(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113082
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】自由曲面を有する金型コアの製造方法及び金型コアを使用してレンズを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B23B 5/36 20060101AFI20220727BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220727BHJP
C03B 11/08 20060101ALI20220727BHJP
B24B 13/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B23B5/36
B29C45/26
C03B11/08
B24B13/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049697
(22)【出願日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】110102588
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】503133874
【氏名又は名称】揚明光學股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】劉 世璋
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 智俊
(72)【発明者】
【氏名】忻 鼎強
【テーマコード(参考)】
3C045
3C049
4F202
【Fターム(参考)】
3C045BA01
3C045CA30
3C045DA18
3C045EA01
3C049AA02
3C049AA13
3C049AA14
3C049AB01
3C049AB04
3C049AB08
3C049BC01
3C049BC02
3C049CA02
3C049CB01
3C049CB03
4F202AF01
4F202AF02
4F202AF14
4F202AG05
4F202AG26
4F202AH74
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD01
4F202CD18
4F202CK11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、軸外スローツールサーボ加工により製造された金型コアとその製造方法を提案し、一度に自由曲面を有する複数の金型コアを製造することができる。これにより、製造効率を向上させ、曲面上の異なる位置でのリップル誤差は一致するようになり、レンズの光学効果を大幅に改善する方法を提供する。
【解決手段】金型コア10を加工機の回転軸面に配置するステップであって、金型コア10が中心軸を有し、中心軸と回転軸面の軸心Cとが非同軸であり、金型コア10が回転軸面に位置していないステップと、加工機の回転軸面を回転するステップと、加工ツールを用いて、回転軸面の二次元方向と回転軸面の軸方向前後方向の三つの方向とから、金型コア10を同時に加工するステップと、自由曲面を生成するまで金型コア10の加工を続けるステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由曲面を有する金型コアの製造方法であって、
前記金型コアワークピースを加工機の回転軸面に配置するステップであって、前記金型コアワークピースと前記回転軸面との接触面の中心軸と前記回転軸面の軸心とを非同軸とする前記ステップと、
前記加工機の前記回転軸面を回転し、前記回転軸面及び加工ツールを回転軸方向と半径方向の三つの方向とに相対的に移動して加工を行うステップと、
前記自由曲面を有する金型コアを生成するまで加工を続けるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加工機は、切削刃又は研磨輪であることを特徴とする請求項1に記載の金型コアの製造方法。
【請求項3】
前記回転軸面は二次元方向に移動し、前記加工ツールは別の一次元方向に相対的に移動し、前記加工ツールのモードはスローツールサーボ加工モードであることを特徴とする請求項1に記載の金型コアの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法で製造した自由曲面を有する金型コアであって、
