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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112945
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20220727BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220727BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220727BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220727BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/30 348Z
G09F9/30 349Z
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H05B33/14 B
H01L27/32
H05B33/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008990
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金城 拓海
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
(72)【発明者】
【氏名】軍司 雅和
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107DD52
3K107DD69
3K107DD72
3K107DD75
3K107FF15
3K107HH05
5C094AA25
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA13
5C094DA14
5C094EA04
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表示素子の性能劣化を抑制することが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置DSPは、第1電極E1と、第1電極E1の上に配置された有機層ORと、有機層ORを覆う第2電極E2と、を備えている。有機層ORは、第1端部を有する第1層と、第1層と第2電極E2の間の第2層と、を含む。第2層は、第1端部を覆っている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置された有機層と、
前記有機層を覆う第2電極と、を備え、
前記有機層は、第1端部を有する第1層と、前記第1層と前記第2電極の間の第2層と、を含み、
前記第2層は、前記第1端部を覆っている、
表示装置。
【請求項2】
前記第2層は、第2端部を有し、
前記第1端部は、前記第2電極と接触しておらず、
前記第2端部は、前記第2電極と接触している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記有機層は、前記第2層と前記第2電極の間の第3層をさらに含み、
前記第2層は、第2端部を有し、
前記第3層は、前記第2端部を覆っている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第3層は、第3端部を有し、
前記第1端部および前記第2端部は、前記第2電極と接触しておらず、
前記第3端部は、前記第2電極と接触している、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1端部は、第1辺および第2辺を含み、
前記第2層は、前記第2辺を覆い、前記第1辺を覆っていない、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1層は、
第1濃度でドーパントが分布する第1領域と、
前記第1領域と前記第1端部の間に位置し、前記第1濃度よりも低い第2濃度で前記ドーパントが分布する第2領域と、
を含む、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記有機層は、前記第1電極から前記第2電極に向けて積層された第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層、第1キャリアブロッキング層、発光層、第2キャリアブロッキング層、第2キャリア輸送層および第2キャリア注入層を有し、
前記第2層は、前記第1キャリア輸送層、前記第1キャリアブロッキング層、前記第2キャリアブロッキング層、前記第2キャリア輸送層および前記第2キャリア注入層のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記有機層は、
前記第1電極に接触し、第1発光層を含む複数の層により構成された第1有機層と、
前記第2電極に接触し、第2発光層を含む複数の層により構成された第2有機層と、
前記第1有機層と前記第2有機層の間の中間層と、
を有し、
前記第1層は、前記中間層を含み、
前記第2層は、前記第2有機層を構成する前記複数の層のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
第1電極と、
前記第1電極と重なる開口を有するとともに、前記第1電極の周縁部を覆うリブと、
前記開口を通じて前記第1電極に接触し、前記リブの上に端部が位置する有機層と、
前記有機層を覆う第2電極と、を備え、
前記有機層を構成する複数の層のうち少なくとも1つは、
前記開口と重なり、第1濃度でドーパントが分布する第1領域と、
前記リブの上に位置し、前記第1濃度よりも低い第2濃度で前記ドーパントが分布する第2領域と、
を含む表示装置。
【請求項10】
前記有機層は、前記第1電極から前記第2電極に向けて積層された第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層、第1キャリアブロッキング層、発光層、第2キャリアブロッキング層、第2キャリア輸送層および第2キャリア注入層を有し、
前記第1領域および前記第2領域は、前記第1キャリア注入層に含まれる、
請求項9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、一対の電極と、これら電極の間に配置された有機層とを備えている。このような有機層は、例えば真空蒸着法によって形成される。
【0003】
例えば、複数の機能層を積層した有機層を形成する場合、有機層の周縁部において機能層の端部が揃わず、表示素子の性能劣化を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-207217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、表示素子の性能劣化を抑制することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置は、第1電極と、前記第1電極の上に配置された有機層と、前記有機層を覆う第2電極と、を備えている。前記有機層は、第1端部を有する第1層と、前記第1層と前記第2電極の間の第2層と、を含む。前記第2層は、前記第1端部を覆っている。
