(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113143
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】浮上式の紡績リングを備えた紡績装置およびバルーン制限スリーブ
(51)【国際特許分類】
D01H 7/60 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
D01H7/60 C
D01H7/60 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022007669
(22)【出願日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】10 2021 101 435.2
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン キュパース
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA02
4L056AA32
4L056BD32
4L056BD48
4L056BE05
4L056EB12
4L056EB30
4L056EC63
4L056EC70
4L056EC85
4L056FA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スピンドル回転数の制限を受けることなく、かつリングトラベラを用いることなしに確実に紡績プロセスを行うことが可能な紡績装置および紡績装置を備えた紡績機を提供する。
【解決手段】特にリング紡績機またはリング撚糸機のための紡績装置1aであって、スピンドル軸線6に対して同軸的に位置調整して糸巻管8を収容するための紡績スピンドルと、スピンドル軸線に対して同軸的に配置された、糸巻管上に巻き取るべき糸5を外側でガイドするための紡績リング20aと、スピンドル軸線に対して同軸的に配置された紡績リングガイドユニット21aとを備え、紡績リングがスピンドル軸線方向で浮上式に紡績リングガイドユニットに位置固定されている、紡績装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にリング紡績機またはリング撚糸機用の紡績装置(1a~1n)であって、
スピンドル軸線(6)に対して同軸的に位置調整して糸巻管(8)を収容するための紡績スピンドルと、
前記スピンドル軸線(6)に対して同軸的に配置され、前記糸巻管(8)上に巻き取るべき糸(5)を外側でガイドするための紡績リング(20a~20e)と、
前記スピンドル軸線(6)に対して同軸的に配置された紡績リングガイドユニット(21a~21f)と、
を備え、前記紡績リング(20a~20e)が、スピンドル軸線方向で浮上式に前記紡績リングガイドユニット(21a~21f)に位置固定されている、紡績装置において、
バルーン制限スリーブ(2a~2n)が設けられ、該バルーン制限スリーブ(2a~2n)は、前記糸(5)を当該バルーン制限スリーブ(2a~2n)の内側でガイドするように、前記スピンドル軸線(6)に対して同軸的に配置されていることを特徴とする、紡績装置(1a~1n)。
【請求項2】
前記紡績リング(20a~20e)が、スピンドル軸線方向で磁場を介して浮上式に前記紡績リングガイドユニット(21a~21f)に位置固定されている、請求項1記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項3】
前記紡績リングガイドユニット(21a~21f)が、紡績リング周面から離間し且つ同軸的に配置されたガイドリング(17a,17b,17c)を有している、請求項1または2記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項4】
前記紡績リング(20a~20e)が、前記スピンドル軸線方向に対する垂直方向で磁場を介して前記スピンドルリングガイドユニット(21a~21f)に位置固定されている、請求項1から3までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項5】
前記紡績リング(20a~20e)と、前記ガイドリング(17a,17b,17c)とが、前記スピンドル軸線(6)に対する垂直方向に対向するとともに互いに反発する磁石(10a,10b,12,15,16)、特に環状磁石を有しており、該磁石は、前記紡績リング(20a~20e)がスピンドル軸線方向でかつ/または前記スピンドル軸線(6)に対する垂直方向で前記ガイドリング(17a,17b,17c)に対して位置固定されるように構成されている、請求項1から4までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項6】
前記紡績リングガイドユニット(21a~21f)が、前記スピンドル軸線(6)に対して同軸的に、かつ鉛直方向で前記紡績リング(20a~20e)の下側に配置された紡績リング支持リング(18)を有しており、前記紡績リング(20a~20e)および前記紡績リング支持リング(18)が、スピンドル軸線方向で対向配置されるとともに互いに反発するように位置調整された磁石(9a,9b,11)、特に環状磁石を有しており、該磁石は、前記紡績リング(20a~20e)がスピンドル軸線方向で前記紡績リング支持リング(18)に対して鉛直方向で離間して配置されているように、構成されている、請求項1から5までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項7】
前記紡績リング支持リング(18)と、前記ガイドリング(17a,17b,17c)とが、互いに結合されており、特に一体的に形成されている、請求項1から6までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項8】
前記ガイドリング(17a,17b,17c)が、前記紡績リング支持リング(18)を起点として、前記紡績リング(2a~20e)の上側の領域内にまで延びている、請求項1から7までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項9】