前記金型コアは複数の加工痕跡線を有する加工された前記自由曲面を含み、前記自由曲面は同心円状の加工痕跡線がないことを特徴とする金型コア。
【請求項5】
自由曲面を含み、
前記自由曲面は複数の加工痕跡線を有し、同心円状の加工痕跡線がないことを特徴とする金型コア。
【請求項6】
レンズ材料を加熱するステップと、
加熱された前記レンズ材料を第一金型コアと第二金型コアとの間に配置するステップであって、前記第一金型コアが自由曲面を設け、前記自由曲面が複数の非同心円状の加工痕跡線を有する前記ステップと、
前記レンズ材料を冷却するステップと、
前記レンズ材料を前記第一金型コア及び前記第二金型コアから離型して、成形レンズを得るステップと、
を含むことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項7】
前記第一金型コアは、請求項4に記載の金型コアであることを特徴とする請求項6に記載のレンズ製造方法。
【請求項8】
前記レンズ材料を前記第一金型コアと前記第二金型コアとの間に高速且つかつ高圧的に注入し、冷却及び成形した後、前記成形レンズを取り出すことを特徴とする請求項6又は7に記載のレンズ製造方法。
【請求項9】
前記レンズ材料は、光学樹脂であることを特徴とする請求項6又は7に記載のレンズ製造方法。
【請求項10】
前記レンズ材料を、前記第一金型コアと前記第二金型コアとの間に配置する時に、前記第一金型コアと前記第二金型コアとの間にチャンバーを形成し、加熱された前記レンズ材料を前記チャンバー内に置いて前記チャンバーを満ちさせることを特徴とする請求項6又は7に記載のレンズ製造方法。
【請求項11】
請求項6又は7に記載のレンズ製造方法で製造するレンズ。
【請求項12】
自由曲面を有するレンズであって、
複数の加工痕跡線を有する加工面を含み、
前記加工面は、同心円状の加工痕跡線がないことを特徴とするレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願と優先権主張の相互参照
この出願は、2021年1月22日に提出された台湾特許出願番号110102588の出願日の利益を主張し、これらの開示は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本発明は、自由曲面を有する金型コア及びその製造方法並びに金型コアを使用してレンズを製造する方法に関し、特に、軸外スローツールサーボで製造された金型コア及び前記金型コアを使用してレンズを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の光学部品と比べて、自由曲面を有する光学素子は、光学系の構造を大幅に簡素化し、コストを削減し、光学系の性能を向上させることができる。しかし、表面形状の精度と表面粗さには要求が厳しく、実際の応用において、表面粗さは一般にナノメートルレベルに達する必要があり、輪郭精度はミクロンレベル又はサブミクロンレベルに達する必要がある。超精密シングルポイントダイヤモンド旋削法は、一回の加工でより高い表面加工品質を実現し、光学部品の光学系の表面品質要件を満たすことができるため、光学部品の加工に広く使用されている。スローツールサーボ旋削法は、加減速性能に優れ、送りストロークが大きく、振幅や曲率の変化が大きい光学自由曲面の加工(例えば光学レンズの金型コアの加工)を実現できる。
【0004】
図1Aは、自由曲面の超精密加工に適したスローツールサーボ加工装置1の構成例を示す。スローツールサーボ加工装置1は、加工回転軸面3を有し、加工回転軸面3は、軸心C、第1軸面方向X及び第2軸面方向Yを有し、第一ステージ2は、加工回転軸面3をX又はY方向に移動することを制御する。加工ツール5は、第一ステージ2と異なる第二ステージ4に配置でき、XとY方向に垂直なZ方向に移動できる。加工材料7は、加工回転軸面3の軸心Cに隣接する位置に配置され、コンピュータで制御される自動加工プログラムによって処理される。
【0005】
図1Bは、従来の方法で加工回転軸面3の軸心Cに金型コア材10を取り付け、スローツールサーボ加工装置1により加工した後の切削面の上面図を示す。
図1BにおいてX軸とY軸が交差する基準原点Oは、通常、加工の開始点である。加工経路Acutによって形成された加工痕跡線は、予め設定された加工経路に従って、基準原点Oから徐々に伸びる形で切削面に広がる。
