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▶ ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲーの特許一覧

特開2022-113113金属セラミック基板のパターニング方法及びパターニングされた金属セラミック基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113113
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】金属セラミック基板のパターニング方法及びパターニングされた金属セラミック基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/06 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
H05K3/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197576
(22)【出願日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】21152896.3
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ワッカー リカルド
(72)【発明者】
【氏名】シュニー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーベル アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】シャルフ ユルゲン
【テーマコード(参考)】
5E339
【Fターム(参考)】
5E339AB06
5E339AD01
5E339BC01
5E339BC02
5E339BC03
5E339BD03
5E339BE13
5E339CE01
5E339DD03
5E339EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パワーエレクトロニクスに使用できる金属セラミック基板の簡便なパターニング方法及びパターニングされた金属セラミック基板を提供する。
【解決手段】方法は、第一の金属セラミック基板100及び第二の金属セラミック基板200をエッチングする場合、金属セラミック基板の接合層から活性金属を除去することができるエッチング液に接触させる際に、第一の金属セラミック基板を、第一の金属セラミック基板のマスク金属層110と平行な投影面400に直交射影させ、第二の金属セラミック基板の金属層210を60%以下シェーディングするように、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板を配置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属セラミック基板のパターニング方法であって、
a)第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板を提供するステップであって、そのそれぞれが、
・セラミック層と、
・金属層と、
・前記セラミック層と前記金属層の間に位置する接合層であって、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属及び(ii)活性金属を含む接合層と、を含む、ステップと、
b)前記金属層から金属を除去し、前記接合層から少なくとも700℃の融点を有する金属を少なくとも部分的に除去することができるエッチング液1を提供するステップと、
c)前記接合層から前記活性金属を除去することができるエッチング液2を提供するステップと、
d)前記第一の金属セラミック基板の金属層上及び前記第二の金属セラミック基板の金属層上で、アブレーションを意図しない領域をマスキングするステップと、
e)前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板を前記エッチング液1に接触させるステップと、
f)前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板を前記エッチング液2に接触させるステップであって、前記第一の金属セラミック基板を、前記第一の金属セラミック基板の前記金属層と平行な投影面に直交射影すると、前記第二の金属セラミック基板の前記金属層を60%以下シェーディングするように、前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板が配置される、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記セラミック層のセラミックが、窒化アルミニウムセラミック、窒化ケイ素セラミック及び酸化アルミニウムセラミックからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属層の金属が銅であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも700℃の融点を有する前記金属が銅であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接合層が700℃未満の融点を有する金属からなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
700℃より低い融点を有する前記金属が、スズ、ビスマス、インジウム、ガリウム、亜鉛、アンチモン及びマグネシウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性金属が、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム及びハフニウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
銀の最大含有量が、前記接合層の原子数を基準にして、10.0原子%、より好ましくは1.0原子%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板を前記エッチング液2に接触させる際に、前記第一の金属セラミック基板を、前記第一の金属セラミック基板の前記金属層に平行な投影面に直交射影すると、前記第二の金属セラミック基板の前記金属層を50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは15%以下シェーディングするように、前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板が配置されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エッチング液2との接触の間、前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板は、キャリア上、好ましくは同じキャリア上に配置されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリアが、搬送方向に移動されるコンベアベルトであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エッチング液2に接触させたとき、前記第一の金属セラミック基板と前記第二の金属セラミック基板とを、
