(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112915
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】車両用開閉体駆動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/643 20150101AFI20220727BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20220727BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20220727BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20220727BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
E05F15/643
E05F15/655
F16H1/32 B
B60J5/06 A
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008945
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安井 彰広
(72)【発明者】
【氏名】角谷 武光
【テーマコード(参考)】
2E052
3J027
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA15
3J027FA36
3J027FB01
3J027GB06
3J027GC08
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD13
3J027GE30
(57)【要約】
【課題】車両用開閉体駆動装置を小型化する。
【解決手段】車両用開閉体駆動装置としてのドラム装置21は、車両の開閉体を構成するスライドドアの駆動ケーブルを巻き取るドラム20と、このドラム20の内周S2に設けられた内歯ギヤ71と、を備える。また、ドラム装置21は、撓められた状態でドラム20の径方向内側に配置されることにより内歯ギヤ71に対して部分的に噛合するフレックスギヤ72と、このフレックスギヤ72の径方向内側に配置されたモータ25と、を備える。更に、ドラム装置21は、モータ25の駆動力に基づいて、内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pを周方向に移動させる波動発生器75を備える。そして、ドラム装置21は、フレックスギヤ72と内歯ギヤ71との歯数差に基づいて、その内歯ギヤ71と一体にドラム20が回転するように構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開閉体の駆動ケーブルを巻き取るドラムと、
前記ドラムの内周に設けられた内歯ギヤと、
撓められた状態で前記ドラムの径方向内側に配置されることにより前記内歯ギヤに対して部分的に噛合するフレックスギヤと、
前記フレックスギヤの径方向内側に配置されたモータと、
前記モータの駆動力に基づいて前記内歯ギヤに対する前記フレックスギヤの噛合位置を周方向に移動させる波動発生器と、を備え、
前記フレックスギヤと前記内歯ギヤとの歯数差に基づいて、前記内歯ギヤと一体に前記ドラムが回転する車両用開閉体駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用開閉体駆動装置において、
前記内歯ギヤと同軸に並置される固定ギヤを備え、
前記フレックスギヤは、軸方向の一端側が前記内歯ギヤに噛合するとともに、軸方向の他端側が前記固定ギヤに噛合すること、を特徴とする車両用開閉体駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用開閉体駆動装置において、
前記モータは、軸方向に重複して同軸に配置されたステータ及びロータを備えること、
を特徴とする車両用開閉体駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用開閉体駆動装置において、
前記モータは、前記ステータの径方向外側に配置された前記ロータを備えること、
を特徴とする車両用開閉体駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用開閉体駆動装置において、
前記モータの前記ロータには、前記フレックスギヤの軸方向に延在する回転軸を有して前記フレックスギヤの内周に摺接するローラーが設けられ、
前記波動発生器は、前記ローラーが前記フレックスギヤの内周に摺接する位置に、前記内歯ギヤに対する前記フレックスギヤの噛合位置が形成されるように、前記ローラーを配置してなること、を特徴とする車両用開閉体駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用開閉体駆動装置において、
前記ロータは、周方向に並んで配置された複数のマグネットを備え、
前記ローラーは、前記各マグネットのうちの周方向に隣り合う2つの間の位置に設けられること、を特徴とする車両用開閉体駆動装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の車両用開閉体駆動装置において、