前記糸巻管(8)および前記紡績リング(20a~20e)に、前記スピンドル軸線(6)に対する垂直方向で対向するとともに互いに反発する磁石(13,14a,14b)、特に環状磁石が配置されており、該磁石は、前記紡績リング(20a~20e)が前記スピンドル軸線(6)に対する垂直方向で前記糸巻管(8)に対して位置固定されているように構成されている、請求項1から8までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項10】
前記ガイドリング(17a,17b,17c)、前記支持リング(20a~20e)および/または前記糸巻管(8)に設けられた前記磁石(9b,10b,15,16)が、電磁石(9b,10b,15,16)として構成されている、請求項1から9までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項11】
前記紡績リング(20a~20e)と前記紡績リング支持リング(18)との間、前記紡績リング(20a~20e)と前記紡績リング支持リング(18)との間、前記紡績リング(20a~20e)と前記ガイドリング(17a,17b,17c)との間かつ/または前記紡績リング(20a~20e)と前記糸巻管(8)との間の距離を検出するためのセンサユニットが設けられている、請求項1から10までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項12】
バルーン制御スリーブ(2a~2n)が、少なくとも部分的に、前記紡績リング(20a~20e)および/または前記ガイドリング(17a,17b,17c)に対して同軸的に配置されている、請求項1から11までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項13】
前記ガイドリング(17a,17b,17c)が、前記バルーン制限スリーブ(2a~2n)の内面に配置されている、請求項1から12までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項14】
前記ガイドリング(17a,17b,17c)および/または前記バルーン制限スリーブ(2a~2n)に対して少なくとも部分的に同軸的に配置された糸支持リング(24)が設けられている、請求項1から13までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項15】
前記バルーン制限スリーブ(2a~2n)が、複数の部分を有しており、特にテレスコープ状に結合された少なくとも2つのスリーブボディ(3a~3c,4a~4c)を有している、請求項1から14までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項16】
前記バルーン制限スリーブ(2a~2n)が、スピンドル軸線方向で変化する内側横断面を有している、請求項1から15までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項17】
前記紡績リング(20a~20e)と前記ガイドリング(17a,17b,17c)との間の半径方向の距離が、0.05mm~5mm、好適には0.25mm~1.5mmである、請求項1から16までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項18】
前記紡績リング(20a~20e)の対角直径が、前記ガイドリング(17a,17b,17c)の内径よりも大きい、請求項1から17までの1つまたは複数に記載の紡績装置(1a~1n)。
【請求項19】
糸(5)を製造して糸巻管(8)上に巻き取るための紡績装置(1a~1n)を備えた紡績機、特にリング紡績機またはリング撚糸機であって、
前記紡績装置(1a~1n)が、請求項1から11までの1つまたは複数に記載のように構成されていることを特徴とする、紡績機。
【請求項20】
前記紡績リング(20a~20e)と前記紡績リング支持リング(18)との間、前記紡績リング(20a~20e)と前記ガイドリング(17a,17b,17c)との間かつ/または前記紡績リング(20a~20e)と前記糸巻管(8)との間の距離を検出するためのセンサユニットに接続され、電磁石(9b,10b,15,16)として構成された磁石の電流を変化するための制御ユニットが設けられている、請求項19記載の紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を製造して糸巻管上に巻き取るための紡績装置を備えた、紡績機、特にリング紡績機またはリング撚糸機ならびに特にリング紡績機またはリング撚糸機用の紡績装置であって、
-スピンドル軸線に対して同軸的に位置調整して糸巻管を収容するための紡績スピンドルと、
-スピンドル軸線に対して同軸的に配置され、糸巻管上に巻き取られるべき糸を外側でガイドするための紡績リングと、
-スピンドル軸線に対して同軸的に配置された紡績リングガイドユニットと、
を備え、紡績リングが、スピンドル軸線方向で浮上式に紡績リングガイドユニットに位置固定されている、紡績装置に関する。
【0002】
上述の種類の紡績装置ならびにこのような紡績装置を備えた紡績機は、たとえば欧州特許出願公開第3231904号明細書から知られている。つまりこの文献は、磁場を使用しながら、紡績リングを、紡績スピンドルに対して、もしくは紡績スピンドル上に配置された糸巻管に対して同軸的に接触することなしに位置固定されている紡績リングガイドユニットを既に開示している。紡績リングが浮上式に内部に配置されている適切な磁場を形成するために、欧州特許出願公開第3231904号明細書は、窒素冷却された超伝導体の使用を開示している。紡績リングを浮上式に、ひいては非接触式に支持することにより、紡績プロセスを、リングトラベラシステムを備えた公知のリング紡績機に比べて著しく高いスピンドル回転数で実施することができる。このことは特に、スピンドル回転数を制限する、紡績プロセス中のリングトラベラと製造すべき糸との間の摩擦を、リングトラベラの省略により無視したままでよいことに基づいて生じる。
【0003】
しかし、リングトラベラシステムを備えた紡績機に比べて高いスピンドル回転数は、糸バルーンの拡大をもたらし、これにより、最終的に糸破断および紡績プロセスの中断につながるように糸バルーンが潰れるか、もしくは畳まれる恐れが増大する。さらに、より高いスピンドル回転数は、糸に作用する遠心力も高めてしまう。高められた遠心力は、糸バルーンを形成しながら糸巻管へと接近させられる糸の引裂きにつながり、この引裂きは紡績プロセスを中断してしまう。糸バルーンを制限するための公知のバルーン狭窄リングは、このバルーン狭窄リングが糸の単に点状の支持に基づいて高い摩擦力をもたらし、この摩擦力がバルーン狭窄リングの損傷の他に糸も損傷してしまう、という欠点を有している。さらに、巻取り張力が過度に低いという問題が生じ、このことは軟らかいコップにつながる。
