(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112965
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】外装シート及び抗ウイルス性カード
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20220727BHJP
G09F 1/02 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B32B33/00
G09F1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009023
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】澤田 拓麻
(72)【発明者】
【氏名】赤間 浩紀
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH02A
4F100AH02C
4F100AH04A
4F100AH04C
4F100AH05A
4F100AH05C
4F100AJ11A
4F100AJ11C
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK15D
4F100AK41A
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100AK42D
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
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4F100CA30A
4F100CA30C
4F100EH46
4F100EJ38B
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4F100JN01B
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】優れた抗ウイルス性及び優れた意匠性を有する外装シート及び抗ウイルス性カードを提供する。
【解決手段】外装シート1は、基材シート2と、基材シート2の少なくとも一方の面に形成された表面層3と、を備え、表面層3は、有機系抗ウイルス剤を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの少なくとも一方の面に形成された表面層と、を備え、
前記表面層は、有機系抗ウイルス剤を含む
ことを特徴とする外装シート。
【請求項2】
前記表面層は、樹脂と前記有機系抗ウイルス剤と、を含み、
前記樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、
前記有機系抗ウイルス剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の外装シート。
【請求項3】
前記有機系抗ウイルス剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対し、5質量部以上10質量部以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項2に記載の外装シート。
【請求項4】
前記表面層の膜厚は、4.5μm以上8.5μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の外装シート。
【請求項5】
前記表面層は、ポリエチレンワックスを含む
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の外装シート。
【請求項6】
前記表面層は、前記基材シート側に位置する第1の表面層と、前記基材シートとは反対側に位置する第2の表面層と、を少なくとも備え、
前記第2の表面層に、前記有機系抗ウイルス剤を含む
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の外装シート。
【請求項7】
前記第2の表面層の膜厚は、3.5μm以上5.5μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の外装シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の外装シートと、
前記外装シートが少なくとも一方の面に設けられたコア基材と、を備える
ことを特徴とする抗ウイルス性カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定期券,乗車券,入場券,プリペイドカード,クレジットカード,キャッシュカード,ポイントカード,各種有価証券,身分証明書等の情報記録媒体のうち、樹脂を主材料とするカード型媒体の最表層に用いることが可能な抗ウイルス性を有する外装シート、及び当該外装シートを設けた抗ウイルス性カードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗菌・抗ウイルス性能の需要が高まり、特に抗ウイルス性能を付与した抗ウイルス製品の開発が急務となっている。これに伴い、人の手に触れる頻度が高いクレジットカードやキャッシュカード等といったカード型媒体に対しても抗ウイルス性の付与の必要性が高まっている。
