(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112962
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】インセンティブ計算装置、インセンティブ計算方法、及びインセンティブ計算プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20220727BHJP
G06Q 30/02 20120101ALI20220727BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/02 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009018
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】小熊 祐司
(72)【発明者】
【氏名】大野 正夫
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB07
5L049CC13
(57)【要約】
【課題】インセンティブの急激な変動を抑制すること。
【解決手段】インセンティブ計算装置15は、複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算する計算部53と、インセンティブ基準値に基づいて、インセンティブを計算する計算部54と、を備え、計算部53は、前回インセンティブ基準値と、第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、インセンティブ基準値を計算する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源を利用することによるインセンティブを計算するインセンティブ計算装置であって、
前記複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算する第1計算部と、
前記インセンティブ基準値に基づいて、前記インセンティブを計算する第2計算部と、
を備え、
前記第1計算部は、前回計算された前記インセンティブ基準値である前回インセンティブ基準値と、前記第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、前記インセンティブ基準値を計算する、インセンティブ計算装置。
【請求項2】
前記第1計算部は、前記前回インセンティブ基準値と、前記利用率と前記利用率の目標値である目標利用率との差分と、に基づいて、前記インセンティブ基準値を計算する、請求項1に記載のインセンティブ計算装置。
【請求項3】
前記目標利用率は、前記複数の供給家によって供給される全資源の利用率である全体利用率に基づいて設定される、請求項2に記載のインセンティブ計算装置。
【請求項4】
前記第1計算部は、前記差分が前記インセンティブ基準値に与える影響度を規定するための学習率に更に基づいて、前記インセンティブ基準値を計算する、請求項2又は請求項3に記載のインセンティブ計算装置。
【請求項5】
前記第1計算部は、前記前回インセンティブ基準値が前記インセンティブ基準値に与える影響度を規定するための忘却率に更に基づいて、前記インセンティブ基準値を計算する、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のインセンティブ計算装置。
【請求項6】
複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源を利用することによるインセンティブを計算するインセンティブ計算方法であって、
前記複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算するステップと、
前記インセンティブ基準値に基づいて、前記インセンティブを計算するステップと、
を備え、
前記インセンティブ基準値を計算するステップでは、前回計算された前記インセンティブ基準値である前回インセンティブ基準値と、前記第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、前記インセンティブ基準値が計算される、インセンティブ計算方法。
【請求項7】
複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源を利用することによるインセンティブを計算するようにコンピュータを動作させるインセンティブ計算プログラムであって、
前記複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算するステップと、
前記インセンティブ基準値に基づいて、前記インセンティブを計算するステップと、
を前記コンピュータに実行させ、
前記インセンティブ基準値を計算するステップでは、前回計算された前記インセンティブ基準値である前回インセンティブ基準値と、前記第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、前記インセンティブ基準値が計算される、インセンティブ計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インセンティブ計算装置、インセンティブ計算方法、及びインセンティブ計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場の駐車スペース、道路の通行可能な車両数、及び電力等といった供給可能な量が限られている資源に対し、利用者である人口の偏り、経済活動時間帯、及び突発的なイベント等に起因して、時間的及び空間的に需要が偏ることがある。その結果、これらの資源に関する需給不一致が生じ、駐車場満車、交通渋滞、及び電力逼迫等を引き起こすおそれがある。このような需要の偏りに対して、インセンティブを付与することによって需要を平準化することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、道路上の施設間での渋滞影響度及び各施設の駐車場の空き状況に基づいてクーポンの割引率を設定する交通管制システムが記載されている。この交通管制システムは、駐車場の空きスペースが多いほど、クーポンの割引率を大きく設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、利用率が高い傾向にある駐車場において、複数の車両がほぼ同じタイミングで駐車場から退出する場合、一時的に空きスペースが急激に増加する。このような場合、特許文献1に記載の交通管制システムでは、クーポンの割引率が急激に大きくなる。その結果、利用率の高い傾向にある駐車場に車両が集まってしまい、更なる混雑を引き起こすおそれがある。
