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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011293
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】加熱調理器、及び炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A47J27/00 103H
A47J27/00 101C
A47J27/00 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112324
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】桝澤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】寺島 幸之介
(72)【発明者】
【氏名】小島 孝之
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA07
4B055BA13
4B055CA10
4B055CB03
4B055CC30
4B055CC70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内側容器及び外側容器の隙間の大きさが想定通りに形成されないことによって、各部における加熱ムラや、ヒートパイプとしての機能が低下してしまう等の問題が生じるのを最小限に抑制可能な加熱調理器、及び炊飯器を提供すること。
【解決手段】炊飯器10は、内釜50を備えている。内釜50は、有底筒状の内側容器60と、有底筒状の外側容器70と、内側容器60及び外側容器70の間に形成され、減圧された密閉空間と、密閉容器内において加熱により気化する作動液と、を有する。内釜50は、内側容器60及び外側容器70の間に所定の隙間を確保するための隙間確保部72が、外側容器70から内側容器60に向けて凸形状となるように形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の内側容器と、
有底筒状の外側容器と、
前記内側容器及び前記外側容器の間に形成され、減圧された密閉空間と、
前記密閉容器内において加熱により気化する作動液と、を有し、
前記内側容器及び前記外側容器の間に所定の隙間を確保するための隙間確保部が、前記外側容器から前記内側容器に向けて凸形状となるように形成されていること、を特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記外側容器を構成する周面及び底面のうち、少なくとも前記周面に前記隙間確保部が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記隙間確保部が、山型に形成されていること、を特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記隙間確保部が、周面において周方向に少なくとも三箇所に設けられていること、を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記作動液が、消泡剤を含むものであること、を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記密閉空間の内圧が所定の圧力を超えることを条件として開状態になる安全弁が、前記外側容器において外側に向けて設けられていること、を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記外側容器に取手が設けられており、
前記取手が、前記安全弁をカバーするように設けられていること、を特徴とする請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の加熱調理器を内釜として備えていること、を特徴とする炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器、及び炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているような加熱調理器が提供されている。特許文献1の加熱調理器は、有底筒状に形成され、内部に密閉空間を有する2重壁構造のものとされている。この加熱調理器は、有底筒状に形成された内側容器及び外側容器と、両者の間に形成された密閉空間内に注入された作動液とを有している。特許文献1の加熱調理器には、加熱調理器の内側の側壁を効率良く加熱するために、作動液によって底面の全体が覆われないように、作動液の量を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-103783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した加熱調理器のように、内側容器及び外側容器の間に密閉空間を有するものを製造する場合、密閉空間を減圧状態にする際に外側容器に対する内側容器の位置ズレが発生し、内側容器及び外側容器の隙間の大きさが想定通りにならない可能性が高くなる。内側容器及び外側容器の隙間の大きさが想定を外れた大きさになると、加熱調理器の各部において加熱ムラが生じる原因になりかねない。また、内側容器及び外側容器の隙間の大きさが所定の範囲を超えて不均一になると、ヒートパイプとしての機能が損なわれてしまうという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、内側容器及び外側容器の隙間の大きさが想定通りに形成されないことによって、各部における加熱ムラや、ヒートパイプとしての機能が低下してしまう等の問題が生じるのを最小限に抑制可能な加熱調理器、及び炊飯器の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の加熱調理器は、有底筒状の内側容器と、有底筒状の外側容器と、前記内側容器及び前記外側容器の間に形成され、減圧された密閉空間と、前記密閉容器内において加熱により気化する作動液と、を有し、前記内側容器及び前記外側容器の間に所定の隙間を確保するための隙間確保部が、前記外側容器から前記内側容器に向けて凸形状となるように形成されていること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明の加熱調理器は、隙間確保部を備えており、内側容器及び外側容器の間に想定通りの大きさの隙間が確保されている。