(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112959
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】燃料電池スタック及び燃料電池スタックの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2404 20160101AFI20220727BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20220727BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20220727BHJP
【FI】
H01M8/2404
H01M8/2465
H01M8/2483
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009015
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】明本 斉
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H126AA26
5H126AA28
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックの組付け性の低下を抑制しつつ、集電体とカバープレートとの間の絶縁性を確保すること。
【解決手段】燃料電池スタック10は、セルスタック11と、集電体としての第1集電体30と、第2集電体と、第1カバープレート50と、第2カバープレート60と、締結部材70と、インシュレータ80と、スタックマニホールド90と、スタック位置決め部100と、を備える。スタック位置決め部100は、セル位置決め部21と、第1集電体位置決め部33と、画定部52と、インシュレータ位置決め部82とが互いに対応した位置に設けられることで構成される。スタック位置決め部100に治具をあてがうことにより、適切な位置関係で積層を行うことができる。したがって、燃料電池スタック10の組付け性の低下を抑制しつつ、第1集電体30と第1カバープレート50との間の絶縁性を確保することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを積層したセルスタックと、
前記燃料電池セルを積層した積層方向の一端に設けられたカバープレートと、
前記カバープレートと前記セルスタックとの間に設けられた集電体と、
前記集電体と前記カバープレートとの間に設けられたインシュレータと、を備え、
前記燃料電池セルは、前記燃料電池セル同士の位置決めを行うために設けられたセル位置決め部を備え、
前記集電体は、前記セル位置決め部に対応する位置に設けられた集電体位置決め部を備え、
前記インシュレータは、前記集電体位置決め部に対応する位置に設けられたインシュレータ位置決め部を備え、
前記カバープレートは、前記インシュレータ位置決め部に対応する位置に設けられており、前記カバープレートを前記積層方向に貫通する貫通部を備え、
前記インシュレータ位置決め部は、前記積層方向から前記カバープレートを平面視したときに前記貫通部の内部に含まれている、燃料電池スタック。
【請求項2】
前記一端を第1端とした場合、前記積層方向の第2端に設けられたスタックマニホールドを備え、
前記スタックマニホールドは、前記セル位置決め部に対応する位置に設けられたマニホールド位置決め部を備える、請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記燃料電池セルは、第1辺部と、前記積層方向から前記燃料電池セルを平面視したときに前記第1辺部と向かい合う第2辺部と、を有し、
前記セル位置決め部は、前記第1辺部及び前記第2辺部にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられ、
前記第1辺部に設けられた前記セル位置決め部の1つは、前記第2辺部に設けられた前記セル位置決め部の1つに対して前記第1辺部の延びる方向に離間している、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記セル位置決め部は、前記セルスタックの前記積層方向に延びる面に設けられている、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記セル位置決め部は、前記集電体位置決め部と連続して設けられ、
前記集電体位置決め部は、前記インシュレータ位置決め部と連続して設けられる、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
複数の燃料電池セルを積層したセルスタックと、
前記燃料電池セルを積層した積層方向の第1端に設けられた第1カバープレートと、
前記燃料電池セルを積層した積層方向の第2端に設けられた第2カバープレートと、
前記第1カバープレートと前記セルスタックとの間に設けられた集電体と、
前記集電体と前記第1カバープレートとの間に設けられたインシュレータと、を備え、
前記燃料電池セルは、前記燃料電池セル同士の位置決めを行うために設けられたセル位置決め部を備え、
前記集電体は、前記セル位置決め部に対応する位置に設けられた集電体位置決め部を備え、
前記インシュレータは、前記集電体位置決め部に対応する位置に設けられたインシュレータ位置決め部を備え、
前記第1カバープレートは、前記インシュレータ位置決め部に対応する位置に設けられており、前記第1カバープレートを前記積層方向に貫通する貫通部を備え、
前記インシュレータ位置決め部は、前記積層方向から前記第1カバープレートを平面視したときに前記貫通部の内部に含まれている、燃料電池スタックの製造方法であって、
積層工程と、位置決め工程と、締結工程と、を含み、
前記積層工程では、前記燃料電池セル、前記第1カバープレート、前記第2カバープレート、前記集電体、及び前記インシュレータを積層し、