【0006】
本開示は、インセンティブの急激な変動を抑制可能なインセンティブ計算装置、インセンティブ計算方法、及びインセンティブ計算プログラムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るインセンティブ計算装置は、複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源を利用することによるインセンティブを計算する装置である。このインセンティブ計算装置は、複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算する第1計算部と、インセンティブ基準値に基づいて、インセンティブを計算する第2計算部と、を備える。第1計算部は、前回計算されたインセンティブ基準値である前回インセンティブ基準値と、第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、インセンティブ基準値を計算する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、インセンティブの急激な変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るインセンティブ計算装置を含む平準化システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるインセンティブ計算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されるインセンティブ計算装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示されるインセンティブ計算装置が行うインセンティブ計算方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、記録媒体に記録されたインセンティブ計算プログラムの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、駐車場の利用シミュレーションに用いられる駐車場間の所要時間を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1に示されるインセンティブ計算装置が用いられた場合のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】
図8は、比較例のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]実施形態の概要
本開示の一側面に係るインセンティブ計算装置は、複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源を利用することによるインセンティブを計算する装置である。このインセンティブ計算装置は、複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算する第1計算部と、インセンティブ基準値に基づいて、インセンティブを計算する第2計算部と、を備える。第1計算部は、前回計算されたインセンティブ基準値である前回インセンティブ基準値と、第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、インセンティブ基準値を計算する。
【0011】
本開示の別の側面に係るインセンティブ計算方法は、複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源を利用することによるインセンティブを計算する方法である。このインセンティブ計算方法は、複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算するステップと、インセンティブ基準値に基づいて、インセンティブを計算するステップと、を備える。インセンティブ基準値を計算するステップでは、前回計算されたインセンティブ基準値である前回インセンティブ基準値と、第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、インセンティブ基準値が計算される。
【0012】
本開示の更に別の側面に係るインセンティブ計算プログラムは、複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源を利用することによるインセンティブを計算するようにコンピュータを動作させるプログラムである。このインセンティブ計算プログラムは、複数の供給家に含まれる第1供給家によって供給される資源を利用することによるインセンティブを計算する基準となるインセンティブ基準値を計算するステップと、インセンティブ基準値に基づいて、インセンティブを計算するステップと、をコンピュータに実行させる。インセンティブ基準値を計算するステップでは、前回計算されたインセンティブ基準値である前回インセンティブ基準値と、第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、インセンティブ基準値が計算される。
【0013】