そのため、本発明の加熱調理器は、各部における加熱ムラが生じにくい。また、本発明の加熱調理器は、内側容器及び外側容器の間に形成された密閉空間内に、加熱によって気化する作動液を収容させることにより、当該部分がヒートパイプとして機能するものとされ、想定通りの加熱性能を発揮できる。従って、本発明によれば、各部における加熱ムラや、ヒートパイプとしての機能低下を最小限に抑制可能な加熱調理器を提供できる。
【0008】
また、本発明の加熱調理器においては、隙間確保部をなす凸形状の部分が外側容器に形成される。そのため、本発明の加熱調理器においては、内側容器をなす面を平滑なものとすることができ、隙間確保部をなすための窪み等を形成する必然性がなくなる。これにより、例えば米粒等の加熱調理の対象物が、隙間確保部をなす部分に引っかかったり、入り込んだりするのを抑制できる。
【0009】
(2)上述した加熱調理器は、前記外側容器を構成する周面及び底面のうち、少なくとも前記周面に前記隙間確保部が設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0010】
かかる構成によれば、少なくとも周面において外側容器と内側容器との隙間の大きさを想定通りのものとすることができる。従って、本発明によれば、周方向の各部における加熱ムラや、ヒートパイプとしての機能低下を抑制可能な加熱調理器を提供できる。
【0011】
(3)上述した加熱調理器は、前記隙間確保部が、山型に形成されていること、を特徴とするものであると良い。
【0012】
かかる構成によれば、外側容器に形成された隙間確保部が内側容器に接触する場合であっても、隙間確保部は山型に形成された部分の頂部において内側容器に接触することになる。そのため、上述した構成によれば、隙間確保部と内側容器とが接触する場合であっても、その接触面積を最小限に留め、ヒートパイプによる効果の低下を抑制できる。
【0013】
(4)上述した加熱調理器は、前記隙間確保部が、周面において周方向に少なくとも三箇所に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0014】
かかる構成によれば、最小限の隙間確保部により、周方向の各部において外側容器と内側容器との隙間を適正な大きさとすることができる。
【0015】
ここで、本発明者らが鋭意検討したところ、外側容器と内側容器との間に形成された密閉空間において作動液が加熱されることによって発生する気泡の大きさが大きくなると、その気泡に起因する衝撃波や作動音(突沸音)も大きくなる傾向にあるとの知見を得た。かかる知見に基づけば、作動液が加熱されることによって発生する気泡の大きさを抑制することにより、衝撃波や作動音も低減できると考えられる。
【0016】
(5)かかる知見に基づけば、上述した加熱調理器は、前記作動液が、消泡剤を含むものであること、を特徴とするものであると良い。
【0017】
かかる構成によれば、作動液が加熱されることで発生する気泡の大きさが大きくなるのを抑制し、大きな衝撃波や作動音が発生する可能性を低減できる。
【0018】
(6)上述した加熱調理器は、前記密閉空間の内圧が所定の圧力を超えることを条件として開状態になる安全弁が、前記外側容器において外側に向けて設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0019】
かかる構成によれば、密閉空間の内圧が所定の圧力を超えた場合、圧力を外部に逃がすことができるので、密閉空間の内圧が過度に高くなることを抑制できる。また、上述した構成によれば、安全弁を設けることによって加熱調理器の内側に余計な突出部が形成されるのを抑制できる。
【0020】
(7)上述した加熱調理器は、前記外側容器に取手が設けられており、前記取手が、前記安全弁をカバーするように設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0021】
かかる構成によれば、安全弁をカバーするためのカバー部材として取手を活用できる。そのため、上述した構成によれば、別途カバー用の部材を設ける必然性がなくなり、その分だけ部品点数の削減や構成の簡素化を図ることができる。
【0022】
(8)本発明の炊飯器は、本発明の加熱調理器を内釜として備えていること、を特徴とするものである。
【0023】
かかる構成によれば、各部において加熱ムラを生じることなく炊飯できる炊飯器を提供できる。
【0024】
(9)上述した加熱調理器は、前記隙間確保部が、前記外側容器を構成する底面に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0025】
かかる構成によれば、底面における外側容器と内側容器との隙間を最適化しつつ、底面における撓みの発生を抑制できる。
【0026】
(10)上述した加熱調理器は、前記隙間確保部が、前記外側容器を構成する底面において周方向に少なくとも三箇所に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0027】
かかる構成によれば、底面における周方向各部において、外側容器と内側容器との隙間を最適化しつつ、撓みの発生を抑制できる。
【0028】
(11)上述した加熱調理器は、前記外側容器を構成する底面が、外周部と、当該外周部よりも内周側の内周部とを有し、前記隙間確保部が、前記外周部及び前記内周部に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0029】
かかる構成によれば、底面の外周部及び内周部の双方において、外側容器と内側容器との隙間を最適化しつつ、撓みの発生を抑制できる。