【0003】
従来、抗菌性を有するシュリンクフィルムで物品を被覆することで、物品の表面に抗菌性を付与する技術が知られている。シュリンクフィルムに抗菌性を付与する技術としては、例えば、抗菌剤を練りこんだ樹脂などをフィルム状に成形する技術知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、樹脂(プラスチック)を主材料とするカードは、樹脂材料の積層体であって、表裏の最表層にあたる面には、フィルム状の外装シートが設けられている。外装シートに抗ウイルス剤を添加することで、プラスチックカードに抗ウイルス性能を付与することができる。
しかしながら、従来の技術により抗ウイルス剤を練り込んだ樹脂を成形して外装シートを製造する場合、成形用樹脂における抗ウイルス剤の添加量が多いと外装シートに白濁が生じ、意匠性が損なわれるおそれがある。
【0006】
一方で、樹脂に練り込む抗ウイルス剤の添加量が減少すると白濁が抑制されて意匠性は確保されるが、外装シートの最表層に存在する抗ウイルス剤の量が減少するため、抗ウイルス剤がウイルスと接触しづらくなり、結果として抗ウイルス効果を十分に発揮されないことがある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、優れた抗ウイルス性及び優れた意匠性を有する外装シート及び抗ウイルス性カードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る外装シートは、基材シートと、前記基材シートの少なくとも一方の面に形成された表面層と、を備え、前記表面層は、有機系抗ウイルス剤を含んでいる。
【0009】
また、本発明の他の態様に係る抗ウイルス性カードは、前記外装シートと、前記外装シートが少なくとも一方の面に設けられたコア基材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、抗ウイルス性及び意匠性に優れた外装シート及び抗ウイルス性カードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る外装シートの一構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る外装シートの一構成例を示す断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る抗ウイルス性カードの一構成例を示す断面図である。
【
図4】本発明の第三実施形態の変形例に係る抗ウイルス性カードの一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明を行う。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
1.第一実施形態
(外装シート1の基本構成)
本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る外装シートの基本構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の外装シート1の概略構成を示す断面模式図である。
本実施形態に係る外装シート1は、基材シート2と基材シート2の表面に積層された表面層3とを備えている。
図1では、基材シート2の表裏の両面に表面層3を形成した構成例を示しているが、本実施形態に係る外装シート1において、表面層3は、基材シート2の少なくとも一方の面に形成されていればよい。
【0014】
本実施形態に係る外装シート1は、カード型媒体(以下、単に「カード」と称する)の最表面(最外面)に位置する層(最表層)として適用される。上述のように、本実施形態に係る外装シート1は、基材シート2と、基材シート2の少なくとも一方の面に形成された表面層3と、を備えている。外装シート1において、基材シート2の少なくとも一方の面に表面層3を塗工することにより、カード表面における耐久性向上や印刷保護の効果を奏する。また、
図1に示すように、基材シート2の表裏両面に表面層3を塗工することにより、当該効果をより向上することができる。
以下、基材シート2、表面層3の各層について詳細に説明する。
【0015】
(基材シート2)
基材シート2は、外装シート1の基材となる層である。本実施形態では、基材シート2として、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0016】
基材シート2の材料としては、熱可塑性樹脂のうちポリエチレンテレフタレート(PET)が好適に用いられる。基材シート2の材料にポリエチレンテレフタレートを使用する場合には、例えば、透明な二軸延伸PETを用いてもよい。
【0017】
基材シート2の厚さは、40μm以上60μm以下の範囲内であることが好ましい。基材シート2の厚さが40μm以上である場合、外装シート1の塗工仕上がりを良好にすることができる。
また、基材シート2の厚さが60μm以下である場合、基材シート2を必要以上に厚く形成することがなく外装シートが貼付されるプラスチックカードの製造時における加工適正が向上するとともに、外装シート1の製造コストを削減することができる。なお、基材シート2の厚さは、カードの物理的特性について規定したJIS規格(JISX6301:2005)で規定されたカードの厚さ(680μm以上840μm以下)を満たす範囲内で設計されていればよい。