【0007】
他の実施形態に係る表示装置は、第1電極と、前記第1電極と重なる開口を有するとともに、前記第1電極の周縁部を覆うリブと、前記開口を通じて前記第1電極に接触し、前記リブの上に端部が位置する有機層と、前記有機層を覆う第2電極と、を備えている。前記有機層を構成する複数の層のうち少なくとも1つは、前記開口と重なり、第1濃度でドーパントが分布する第1領域と、前記リブの上に位置し、前記第1濃度よりも低い第2濃度で前記ドーパントが分布する第2領域と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る表示装置の一構成例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る副画素のレイアウトの一例を示す図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る有機層に適用し得る層構成の一例を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る有機層の概略的な平面図である。
図6図6は、図5におけるVI-VI線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
図7図7は、第1実施形態に係る有機層の形成方法の一例を概略的に示す図である。
図8図8は、蒸着に関するパラメータの例を示す図である。
図9図9は、第1実施形態に係る有機層の形成方法の他の例を概略的に示す図である。
図10図10は、比較例に係る表示装置の構成を示す概略的な断面図である。
図11図11は、第1実施形態に係る有機層の端部近傍を拡大した概略的な断面図である。
図12図12は、図11に示した第1パスA1-A2における各層のエネルギー準位を示す図である。
図13図13は、図11に示した第2パスB1-B2における各層のエネルギー準位を示す図である。
図14図14は、図11に示した第3パスC1-C2における各層のエネルギー準位を示す図である。
図15図15は、第2実施形態に係る有機層の概略的な平面図である。
図16図16は、図15におけるXVI-XVI線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
図17図17は、第3実施形態に係る表示装置の概略的な断面図である。
図18図18は、第4実施形態に係る表示装置の概略的な断面図である。
図19図19は、第5実施形態に係る表示装置の概略的な断面図である。
図20図20は、第6実施形態に係る表示装置の概略的な断面図である。
図21図21は、第7実施形態に係る表示装置の概略的な断面図である。
図22図22は、第7実施形態に係る有機層の形成方法の一例を概略的に示す図である。
図23図23は、第8実施形態に係る副画素と有機層の一例を示す図である。
図24図24は、第8実施形態の効果の一例を説明するための図である。
図25図25は、第9実施形態に係る表示装置の概略的な断面図である。
図26図26は、第9実施形態に係る有機層が備える各層のエネルギー準位を示す図である。
図27図27は、第10実施形態に係る表示装置の概略的な断面図である。
図28図28は、第10実施形態に係る第1キャリア注入層の概略的な平面図である。
図29図29は、第10実施形態に係る第1キャリア注入層の形成方法の一例を示す図である。
図30図30は、第10実施形態に係る第1領域および第2領域の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向と称し、Y軸に沿った方向を第2方向と称し、Z軸に沿った方向を第3方向と称する。X軸およびY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸およびZ軸によって規定される面をX-Z平面と称する。X-Y平面を見ることを平面視という。
【0011】
本実施形態に係る表示装置DSPは、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表示装置DSPの一構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基材10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの外側の周辺領域SAとを有している。基材10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを備えている。一例では、画素PXは、赤色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および青色の副画素SP3を備えている。なお、画素PXは、上記の3色の副画素の他に、白色などの他の色の副画素を加えた4個以上の副画素を備えてもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20とを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2において、ゲート電極は走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。
【0016】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)である。例えば、副画素SP1は赤波長に対応した光を出射する表示素子を備え、副画素SP2は緑波長に対応した光を出射する表示素子を備え、副画素SP3は青波長に対応した光を出射する表示素子を備えている。表示素子20の構成については後述する。
【0017】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。ここでは、4個の画素PXに着目する。それぞれの画素PXにおいて、副画素SP1,SP2,SP3はこの順で第1方向Xに並んでいる。すなわち、表示領域DAにおいて、第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP1により構成される列と、第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP2により構成される列と、第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP3により構成される列とが、第1方向Xにおいて交互に配置されている。
【0018】
副画素SP1,SP2,SP3の境界には、リブ14が配置されている。図2の例において、リブ14は、第1方向Xに隣り合う副画素の間に位置する部分と、第2方向Yに隣り合う副画素の間に位置する部分とを有した格子状である。リブ14は、副画素SP1,SP2,SP3のそれぞれにおいて開口OPを形成する。
【0019】
なお、図2に示した副画素SP1,SP2,SP3の外形は、例えば表示素子20の発光領域の外形に相当するが、簡略化して示したものであり、必ずしも実際の形状を反映したものとは限らない。
