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特開2022-11318盛土用発泡樹脂ブロックおよびその製造方法、ならびに盛土構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011318
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】盛土用発泡樹脂ブロックおよびその製造方法、ならびに盛土構造体
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112365
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】510187406
【氏名又は名称】株式会社CPC
(71)【出願人】
【識別番号】394014641
【氏名又は名称】カネカケンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 亘
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 英彰
(72)【発明者】
【氏名】原口 望
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044CA08
(57)【要約】
【課題】高い圧縮剛性が得られるだけでなく、より高い構築作業性を得ることが可能な盛土用発泡樹脂ブロックを得る。
【解決手段】樹脂発泡体ブロック30は、発泡体から形成され、第1表面11と、第1表面11の反対側に位置する第2表面12とを有する、本体部10と、本体部10よりも高い剛性を有する部材から形成され、第1端部21と、第1端部21の反対側に位置する第2端部22とを有する、補強用芯材20と、を備え、本体部10の第1表面11側に補強用芯材20の第1端部21が露出し、本体部10の第2表面12側に補強用芯材20の第2端部22が露出するように、補強用芯材20は本体部10を貫通しており、補強用芯材20と本体部10とは、相互に一体的に形成された一体成型品である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体から形成され、第1表面と、前記第1表面の反対側に位置する第2表面とを有する、本体部と、
前記本体部よりも高い剛性を有する部材から形成され、第1端部と、前記第1端部の反対側に位置する第2端部とを有する、補強用芯材と、を備え、
前記本体部の前記第1表面側に前記補強用芯材の前記第1端部が露出し、前記本体部の前記第2表面側に前記補強用芯材の前記第2端部が露出するように、前記補強用芯材は前記本体部を貫通しており、
前記補強用芯材と前記本体部とは、相互に一体的に形成された一体成型品である、
盛土用発泡樹脂ブロック。
【請求項2】
前記補強用芯材の前記第1端部側の部分は、筒状の形状を有し、前記筒状の形状の内面に螺合部が形成されており、
前記補強用芯材の前記第2端部側の部分は、内面が平滑に形成された、筒状の形状を有している、
請求項1に記載の盛土用発泡樹脂ブロック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の盛土用発泡樹脂ブロックが複数積層されることで構成された盛土構造体であって、
第1の盛土用発泡樹脂ブロックと、
前記第1の盛土用発泡樹脂ブロック上に積層された第2の盛土用発泡樹脂ブロックと、
前記第1の盛土用発泡樹脂ブロックと前記第2の盛土用発泡樹脂ブロックとを連結する連結具と、を備える、
盛土構造体。
【請求項4】
前記連結具は、前記第1の盛土用発泡樹脂ブロックの前記補強用芯材に螺合する第1挿入部と、前記第2の盛土用発泡樹脂ブロックの前記補強用芯材に挿入される第2挿入部と、を有する、
請求項3に記載の盛土構造体。
【請求項5】
前記連結具は、前記第1挿入部と前記第2挿入部との間に、外方に向かって突出するフランジ部を有している、
請求項4に記載の盛土構造体。
【請求項6】
前記第2挿入部は、先細りのテーパー形状を有している、
請求項4または5に記載の盛土構造体。
【請求項7】
請求項1または2に記載の盛土用発泡樹脂ブロックの製造方法であって、
金型内に前記補強用芯材を配置する工程と、
前記金型内に前記発泡体の材料を供給し、前記本体部と前記補強用芯材とを一体成型する工程と、を備える、
盛土用発泡樹脂ブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土用発泡樹脂ブロックおよびその製造方法、ならびに盛土構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-23626号公報(特許文献1)に開示されているように、盛土用発泡樹脂ブロックを積層することで盛土構造体を構築するという工法(EPS:Expanded Poly-Styrol工法)が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された盛土用発泡樹脂ブロックにおいては、ブロックの表面からブロックの裏面に貫通するように貫通孔が設けられており、構築作業の現場にて、貫通孔の中にコンクリート製の杭状部材が非接着状態で配設される。特許文献1は、このような発泡樹脂ブロックを用いることによれば、圧縮剛性が高く、しかも構築作業性および解体作業性が共に良好な盛土構造体が得られると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-23626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された盛土構造体によれば、コンクリート製の杭状支柱の存在によって、高い圧縮剛性が得られる。しかしながら、特許文献1に開示されたこの盛土構造体を構成する盛土用発泡樹脂ブロックは、構築作業が行なわれる時点では、ブロックを貫通する貫通孔が単に形成されているのみであるため、実際の土木工事現場にて杭状部材をブロックの内側に入れるという作業が必要になり、必ずしも構築作業性が良いとは言えない。