【0018】
(表面層3)
表面層3は、基材シート2上に形成される層であり、外装シート1に耐傷性、耐摩耗性、耐汚染性などの機能を付与するために設けられる層である。また、表面層3は、外装シート1をカードの最表層として積層加工する際に、外装シート1とカードとを接着する接着層として機能する。
図1に示すように、表面層3は外装シート1の最表面(最外面)に位置する層(最表層)である。
本実施形態に係る外装シート1において表面層3は、例えばグラビアコート法によって基材シート2の表面に塗工される。なおこれに限られず、表面層3は、ロールコート法等の各種塗工法等によって基材シート2に塗工されてもよい。また、表面層3は、外装シート1の形成対象であるカードのコア基材上に施された印刷内容(文字や模様、絵柄等)を透視可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0019】
〔樹脂材料〕
表面層3は樹脂材料を含んで構成される。表面層3に用いられる樹脂材料としては、例えば基材シート2と同様に、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0020】
表面層3に用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0021】
表面層3に用いる熱可塑性樹脂としては、既に列挙した多くの種類から、適宜選択して使用すればよい。特に、一般的なカード用の外装シートとしての用途に好適なのは、ポリエステル系樹脂である。つまり、表面層3は、樹脂材料としてポリエステルを含んで構成されていてもよい。
【0022】
また、表面層3に用いられる樹脂材料としては、例えば紫外線硬化型樹脂を用いてもよい。表面層3に用いる紫外線硬化型樹脂としては、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂,シリコーン系樹脂,ポリエステル系樹脂,ウレタン系樹脂,アミド系樹脂,エポキシ系樹脂等を挙げることができる。
【0023】
また、表面層3に用いられる樹脂材料としては、例えば熱硬化型樹脂を用いてもよい。熱硬化型樹脂としては、特に制限はなく、例えば1液又は2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを挙げることができる。
【0024】
〔抗ウイルス剤〕
また本実施形態に係る外装シート1において、表面層3は、抗ウイルス剤を含んでいる。これにより、人や物が触れるカードの最表面、すなわち外装シート1の最表面において抗ウイルス効果が発揮され、成型用樹脂(例えば基材シート)中に抗ウイルス剤が添加される場合と比べて、外装シート1に優れた抗ウイルス性を付与することができる。また、抗ウイルス剤は、樹脂に添加した場合に白色を呈する場合があるが、外装シート1において抗ウイルス剤を添加する対象が表面層3に限定されることにより、抗ウイルス剤が成形用樹脂(例えば基材シート2)に練り込まれる場合に比べて外装シート1の白濁を抑制することができる。このため、外装シート1の意匠性を向上することができる。
【0025】
本実施形態において、表面層3に添加される抗ウイルス剤は、有効成分が有機系材料である。つまり、表面層3は、有機系抗ウイルス剤を含んでいる。これにより、本実施形態による外装シート1には、優れた抗ウイルス性が付与され、さらに抗ウイルス効果の持久性に優れた外装シートとなる。また、有機材料による抗ウイルス剤は、無機材料による抗ウイルス剤(無機系抗ウイルス剤)に比べて、即効性の抗ウイルス効果を発揮することができる。また、無機系抗ウイルス剤を用いると、表面層3や表面層3と接する基材シート2に変色などの影響が生じる場合がある。これらの点を鑑みると、表面層3に添加する抗ウイルス剤は、有機系抗ウイルス剤が好ましい。
【0026】
本実施形態による外装シート1において、表面層3に添加する有機系抗ウイルス剤としては、例えば、ハロカルバン、クロロフェネシン、塩化リゾチーム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヘキサクロロフェン、ベルベリン、チオキソロン、サリチル酸およびそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ヘキサクロロフェン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、チアントール、ヒノキチオール、トリクロサン、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、モノニトログアヤコールナトリウム、ウイキョウエキス、サンショウエキス、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及びウンデシレン酸誘導体、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、スチレンスルホン酸塩を含む共重合体、陰イオン系ナトリウム塩等が挙げられる。
【0027】