【0020】
図3は、図2のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。図3においては、各副画素SP1,SP2,SP3に配置される素子として駆動トランジスタ3および表示素子20を示し、その他の素子の図示を省略している。
【0021】
表示装置DSPは、上述の基材10と、絶縁層11,12,13と、上述のリブ14と、封止層15とを備えている。絶縁層11,12,13は、基材10の上において第3方向Zに積層されている。例えば、絶縁層11,12は無機材料で形成され、絶縁層13、リブ14および封止層15は有機材料で形成されている。
【0022】
駆動トランジスタ3は、半導体層30と、電極31,32,33とを備えている。電極31は、ゲート電極に相当する。電極32,33の一方はソース電極に相当し、他方はドレイン電極に相当する。半導体層30は、基材10と絶縁層11の間に配置されている。電極31は、絶縁層11,12の間に配置されている。電極32,33は、絶縁層12,13の間に配置され、絶縁層11,12を貫通するコンタクトホールを通じて半導体層30に接触している。
【0023】
表示素子20は、第1電極E1と、有機層ORと、第2電極E2とを備えている。第1電極E1は、副画素SP毎あるいは表示素子20毎に配置された電極であり、画素電極、下部電極またはアノードと称される場合がある。第2電極E2は、複数の副画素SPまたは複数の表示素子20に対して共通に配置された電極であり、共通電極、上部電極またはカソードと称される場合がある。
【0024】
リブ14は、絶縁層13の上に配置されている。第1電極E1は、絶縁層13の上に配置され、開口OPと重なっている。第1電極E1の周縁部は、リブ14により覆われている。第1電極E1は、絶縁層13を貫通するコンタクトホールCHを通じて電極33と電気的に接続されている。例えば、第1電極E1は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成されている。第1電極E1は、銀、アルミニウムなどの金属材料によって形成された金属電極(反射電極)であってもよい。また、第1電極E1は、透明電極および金属電極の積層体であってもよい。例えば、第1電極E1は、透明電極、金属電極および透明電極の順に積層された積層体として構成されてもよいし、3層以上の積層体として構成されてもよい。
【0025】
有機層ORは、リブ14の上に配置され、開口OPを通じて第1電極E1に接触している。有機層ORの周縁部は、リブ14の上に位置している。
【0026】
第2電極E2は、有機層ORを覆っている。図3の例においては、第2電極E2が副画素SP1,SP2,SP3にわたり連続的に設けられている。第2電極E2は、例えばITOやIZOなどの透明導電材料によって形成されている。封止層15は、第2電極E2の上に配置されている。封止層15は、例えば絶縁層11,12,13やリブ14よりも厚く形成され、有機層ORを水分などから保護するとともに、リブ14により生じる凹凸を平坦化している。
【0027】
図4は、有機層ORに適用し得る層構成の一例を示す断面図である。例えば、有機層ORは、第1電極E1から第2電極E2に向けて順に積層された第1キャリア注入層51、第1キャリア輸送層52、第1キャリアブロッキング層53、発光層54(EML)、第2キャリアブロッキング層55、第2キャリア輸送層56および第2キャリア注入層57を備えている。
【0028】
本実施形態においては、第1電極E1がアノードであり、第2電極E2がカソードである場合を想定する。例えばこの場合において、第1キャリア注入層51は正孔を発生させる正孔注入層(HIL)であり、第1キャリア輸送層52は正孔を発光層54に向けて輸送する正孔輸送層(HTL)であり、第1キャリアブロッキング層53は電子の移動を遮断する電子ブロッキング層(EBL)であり、第2キャリアブロッキング層55は正孔の移動を遮断する正孔ブロッキング層(HBL)であり、第2キャリア輸送層56は電子を発光層54に向けて輸送する電子輸送層(ETL)であり、第2キャリア注入層57は電子を発生させる電子注入層(EIL)である。
【0029】
図5は、有機層ORの概略的な平面図である。図6は、図5におけるVI-VI線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。図5においては、副画素SP(表示素子20)の第1方向Xにおける中心線CLよりも左側の領域に有機層ORを平面視した形状を示し、中心線CLよりも右側の領域に有機層ORの各層51~57および開口OPの外形を示している。
【0030】
第1キャリア注入層51は端部S1を有し、第1キャリア輸送層52は端部S2を有し、第1キャリアブロッキング層53は端部S3を有し、発光層54は端部S4を有し、第2キャリアブロッキング層55は端部S5を有し、第2キャリア輸送層56は端部S6を有し、第2キャリア注入層57は端部S7を有している。端部S1~S7は、例えば縁、外周または外形などと言い換えることもできる。図5の例においては、図示の簡略化のために、端部S1,S2が1本の線で表されている。同様に、端部S6,S7も1本の線で表されている。
【0031】
図5の例においては、各層51~57および開口OPが矩形である。すなわち、端部S1~S7および開口OPは、第1方向Xと平行な2つの辺と、第2方向Yと平行な2つの辺とをそれぞれ有している。
【0032】
平面視において、端部S1,S2は端部S4と端部S5の間に位置し、端部S4は端部S1,S2と端部S6,S7の間に位置し、端部S5は端部S1,S2と端部S3の間に位置し、端部S6,S7は端部S4と開口OPの間に位置している。端部S3は、有機層ORの最外周に相当する。
【0033】
他の観点からいうと、第2キャリアブロッキング層55の面積は、第1キャリア注入層51、第1キャリア輸送層52、発光層54、第2キャリア輸送層56および第2キャリア注入層57の面積よりも大きい。さらに、第1キャリアブロッキング層53の面積は、第2キャリアブロッキング層55の面積よりも大きい。
【0034】
図6に示すように、端部S1~S7は、いずれもリブ14の上に位置している。第1キャリア注入層51は、開口OPを通じて第1電極E1に接触している。第1キャリア輸送層52は、全体的に第1キャリア注入層51の上に位置している。
【0035】
第1キャリアブロッキング層53は、大部分が第1キャリア輸送層52の上に位置し、端部S3近傍の部分がリブ14に接触している。すなわち、第1キャリアブロッキング層53は、第1キャリア注入層51の端部S1と、第1キャリア輸送層52の端部S2とを覆っている。
【0036】
発光層54は、全体的に第1キャリアブロッキング層53の上に位置している。第2キャリアブロッキング層55は、大部分が発光層54の上に位置し、端部S5近傍の部分が第1キャリアブロッキング層53に接触している。すなわち、第2キャリアブロッキング層55は、発光層54の端部S4を覆っている。
【0037】
第2キャリア輸送層56は、全体的に第2キャリアブロッキング層55の上に位置している。第2キャリア注入層57は、全体的に第2キャリア輸送層56の上に位置している。