【0004】
このことを起点として、本発明の根底にある課題は、紡績装置および紡績装置を備えた紡績機を改良して、スピンドル回転数を制限することなしに、かつリングトラベラを使用することなしに、紡績プロセスの確実な実施を可能にすることである。
【0005】
本発明は、この課題を、糸を製造して糸巻管上に巻き取るための紡績装置を備えた、請求項19記載の特徴を有する紡績機と、特にリング紡績機またはリング撚糸機用の、請求項1記載の特徴を有する紡績装置とによって解決する。紡績機の有利な改良形は、従属請求項20に記載されている。紡績装置の別の構成は、従属請求項2~18に記載されている。
【0006】
紡績装置にとって特徴的であるのは、糸をバルーン制限スリーブの内側でガイドするように、スピンドル軸線に対して同軸的に配置されたバルーン制限スリーブが設けられていることである。
【0007】
本発明による紡績装置は、従来の紡績装置とは異なり、リングトラベラシステムが省かれており、この場合に糸は外側で紡績リングの傍らをガイドされる。回転しないか、またはスピンドル回転数を著しく下回る回転数でしか回転しない、浮上式に配置され、ひいては非接触式に支持された紡績リングと、本発明により配置されたバルーン制限スリーブとの組み合わせは、紡績プロセスを、リングトラベラシステムを備えた紡績装置に比べて、著しく高いスピンドル回転数で実施することを可能にする。結果として、端部を閉じた状態で繊維または糸のような全ての個別の構成要素に本撚りを付与するための撚り付与システムが提供され、この撚り付与システムは、リングトラベラシステムを備えた紡績機に比べてスピンドル回転数が高いにもかかわらず、紡績プロセスを妨げることなしに実施することができるように、十分な巻取り張力で糸バルーン力および紡績張力を制限する。
【0008】
紡績リングは、好適には、中央に配置された穴を備えたディスクであり、この穴を通して、糸巻成体を含む糸巻管が貫通ガイドされる。紡績リングは、適切な構成、たとえば圧縮空気支持部により、その鉛直方向の位置に保持される。このために、本発明に係る紡績装置は、スピンドル軸線に対して同様に同軸的に配置された紡績リングガイドユニットを有している。紡績リングガイドユニットと紡績リングとの間で生じる非接触式の支持は、紡績リングの重量に抗して作用し、かつ紡績リングの、その使用位置における浮上状態を引き起こす。この使用位置において、スピンドル軸線はベース面に対して実質的に垂直方向に位置決めされており、したがって、紡績リングの重量はスピンドル軸線方向に作用している。
【0009】
バルーン制限スリーブの使用は、バルーン制限スリーブの内部における糸の信頼性のよいガイドを保証し、これにより、たとえば糸のループ形成または輪奈形成による紡績プロセスの妨害は確実に阻止される。バルーン制限スリーブは、ドラフト装置出口と紡績リングとの間の区間で糸を支持し、紡績工程中に糸に作用する遠心力の確実な支持を保証する。さらに、浮上式に配置された紡績リングと組み合わせてバルーン制限スリーブを使用することにより、通常の糸巻取りにとって必要である巻取り張力が保証されると同時に、紡績張力は、たとえば紡績プロセスを中断させる糸破断が生じないように制限される。
【0010】
本発明に係る紡績装置の機能にとって重要であるのは、紡績リングガイドユニットに対して鉛直方向の位置で浮上式に位置固定されている紡績リングと、糸をガイドするバルーン制限スリーブとから成る組み合わせである。本出願の枠内では、「鉛直方向」、「下」および「上」という用語は、紡績装置の使用位置に関し、この使用位置では、紡績リングの重量がスピンドル軸線に沿って位置調整されており、紡績リングガイドユニットによって、重量に抗して作用する保持力が生成され、この保持力により、紡績リングが接触することなしに浮上式に保持される。
【0011】
既に上述したような紡績リングの構成と、紡績リングの浮上式の配置のための紡績リングガイドユニットの構成とは、原則的に自由に選択可能である。したがって、紡績リングガイドユニットはたとえば、適切に調整された圧縮空気を介して紡績リングを紡績リングガイドユニットに対して浮上式に位置決めするように構成されていてよい。しかし、本発明の特に有利な1つの構成によれば、たとえば一時的に磁化可能な材料、恒久的に磁化可能な材料または磁化可能ではない材料から形成されている紡績リングが、スピンドル軸線方向で磁場を介して浮上式に紡績リングガイドユニットに位置固定されていることが規定されている。
【0012】
紡績リングガイドユニットと紡績リングとの間に形成された磁場は、紡績リングの重量とは逆向きの保持力を引き起こし、その使用位置における紡績リングの浮上状態を引き起こす。磁場内で浮上式に配置された紡績リングと組み合わせてこのバルーン制限スリーブを使用することにより、正常な糸巻取りのために必要となる巻取り張力が特に確実に保証される。さらに、紡績張力は、紡績プロセスを中断させる糸破断が生じないように、特に確実に制限される。
【0013】
浮上式の紡績リングの半径方向のガイドのために、つまりスピンドル軸線に対する垂直方向で位置調整された位置決めのために、原則的に任意の構成が設けられていてよい。したがって、本発明の1つの改良形によれば、半径方向の位置決めのために、つまりスピンドル軸線に対する垂直方向に位置調整された配置のための機械的な位置固定を提供するために、紡績リングガイドユニットが、紡績リング周面から離間し且つ同軸的に配置されたガイドリングを有していることが規定されている。
【0014】
ガイドリングは、少なくとも部分的に、スピンドル軸線方向で見て、紡績リングに対して同軸的に配置されており、かつその内面を介して、紡績リング周面と係合可能な支持面を提供し、これにより、紡績リングは、半径方向で、つまりスピンドル軸線に対する垂直方向で確実にその位置に保持され、ガイドされる。紡績リング周面とガイドリングとの間で生じる、空隙の形の間隔は、紡績プロセス中に、紡績リング周面に沿った糸の確実なガイドを保証する。
【0015】
したがって、ガイドリングとの協働において、紡績リング周面は機械的なガイドを保証し、ひいてはスピンドル上に配置された糸巻管に対する紡績リングの半径方向での安定的かつ簡単な支持を保証する。この支持は、特に簡単かつ安定的であり、特に廉価に製造することができる。したがってこの構成は、特に高いスピンドル回転数を可能にし、これにより、これに対応して改良された紡績装置を備えた紡績機の特に高い生産性を達成することができる。