本実施形態において、表面層3中には、上記した有機系抗ウイルス剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の有機系抗ウイルス剤が含まれていてもよい。
このように、本実施形態に係る外装シート1において、表面層3は、樹脂材料と有機系抗ウイルス剤とを含んでいる。表面層3中に樹脂材料と抗ウイルス剤(本例では、有機系抗ウイルス剤)とが含有されることで、樹脂材料がバインダーとなり、カードの製造工程やユーザのカード使用環境下において抗ウイルス剤の欠落を抑制し、抗ウイルス性能を維持することができる。
【0028】
本実施形態において、表面層3における有機系抗ウイルス剤の含有量は、表面層3における樹脂100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましい。抗ウイルス剤の含有量が当該範囲内であることにより、外装シート1に対して優れた抗ウイルス性を確実に付与することができ、さらに外装シート1の白濁をより抑制して意匠性を向上することができる。
一方、表面層3における有機系抗ウイルス剤の含有量が、表面層3における樹脂100質量部に対して5質量部未満であると、抗ウイルス効果の発現が安定せず、抗ウイルス効果が低減し得る。また、抗ウイルス剤の含有量が、表面層3における樹脂100質量部に対して20質量部を超えると、外装シート1の白濁が十分に抑制されず意匠性が低減し得る。さらに、抗ウイルス剤の含有量が20質量部を超過すると、外装シート1の加工適性が低減し、例えばカードに対して外装シート1を熱圧着によって貼り合わせる場合に、カードと外装シート1との密着性が低減する場合もある。
【0029】
なお、外装シート1の白濁を抑制する方法としては、表面層3の薄膜化という方法も想定されるが、膜厚が薄くなると、カード製造工程での外装シート1の加工適性が低下するとともに、外装シート1、すなわちカード表面の耐摩擦性が低下してカードの耐久性が低下し得る。これに対し、本実施形態に係る外装シート1では、有機系抗ウイルス剤の添加量を上述の範囲内とすることで、加工適性と耐久性とを維持しつつ、外装シートの白濁を抑制して意匠性を向上することができる。また、カードに対して外装シートを熱圧着する場合に外装シートとカードとの密着性を向上させることができる。
【0030】
また、表面層3における有機系抗ウイルス剤の含有量は、表面層3における樹脂100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下の範囲内であることがさらに好ましい。抗ウイルス剤の含有量が当該範囲内であることにより、外装シート1に優れた抗ウイルス性を確実に付与し、且つ外装シート1の白濁をさらに抑制して意匠性をより向上することができる。
【0031】
また、本発明において、外装シート1の表面層3が含有する抗ウイルス剤は、有機系抗ウイルス剤に限定されない。表面層3には、無機系抗ウイルス剤が含有されていてもよい。
無機系抗ウイルス剤は、抗ウイルス効果の点で銀系材料であることが好ましい。無機系抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等が使用できる。
また、抗ウイルス剤は銀系材料が無機材料に担持されている構成であってもよい。「無機材料」としては、例えば「ガラス」を使用できるが、「無機材料」はガラスに限定されない。銀を無機物に担時させることで、経時での銀成分の脱落や、基材シート2への転移を防ぐことができる。無機系抗ウイルス剤は抗ウイルス効果の持続性に優れているため、無機系抗ウイルス剤を添加することにより、抗ウイルス効果の持続性をより向上させることができる。
【0032】
表面層3には、上記した無機系抗ウイルス剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の無機系抗ウイルス剤が含まれていてもよい。また。有機系抗ウイルス剤と無機系抗ウイルス剤とを混合して用いてもよい。無機系抗ウイルス剤を用いる場合も、表面層3における抗ウイルス剤の含有量は、無機系抗ウイルス剤を用いる場合と同様に、5質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましく、5質量部以上10質量部以下の範囲内であることがより好ましい。
【0033】
〔膜厚〕
また、本実施形態において表面層3の厚さ(膜厚)は4.5μm以上8.5μm以下の範囲内であることが好ましい。表面層3の膜厚が当該範囲内であることにより、表面層3の耐久性および加工適性を向上することができる。
【0034】
カードの製造工程では、外装シート1の表面層3に対して、磁気テープ(不図示)の転写形成やホログラム加工(印刷)等が行われるが、膜厚が4.5μm未満の場合、加工適性が低下して磁気テープ形成やホログラムの加工が困難となる場合がある。また、表面層3の膜厚が4.5μm未満の場合、耐久性が不十分となり実使用に耐えない場合がある。 また、表面層3の膜厚が8.5μmを超える場合、外装シート1の剛性が高くなり加工の容易性が低下し得る。また、表面層3の膜厚が8.5μmを超えると、磁気テープに転写形成の際に磁気テープが表面層3の表層付近より内部に埋め込まれて、磁気テープが形成されていない箇所との段差が拡大し、外装シート1の表面、つまりカード表面の平滑性が低減する場合がある。
【0035】