前記ローラーとして、軸方向に離間して同軸に配置された第1及び第2のローラーを備えるとともに、
前記フレックスギヤの内周には、周方向に延在して前記第1及び第2のローラーの間に挿入される環状係合部が設けられること、を特徴とする車両用開閉体駆動装置。
【請求項8】
請求項5~請求項7の何れか一項に記載の車両用開閉体駆動装置において、
前記ロータには、前記フレックスギヤに摺接することにより前記内歯ギヤに対する前記噛合位置を形成する前記ローラーを噛合位置形成ローラーとして、該噛合位置形成ローラーから周方向に離間した位置に、前記内歯ギヤに対する前記噛合位置を形成することなく前記フレックスギヤの内周に摺接する非噛合位置形成ローラーが設けられること、
を特徴とする車両用開閉体駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられた開閉体の駆動ケーブルを巻き取るドラムを備えた車両用開閉体駆動装置がある。例えば、特許文献1には、モータを駆動源とするアクチュエータの出力軸と同軸に、そのドラムを配置する構成が開示されている。また、例えば、特許文献2には、遊星歯車機構を用いることにより、ドラムの内側にモータと減速機を配置する構成が開示されている。そして、例えば、特許文献3には、歳差運動式減速機を用いることにより、そのアクチュエータとしての軸方向寸法を短縮する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5428348号公報
【特許文献2】特開2010-222876号公報
【特許文献3】特開2020-43620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両用の開閉体駆動装置においては、常に、その更なる小型化が求められている。そして、上記従来技術もまた、その進化する小型化の要求に応え得るとは必ずしも言い切れないのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置は、車両に設けられた開閉体の駆動ケーブルを巻き取るドラムと、前記ドラムの内周に設けられた内歯ギヤと、撓められた状態で前記ドラムの径方向内側に配置されることにより前記内歯ギヤに対して部分的に噛合するフレックスギヤと、前記フレックスギヤの径方向内側に配置されたモータと、前記モータの駆動力に基づいて前記内歯ギヤに対する前記フレックスギヤの噛合位置を周方向に移動させる波動発生器と、を備え、前記フレックスギヤと前記内歯ギヤとの歯数差に基づいて、前記内歯ギヤと一体に前記ドラムが回転する。
【0006】
上記構成によれば、ドラムの内側に配置されたモータの径方向外側に波動歯車機構が形成される。更に、この波動歯車機構が減速機として機能することで、簡素化な構成にて、モータの回転を減速してドラムに伝達することができる。そして、これにより、そのドラム装置を小型化することができる。特に、モータの径方向外側に減速機として機能する波動歯車機構が形成されることで、その軸方向寸法を短縮することができる。そして、これにより、その車両に対する搭載性を向上させることができる。加えて、例えば、部品点数の少なさや高い減速比、及び、低振動性や静粛性等、波動歯車機構を減速機に用いることによる利点を享受することができる。
【0007】
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置は、前記内歯ギヤと同軸に並置配置される固定ギヤを備え、前記フレックスギヤは、軸方向の一端側が前記内歯ギヤに噛合するとともに、軸方向の他端側が前記固定ギヤに噛合することが好ましい。
【0008】
上記のような構成を採用することで、所謂フラット型の波動歯車機構が形成される。つまりは、フレックスギヤの可撓性及び強度を確保しつつ、その軸方向長さの短縮化を図ることができる。そして、これにより、より一層、その軸方向寸法を短縮することができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置において、前記モータは、軸方向に重複して同軸に配置されたステータ及びロータを備えることが好ましい。
上記構成によれば、より一層、その軸方向寸法を短縮することができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置において、前記モータは、前記ステータの径方向外側に配置された前記ロータを備えることが好ましい。
上記構成によれば、モータの径方向外側に形成される波動歯車機構に対して直接的に、そのモータの駆動力を伝達することができる。そして、これにより構成の簡素化を図ることで、より一層、そのドラム装置を小型化することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置において、前記モータの前記ロータには、前記フレックスギヤの軸方向に延在する回転軸を有して前記フレックスギヤの内周に摺接するローラーが設けられ、前記波動発生器は、前記ローラーが前記フレックスギヤの内周に摺接する位置に、前記内歯ギヤに対する前記フレックスギヤの噛合位置が形成されるように、前記ローラーを配置してなることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、簡素な構成にて、そのモータと一体化された波動発生器を形成することができる。そして、これにより、より一層の小型化を図ることができる。