a)前記第一の金属セラミック基板と前記第二の金属セラミック基板とを積層されない方式、
b)前記第一の金属セラミック基板と前記第二の金属セラミック基板とを実質的に水平な位置に配置する方式、
c)前記第一の金属セラミック基板と前記第二の金属セラミック基板とを、実質的に垂直な位置で、かつ前記搬送方向に対して互いに前後に配置する方式、及び
d)前記第一の金属セラミック基板と前記第二の金属セラミック基板とを、前記第一の金属セラミック基板と前記搬送方向とが45°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは20°以下の角度を描くように、前記第二の金属セラミック基板と前記搬送方向とが45°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは20°以下の角度を描くように配置する方式、
のうちの少なくとも1つの方式で配置することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法で得られるパターニングされた金属セラミック基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属セラミック基板のパターニング方法及びパターニングされた金属セラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属セラミック基板は、パワーエレクトロニクスの分野で重要な役割を果たしている。金属セラミック基板は、電子部品の構造上、重要な要素であり、これらの部品が動作する際の大量の熱を迅速に放散させることを確実にする。金属セラミック基板は、通常、セラミック層と、そのセラミック層の上に接合された金属層から構成されている。
【0003】
金属層をセラミック層に接合する方法は、従来技術からいくつか知られている。いわゆるDCB(Direct Copper Bonding)方法とは、銅と反応性ガス(通常は酸素)を反応させて、銅よりも融点の低い銅化合物(通常は酸化銅)を銅箔の表面に塗布するものである。処理した銅箔をセラミック体に貼り付けて焼成すると、銅化合物が溶けてセラミック体の表面を濡らし、銅箔とセラミック体の間に安定した結合が形成される。この方法は、例えば、特許文献1又は2に記載されている。
【0004】
DCB方法には、明らかな利点がある一方で、主に2つの欠点がある。第一に、この方法では、銅の融点よりやや低い温度という比較的高い温度で実行する必要がある。第二に、この方法は、酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムなどのアルミニウムベースのセラミックにしか使えない。そのため、より厳しくない条件で金属セラミック基板を製造する代替方法が求められている。別の方法では、銀及び/又は銅と活性金属を含む特殊なはんだを用いて、約650~1000℃の温度で金属箔をセラミック体に接合することもできる。活性金属の役割は、セラミック材料と反応して、セラミック材料とはんだの残りの部分を結合させて反応層を形成することであり、銅及び/又は銀はこの反応層と金属箔を結合させるのに役立つ。例えば、特許文献3には、銀を50~89重量%含み、さらに銅、ビスマス、活性金属を含むはんだを用いて、銅箔をセラミック体に接合することが提案されている。この方法により、銅箔とセラミック体を確実に接合することに成功した。銀の移行に関連する問題を避けるため、金属箔とセラミック体の接合には銀を含まないはんだを使用することが有利になる場合がある。このような技術は、例えば、特許文献4において提案されている。このようにして製造された金属セラミック基板は、金属層とセラミック層に加えて、金属層とセラミック層の間に位置し、活性金属を含む接合層を有している。
【0005】
金属箔をセラミック体に接合した後、金属セラミック基板をパターニングし、導電性トラックを形成するのが一般的である。この目的のために、通常、従来のエッチング技術が使用される。一般的な方法では、金属セラミック基板の金属面に、例えば、ポリマーでマスキングを施す。このマスキングにより、金属セラミック基板のエッチング工程で除去されない部分は保護され、非マスク部分はエッチングが可能な状態になる。エッチング液によって、金属箔の金属及び接合層の成分が溶解され、金属セラミック基板から除去され、導電性トラックが形成される。その後、マスキングを除去し、パターニングされた金属セラミック基板を得ることができる。
【0006】
従来の方法では、金属箔の金属及び接合層のはんだの成分は、第一のエッチング液で処理中に除去され、少なくとも活性金属が残される。その後、第二のエッチング液で処理することにより、活性金属を溶解除去する。高いスループットを実現するために、通常、金属セラミック基板は保持装置内に積層され、保持装置内でエッチング液に接触させる。特に、金属セラミック基板を垂直方向に積層することが、実用上有利であることが分かった。完全なエッチングを行うためには、金属セラミック基板をエッチング液に長時間接触させる必要がある。
【0007】
原理的には、金属セラミック基板のエッチング液への滞留時間を短くする必要がある。これにより、金属セラミック基板のパターニング方法をより迅速に、より効率的に、より少ないリソースで、より少ないエネルギー消費で実施することが可能になる。さらに、エッチング時に除去すべき材料、特に活性金属を所定の時間で可能な限り完全に除去することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3744120号明細書
【特許文献2】独国特許発明第2319854号明細書
【特許文献3】特許第4812985号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第102017114893号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、金属セラミック基板の簡便なパターニング方法を提供することを課題とする。好ましくは、この方法は、従来技術から知られている方法よりも迅速で、効率的で、リソース及び/又はエネルギー消費が少ないことである。さらに好ましくは、この方法により、エッチング中に除去される材料、特に活性金属は、所定の時間で可能な限り完全に除去される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。