【0006】
図1Cは、
図1Bにおける金型コア材10がX軸に沿った加工痕跡線の深さDの実施形態の概略図を示す。図中のCは、加工回転軸面3の軸Cに対する基準原点Oの位置を表す。
図1Cに示すように、基準原点Oの付近では、例えば図中の点AとBとの間の加工痕跡線の深さが非常に深く、点AとBとの間以外の加工痕跡線の深さはそれほど違いがない。
図1Dは、
図1Bにおける金型コア材10がX軸に沿った加工痕跡線の深さDの別の実施形態の概略図を示し、
図1Cのパターンとは逆に、図中の点A'と点B'との間の加工痕跡線の深さは特に浅いが、点A'と点B'との間以外の加工痕跡線の深さはそれほど違いがない。
【0007】
上記の方法で製造された金型コアにおいて、加工回転軸表面の軸心Cに隣接する位置に現れる加工痕跡線の深さは、周辺部の加工痕跡線のほうと比べて大きな差があるため、製作したレンズの光学効果に悪影響を受ける。従って、どのように上記装置の欠点を回避するかが、解決すべき技術的課題である。
図1Eに示すように、従来のスローツールサーボ加工の後の金型コア曲面の中央領域の加工痕跡線の高低差は約18ナノメートルである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一観点によれば、軸外スローツールサーボ加工により製造された金型コアとその製造方法を提案し、一度に自由曲面を有する複数の金型コアを製造することができる。これにより、製造効率を向上させ、曲面上の異なる位置でのリップル誤差は一致するようになり、レンズの光学効果を大幅に改善する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、自由曲面を有する金型コアの製造方法を提案する。前記方法は、金型コアワークピースを加工機の回転軸面に配置するステップであって、前記金型コアワークピースと前記回転軸面との接触面の中心軸と前記回転軸面の軸心とが非同軸とする前記ステップと、前記加工機の前記回転軸面を回転し、前記回転軸面及び加工ツールを回転軸方向と半径方向の三つの方向とに相対的に移動して加工を行うステップと、前記自由曲面を有する金型コアを生成するまで加工を続けるステップと、を含む。
【0010】
本発明の他の態様によれば、上記方法で製造する自由曲面を有する金型コアを提案する。前記金型コアは複数の加工痕跡線を有する加工された前記自由曲面を含み、前記自由曲面は同心円状の加工痕跡線がない。
【0011】
本発明の他の態様によれば、上記方法で製造する金型コアによりレンズを製造する方法及びその方法で製造するレンズを提案する。前記方法は、レンズ材料を加熱するステップと、加熱された前記レンズ材料を第一金型コアと第二金型コアとの間に配置するステップであって、前記第一金型コアが自由曲面を設け、前記自由曲面が複数の非同心円状の加工痕跡線を有する前記ステップと、前記レンズ材料を冷却して成形するステップと、前記レンズ材料を、前記第一金型コア及び前記第二金型コアから離型して、成形レンズを得るステップと、を含む。
【0012】
本発明の他の態様によれば、上記方法で製造する金型コアにより製造するレンズを提案する。
【0013】
本発明によって提案された自由曲面の金型コアを軸外方式で超精密加工する方法は、光学レンズ用の金型コアの製造に適しており、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の目的および有利な点は、以下の詳細な説明及び添付図面を検討することにより、当業者にはより容易に明らかになるであろう。
【
図1A】従来のスローツールサーボ加工装置の概略図である。
【
図1B】スローツールサーボ加工の後の切削面の概略上面図である。
【
図1C】
図1Bの金型コア材料の加工痕跡線の深さの概略図である。
【
図1D】
図1Bの金型コア材料の加工痕跡線の深さの別の概略図である。
【
図1E】別のスローツールサーボ加工の後の切削面の加工痕跡線の深さの別の概略図である。
【