【0030】
(12)上述した加熱調理器は、前記外側容器を構成する底面が、外周部と、当該外周部よりも内周側の内周部とを有し、前記内周部にセンサが配置されるセンサ配置部を有し、前記隙間確保部が、前記センサ配置部を外れた位置に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0031】
かかる構成によれば、センサ配置部におけるセンサの配置を阻害することなく、底面の外周部及び内周部の双方において、外側容器と内側容器との隙間を最適化しつつ、撓みの発生を抑制できる。
【0032】
(13)上述した加熱調理器は、前記作動液が、水に対して重量比で10%以上の消泡剤を添加したものであること、を特徴とするものであると良い。
【0033】
かかる構成によれば、作動液が加熱されることで発生する気泡の大きさが大きくなるのをより一層効果的に抑制し、大きな衝撃波や作動音が発生する可能性をさらに低減できる。
【0034】
(14)上述した加熱調理器は、非加熱状態において前記外側容器の底面が覆うことができる容量の前記作動液が前記密閉空間内に収容されていること、を特徴とするものであると良い。
【0035】
かかる構成によれば、通常の使用形態として想定される範囲内で加熱調理器が傾いた姿勢で設置されたとしても、ヒートパイプ効果による加熱性能を適正に発揮可能な加熱調理器を提供できる。
【0036】
(15)上述した加熱調理器は、前記安全弁が、前記外側容器に対して溶接されていること、を特徴とするものであると良い。
【0037】
かかる構成によれば、例えば取り付け対象物に対してねじ込んで取り付けるタイプの安全弁を採用する場合に比べて、板厚の薄い外側容器を用いることができる。
【0038】
(16)上述した加熱調理器は、前記密閉空間に連通しつつ端部が封止された連通管を有し、前記連通管が、前記取手によってカバーされていること、を特徴とするものであると良い。
【0039】
かかる構成によれば、連通管をカバーするためのカバー部材として取手を活用できる。そのため、上述した構成によれば、連通管をカバーするための部材を別途設ける必然性がなくなり、その分だけ部品点数の削減や構成の簡素化を図ることができる。
【0040】
(17)上述した加熱調理器は、前記取手が、前記外側容器に対して固定されたプレート部材と、前記プレート部材を構成する一方の面側に装着される第一カバー部と、前記プレート部材を構成する他方の面側に装着される第二カバー部と、を有し、前記プレート部材を介して前記第一カバー部及び前記第二カバー部を一体化しつつ、前記第二カバー部に前記安全弁を収容した状態で前記外側容器に対して取り付けられること、を特徴とするものであると良い。
【0041】
かかる構成によれば、外側容器に対して取手をしっかりと固定できるとともに、取手によって安全弁を確実にカバーすることが可能となる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、内側容器及び外側容器の隙間の大きさが想定通りに形成されないことによって、各部における加熱ムラや、ヒートパイプとしての機能が低下してしまう等の問題が生じるのを最小限に抑制可能な加熱調理器、及び炊飯器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態に係る炊飯器を示す斜視図である。
図2図1の炊飯器を示すA-A線断面図である。
図3図1の炊飯器に用いられる内釜を示す斜視図である。
図4図3に示した内釜を示す分解斜視図である。
図5図3に示した内釜のB-B線断面図である。
図6図3に示した内釜を構成する外側容器を示す斜視図である。
図7図3に示した内釜を構成する外側容器の平面図である。
図8図3に示した内釜の取手を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の一実施形態に係る炊飯器10、及びこれに用いられる内釜50(加熱調理器)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、炊飯器10の構成について概略を説明した後、特徴的部分である内釜50についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明において上下左右や、正面、背面、側面、天面、底面等の位置関係を示す用語については、特に断りのない限り、図1に示すように通常の使用形態として想定される姿勢で炊飯器10を設置した状態を前提として説明する。
【0045】
図1及び図2に示すように、炊飯器10は、炊飯器本体20、蓋部40、及び内釜50を備えている。炊飯器10は、IH(Induction Heating)式や、圧力IH式のように、内釜50を発熱させる加熱方式を採用したものである。
【0046】
炊飯器本体20は、内釜収容部22、加熱部24、電源部26、温度センサ28、制御部30等を備えている。内釜収容部22は、内釜50を収容するために設けられた部分である。内釜収容部22は、平面視において略円形状に開口しており、上側へ開放された凹状の形状とされている。そのため、炊飯器本体20は、内釜収容部22に対して上方から内釜50を出し入れすることができる。
【0047】
加熱部24は、内釜収容部22の下側に設けられている。加熱部24は、内釜50を加熱するためのものである。加熱部24は、通電により発熱するものであり、本実施形態では誘導コイルによって構成されている。加熱部24をなす誘導コイルは、内釜収容部22の下側において、略渦巻き状に巻き回されている。
【0048】
電源部26は、加熱部24の下方側に設けられている。電源部26は、加熱部24や制御部30等、炊飯器10において電力を消費する部分に電力供給するためのものである。電源部26は、加熱部24をなす誘導コイルに対し、高周波電流を印加できるものとされている。そのため、炊飯器10は、電源部26によって加熱部24をなす誘導コイルに高周波電流を印加して内釜50内に渦電流を発生させ、内釜50内の電気抵抗によって内釜50を発熱させることができる。
【0049】