【0038】
端部S1,S2は、第1キャリアブロッキング層53により覆われているために、第2電極E2と接触していない。また、端部S4は、第2キャリアブロッキング層55により覆われているために、第2電極E2と接触していない。
【0039】
第1キャリアブロッキング層53の端部S3およびその近傍部分は、第2電極E2と接触している。第2キャリアブロッキング層55の端部S5およびその近傍部分は、第2電極E2と接触している。
【0040】
端部S6は、第2電極E2と接触している。第2キャリア注入層57は、上面および端部S7において第2電極E2と接触している。図6においては第1方向Xと第3方向Zで規定されるX-Z平面における断面を示したが、第2方向Yと第3方向Zで規定されるY-Z平面の断面も同様の構造を有している。
【0041】
続いて、表示装置DSPの製造方法の一例につき、有機層ORを形成する工程に着目して説明する。有機層ORを構成する各層は、例えば点蒸着源を用いた真空蒸着により形成することができる。
【0042】
図7は、有機層ORの形成方法の一例を概略的に示す図である。この形成方法は、第1工程P11および第2工程P12を含む。第1キャリア注入層51、第1キャリア輸送層52、発光層54、第2キャリア輸送層56および第2キャリア注入層57のように有機層ORの中で比較的小さい面積を有する層は、第1工程P11により形成される。第1キャリアブロッキング層53および第2キャリアブロッキング層55のように有機層ORの中で比較的大きい面積を有する層は、第2工程P12により形成される。
【0043】
第1工程P11および第2工程P12のそれぞれにおいて、表示装置DSPのうち有機層ORよりも下層部分が形成された基板SUBに対し、有機層ORに対応する開口を有したマスクMSKが配置されている。第1工程P11および第2工程P12にて用いられるマスクMSKは同一である。第1工程P11においては、マスクMSKの下方に配置された蒸着源DS1に対し、基板SUBが速度V1で相対的に移動する。第2工程P12においては、マスクMSKの下方に配置された蒸着源DS2に対し、基板SUBが速度V2で相対的に移動する。
【0044】
第2工程P12においてマスクMSKの開口を通じて基板SUBに蒸着源DS2からの分子が到達する範囲は、第1工程P11においてマスクMSKの開口を通じて基板SUBに蒸着源DS1からの分子が到達する範囲よりも大きい。これにより、第1工程P11および第2工程P12においてそれぞれ形成される層の間には、面積差ΔSが生じる。第1工程P11を狭角蒸着と称し、第2工程P12を広角蒸着と称することもできる。
【0045】
このような面積差ΔSを生じさせる第1工程P11および第2工程P12は、蒸着に関する種々のパラメータを調整することにより実現できる。パラメータの一例としては、例えば基板SUBと蒸着源DS1,DS2との間の距離d1、基板SUBとマスクMSKの間の距離d2、蒸着源DS1,DS2に設けられる孔の大きさ、速度V1,V2、基板SUBの垂直方向に対する蒸着源の角度θ、蒸着源DS1,DS2それぞれの数、蒸着源DS1,DS2を配置する密度などが挙げられる。
【0046】
図8は、上記パラメータの他の例(a)(b)(c)を示す図である。例(a)(b)(c)においてはいずれも3つの蒸着源DSが示されており、これら蒸着源DSの角度が異なる。例(a)においては、3本の蒸着源DSは互いに平行である。例(b)においては、分子が放出される先端側において蒸着源DSの間の距離が大きくなるように各蒸着源DSが傾いている。例(c)においては、分子が放出される先端側において蒸着源DSの間の距離が小さくなるように各蒸着源DSが傾いている。
【0047】
第1工程P11および第2工程P12において、例(a)(b)(c)の蒸着源DSのように、蒸着源DS1,DS2の配置態様を変えてもよい。例えば、第1工程P11において蒸着源DS1に例(c)を適用し、第2工程P12において蒸着源DS2に例(a)(b)のいずれかを適用することにより、面積差ΔSを生じさせることが可能である。
【0048】
図9は、有機層ORの形成方法の他の例を概略的に示す図である。この形成方法は、第1工程P21および第2工程P22を含む。第1キャリア注入層51、第1キャリア輸送層52、発光層54、第2キャリア輸送層56および第2キャリア注入層57のように有機層ORの中で比較的小さい面積を有する層は、第1工程P21により形成される。第1キャリアブロッキング層53および第2キャリアブロッキング層55のように有機層ORの中で比較的大きい面積を有する層は、第2工程P22により形成される。
【0049】
第1工程P21においては、有機層ORに対応する開口を有したマスクMSK1が用いられる。第2工程P22においては、マスクMSK1の開口よりも大きい開口を有するマスクMSK2が用いられる。図9においては蒸着源を省略している。
【0050】
マスクMSK1,MSK2の開口の大きさの差に起因して、第2工程P22においては第1工程P21よりも基板SUBの広範囲に蒸着源からの分子が到達する。これにより、第1工程P11および第2工程P12においてそれぞれ形成される層の間には、面積差ΔSが生じる。
【0051】
図7および図9にて説明した形成方法によれば、いずれも面積差ΔSを有する層を形成することが可能である。また、例えば図7の形成方法において、蒸着に関するパラメータが異なる3つ以上の工程を経れば、互いに面積差を有する3つ以上の層を形成することができる。同様に、図9の形成方法において、開口の大きさが異なるマスクをそれぞれ用いる3つ以上の工程を経た場合でも、互いに面積差を有する3つ以上の層を形成することができる。このような方法を適宜に用いることにより、図5および図6に示した有機層ORを形成することが可能である。
【0052】
続いて、本実施形態が奏する効果の一例について説明する。
図10は、比較例に係る表示装置DSPaの構成を示す概略的な断面図である。この断面は、図6と同様の副画素SP(表示素子20)の断面に相当する。図10において、図6に示した要素と同一または類似する要素には同一の符号が付されている。
【0053】
表示装置DSPaにおいては、有機層ORを構成する各層51~57が上方に位置するものほど小さい。これにより、端部S1~S7のそれぞれが第2電極E2と接触している。そのため、第1電極E1と第2電極E2の間において各層51~57を順に通る本来の電流のパスとは異なり、第1電極E1から各層51~57の一部を経て第2電極E2に至るリークパスが形成され得る。リークパスは、オフリーク電流または漏電による消費電力の増加や、表示素子20の駆動性能の低下の原因となる。
【0054】
特に、単一のマスクを用いて有機層ORの各層51~57を形成する場合には、マスクの開口の縁にも各層の材料が堆積していくため、後に形成する層ほど面積が小さくなる。そのため、図10に示すように端部S1~S7のそれぞれが第2電極E2と接触する構造が形成されやすい。
【0055】
図11は、本実施形態に係る表示装置DSPにおいて有機層ORの端部近傍を拡大した概略的な断面図である。上述の通り、本実施形態においては、第1キャリア注入層51および第1キャリア輸送層52の端部S1,S2が第1キャリアブロッキング層53により覆われている。また、発光層54の端部S4が第2キャリアブロッキング層55により覆われている。