【0016】
本発明の特に有利な1つの構成では、紡績リングが、スピンドル軸線方向に対する垂直方向で磁場を介して紡績リングガイドユニットに位置固定されていることが規定されている。本発明のこの構成によれば、紡績リングガイドユニットは、紡績リングの、スピンドル軸線方向で行われる浮上式の配置に対して付加的にさらに、磁場を介して紡績リングをスピンドル軸線に対するその半径方向の位置で位置固定されているように構成されている。
【0017】
紡績リングガイドユニットの対応する構成は、機械的に作用する、紡績リングと協働する位置決め手段を完全に省略することを可能にする。紡績リングをスピンドル軸線方向で磁場を介して浮上式に保持する、同様に有利に設けられる紡績リングガイドユニットの構成との組み合わせにおいて、紡績リングは、対応して改良された紡績リングガイドユニットを介して完全に磁場を介して、または別の磁場を介してその位置に、つまりスピンドル軸線方向でも半径方向、つまりスピンドル軸線に対して垂直な方向でも非接触式に位置固定され得る。したがって、本発明のこの構成は、特に高いスピンドル回転数での特に信頼性のよい紡績プロセスを保証する。さらに、紡績装置は、特に適切な磁場の使用時に特に廉価かつコンパクトに製造され得る。
【0018】
原則的に、紡績リングの、スピンドル軸線方向で位置調整された位置決めのための、または好適にはスピンドル軸線方向でもスピンドル軸線方向に対する垂直方向でも位置調整された位置決めのための、紡績リングガイドユニットの有利に規定された磁場の構成は自由に選択可能である。しかし本発明の特に有利な1つの構成によれば、紡績リングと、ガイドリングとが、スピンドル軸線に対する垂直方向に対向するとともに互いに反発する磁石、特に環状磁石を有しており、この磁石は、紡績リングがスピンドル軸線方向で、かつ/またはスピンドル軸線に対する垂直方向でガイドリングに対して位置固定されるように構成されている。
【0019】
本発明のこの構成によれば、ガイドリングおよび紡績リングに磁石が配置されており、ガイドリングと紡績リングとの間で生じる磁場が、スピンドル軸線方向での、またはスピンドル軸線方向とスピンドル軸線に対する垂直方向とでのガイドリングに対する紡績リングの位置固定を引き起こすようになっている。本発明のこの構成は、特に紡績リングがスピンドル軸線方向でも、スピンドル軸線方向に対する垂直方向でも位置固定が行われる構成において、糸が紡績リングの外側でのガイド後に妨げられずに糸巻管上に巻き取られ得る紡績装置を特に簡単かつコンパクトな構造形式で実施することを可能にする。それぞれ紡績リングおよびガイドリングの全周にわたって延びる環状磁石としての磁石の有利な構成は、特に確実な形式で、スピンドル軸線およびスピンドル軸線に同軸的に配置された糸巻管に対する紡績リングの正確な配置を保証する。
【0020】
本発明の別の1つの構成によれば、スピンドル軸線方向で紡績リングガイドユニットに紡績リングを配置するために、紡績リングガイドユニットが、スピンドル軸線に対して同軸的に、かつ鉛直方向で紡績リングの下側に配置された紡績リング支持リングを有しており、紡績リングおよび紡績リング支持リングが、スピンドル軸線方向で対向配置されるとともに互いに反発するように位置調整された磁石、特に環状磁石を有しており、該磁石は、紡績リングがスピンドル軸線方向で紡績リング支持リングに対して鉛直方向で離間して配置されているように、構成されていることが規定されている。
【0021】
本発明のこの構成によれば、紡績リングガイドユニットが紡績リング支持リングを有しており、紡績リング支持リングが、同様にスピンドル軸線に対して同軸的に、かつスピンドル軸線方向で紡績リングの下側に配置されている。したがって、紡績リング支持リングおよび紡績リングにおいて互いに反発するように位置調整されている磁石は、磁場を形成し、この磁場は、紡績リングの重量に抗して作用するので、紡績リングは紡績リング支持リングに対して浮上式に保持される。磁石の構成ならびに紡績リングおよび紡績リング支持リングにおける磁石の配置は、これらの磁石を介して、紡績リングを紡績リング支持リング上で支持する磁場が形成されることが保証される限り、原則的に自由に選択可能である。したがって、たとえば、紡績リング支持リングおよび紡績リングにおいてスピンドル軸線を中心とした周面にわたって分配して個別の磁石を配置することが可能であり、これらの磁石は、紡績リング支持リングに対する紡績リングの確実な位置決めを保証する。しかし、特に有利には、磁石は環状磁石として形成されており、環状磁石は、紡績リングおよび紡績リング支持リングにおいて、スピンドル軸線を中心とする周方向領域にわたって延びている。
【0022】
ガイドリングの配置は、基本的に紡績リング支持リングから独立して行うことができる。したがって、ガイドリングは、たとえば、機械フレームに配置されていてよい。本発明の別の1つの構成によれば、紡績リング支持リングとガイドリングとが互いに結合されており、特に一体的に形成されている。本発明のこの構成によれば、紡績リング支持リングとガイドリングとは、カップ状の構造を形成し、紡績リングの浮上式の配置を介して、好適には紡績リング支持リングと紡績リングとの間に形成された磁場を介して、紡績リングの鉛直方向の位置決めが行われ、ガイドリングの内面と紡績リング周面との協働を介して、またはガイドリングと紡績リングとの間に形成された磁場を介して、紡績リングの半径方向の位置決めが行われる。このように形成された紡績リングガイドユニットは、特に確実な形式でスピンドル軸線に対する、もしくはスピンドル軸線上に配置された糸巻管に対するガイドリングの正確な位置決めを保証し、糸巻管上に巻き取られる糸は、紡績リングとガイドリングとの間の領域を通ってガイドされ、次いで半径方向で紡績リング支持リングと紡績リングとの間を糸巻管に向かってガイドされる。
【0023】