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置において、前記ロータは、周方向に並んで配置された複数のマグネットを備え、前記ローラーは、前記各マグネットのうちの周方向に隣り合う2つの間の位置に設けられることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、各マグネットとローラーとの干渉を回避しつつ、モータのロータを小径化することができる。そして、これにより、より一層の小型化を図ることができる。
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置は、前記ローラーとして、軸方向に離間して同軸に配置された第1及び第2のローラーを備えるとともに、前記フレックスギヤの内周には、周方向に延在して前記第1及び第2のローラーの間に挿入される環状係合部が設けられることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、環状係合部が設けられたフレックスギヤと第1及び第2のローラーが設けられたモータのロータとの相対的な軸方向変位が規制される。また、これによりフレックスギヤのガタツキが抑制されることで、このフレックスギヤとドラムの内周に設けられた内歯ギヤとの噛合状態が改善される。つまりは、軸方向の噛合幅が増加することにより、その噛合強度が向上する。加えて、フレックスギヤに生ずる捻じり変形についても、その抑制効果が期待できる。
【0015】
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置は、前記ロータには、前記フレックスギヤに摺接することにより前記内歯ギヤに対する前記噛合位置を形成する前記ローラーを噛合位置形成ローラーとして、該噛合位置形成ローラーから周方向に離間した位置に、前記内歯ギヤに対する前記噛合位置を形成することなく前記フレックスギヤの内周に摺接する非噛合位置形成ローラーが設けられることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、フレックスギヤの撓み形状を安定化させることができる。そして、これにより、所謂歯飛びの発生を抑えて、効率的に駆動力を伝達することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両用開閉体駆動装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】スライドドア装置が設けられた車両の側面図。
【
図4】モータ、フレックスギヤ、及び波動発生器を構成するローラーの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用開閉体駆動装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向(
図1中、左右方向)に移動することにより車体2の側面に設けられたドア開口部3を開閉するスライドドア4を備えている。
【0020】
具体的には、本実施形態の車両1において、車体2の側面2aには、車両前後方向に延びる複数のガイドレール5a~5cが設けられている。更に、これらの各ガイドレール5a~5cには、それぞれ、その延伸方向に沿って摺動するガイドローラーユニット6a~6cが連結されている。そして、本実施形態の車両1においては、これらの各ガイドローラーユニット6a~6cを介して車体2にスライドドア4を支持することにより、その車両1の前後方向に沿ったスライドドア4の開閉動作を可能とするスライドドア装置10が形成されている。
【0021】
詳述すると、本実施形態のスライドドア装置10は、二本の駆動ケーブル11,12を巻き取るドラム20を有したドラム装置21を備えている。また、このドラム装置21は、モータ25の駆動力に基づいて、そのドラム20が回転する。更に、各駆動ケーブル11,12は、そのドラム20に巻き取られる回転方向が互いに逆向きとなるように、それぞれ、このドラム装置21に接続されている。即ち、本実施形態のドラム装置21は、そのドラム20の回転方向に応じて、これら二本の駆動ケーブル11,12の一方側を巻き取るとともに、他方側を繰り出すように構成されている。そして、本実施形態のスライドドア装置10は、このドラム装置21の動作に基づいて、そのスライドドア4を開閉動作させるパワースライドドア装置30としての構成を有している。
【0022】
さらに詳述すると、本実施形態の車両1において、ドラム装置21は、スライドドア4に設けられている。また、各駆動ケーブル11,12は、それぞれ、中継プーリー31及びガイドプーリー32を介して、そのスライドドア4の外部に引き出されている。そして、これら各駆動ケーブル11,12の端末11x,12xは、車両前後方向に離間した位置において、それぞれ、車体2に連結されている。
【0023】
具体的には、本実施形態の車両1において、センターレール33としての構成を有してドア開口部3の後方に配置されたガイドレール5bの下方には、このガイドレール5bの延伸方向に延びるケーブルガイド35が設けられている。また、各駆動ケーブル11,12は、このケーブルガイド35に案内される状態で、車両前後方向、互いに相反する方向に配索されている。更に、一方の駆動ケーブル11は、ケーブルガイド35の前端側から引き出されることにより、センターレール33の前端部近傍において、その端末11xが車体2に固定されている。そして、他方の駆動ケーブル11は、ケーブルガイド35の後端側から引き出されることにより、センターレール33の後端部近傍において、その端末12xが車体2に固定されている。