前記位置決め工程では、前記セル位置決め部と、前記集電体位置決め部と、前記インシュレータ位置決め部と、前記第1カバープレートの厚み方向に延びる前記第1カバープレートの周面と、に治具をあてがうことにより、前記燃料電池セル、前記第1カバープレート、前記第2カバープレート、前記集電体、及び前記インシュレータを互いに位置決めし、
前記締結工程では、前記治具があてがわれた状態で前記第1カバープレートと前記第2カバープレートとが前記積層方向に近づくように前記第1カバープレートと前記第2カバープレートとを締結する、燃料電池スタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック及び燃料電池スタックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックとしては、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを積層したセルスタックと、カバープレートと、集電体と、インシュレータと、を備える。カバープレートは、燃料電池を積層した積層方向の一端に設けられている。集電体は、カバープレートとセルスタックとの間に設けられている。インシュレータは、集電体とカバープレートとの間に設けられている。これにより、インシュレータは、集電体とカバープレートとの間を絶縁し、セルスタックの電力が集電体からカバープレートに漏れることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池スタックにおいて、燃料電池スタックの組付け性の低下を抑制しつつ、集電体とカバープレートとの間の絶縁性を確保できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを積層したセルスタックと、前記燃料電池セルを積層した積層方向の一端に設けられたカバープレートと、前記カバープレートと前記セルスタックとの間に設けられた集電体と、前記集電体と前記カバープレートとの間に設けられたインシュレータと、を備え、前記燃料電池セルは、前記燃料電池セル同士の位置決めを行うために設けられたセル位置決め部を備え、前記集電体は、前記セル位置決め部に対応する位置に設けられた集電体位置決め部を備え、前記インシュレータは、前記集電体位置決め部に対応する位置に設けられたインシュレータ位置決め部を備え、前記カバープレートは、前記インシュレータ位置決め部に対応する位置に設けられており、前記カバープレートを前記積層方向に貫通する貫通部を備え、前記インシュレータ位置決め部は、前記積層方向から前記カバープレートを平面視したときに前記貫通部の内部に含まれている。
【0006】
これによれば、積層方向とは垂直なインシュレータの面が、インシュレータ位置決め部と貫通部との間に介在する。そして、当該インシュレータの面が、集電体とカバープレートとの間の絶縁距離を確保する。また、セル位置決め部、集電体位置決め部、貫通部及びインシュレータ位置決め部が、互いに対応した位置に設けられるため、互いの位置関係を決めつつ、燃料電池スタックが組付けられる。したがって、燃料電池スタックの組付け性の低下を抑制しつつ、集電体とカバープレートとの間の絶縁距離を確保することができる。
【0007】
上記燃料電池スタックの、前記一端を第1端とした場合、前記積層方向の第2端に設けられたスタックマニホールドを備え、前記スタックマニホールドは、前記セル位置決め部に対応する位置に設けられたマニホールド位置決め部を備えていてもよい。
【0008】
これによれば、セル位置決め部及びスタックマニホールド位置決め部に治具をあてがうことにより、燃料電池セル及びスタックマニホールドの位置を決定される。したがって、燃料電池スタックの組付け性を向上することができる。
【0009】
上記燃料電池スタックについて、前記燃料電池セルは、第1辺部と、前記積層方向から前記燃料電池セルを平面視したときに前記第1辺部と向かい合う第2辺部と、を有し、前記セル位置決め部は、前記第1辺部及び前記第2辺部にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられ、前記第1辺部に設けられた前記セル位置決め部の1つは、前記第2辺部に設けられた前記セル位置決め部の1つに対して前記第1辺部の延びる方向に離間していてもよい。
【0010】
これによれば、第1辺部に設けられたセル位置決め部と第2辺部に設けられたセル位置決め部により、燃料電池セルの第1辺部と第2辺部の向かい合う方向に垂直な面での鏡面対称性が破られる。そのため、セル位置決め部から燃料電池セルの裏表の区別をすることができる。したがって、燃料電池セルの裏表が誤った状態で積層されることを抑制することができる。
【0011】
上記燃料電池スタックについて、前記セル位置決め部は、前記セルスタックの前記積層方向に延びる面に設けられていてもよい。
これによれば、セル位置決め部に治具をあてがう際に、併せて、積層方向に延びるセルスタックの面に治具をあてがうことができる。したがって、治具の構成が簡易となり、燃料電池スタックの組付け性をさらに向上することができる。
【0012】
上記燃料電池スタックについて、前記セル位置決め部は、前記集電体位置決め部と連続して設けられ、前記集電体位置決め部は、前記インシュレータ位置決め部と連続して設けられていてもよい。
【0013】
これによれば、1つの連続した治具によって、各位置決め部の位置決めを行うことができる。したがって、治具の構成がより簡易となり、燃料電池スタックの組付け性をさらに向上することができる。
【0014】