これらのインセンティブ計算装置、インセンティブ計算方法、及びインセンティブ計算プログラムでは、前回インセンティブ基準値と、第1供給家によって供給される資源の利用率と、に基づいて、インセンティブ基準値が計算され、インセンティブ基準値に基づいてインセンティブが計算される。このように、前回インセンティブ基準値が考慮されてインセンティブ基準値が計算されるので、前回インセンティブ基準値がインセンティブ基準値に影響を及ぼし得る。したがって、インセンティブ基準値に基づいて計算されるインセンティブは、前回のインセンティブによって示される傾向を引き継ぐことができる。その結果、インセンティブの急激な変動を抑制することが可能となる。
【0014】
第1計算部は、前回インセンティブ基準値と、利用率と利用率の目標値である目標利用率との差分と、に基づいて、インセンティブ基準値を計算してもよい。この場合、上記差分に応じたインセンティブが計算される。したがって、利用率を目標利用率に近づけることができる。
【0015】
目標利用率は、複数の供給家によって供給される全資源の利用率である全体利用率に基づいて設定されてもよい。この場合、目標利用率が全体利用率を基準とした値となるので、全体利用率と比較して利用率をどの程度高くするか又は低くするか調整することができる。
【0016】
第1計算部は、上記差分がインセンティブ基準値に与える影響度を規定するための学習率に更に基づいて、インセンティブ基準値を計算してもよい。この場合、学習率によって利用率と目標利用率との差分の影響度を調整することができる。例えば、学習率をある程度小さくすることによって、インセンティブ基準値の変動を抑制することができるので、インセンティブの急激な変動をより一層抑制することが可能となる。
【0017】
第1計算部は、前回インセンティブ基準値がインセンティブ基準値に与える影響度を規定するための忘却率に更に基づいて、インセンティブ基準値を計算してもよい。この場合、忘却率によって前回インセンティブ基準値の影響度を調整することができる。例えば、忘却率をある程度大きくすることによって、インセンティブ基準値の変動を抑制することができるので、インセンティブの急激な変動をより一層抑制することが可能となる。
【0018】
[2]実施形態の例示
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0019】
図1は、一実施形態に係るインセンティブ計算装置を含む平準化システムの概略構成を示す図である。
図1に示される平準化システム1は、複数の供給家のそれぞれによって供給される供給可能量が限られている資源に対する利用率を平準化するシステムである。平準化システム1では、供給家は駐車場であり、資源は駐車スペースである。平準化システム1は、複数(M個)の駐車場P
1~P
Mと、インセンティブ計算システム10と、ユーザ端末20と、を含む。Mは2以上の整数である。
【0020】
駐車場P1~PMのそれぞれ(第1供給家)は、車両を駐車するための駐車スペースを供給する。駐車場P1~PMは、例えば、徒歩での移動が可能な程度のエリア(対象エリア)内に存在する。駐車場P1~PMのそれぞれには、計測器3が設置されている。各駐車場の計測器3は、当該駐車場に駐車されている車両の台数(駐車台数)を逐次計測する。計測器3としては、駐車台数を計測可能な任意の計測器が用いられる。計測器3は、例えば、カメラ及び画像処理用のコンピュータを含む。この場合、計測器3は、駐車場内を撮影し、撮影した画像から画像認識技術を用いて駐車台数を推定してもよい。計測器3は、各駐車スペースに設置された車両検知用のセンサを含んでもよい。
【0021】
駐車場P1~PMのそれぞれに設けられた計測器3の計測周期は、互いに同じでもよく、互いに異なっていてもよい。計測器3は、計測した駐車台数niをインセンティブ計算システム10に送信する。なお、iは、1~Mの整数である。計測器3は、例えば、駐車台数niを計測するごとに、計測した駐車台数niをインセンティブ計算システム10に送信する。
【0022】
インセンティブ計算システム10は、駐車場P1~PM(駐車スペース)のそれぞれを利用することによるインセンティブyiを計算するシステムである。インセンティブyiの例としては、ポイント、及びクーポンが挙げられる。インセンティブyiは、例えば、駐車場P1~PMの利用率を平準化するために用いられる。インセンティブ計算システム10は、駐車場P1~PMのそれぞれに設けられた計測器3によって計測された駐車台数niに基づいて、インセンティブyiを計算する。インセンティブ計算システム10は、駐車場P1~PMのそれぞれについて、インセンティブyi、駐車台数ni、及び駐車場情報をユーザ端末20に送信する。駐車場情報は、例えば、駐車場Piの場所、収容可能な車両の台数(収容可能台数Ni)、駐車料金の単価、及び営業時間(営業開始時刻及び営業終了時刻)を含む。
【0023】
インセンティブ計算システム10は、データ収集装置11と、駐車台数データベース12と、駐車場データベース13と、インセンティブデータベース14と、インセンティブ計算装置15と、を含む。データ収集装置11は、各駐車場Piに設けられた計測器3から駐車台数niを収集(受信)する装置である。データ収集装置11は、収集した駐車台数niを駐車台数データベース12に格納する。駐車台数データベース12は、各駐車場Piの最新の駐車台数niを格納するデータベースである。駐車台数データベース12は、過去の駐車台数niを格納してもよい。
【0024】
駐車場データベース13は、上述の駐車場情報を格納するデータベースである。駐車場情報は、駐車場データベース13に予め格納されている。インセンティブデータベース14は、各駐車場Piに対する最新のインセンティブ基準値xi及びインセンティブyiを格納するデータベースである。インセンティブ基準値xiは、インセンティブyiを計算する基準となる値である。インセンティブデータベース14は、過去のインセンティブ基準値xi及びインセンティブyiを格納してもよい。
【0025】