本発明の特に有利な1つの構成によれば、ガイドリングは、紡績リング支持リングを起点として紡績リングの上側の領域内にまで延びていることが規定されている。本発明のこの構成によれば、ガイドリングの、紡績リング周面に面した内面が、紡績リング支持リングを起点として、スピンドル軸線方向で紡績リングの上縁部の上側の領域内にまで延びている。本発明のこの構成は、ガイドリング内での紡績リングの特に確実な半径方向のガイドを保証し、さらにガイドリングの内面により、製造された糸のための付加的なガイドが提供される。ガイドリングの、紡績リングの上縁部より上側の部分は、バルーン制限スリーブの機能を担う。ガイドリングとバルーン制限スリーブとは、この構成によれば一体的に形成されている。したがって、ガイドリングとバルーン制限スリーブとの間には隙間や移行部がない。これにより、輪奈形成、つまり糸の輪奈またはループの発生を良好に阻止することができる。
【0024】
本発明の別の1つの構成によれば、紡績リングの、半径方向、つまりスピンドル軸線に対する垂直方向に向けられたガイドのために、糸巻管および紡績リングに、スピンドル軸線に対する垂直方向で対向するとともに互いに反発する磁石、特に環状磁石が配置されており、この磁石は、紡績リングがスピンドル軸線に対する垂直方向で糸巻管に対して位置固定されているように構成されていることが規定されている。
【0025】
この構成によれば、糸巻管と、紡績リングの、糸巻管に面した内面との間で形成される磁場が、スピンドル軸線に対する紡績リングの半径方向のガイドを引き起こす。磁石の構成、特に糸巻管における磁石の長手方向の延在長さは、紡績プロセス中のスピンドル軸線に沿った糸巻管の移動経過を考慮して行われ、これにより特に確実な形式で紡績リングの持続的な半径方向の位置調整が保証される。特に有利には、磁石は環状磁石として構成されており、これにより、紡績リングの特に安定的な位置固定が保証される。
【0026】
磁場を発生させるための磁石の構成は、原則的に自由に選択可能である。したがって、たとえば、必要に応じて対応して反発する位置調整を有する永久磁石の使用が考えられ、これにより紡績リングを鉛直方向および/または半径方向で配置のために適切な磁場を形成することができる。しかし、本発明の特に有利な1つの構成によれば、ガイドリング、支持リングおよび/または糸巻管に有利な形式で設けられた磁石は、電磁石として構成されていることが規定されている。電磁石の使用により、磁場を特に電流の変化により変化させることが可能であり、これにより、紡績リングガイドユニットに対して紡績リングを特に正確に位置決めすることが可能である。
【0027】
特に有利な1つの構成によれば、特に磁石が電磁石として有利な形式で設けられている構成の場合、センサユニットが設けられており、センサユニットは、紡績リングと支持リングとの間、紡績リングとガイドリングとの間かつ/または紡績リングと糸巻管との間の距離を検出するために構成されている。
【0028】
センサユニットの使用は、紡績リングガイドユニットにおける紡績リングの位置の連続的な検出を可能にする。したがって、たとえば、有利に設けられた磁石の構成に関係なく、センサユニットを介してガイドリングの位置の重要な変化を検出することができ、場合によっては、紡績プロセスの故障が発生する前に対策を講じることができる。センサユニットを電磁石に関連して使用した場合、センサユニットは、距離を検出するためにホールセンサを有していてもよく、ホールセンサは、磁場の変化の検出を介して間接的に距離変化を検出し、電磁石により形成される磁場を必要に応じて調整することが可能であり、これにより紡績リングガイドユニットにおける紡績リングの確実な配置を持続的に保証することができる。この距離が目標値から逸脱している場合には、磁場を電流の増減によって調整することができる。したがって、特に紡績リングの鉛直方向の位置決めのために、磁場を反発力と引力との間で切り替えることが可能であり、これにより、紡績リングの外側の糸ガイド面の下方の外縁部において内方に向かって偏向させられる糸による糸張力に抗して作用することができる。
【0029】
バルーン制限スリーブの長手方向延在長さ、特に紡績リングガイドユニットに対して鉛直方向でのバルーン制限スリーブの位置調整は、原則的に自由に選択可能である。しかし、本発明の特に有利な1つの構成によれば、バルーン制限スリーブが紡績リングおよび/またはガイドリングに対して少なくとも部分的に同軸的に配置されていることが規定されている。
【0030】
本発明のこの構成によれば、バルーン制限スリーブは、少なくとも部分的に1つの領域で鉛直方向に延びており、これによりこの領域は、紡績リングおよび/またはガイドリングに対して同軸的に配置される。したがって、バルーン制限スリーブは、紡績リングを少なくとも部分的に取り囲んでおり、これにより、糸が紡績リングにおいてループまたは輪奈の形でバルーン制限スリーブから出ることを特に確実な形式で阻止する。バルーン制限スリーブの同軸的な配置のために、バルーン制限スリーブは、たとえば、紡績リングガイドユニットに対して同軸的な領域において漏斗形に形成されていてよい。
【0031】
有利な形式で設けられているガイドリングに対するバルーン制限スリーブの配置は、基本的に、バルーン制限スリーブの内面の幾何学的形状と同様に、自由に選択可能である。しかし、本発明の特に有利な1つの構成によれば、ガイドリングが、バルーン制限スリーブの内面に配置されていることが規定されている。本発明のこの構成によれば、ガイドリングとバルーン制限スリーブとが1つの構造ユニットを形成し、バルーン制限スリーブが、ガイドリングの領域において、ガイドリングと紡績リングとの間の領域を通って糸が確実にガイドされるように構成されている。本発明のこの構成は、紡績装置の特に単純かつ廉価な構成を可能にする。
【0032】
バルーン制限スリーブおよび/またはガイドリングは、原則的には、対応する配置もしくは互いに対して相対的な配置時に、糸の十分に外側のガイドを引き起こし、したがって、紡績プロセスを中断する糸の輪奈形成を阻止する。本発明の別の1つの構成によれば、糸支持リングが設けられており、糸支持リングは、ガイドリングおよび/またはバルーン制限スリーブに対して少なくとも部分的に同軸的に配置されている。
【0033】
糸支持リングは、好適にはスピンドル軸線に対して平行な内面でガイドリングおよび/またはバルーン制限スリーブに対して同軸的に配置されたリングであり、このリングは、スピンドル軸線方向でガイドリングおよび/またはバルーン制限スリーブと重畳し、これにより、スピンドル軸線に対する垂直方向で見て、バルーン制限スリーブとガイドリングとの間の領域に糸のための通過領域を形成する、バルーン制限スリーブとガイドリングとの間の隙間がある場合に、糸ガイドを提供し、この糸ガイドは、紡績プロセスを中断する輪奈形成が生じることを特に確実に阻止する。糸支持リングは、任意の形式で配置されていてよく、たとえば、紡績機の機械フレームに配置されていてよい。バルーン制限スリーブにおける糸支持リングの配置も考えられる。糸支持リングとバルーン制限スリーブとの一体な構成も可能である。