【0011】
したがって、本発明は、金属セラミック基板のパターニング方法を提供し、その方法は、以下のステップ、すなわち、
a)第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板を提供するステップであって、そのそれぞれが、
・セラミック層と、
・金属層と、
・前記セラミック層と前記金属層の間に位置する接合層であって、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属及び(ii)活性金属を含む接合層と、を含む、ステップと、
b)前記金属層から金属を除去し、前記接合層から少なくとも700℃の融点を有する金属を少なくとも部分的に除去することができるエッチング液1を提供するステップと、
c)前記接合層から前記活性金属を除去することができるエッチング液2を提供するステップと、
d)前記第一の金属セラミック基板の金属層上及び前記第二の金属セラミック基板の金属層上で、アブレーションを意図しない領域をマスキングするステップと、
e)前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板を前記エッチング液1に接触させるステップと、
f)前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板を前記エッチング液2に接触させるステップであって、前記第一の金属セラミック基板を、前記第一の金属セラミック基板の前記金属層と平行な投影面に直交射影すると、前記第二の金属セラミック基板の前記金属層を60%以下シェーディングするように、前記第一の金属セラミック基板及び前記第二の金属セラミック基板が配置される、ステップと、
を含む。
【0012】
さらに、本発明は、この方法により得られる金属セラミック基板を提供する。
【0013】
本発明による方法は、金属セラミック基板のパターニングに関する。
【0014】
このため、最初に、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板を提供する。
【0015】
第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、それぞれ金属層を有する。金属層の金属は、銅、アルミニウム及びモリブデンからなる群から選択されることが好ましい。特に好ましい実施形態によれば、金属層の金属は、銅及びモリブデンからなる群から選択される。特に非常に好ましい実施形態によれば、金属層の金属は、銅である。金属層は、好ましくは0.01~10mmの範囲の厚さ、より好ましくは0.03~5mmの範囲の厚さ、特に好ましくは0.05~3mmの範囲の厚さを有する。
【0016】
第一及び第二の金属セラミック基板は、それぞれセラミック層を有する。セラミック層のセラミックは、好ましくは、絶縁性セラミックである。セラミックは、例えば、酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミックなどであり得る。好ましくは、セラミックは、金属酸化物セラミック、シリコン酸化物セラミック、金属窒化物セラミック、シリコン窒化物セラミック、窒化ホウ素セラミック、又は炭化ホウ素セラミックである。好ましい実施形態によれば、セラミックは、窒化アルミニウムセラミック、窒化ケイ素セラミック及び酸化アルミニウムセラミック(ZTA(「ジルコニア強化アルミナ」)セラミックなど)からなる群から選択される。セラミック層は、好ましくは0.05~10mmの範囲、より好ましくは0.1~5mmの範囲、さらに好ましくは0.15~3mmの範囲の厚さを有している。
【0017】
第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、それぞれ、セラミック層と金属層との間に位置する接合層を有する。接合層は、好ましくは、セラミック層と金属層との間の物質的な接合を提供する。
【0018】
接合層は、(i)融点が700℃以上の金属と、(ii)活性金属とを含む。融点が700℃以上の金属は、好ましくは融点が850℃以上であり、より好ましくは融点が1000℃以上である。好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属は、銅、銀、ニッケル、タングステン、モリブデン及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属は、銅、ニッケル、タングステン、モリブデン及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に非常に好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属は、銅である。融点が少なくとも700℃の少なくとも1種の金属の含有量は、接合層中の原子数を基準として、好ましくは55~93原子%、特に好ましくは60~85原子%、最も好ましくは65~80原子%である。
【0019】
活性金属は、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、活性金属はチタンである。活性金属の含有量は、接合層の原子数を基準にして、好ましくは1~10原子%、特に好ましくは2~8原子%、最も好ましくは3~7原子%である。
【0020】
好ましい実施形態によれば、接合層は、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と(ii)活性金属に加えて、さらに(iii)残余の元素としてさらなる元素を含んでいてもよい。特に好ましい実施形態によれば、接合層中の更なる元素の含有量は、接合層中の原子数を基準にして、5~40原子%、より好ましくは7~35原子%、特に好ましくは10~35原子%である。
【0021】
したがって、さらに好ましい実施形態によれば、接合層は、700℃未満の融点を有する金属からなる。融点が700℃未満の金属は、好ましくは融点が600℃未満であり、より好ましくは融点が550℃未満である。好ましい実施形態によれば、700℃未満の融点を有する金属は、スズ、ビスマス、インジウム、ガリウム、亜鉛、アンチモン、マグネシウム及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、700℃未満の融点を有する金属は、スズ、ビスマス及びそれらの混合物からなる群から選択される。融点が700℃未満の少なくとも1つの金属の含有量は、接合層中の原子数を基準として、好ましくは5~40原子%、より好ましくは7~35原子%、特に好ましくは10~35原子%である。