温度センサ28は、内釜収容部22の下方であって、内釜収容部22の中央部に相当する位置に設けられている。温度センサ28は、内釜収容部22に収容された内釜50の底部において温度測定するためのものである。
【0050】
制御部30は、炊飯器本体20において内釜収容部22に対して正面側にある空間内に配置されている。制御部30は、電源部26、温度センサ28や、後述する蓋部40に設けられた操作部44等に対して電気的に接続されている。制御部30は、操作部44を介して炊飯器10の動作設定信号を受け付けたり、温度センサ28からの出力信号に基づいて電源部26の出力制御を行ったりして、炊飯器10の動作制御を行うことができる。
【0051】
蓋部40は、ヒンジ機構42によって、炊飯器本体20の上部に回動可能に連結されている。蓋部40は、閉状態とすることにより、内釜収容部22の開口部を覆い、閉塞することができる。また、蓋部40を開状態とすると、蓋部40がヒンジ機構42によって回動し、内釜収容部22の開口部が開いた状態になる。蓋部40は、操作部44、及び蒸気排気部46を備えている。
【0052】
操作部44は、炊飯器10の操作を行うためのものであり、蓋部40の天面側に設けられている。操作部44は、蓋部40の天面に露出するように設けられた複数のボタン44aや、表示装置44bを備えている。操作部44は、ボタン操作により、炊飯器10の運転モードの選択や、運転予約等を行うことができる。また、操作部44は、表示装置44bにより、ボタン操作によって選択された運転モードや運転予約の表示等を行うことができる。
【0053】
蒸気排気部46は、蓋部40を閉状態として炊飯を行う際に発生する蒸気を排出するためのものである。蒸気排気部46は、蓋部40を閉状態としたときに、内釜収容部22やこれに収容された内釜50の上方となる位置に設けられている。蒸気排気部46は、蓋部40の天面側及び底面側(内釜収容部22側)に向けて開放された開口、及び両開口を繋ぐ通路からなる排気経路を有し、これを介して炊飯器10の内側から外側に向けて蒸気を排出可能とされている。
【0054】
内釜50は、上述した内釜収容部22に対して出し入れ可能とされた炊飯用の釜である。図3図5に示すように、内釜50は、上側へ開放された有底略円筒状であって、内部に炊飯用の米穀等を収容可能とされている。図4図5に示すように、内釜50は、内側容器60及び外側容器70によって構成された二重壁構造とされている。また、図5に示すように、内釜50は、内側容器60と外側容器70との間に密閉空間80を形成し、密閉空間80に作動液90を封入すると共に、取手100を設けたものとされている。以下、内釜50の各部の構成についてさらに詳細に説明する。
【0055】
内側容器60は、磁性体(本実施の形態では、ステンレス)によって構成されている。内側容器60は、内側の面に耐熱性のフッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)による表面加工を施したものとされている。図4図5に示すように、内側容器60は、上側へ開放された有底であって略円筒状の形状に形成されている。具体的には、内側容器60は、内側底壁面60a、内側側壁面60b、内側コーナ部60c、及び第一フランジ部60dを有し、略全体に亘って平滑に形成されている。
【0056】
内側底壁面60aは、内側容器60の底をなす部分であり、平面視で略円形の形状となるように形成されている。内側底壁面60aは、水平方向に略平坦な形状や、外周側から中央側に向けてなだらかに隆起した形状等とすると良い。本実施形態では、内側底壁面60aは、外周側から中央側に向けてなだらかに隆起した形状とされている。内側側壁面60bは、内側容器60の側部を構成する円筒状の部分である。内側側壁面60bは、例えば、炊飯時の水量を示す目盛をなす部分等を除いて、略全体に亘って凹凸等を有さず平滑に形成されている。内側コーナ部60cは、内側容器60の外周側において、内側底壁面60aと内側側壁面60bとをなだらかに繋ぐ部分である。内側コーナ部60cは、R状に湾曲した形状とされている。第一フランジ部60dは、内側側壁面60bの開放端(内側コーナ部60cとは反対側の端部)において、内側容器60の径方向外側へ張り出すように形成されたフランジ状の部分である。第一フランジ部60dは、内側側壁面60bの全周に亘って形成されている。
【0057】
外側容器70は、上述した内側容器60と同様に磁性体(本実施の形態では、ステンレス)によって構成されている。外側容器70は、内側の面(密閉空間80を構成する面)に鏡面処理を施したものとされている。図4図7に示すように、外側容器70は、上側へ開放された有底であって略円筒状の形状に形成されている点において、内側容器60と同様の構成とされている。具体的には、外側容器70は、外側底壁面70a、外側側壁面70b、外側コーナ部70c、及び第二フランジ部70dを有する点において、内側容器60と同様の構成とされている。外側容器70は、これらの構成に加えて、隙間確保部72や、安全弁74、連通管76を備えている。
【0058】
外側底壁面70aは、外側容器70の底をなす部分である。外側底壁面70aは、平面視で略円形の形状となるように形成されている。外側底壁面70aは、水平方向に略平坦な形状や、外周側から中央側に向けてなだらかに隆起した形状等とすると良い。本実施形態では、外側底壁面70aは、外周部70xと、外周部70xよりも内周側の内周部70yとを有し、外周部70xから内周部70yに向けてなだらかに隆起した形状とされている。外側側壁面70bは、外側容器70の側部を構成する円筒状の部分である。外側コーナ部70cは、外側容器70の外周側において、外側底壁面70aと外側側壁面70bとをなだらかに繋ぐ部分である。外側コーナ部70cは、R状に湾曲した形状とされている。第二フランジ部70dは、外側側壁面70bの開放端(外側コーナ部70cとは反対側の端部)において、外側容器70の径方向外側へ張り出すように形成されたフランジ状の部分である。第二フランジ部70dは、外側側壁面70bの全周に亘って形成されている。
【0059】