【0024】
即ち、本実施形態のスライドドア装置10は、そのドラム装置21が一方の駆動ケーブル11を巻き取りつつ他方の駆動ケーブル12を繰り出すことで、そのスライドドア4が車両前方側に移動する。更に、そのドラム装置21が一方の駆動ケーブル11を繰り出しつつ他方の駆動ケーブル12を巻き取ることで、そのスライドドア4が車両後方側に移動する。そして、本実施形態のスライドドア装置10は、これにより、ドラム装置21のモータ25を駆動源として、そのスライドドア4を開閉動作させることのできる構成となっている。
【0025】
(ドラム装置)
次に、本実施形態のスライドドア装置10において、その車両用開閉体駆動装置として機能するドラム装置21の構成について説明する。
【0026】
図2及び
図3に示すように、本実施形態のドラム装置21は、そのドラム20及びモータ25を収容するケース40を備えている。本実施形態のドラム装置21において、このケース40は、略円板状をなす基部41xを有した第1部材41を備えている。また、このケース40は、扁平有蓋略円筒状の外形を有して第1部材41の基部41xに取着される第2部材42を備えている。そして、本実施形態のケース40は、これら第1部材41の基部41x及び第2部材42が形成する収容室43内に、そのドラム20及びモータ25を収容する構成となっている。
【0027】
尚、本実施形態の第1部材41は、その基部41xに隣接して設けられた扁平略四角箱状の基板収容部44を備えている。即ち、本実施形態のドラム装置21においては、この基板収容部44内に、その制御基板45が収容される。そして、本実施形態のケース40は、その基板収容部44の開口部に取着される蓋部材46を備えている。
【0028】
また、本実施形態のドラム装置21は、そのケース40を構成する第1部材41の基部41xに設けられた支軸50を備えている。本実施形態のケース40において、この支軸50は、略円板状をなす基部41xの中心部に立設されている。そして、本実施形態のケース40は、この支軸50周りに、そのモータ25を収容する構成になっている。
【0029】
詳述すると、
図2~
図5に示すように、本実施形態のモータ25は、支軸50に対して回転不能に固定されたステータ51を備えている。また、このモータ25は、支軸50に軸支されることにより、この支軸50周りにステータ51の径方向外側を回転するロータ52を備えている。そして、本実施形態のモータ25は、これにより、これらのステータ51及びロータ52が、その軸方向に重複する状態で同軸に配置されたアウターロータ型の構成を有している。
【0030】
さらに詳述すると、本実施形態のステータ51は、支軸50に固定されるステータコア53を備えている。また、このステータコア53は、周方向に均等間隔で並んで設けられた径方向外側に向かって放射状に延びる複数のティース54を備えている。そして、本実施形態のステータ51は、これらの各ティース54に巻回されたモータコイル55を備えている。
【0031】
一方、本実施形態のロータ52は、略円筒状の外形を有したロータ本体56と、このロータ本体56の内周面56bに均等間隔で並んで設けられた複数のマグネット57と、を備えている。また、ロータ52は、このロータ本体56の軸方向一端側に取着される円板状の蓋部材58を備えている。更に、ロータ52は、その蓋部材58の中心位置に設けられた軸受60を備えている。そして、本実施形態のロータ52は、この軸受60を介して、そのケース40に設けられた支軸50により回転自在に軸支される構成となっている。
【0032】
具体的には、本実施形態のロータ本体56は、その蓋部材58が取着される側とは反対側の軸方向端部に設けられた径方向外側に延びる略円環状のフランジ部59を備えている。また、本実施形態のロータ52は、このフランジ部59が、ケース40を構成する第1部材41の基部41xに対向する状態で、その支軸50に取着される。更に、本実施形態のモータ25は、これにより、その略円筒状の外形を有するロータ本体56が、支軸50に固定されたステータ51の径方向外側を囲む位置に配置される。そして、本実施形態のモータ25は、これにより、そのロータ本体56の内周面56bに固着されたロータ52側の各マグネット57と、そのモータコイル55が巻回されたステータ51の各ティース54とが、径方向に対向して配置される構成になっている。
【0033】
また、本実施形態のドラム20は、扁平略円筒状の外形を有したドラム本体61と、このドラム本体61における軸方向一端側の端部を閉塞する蓋部62と、を備えた扁平有蓋略円筒状の外形を有している。更に、このドラム20は、その略円板状の外形を有した蓋部62の中心位置に設けられた軸受63を備えている。そして、本実施形態のドラム20は、この軸受63を介して、そのケース40に設けられた支軸50により回転自在に軸支される構成となっている。
【0034】
具体的には、本実施形態のドラム20は、モータ25の外径よりも大きな内径を有している。そして、本実施形態のドラム装置21は、これにより、その扁平有蓋略円筒状をなすドラム20の内側に、モータ25を配置する構成となっている。
【0035】