【0022】
好ましい実施形態によれば、接合層は、金属層近傍の領域とセラミック層近傍の領域とを有する。金属層近傍の領域は、セラミック層近傍の領域よりも融点が700℃以上の金属に富んでいることが好ましい。セラミック層近傍の領域は、金属層近傍の領域よりも活性金属に富んでいることが好ましい。特に好ましい実施形態によれば、金属層近傍の領域は、接合層のセラミック層近傍の領域よりも厚い。また、接合層のうち金属層近傍の領域の厚さと、接合層のうちセラミック層近傍の領域の厚さとの比が、2:1以上であることが好ましく、3:1以上であることがさらに好ましく、5:1以上であることが特に好ましい場合がある。
【0023】
好ましい実施形態によれば、銀の最大含有量は、接合層の原子数を基準にして、好ましくは15.0原子%、より好ましくは1.0原子%、なおより好ましくは0.5原子%、非常に特に好ましくは0.1原子%である。したがって、接合層は、銀を含まないか、又は銀が少ないことが好ましい場合がある。驚くべきことに、接合層中に銀が存在しないだけで、あるいは接合層中の銀の含有量が低いだけで、エッチングされるべき接合層の領域から活性金属を確実かつ完全に除去することが、本発明による方法によって短時間で達成できるという事実につながることが明らかになった。理論に縛られることなく、この効果は、銀の存在によって、エッチングで除去しにくい金属層近傍の領域が形成されやすくなることに起因していると考えられる。この銀を含む金属層近傍の領域の形成は、最終的に、活性金属を含むセラミック層近傍の領域とエッチング液2との接触を効果的に阻止することにつながり得る。この阻止は、接合層中の銀の割合を減らすことによって、軽減又は解消され、活性金属の除去が容易になると考えられる。
【0024】
好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、それぞれ、
・第二の金属層と、
・セラミック層と第二の金属層との間に位置する第二の接合層であって、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、(ii)活性金属とを含む第二の接合層と、
を備える。
【0025】
このような金属セラミック基板は、両面メタライズド金属セラミック基板とも呼ばれる。第二の金属層及び第二の接合層の特徴に関しては、本明細書で説明した金属層及び接合層の説明を参照することができる。好ましくは、第二の金属層は、このように、本明細書に記載の金属層として形成され、第二の接合層は、本明細書に記載の接合層として形成される。
【0026】
金属セラミック基板は、従来技術で知られている通常の方法で製造することができる。好ましくは、金属セラミック基板は、はんだ付け方法によって製造される。好ましい実施形態によれば、金属セラミック基板は、AMB(「Active Metal Brazing」)方法によって製造される。この方法では、通常、銅、銀、活性金属(例えば、チタン)からなるろう材を用いて、金属箔をセラミック体にろう付けする。このような方法は、例えば、米国特許第4591535号明細書に開示されている。別の好ましい実施形態によれば、金属セラミック基板は、少なくとも700℃の融点を有する金属(例えば、銅)、700℃未満の融点を有する金属(例えば、スズ)及び活性金属(例えば、チタン)を含むはんだ材料を用いて、金属箔をセラミック体にはんだ付けする方法によって製造される。このような方法は、例えば、特許文献4に開示されている。
【0027】
本発明による方法では、金属層の金属及び少なくとも部分的に融点が700℃の金属を接合層から除去することができるエッチング液1が提供される。エッチング液1は、例えば、従来技術から知られ、銅をエッチングするのに適したエッチング液であってもよい。したがって、エッチング液1は、例えば、FeClエッチング液及びCuClエッチング液からなる群から選択することができる。
【0028】
本発明による方法では、接合層から活性金属を除去することができるエッチング液2がさらに提供される。エッチング液2は、従来技術で知られている活性金属用のエッチング液であってもよい。例示的なエッチング液は、欧州特許出願公開第3688835号明細書及び欧州特許出願公開第3684148号明細書に開示されている。好ましい実施形態によれば、エッチング液2は、過酸化水素を含むエッチング液及びペルオキソ二硫酸アンモニウムを含むエッチング液からなる群から選択される。例えば、エッチング液2は、フッ化アンモニウムとフルオロホウ酸(例えばHBF)と、過酸化水素及び/又はペルオキソ二硫酸アンモニウムとを含むエッチング液であってもよい。
【0029】
本発明によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板において、アブレーションを意図しない領域のマスキングが行われる。マスキングは、さらに限定されるものではなく、従来技術から当業者に公知の方法で行うことができる。マスキングには、例えば、エッチングレジストを使用することができる。例えば、金属セラミック基板の金属層にエッチングレジストを塗布し、アブレーションを意図しない領域のみを硬化するために露出させることが可能である。その後、エッチング液を接触させる際に、マスク領域は保護され、エッチング液の作用でこれらの領域で、材料が削られることはないようにする。一方、非マスク(未硬化)領域は、その後のエッチング工程でエッチングが可能である。
【0030】
本発明によれば、次に、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板をエッチング液1に接触させる。このステップでは、エッチング液1の作用により、金属セラミック基板の非マスク領域において、金属は金属層から除去され、少なくとも700℃の融点を有する金属は、少なくとも部分的に接合層から除去される。さらに、エッチング液1は、金属層の金属及び少なくとも700℃の融点を有する金属に加えて、活性金属を除いて、接合層の他の金属(存在する場合)も除去されるように設計することも可能である。金属セラミック基板をエッチング液1に接触させる方法は、特に制限されない。好ましくは、金属セラミック基板がエッチング液1に浸漬又は噴霧されることを提供してもよい。
【0031】