上記燃料電池スタックの製造方法は、複数の燃料電池セルを積層したセルスタックと、前記燃料電池セルを積層した積層方向の第1端に設けられた第1カバープレートと、前記燃料電池セルを積層した積層方向の第2端に設けられた第2カバープレートと、前記第1カバープレートと前記セルスタックとの間に設けられた集電体と、前記集電体と前記第1カバープレートとの間に設けられたインシュレータと、を備え、前記燃料電池セルは、前記燃料電池セル同士の位置決めを行うために設けられたセル位置決め部を備え、前記集電体は、前記セル位置決め部に対応する位置に設けられた集電体位置決め部を備え、前記インシュレータは、前記集電体位置決め部に対応する位置に設けられたインシュレータ位置決め部を備え、前記第1カバープレートは、前記インシュレータ位置決め部に対応する位置に設けられており、前記第1カバープレートを前記積層方向に貫通する貫通部を備え、前記インシュレータ位置決め部は、前記積層方向から前記第1カバープレートを平面視したときに前記貫通部の内部に含まれている、燃料電池スタックの製造方法であって、積層工程と、位置決め工程と、締結工程と、を含み、前記積層工程では、前記燃料電池セル、前記第1カバープレート、前記第2カバープレート、前記集電体、及び前記インシュレータを積層し、前記位置決め工程では、前記セル位置決め部と、前記集電体位置決め部と、前記インシュレータ位置決め部と、前記第1カバープレートの厚み方向に延びる前記第1カバープレートの周面と、に治具をあてがうことにより、前記燃料電池セル、前記第1カバープレート、前記第2カバープレート、前記集電体、及び前記インシュレータを互いに位置決めし、前記締結工程では、前記治具があてがわれた状態で前記第1カバープレートと前記第2カバープレートとが前記積層方向に近づくように前記第1カバープレートと前記第2カバープレートとを締結するものである。
【0015】
これによれば、締結工程において、治具が積層方向を中心とする各機能部材の回転運動を規制する。そのため、第1カバープレートとインシュレータとの間を別途固定することなく締結を行うことができる。したがって、燃料電池スタックの組付け性が向上し、燃料電池スタックの製造工数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃料電池スタックの組付け性の低下を抑制しつつ、集電体とカバープレートとの間の絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】第1カバープレートから平面視した場合における貫通部近傍の拡大正面図。
【
図5】複数の貫通部の間の位置関係を説明するための図。
【
図6】積層工程を説明するための燃料電池スタックの分解斜視図。
【
図7】位置決め工程を説明するための燃料電池スタックの全体斜視図。
【
図8】締結工程を説明するための燃料電池スタックの全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、燃料電池スタック及び燃料電池スタックの製造方法の一実施形態について
図1~
図8に従って説明する。
<燃料電池スタックについて>
図1~
図3に示すように、燃料電池スタック10は、セルスタック11と、集電体としての第1集電体30と、第2集電体40と、カバープレートとしての第1カバープレート50と、第2カバープレート60と、締結部材70と、インシュレータ80と、スタックマニホールド90と、スタック位置決め部100と、を備える。燃料電池スタック10は、例えば、水素及び酸素を燃料として駆動する燃料電池車両の動力源として用いられる。
【0019】
セルスタック11は、複数の燃料電池セル20を積層した積層体であり、セルスタック位置決め部14を備える。以下では、燃料電池セル20の積層された方向を「積層方向Z」と称することがある。また、積層方向Zからの部材の平面視を単に「平面視」と称することがある。
【0020】
燃料電池セル20は、水素及び酸素の化学反応のエネルギーを電力として取り出す蓄電モジュールである。燃料電池セル20は、電解質膜・電極接合体の両面にガス拡散層及び流路部材セパレータを積層することで構成されている。なお、電解質膜・電極接合体とは、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示すイオン交換膜を、カソード電極とアノード電極との間に設けたものである。燃料電池セル20は、長方形の板状部材である。燃料電池セル20は、セル位置決め部21と、2つの短辺部22を備える。2つの短辺部22は、燃料電池セル20の周縁の一部を構成している。
【0021】
セル位置決め部21は、燃料電池セル20同士の位置決めを行うための構造である。本実施形態では、セル位置決め部21は、燃料電池セル20の周縁に連続する部位である。本実施形態において、セル位置決め部21は、燃料電池セル20の短辺部22に設けられている。セル位置決め部21は、第1縁21aと、第2縁21bと、第1縁21aと第2縁21bとを接続する第3縁21cと、を備える。第1縁21a及び第2縁21bは、短辺部22に接続されている。第1縁21aと第2縁21bとは、燃料電池セル20の短辺方向に互いに離間している。第1縁21a、第2縁21b及び第3縁21cは、セル位置決め空間21dを画定している。セル位置決め空間21dは、燃料電池セル20を厚み方向に貫通している。セル位置決め空間21dは、短辺部22に開口している。セル位置決め部21は、短辺部22の延びる方向において、短辺部22の途中位置に設けられている。よって、短辺部22は、セル位置決め部21によって短辺部22の延びる方向に分断されているといえる。
【0022】
セルスタック位置決め部14は、燃料電池セル20を積層することにより形成されている。セルスタック位置決め部14は、セル位置決め部21が連なることで形成された面ともいえる。セルスタック位置決め部14は、燃料電池セル20の短辺部22が連なることで構成された面に連続する面である。セルスタック位置決め部14は、セルスタック位置決め空間14aを画定している。セルスタック位置決め空間14aは、セル位置決め空間21dが連なることで形成された空間である。セルスタック位置決め空間14aは、セルスタック11を積層方向Zに貫通している。セルスタック位置決め部14は、セルスタック11の積層方向Zに延びる面15内において、積層方向Zに直線的に延びる。積層方向Zに垂直な面でのセルスタック位置決め部14の断面形状は、セル位置決め部21と同一形状となる。したがって、セル位置決め部21は、セルスタック11の積層方向Zに延びる面15に設けられている。