インセンティブ計算装置15は、各駐車場Piに対するインセンティブ基準値xi及びインセンティブyiを計算する装置である。インセンティブ計算装置15は、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiをインセンティブデータベース14に格納する。インセンティブ計算装置15の詳細は後述する。
【0026】
ユーザ端末20は、ユーザにより用いられ、ユーザが携帯可能な装置である。ユーザは、例えば、駐車場の利用を希望する運転者であり、需要家に相当する。ユーザ端末20の例としては、スマートフォン及びタブレット端末を含む携帯端末が挙げられる。ユーザ端末20には、駐車場を検索するための駐車場アプリケーションがインストールされている。ユーザは、対象エリアの駐車場の利用を希望する場合、駐車場アプリケーションを実行する。
【0027】
これにより、ユーザ端末20(駐車場アプリケーション)は、駐車台数データベース12、駐車場データベース13、及びインセンティブデータベース14に定期的にアクセスし、駐車場P1~PMのそれぞれについて、インセンティブyi、駐車台数ni、及び駐車場情報を取得する。ユーザ端末20(駐車場アプリケーション)は、これらの情報をユーザに提示する。ユーザは、これらの情報を確認し、駐車場P1~PMの中から駐車場Piを選択して駐車場Piに車両を駐車する。ユーザ端末20(駐車場アプリケーション)は、ユーザが駐車場Piを利用したタイミングでインセンティブyiを発行する。なお、ユーザの選択基準には、インセンティブ計算システム10は関知しない。
【0028】
次に、
図2及び
図3を参照しながら、インセンティブ計算装置15の詳細を説明する。
図2は、
図1に示されるインセンティブ計算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3は、
図1に示されるインセンティブ計算装置の機能構成の一例を示す図である。
【0029】
図2に示されるように、インセンティブ計算装置15は、1又は複数のコンピュータ100を含む。コンピュータ100は、プロセッサ101と、記憶装置102と、入力装置103と、出力装置104と、通信装置105と、を含む。インセンティブ計算装置15は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアと、により構成された1又は複数のコンピュータ100によって構成される。つまり、インセンティブ計算装置15は、少なくとも1つのプロセッサ101を備えている。
【0030】
インセンティブ計算装置15が複数のコンピュータ100によって構成される場合には、これらのコンピュータ100はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つのインセンティブ計算装置15が構築される。
【0031】
プロセッサ101は、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラム等を実行する。プロセッサ101の例としては、CPU(Central Processing Unit)が挙げられる。記憶装置102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)によって構成される主記憶装置と、ハードディスク及びフラッシュメモリ等によって構成される補助記憶装置と、を含む。入力装置103は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び音声入力用マイク等によって構成される。出力装置104は、ディスプレイ及びプリンタ等によって構成される。通信装置105は、ネットワークカード又は無線通信モジュールによって構成される。
【0032】
記憶装置102は、コンピュータ100をインセンティブ計算装置15として機能させるためのインセンティブ計算プログラムPR(
図5参照)と、処理に必要なデータと、を格納している。インセンティブ計算装置15の
図3に示される各機能は、プロセッサ101等のハードウェアにインセンティブ計算プログラムPRを読み込ませることにより、プロセッサ101の制御のもとで各ハードウェアを動作させるとともに、記憶装置102におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。インセンティブ計算プログラムPRの具体的な構成については後述する。なお、データ収集装置11及びユーザ端末20もインセンティブ計算装置15と同様に構成されている。
【0033】
図3に示されるように、インセンティブ計算装置15は、機能的には、判定部51と、取得部52と、計算部53(第1計算部)と、計算部54(第2計算部)と、出力部55と、を備えている。後述のインセンティブ計算方法の説明において、各機能部の機能(動作)を詳細に説明するので、ここでは各機能部の機能を簡単に説明する。
【0034】
判定部51は、終了条件が満たされたか否かを判定する機能部である。終了条件としては、例えば、駐車場P1~PMのすべての営業が終了したことが用いられる。判定部51は、更に現在時刻が計算タイミングであるか否かを判定する。計算タイミングは、例えば、所定の時間毎に設定されている。
【0035】
取得部52は、インセンティブの計算に必要な情報を取得する機能部である。取得部52は、例えば、駐車台数ni、収容可能台数Ni、及び前回インセンティブ基準値x’iを取得する。なお、前回インセンティブ基準値x’iは、前回計算されたインセンティブ基準値xiである。
【0036】
計算部53は、インセンティブ基準値xiを計算する機能部である。計算部53は、駐車台数ni、収容可能台数Ni、及び前回インセンティブ基準値x’iに基づいて、インセンティブ基準値xiを計算する。具体的には、計算部53は、各駐車場Piに対する前回インセンティブ基準値x’iと、各駐車場Piの駐車スペースの利用率Riと、に基づいて、インセンティブ基準値xiを計算する。後述するように、利用率Riは、駐車台数niを収容可能台数Niで除算することによって得られる。
【0037】
計算部54は、インセンティブyiを計算する機能部である。計算部54は、インセンティブ基準値xiに基づいて、インセンティブyiを計算する。