また、本実施形態に係る外装シート1において表面層3は、ポリエチレンワックスを含んで構成されてもよい。ポリエチレンワックスを表面層3に添加することにより、例えば表面層3の表面粗さが小さくなり、外装シート1の最表面における摩擦抵抗が低下する。これにより、外装シート1の最表層である表面層3に耐傷性や耐磨耗性が付与され、結果として、外装シート1を最表層とするカードの耐傷性や耐磨耗性を向上させることができる。表面層3におけるポリエチレンワックスの含有量は、表面層3における樹脂100質量部に対して0.6質量部以上1.0質量部以下の範囲内が好ましい。含有量が0.6質量部未満の場合、耐傷性や耐摩耗性を付与することができず、1.0質量部を超えると表面層3に白化が生じる場合がある。ポリエチレンワックスの含有量が上述の範囲内であることにより、表面層3の他の機能(抗ウイルス性、意匠性および耐久性、密着性など)を維持しつつ、さらに耐傷性や耐摩耗性を付与することができる。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る外装シート1は、基材シート2と、基材シート2の少なくとも一方の面に形成された表面層3と、を備え、表面層3は、有機系抗ウイルス剤を含んでいる。
これにより、外装シート1は、優れた抗ウイルス性を有するとともに、抗ウイルス剤の添加による白濁が抑制されて意匠性を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る外装シート1は、樹脂と有機系抗ウイルス剤と、を含み、当該樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、有機系抗ウイルス剤の含有量は、当該樹脂100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下の範囲内であってもよい。
これにより、外装シート1に対して優れた抗ウイルス性を確実に付与することができ、さらに外装シート1の白濁をより抑制して意匠性を向上することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る外装シート1において、有機系抗ウイルス剤の含有量は、樹脂100質量部に対し、5質量部以上10質量部以下の範囲内であってもよい。
これにより、外装シート1に対して優れた抗ウイルス性を確実に付与することができ、さらに外装シート1の白濁をより確実に抑制して意匠性を向上することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る外装シート1において、表面層3の膜厚は、4.5μm以上8.5μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、表面層3の耐久性を向上するとともに、磁気テープの転写形成やホログラム加工時の加工適性を向上することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る外装シート1において、表面層3はポリエチレンワックスを含んでいてもよい。
これにより、外装シート1および外装シート1を最表層とするカードの耐傷性や耐磨耗性を向上させることができる。
【0041】
2.第二実施形態
(外装シート10の構成)
本発明の第2実施形態に係る外装シートについて、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る外装シート10の一構成例を説明するための断面図である。
外装シート10は、基材シート2の少なくとも一方の面側に、複層構造の表面層30を備える点で、上記第一実施形態に係る外装シート1と相違する。
【0042】
以下、表面層30について説明する。なお、基材シート2については、外装シート1と同様の構成であるため説明を省略する。
【0043】
(表面層30)
図2に示すように、表面層30は、基材シート2側に位置する第1表面層31と、前記基材シート2とは反対側に位置する第2表面層32と、を少なくとも備えている。つまり、本実施形態において表面層30は2層構造を有している。本実施形態において、第1表面層31には抗ウイルス剤は含まれず、第2表面層32に抗ウイルス剤(本例では、有機系抗ウイルス剤)が含まれている。つまり、2層構造の表面層30において、有機系抗ウイルス剤は、最表層である第2表面層32に添加されている。これにより、表面層30を2層構成にした場合においても、外装シート10の最表面、すなわちカードの最表面において抗ウイルス効果が発揮され、外装シート10に優れた抗ウイル性を付与することができる。
【0044】
また、表面層30が抗ウイルス剤を含まない第1表面層31と抗ウイルス剤を含む第2表面層32との2層構造であって、第2表面層32のみが抗ウイルス剤を含有することにより、表面層30の白濁がさらに抑制されて外装シート10および外装シート10を設けたカードの意匠性をより向上することができる。また、表面層30が2層構造であることで、外装シート10を最表層とするカードの物性を確保したうえで、抗ウイルス性能を発揮することができる。また、2層構造の表面層30では、基材シート2側に抗ウイルス剤を含まない第1表面層31が配置される。このため、基材シート2上への表面層30の塗工時において、基材シート2の表面における接着成分(樹脂成分)の割合が相対的に高くなり、基材シート2と表面層30との密着性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態に係る外装シート10において、表面層30の第1表面層31および第2表面層32に用いる樹脂材料は、上記第一実施形態に係る外装シート1の表面層3に用いる樹脂材料と同様であるため、説明は省略する。また、表面層30においては、第1表面層31と第2表面層32とで同じ樹脂材料を含んでもよいし、異なる樹脂材料を含んでいてもよい。