【0056】
ここで、図11における第1パスA1-A2、第2パスB1-B2および第3パスC1-C2に着目する。第1パスA1-A2は、第1電極E1、各層51~57および第2電極E2を通る。第2パスB1-B2は、第1電極E1、第1キャリア注入層51、第1キャリアブロッキング層53、第2キャリアブロッキング層55および第2電極E2を通る。第3パスC1-C2は、第1電極E1、第1キャリア注入層51、第1キャリアブロッキング層53および第2電極E2を通る。
【0057】
図12は、第1パスA1-A2における各層のエネルギー準位を示す図である。図13は、第2パスB1-B2における各層のエネルギー準位を示す図である。図14は、第3パスC1-C2における各層のエネルギー準位を示す図である。
【0058】
図12に示すように、第1パスA1-A2においては電子が第1キャリアブロッキング層53により遮蔽され、正孔が第2キャリアブロッキング層55で遮蔽される。同様に、図13に示す第2パスB1-B2においても、電子が第1キャリアブロッキング層53により遮蔽され、正孔が第2キャリアブロッキング層55で遮蔽される。したがって、第2パスB1-B2においてはリーク電流が抑制される。
【0059】
一方、図14に示す第3パスC1-C2においては、電子が第1キャリアブロッキング層53により遮蔽されるが、正孔は第2電極E2に流れ得る。この場合であっても、少なくとも電子が遮蔽されることによりリーク電流が抑制される。また、第3パスC1-C2においては、第1キャリア輸送層52が含まれないことがエネルギー障壁として作用する。
【0060】
第1パスA1-A2、第2パスB1-B2および第3パスC1-C2に限らず、本実施形態においては第1電極E1、有機層ORおよび第2電極E2を通るいずれのパスにおいても浅い最低空準位(LUMO)を有する第1キャリアブロッキング層53および深い最高被占準位(HOMO)を有する第2キャリアブロッキング層55の少なくとも一方が存在する。これにより、有効的なリーク対策が可能となる。
以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0061】
以下に、表示装置DSPに適用し得る他の例として、第2乃至第10実施形態を開示する。各実施形態において言及しない構成については第1実施形態と同様の構成を適用できる。第1実施形態にて開示した要素と同一または類似する要素には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0062】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態に係る有機層ORの概略的な平面図である。図16は、図15におけるXVI-XVI線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。図15においては、図5と同様に、副画素SP(表示素子20)の第1方向Xにおける中心線CLよりも左側の領域に有機層ORを平面視した形状を示し、中心線CLよりも右側の領域に有機層ORの各層51~57および開口OPの外形を示している。
【0063】
図15に示す有機層ORは、第2キャリアブロッキング層55の面積が第1キャリアブロッキング層53の面積よりも大きい点で図5に示す有機層ORと相違する。平面視において、端部S1,S2は端部S3と端部S4の間に位置し、端部S3は端部S1,S2と端部S5の間に位置し、端部S4は端部S1,S2と端部S6,S7の間に位置し、端部S6,S7は端部S4と開口OPの間に位置している。端部S5は、有機層ORの最外周に相当する。
【0064】
図16に示すように、第2キャリアブロッキング層55は、大部分が発光層54の上に位置し、端部S5近傍の部分が第1キャリアブロッキング層53およびリブ14に接触している。すなわち、第2キャリアブロッキング層55は、発光層54の端部S4および第1キャリアブロッキング層53の端部S3を覆っている。端部S1~S4は、第2電極E2と接触していない。第2キャリアブロッキング層55のうち端部S5とその近傍の部分は、第2電極E2と接触している。図16においてはX-Z平面における断面を示したが、Y-Z平面の断面も同様の構造を有している。有機層ORの形成にあたっては、例えば第1実施形態にて開示した形成方法を適宜に利用できる。
【0065】
本実施形態の構成であれば、第1電極E1と第2電極E2の間のパスは、有機層ORのいずれの位置においても第1キャリアブロッキング層53および第2キャリアブロッキング層55を通る。したがって、リーク電流をより効果的に抑制することができる。
【0066】
[第3実施形態]
図17は、第3実施形態に係る表示装置DSPの概略的な断面図である。図17の例においては、第1キャリア輸送層52が第1キャリア注入層51の端部S1を覆い、第1キャリアブロッキング層53が第1キャリア輸送層52の端部S2を覆い、発光層54が第1キャリアブロッキング層53の端部S3を覆い、第2キャリアブロッキング層55が発光層54の端部S4を覆い、第2キャリア輸送層56が第2キャリアブロッキング層55の端部S5を覆い、第2キャリア注入層57が第2キャリア輸送層56の端部S6を覆っている。各層51~57において、端部S1~S7近傍の部分は、リブ14に接触している。第2キャリア注入層57は全体的に第2電極E2と接触しているが、他の層51~56は第2電極E2と接触していない。
【0067】
図17においてはX-Z平面における断面を示したが、Y-Z平面の断面も同様の構造を有している。すなわち、各層51~57の面積は、第2電極E2に近い層ほど大きい。有機層ORの形成にあたっては、例えば第1実施形態にて開示した形成方法を適宜に利用できる。
【0068】
本実施形態の構成であれば、第2キャリア注入層57が第2電極E2と接触し、他の層51~56は第2電極E2と接触しない。また、第1電極E1と第2電極E2の間のパスは、有機層ORのいずれの位置においても各層51~57を全て通る。これにより、リーク電流をより効果的に抑制することができる。
【0069】
第2キャリア注入層57は、有機層ORにおいて最も上に位置する。そのため、第2キャリア注入層57を本実施形態のように拡張する場合には、その他の層51~56の端部S1~S6の全てを覆うことができる。
【0070】
なお、端部S1~S6は、図6または図16と同様の位置関係であってもよい。この場合であっても、これら端部S1~S6と第2電極E2の間に少なくとも第2キャリア注入層57が介在するため、リーク電流を抑制する効果が期待できる。
【0071】
[第4実施形態]
図18は、第4実施形態に係る表示装置DSPの概略的な断面図である。図18の例においては、第1キャリア輸送層52が第1キャリア注入層51の端部S1を覆っている。これにより、第1キャリア注入層51は第2電極E2と接触していない。
【0072】
一方で、第1キャリア輸送層52の端部S2、第1キャリアブロッキング層53の端部S3、発光層54の端部S4、第2キャリアブロッキング層55の端部S5および第2キャリア輸送層56の端部S6は、第2電極E2と接触している。