【0034】
本発明の別の1つの構成によれば、バルーン制限スリーブは、複数の部分を有していてよく、特に、テレスコープ状に結合された少なくとも2つのスリーブボディを有していることが規定されている。バルーン制限スリーブの複数の部分から成る構成は、紡績プロセスに対応する糸ガイド面を提供することを可能にし、これにより、紡績リングに対する糸巻管の鉛直方向の運動時に、バルーン制限スリーブにおける糸の確実なガイドが継続的に保証される。
【0035】
バルーン制限スリーブは、特に有利な1つの構成によれば、スピンドル軸線方向で変化する内側横断面を有している。本発明のこの構成によれば、バルーン制限スリーブの内側横断面は、たとえば、紡績リングガイドユニットに向かう方向で部分的に拡大または収縮することができ、これにより、漏斗形の領域が生じる。バルーン制限スリーブを、スピンドル軸線方向で互いに隣り合う、先細りする領域および拡大する領域から形成する可能性も生じ、バルーン制限スリーブの、たとえばスピンドル軸線方向で見て波状の内面が形成される。バルーン制限スリーブのこれらの構成は、紡績すべき糸をガイドするために、内面を特別な形式で紡績プロセスに適合させることを可能にする。
【0036】
本発明はさらに、糸を製造して糸巻管上に巻き取るための上記で提示した本発明による紡績装置または改良された紡績装置を備えた紡績機、特にリング紡績機またはリング撚糸機によっても課題を解決する。対応する紡績機は、従来のリングトラベラシステムを備えた紡績機に比べて、より高いスピンドル回転数で紡績プロセスを実行することを可能にする。本発明に係る紡績機は、特に効率的に運転することができる。同時に、紡績機は、確実な巻取り張力を保証するので、糸を規定通りの巻取りのために必要となる張力で糸巻管に巻き取ることができる。
【0037】
本発明の特に有利な1つの改良形によれば、紡績リングと支持リングとの間、紡績リングとガイドリングとの間かつ/または紡績リングと糸巻管との間の距離を検出するための有利な形式で設けられたセンサユニットが、制御ユニットに接続されていることが規定されている。制御ユニットは、有利な形式で電磁石として構成された磁石の電流を変化させるために構成されている。センサユニットと制御ユニットとの接続は、距離の直接的な検出を介して、または磁場の変化を介した間接的な距離の検出を介して、磁場を決定する電流を調整することを可能にし、これにより、紡績リングガイドユニットにおける紡績リングの確実な位置調整が継続的に保証されている。糸力に基づいて引き起こされる紡績リングの動きは、磁場の変化により制御ユニットを介して確実に補償することができる。
【0038】
本発明の別の1つの構成によれば、紡績リングとガイドリングとの間の半径方向の距離は、0.05mm~5mm、好適には0.25mm~1.5mmであることが規定されている。紡績リングとガイドリングとの間の小さな直径差を保証する、本発明のこの構成により、紡績すべき糸は、紡績リングが僅かに傾斜している場合でも、確実に糸巻管へとガイドされることが達成される。なぜならば、紡績リングは、場合によって、対角線上で対向する2つの点においてのみガイドリングに支持され、したがって支持点間に十分な空間が残り、この空間内で糸は変位することができ、紡績プロセス中に、紡績プロセスの中断をもたらしてしまうように挟まれることがないからである。
【0039】
紡績リングが傾斜した場合にガイドリングに対する紡績リングの対応する対角線上の支持を特に確実な形式で保証するために、本発明の特に有利な1つの構成によれば、紡績リングの対角線上の直径がガイドリングの直径よりも大きいことが規定されている。本発明のこの構成によれば、紡績リングの対角線上の直径、すなわち紡績リングがガイドリングにおいて対角線上で対向する2つの点で支持される直径は、ガイドリングの直径よりも大きい。この構成により、紡績リングが傾斜している場合に、紡績リングがガイドリングの内面に接触することを特に確実な形式で保証し、これにより、傾斜が生じた場合であっても紡績プロセスの継続が特に確実な形式で保証されている。
【0040】
以下、図面を参照して本発明の実施形態例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】紡績装置の第1の実施形態を示す概略図である。
【
図2】紡績装置の第2の実施形態を示す概略図である。
【
図3】紡績装置の第3の実施形態を示す概略図である。
【
図4】紡績装置の第4の実施形態を示す概略図である。
【
図5】紡績装置の第5の実施形態を示す概略図である。
【
図6】紡績装置の第6の実施形態を示す概略図である。
【
図7】紡績装置の第7の実施形態を示す概略図である。
【
図8】紡績装置の第8の実施形態を示す概略図である。
【
図9】紡績装置の第9の実施形態を示す概略図である。
【
図10】紡績装置の第10の実施形態を示す概略図である。
【
図11】紡績装置の第11の実施形態を示す概略図である。
【
図12】紡績装置の第12の実施形態を示す概略図である。
【
図13】紡績装置の第13の実施形態を示す概略図である。
【
図14】紡績装置の第14の実施形態を示す概略図である。
【
図16】a~gは、バルーン制限スリーブの互いに異なる実施形態を示す概略図である。
【0042】
紡績装置1aの第1の実施形態は、
図1の概略図に再現されている。ドラフト装置(図示せず)から供給された糸5は、紡績装置1a内で、スピンドル軸線6上に配置された糸巻管8に到達し、糸巻管8上に糸5は糸巻成体7として置かれる。紡績装置1aにより糸5をガイドするために、紡績装置1aは、紡績リングガイドユニット21aと、第1のスリーブボディ3を有するバルーン制限スリーブ2aとを有しており、紡績リングガイドユニット21aおよびバルーン制限スリーブ2aは各々、スピンドル軸線6に対して同軸的に配置されている。
【0043】