【0038】
出力部55は、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiを出力する機能部である。本実施形態では、出力部55は、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiをインセンティブデータベース14に出力し、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiをインセンティブデータベース14に格納する。
【0039】
次に、
図4を参照しながら、インセンティブ計算装置15が行うインセンティブ計算方法について説明する。
図4は、
図1に示されるインセンティブ計算装置が行うインセンティブ計算方法の一例を示すフローチャートである。
図4に示される一連の処理は、例えば、駐車場P
1~P
Mの営業が開始されることによって開始される。
【0040】
まず、判定部51が、終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS1)。終了条件としては、例えば、駐車場P1~PMのすべての営業が終了したことが用いられる。この場合、判定部51は、現在時刻が駐車場P1~PMのすべての営業終了時刻に達したか否かを判定する。現在時刻が駐車場P1~PMのすべての営業終了時刻に達している場合に、判定部51は、終了条件が満たされたと判定する。現在時刻が駐車場P1~PMのすべての営業終了時刻に達したわけではない場合に、判定部51は、終了条件が満たされていないと判定する。判定部51が、終了条件が満たされたと判定した場合(ステップS1;YES)、インセンティブ計算方法の一連の処理が終了する。
【0041】
一方、判定部51が、終了条件が満たされていないと判定した場合(ステップS1;NO)、判定部51は、現在時刻が計算タイミングであるか否かを判定する(ステップS2)。インセンティブの計算は、例えば、所定の時間(例えば、1分)が経過するごとに行われる。例えば、現在時刻が毎分0秒に達した場合に、判定部51は、現在時刻が計算タイミングであると判定する。判定部51が、現在時刻が計算タイミングでないと判定した場合(ステップS2;NO)、現在時刻が計算タイミングになるまでステップS2の判定が繰り返される。一方、現在時刻が計算タイミングであると判定された場合(ステップS2;YES)、判定部51は、取得部52に現在時刻が計算タイミングであることを示す判定結果を出力する。
【0042】
続いて、取得部52は、判定部51から上記判定結果を受け取ると、インセンティブの計算に必要な情報を取得する(ステップS3)。ステップS3では、取得部52は、駐車台数データベース12から各駐車場Piの最新の駐車台数niを取得する。さらに、取得部52は、駐車場データベース13から各駐車場Piの収容可能台数Niを取得する。さらに、取得部52は、インセンティブデータベース14から各駐車場Piの最新のインセンティブ基準値xiを前回インセンティブ基準値x’iとして取得する。そして、取得部52は、駐車台数ni、収容可能台数Ni、及び前回インセンティブ基準値x’iを計算部53に出力する。
【0043】
続いて、計算部53は、取得部52から駐車台数ni、収容可能台数Ni、及び前回インセンティブ基準値x’iを受け取ると、各駐車場Piに対するインセンティブ基準値xiを計算する(ステップS4)。ステップS4では、計算部53は、前回インセンティブ基準値x’iと、各駐車場Piの駐車スペースの利用率Riと目標利用率Rtiとの差分Diと、に基づいて、インセンティブ基準値xiを計算する。
【0044】
本実施形態では、式(1)に示されるように、計算部53は、前回インセンティブ基準値x’
iと忘却率wとを乗算することによって得られた値から、差分D
iと学習率hとを乗算することによって得られた値を減算することによって、インセンティブ基準値x
iを計算し、インセンティブ基準値x
iを計算部54に出力する。忘却率wは、前回インセンティブ基準値x’
iがインセンティブ基準値x
iに与える影響度を規定する値である。忘却率wが大きいほど、前回インセンティブ基準値x’
iはインセンティブ基準値x
iに大きな影響を及ぼす。忘却率wは、0より大きく、1より小さい値である。学習率hは、差分D
iがインセンティブ基準値x
iに与える影響度を規定する値である。学習率hが大きいほど、差分D
iはインセンティブ基準値x
iに大きな影響を及ぼす。学習率hは、0より大きい値である。インセンティブ基準値x
iの初期値は、任意の値であり、例えば0である。
【数1】
【0045】
なお、式(2)に示されるように、計算部53は、利用率R
iから目標利用率Rt
iを減算することによって差分D
iを計算する。式(3)に示されるように、計算部53は、駐車台数n
iを収容可能台数N
iで除算することによって利用率R
iを計算する。式(4)に示されるように、計算部53は、すべての駐車場P
1~P
Mに駐車している車両の総台数(駐車台数n
iの総和)を、すべての駐車場P
1~P
Mの収容可能台数の総台数(収容可能台数N
iの総和)で除算することによって全体利用率を計算し、全体利用率を目標利用率Rt
iとする。したがって、目標利用率Rt
iは、すべての駐車場P
1~P
Mに共通の値である。集合Iは、1~Mの整数値を要素として含む集合である。
【数2】
【数3】
【数4】
【0046】
目標利用率Rtiよりも利用率Riが大きい場合には、差分Diが正となる。この場合、インセンティブ基準値xiが低下する。目標利用率Rtiよりも利用率Riが小さい場合には、差分Diが負となる。この場合、インセンティブ基準値xiが上昇する。
【0047】
続いて、計算部54は、計算部53から各駐車場P
iに対するインセンティブ基準値x
iを受け取ると、各駐車場P
iに対するインセンティブy
iを計算する(ステップS5)。ステップS5では、計算部54は、インセンティブ基準値x
iをもとに,インセンティブy
iが非負となるようにするとともに、インセンティブy