図2】本発明に係る軸外スローツールサーボ加工によって製造する金型コアの実施形態の概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る金型コア材料を偏心治具に配置する概略図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る金型コア材料を偏心治具に配置する概略図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係る金型コア材料を偏心治具に配置する概略図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に従って製造する金型コア材料サンプルの切削面の加工痕跡線の深さの概略図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に従って製造するサンプル及びその表面の加工痕跡線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を以下の実施形態を参照してより具体的に説明する。本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、例示及び説明のみを目的として本明細書に提示されることに留意されたい。それらは網羅的であること、又は開示された正確な形式に限定されることを意図していない。
【0016】
光学レンズ圧縮成形技術は、溶融状態から固体状態へのガラス転移のプロセスが連続的且つ可逆的な熱加工特性を利用する。ガラスと金型は、ガラス転移温度Tg付近で加熱及び加圧される。金型コアは、光学ガラスを一度に使用する要件を満たす光学レンズにプレス成形することができる。光学ガラスプレス成形法は、従来の粗研削、微研削、研磨、センタリングエッジングなどのプロセスを廃止し、一度に直接成形するため、材料、時間、設備、人員を大幅に節約でき、さまざまな形状にプレス成形でき、特に非球面光学ガラス部品の製造においてもそうである。ガラス材料に加えて、この方法は他の材料のレンズを作るためにも使用できる。レンズ材料は、例えば、硝酸ガラス材料である。一つの実施形態によれば、金型コアを使用してレンズを製造する場合、最初にレンズ材料を加熱し、次に、加熱されたレンズ材料を第一金型コアと第二金型コアとの間に配置する。第一金型コア及び第二金型コアはチャンバーを形成することができ、加熱されたレンズ材料がチャンバー内に置いてチャンバーを満ちさせる。射出成形の場合、レンズ材料は通常、高速高圧条件下で二つの金型の間に射出される。少なくとも一つの金型コアは自由曲面を有し、自由曲面は複数の非同心円状の加工痕跡線を有するので、レンズ材料を冷却した後、第一金型コアと第二金型コアから離型する。自由曲面に複数の非同心円状の加工痕跡線がある成形レンズを得る。近年、精密ポリマー光学部品の要求がますます重要になっている。熱可塑性プラスチックと射出成形加工技術の両方の独自の特性により、ポリマー光学部品は、コストの考慮に基づいて、光学面と取り付け機能を組み合わせることができる。射出成形加工の精度は、金型コア、特に光学レンズ射出成形に使用される金型コアの加工面の精度に依存している。
【0017】
通常、射出成形金型組の可動側と固定側とは、それぞれ構造がほぼ同じ構成、ランナー構造が対応する一組の要素を含むが、別の実施形態において、可動側テンプレート又は固定側テンプレートに選択的に嵌め設けることができ、本発明はこれに限定されない。射出成形用のレンズ材料は、例えば、光学樹脂である。更に、可動側の要素組の中央に設けられた穿孔は、針やその他のメカニズムを収容するために使用できる。固定側金型は、固定側テンプレート、固定側固定プレート(例えば第1のテンプレート)、固定側プレステンプレート、固定側金型コア及び充填ノズルを含む。固定側固定プレートには、高温流動プラスチックの注入を受けるための注入口が設けられている。固定側テンプレートは、高温で流れるプラスチック用の流路を提供する。固定側金型コアには、高温で流れるプラスチックに収容するためのいくつかの金型キャビティがある。キャビティは多角形、円形、楕円形などの特定の形状を有しているため、キャビティ内を流れる高温のプラスチックが冷却、固化して特定の形状になり、最後にレンズが第一金型コアと第二金型コアから離型し、成形レンズを得る。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る自由曲面を有する金型コアを製造する方法の概略図を示す。
図3を参照すると、本発明は、偏心治具100を提供し、少なくとも1つの金型コア材料10を偏心治具100に配置することができる。各金型コア材料10の幾何学的中心軸はC”で表される。
図1Aに示すように、スローツールサーボ加工装置1の加工回転軸面3に偏心治具100を取り付けると、加工回転軸面3の軸心Cと各金型コア材料10の幾何学的中心は非同軸であることがわかる。各金型コア材料10は、加工回転軸面3の軸心Cに位置していないため、偏心して配置することとなる。また、