隙間確保部72は、内側容器60及び外側容器70の間に所定の隙間を確保するものである。隙間確保部72は、外側容器70を構成する外側底壁面70a及び外側側壁面70bに設けられている。図6等に示すように、隙間確保部72は、外側容器70から内側容器60に向けて凸形状に形成されている。隙間確保部72を構成する凸状の形状であれば良いが、本実施形態では山型の形状に形成されている。また、隙間確保部72は、外側容器70をなす外側底壁面70aや外側側壁面70bを外側から内側に向けて突出するように変形させることにより形成されている。
【0060】
図6図7等に示すように、隙間確保部72は、外側側壁面70bの周方向に複数箇所に設けられている。具体的には、本実施形態では、図5に示すように、隙間確保部72は、外側底壁面70a側から所定の高さH1の位置において、外側側壁面70bの周方向に複数箇所に設けられている。また、隙間確保部72は、外側底壁面70a側から所定の高さH2(H2>H1)の位置にも、外側側壁面70bの周方向に複数(本実施形態では三箇所)、所定の間隔毎に設けられている。さらに、隙間確保部72は、高さH1の位置に設けられたものと、高さH2の位置に設けられたものが、上下方向に並ぶように形成されている。
【0061】
隙間確保部72は、外側底壁面70aにおいても周方向に複数箇所に設けられている。具体的には、本実施形態では、図7に示すように、隙間確保部72は、外側底壁面70aのうち外周部70xをなす領域において、周方向に複数(本実施形態では三箇所)、所定の間隔毎に設けられている。また、外周部70xに設けられた隙間確保部72は、それぞれ外側側壁面70bに設けられた隙間確保部72に対応する位置に設けられている。すなわち、隙間確保部72は、外周部70xをなす領域内であって、外側側壁面70bにおいて隙間確保部72が設けられた位置と外側底壁面70aの中心とを結ぶ仮想線上の位置に設けられている。そのため、外側底壁面70aに形成された隙間確保部72は、外側側壁面70bに形成された隙間確保部72と、周方向に略同一の位置に設けられている。
【0062】
隙間確保部72は、外側底壁面70aのうち内周部70yをなす領域にも設けられている。内周部70yにおいて中央側の領域は、内釜50を内釜収容部22に収容した状態において下方に温度センサ28が配置されるセンサ配置部70zとなる部分である。そのため、隙間確保部72は、内周部70yにおいてセンサ配置部70zを外れた領域(本実施形態ではセンサ配置部70zよりも外周側の領域)に設けられている。本実施形態では、隙間確保部72は、内周部70yにおいてセンサ配置部70zの外周側の領域の複数箇所(本実施形態では二箇所)に隙間確保部72が設けられている。
【0063】
安全弁74は、所定の圧力を超えることを条件として開状態になる弁である。安全弁74は、内釜50の組み立て状態において内側容器60と外側容器70との間に形成される密閉空間80に対して連通するように設けられる。そのため、安全弁74は、密閉空間80の内圧が所定の圧力を超えることを条件として開状態になる。図4図8に示すように、安全弁74は、外側容器70において外側に向けて突出するように設けられている。安全弁74は、外側容器70と同材質のステンレスで形成されており、外側容器70に対して溶接により固定されている。これにより、例えばねじ式の固定方式等によって外側容器70に安全弁74を取り付ける場合に比べて、外側容器70の板厚が過剰に厚くなるのを抑制している。
【0064】
連通管76は、内釜50の組み立て状態(製造後の状態)において密閉空間80に連通するように設けられる管である。連通管76は、内釜50の製造時に、作動液90を密閉空間80内に導入したり、密閉空間80を減圧するために真空ポンプ等に接続されたりするものである。連通管76は、安全弁74と同様に、外側容器70において外側に向けて突出するように設けられている。また、連通管76は、安全弁74に対して周方向に外れた位置に設けられている。連通管76は、内釜50の製造時に密閉空間80の減圧等のために用いられた後は、端部を封止した状態とされている。
【0065】
内釜50は、上述した内側容器60を外側容器70の内側に収容させた状態としつつ、第一フランジ部60d及び第二フランジ部70dを、例えばアーク溶接やスポット溶接、シームレス溶接、レーザ溶接等の手法によって接合して一体化することにより形成されている。これにより、内釜50は、内側容器60と外側容器70との間に密閉空間80を備えたものとされている。
【0066】
図5に示すように、密閉空間80は、内側容器60及び外側容器70の間に形成された空間である。すなわち、密閉空間80は、内側容器60の外側の面、及び外側容器70の内側の面の間に形成される空間である。密閉空間80は、縦断面視で中空の略U字形に形成されている。密閉空間80には、内釜50の製造工程において連通管76を介して導入された作動液90が収容されている。また、密閉空間80は、内釜50の製造工程において連通管76に接続された真空ポンプ等によって減圧された状態で封止されている。
【0067】
作動液90は、内釜50の製造時に、連通管76を介して密閉空間80内に導入されている。作動液90は、例えば水のように加熱により気化する液体によって構成されている。本実施形態では、水に対して重量比で所定比以上の消泡剤を添加したものが、作動液90として用いられている。消泡剤には、例えば、シリコーンエマルジョンを用いることができる。本発明者らが鋭意検討したところ、作動液90における消泡剤の含有率が重量比で5%以上である場合には、炊飯器10の運転時に発生する作動音(突沸音)が大幅に低減され、10%以上とすることで作動音(突沸音)が殆ど聞こえないレベルにまで低減されることが見いだされた。そのため、炊飯器10の運転時に発生する作動音(突沸音)を抑制する観点からすれば、作動液90における消泡剤の含有率は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより一層好ましい。図5に示すように、作動液90は、内釜50を略水平に配置するとともに内釜50を加熱していない状態において、外側容器70の外側底壁面70aが覆われる程度の容量とされている。