【0073】
図18においてはX-Z平面における断面を示したが、Y-Z平面の断面も同様の構造を有している。すなわち、第1キャリア輸送層52の面積は、他の層51~57の面積よりも大きい。有機層ORの形成にあたっては、例えば第1実施形態にて開示した形成方法を適宜に利用できる。
【0074】
本実施形態において、第1電極E1は、発光層54が発する光を反射する反射電極である。さらに、第1キャリア輸送層52は、光学調整層としての役割も有している。具体的には、発光層54が上方に発する光の波長と、第1電極E1により反射されて上方に向かう光の波長との関係を調整するために、第1キャリア輸送層52は、他の層51,53~57よりも大きい厚さTを有している。
【0075】
このような構成であれば、第1電極E1と第2電極E2の間のパスは、有機層ORのいずれの位置においても厚い第1キャリア輸送層52を通る。これにより、リーク電流を効果的に抑制することができる。
【0076】
[第5実施形態]
図19は、第5実施形態に係る表示装置DSPの概略的な断面図である。図19の例においては、第2キャリア輸送層56が第1キャリア注入層51の端部S1、第1キャリア輸送層52の端部S2、第1キャリアブロッキング層53の端部S3、発光層54の端部S4および第2キャリアブロッキング層55の端部S5を覆っている。第2キャリア輸送層56の端部S6は、第2キャリア注入層57によって覆われていない。第2キャリア輸送層56において端部S6とその近傍の部分は、リブ14および第2電極E2に接触している。第2キャリア輸送層56よりも下方の各層51~55は、第2電極E2と接触していない。
【0077】
図19においてはX-Z平面における断面を示したが、Y-Z平面の断面も同様の構造を有している。すなわち、第2キャリア輸送層56の面積は、他の層51~55,57の面積よりも大きい。有機層ORの形成にあたっては、例えば第1実施形態にて開示した形成方法を適宜に利用できる。
【0078】
第2キャリア注入層57としては、一般的に金属化合物の薄膜が用いられる。そのため、有機層ORにおいて最も上方に位置する第2キャリア注入層57を拡張する場合には、他の層51~56の端部S1~S6を良好に覆えない可能性がある。一方、第2キャリア輸送層56は、無機材料または有機材料により第2キャリア注入層57よりも厚く形成される。そのため、第2キャリア輸送層56は、端部S1~S5の被覆に適している。
【0079】
[第6実施形態]
第1乃至第5実施形態においては、各層51~57の端部S1~S7が有機層ORの外形全周にわたり同様の関係にある場合を想定した。しかしながら、有機層ORの外形の一部における端部S1~S7の関係と、他の一部における端部S1~S7の関係とが異なってもよい。
【0080】
図20は、第6実施形態に係る表示装置DSPの概略的な断面図であり、端部S1~S7の関係が有機層ORの外形において部分的に異なる構成の一例を示す。端部S1は第1辺S1aおよび第2辺S1bを有している。端部S2は、第1辺S2aおよび第2辺S2bを有している。端部S3は、第1辺S3aおよび第2辺S3bを有している。端部S4は、第1辺S4aおよび第2辺S4bを有している。端部S5は、第1辺S5aおよび第2辺S5bを有している。端部S6は、第1辺S6aおよび第2辺S6bを有している。端部S7は、第1辺S7aおよび第2辺S7bを有している。これらの辺は、いずれも第2方向Yと平行である。
【0081】
図20の例においては、第1辺S1a~S7aが図6に示した端部S1~S7と同様の関係を有し、第2辺S1b~S7bが図16に示した端部S1~S7と同様の関係を有している。第1辺S3aは、第2キャリアブロッキング層55で覆われていない。第2辺S3bは、第2キャリアブロッキング層55で覆われている。この例に限られず、第1辺S1a~S7aと第2辺S1b~S7bには、各実施形態にて例示した関係を選択的に適用し得る。
【0082】
図20においてはX-Z平面における断面を示したが、Y-Z平面の断面にも同様の構造を適用できる。すなわち、端部S1~S7のうち第1方向Xと平行な一対の辺のそれぞれに対し、各実施形態にて例示した関係が選択的に適用されてもよい。
【0083】
[第7実施形態]
第1乃至第6実施形態においては、有機層ORを構成する各層51~57のうち、最も下に位置する第1キャリア注入層51以外の層を拡張することにより、当該拡張した層の下方の層の端部を覆う構成を例示した。本実施形態においては、特定の層を縮小することによって当該層と第2電極E2との接触を抑制する観点から、有機層ORの構成とその形成方法を例示する。
【0084】
図21は、第7実施形態に係る表示装置DSPの概略的な断面図である。図21の例においては、発光層54が他の層51~53,55~57よりも縮小されている。発光層54の端部S4は、第2キャリアブロッキング層55により覆われており、第2電極E2と接触していない。他の層51~53,55~57の端部S1~S3,S5~S7は、第2電極E2と接触している。
【0085】
図22は、有機層ORの形成方法の一例を概略的に示す図である。この形成方法においては、表示装置DSPのうち有機層ORよりも下層部分が形成された基板SUBに対し、ポリマーマスクPMSKおよびメタルマスクMMSKを用いて各層51~57が形成される。ポリマーマスクPMSKは、基板SUBに形成されたベース層BLの上に配置され、有機層ORに対応する開口を有している。メタルマスクMMSKはポリマーマスクPMSKの開口よりも小さい開口を有しており、両マスクの開口の間には面積差ΔSが存在する。
【0086】
発光層54よりも下方の第1キャリア注入層51、第1キャリア輸送層52および第1キャリアブロッキング層53は、メタルマスクMMSKが配置されていない状態において、蒸着によりポリマーマスクPMSKの開口を通じて形成される。続いて、メタルマスクMMSKがポリマーマスクPMSKの上に配置される。発光層54は、蒸着によりメタルマスクMMSKの開口を通じて形成される。その後、メタルマスクMMSKが取り除かれる。発光層54よりも上方の第2キャリアブロッキング層55、第2キャリア輸送層56および第2キャリア注入層57は、蒸着によりポリマーマスクPMSKの開口を通じて形成される。このような方法で各層51~57を形成すれば、発光層54を他の層51~53,55~57よりも縮小することができる。
【0087】
なお、図21に示す有機層ORは、図7に示した方法によっても形成できる。すなわち、第1工程P11により発光層54を形成し、第2工程P12により他の層51~53,55~57を形成してもよい。
【0088】
また、図21に示す有機層ORは、図9に示した方法によっても形成できる。すなわち、第1工程P21により発光層54を形成し、第2工程P22により他の層51~53,55~57を形成してもよい。
【0089】
[第8実施形態]
第1実施形態においては、図5に示したように各副画素SPが矩形の有機層ORを有する場合を想定した。本実施形態においては、表示領域DAに配置される有機層ORの他の例を開示する。
【0090】