図3の金型コア材料10は円柱形であり、金型芯材10と加工回転軸面3との接触面も円形であるが、これはただ一つの例示であり、金型コア材料10は、必要に応じて任意の形状にすることができる。例えば、金型コア材料10は、不規則な形状であってもよい。この場合、金型コア材料10と加工回転軸面3との接触面の幾何学的中心軸は、金型コア材料10自体の中心軸と同軸であってはならない。従って、本発明の目的を達成するために、金型コア材料10と加工回転軸面3との間の接触面の中心軸は、加工回転軸面3の軸心Cと非同軸である。
【0019】
偏心治具100の基準原点Oの位置は、軸心Cに対応する位置である。スローツールサーボ加工装置1の第一ステージ2は、加工中のコンピュータプログラムの制御の下で、偏心治具100が第一軸方向X及び第二軸方向Yに沿った二次元加工経路を実現させることができる。第二ステージ4は、コンピュータプログラムを用いてリアルタイムでZ方向を制御することができ、これは、加工回転軸面3の軸心Cを前又は後に向かう加工深さに相当する。このように、偏心治具100とその上に配置された金型コア材10の立体位置データ、又は治具と被加工物との立体的な幾何学的関係を事前に把握していれば、本発明の軸外加工プログラムの制御の下で、スローツール加工により、複数の金型コア材10上に一度に必要な自由曲面を形成することができる。本発明が適用する加工機は、旋盤等の切削刃又は研磨輪等の工具を用いた加工機であってよい。
【0020】
いわゆる三軸加工とは、主に加工機の回転軸面を回転させ、回転軸面と加工ツールを回転軸方向と半径方向の三つの方向に移動させることである。回転軸面は、一次元、二次元、又は三次元の方向に移動することに限定されなく、二つの相対的な動きが三次元であればよい。すなわち、回転軸面は二次元方向に移動することができ、加工ツールは一次元方向に移動し、両者は相対的な三次元移動を構成する。
【0021】
本発明における一次元方向は、従来のX軸、Y軸とZ軸、或いはX軸回転(A軸)、Y軸回転(B軸)とZ軸回転(C軸)を指す。二次元移動または三次元移動は、上述の二軸又は三軸運動や回転である。
【0022】
実際の加工の前に、位置決めピンやねじなどの留め具を使用して、偏心治具100上の金型コア材10を、加工回転軸面3の軸心Cの相対位置から離れて配置する必要がある。換言すれば、金型コア材10が配置される位置は、基準原点Oの位置から遠く離れる必要がある。
図2の例は、四つの金型コア材10が偏心治具100上に偏心して配置されていることを示しており、実際の金型コア材の数はこれに限定されない。図からわかるように、金型コア材10はそれぞれ中心軸(図示せず)を有し、金型コア材10の中心軸と加工回転軸面3の軸心Cは非同軸であり、金型コア材10は、加工回転軸3の軸心Cに位置しない。
【0023】
偏心治具100の幾何学的輪郭は既知であるため、位置決めの機能を提供することができ、これは、本発明で使用される軸外加工プログラムを編集するための基本データとして使用される。軸外加工プログラムは、コンピュータによって実行され、スローツールサーボ加工装置1を制御することができ、加工ツール5は、通常、加工面上の基準原点Oから始まり、加工経路Acutに沿って徐々に加工痕跡線を形成する(ただしこれに限定されない)。
図1C/1Dと
図2との相対位置を比較すると、すべての金型コア材10は、基準原点Oから偏心して離れているため、加工痕跡線の深さの差がほとんどない領域(例えば
図1C/1DのAとB(A'とB')との間以外の領域の位置)に配置されていることが理解できる。この構成により、金型コア材10は、加工回転軸面3上の軸心Cに隣接する領域を回避することができるので、有意な波形誤差がない。
【0024】
特殊な光学効果を実現するために、多くのレンズを組み合わせたレンズは、さまざまな異なる非球面を有し、さらにはプレス成形又は射出成形に適した自由曲面持ち、所定の自由曲面を備えた金型を使用し、これらの光学レンズを量産する。レンズのプレス成形プロセスには、二つの対応する金型コアからそれらの金型コアで完成したレンズを分離する離型プロセスが含まれる。このプロセスにおいて、金型コアの自由曲面に存在する加工痕跡線が、金型コアと完成したレンズ表面との間の真空現象を回避するため、離型プロセスがスムーズに完了する。従って、このタイプの光学レンズの金型コアは、機械加工により必要な自由曲面を形成した後、研磨などの加工が不要であり、波形がほぼ均一な加工痕跡線であり、好ましい加工面となる。