紡績リングガイドユニット21aにおいて、糸5は半径方向で糸巻管8に供給され、糸巻管8上で、糸は糸巻管8の回転に基づいて糸巻成体7として置かれる。糸5を糸巻管8に向かう方向で半径方向にガイドするためには紡績リングガイドユニット21aの紡績リング20aが役立ち、この場合、紡績リング20aはスピンドル軸線6に対して同軸的に配置されている。糸巻管8に対する紡績リング20aの軸方向の位置決めのために、紡績リングガイドユニット21aは、紡績リング支持リング18を有している。紡績リング支持リング18に対して紡績リング20aをスピンドル軸線方向に位置決めするために、紡績リング支持リング18は、その全周にわたって分配されて配置された永久磁石9aを有している。永久磁石9aは、スピンドル軸線方向で対向する、紡績リング20aに配置された磁石11と協働して、反発する磁場を生成する。これにより、紡績リング20aは、浮上式に紡績リング支持リング18上に位置決めされている。磁石9a,11間に発生する磁場は、紡績リング20aの重量に抗して作用し、したがって、紡績リング20aを紡績リング支持リング18上に離間して位置決めする。
【0044】
紡績リングガイドユニット21aならびに糸巻管8に対する紡績リング20aの半径方向の位置固定のために、紡績リング支持リング18にガイドリング17aが配置されており、このガイドリング17aは、ガイドリング17aが紡績リング20aに対して同軸的に配置されているように、紡績リング支持リング18を起点としてスピンドル軸線方向に延びている。スピンドル軸線6に対して垂直に見て、つまり半径方向で互いに反対の側で、ガイドリング17aおよび紡績リング20aに磁石10a,12が配置されており、この場合にこれらの磁石は互いに反発し、これにより紡績リングガイドユニット21により紡績リング20aが半径方向でガイドリング17aに対して、かつ鉛直方向で紡績リング支持リング18aに対して浮上式に保持される。
【0045】
紡績リング20aがスピンドル軸線6を中心として回転しないか、またはスピンドル回転数よりも著しく低い回転しか有しない紡績プロセス中に、バルーン制限スリーブ2aのスリーブボディ3aの内面に沿ってガイドされる糸5が、信頼性よく糸巻成体7として糸巻管8上に至る。
【0046】
図2には、紡績装置1bの別の1つの実施形態が図示されている。この紡績装置1bは、紡績リングガイドユニット21bの構成において、実施形態で
図1に示した紡績装置1aとは異なっている。
図1に図示された紡績装置1aと比べて、紡績リング支持リング18およびガイドリング17aは、
図1に図示した永久磁石9a,10aの代わりに、電磁石9b,10bを有しており、これらの電磁石9b,10bは、紡績リング20aに設けられた永久磁石11,12と、反発する磁場を形成するために協働する。
【0047】
紡績リング支持リング18と紡績リング20aとの間ならびにガイドリング17aと紡績リング20aとの間の領域における距離センサ22は、たとえば、紡績工程中に作用する糸張力の結果としての距離変化の発生時に、紡績リングガイドユニット21bにおける紡績リング20aの正確な位置調整のための電磁石9b,10bの電流の適合を可能にする。
【0048】
図3に図示された紡績装置1cは、
図1に図示された紡績装置1aとは、紡績リングガイドユニット21cにおける紡績リング20bの半径方向のガイドの構成により異なっている。したがって、紡績リング20bは、
図1に図示された紡績リング20aとは異なり、糸巻管8に面した磁石13を有しており、磁石13は、糸巻管8に配置された磁石14aと相互作用しており、紡績リング20bの半径方向、つまりスピンドル軸線6に対する垂直方向の位置決めのために、磁石13,14aの間で反発する磁界が形成されている。その他の点において、紡績リングガイドユニット21cおよび紡績装置1cは、紡績リングガイドユニット21aおよび紡績装置1aに一致する構造を有している。
【0049】
図4には、紡績装置1dの別の1つの実施形態が図示されている。この実施形態は、
図1に図示された紡績装置1aとは以下のことにより異なっており、すなわち、磁石11,12に対して付加的に、紡績リング20cに磁石13が配置されており、この磁石13が、糸巻管8に配置された磁石14aと相互作用していることにより、異なっている。したがって、紡績リングガイドユニット21dにおける、または糸巻管8に対する紡績リング20cの半径方向の位置調整は、ガイドリング17aに設けられた磁石10aと、紡績リング20cに設けられた磁石12との間の相互作用を介して、かつ紡績リング20cに設けられた磁石13と、糸巻管8に配置された磁石14aとの間の相互作用を介して行われる。
【0050】
紡績リングガイドユニット21eを備えた、
図5に図示された紡績装置1eは、
図1に図示された紡績装置1aの別の変化形を成し、この変化形では、糸巻管8に配置された磁石14bと、紡績リング支持リング18に配置された、鉛直方向の位置調整のための磁石9bとが、電磁石として構成されている。
【0051】
図6は、紡績装置1lの別の実施形態を図示しており、この実施形態では、紡績装置1lが糸支持リング24を有している。この糸支持リング24は、紡績リング支持リング18およびガイドリング17aに対して同軸的に、かつバルーン制限スリーブ2mに対して同軸的に配置されており、スピンドル軸線方向6で見て、バルーン制限スリーブ2mとガイドリング17aとの間の隙間が糸支持リング24によって覆われているようになっている。これにより、紡績プロセスを妨害するループ形成が阻止される。
図6に示した糸支持リング24の内面は、スピンドル軸線6に対して平行に形成されている。これにより、スピンドル軸線6に対する垂直方向での糸の支持は特に確実である。
図1~
図5に示したバルーン制限スリーブ2aの漏斗状の延長部も、糸支持リングの機能を有している。
【0052】
図6に示された実施例では、糸支持リング24が、バルーン制限スリーブ2mに結合されている。これとは異なり、
図7に図示された紡績装置1mでは、糸支持リング24は、バルーン制限スリーブ2nにも、ガイドリング17aにも結合されておらず、ガイドリング17aに対して同軸的に離間して配置されている。
図6に図示された実施例のように、
図7に図示された実施例でも糸支持リング24の、スピンドル軸線6に面した内面は、糸5のための支持を提供する。
【0053】
図8は、紡績装置1fの別の1つの実施形態を図示しており、この実施形態では、
図1~
図7に図示された紡績装置1a~1eとは異なり、紡績リングガイドユニット21fは、紡績リング20dを同軸的に取り囲むガイドリング17bのみによって形成されている。紡績リング20dをガイドリング17bに対して位置固定する磁場を生成するために、ガイドリング17bには磁石16が配置されており、この磁石16は、紡績リング20dに設けられた磁石15と磁場を形成する。この磁場が、紡績リング20dを、スピンドル軸線方向でも、スピンドル軸線6に対する垂直方向でもガイドリング17bに対して位置決めする。