図23は、本実施形態に係る副画素SPと有機層ORの一例を示す図である。図2の例と同じく、表示領域において、複数の副画素SP1が第2方向Yに並び、複数の副画素SP2が第2方向Yに並び、複数の副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。
【0091】
さらに、周辺領域SAにダミー副画素DP1,DP2,DP3が配置されている。ダミー副画素DP1,DP2,DP3は、それぞれ第2方向Yにおいて表示領域DAの最端に配置された副画素SP1,SP2,SP3と第2方向Yに並んでいる。ダミー副画素DP1,DP2,DP3は、画像表示に寄与しない画素である。例えば、ダミー副画素DP1,DP2,DP3は、第1電極E1を備え、画素回路1を備えていない。あるいは、ダミー副画素DP1,DP2,DP3は、第1電極E1および画素回路1を備えるが、これら第1電極E1および画素回路1が接続されていない。
【0092】
図23の例においては、有機層ORが複数の副画素SPにわたって連続的に配置されている。具体的には、赤色の光を放つ有機層OR1が第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP1とダミー副画素DP1にわたって配置され、緑色の光を放つ有機層OR2が第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP2とダミー副画素DP2にわたって配置され、青色の光を放つ有機層OR3が第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP3とダミー副画素DP3にわたって配置されている。有機層OR1,OR2,OR3は、第1方向Xにおいて間隔を空けて並んでいる。
【0093】
有機層OR1,OR2,OR3は、第2方向Yと平行な一対の辺Sa,Sbと、第1方向Xと平行な一対の辺Sc,Sdとを有している。辺Sa,Sbは、表示領域DAおよび周辺領域SAの双方に位置している。辺Sc,Sdは、周辺領域SAに位置し、表示領域DAには位置していない。
【0094】
図24は、本実施形態の効果の一例を説明するための図である。図24においては、表示装置DSPのうち有機層OR(OR1,OR2,OR3)よりも下層部分が形成された基板SUBに対し、リニア蒸着源LDSを用いて有機層ORを形成する工程を示している。蒸着に用いられるマスクの図示は省略している。
【0095】
リニア蒸着源LDSは、第2方向Yに並ぶ複数の孔を有し、これらの孔から各層51~57を形成するための分子が放出される。基板SUBは掃引方向Dに移動し、これにより基板SUBの全体がリニア蒸着源LDSから放出される分子に晒される。掃引方向Dは、第1方向Xと平行である。
【0096】
例えば図7に示した第1工程P11と第2工程P12を図24の態様で実施し、図5と同様の島状の有機層ORを形成する場合、第1工程P11と第2工程P12で形成される層の外形の差は、主に掃引方向Dと交わる辺、すなわち第2方向Yと平行な一対の辺に現れる。掃引方向Dと平行な辺、すなわち第1方向Xと平行な一対の辺に関しては、位置の差が十分に表れない可能性がある。
【0097】
この点に関し、図23に示した構成であれば、有機層ORが表示領域DAにおいては第1方向Xと平行な辺Sc,Sdを有していない。第2方向Yと平行な辺Sa,Sbに関しては、例えば図6図16および図17図21に示したように、各層51~57の端部S1~S7の位置が異なる形状を好適に実現することができる。
【0098】
辺Sc,Sdは周辺領域SAに位置しており、しかも辺Sc,Sdと表示領域DAの間にはダミー副画素DP1,DP2,DP3が介在する。これにより、辺Sc,Sdにおいて有機層ORの各層51~57の形状不良が生じても、その影響が副画素SP1,SP2,SP3に及びにくい。
【0099】
[第9実施形態]
有機層ORの層構成は、図4に示したものに限られない。有機層ORにおいて、各層51~57のいずれかが省略されてもよい。また、有機層ORは、各層51~57に加え、さらに他の機能を有する層を備えてもよい。さらに、有機層ORは、2つの発光層を含むタンデム構造を有してもよい。
【0100】
図25は、タンデム構造の有機層ORを備えた表示装置DSPの概略的な断面図である。有機層ORは、第1電極E1に接触する第1有機層100と、第2電極E2に接触する第2有機層200と、第1有機層100と第2有機層200の間に位置する中間層300とを備えている。
【0101】
第1有機層100の端部S100、第2有機層200の端部S200および中間層300の端部S300は、いずれもリブ14の上に位置している。図25の例においては、端部S300が第2有機層200で覆われている。これにより、中間層300は、第2電極E2と接触していない。
【0102】
図26は、本実施形態に係る有機層ORが備える各層のエネルギー準位を示す図である。第1有機層100は、第1キャリア注入層101と、第1キャリア輸送層102と、第1キャリアブロッキング層103と、第1発光層104(EML)と、第2キャリアブロッキング層105と、第2キャリア輸送層106とを備えている。第2有機層200は、第3キャリア輸送層201と、第3キャリアブロッキング層202と、第2発光層203(EML)と、第4キャリアブロッキング層204と、第4キャリア輸送層205と、第2キャリア注入層206とを備えている。中間層300は、第2キャリア輸送層106と第3キャリア輸送層201の間に位置している。
【0103】
本実施形態においては、第1電極E1がアノードであり、第2電極E2がカソードである場合を想定する。例えばこの場合において、第1キャリア注入層101は正孔注入層(HIL)であり、第1キャリア輸送層102および第3キャリア輸送層201は正孔輸送層(HTL)であり、第1キャリアブロッキング層103および第3キャリアブロッキング層202は電子ブロッキング層(EBL)であり、第2キャリアブロッキング層105および第4キャリアブロッキング層204は正孔ブロッキング層(HBL)であり、第2キャリア輸送層106および第4キャリア輸送層205は電子輸送層(ETL)であり、第2キャリア注入層206は電子注入層(EIL)である。また、中間層300は、例えば電圧に応じて電子および正孔を発生させる電荷発生層(CGL)である。
【0104】
電荷発生層である中間層300は、例えば金属材料で形成され、第2電極E2と接触した場合にはリーク電流を生じやすい。さらに、中間層300を経由したリーク電流が発生した場合、第1発光層104および第2発光層203のいずれかのみが発光し得る。そのため、図25に示したように中間層300の端部S300が第2有機層200を構成する層のいずれかにより覆われることが好ましい。
【0105】
端部S300を覆う層は、例えば第3キャリア輸送層201、第3キャリアブロッキング層202、第4キャリアブロッキング層204、第4キャリア輸送層205および第2キャリア注入層206のうちのいずれか1つ、複数、または全てである。さらに、第1有機層100および第2有機層200のいずれか一方または双方に対し、上述の各実施形態にて例示した有機層ORと同様の構成を適用してもよい。
【0106】