【0068】
取手100は、内釜50を把持するための把持部として機能するものである。図3図8等に示すように、取手100は、外側容器70の外側側壁面70bに対し、内釜50の外側に向けて突出するように設けられている。また、取手100は、安全弁74及び連通管76を覆うように取り付けられている。すなわち、取手100は、前述した把持部としての機能に加え、安全弁74及び連通管76をカバーするためのカバー部としての機能も有する。図8に示すように、取手100は、プレート部材102と、第一カバー部104と、第二カバー部106とを備えている。
【0069】
プレート部材102は、板状のものであり、外側容器70の外側側壁面70bに対して溶接により固定されている。これにより、プレート部材102は、外側側壁面70bから内釜50の外側に向けて立設されている。プレート部材102は、取り付け状態において上方側を向く第一面102a、及び下方側を向く第二面102bを有する。プレート部材102は、上述した安全弁74や連通管76に対して上方側に配置されている。本実施形態では、プレート部材102は、外側容器70の第二フランジ部70dの下方側に固定されている。
【0070】
第一カバー部104は、プレート部材102に対して第一面102a側から覆い被さるように取り付けられるものである。第一カバー部104には、第二カバー部106を係合により固定するための係合部104bが設けられている。係合部104bは、第二カバー部106側と係合可能なものであれば良く、本実施形態では爪状のものとされている。
【0071】
また、第二カバー部106は、プレート部材102に対して第二面102b側から装着される部材である。第二カバー部106には、上述した安全弁74や連通管76が収まる収容空間106aが設けられている。また、第二カバー部106は、第一カバー部104の係合部104bと係合する被係合部106bが設けられている。また、本実施形態では、第二カバー部106の外側に把持するための凹部106cが形成されており、凹部106cの表面には滑り止めの突条部106dが形成されている。
【0072】
取手100は、プレート部材102の上方に第一カバー部104を配すると共に、第二カバー部106をプレート部材102の下方側に配し、係合部104bと被係合部106bとを係合させることにより、プレート部材102を挟み込んだ状態で第一カバー部104と第二カバー部106とを一体化することにより取り付けることができる。また、第一カバー部104及び第二カバー部106は、第二カバー部106の下方側から装着されたネジ104aによってプレート部材102に対して固定される。すなわち、取手100は、第二カバー部106に設けられた孔(図示せず)、及びプレート部材102に設けられた孔を通過して第一カバー部104に到達するようにネジ104aを装着することにより、第一カバー部104及び第二カバー部106が、プレート部材102に対して固定される。このようにして取手100を取り付けると、取手100(本実施形態では第二カバー部106)の内部の両側に安全弁74と連通管76が収まり、これらがカバーされた状態になる。このように安全弁74がカバーされているので、仮に密閉空間80の内圧が所定の圧力を超え、安全弁が開状態となり、圧力を外部に逃がすことになった場合でも、一気に圧力が解放されるのではなく、カバーで一旦その圧力を受けることができるので、安全弁74がカバーされていない場合に比べて安全性は高くなっている。
【0073】
上述したように、本実施形態の炊飯器10に用いられる内釜50は、隙間確保部72を設けることにより、内側容器60及び外側容器70の間に想定通りの大きさの隙間を確保している。具体的には、内釜50は、その製造工程において連通管76に接続された真空ポンプを作動することにより、密閉空間80を減圧状態とする作業が行われるが、隙間確保部72が設けられているため、内側容器60及び外側容器70の隙間が、少なくとも隙間確保部72の突出量相当分の大きさとなるように確保される。そのため、上述した内釜50は、内側容器60及び外側容器70の間に想定通りの大きさの隙間が確保されており、各部における加熱ムラが生じにくい。
【0074】
また、内釜50は、内側容器60及び外側容器70の間に形成された密閉空間80内に、加熱によって気化する作動液90を収容させたものとされており、当該部分をヒートパイプとして機能させることができる。また、上述したように、内釜50は、密閉空間80を構成する隙間が想定通りの大きさに形成されている。そのため、上述した内釜50は、ヒートパイプとして機能する部分において想定通りの加熱性能を発揮できる。従って、上述した内釜50によれば、各部における加熱ムラや、ヒートパイプとしての機能低下を最小限に抑制できる。
【0075】
また、本実施形態の内釜50においては、隙間確保部72をなす山型の凸形状が外側容器70に形成されている。そのため、内釜50は、内側容器60をなす内側底壁面60aや内側側壁面60bを平滑なものとすることができ、隙間確保部72をなすための窪み等が形成されていない。そのため、内釜50は、例えば米粒等の加熱調理の対象物が、隙間確保部72をなす部分に引っかかったり、入り込んだりするのを抑制できる。
【0076】
上述したように、内釜50は、外側容器70を構成する外側底壁面70a及び外側側壁面70bの双方に隙間確保部72が設けられている。そのため、上述した内釜50によれば、周方向の各部及び底部における加熱ムラや、ヒートパイプとしての機能低下を抑制できる。なお、本実施形態では、外側底壁面70a及び外側側壁面70bの双方に隙間確保部72を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。内釜50は、例えば、外側底壁面70aに隙間確保部72を設けない構成等としても良い。
【0077】
また、上述した内釜50においては、隙間確保部72が、山型に形成されている。そのため、内釜50の製造工程において密閉空間80を減圧状態とした際に、隙間確保部72が内釜50の内側容器60に接触した状態になったとしても、山型に形成された隙間確保部72の頂部において接触することになる。そのため、上述した構成によれば、隙間確保部72と内側容器60との接触面積を最小限に抑制できる。これにより、内釜50におけるヒートパイプによる効果の低下を抑制できる。