次に、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板をエッチング液2に接触させる。このステップでは、エッチング液2の作用により、金属セラミック基板の非マスク領域で活性金属が除去される。この際、第一の金属セラミック基板を、第一の金属セラミック基板の金属層と平行な投影面に直交射影すると、第二の金属セラミック基板の金属層を60%以下シェーディングするように、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板が配置されている。好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板をエッチング液2に接触させ、第一の金属セラミック基板を、第一の金属セラミック基板の金属層と平行な投影面に直交射影すると、第二の金属セラミック基板の金属層を50%以下、特に好ましくは40%以下、非常に特に好ましくは30%以下、例えば、15%以下シェーディングするように、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板が配置されている。
【0032】
第一の金属セラミック基板の直交射影は、第一の金属セラミック基板の金属層と平行な投影面上である。好ましくは、投影面は、第一の金属セラミック基板を平行移動させて得られる像にまたがる面である。好ましくは、変位は、第一の金属セラミック基板の金属層と直交する方向である。この平行移動は、一方向だけでなく、逆方向にも可能である。第一の金属セラミック基板の金属層とそれに平行な投影面との間の距離は、好ましくは、第一の金属セラミック基板の金属層とそれに平行な投影面との間の距離が第一の金属セラミック基板の金属層及び第二の金属セラミック基板がまたがる平面との間の距離以上であるように選択され、第一の金属セラミック基板の金属層及び第二の金属セラミック基板がまたがる平面との間の距離は、好ましくは、第一の金属セラミック基板の金属層の重心を通る垂線に沿うように決定される。したがって、第一の金属セラミック基板の金属層とそれに平行な投影面との間の距離は、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板の配置に起因してこれが全く可能である限りにおいて、直交射影における第二の金属セラミック基板の部分シェーディングを達成できるように十分に大きいことが好まれる。第一の金属セラミック基板の金属層とそれに平行な投影面との間の距離は、20cm、30cm、50cmのいずれであってもよい。例えば、第一の金属セラミック基板の金属層とそれに平行な投影面との間の距離は、第一の金属セラミック基板の最大の辺の長さに対応することができる。
【0033】
第二の金属セラミック基板が、第一の金属セラミック基板の金属層とそれに平行な投影面との間に配置される場合、その金属層は、必要に応じて、直交射影によってシェーディングすることができる。本発明によれば、第一の金属セラミック基板の金属層が第二の金属セラミック基板の金属層に面しているか、又は離れているかに関係なく、シェーディングが生じる。したがって、第二の金属セラミック基板の金属層のシェーディングは、第一の金属セラミック基板のセラミック層、第二の金属セラミック基板のセラミック層、第一及び第二の金属セラミック基板のセラミック層、又は適切な場合、第一又は第二の金属セラミック基板のセラミック層に接続された物体(例えば、第一及び/又は第二の金属セラミック基板上のさらなる金属層)が、第一の金属セラミック基板の金属層と金属層との間の直交射影に依然として残っている場合も、達成することができる。シェーディングの比率は、(a)と(b)の比率から生じることが好ましい。ここで、(a)は、第一の金属セラミック基板の金属層と平行な投影面への第一の金属セラミック基板の直交射影が交差する第二の金属セラミック基板上の領域の面積を示し、(b)は、第二の金属セラミック基板の金属層の面積を示す。面積を計算するときに、金属層のマスキングを考慮する必要はない。したがって、マスキングとエッチングなしで生じる金属層の面積を使用して面積を計算することが好ましい。同様に、例えば、両面をメタライズする場合のように、第二の金属セラミック基板上のさらなる金属層は、面積を計算するときに考慮に入れる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第一の金属セラミック基板10と第二の金属セラミック基板20の配置を示し、第一の金属セラミック基板10を、第一の金属セラミック基板10のマスク金属層11に平行な投影面40、40に直交射影しても、第二の金属セラミック基板20の金属層21のシェーディングが0%であることを示す。
図2】第一の金属セラミック基板100と第二の金属セラミック基板200の配置を示し、第一の金属セラミック基板100を、第一の金属セラミック基板100のマスク金属層110に平行な投影面400に直交射影すると、第二の金属セラミック基板200の金属層210の60%以上をシェーディングしていることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、第一の金属セラミック基板10と第二の金属セラミック基板20の配置を示し、第一の金属セラミック基板10を、第一の金属セラミック基板10のマスク金属層11に平行な投影面40、40に直交射影しても、第二の金属セラミック基板20の金属層21のシェーディングが0%であることを示す。図示されているのは、セラミック層12に接合されたマスク(図示せず)金属層11を有する第一の金属セラミック基板10である。セラミック層12は、金属層11よりも大きな寸法を有し、したがって、金属層11を越えて延在していてもよい。また、セラミック層22に金属層21が接合されてなる第二の金属セラミック基板20も示されている。第一の金属セラミック基板10と第二の金属セラミック基板20とは、キャリア30上にその全面が水平に横たわっている。第一の金属セラミック基板10の金属層11に対して垂直に第一の金属セラミック基板10が平行移動すると、第一の金属セラミック基板10の像50、50’が投影面40、40’にまたがるように表示される。第一の金属セラミック基板10の投影面40、40’への直交射影(破線矢印で示す)は、第二の金属セラミック基板20の金属層21と交差しない。そのため、第一の金属セラミック基板10を、第一の金属セラミック基板10の金属層11に平行な投影面40、40’に直交射影しても、第二の金属セラミック基板20のシェーディングは0%である。
【0036】