【0046】
また、本実施形態に係る外装シート10において、表面層30の第2表面層32に用いる有機系抗ウイルス剤は、上記第一実施形態に係る外装シート1の表面層3に用いる有機系抗ウイルス剤と同様であり、含有量の範囲も同等であるため、説明は省略する。また、表面層30は、上記表面層3と同様に、ポリエチレンワックスを添加してもよい。ポリエチレンワックスは、最表層である第2表面層32に添加してもよいし、第1表面層31及び第2表面層32の両方に添加してもよい。
【0047】
また、本実施形態において、表面層30全体の膜厚(第1表面層31および第2表面層32の膜厚の合計)は、上記第一実施形態における表面層3と同様に、4.5μm以上8.5μm以下の範囲内が好ましい。
【0048】
より詳細には、表面層30において、有機系抗ウイルス剤が含まれる第2表面層32の厚さ(膜厚)は、3.5μm以上5.5μm以下の範囲内が好ましい。第2表面層32の膜厚が当該範囲内であることにより、表面層30の耐久性および加工適性、加工容易性をより向上するとともに、外装シート10の表面の平滑性をより向上することができる。また、第2表面層32の厚さ(膜厚)は、4.0μm以上5.0μm以下の範囲内がさらに好ましい。これにより、表面層30の耐久および加工適正をさらに向上させることができる。
また、表面層30において、有機系抗ウイルス剤が含まれない第1表面層31の厚さ(膜厚)は、3.0μm以上5.0μm以下の範囲内が好ましい。第1表面層31の膜厚が当該範囲内であることにより、基材シート2と表面層30との密着性を向上することができる。
【0049】
なお、本実施形態において表面層30は2層構造であるとしたが、本発明はこれに限られない。表面層30は、例えば3層以上で形成されてもよい。表面層30が3層以上で構成される場合、少なくとも最表層(基材シート2と反対側の最表面)に有機系抗ウイルス剤を含む層(第2表面層32)が形成されていればよい。これにより、表面層30が3層以上ある場合も、外装シート10に優れた抗ウイルス性および意匠性を付与することができる。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態に係る外装シート10において、表面層30は、基材シート2側に位置する第1表面層31と、基材シート2とは反対側に位置する第2表面層32と、を少なくとも備え、第2表面層32に、有機系抗ウイルス剤を含んでいてもよい。
これにより、外装シート10に優れた抗ウイルス性が付与されるとともに、白濁がさらに抑制されて意匠性がさらに向上し、且つ基材シート2と表面層30との密着性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る外装シート10において、第2表面層32の膜厚は、3,5μm以上5.5μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、外装シート10の意匠性および耐久性をより向上させることができる。
【0052】
3.第三実施形態
(カード100の構成)
本発明の第3実施形態に係る樹脂製のカードについて、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第3実施形態に係るカード100の一構成例を説明するための断面図である。本実施形態に係るカードは、樹脂を主材料とするカード型の情報記録媒体であり、例えば定期券,乗車券,入場券,プリペイドカード,クレジットカード,キャッシュカード,ポイントカード,各種有価証券,身分証明書等として用いられる。
【0053】
(カードの構成)
カード100は、外装シート1と、外装シート1が少なくとも一方の面に設けられたコア基材20と、を備えている。すなわち、カード100は、コア基材20を備える点で、第一実施形態に係る外装シート1と相違する。
以下、コア基材20及びカード100の製造工程について説明する。なお、外装シート1は、上記第1実施形態に係る外装シート1と同一であるため、説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係るカード100は、コア基材20の少なくとも一方の面に外装シート1を積層する構成を有することにより優れた抗ウイルス性を有する。本発明及び本明細書において、抗ウイルス性を有する外装シートを設けることで、抗ウイルス性が付与されたカードを「抗ウイルス性カード」という。また、上述のように外装シート1は、抗ウイルス剤の添加による白濁が抑制されている。このため、例えばコア基材20上に施された印刷内容等の視認性が向上し、カード100に高い意匠性が付与される。なお、
図2ではコア基材20の表裏の両面に外装シート1が形成された構成例を示している。
【0055】
カード100のコア基材20としては、例えば外装シート1における上記基材シート2と同様に、熱可塑性樹脂を用いることができる。