【0054】
糸巻管8上に糸巻成体7として糸5を軸方向で均一に分配するために、糸巻管8は、第1のスリーブボディ3bおよび第2のスリーブボディ4aとを有するバルーン制限スリーブ2bに対してスピンドル軸線方向で移動可能に配置されている。
【0055】
図9は、
図8に図示された紡績装置1fに対する代替的な構成を図示しており、この代替的な構成は、一致する紡績リングガイドユニット21fを有している。
図8に図示された紡績装置1fとは異なり、
図7に図示された紡績装置1gは、バルーン制限スリーブ2cの代替的な構成を有している。第1のスリーブボディ3bは、テレスコープ状に伸縮可能に第2のスリーブボディ4bに結合されており、これにより、第2のスリーブボディ4bおよび糸巻管8に対する第1のスリーブボディ3bの軸方向の移動によって、糸巻管8上への糸5の均一な巻取りが達成される。
【0056】
図10は、紡績装置1hの別の1つの構成を図示しており、紡績装置1hは、唯1つのスリーブボディ3cを有するバルーン制限スリーブ2dを有している。スピンドル軸線方向へのバルーン制限スリーブ2dおよび/または糸巻管8の移動を介して、糸巻成体7が形成され、この場合に糸5は糸ガイドリング23によりバルーン制限スリーブ2gに供給される。
【0057】
図11は、
図8に図示された紡績装置1hに対する代替的な構成を図示しており、この構成では、バルーン制限スリーブ2eが、円筒形の区分と、紡績リングガイドユニット21fに面した漏斗状の区分とを有する第1のスリーブボディ3bによって形成されている。
【0058】
図12に図示された紡績装置1jは、
図6~
図9において種々異なるバルーン制限スリーブ2b~2eと組み合わせて図示された紡績リングガイドユニット21fの1つの別の構成を図示している。この構成では、バルーン制限スリーブ2fが、2つの円筒形のスリーブボディ3c,4cによって形成されており、第1のスリーブボディ3cと第2のスリーブボディ4cとがテレスコープ状に互いに結合されている。
【0059】
図13は、
図9に図示された紡績装置1gと比べて、糸ガイドリング23の方向で先細りする区分を備えたスリーブボディ3bを有する、紡績装置1kの代替的な1つの実施形態を図示している。
【0060】
図14および
図15には、紡績装置1nの別の1つの実施形態が図示されている。紡績装置1nは、紡績リング支持リング18に結合されているガイドリング17cを有している。このガイドリング17cは、外側の領域で紡績リング支持リング18に接続し、かつスピンドル軸線6の方向に延びており、これにより、紡績リング支持リング18とガイドリング17cとは、カップ状の収容部を形成し、この収容部内で紡績リング20eがスピンドル軸線6に対して同軸的に配置されている。
【0061】
紡績リング支持リング18の上側で鉛直方向に、つまりスピンドル軸線方向に紡績リング20eを離間させるために、永久磁石9a,11が紡績リング支持リング18に、かつ鉛直方向で対向して紡績リング20eに配置されている。永久磁石9a,11の間には、磁界が反発作用を以て形成され、この磁界は、紡績リング20eの鉛直方向に作用する重量に抗して作用し、ひいては紡績リング20eを紡績リング支持リング18に対して浮上式に保持する。
【0062】
スピンドル軸線6に対する垂直方向に、つまり半径方向で、ガイドリング17cの内面が、紡績リング20eの紡績リング周面のためのガイド面を形成し、これにより、ガイドリング17cは、紡績リング20eの半径方向での機械的なガイドを提供する。紡績リング周面とガイドリング17cの内面との間の距離は、糸5が、紡績リング周面の傍らと、紡績リング20eと紡績リング支持リング17cとの間を確実に通過し、次いで糸巻成体7として糸巻管8上に確実に巻き取られ得るように寸法設定されている。紡績リング周面とガイドリング17cの内面との間の半径方向の距離は、
図15に図示されているように、紡績リング20eがスピンドル軸線6に対して傾斜している場合であっても、少なくともさらに紡績されるべき糸5が通過するように寸法設定されており、この場合、場合によっては生じる紡績リング外面とガイドリング17cの内面との小さな直径差に基づいて、糸5のための十分な空間が残っている。
【0063】
ガイドリング17cは、紡績リング支持リング18を起点として、紡績リング20eの上縁部の上側の領域内にまで延びている。紡績リング20fの上側の領域では、ガイドリング17cの内面が、バルーン制限スリーブと同様に糸5のためのガイドとして働く。
【0064】
バルーン制限スリーブ2g~2lの種々異なる構成が
図16a~
図16gに図示されている。
図16aに図示されたバルーン制限スリーブ2gは、紡績リングガイドユニット21a~21f(図示せず)に向かう方向で拡大する断面を有している。
図16bに図示されたバルーン制限スリーブ2hは、スピンドル軸線方向で互いに隣接する円筒形の区分および漏斗形の区分を有している。
【0065】
図16cに図示されたバルーン制限スリーブ2iは、紡績リングガイドユニット21a~21fに向かう方向で先細りする内側横断面を有している。漏斗形の構成を備えた区分に円筒形の区分が交互に続いている。
【0066】
図16eに図示されたバルーン制限スリーブ2jは、スピンドル軸線方向で見て、先細りする内側横断面または拡大する内側横断面を備えた複数の区分を有しており、これらの区分は、スピンドル軸線方向で互いに接続して隣接している。
【0067】
図16fおよび
図16gに図示されたバルーン制限スリーブ2k、2lは、スピンドル軸線方向で波状の形状を有する内面を示している。
【符号の説明】
【0068】
1a~1n 紡績装置
2a~2n バルーン制限スリーブ
3a~3c 第1のスリーブボディ
4a~4c 第2のスリーブボディ
5 糸
6 スピンドル軸線
7 糸巻成体
8 糸巻管
9a,9b 磁石(支持リング)
10a,10b 磁石(ガイドリング)
11 磁石(紡績リング、鉛直方向)
12 磁石(紡績リング、半径方向->ガイドリング)
13 磁石(紡績リング、半径方向->糸巻管)
14a,14b 磁石(糸巻管)
15 磁石(紡績リング、半径方向+鉛直方向)
16 磁石(ガイドリング、半径方向+鉛直方向)
17a~17c ガイドリング
18 紡績リング支持リング
20a~20e 紡績リング
21a~21f 紡績リングガイドユニット
22 距離センサ
23 糸ガイドリング
24 糸支持リング
【外国語明細書】