図2は、第一の金属セラミック基板100と第二の金属セラミック基板200の配置を示し、第一の金属セラミック基板100を、第一の金属セラミック基板100のマスク金属層110に平行な投影面400に直交射影すると、第二の金属セラミック基板200の金属層210の60%以上をシェーディングしていることを示す。図示されているのは、セラミック層120に接合されたマスク(図示せず)金属層110を有する第一の金属セラミック基板100である。また、セラミック層220に接合された金属層210を有する第二の金属セラミック基板200を示す。第一の金属セラミック基板100と第二の金属セラミック基板200とは、キャリア300(例えば、コンベアベルト)上に傾斜して配置されている。傾斜配置は、例えば、キャリア(図示せず)を用いて実現することができる。第二の金属セラミック基板200は、第一の金属セラミック基板100の背後に配置され、これと平行に配向している。第一の金属セラミック基板100のマスク金属層110から間隔をあけて平行に投影面400が配置されている。ここでは、例えば、第一の金属セラミック基板100のマスク金属層110と平行に配置されているため、第二の金属セラミック基板200にまたがっていてもよい。ただし、投影面の位置はさらに限定されるものではない。したがって、投影面は、代替的に、ここに示す投影面400と平行に変位することができる。特に、投影面は、投影面400よりも金属セラミック基板100の金属面110から大きな距離にあるように選択することができる。第一の金属セラミック基板100を、第一の金属セラミック基板100の金属層110に平行な投影面に直交射影すると、第二の金属セラミック基板200のシェーディング量は、この点で、投影面の正確な位置に依存しない。第一の金属セラミック基板100の投影面400への直交射影(破線矢印で示す)は、遮光領域500において第二の金属セラミック基板200の金属層210と交差する。第一の金属セラミック基板100を、第一の金属セラミック基板100の金属層110に平行な投影面400に直交射影すると、第二の金属セラミック基板200のシェーディングは、60%以上となる。
【0037】
驚くべきことに、エッチング液2によるエッチングの効果には、個々の金属セラミック基板同士の相対位置が大きく影響することが判明した。本発明によれば、金属セラミック基板の非マスク領域(すなわち、例えば、エッチングマスクによって占有されていない領域)を有する表面が、エッチング液2に対して可能な限り自由にアクセスできるように、金属セラミック基板を配置することが有利である。これは、理論に縛られることなく、非マスク領域にエッチング液2を非常に理想的に灌流させることができるためと考えられる。エッチング液2を効果的に流すことで、エッチング液2との接触が生じ、接合層から活性金属を非常に短時間で完全に除去できる可能性がある。
【0038】
エッチング液2に接触させたときの第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板との配置は、さらに限定されるものではない。好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とを移動させながら、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とをエッチング液2に接触させることができる。好ましくは、移動は連続的な動きである。
【0039】
好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、エッチング液2に接触させるためのキャリア上に配置されている。特に好ましくは、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、同一のキャリア上に配置される。キャリアは、例えば、コンベアベルトであってもよい。好ましい実施形態によれば、キャリアは、搬送方向に移動されるコンベアベルトである。一方、コンベアベルト上に載せる金属セラミック基板用のホルダーであってもよい。したがって、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、例えば、キャリアとしてコンベアベルト上に直接配置されてもよく、あるいは、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、さらなるキャリア(例えば、ホルダー)上に配置され、そのキャリアは、今度はキャリアとしてコンベアベルト上に配置されてもよい。
【0040】
キャリア上の第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板の配置は、さらに限定されない。好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、その表面全体にわたって、一方のキャリア上に載っていることが提供される。代替案によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、実質的にコンベアベルトのガイドレール上にのみ載っていることを提供してもよい。さらなる代替案によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、さらなるキャリア(例えば、ホルダー)のガイドレール上に載るか、又はさらなるキャリア(例えば、ホルダー)のフレームにクランプされてもよく、このキャリアは、コンベアベルト上に配置されてもよい。
【0041】
好ましくは、金属セラミック基板は、マスキングが施され、好ましくはエッチング液2による処理を目的とする第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板の金属層がキャリアから離れる方向に向くように、キャリア上に横たわっている。さらなる好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板はそれぞれ両面メタライズド金属基板であり、第一の金属セラミック基板の金属層上の領域及び第二の金属セラミック基板の金属層上の領域の特に好ましいマスキングは、両側で行われる。この実施形態では、エッチング液で処理するための金属セラミック基板が、例えば、コンベアベルトのガイドレール又はホルダーのガイドレールなどのキャリア上の端部のみで載っているか、あるいはホルダーのフレームにクランプされている構成が有利になり得る。
【0042】
エッチング液2を接触させたときに、第一の金属セラミック基板を、第一の金属セラミック基板の金属層と平行な投影面に直交射影すると、第二の金属セラミック基板の金属層を60%以下シェーディングするように、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板を配置する可能性は、さらに限定されるものではない。
【0043】
好ましい実施形態によれば、エッチング液2と接触させる際、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、以下の少なくとも1つの方式で、キャリア上、好ましくは同じキャリア上に配置され、キャリアは、特に好ましくは搬送方向に移動するコンベアベルトである。これらの方式は、
a)第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とを積層されない方式、
b)第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とを実質的に水平な位置に配置する方式、