コア基材20に用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0056】
本実施形態では、一般的なカード用のコア基材20として、熱可塑性樹脂のうちポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリ塩化ビニル(PVC)を好適に用いることができる。コア基材20と外装シート1とを含めたカード100の厚さは、上記のJIS規格の規定により0.68mm以上0.84mm以下(680μm以上840μm以下)の範囲内であることが好ましい。したがって、外装シート1の厚さを考慮した上で、カード100の厚さが当該範囲内となるように適宜設計すればよい。
【0057】
本実施形態に係るカード100の製造工程では、ラミネートプレスによってコア基材20の表面に外装シート1が圧着され、コア基材20と外装シート1とが貼り合わされる。これにより、コア基材20と外装シート1との積層体としてカード100が作製される。カード100の製造工程では、ラミネート加工時において多段ラミネート方式を採用したプレス機を用いてもよい。また、カード100の製造工程では、例えばラミネート加工後において、カード100の最表層に形成された外装シート1(より具体的には、表面層3)に、磁気テープの転写形成やホログラムの加工(例えば印刷やシール貼付)を行ってもよい。上述のように、外装シート1は、表面層3の厚みが4.5μm以上8.5μm以下の範囲内であることにより、優れた加工適正を有している。このため、磁気テープの形成やホログラムの加工を好適に行うことができる。また、磁気テープを転写形成した場合も、表面層3、すなわちカード100の最表面の平滑性を維持することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係るカード100は、外装シート1と、外装シート1が少なくとも一方の面に設けられたコア基材20と、を備える。これにより、カード100に優れた抗ウイルス性と意匠性とを付与することができる。
【0059】
(変形例)
本実施形態に係るカードの変形例について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態の変形例によるカード100の一構成例を説明するための断面模式図である。
図4に示すように、カード100は、上記第二実施形態に係る外装シート10と、外装シート10が少なくとも一方の面に設けられたコア基材20と、を備える構成であってもよい。これにより、カード100は優れた抗ウイルス性を有するとともに、白濁がさらに抑制される。このため、例えばコア基材20上に施された印刷内容等の視認性がより向上し、カード100にさらに高い意匠性が付与される。なお、
図4ではコア基材20の表裏の両面に外装シート10が形成された構成例を示している。
【実施例0060】
以下本発明を実施例によってさらに具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
ポリエチレンテレフタレート(PET)を材料とする基材シート上に、グラビアコート法により表面層を8.5μmで塗工した。表面層は、1層構造とし、ポリエステル樹脂と有機系抗ウイルス剤とを含む構成とした。表面層における有機系抗ウイルス剤の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して20質量部とした。また、有機系抗ウイルス剤としては、「積水マテリアルソリューションズ株式会社製、ウィルテイカーVM」を用いた。さらに、表面層にはポリエチレンワックス(「東洋インキ株式会社製、添加剤180)をポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部添加した。これにより、実施例1による外装シートを得た。
【0062】
さらに、ポリ塩化ビニルを材料とするコア基材の表裏両面に、以下のラミネート条件によるラミネートプレスによって実施例1による外装シートをコア基材に接合させ、外装シートとコア基材との積層体として実施例1によるカードを得た。コア基材の厚さは0.685mmとした。
(ラミネート条件)
積層材料(コア基材):ポリ塩化ビニル(PVC)
ラミネート方式:多段ラミネートプレス
加熱温度 :110度以上130度以下
加工時間 :加熱50分、冷却20分
【0063】
<実施例2>
表面層における有機系抗ウイルス剤の含有量をポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2による外装シートおよびカードを作製した。
【0064】
<実施例3>
表面層の膜厚を4.5μmとし、有機系抗ウイルス剤の含有量をポリエステル樹脂100質量部に対して10質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例3による外装シートおよびカードを作製した。
【0065】
<実施例4>
基材シート上に、2層構造の表面層をグラビアコート法により塗工した。2層構造の表面層の膜厚は合計で8.5μmとした。具体的には、表面層の内側層(第1表面層)として基材シート上にポリエステル樹脂を厚さ4μmにて塗工した。さらに、表面層の最表層(第2表面層)としてポリエステル樹脂中に有機系抗ウイルス剤を、ポリエステル樹脂100質量部に対して10質量部の割合で添加し、これを4.5μmで塗工した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例4による外装シートおよびカードを作製した。
