視図である。
【
図4】トラクタの前部の内部構成を示す側面図である。
【
図5】トラクタの車体フレーム及び支持フレームを示す斜視図である。
【
図7】(a)は支持フレームの平面図、(b)は支持フレームの正面図、(c)は支持フレームの側面図である。
【
図8】支持フレームを前方から見た分解斜視図である。
【
図9】支持フレームを後方から見た分解斜視図である。
【
図10】ボンネットの支持構造を示す要部断面図である。
【
図11】ボンネットの支持構造を示す要部斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係るトラクタの前部の内部構成を左側方から見た斜視図である。
【
図13】第2実施形態に係るトラクタの前部の内部構成を右側方から見た斜視図である。
【
図14】第2実施形態に係るトラクタの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1~
図4において、1はトラクタであって、該トラクタ1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前部に搭載されるエンジン3と、エンジン動力を変速するミッションケース4と、ミッションケース4から出力される動力で回転駆動され、且つ、ステアリングハンドル5の操作に応じて操舵される前輪6と、ミッションケース4から出力される動力で回転駆動される後輪7と、図示しない各種の作業機を装着可能な作業機連結部8と、ステアリングハンドル5や運転席9が配置される操縦部10と、を備える。
【0009】
操縦部10には、ステアリングハンドル5や運転席9の他に、ステアリングハンドル5を支持するステアリングコラム11、ステアリングハンドル5の位置調節を行うチルトレバー12及びテレスコピックレバー13、走行速度を設定するクルーズコントロールレバー14、駐車ブレーキを操作する駐車ブレーキレバー15、トラクタ1を前後進操作する前後進用ペダル16、主クラッチを断接操作するクラッチペダル17、運転席9の前方に配置され、各種の状態表示を行うメーターパネル18などが配置されている。
【0010】
トラクタ1の機体前部は、エンジン3を収容するエンジンルーム19を備える。エンジンルーム19は、エンジン3の上方を開閉可能に覆うボンネット20、エンジン3の後方を覆う遮熱板70、エンジン3の前方を覆うフロントグリル22、エンジン3の左右側方を覆うサイドカバー23などで囲まれた空間であり、エンジンルーム19内には、エンジン3の他に、エンジン冷却水を冷却するラジエータ24、エンジン3の吸気を浄化するエアクリーナ25、エンジン3の排気音を消音するマフラ26、エンジンルーム19の後部に立設される支持フレーム50、支持フレーム50とラジエータ24との間に架設され、エアクリーナ25やマフラ26を支持する左右の連結フレーム27、28などが配置されている。
【0011】
図3~
図9に示すように、支持フレーム50は、正面視逆U字状であり、エンジン3の後部を跨ぐように、エンジン3の後端面3aよりも前方で車体フレーム2に立設されている。本実施形態の支持フレーム50は、横フレーム部51a及び左右の縦フレーム部51bによって正面視逆U字状に形成される主フレーム51と、主フレーム51の横フレーム部51aに設けられるボンネット取付部52と、主フレーム51の横フレーム部51aから後斜め下方に延在する上部副フレーム53と、主フレーム51の左右の縦フレーム部51b間に架設される下部副フレーム54と、下部副フレーム54から後方に延在するステアリングコラム取付部55と、ステアリングコラム取付部55の後部から下方に延在し、車体フレーム2に固定される後部副フレーム56と、ボンネット取付部52とステアリングコラム取付部55との間に設けられる前述の遮熱板70と、を備える。
【0012】
ボンネット取付部52は、主フレーム51の横フレーム部51aから上方に突出する左右一対のプレート52aと、プレート52aの先端部から一側方に突出するボンネット支軸52bと、を備える。
図10及び
図11に示すように、ボンネット20の後端部下面側には、後方に延在する左右一対のアーム20aが設けられており、このアーム20aがボンネット支軸52bに回動可能に連結される。これにより、ボンネット20は、ボンネット支軸52bを支点とする上下回動に基づいて、エンジン3の上方を開閉可能に覆うことが可能となる。
【0013】
ステアリングコラム11は、ステアリングコラム取付部55上に載置され、且つ、ステアリングコラム取付部55にボルト固定される。さらに、ステアリングコラム11の上部前面側は、上部副フレーム53の先端部にボルト固定される。
【0014】
図4に示すように、遮熱板70は、支持フレーム50に対し、エンジン3と前後方向にオーバーラップする状態(平面視でエンジン3と重なる状態)で設けられる。具体的に説明すると、遮熱板70は、
図4~
図9に示すように、メーターパネル18の前方に位置する上部遮熱板71と、上部遮熱板71の下端部から後斜め下方に延在する中部遮熱板72と、中部遮熱板72の下端部から下方に延在し、エンジン3の後部に近接する下部遮熱板73と、を備えて構成される。
【0015】