c)第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とを、実質的に垂直な位置で、かつ搬送方向に対し互いに前後に配置する方式、及び
d)第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とを、第一の金属セラミック基板と搬送方向とが45°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは20°以下の角度を描くように、第二の金属セラミック基板と搬送方向が45°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは20°以下の角度を描くように配置する方式
である。
【0044】
したがって、一実施形態によるエッチング液2と接触させた場合、第一金属セラミック基板と第二金属セラミック基板は、積層されなくてもよい。この場合、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、互いに隣接して配置されていることが好ましい。好ましくは、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、互いに平行に配置される。
【0045】
さらなる好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、実質的に水平な位置に配置される。この場合、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、並べて配置されることが好ましい。好ましくは、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、互いに平行に配置される。例えば、この場合、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、それぞれ、その一方の金属層上に横たわって配置することができ、特に好ましくは、非マスク金属層上に横たわって配置される。
【0046】
さらなる好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、実質的に垂直な位置で、かつ搬送方向に対して互いに前後に配置されている。この場合、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、例えば、コンベアベルト上のホルダーに配置されてもよい。この場合、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、同じホルダーに配置されてもよいし、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、異なるホルダーに配置されてもよい。この場合、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板は、搬送方向に対して互いに前後に配置されているので、理想的なエッチング液2の流れが行われ得る。
【0047】
さらに好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とは、第一の金属セラミック基板と搬送方向とが45°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは20°以下の角度を描くように、第二の金属セラミック基板と搬送方向とが45°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは20°以下の角度を描くように配置されている。さらに別の好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とは、第一の金属セラミック基板と搬送方向が少なくとも1°、より好ましくは少なくとも3°、特に好ましくは少なくとも5°である角度を描くように、第二の金属セラミック基板と搬送方向が少なくとも1°、より好ましくは少なくとも3°、特に好ましくは少なくとも5°である角度を描くように配置されている。このような第一又は第二の金属セラミック基板とコンベアベルトの搬送方向との間の角度は、エッチング液2の流出を単純化するのに好都合なものととすることができる。さらに別の好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とは、第一の金属セラミック基板と搬送方向とが1~45°の範囲内の角度、より好ましくは3~30°の範囲内の角度、特に好ましくは5~20°の範囲内の角度を描くように配置され、第二の金属セラミック基板と搬送方向とが1~45°の範囲内の角度、より好ましくは3~30°の範囲内の角度、特に好ましくは5~20°の範囲内の角度を描くように配置されている。
【0048】
さらなる好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、連続的に操作される。
【0049】
第一の金属セラミック基板と第二の金属セラミック基板とをエッチング液2に接触させる方法は、さらに限定されない。好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板とエッチング液2との接触は、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板にエッチング液2を噴霧すること、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板をエッチング液2に浸漬すること、又は第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板をエッチング液2に通過させることによって行われる。
【0050】
さらに別の好ましい実施形態によれば、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板は、エッチング液2に接触させる際に、超音波で接触させる。
【0051】
好ましい実施形態によれば、マスキングは、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板から除去される。例えば、エッチング液2と接触させた後、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板からマスキングを除去することができる。一方、エッチング液1と接触させた後、既に第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板からマスキングを除去することも可能である。マスキングの除去は、さらに限定されるものではなく、当業者に公知の方法で行うことができる。
【0052】