iのスケーリングを行う。本実施形態では、式(5)に示されるように、計算部54は、各インセンティブ基準値x
iから、インセンティブ基準値x
1~x
Mのうちの最小のインセンティブ基準値を減算することによって得られた差分に、スケーリング係数αを乗算することによって、インセンティブy
iを計算する。スケーリング係数αは0より大きい値である。そして、計算部54は、各駐車場P
iに対するインセンティブ基準値x
i及びインセンティブy
iを出力部55に出力する。
【数5】
【0048】
続いて、出力部55は、計算部54から各駐車場Piに対するインセンティブ基準値xi及びインセンティブyiを受け取ると、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiを出力する(ステップS6)。ステップS6では、出力部55は、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiをインセンティブデータベース14に出力し、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiをインセンティブデータベース14に格納する。このとき、インセンティブデータベース14に格納されているインセンティブ基準値xi及びインセンティブyiが、新たなインセンティブ基準値xi及びインセンティブyiによって上書き(更新)されてもよい。そして、出力部55は、インセンティブデータベース14への出力が終了したことを示す情報を判定部51に出力する。
【0049】
続いて、判定部51は、上記情報を出力部55から受け取ると、終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS1)。以降、上述の処理が繰り返される。なお、ステップS1において、現在時刻が駐車場P1~PMのうちの一部の駐車場の営業終了時刻に達している場合、駐車場P1~PMから営業を終了している駐車場を除いて、上述の処理が実施されてもよい。
【0050】
次に、忘却率w及び学習率hの決定手順の一例を説明する。まず、インセンティブ基準値x
iの収束値(上下限絶対値)が差分D
iに対する比として決定される。すなわち、式(6)に示される値Cが決定される。ただし、インセンティブy
iは、式(5)によって調整可能であるので、値Cは任意の値に決定される。典型的には、値Cは-1に決定されてもよい。
【数6】
【0051】
続いて、忘却率w及び学習率hの値が決定される。値Cに応じて忘却率w及び学習率hのうちのいずれか一方が定まれば、他方も同時に定まる。例えば、値Cが-1である場合、h=1-wの関係式が得られる。忘却率w及び学習率hの値は、どの程度まで過去のインセンティブ基準値xiを考慮するかということと、インセンティブ基準値xiの更新(計算)時間間隔とに依存する。例えば、更新時間間隔が1秒で、1時間前のインセンティブ基準値xiが考慮される場合、w=1-1/3600、h=1/3600に設定されてもよい。これは、1時間前までのデータの重みが3599/3600であり、最新の1秒のデータの重みが1/3600であることを意味する。
【0052】
次に、
図5を参照しながら、コンピュータ100をインセンティブ計算装置15として機能させるためのインセンティブ計算プログラムPRを説明する。
図5は、記録媒体に記録されたインセンティブ計算プログラムの構成を示す図である。
【0053】
図5に示されるように、インセンティブ計算プログラムPRは、メインモジュールPM50、判定モジュールPM51、取得モジュールPM52、計算モジュールPM53、計算モジュールPM54、及び出力モジュールPM55を備える。メインモジュールPM50は、インセンティブの計算に係る処理を統括的に制御する部分である。判定モジュールPM51、取得モジュールPM52、計算モジュールPM53、計算モジュールPM54、及び出力モジュールPM55を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記実施形態における判定部51、取得部52、計算部53、計算部54、及び出力部55の機能と同様である。
【0054】
インセンティブ計算プログラムPRは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及び半導体メモリ等の有形の記録媒体MDに固定的に記録された状態で提供される。インセンティブ計算プログラムPRは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0055】
次に、
図6~
図8を参照しながら、駐車場の利用シミュレーションの結果を説明する。
図6は、駐車場の利用シミュレーションに用いられる駐車場間の所要時間を示す図である。
図7は、
図1に示されるインセンティブ計算装置が用いられた場合のシミュレーション結果を示す図である。
図8は、比較例のシミュレーション結果を示す図である。
【0056】
図6に示されるように、利用シミュレーションでは、対象エリアに6つの駐車場P
A~P
Fが存在すると仮定している。駐車場P
Fは大規模な商業施設の近傍に位置し、平準化のための特別な対策が講じられない場合には、駐車場P
Fは満車となる傾向にあるとする。ここで、駐車場P
Aの収容可能台数は200台であり、駐車場P
Bの収容可能台数は700台であり、駐車場P
Cの収容可能台数は200台であり、駐車場P
Dの収容可能台数は200台であり、駐車場P
Eの収容可能台数は200台であり、駐車場P
Fの収容可能台数は2000台である。
【0057】
図6に示されるように、対象エリアに存在する2つの駐車場間は、徒歩での所要時間が2~7分程度の距離だけ離れている。任意の時間間隔で、対象エリアのいずれかの駐車場に車両が駐車され、任意の時間間隔で、対象エリアから車両が退場する。ユーザは、駐車場を選択する際に、インセンティブの他に徒歩による移動時間(所要時間)を考慮するものとする。ただし、インセンティブ計算システム10は、ユーザがいかなる基準で駐車場を選択するかには関知できない。インセンティブ計算装置15によるインセンティブの計算は、1秒ごとに行われる。忘却率wとしては0.9999が用いられ、学習率hとしては0.0001が用いられる。初期状態(経過時間が0秒)では、駐車場P