さらに詳述すると、本実施形態のドラム20は、その円筒形状の外周S1となるドラム本体61の外周面61aに、スライドドア4の各駆動ケーブル11,12を効率的に巻き取るための巻取り溝65を有している。また、本実施形態のドラム20は、その円筒形状の内周S2となるドラム本体61の内周面61bに設けられた内歯ギヤ71を備えている。そして、本実施形態のドラム装置21は、このドラム20の径方向内側に配置された可撓性を有するフレックスギヤ72を備えている。
【0036】
本実施形態のドラム装置21において、このフレックスギヤ72は、扁平円筒状の外形を有している。更に、このフレックスギヤ72は、比較的軟質な樹脂素材を用いて形成されている。そして、本実施形態のフレックスギヤ72は、その径方向外側に配置された内歯ギヤ71に噛合する外歯72xを有している。
【0037】
また、本実施形態のドラム装置21は、そのドラム20の内周S2に設けられた内歯ギヤ71と同軸に並置される固定ギヤ73を有している。具体的には、本実施形態のドラム装置21において、ケース40を構成する第1部材41の基部41xには、そのドラム20の支軸50と同心位置に立設された扁平略円筒状の短筒部74が形成されている。更に、この短筒部74は、内歯ギヤ71が設けられたドラム20の内周S2と略等しい内径を有している。そして、本実施形態のドラム装置21においては、この短筒部74の内周に内歯74xを刻設することにより、その固定ギヤ73が形成されている。
【0038】
本実施形態のドラム装置21において、この固定ギヤ73には、フレックスギヤ72と等しい歯数が設定されている。更に、内歯ギヤ71には、これらのフレックスギヤ72及び固定ギヤ73とは異なる歯数が設定されている。そして、本実施形態のドラム装置21においては、内歯ギヤ71に対し、そのフレックスギヤ72よりも大きな歯数が設定されている。
【0039】
また、本実施形態のドラム装置21において、フレックスギヤ72は、その内歯ギヤ71が設けられたドラム20と固定ギヤ73が設けられた短筒部74とに跨る状態で、これらのドラム20及び短筒部74の径方向内側に配置される。そして、本実施形態のフレックスギヤ72は、これにより、その軸方向の一端側が内歯ギヤ71に噛合するとともに、軸方向の他端側が固定ギヤ73に噛合する構成となっている。
【0040】
具体的には、本実施形態のフレックスギヤ72は、楕円状に撓められた状態で、これらの内歯ギヤ71及び固定ギヤ73の径方向内側に配置される。そして、本実施形態のドラム装置21は、これにより、その内歯ギヤ71及び固定ギヤ73に対してフレックスギヤ72が部分的に噛合する構成になっている。
【0041】
また、本実施形態のドラム装置21は、モータ25の駆動力に基づいて、その内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pを周方向に移動させる波動発生器75を備えている。換言すると、この波動発生器75は、その楕円状に撓められたフレックスギヤ72の撓み形状を回転させる。そして、本実施形態のドラム装置21は、これにより、このフレックスギヤ72と内歯ギヤ71との歯数差に基づいて、その内歯ギヤ71と一体にドラム20が回転する構成となっている。
【0042】
詳述すると、本実施形態のドラム装置21は、モータ25のロータ52を構成するロータ本体56のフランジ部59に立設された一対の支軸80,80を備えている。本実施形態のドラム装置21において、これらの各支軸80,80は、そのロータ52の周方向に180°離間した二位置に設けられている。そして、本実施形態のドラム装置21は、これらの各支軸80,80により回転自在に軸支された一対のローラー81,81を備えている。
【0043】
換言すると、本実施形態のドラム装置21において、モータ25のロータ52には、フレックスギヤ72の軸方向に延在する回転軸Lを有した一対のローラー81,81が設けられている。また、本実施形態の各ローラー81,81は、ロータ52の径方向外側に位置するフレックスギヤ72と軸方向長さが略等しい略円筒状の外形を有している。更に、本実施形態のドラム装置21においては、これらの各ローラー81,81がフレックスギヤ72の内周S3に摺接して、このフレックスギヤ72を径方向外側に押圧することにより、そのフレックスギヤ72が内歯ギヤ71に対して部分的に噛合する。つまりは、各ローラー81,81がフレックスギヤ72に摺接する位置において、その内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pが形成される。そして、本実施形態のドラム装置21は、これにより、アウターロータ型の構成を有したモータ25のロータ52と一体に、その波動発生器75が形成される構成となっている。
【0044】
さらに詳述すると、本実施形態のドラム装置21において、ロータ本体56の軸方向端部に固定される蓋部材58は、この蓋部材58とは反対側の軸方向端部において、そのロータ本体56に設けられたフランジ部59と略等しい外径を有している。そして、本実施形態のドラム装置21は、これらの軸方向に対向する蓋部材58とフランジ部59との間に各支軸80,80を挟み込む状態で、その各ローラー81,81をモータ25のロータ52に支持する構成となっている。
【0045】