【0023】
第1集電体30は、燃料電池セル20が発電した電力を取り出すためのものである。第1集電体30には、種々の導体を用いることができる。第1集電体30は、第1集電部31と、第1端子32と、集電体位置決め部としての第1集電体位置決め部33と、を備える。
【0024】
第1集電部31は、長方形の板状である。第1集電部31は、2つの短辺部31aを備える。第1集電部31は、積層方向Zにおけるセルスタック11の第1端12に設けられている。第1集電部31の長辺方向は、燃料電池セル20の長辺方向と一致している。また、第1集電部31の厚み方向は、積層方向Zと一致している。第1集電部31は、平面視においてセルスタック11を内部領域に含むように配置されている。
【0025】
第1端子32は、機器に接続される端子である。第1端子32は、第1集電部31の長辺部に設けられており、平面視において当該長辺部から突出している。
第1集電体位置決め部33は、セルスタック11と第1集電体30との位置決めを行うための構造である。第1集電体位置決め部33は、第1集電部31の周縁に連続する部位である。本実施形態において、第1集電体位置決め部33は、短辺部31aに設けられている。第1集電体位置決め部33は、第1縁33aと、第2縁33bと、第1縁33aと第2縁33bとを接続する第3縁33cと、を備える。第1縁33a及び第2縁33bは、短辺部31aに接続されている。第1縁33aと第2縁33bとは、第1集電部31の短辺方向に互いに離間している。第1縁33a、第2縁33b及び第3縁33cは、第1集電体位置決め空間33dを画定している。第1集電体位置決め空間33dは、第1集電部31の厚み方向に貫通している。第1集電体位置決め空間33dは、短辺部31aに開口している。第1集電体位置決め部33は、短辺部31aの延びる方向において、短辺部31aの途中位置に設けられている。よって、短辺部31aは、第1集電体位置決め部33によって短辺部31aの延びる方向に分断されているといえる。
【0026】
図2及び
図3に示すように、第2集電体40は、セルスタック11で発電した電力を取り出すための端子である。第2集電体40には、種々の導体を用いることができる。第2集電体40は、第2集電部41と、第2端子42と、第2集電体位置決め部43と、を備える。
【0027】
第2集電部41は、長方形の板状である。第2集電部41は、積層方向Zにおけるセルスタック11の第2端13に設けられている。第2集電部41の長辺方向は、燃料電池セル20の長辺方向と一致している。また、第2集電部41の厚み方向は、積層方向Zと一致している。第2集電部41は、平面視においてセルスタック11を内部領域に含むように配置されている。第2集電部41は、2つの短辺部41aと、集電体給排気孔44と、を備える。
【0028】
集電体給排気孔44は、外部からセルスタック11に供給される水素、酸素及び冷却水が通過する孔である。集電体給排気孔44は、第2集電部41を厚み方向に貫通する。
第2端子42は、機器に接続される端子である。第2端子42は、第2集電部41の長辺部に設けられており、平面視において当該長辺部から突出している。第2端子42が設けられている長辺部は、平面視したとき、第1端子32が設けられている第2集電体40の長辺部と一致する。また、平面視したとき、第2端子42は、第1端子32と重ならないように設けられている。
【0029】
第2集電体位置決め部43は、セルスタック11と第2集電体40との位置決めを行うための構造である。第2集電体位置決め部43は、第2集電部41の周縁に連続する部位である。本実施形態において、第2集電体位置決め部43は、短辺部41aに設けられている。第2集電体位置決め部43は、第1縁43aと、第2縁43bと、第1縁43aと第2縁43bとを接続する第3縁43cと、を備える。第1縁43a及び第2縁43bは、短辺部41aに接続されている。第1縁43aと第2縁43bとは、第2集電部41の短辺方向に互いに離間している。第1縁43a、第2縁43b及び第3縁43cは、第2集電体位置決め空間43dを画定している。第2集電体位置決め空間43dは、第2集電部41を厚み方向に貫通している。第2集電体位置決め空間43dは、短辺部41aに開口している。第2集電体位置決め部43は、短辺部41aの延びる方向において、短辺部41aの延びる方向に分断されているといえる。
【0030】
図1~
図3に示すように、第1カバープレート50及び第2カバープレート60は、セルスタック11を積層方向Zに加圧するための部材である。第1カバープレート50及び第2カバープレート60には、耐食性、剛性を備える金属、例えば、ステンレス、が用いられる。
【0031】
第1カバープレート50は、長方形の板状である。第1カバープレート50の短辺は、第1集電部31の短辺より長い。また、第1カバープレート50の長辺は、第1集電部31の長辺より長い。第1カバープレート50は、第1集電体30を挟んでセルスタック11の第1端12に設けられている。したがって、第1集電体30は、第1カバープレート50とセルスタック11との間に設けられている。第1カバープレート50の長辺方向は、第1集電部31の長辺方向と一致している。また、第1カバープレート50の厚み方向は、積層方向Zと一致している。第1カバープレート50は、2つの短辺部50aと、複数の第1締結部51と、画定部52と、を備える。
【0032】
第1締結部51は、第1カバープレート50を積層方向Zに貫通する挿通孔である。各第1締結部51は、それぞれ第1カバープレート50の長辺部に沿って等間隔で設けられている。
【0033】
画定部52は、第1カバープレート50の周縁に連続する部位である。本実施形態において、画定部52は、短辺部50aに設けられている。画定部52は、第1縁52aと、第2縁52bと、第1縁52aと第2縁52bとを接続する第3縁52cと、を備える。第1縁52a及び第2縁52bは、短辺部50aに接続されている。第1縁52aと第2縁52bとは、第1カバープレート50の短辺方向に互いに離間している。第1縁52a、第2縁52b及び第3縁52cは、貫通部52dを画定している。貫通部52dは、第1カバープレート50を厚み方向に貫通している。貫通部52dは、短辺部50aに開口している。短辺部50aは、画定部52によって短辺部50aの延びる方向に分断されているといえる。