このような構成によれば、エンジン3と前後方向にオーバーラップするように遮熱板70を設けることにより、ボンネット20の前後長さを短くし、トラクタ前方の視認性を向上させることができる。また、遮熱板70は、メーターパネル18の前方に位置する上部遮熱板71と、上部遮熱板71の下端部から後斜め下方に延在する中部遮熱板72と、中部遮熱板72の下端部から下方に延在し、エンジン3の後部に近接する下部遮熱板73と、を備えて構成されるので、運転席9とメーターパネル18との間に適切な距離を確保しつつ、遮熱板70をエンジン3と前後方向にオーバーラップする状態で設けることができる。
【0016】
図4~
図9に示すように、上部遮熱板71は、メーターパネル18の前方に位置する中央上部遮熱板71aと、中央上部遮熱板71aの左右両側方に位置する左右上部遮熱板71b、71cと、を備えて構成され、中央上部遮熱板71aは、左右上部遮熱板71b、71cに対して前方にオフセットして配置されている。このような構成によれば、上部遮熱板71の機能を維持しつつ、メーターパネル18をさらに前方に配置することが可能になるので、メーターパネル18の視認性をさらに向上させることができる。
【0017】
図8及び
図9に示すように、本実施形態の中部遮熱板72と下部遮熱板73は一体的に形成されており、その左右側方に生じする隙間を左右のカバー74、75で覆うように構成されている。
【0018】
また、
図3及び
図4に示すように、中部遮熱板72の後面部は、電子制御ユニット81(例えば、機体用マイコン)を取付可能な電子制御ユニット取付部Tとして機能するようになっている。このような構成によれば、中部遮熱板72及びその後方空間を利用して電子制御ユニット81を配置することができる。
【0019】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、車体フレーム2と、車体フレーム2に搭載されるエンジン3と、エンジン3の上方を開閉可能に覆うボンネット20と、エンジン3の後方を覆う遮熱板70と、エンジン3の後方に配置されるステアリングコラム11と、ステアリングコラム11の後方に配置される運転席9と、を備えるトラクタ1であって、車体フレーム2に立設され、エンジン3の後部を跨ぐ正面視逆U字状の支持フレーム50をさらに備え、支持フレーム50は、支持フレーム50の上部に設けられ、ボンネット20が取付けられるボンネット取付部52と、支持フレーム50の下側後部に設けられ、ステアリングコラム11が取付けられるステアリングコラム取付部55と、を備え、遮熱板70は、ボンネット取付部52とステアリングコラム取付部55との間に、エンジン3と前後方向にオーバーラップする状態で設けられるので、ボンネット20の前後長さを短くし、トラクタ前方の視認性を向上させることができる。また、支持フレーム50は、ボンネット20、ステアリングコラム11及び遮熱板70の支持部材に兼用されるので、構造の簡略化及び部品点数の削減が図れる。
【0020】
また、トラクタ1は、運転席9の前方に配置されるメーターパネル18をさらに備え、遮熱板70は、メーターパネル18の前方に位置する上部遮熱板71と、上部遮熱板71の下端部から後斜め下方に延在する中部遮熱板72と、中部遮熱板72の後端部から下方に延在し、エンジン3の後部に近接する下部遮熱板73と、を備えて構成されるので、運転席9とメーターパネル18との間に適切な距離を確保しつつ、遮熱板70をエンジン3と前後方向にオーバーラップする状態で設けることができる。
【0021】
また、上部遮熱板71は、メーターパネル18の前方に位置する中央上部遮熱板71aと、中央上部遮熱板71aの左右両側方に位置する左右上部遮熱板71b、71cと、を備えて構成され、中央上部遮熱板71aは、左右上部遮熱板71b、71cに対して前方にオフセットして配置されるので、上部遮熱板71の機能を維持しつつ、メーターパネル18をさらに前方に配置することが可能になり、その結果、メーターパネル18の視認性をさらに向上させることができる。
【0022】
また、中部遮熱板72の後面部は、電子制御ユニット81を取付可能な電子制御ユニット取付部Tを備えるので、中部遮熱板72及びその後方空間を利用して電子制御ユニット81を配置することができる。
【0023】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、構成の変更及び追加が可能である。例えば、
図12~
図14に示す第2実施形態のように、複数種類の電子制御ユニット81~83を備えるトラクタ1Bでは、カバー74、75の外側面を利用して電子制御ユニット82、83を取付けるようにしてもよい。例えば、電子制御ユニット82は、自動走行制御などに必要なGPS用マイコンであり、電子制御ユニット83は、近距離無線通信や無線LANなどの通信を行うオプション用マイコンである。
【符号の説明】
【0024】
1 トラクタ
2 車体フレーム
3 エンジン
9 運転席
11 ステアリングコラム
18 メーターパネル
20 ボンネット
50 支持フレーム
52 ボンネット取付部
55 ステアリングコラム取付部
70 遮熱板
71 上部遮熱板
71a 中央上部遮熱板
71b 左右上部遮熱板
72 中部遮熱板
73 下部遮熱板
81 電子制御ユニット