A~P
Fの利用率及びインセンティブは0である。
【0058】
図7及び
図8の上段のグラフの縦軸は利用率を示す。
図7及び
図8の下段のグラフの縦軸はインセンティブ(単位:円)を示す。
図7及び
図8の各グラフの横軸は、経過時間(単位:秒)を示す。
図8に示されるように、インセンティブが無い場合には、駐車場P
Fは早いタイミングで満車となる。一方、
図7に示されるように、インセンティブ計算装置15によってインセンティブが計算される場合には、駐車場P
Fは満車となることがなく、駐車場P
A~P
Fの利用率が平準化されていることが分かる。
【0059】
次に、インセンティブ計算装置15、インセンティブ計算方法、及びインセンティブ計算プログラムPRの作用効果を説明する。
【0060】
例えば、駐車場Piの利用率Riを平準化する場合、インセンティブyiが頻繁に変更されることは望ましくない。例えば、混雑する傾向にある駐車場Piの駐車スペースが何らかの要因で一時的に空いたとき、現在の利用率Riのみを用いてインセンティブyiが計算されると、多くの車両が当該駐車場Piに来場し、駐車場Piが一層混雑するおそれがある。これに対して、インセンティブ計算装置15、インセンティブ計算方法、及びインセンティブ計算プログラムPRでは、前回インセンティブ基準値x’iと、各駐車場Piによって供給される駐車スペースの利用率Riと、に基づいて、インセンティブ基準値xiが計算され、インセンティブ基準値xiに基づいてインセンティブyiが計算される。このように、前回インセンティブ基準値x’iが考慮されてインセンティブ基準値xiが計算されるので、前回インセンティブ基準値x’iがインセンティブ基準値xiに影響を及ぼし得る。したがって、インセンティブ基準値xiに基づいて計算されるインセンティブyiは、前回のインセンティブによって示される傾向を引き継ぐことができる。その結果、各インセンティブyiの急激な変動を抑制することが可能となる。
【0061】
さらに、各駐車場Piの収容可能台数Ni及び駐車台数niを用いて、インセンティブyiが計算されるので、ユーザ固有の情報を取得する必要が無い。言い換えると、利用率Riはユーザがどの駐車場を選択したかという意思決定の結果を示すので、ユーザ固有の情報を用いることなく、インセンティブyiを計算することができる。
【0062】
計算部53は、前回インセンティブ基準値x’iと、利用率Riから目標利用率Rtiを減算することによって得られた差分Diと、に基づいて、インセンティブ基準値xiを計算する。この構成によれば、上記差分Diに応じたインセンティブyiが計算される。したがって、利用率Riを目標利用率Rtiに近づけることができる。
【0063】
目標利用率Rtiは、駐車場P1~PMが供給する全駐車スペースの利用率である全体利用率に設定される。したがって、各駐車場Piの利用率Riを全体利用率に近づけることができるので、駐車場Piの利用率Riを平準化することが可能となる。
【0064】
計算部53は、前回インセンティブ基準値x’iがインセンティブ基準値xiに与える影響度を規定するための忘却率wに更に基づいて、インセンティブ基準値xiを計算する。この構成によれば、忘却率wによって前回インセンティブ基準値x’iの影響度を調整することができる。例えば、忘却率wをある程度大きくすることによって、インセンティブ基準値xiの変動を抑制することができるので、インセンティブyiの急激な変動をより一層抑制することが可能となる。
【0065】
例えば、差分D
iに比例した値を前回インセンティブ基準値x’
iに足し込んでいく手法では、インセンティブによる平準化が功を奏さなかった場合(差分D
iが変化しなかった場合)、インセンティブ基準値x
iの絶対値が増加し続ける可能性がある。一方、忘却率wは、0より大きく、1より小さい値である。したがって、忘却率wは、インセンティブ基準値x
iの発散(過度な増大及び減少)を防止することができる。具体的に説明すると、上記式(1)によれば、仮に差分D
iが変化しなかったとしても、インセンティブ基準値x
iは、式(7)に示される値に収束する。この値は学習率hにも依存しているが、忘却率wが0より大きく1より小さい値であることによって、インセンティブ基準値x
iの収束性が保証される。つまり、学習率hの調整だけでは、インセンティブ基準値x
iの収束性が保証されない。
【数7】
【0066】
計算部53は、差分Diがインセンティブ基準値xiに与える影響度を規定するための学習率hに更に基づいて、インセンティブ基準値xiを計算する。この構成によれば、学習率hによって差分Diの影響度を調整することができる。例えば、学習率hをある程度小さくすることによって、インセンティブ基準値xiの変動を抑制することができるので、インセンティブyiの急激な変動をより一層抑制することが可能となる。つまり、利用率Riの変化に鋭敏に反応することなく、緩やかにインセンティブ基準値xi及びインセンティブyiを変化させることができる。式(7)に示されるように、学習率hは、忘却率wと併せてインセンティブ基準値xiの収束の速さを調整し得る。
【0067】
なお、本開示に係るインセンティブ計算装置、インセンティブ計算方法、及びインセンティブ計算プログラムは上記実施形態に限定されない。
【0068】
上記実施形態では、供給家として駐車場が用いられ、資源として駐車スペースが用いられているが、資源は、供給家によって供給される供給可能量が限られている資源であればよく、供給家は当該資源を供給する供給家であればよい。資源の別の例としては、道路の通行スペース、電力、及び施設(例えば、店舗)内の座席数が挙げられる。
【0069】