【0025】
図3は、本発明の別の実施形態に係る二つの金型コア材10が偏心治具100に配置されている概略図である。同様に、偏心治具100の基準原点Oの位置は、軸心Cに対応する位置である。金型コア材10は、基準原点Oから離れた偏心位置に配置されている。図中の各金型コア材10の幾何学的中心軸はC”で表される。
図4は、本発明の別の実施形態に係る六つの金型コア材10が偏心治具100に配置されている概略図である。金型コア材10が偏心治具100にある位置は、互いに対称であってもよく、非対称に配置されていてもよい。
【0026】
図5は、本発明の別の実施形態を提供する。大量生産の効率を高めるために、偏心治具100は、より多くの金型コア材10を運ぶように複数の補助治具120を配置することができる。図に示す例において、四つの金型コア材10が四つの補助治具120上にそれぞれ配置されている。当業者は、偏心治具100上の補助治具120が四つに限定されないことを理解できる。各補助治具120に配置された金型コア材10は、本発明の構想範囲を超えない限り、必要に応じて調整することができる。
【0027】
図6は、本発明の実施形態に係る方法で製造した金型コア材10のサンプルを示す。金型コアの中心領域の波形誤差は約5・3nmである。
図1Eに示す測定データと比較すると、本発明は、従来のスローツールサーボ加工の問題を効果的に改善できることがわかる。
【0028】
図7は、本発明の実施形態に係る軸外方式で自由曲面の金型コアを超精密加工する方法に従って製造された金型コア材20のサンプル表面の加工痕跡線を示す概略図である。
図1Bに示す螺旋状又は同心円状表面の加工痕跡線と比較して、
図7に示す加工痕跡線パターンは、螺旋状又は同心円に類似した形状を見出さないが、平行線のように見える。これらの加工痕跡線を詳しく見ると、それぞれに少なくとも二つの端点があることがわかる。例えば、加工痕跡線201には端点201aと201bがあり、加工痕跡線202には端点202aと202bがあり、加工痕跡線203には端点203aと203bがある。対照的に、
図1Bに示す螺旋状又は同心円状表面の加工痕跡線は、中心付近には一つの端点のみが表示される。従って、
図2と
図7に示す線パターンによれば、金型コア材10及び20は、加工中に偏心位置に配置されていることが理解できる。自由曲面の金型コア製品は、本発明の実施形態に従って軸外方式で加工されるので、加工された表面上の加工痕跡線は、通常、似ているパターンを形成する。そのため、金型コアには自由曲面があり、自由曲面には複数の加工痕跡線があり、自由曲面には同心円状の加工痕跡がない。更に、このような金型コアを使用してレンズを製造するため、製造されたレンズは自由曲面を有し、非対称曲面は複数の加工痕跡を有し、加工痕跡は非同心円である。
【0029】
上記スローツールサーボ加工装置1の加工ツールは、切削刃又は研磨輪であり得るので、スローツールサーボ加工は、超精密旋削加工及び/又は超精密研磨輪加工である。本発明に従って製造された自由曲面を有する金型コアは、複数の加工痕跡線を有する加工自由曲面を含み、自由曲面は同心円状の加工痕跡線を存在しない。
【0030】
上記の説明から、いくつかの実施形態において、自由曲面を有する金型コアの製造方法は、大量生産効率の観点から大幅に向上することができ、偏心の配置は、自由曲面の加工痕跡線(波形)の深さの差を減らすことができることがわかり、技術革新と言える。
【0031】
本発明は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関して説明されてきたが、本発明は、開示された実施形態に限定される必要はないことを理解されたい。それどころか、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれる様々な修正及び同様の配置を網羅することが意図され、これらの修正及び同様の構造をすべて包含するように最も広い解釈が与えられるべきである。
【符号の説明】
【0032】
スローツールサーボ加工装置1
第一ステージ2
加工回転軸面3
第二ステージ4
加工ツール5
金型コア材10、20
偏心治具100
補助治具120
加工痕跡線201、202、203
端点201a、201b、202a、202b、203a、203b
加工経路Acut
軸心C
基準原点O
第1軸面方向X
第2軸面方向Y