また、本実施形態のロータ52において、これらの各ローラー81,81の支軸80,80は、それぞれ、そのロータ52に設けられた各マグネット57のうちの周方向に隣り合う2つの間の位置に設けられている。更に、本実施形態のロータ52は、周方向に並んで配置された各マグネット57の間となる位置において、それぞれ、そのロータ本体56の外周面56aに設けられた複数の凹部83を備えている。即ち、本実施形態の各ローラー81,81は、それぞれ、その支軸80,80が設けられた周方向位置において、ロータ52の径方向外側に臨む凹部83の内側に配置される。そして、本実施形態のドラム装置21においては、これにより、その各マグネット57と各ローラー81,81との干渉を回避することで、そのロータ52の小径化が図られている。
【0046】
次に、本実施形態の作用について説明する。
即ち、本実施形態のドラム装置21においては、モータ25のロータ52に設けられた各ローラー81,81が、フレックスギヤ72の内周S3に摺接することにより、このフレックスギヤ72が径方向外側に押圧される。そして、これにより、その各ローラー81,81が摺接する位置に、内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pが形成される。
【0047】
更に、ロータ52が回転することにより、そのフレックスギヤ72の内周S3に対する各ローラー81,81の摺接位置が周方向に移動する。つまりは、その内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pが周方向に移動する。そして、これにより、そのフレックスギヤ72と内歯ギヤ71との歯数差に基づいて、この内歯ギヤ71と一体にドラム20が回転する。
【0048】
即ち、ドラム20の内側に配置されたモータ25の径方向外側に波動歯車機構85が形成されるとともに、この波動歯車機構85が減速機86として機能する。更に、ドラム20の回転方向に応じて、その二本の駆動ケーブル11,12のうちの一方側がドラム20に巻き取られ、他方側がドラム20から繰り出される。そして、これにより、そのドラム装置21が設けられたスライドドア4が開閉動作する。
【0049】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両用開閉体駆動装置としてのドラム装置21は、車両1の開閉体を構成するスライドドア4の駆動ケーブル11,12を巻き取るドラム20と、このドラム20の内周S2に設けられた内歯ギヤ71と、を備える。また、ドラム装置21は、撓められた状態でドラム20の径方向内側に配置されることにより内歯ギヤ71に対して部分的に噛合するフレックスギヤ72と、このフレックスギヤ72の径方向内側に配置されたモータ25と、を備える。更に、ドラム装置21は、モータ25の駆動力に基づいて、内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pを周方向に移動させる波動発生器75を備える。そして、ドラム装置21は、フレックスギヤ72と内歯ギヤ71との歯数差に基づいて、その内歯ギヤ71と一体にドラム20が回転するように構成される。
【0050】
上記構成によれば、ドラム20の内側に配置されたモータ25の径方向外側に波動歯車機構85が形成される。更に、この波動歯車機構85が減速機86として機能することで、簡素化な構成にて、そのモータ25の回転を減速してドラム20に伝達することができる。そして、これにより、そのドラム装置21を小型化することができる。特に、モータ25の径方向外側に減速機86となる波動歯車機構85が形成されることで、その軸方向寸法を短縮することができる。そして、これにより、その車両1に対する搭載性を向上させることができる。加えて、例えば、部品点数の少なさや高い減速比、及び、低振動性や静粛性等、波動歯車機構85を減速機86に用いることによる利点を享受することができる。
【0051】
(2)ドラム装置21は、内歯ギヤ71と同軸に並置される固定ギヤ73を備える。そして、フレックスギヤ72は、その軸方向の一端側が内歯ギヤ71に噛合するとともに、軸方向の他端側が固定ギヤ73に噛合する。
【0052】
上記のような構成を採用することで、所謂フラット型の波動歯車機構85が形成される。つまりは、フレックスギヤ72の可撓性及び強度を確保しつつ、その軸方向長さの短縮化を図ることができる。そして、これにより、より一層、その軸方向寸法を短縮することができる。
【0053】
(3)モータ25は、軸方向に重複して同軸に配置されたステータ51及びロータ52を備える。これにより、より一層、その軸方向寸法を短縮することができる。
(4)モータ25は、ステータ51の径方向外側に配置されたロータ52を備えるアウターロータ型の構成を有する。
【0054】
上記構成によれば、モータ25の径方向外側に形成される波動歯車機構85に対して直接的に、そのモータ25の駆動力を伝達することができる。そして、これにより構成の簡素化を図ることで、より一層、そのドラム装置21を小型化することができる。
【0055】
(5)モータ25のロータ52には、フレックスギヤ72の軸方向に延在する回転軸Lを有してフレックスギヤ72の内周S3に摺接する一対のローラー81,81が設けられる。そして、波動発生器75は、これらの各ローラー81,81がフレックスギヤ72の内周S3に摺接する位置に、その内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pが形成されるように、各ローラー81,81を配置することにより形成される。
【0056】