上記実施形態では、複数の駐車場が提供する駐車スペースの利用率の平準化という空間的な利用率の平準化を行うためにインセンティブyiがユーザに付与されている。時間的な利用率の平準化を行うために、インセンティブyiがユーザに付与されてもよい。例えば、予約及び需要予測の概念を導入しつつ、インセンティブ基準値xi及びインセンティブyiの時系列情報を用いて同様の計算を行うことにより、時間的な利用率の平準化を行うこともできる。例えば、1つの映画館の座席を予約する場合、1つの映画館であっても時間帯ごとに異なる供給家として扱われる。映画館によって提供される時間帯ごとの座席の利用率を用いて、上記実施形態と同様の計算が行われる。
【0070】
このように、資源に対する需要の時間的及び空間的な偏りに対して、インセンティブに基づき不特定多数の需要家の行動を誘導することで、時間的及び空間的な偏りを平準化することができる。
【0071】
例えば、データ収集装置11が各駐車場Piに設けられた計測器3から駐車台数niを受信するごとに、インセンティブ計算装置15がインセンティブの計算を行う場合には、インセンティブ計算装置15は、判定部51を備えていなくてもよい。インセンティブ計算装置15は、駐車台数データベース12、駐車場データベース13、及びインセンティブデータベース14の少なくとも1つを備えていてもよい。
【0072】
道路交通量への影響を考慮して、複数の駐車場P
iの利用率R
iを完全には平準化しないで、駐車場P
i間の利用率R
iに差を付けることが望まれることがある。例えば、市街地の中心部から離れた駐車場P
iの利用率R
iが全体利用率よりもやや高めに設定されることがある。この場合、計算部53は、全体利用率に基づいて目標利用率Rt
iを設定(計算)する。具体的には、計算部53は、係数r
iを用いて目標利用率Rt
iを計算する。式(8)に示されるように、計算部53は、全体利用率と係数r
iとを乗算することによって、目標利用率Rt
iを計算する。係数r
iは、駐車場P
iの利用率R
iを全体利用率と比較してどの程度高く(低く)するかの指標である。係数r
iは、駐車場P
iごとに異なる値に設定され得る。例えば、係数r
iが1.1に設定されることは、駐車場P
iの利用率R
iを全体利用率よりも10%高くすることに対応する。係数r
iが0.9に設定されることは、駐車場P
iの利用率R
iを全体利用率よりも10%低くすることに対応する。なお、係数r
iが1に設定されることによって、式(4)が得られる。
【数8】
【0073】
この構成によれば、目標利用率Rtiが全体利用率を基準とした値となるので、全体利用率と比較して各駐車場Piの利用率Riをどの程度高くするか又は低くするか調整することができる。
【0074】
平準化システム1がシェアリングシステムに適用されてもよい。この場合、各駐車場P
iはシェアカーを停泊させる場所であり、各駐車場P
iが供給する資源はシェアカーである。ユーザ端末20のユーザは、対象エリア内の駐車場P
iに駐車されているシェアカーを借りる。この場合、駐車場P
iにおいて、収容可能台数N
iから駐車台数n
iを減算することによって得られた値が、ユーザに貸し出されたシェアカーの台数とみなされ得る。したがって、式(9)に示されるように、計算部53は、収容可能台数N
iから駐車台数n
iを減算することによって得られた値を、収容可能台数N
iで除算することによって、各駐車場P
iにおけるシェアカーの利用率R
iを計算する。同様に、式(10)に示されるように、計算部53は、すべての駐車場P
1~P
Mの収容可能台数の総台数(収容可能台数N
iの総和)からすべての駐車場P
1~P
Mに駐車しているシェアカーの総台数(駐車台数n
iの総和)を減算することによって得られた値を、すべての駐車場P
1~P
Mの収容可能台数の総台数で除算することによって、全体利用率を計算し、全体利用率を目標利用率Rt
iとする。
【数9】
【数10】
【0075】
この構成によれば、全体利用率よりも利用率Riが低いほど、インセンティブ基準値xiが大きくなり、インセンティブyiも大きくなる。したがって、特定の駐車場のシェアカーのみ集中して利用される事態を回避することができる。
【0076】
上記実施形態では、インセンティブy
iとして、ポイント、及びクーポン等がユーザに付与されているが、インセンティブy
iの付与形態はこれらに限られない。例えば、駐車料金の単価にインセンティブy
iが反映されてもよい。この場合、計算部54は、インセンティブ基準値x
iに基づいて、インセンティブy
iが反映された駐車料金の単価u
iを計算する。具体的には、式(11)に示されるように、計算部54は、インセンティブ基準値x
iとスケーリング係数βとを乗算することによって得られた値を、駐車場P
iの駐車料金の単価の基準値U
iから減算することによって、単価u
iを計算する。スケーリング係数βは0より大きい値である。なお、インセンティブ基準値x
iが負の値である場合には、単価u
iは基準値U
iよりも高くなる。
【数11】
【0077】
インセンティブy
iはインセンティブ基準値x
iに比例していなくてもよい。クーポンのように、一定額でインセンティブy
iが付与される場合には、計算部54は、定額のインセンティブy
iを計算する。例えば、式(12)に示されるように、計算部54は、式(5)によって計算されたインセンティブが定額Y
i以上になった場合にのみ、定額Y
iをインセンティブy
iとしてもよい。計算部54は、式(5)によって計算されたインセンティブの大きさに応じて、段階的に設定された定額をインセンティブy
iとしてもよい。
【数12】
【符号の説明】
【0078】
1 平準化システム
3 計測器
10 インセンティブ計算システム
11 データ収集装置
12 駐車台数データベース
13 駐車場データベース
14 インセンティブデータベース
15 インセンティブ計算装置
20 ユーザ端末
51 判定部
52 取得部
53 計算部(第1計算部)
54 計算部(第2計算部)
55 出力部
100 コンピュータ
101 プロセッサ
102 記憶装置
103 入力装置
104 出力装置
105 通信装置
MD 記録媒体
P1~PM 駐車場(供給家、第1供給家)
PR インセンティブ計算プログラム