【0078】
なお、本実施形態では、隙間確保部72として、頂部に向けて先細り状に形成された山型のものを採用した例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、隙間確保部72は、いわゆる突条のように、細長く平面方向に延びる突出部によって構成する等、適宜のものとすることが可能である。なお、上述したものと異なる形態の隙間確保部72を設ける場合には、内釜50におけるヒートパイプ効果の低下を抑制する等の観点から、内側容器60との接触面積を最小限に抑制できるものとすると良い。
【0079】
上述した内釜50は、隙間確保部72が、外側側壁面70bにおいて周方向三箇所に設けられている。そのため、上述した構成によれば、最小限の隙間確保部72により、周方向の各部において外側容器70と内側容器60との隙間を適正な大きさとすることができる。なお、本実施形態では、外側側壁面70bにおいて隙間確保部72を設ける位置を周方向に3箇所とした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、隙間確保部72が、外側側壁面70bにおいて、周方向にさらに多数の箇所に亘って設けられていても良い。また、本実施形態では、外側側壁面70bの周方向三箇所において、上下方向に複数列(本実施形態では2列)に亘って隙間確保部72を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上下方向に並ぶ隙間確保部72の数(列数)を増減させても良い。また、外側側壁面70bにおいて、高さH1の位置に設けられる隙間確保部72と、高さH2の位置に設けられる隙間確保部72とが、周方向にずれた位置に設けられても良い。
【0080】
上述したように、内釜50は、隙間確保部72が、外側側壁面70bだけでなく、外側底壁面70aにも設けられている。また、内釜50は、隙間確保部72が、外側容器70を構成する外側底壁面70aにおいて周方向に所定の間隔を開けつつ、三箇所に設けられている。さらに、内釜50は、外側容器70を構成する外側底壁面70aにおいて、外周部70x及び内周部70yの双方に隙間確保部72が設けられている。そのため、内釜50は、外側底壁面70aにおける外側容器70と内側容器60との隙間を最適化することに加え、外側底壁面70aにおける撓みの発生を抑制できる。
【0081】
なお、本実施形態では、外側底壁面70aに隙間確保部72を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、外側底壁面70aに隙間確保部72を設けない構成としても良い。また、内釜50は、隙間確保部72は、周方向に所定の間隔を開けつつ三箇所に設けられているが、本発明はこれに限定されず、隙間確保部72の数量を増減させても良い。また、内釜50は、外側底壁面70aの外周部70x及び内周部70yの双方に隙間確保部72を設けるものに限定されず、外周部70x及び内周部70yのいずれか一方にのみ隙間確保部72を設けるものでも良い。
【0082】
上述した内釜50は、外側容器70を構成する外側底壁面70aの内周部70yに温度センサ28が配置されるセンサ配置部70zを有する。そのため、内釜50は、センサ配置部70zを外れた位置に隙間確保部72を設けたものとされている。これにより、センサ配置部70zにおけるセンサの配置を阻害することなく、外側容器70と内側容器60との隙間の最適化や、撓みの抑制を図ることができる。なお、本実施形態では、センサ配置部70zに温度センサ28が配置されることを考慮し、センサ配置部70zを外れた位置に隙間確保部72を設けることとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、隙間確保部72を、温度センサ28の配置や動作に影響を与えないものとすることができる場合には、センサ配置部70zにも隙間確保部72を配置するようにしても良い。
【0083】
上述したように、内釜50は、作動液90として、消泡剤を含むものが用いられている。これにより、炊飯器10の運転に伴い作動液90が加熱されることで発生する気泡の大きさが大きくなるのを抑制し、大きな衝撃波や作動音が発生する可能性を低減できる。なお、本実施形態では、作動液90として消泡剤を含有させたものを用いた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、炊飯器10の運転に伴って作動液90が加熱された時に発生する作動音(突沸音)に対して配慮が不要である場合や、他の構成を設ける等して作動音(突沸音)の発生や漏洩を抑制できる場合等には、作動液90として消泡剤を含むものを用いないようにしても良い。その一例として、外側容器70の内側の面(密閉空間80を構成する面)の表面をサンドブラスト等によって荒らし、作動音(突沸音)の発生や漏洩を抑制するようにしても良い。この場合、表面を荒らすことで大きな気泡が発生しにくくなる。
【0084】
また、上述した内釜50は、水に対して重量比で10%以上の消泡剤を添加したものを作動液90として用いている。このような構成とされているため、内釜50においては、作動液90が加熱されることによって発生する気泡がさほど大きくならず、大きな衝撃波や作動音が発生しない。なお、本実施形態では、消泡剤の添加量を10%以上とした例を示したが、消泡剤の添加量を5%以上とすれば十分効果が期待できる。そのため、内釜50は、期待する作動音(突沸音)の抑制効果に応じて、消泡剤の添加量を適宜増減させたものとすると良い。
【0085】
上述した内釜50においては、非加熱状態において外側容器70の外側底壁面70aを覆うことができる容量の作動液90が密閉空間80内に収容されている。そのため、通常の使用形態として想定される範囲内であれば、内釜50が多少傾いた姿勢で設置されたとしても、ヒートパイプ効果による加熱性能を適正に発揮できる。なお、本実施形態では、作動液90の容量を、外側容器70の外側底壁面70aを覆うことができる量となるように調整した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、期待する効果に応じて適宜増減しても良い。