上記構成によれば、簡素な構成にて、そのモータ25と一体化された波動発生器75を形成することができる。そして、これにより、より一層の小型化を図ることができる。
(6)ロータ52は、周方向に並んで配置された複数のマグネット57を備える。そして、各ローラー81,81は、各マグネット57のうちの周方向に隣り合う2つの間の位置に設けられる。
【0057】
上記構成によれば、各マグネット57と各ローラー81,81との干渉を回避しつつ、モータ25のロータ52を小径化することができる。そして、これにより、より一層の小型化を図ることができる。
【0058】
(7)フレックスギヤ72は、比較的軟質な樹脂素材を用いて形成される。これにより、その低振動性及び静粛性の向上を図ることができる。そして、フレックスギヤ72の製造を容易なものとして、製造コストを低減することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
・上記実施形態では、モータ25のロータ52に設けられた各ローラー81,81は、フレックスギヤ72と軸方向長さが略等しい略円筒状の外形を有することとした。しかし、これに限らず、上下方向に離間して配置された複数のローラーをフレックスギヤ72の内周S3に摺接させる構成としてもよい。
【0061】
例えば、
図6及び
図7に示す別例のドラム装置21Bにおいて、モータ25Bのロータ52Bは、所謂ハット状の外形を有している。具体的には、このロータ52Bは、扁平略有蓋円筒状のロータ本体56Bと、このロータ本体56Bの軸方向端部に設けられた径方向外側に延びる略円環状のフランジ部59Bと、を有している。また、本実施形態のロータ52Bは、そのロータ本体56Bの内周に固着されることにより、モータ25Bのステータ51Bと径方向に対向する複数のマグネット57を備えている(図示略)。更に、このロータ52Bは、そのロータ本体56Bの蓋部56Bxに設けられた軸受60Bを備えている。そして、本実施形態のロータ52Bは、この軸受60Bを介して、そのケース40に設けられた支軸50により回転自在に軸支される構成となっている。
【0062】
また、本実施形態のロータ52Bは、周方向に180°離間した二位置において、そのフランジ部59Bに立設された一対の支軸80B,80Bを備えている。更に、これらの各支軸80B,80Bには、それぞれ、軸方向に離間した位置において回転自在に軸支された第1及び第2のローラー81Ba,81Bbが設けられている。そして、この別例のドラム装置21Bにおいては、各支軸80B,80Bが設けられた二位置において、それぞれ、これらの第1及び第2のローラー81Ba,81Bbが、そのフレックスギヤ72Bの内周S3に摺接する構成となっている。このような構成を採用しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
・更に、
図6及び
図7に示す別例のドラム装置21Bにおいて、フレックスギヤ72Bの内周S3には、その全周に亘って延在する環状係合部87が設けられている。そして、この別例のドラム装置21Bは、この環状係合部87が、その軸方向に離間した位置においてフレックスギヤ72Bの内周S3に摺接する上記第1及び第2のローラー81Ba,81Bbの間に挿入される構成となっている。
【0064】
即ち、このような構成を採用することで、その環状係合部87が設けられたフレックスギヤ72と第1及び第2のローラー81Ba,81Bbが設けられたモータ25Bのロータ52Bとの相対的な軸方向変位が規制される。また、これによりフレックスギヤ72のガタツキが抑制されることで、このフレックスギヤ72とドラム20Bの内周S2に設けられた内歯ギヤ71との噛合状態が改善される。つまりは、軸方向の噛合幅が増加することにより、その噛合強度が向上する。加えて、フレックスギヤ72に生ずる捻じり変形についても、その抑制効果が期待できる。
【0065】
・また、例えば、
図8に示すドラム装置21Cのように、内歯ギヤ71に対する噛合位置Pを形成することなく、そのフレックスギヤ72の内周S3に摺接する非噛合位置形成ローラー88をモータ25Cのロータ52Cに設ける構成としてもよい。
【0066】
詳述すると、この別例のロータ52Cもまた、周方向に180°離間して配置された一対のローラー81,81を備えている。そして、これらの各ローラー81,81が、そのフレックスギヤ72の内周S3に摺接することにより内歯ギヤ71に対する噛合位置P,Pを形成する噛合位置形成ローラー89として機能する構成となっている。
【0067】
また、ロータ52Cには、これらの各噛合位置形成ローラー89,89から周方向に離間した位置に設けられた複数の非噛合位置形成ローラー88が設けられている。具体的には、ロータ52Cは、合わせて4つの非噛合位置形成ローラー88を有している。更に、これらの各非噛合位置形成ローラー88もまた、それぞれ、周方向に均等間隔で並ぶ各マグネット57のうちの周方向に隣り合う2つの間の位置において、そのロータ52Cの径方向外側に臨む凹部83の内側に配置されている。そして、この別例のロータ52Cは、これにより、その合わせて6つの非噛合位置形成ローラー88及び噛合位置形成ローラー89が、周方向に均等間隔で並ぶ構成となっている。
【0068】