【0034】
第2カバープレート60は、長方形の板状である。第2カバープレート60の長辺は、第2集電部41の長辺より長い。第2カバープレート60の短辺は、第2集電部41の短辺より長い。第2カバープレート60は、第2集電体40を挟んでセルスタック11の第2端13に設けられている。第2カバープレート60の長辺方向は、第2集電部41の長辺方向と一致している。また、第2カバープレート60の厚み方向は、積層方向Zと一致している。第2カバープレート60は、第2締結部61と、マニホールド挿通孔62と、を備える。
【0035】
第2締結部61は、第2カバープレート60を積層方向Zに貫通する挿通孔である。第2締結部61は、第2カバープレート60の長辺部に設けられている。また、第2締結部61は、平面視において第1締結部51とは互いに重なるが、第1カバープレート50と第2カバープレート60との間に挟まれた他の機能部材、例えば、セルスタック11、とは重ならない位置に設けられている。
【0036】
マニホールド挿通孔62は、第2カバープレート60を積層方向Zに貫通する挿通孔である。
締結部材70は、第1カバープレート50と第2カバープレート60とを締結する。本実施形態では、締結部材70は、ボルト71と、ナット72とにより構成される。ボルト71は、第1締結部51及び第2締結部61を挿通する。ナット72は、第1カバープレート50及び第2カバープレート60に対してセルスタック11を加圧するように、ボルト71に取り付けられる。これにより、締結部材70は、第1カバープレート50と第2カバープレート60とを締結する。これに伴い、締結部材70は、第1カバープレート50と第2カバープレート60との間に設けられているセルスタック11等の部材を積層方向Zに加圧し、固定する。
【0037】
図1~
図4に示すように、インシュレータ80は、第1集電体30を第1カバープレート50と絶縁するための絶縁部材である。インシュレータ80は、種々の絶縁性部材を用いて形成することができるが、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐クリープ性の高いプラスチック樹脂により形成されるとよい。インシュレータ80は、長方形の板状である。インシュレータ80の長辺は、第1集電体30の長辺より長い。インシュレータ80の短辺は、第1集電体30の短辺より長い。
【0038】
インシュレータ80は、第1集電体30を挟んで、セルスタック11の第1端12に設けられている。インシュレータ80の長辺方向は、燃料電池セル20の長辺方向及び第1集電部31の長辺方向と一致している。また、インシュレータ80の厚み方向は、積層方向Zと一致している。インシュレータ80は、平面視においてインシュレータ80の内部領域に第1集電部31を含むように配置されている。インシュレータ80は、2つの短辺部80aと、ガイド部81と、インシュレータ位置決め部82と、を備える。
【0039】
ガイド部81は、インシュレータ80の周縁に連続する部位である。本実施形態において、ガイド部81は、短辺部80aに設けられている。ガイド部81は、第1縁81aと、第2縁81bと、を備える。第1縁81a及び第2縁81bは、短辺部80aに接続されている。第1縁81aは、第2縁81bと短辺方向に離間している。また、第1縁81aと第2縁81bとの短辺方向の距離は、ガイド部81が設けられている短辺部80aから当該短辺部80aと向かい合う短辺部80aに向かうにつれて短くなる。第1縁81a及び第2縁81bは、ガイド空間81cを画定している。ガイド空間81cは、インシュレータ80を厚み方向に貫通している。ガイド空間81cは、短辺部80aに開口している。ガイド部81は、短辺部80aの延びる方向において、短辺部80aの延びる方向に分断されているといえる。
【0040】
インシュレータ位置決め部82は、インシュレータ80と第1集電体30との位置決めを行うための構造である。インシュレータ位置決め部82は、ガイド部81に連続する部位である。インシュレータ位置決め部82は、第1縁82aと、第2縁82bと、第1縁82aと第2縁82bとを接続する第3縁82cと、を備える。第1縁82aは、ガイド部81の第1縁81aと接続されている。第2縁82bは、ガイド部81の第2縁81bと接続されている。第1縁82a、第2縁82b及び第3縁82cは、インシュレータ位置決め空間82dを画定している。インシュレータ位置決め空間82dは、インシュレータ80を厚み方向Zに貫通している。インシュレータ位置決め空間82dは、ガイド空間81cに開口している。
【0041】
インシュレータ位置決め部82は、平面視において画定部52と所定の絶縁距離D以上で離間している。なお、絶縁距離Dとは、第1集電体30と第1カバープレート50との間に介在するインシュレータ80の沿面距離である。
【0042】
第1縁52aと第1縁82aとの短辺方向の距離D1は、第2縁52bと第2縁82bとの短辺方向の距離D2と等しい。また、第3縁52cと第3縁82cとの長辺方向の距離D3は、距離D1,D2以上である。距離D1,D2,D3は、いずれも絶縁距離D以上である。
【0043】
図1~
図3に示すように、スタックマニホールド90は、セルスタック11に水素、酸素及び冷却水を供給するための配管部品である。スタックマニホールド90は、絶縁部材であれば任意であるが、水素及び酸素への反応性に乏しいプラスチック樹脂で形成されていることが好ましい。本実施形態では、スタックマニホールド90は、第2集電体40と第2カバープレート60との間に設けられている。したがって、スタックマニホールド90は、第2集電体40を挟んでセルスタック11の第2端13に設けられている。スタックマニホールド90は、平面視において、第2集電部41と同じ長方形状である。また、スタックマニホールド90は、セルスタック11と第2カバープレート60との間に一定の絶縁距離で介在する。これにより、スタックマニホールド90は、第2集電部41と第2カバープレート60との間を所定の沿面距離以上で絶縁する絶縁部材としても機能する。スタックマニホールド90は、給排気口91と、マニホールド位置決め部92と、を備える。