【0066】
<実施例5>
第2表面層における有機系抗ウイルス剤の含有量をポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部に変更した。それ以外は実施例4と同様の方法で、実施例5による外装シートおよびカードを作製した。
【0067】
<実施例6>
第2表面層における有機系抗ウイルス剤の含有量をポリエステル樹脂100質量部に対して20質量部に変更した。それ以外は実施例4と同様の方法で、実施例6による外装シートおよびカードを作製した。
【0068】
<実施例7>
第2表面層の膜厚を3.5μmに変更した。それ以外は実施例4と同様の方法で、実施例7による外装シートおよびカードを作製した。
【0069】
<実施例8>
第2表面層の膜厚を5.5μmに変更した。それ以外は実施例4と同様の方法で、実施例8による外装シートおよびカードを作製した。
【0070】
<比較例1>
第2表面層に有機系抗ウイルス剤を添加しなかった。それ以外は実施例4と同様の方法で、比較例1による外装シートおよびカードを作製した。
【0071】
<比較例2>
第2表面層における有機系抗ウイルス剤の含有量をポリエステル樹脂100質量部に対して1質量部に変更した。それ以外は実施例4と同様の方法で、比較例2による外装シートおよびカードを作製した。
【0072】
<比較例3>
第2表面層における有機系抗ウイルス剤の含有量をポリエステル樹脂100質量部に対して3質量部に変更した。それ以外は実施例4と同様の方法で、比較例3による外装シートおよびカードを作製した。
<評価判定>
上述した実施例1~8、比較例1~3で得られたカードについて、以下の方法で抗ウイルス性能及び意匠性の評価を行った。
【0073】
<評価>
〔抗ウイルス性能〕
実施例1~8及び比較例1~3のカードをISO 21702に準じて抗ウイルス試験を実施した。50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、ネコカリシウイルスを含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
〈ウイルス感染価の測定(プラーク法)〉
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO2・温度37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2~3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
〈ウイルス感染価の算出〉
以下の式に伴い、試料1cm2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm2当たりのウイルス感染価(PFU/cm2)
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
〈抗ウイルス活性値の算出〉
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)-log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
算出した抗ウイルス活性値を以下の◎、〇、×の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:抗ウイルス活性値3log10以上である場合
〇:抗ウイルス活性値2log10以上である場合
×:抗ウイルス活性値2log10未満である場合
【0074】
〔意匠性〕
実施例1~8、比較例1~3の各カードの製造後に外観における白濁の有無を目視で確認し、以下の基準により「〇」、「△」、「×」の3段階で官能評価した。
<評価基準>
〇:カード外観に白濁が認められない
△:カード外観にやや白濁した箇所が認められる
×:カード外観に白濁が認められる
【0075】
以上の評価結果を、外装シートの最表層となる表面層(2層構造の場合は第2表面層)の組成とともに表1に示す。なお、以上の評価結果において、「◎」「〇」「△」を合格とし、「×」を不合格とする。
【表1】
【0076】
表1中に表されるように、実施例1から8の評価結果から、表面層における抗ウイルス剤の添加量が5質量部以上である場合には、比較例1-3のように抗ウイルス剤の添加量が5質量部未満である場合と比べて特に抗ウイルス性能が高いことがわかった。さらに、実施例4から8の評価結果から、表面層が2層構造であって、2層構造の最表層(第2表面層32)に有機系抗ウイルス剤が含有される場合には、表面層が1層構造である場合よりも白濁が抑制されて意匠性がさらに向上することが分かった。
また実施例1から8によるカードは、抗ウイルス性評価にインフルエンザウイルスを含むウイルス液を用いた場合においても、表1に示す抗ウイルス性と同程度の優れた抗ウイルス性を発揮することを確認している。
【0077】
なお、本発明の外装シート及び抗ウイルス性カードは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。