更に、この別例のロータ52Cにおいて、各非噛合位置形成ローラー88は、各噛合位置形成ローラー89よりも小径に形成されている。また、これら各非噛合位置形成ローラー88の支軸88xは、それぞれ、噛合位置形成ローラー89としての機能する各ローラー81,81の支軸80,80よりも、そのロータ52Cにおける径方向内側となる位置に設けられている。つまり、これらの各非噛合位置形成ローラー88は、各噛合位置形成ローラー89よりも、その径方向外側への突出量が小さくなっている。そして、この別例のロータ52Cは、これにより、これらの各非噛合位置形成ローラー88が、その内歯ギヤ71に対する噛合位置Pを形成することなくフレックスギヤ72の内周S3に摺接する構成になっている。
【0069】
このような構成を採用することで、フレックスギヤ72の撓み形状を安定化させることができる。そして、これにより、所謂歯飛びの発生を抑えて、効率的に駆動力を伝達することができる。
【0070】
・また、上記実施形態及び別例では、一対のローラー81,81が噛合位置形成ローラー89を構成することとしたが、噛合位置形成ローラー89の数は、任意に変更してもよい。例えば、3つ以上であってもよい。駆動力を伝達可能であれば一つであってもよい。そして、非噛合位置形成ローラー88の数についてもまた、任意に変更してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、モータ25は、ステータ51の径方向外側に配置されたロータ52を備えるアウターロータ型の構成を有することとしたが、インナーロータ型の構成に適用してもよい。
【0072】
詳述すると、例えば、
図9に示す別例のドラム装置21Dにおいて、モータ25Dは、環状に配置された複数のティース54Dを有するステータ51Dと、このステータ51Dの径方向内側で回転するロータ52Dと、を備えている。具体的には、ロータ52Dは、支軸50Dに設けられた軸受90,90により回転可能に軸支されている。そして、このロータ52Dの周面には、そのモータコイル55Dが巻回されたステータ51Dの各ティース54Dと径方向に対向する複数のマグネット57Dが設けられている。
【0073】
また、この別例のドラム装置21Dにおいて、波動発生器75Dは、所謂ハット状の外形を有した支持部材91と、この支持部材91に設けられた一対のローラー92,92と、を備えている。具体的には、支持部材91は、扁平略有蓋円筒状の本体部93と、この本体部93の軸方向端部に設けられた略円環状のフランジ部94と、を備えている。更に、各ローラー92,92は、そのフランジ部94に設けられた一対の支軸95,95により回転自在に軸支されている。そして、この波動発生器75Dは、その本体部93の蓋状部93xがロータ52Dの軸方向端部に対して相対回転不能に固定される構成となっている。
【0074】
即ち、この波動発生器75Dもまた、一対のローラー92,92がフレックスギヤ72の内周S3に摺接することにより、その内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pを形成する。更に、この波動発生器75Dは、これらの各ローラー92,92を支持する支持部材91が、そのインナーロータ型の構成を有するモータ25Dのロータ52Dと一体に回転する。そして、この別例のドラム装置21Dもまた、これにより、その内歯ギヤ71に対するフレックスギヤ72の噛合位置P,Pが周方向に移動することで、モータ25Dの駆動力に基づいて、その内歯ギヤ71と一体にドラム20が回転する構成となっている。このような構成を採用しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
・更に、アウターロータ型のモータ25を用いる構成についても、そのモータ25と波動発生器75とを別体に設けてもよい。また、ラジアル型に限らず、そのロータ及びステータが軸方向に並ぶアキシャル型のモータを用いてもよい。そして、波動発生器75の構成についてもまた、任意に変更してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、フレックスギヤ72は、比較的軟質な樹脂素材を用いて形成されることとしたが、例えば、ゴムや厚みの薄い金属材料を用いる等、その素材についは、任意に変更してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、フレックスギヤ72は、同軸に並置された内歯ギヤ71及び固定ギヤ73に対して係合することにより所謂フラット型の波動歯車機構85を形成することとした。しかし、これに限らず、有底筒状の外形を有したフレックスギヤ72を用いることにより、所謂カップ型の波動歯車機構85を形成する構成としてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、駆動ケーブル11,12をドラム20に巻き取ることにより車両のスライドドア4を開閉駆動するスライドドア装置10のドラム装置21Dに具体化した。しかし、これに限らず、その駆動の対象となる開閉体は、ドア以外のものであってもよい。例えば、そのサンルーフ装置や窓ガラスの昇降装置等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…車両
4…スライドドア(開閉体)
20…ドラム
S2…内周
11,12…駆動ケーブル
21…ドラム装置(車両用開閉体駆動装置)
25…モータ
71…内歯ギヤ
72…フレックスギヤ
P…噛合位置
75…波動発生器
73…固定ギヤ
87…環状係合部