【0044】
給排気口91は、それぞれ、水素、酸素及び冷却水の流路である。給排気口91は、第2カバープレート60に向かって突出する突起部91aを備える。突起部91aは、マニホールド挿通孔62に嵌め込まれるように構成されている。給排気口91の第1端は、図示しない燃料ガス供給源や冷却回路に接続されており、給排気口91の第2端は、集電体給排気孔44に接続されている。これにより、水素、酸素及び冷却水が、それぞれ、給排気口91及び集電体給排気孔44を介して、セルスタック11に供給される。
【0045】
マニホールド位置決め部92は、スタックマニホールド90とセルスタック11との位置決めを行うための構造である。本実施形態では、マニホールド位置決め部92は、マニホールド位置決め部92の積層方向Zに延びる面に設けられた溝である。マニホールド位置決め部92は、スタックマニホールド90の積層方向Zに延びる面内において、積層方向Zに直線的に延びる。マニホールド位置決め部92の積層方向Zの端部は、セルスタック位置決め部14に接続されている。
【0046】
図2に示すように、燃料電池スタック10は、順に、第2カバープレート60、スタックマニホールド90、第2集電体40、セルスタック11、第1集電体30、インシュレータ80、第1カバープレート50を積層方向Zに積層することにより形成される。したがって、第1カバープレート50は、燃料電池セル20を積層した積層方向Zの一端に設けられ、当該一端を第1端とした場合、スタックマニホールド90は、積層方向Zの第2端に設けられている。
【0047】
このとき、スタック位置決め部100が、セルスタック位置決め部14(言い換えれば、セル位置決め部21)と、第1集電体位置決め部33と、第2集電体位置決め部43と、インシュレータ位置決め部82と、マニホールド位置決め部92と、により構成される。本実施形態では、スタック位置決め部100は、燃料電池スタック10の積層方向Zに延びる面内に、積層方向Zに連続的に延びる直線状の溝である。スタック位置決め部100は、スタック位置決め空間110を画定する。スタック位置決め空間110は、各機能部材の短辺部22,31a,41a,50a,80a及びマニホールド位置決め部92の積層方向Zに延びる面に開口している。したがって、セル位置決め部21は、第1集電体位置決め部33と連続して設けられ、第1集電体位置決め部33は、インシュレータ位置決め部82と連続して設けられているといえる。また、セル位置決め部21、第1集電体位置決め部33、インシュレータ位置決め部82、及びマニホールド位置決め部92は、互いに対応する位置に設けられているといえる。なお、互いに対応する位置とは、燃料電池スタック10が組み立てられた状態で、互いの相対位置が一意に決定される位置関係をいう。
【0048】
また、スタック位置決め空間110は、貫通部52dに開口している。したがって、インシュレータ位置決め部82は、積層方向Zから第1カバープレート50を平面視したときに貫通部52dの内部に含まれているといえる。貫通部52dは、インシュレータ位置決め部82に対応する位置に設けられているといえる。なお、「平面視したときに内部に含まれている」場合には、平面視したときに2つの面の少なくとも一部が一致している場合が含まれないものとする。例えば、距離D1が0の場合、平面視したときにインシュレータ位置決め部82の第1縁82aの少なくとも一部が画定部52の第1縁52aと一致する。この場合、インシュレータ位置決め空間82dは、平面視したときに貫通部52dの内部に含まれない。
【0049】
図5に示すように、燃料電池セル20の各短辺部22には、1つのセル位置決め部21が設けられている。以下の説明では、各短辺部22をそれぞれ、「第1辺部23」、「第2辺部24」と称することがある。また、以下の説明では、第1辺部23に設けられたセル位置決め部21を「セル位置決め部25」と、第2辺部24に設けられたセル位置決め部21を「セル位置決め部26」と称することがある。第2辺部24は、積層方向Zから燃料電池セル20を平面視したときに第1辺部23と向かい合う。また、セル位置決め部21は、第1辺部23及び第2辺部24にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられている。
【0050】
第1辺部23に受けられたセル位置決め部21の1つであるセル位置決め部25は、第2辺部24に設けられたセル位置決め部21の1つであるセル位置決め部26に対して第1辺部23の延びる方向に離間している。具体的には、セル位置決め部25は、第1辺部23の中点から第1辺部23の延びる方向に離間している。また、セル位置決め部26は、セル位置決め部25から第1辺部23の中点に向かう方向に、第2辺部24の中点から離間している。このとき、セル位置決め部25及びセル位置決め部26は、燃料電池セル20の対角線付近に設けられることが好ましい。
【0051】
図3及び
図5に示すように、2つのセル位置決め部25,26のそれぞれに対応するスタック位置決め部100が設けられている。すなわち、第1集電体位置決め部33と、第2集電体位置決め部43と、インシュレータ位置決め部82と、マニホールド位置決め部92とが、各セル位置決め部25,26に対応する位置に設けられている。したがって、燃料電池スタック10は、2つのスタック位置決め部100を備える。以下の説明では、セル位置決め部25を含むスタック位置決め部100を、「スタック位置決め部101」、セル位置決め部26を含むスタック位置決め部100を、「スタック位置決め部102」と称することがある。上述したセル位置決め部25,26の位置関係と同様に、スタック位置決め部101,102もまた、それぞれ、燃料電池セル20の第1辺部23の延びる方向に離間している。