なお、有機層ORは、発光層をそれぞれ含む3つ以上の有機層と、これら有機層の間に配置された中間層とを備えてもよい。この場合においても、各中間層の端部を上方の層で覆うことにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0107】
[第10実施形態]
図27は、第10実施形態に係る表示装置DSPの概略的な断面図である。図27の例においては、有機層ORを構成する各層51~57が図6の例と同様の形状を有している。
【0108】
第1キャリア注入層51は、第1領域51aと、第1領域51aと端部S1の間に位置する第2領域51bとを有している。第1領域51aにおいては、ホスト(主材料)に対し第1濃度でドーパント(例えばp型ドーパント)が分布している。第2領域51bにおいては、ホストに対し第1濃度よりも低い第2濃度でドーパントが分布している。第1領域51aは、開口OPと重なり、第1電極E1と接触している。第2領域51bは、リブ14の上に位置している。
【0109】
図28は、第1キャリア注入層51の概略的な平面図である。ここでは、図5の例と同じく第1キャリア注入層51が矩形である場合を想定する。図28の例において、第1領域51aは、例えば開口OPの全体と重なる矩形である。また、第2領域51bは、第1領域51aを囲う枠状である。
【0110】
図29は、第1キャリア注入層51の形成方法の一例を示す図である。表示装置DSPのうち有機層ORよりも下層部分が形成された基板SUBに対し、有機層ORに対応する開口を有したマスクMSKが配置されている。
【0111】
第1キャリア注入層51のホストは、蒸着源DS1により形成される。このホストに対し、蒸着源DS2によりドーパントがドープされる。図7に示した第1工程P11および第2工程P12と同様に、マスクMSKの開口を通じて基板SUBに蒸着源DS2からの分子が到達する範囲は、当該開口を通じて基板SUBに蒸着源DS1からの分子が到達する範囲よりも大きい。これにより、第1領域51aおよびその周囲の第2領域51bを有する第1キャリア注入層51を形成することができる。
【0112】
第2領域51bのドーパントの濃度は第1領域51aのドーパントの濃度よりも低いため、第2領域51bは第1領域51aに比べ高い抵抗を有している。そのため、本実施形態の構成であれば、第1キャリア注入層51のうち端部S1やその近傍の部分を通って第2電極E2に至るパスのリーク電流が抑制される。
【0113】
一般的にドーパント材料は活性であり、雰囲気により変質することが懸念される。このような変質は、端部S1の近傍において生じやすい。本実施形態の構成であれば、第2領域51bにおけるドーパントの濃度が低いため、このような変質を抑制できる。
【0114】
なお、本実施形態においては各層51~57が図6の例と同様の形状を有している場合において、第1キャリア注入層51に第1領域51aおよび第2領域51bを形成する例を示した。第1領域および第2領域は必ずしも第1キャリア注入層51に形成される必要はなく、その他の層52~57のいずれかに形成されてもよい。また、第1領域および第2領域は、各層51~57のうち2つ以上の層に形成されてもよい。また、第1領域および第2領域は、図10図16図21または図25に示した形状の有機層ORに対して設けられてもよい。
【0115】
各層51~57には、第1領域と第2領域の2つだけでなく、ドーパントの濃度が異なるさらに多くの領域が設けられてもよい。この場合においては、例えば層の端部に近い領域ほどドーパントの濃度を低くすればよい。
【0116】
第1領域および第2領域の形状は、図28に示したものに限られない。図30は、第1領域および第2領域の他の例を示す平面図である。この図においては、図23と同様の副画素SP1,SP2,SP3、ダミー副画素DP1,DP2,DP3および有機層OR1,OR2,OR3が配置されている。
【0117】
有機層OR1,OR2,OR3の第1キャリア注入層51は、第1領域51aと第2領域51bをそれぞれ有している。有機層OR1,OR2,OR3のそれぞれにおいて、第2領域51bは、辺Sa,Sb,Sc,Sdに沿って環状に形成されている。なお、有機層OR1,OR2,OR3のうち第1キャリア注入層51以外の層に第1領域と第2領域が形成されてもよい。
【0118】
図30に示す有機層OR1,OR2,OR3は、図24に示したようにリニア蒸着源を用いて形成するこができる。このとき、ホスト用のリニア蒸着源とドーパント用のリニア蒸着源を図29と同様に使い分けることで、有機層OR1,OR2,OR3の特定の層に第1領域と第2領域を形成することが可能である。
【0119】
以上の第1乃至第10実施形態においては、第1端部を有する第1層と、第1層と第2電極E2の間に位置し第2端部を有する第2層とを有機層ORが含み、第2層が第1端部を覆う構成を開示した。第1層は、有機層ORを構成する層のうち最上層を除くいずれかであり、例えば第1実施形態においては第1キャリア注入層51、第1キャリア輸送層52または発光層54である。第2層は、有機層ORを構成する層のうち最下層を除くいずれかであり、例えば第1実施形態においては第1キャリアブロッキング層53または第2キャリアブロッキング層55である。
【0120】
また、第2実施形態(図16)および第3実施形態(図17)においては、第1層および第2層に加え、第2層と第2電極E2の間に位置し第3端部を有する第3層を有機層ORがさらに備え、この第3層が第2端部を覆う構成を開示した。例えば第2実施形態においては、第1層が第1キャリア注入層51または第1キャリア輸送層52であり、第2層が第1キャリアブロッキング層53であり、第3層が第2キャリアブロッキング層55である。
【0121】
各実施形態において開示した有機層ORの層構成は一例である。有機層ORの層構成が各実施形態と異なる場合であっても、第1層および第2層、さらには付加的に第3層を設けることにより、各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0122】
各実施形態においては、第1電極E1がアノードに相当し、第2電極E2がカソードに相当する場合を例示した。しかしながら、第2電極E2がアノードに相当し、第1電極E1がカソードに相当する場合であっても、各実施形態にて開示した有機層ORと同様の構成を適用することにより、各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0124】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0125】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0126】
DSP…表示装置、PX…画素、SP…副画素、20…表示素子、E1…第1電極、E2…第2電極、OR…有機層、51…第1キャリア注入層(HIL)、52…第1キャリア輸送層(HTL)、53…第1キャリアブロッキング層(EBL)、54…発光層(EML)、55…第2キャリアブロッキング層(HBL)、56…第2キャリア輸送層(ETL)、57…第2キャリア注入層(EIL)
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