【0086】
上述したように、内釜50は、安全弁74を備えており、密閉空間80の内圧が所定の圧力を超えることを条件として安全弁74が開状態になるものとされている。そのため、内釜50は、密閉空間80の内圧が過度に高くなるのを抑制でき、安全性の面においても優れた性能を示す。また、内釜50は、安全弁74を外側容器70から外側に向けて突出するように設けられている。そのため、内釜50は、安全弁74を設けた構成でありながら、内側に余計な突出部を有さず、使い勝手が良い。
【0087】
なお、本実施形態においては、密閉空間80の内圧上昇に対する安全性向上を考慮して、安全弁74を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、安全弁74を設ける代わりに他の方法により密閉空間80の内圧上昇に対する対策を講じることができる場合等には、安全弁74を設けない構成としても良い。また、本実施形態では、内釜50の内側に突出部が形成されることによる利便性低下を考慮して、安全弁74を設けつつ、内釜50の内側に突出部が形成されないようにした例を示したが、本発明はこれに限定されず、内釜50の内側に突出部が形成される構成であっても良い。
【0088】
上述したように、内釜50は、外側容器70に取手100が設けられており、取手100が、安全弁74をカバーするように設けられている。そのため、上述した内釜50は、安全弁74をカバーするためのカバー部材として取手100を活用でき、別途カバー用の部材を設ける必然性がない。従って、内釜50は、部品点数の削減や構成の簡素化を図りつつ、安全弁74の保護や、安全弁74に使用者が手を触れることによる不具合の発生を抑制できる。なお、本実施形態では、取手100を安全弁74のカバーとして活用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、安全弁74のためのカバーを別途設けたり、安全弁74が内釜50の外部に突出しないように設けたりしても良い。
【0089】
上述した内釜50は、安全弁74が、外側容器70に対して溶接されている。そのため、内釜50は、例えば取り付け対象物に対してねじ込んで取り付けるタイプの安全弁74を採用する場合に比べて、板厚の薄いものを用いて外側容器70を形成できる。これにより、内釜50の重量や製造コストを抑制することができる。なお、本実施形態では、ステンレスの外側容器70に同材質の安全弁74を溶接して取り付ける例を示したが、異種材の安全弁を用いて溶接するようにしても良い。また、本発明はこれに限定されず、取り付け対象物に対してねじ込んで取り付けるタイプのもの等とすることができる。
【0090】
また、上述した内釜50は、密閉空間80に連通した連通管76を取手100によってカバーしたものとされている。このように、内釜50は、連通管76をカバーするためのカバー部材として取手100を活用したものであり、連通管76をカバーするための部材を別途設ける必然性がない。従って、上述した構成によれば、内釜50の部品点数の削減や構成の簡素化、軽量化等を図ることが可能となる。なお、本実施形態では、取手100を連通管76のカバーとして活用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、連通管76のためのカバーを別途設けたり、連通管76が内釜50の外部に突出しないように設けたりしても良い。
【0091】
上述した内釜50は、取手100が、外側容器70に対して固定されたプレート部材102を介して第一カバー部104及び第二カバー部106を一体化しつつ、第二カバー部106に安全弁74や連通管76を収容した状態で外側容器70に対して取り付けられるものとされている。そのため、上述した構成によれば、外側容器70に対して取手100をしっかりと固定できるとともに、取手100によって安全弁74や連通管76を確実にカバーすることが可能となる。なお、本実施形態では、単一の取手100によって安全弁74及び連通管76をカバーした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一つの取手100によって安全弁74及び連通管76のうち一方のみをカバーするようにしても良い。また、本実施形態のように、取手100を二つ設ける場合には、例えば、これらのうちの一方によって安全弁74をカバーし、他方によって連通管76をカバーするようにする等しても良い。
【0092】
上述したように、本実施形態の炊飯器10は、上述した構成の内釜50を備えている。そのため、炊飯器10は、各部にいて加熱ムラを生じることなく炊飯できる。なお、本実施形態では、炊飯器10の内釜50として、本発明の加熱調理器を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、内釜50として例示した加熱調理器は、他の調理装置において用いられるものであったり、単独で使用される調理器であったりしても良い。
【0093】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の加熱調理器は、各種の対象物を加熱調理する場合に利用することが可能である。また、本発明の加熱調理器は、炊飯器の内釜として好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 :炊飯器
50 :内釜(加熱調理器)
60 :内側容器
70 :外側容器
70a :外側底壁面
70b :外側側壁面
70x :外周部
70y :内周部
70z :センサ配置部
72 :隙間確保部
74 :安全弁
76 :連通管
80 :密閉空間
90 :作動液
100 :取手
102 :プレート部材
104 :第一カバー部
106 :第二カバー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8