【0052】
<燃料電池スタックの製造方法について>
次に、上記した燃料電池スタック10の製造方法について、
図6~
図8に従って説明する。
【0053】
燃料電池スタック10の製造方法は、積層工程と、位置決め工程と、締結工程と、を含む。
図6に示すように、積層工程では、燃料電池スタック10の各機能部材、具体的には、第2カバープレート60、スタックマニホールド90、第2集電体40、セルスタック11、第1集電体30、インシュレータ80、第1カバープレート50を積層方向Zに順に積層する。
【0054】
本実施形態では、セル位置決め部25,26が燃料電池セル20を平面視したときに互いに鏡面対称となるように配置されていない。このとき、例えば、ある燃料電池セル20の裏表が反対の状態で積層が行われた場合、当該燃料電池セル20のセル位置決め部25,26が、他の燃料電池セル20のセル位置決め部25,26と対応した位置に配置されない。そのため、スタック位置決め部101,102が当該燃料電池セル20によって積層方向Zに分断されることとなる。したがって、燃料電池セル20等の機能部材が誤った向きで積層されているか否かを光学的手法等で検知することができる。
【0055】
次に、
図7に示すように、位置決め工程に進み、スタック位置決め部101,102と、第1カバープレート50の短辺部50a又は画定部52と、に治具Jをあてがうことにより、燃料電池スタック10の各機能部材同士の位置決めを行う。本実施形態では、スタック位置決め部101,102と、第1カバープレート50の短辺部50aと、に治具Jをあてがうように構成されている。なお、治具Jは、燃料電池セル20の位置決めを行うための治具である。本実施形態では、治具Jは、短辺面J1と、段差面J2と、を備える。
【0056】
短辺面J1は、平面視したときに燃料電池セル20の短辺が連続することで構成される面にあてがわれる平四角面である。短辺面J1は、位置決め面J11を備える。位置決め面J11は、スタック位置決め部101又はスタック位置決め部102にあてがわれる面である。位置決め面J11は、短辺面J1の法線方向に突出し、短辺面J1を構成する辺から短辺面J1内で垂直方向に延びる。位置決め面J11の突出形状は、スタック位置決め空間110に嵌め込まれる形状であればよい。
【0057】
段差面J2は、第1カバープレート50の短辺部50aにあてがわれる平面である。段差面J2は、短辺面J1と平行である。また、短辺面J1に垂直な方向における短辺面J1と段差面J2との距離は、燃料電池セル20の短辺部22に垂直な方向における短辺部22と第1カバープレート50の短辺部50aとの距離に等しい。
【0058】
スタック位置決め部101,102に治具Jをあてがうとき、位置決め面J11は、ガイド空間を通過する。このとき、位置決め面J11とスタック位置決め部101,102とが短辺方向で一致しない場合であっても、位置決め面J11は、ガイド部81に沿ってインシュレータ位置決め部82に移動する。したがって、ガイド部81は、位置決め面J11とスタック位置決め部101,102とを適切な位置に配置するためのガイドとして機能する。
【0059】
次に、
図8に示すように、締結工程に進み、燃料電池スタック10に治具Jがあてがわれた状態で、第1カバープレート50と第2カバープレート60とが積層方向Zに近づくように第1カバープレート50と第2カバープレート60とを締結する。具体的には、位置決め工程で治具Jが燃料電池スタック10にあてがわれた状態でボルト71を第1締結部51及び第2締結部61に挿通し、第1カバープレート50と第2カバープレート60とをナット72で締結する。
【0060】
<作用>
次に、本実施形態の作用について説明する。
セルスタック11の電力が第1カバープレート50に漏出しないよう、第1集電体30と第1カバープレート50との間には、絶縁距離Dを確保するようにインシュレータ80が設けられる。仮に、組付け性のみを考慮して、平面視における画定部52の形状をインシュレータ位置決め部82と同一の形状とした場合、画定部52近傍での絶縁距離Dは、インシュレータ80の厚みで決定される。したがって、インシュレータ80の厚みが絶縁距離Dとなり、燃料電池スタック10の体格が増大するおそれがある。積層方向Zに絶縁距離Dを増やす場合、インシュレータ80の形状が複雑化し、組付け性が低下するおそれがある。
【0061】
一方、本実施形態では、インシュレータ位置決め部82は、貫通部52dの内部に含まれるように設けられている。このとき、インシュレータ80は、積層方向Zとは垂直な面内方向において第1集電体30と第1カバープレート50との間に絶縁距離Dで介在する。したがって、燃料電池スタック10の組付け性の低下を抑制しつつ、第1集電体30と第1カバープレート50との間の絶縁性が確保される。
【0062】
<効果>
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)インシュレータ位置決め部82は、平面視において貫通部52dの内部に含まれるように設けられている。これにより、インシュレータ80は、積層方向Zとは垂直な面内方向において、第1集電体30と第1カバープレート50との間に絶縁距離D以上で介在することができる。また、セル位置決め部21と、第1集電体位置決め部33と、画定部52と、インシュレータ位置決め部82とが互いに対応した位置に設けられているため、対応する治具Jをあてがうことにより、適切な位置関係で積層を行うことができる。したがって、燃料電池スタック10の組付け性の低下を抑制しつつ、第1集電体30と第1カバープレート50との間の絶縁性を確保することができる。
【0063】
(2)スタックマニホールド90は、第2集電体40を挟んで、セルスタック11の第2端13に設けられており、セル位置決め部21に対応する位置にマニホールド位置決め部92を備える。これにより、セルスタック11と第1集電体30、第1カバープレート50及びインシュレータ80との位置決めの際、併せて、セルスタック11とスタックマニホールド90との位置決めを行うことができる。したがって、燃料電池スタック10の組付け性をさらに向上することができる。