さらに、洗浄を本発明による方法の個々のステップの前、間及び/又は後に実施すると有利な場合がある。洗浄は、水で行うことが好ましい。特に好ましくは、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板の洗浄は、
・マスキングする前に、
・エッチング液1で処理する前に、
・エッチング液2で処理する前に、
・マスキングを除去する前に、及び/又は
・マスキングを除去した後に、
行われる。
【0053】
洗浄後、第一の金属セラミック基板及び第二の金属セラミック基板を乾燥させることが好ましい。
【0054】
上記の方法により得られた金属セラミック基板は、特に微細なパターニング構造を有しており、パワーエレクトロニクス用途に極めて適している。
【実施例0055】
(金属セラミック基板の製造例)
金属セラミック基板の製造は、まず19.8重量%のスズ粉末(7~11μm)、3.7重量%の水素化チタン、6.5重量%の有機ビヒクルをスタンドミキサーにより1930rpmで30分間混合した。その後、3.0重量%のTexanolと67重量%の銅粉末(7~11μm)を段階的に添加した。得られた混合物を、均質なペーストが得られるまで高速で攪拌した。
【0056】
こうして得られたペーストを用いて、セラミック体を金属箔の対向する両面に接着させた。このために、寸法が174×139×0.32mmで、前面と背面が同じであるセラミック体(東芝マテリアルより入手)を使用した。このペーストを280メッシュのスクリーンを用いてセラミック体の裏面の寸法168×130mmの領域にスクリーン印刷し、125℃で15分間予備乾燥させた。予備乾燥後のペースト厚は、25±5μmであった。次に、純度が99.99%で、寸法が170×132×0.3mmの無酸素高導電性銅からなる銅箔を予備乾燥したペーストの上に置いた。このように製造された構造体を裏返し、セラミック体の前面にペーストを均等に印刷し、予備乾燥させた後、銅箔を載せてサンドイッチ構造体にした。次に、このサンドイッチ構造体に重さ1kgの炭化ケイ素板を載せ、最高温度910℃(熱電対で測定)で20分間焼成し、室温まで冷却して、銅層に接合層を介して両面を接合したセラミック層を含む金属セラミック基板を得た。
【0057】
金属セラミック基板のエッチングの実施例:
上記の製造例により得られた金属セラミック基板に、上面にマスク領域と非マスク領域を有するエッチングマスクを設けた。水洗後、金属セラミック基板をエッチング液1で処理し、銅層から銅を、接合層から銅とスズを除去した。その後、以下の実施例及び比較例に従って金属セラミック基板を洗浄し、エッチング液2で処理して接合層からチタンを除去した。
【0058】
実施例1:
金属セラミック基板をコンベアベルト上に水平に置き、エッチング液2の浴槽内をコンベアベルトによって搬送した。
【0059】
実施例2:
金属セラミック基板をコンベアベルト上に水平に置き、超音波処理を施しながらエッチング液2の浴槽内をコンベアベルトで搬送した。
【0060】
実施例3:
金属セラミック基板をコンベアベルト上に水平に置き、スプレーノズルの下を搬送して、そこから金属セラミック基板にエッチング液2を噴射した。
【0061】
実施例4:
金属セラミック基板をコンベアベルト上に水平に置き、静止した状態でエッチング液2を噴射した。
【0062】
実施例5:
金属セラミック基板をコンベアベルト上に載せ、超音波処理を施しながらエッチング液2の浴槽内をコンベアベルトで搬送した。金属セラミック基板とコンベアベルトの搬送方向は、それぞれ15°の角度を描いていた。金属セラミック基板の傾斜位置は、支持体によって実現された。ある金属セラミック基板を、この金属セラミック基板のマスク金属層と平行な投影面に直交射影すると、他の(隣接する)金属セラミック基板の金属層が最大15%シェーディングされるように、金属セラミック基板が配置された。
【0063】
実施例6:
金属セラミック基板をコンベアベルト上に載せ、超音波処理を施しながらエッチング液2の浴槽内をコンベアベルトで搬送した。金属セラミック基板とコンベアベルトの搬送方向は、それぞれ10°の角度を描いていた。金属セラミック基板の傾斜位置は、支持体によって実現された。ある金属セラミック基板を、この金属セラミック基板のマスク金属層と平行な投影面に直交射影すると、他の(隣接する)金属セラミック基板の金属層が最大50%シェーディングされるように、金属セラミック基板が配置された。
【0064】
比較例1:
金属セラミック基板をコンベアベルト上のホルダーに垂直に置き、エッチング液2の入った浴槽内をコンベアベルトで搬送した。
【0065】
比較例2:
金属セラミック基板をコンベアベルト上のホルダーに垂直に置き、超音波処理を施しながらエッチング液2の浴槽内をコンベアベルトで搬送した。
【0066】
比較例3:
金属セラミック基板をコンベアベルト上のホルダーに垂直に置き、スプレーノズルの下を搬送して、そこから金属セラミック基板にエッチング液2を噴射した。
【0067】
比較例4:
金属セラミック基板をコンベアベルト上のホルダーに垂直に置き、静止した状態でエッチング液2を噴射した。
【0068】
比較例5:
金属セラミック基板をコンベアベルト上に載せ、超音波処理を施しながらエッチング液2の浴槽内をコンベアベルトで搬送した。金属セラミック基板とコンベアベルトの搬送方向は、それぞれ10°の角度を描いていた。金属セラミック基板の傾斜位置は、支持体によって実現された。ある金属セラミック基板を、この金属セラミック基板のマスク金属層と平行な投影面に直交射影すると、他の(隣接する)金属セラミック基板の金属層が70%シェーディングされるように、金属セラミック基板が配置された。
【0069】
評価:
個々の実施例及び比較例は、異なる種類の金属セラミック基板、異なる種類のエッチング液2、及び異なるコンベアベルト速度で繰り返された。各実施例、比較例とも前述のパラメータは同じものを使用した。金属セラミック基板の接合層におけるチタンの残存量を定性的に測定した。その結果を表1に示す。
表1:
【表1】
凡例:
+++:残留チタン含有量が非常に少ない
---:残留チタン含有量が非常に多い
o:残留チタン含有量を容易に検出可能
【0070】
この結果によって、エッチング液2との接触時に、金属セラミック基板をこのように配置すると、すなわち、ある金属セラミック基板を、この金属セラミック基板のマスク金属層と平行な投影面に直交射影すると、例えば金属セラミック基板を水平又はほぼ水平に配置した場合のように、さらなる金属セラミック基板の金属層が60%以下シェーディングされるように配置すると、特に効果的に活性金属を除去できることが分かった。この結果によって、また、本発明の方法に従って得られた金属セラミック基板においては、遊離活性金属が実質的に完全に除去されていることが示された。
図1
図2
【外国語明細書】