【0064】
(3)セル位置決め部25,26は、第1辺部23及び第2辺部24にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられている。そして、第1辺部23に設けられたセル位置決め部25と第2辺部24に設けられたセル位置決め部26とは、互いに第1辺部23の延びる方向に離間している。これにより、燃料電池セル20は、燃料電池セル20の長辺方向に垂直な面における鏡面対称性を失う。そのため、燃料電池セル20の1つが裏表逆のまま積層された場合、セルスタック位置決め部14が当該燃料電池セル20によって分断されることとなる。したがって、燃料電池セル20が誤った位置関係で積層されることを抑制することができる。
【0065】
(4)セル位置決め部25及びセル位置決め部26は、燃料電池セル20の対角線付近に設けられる。これにより、セル位置決め部25とセル位置決め部26との間の距離が広くなり、セル位置決め部25,26が近い場合に比べて、セル位置決め部21の回転移動が抑制される。したがって、より高い精度で燃料電池セル20同士の位置決めを行うことができる。
【0066】
(5)セル位置決め部21は、積層方向Zに延びるセルスタック11の面に設けられている。このとき、セルスタック位置決め部14は、セルスタック11の表面のうち、燃料電池セル20の短辺部22によって構成される面に形成される。これにより、治具Jの位置決め面J11を燃料電池スタック10にあてがう際、併せて治具Jの短辺面J1を燃料電池スタック10にあてがわれる。したがって、治具Jの構成が簡易となり、燃料電池スタック10の組付け性をさらに向上することができる。
【0067】
(6)セル位置決め部21と第1集電体位置決め部33及びインシュレータ位置決め部82とが互いに連続して設けられている。これに伴い、スタック位置決め部100が連続した溝を形成している。これにより、スタック位置決め部100に対応する治具Jの位置決め面J11を1つの連続した面で形成することができる。したがって、治具Jの構成がより簡易となり、燃料電池スタック10の組付け性をさらに向上することができる。
【0068】
(7)燃料電池スタック10は、セル位置決め部21及び第1集電体位置決め部33に対応する位置にインシュレータ位置決め部82を備える。また、治具Jは、セル位置決め部21、第1集電体位置決め部33及びインシュレータ位置決め部82に対応する位置に位置決め面J11を備える。そして、位置決め工程において、第1カバープレート50及び第2カバープレート60は、治具Jをあてがわれた状態で締結部材70によって締結される。これにより、第1カバープレート50とインシュレータ80との位置決めを行われた状態で、第1カバープレート50と第2カバープレート60との締結が行われる。したがって、燃料電池スタック10を製造する際に、第1カバープレート50とインシュレータ80との位置ずれ抑制のために接着材等を導入することを抑制できる。したがって、燃料電池スタック10の組付け性を向上することができる。
【0069】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
○本実施形態の治具Jは、あくまで例示に過ぎない。例えば、段差面J2は、画定部52にあてがわれる面であってもよい。
○セル位置決め部21、第1集電体位置決め部33、第2集電体位置決め部43、マニホールド位置決め部92は、互いに連続していなくても、互いに対応した位置に設けられていればよい。例えば、それぞれが、燃料電池セル20の短辺部22の延びる方向に離間していてもよい。
【0071】
○セル位置決め部21は、セルスタック11の積層方向Zに延びる面15に設けられていなくてもよい。例えば、セル位置決め部21は、燃料電池セル20の短辺部22の近傍を貫通する空間であってもよい。
【0072】
○第1辺部23及び第2辺部24は、短辺部22でなくてもよい。例えば、第1辺部23及び第2辺部24は、燃料電池セル20の長辺部であってもよい。
○セル位置決め部25とセル位置決め部26とは、互いに第1辺部23の延びる方向に離間していなくてもよい。例えば、平面視において、セル位置決め部25とセル位置決め部26とを結ぶ直線が、燃料電池セル20の長辺方向と平行であってもよい。
【0073】
○セル位置決め部21は、第1辺部23及び第2辺部24にそれぞれ1つずつ設けられていなくてもよい。例えば、セル位置決め部21は、第1辺部23又は第2辺部24のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。また、セル位置決め部21は、燃料電池セル20に1つだけ設けられていても、複数設けられていてもよい。
【0074】
○マニホールド位置決め部92は、設けられていなくてもよい。この場合、治具Jとは異なる治具などを用いることで、セルスタック11とスタックマニホールド90との位置を決めればよい。
【0075】
○燃料電池セル20の断面形状は、角の面取りされた四角に限らず、治具をあてがうことのできる形状であれば、任意である。
○給排気口91は、マニホールド挿通孔62と連続して設けられていれば、突起部91aを備えていなくてもよい。
【0076】
○各機能部材の形状は、長方形状に限られない。例えば、平面視において8角形等の多角形であってもよいし、円形のように曲面を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…燃料電池スタック、11…セルスタック、12…第1端、13…第2端、15…セルスタックの積層方向に延びる面、20…燃料電池セル、21,25,26…セル位置決め部、23…第1辺部、24…第2辺部、30…第1集電体、33…第1集電体位置決め部、50…第1カバープレート、52d…貫通部、60…第2カバープレート、80…インシュレータ、82…インシュレータ位置決め部、90…スタックマニホールド、92…マニホールド位置決め部、J…治具、Z…積層方向。