【0006】
本発明は、高い圧縮剛性が得られるだけでなく、より高い構築作業性を得ることが可能な盛土用発泡樹脂ブロック、およびそのような盛土用発泡樹脂ブロックを製造するための製造方法、ならびに、そのような盛土用発泡樹脂ブロックから構築された盛土構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく盛土用発泡樹脂ブロックは、発泡体から形成され、第1表面と、上記第1表面の反対側に位置する第2表面とを有する、本体部と、上記本体部よりも高い剛性を有する部材から形成され、第1端部と、上記第1端部の反対側に位置する第2端部とを有する、補強用芯材と、を備え、上記本体部の上記第1表面側に上記補強用芯材の上記第1端部が露出し、上記本体部の上記第2表面側に上記補強用芯材の上記第2端部が露出するように、上記補強用芯材は上記本体部を貫通しており、上記補強用芯材と上記本体部とは、相互に一体的に形成された一体成型品である。
【0008】
上記盛土用発泡樹脂ブロックにおいては、上記補強用芯材の上記第1端部側の部分は、筒状の形状を有し、上記筒状の形状の内面に螺合部が形成されており、上記補強用芯材の上記第2端部側の部分は、内面が平滑に形成された、筒状の形状を有していてもよい。
【0009】
本発明に基づく盛土構造体は、本発明に基づく上記の盛土用発泡樹脂ブロックが複数積層されることで構成された盛土構造体であって、第1の盛土用発泡樹脂ブロックと、上記第1の盛土用発泡樹脂ブロック上に積層された第2の盛土用発泡樹脂ブロックと、上記第1の盛土用発泡樹脂ブロックと上記第2の盛土用発泡樹脂ブロックとを連結する連結具と、を備える。
【0010】
上記盛土構造体においては、上記連結具は、上記第1の盛土用発泡樹脂ブロックの上記補強用芯材に螺合する第1挿入部と、上記第2の盛土用発泡樹脂ブロックの上記補強用芯材に挿入される第2挿入部と、を有していてもよい。
【0011】
上記盛土構造体においては、上記連結具は、上記第1挿入部と上記第2挿入部との間に、外方に向かって突出するフランジ部を有していてもよい。
【0012】
上記盛土構造体においては、上記第2挿入部は、先細りのテーパー形状を有していてもよい。
【0013】
本発明に基づく盛土用発泡樹脂ブロックの製造方法は、本発明に基づく上記の盛土用発泡樹脂ブロックの製造方法であって、金型内に上記補強用芯材を配置する工程と、上記金型内に上記発泡体の材料を供給し、上記本体部と上記補強用芯材とを一体成型する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
上記の技術的思想によれば、高い圧縮剛性が得られるだけでなく、より高い構築作業性を得ることが可能な盛土用発泡樹脂ブロック、およびそのような盛土用発泡樹脂ブロックを製造するための製造方法、ならびに、そのような盛土用発泡樹脂ブロックから構築された盛土構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1における盛土構造体100を示す断面図である。
図2】実施の形態1における樹脂発泡体ブロック30および連結具40を示す斜視図である。
図3】実施の形態1における樹脂発泡体ブロック30および連結具40を示す断面斜視図である。
図4】樹脂発泡体ブロック30(30a)と別の樹脂発泡体ブロック30(30b)とが連結具40を介して連結される様子を示す断面図である。
図5】樹脂発泡体ブロック30(30a)と別の樹脂発泡体ブロック30(30b)とが連結具40を介して連結された状態を示す断面図である。
図6】実施の形態1における樹脂発泡体ブロックの製造方法を説明するための断面図である。
図7】実施の形態2における樹脂発泡体ブロック30Dを示す断面図である。
図8】実施の形態3における樹脂発泡体ブロック30Eを示す断面図である。
図9】実施の形態4における連結具40Mなどを示す断面図である。
図10】実施の形態5における樹脂発泡体ブロック30Nおよび連結具40N(積層前の状態)を示す断面図である。
図11】実施の形態5における樹脂発泡体ブロック30Nおよび連結具40N(積層後の状態)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態における盛土構造体および盛土用樹脂発泡体ブロック(以下、単に樹脂発泡体ブロックともいう)について、以下、図面を参照しながら説明する。以下の説明において同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0017】
[実施の形態1]
(盛土構造体100)
図1は、実施の形態1における盛土構造体100を示す断面図である。盛土構造体100は、たとえば、山間地の斜面に沿って設けられ、道路や宅地等を構築するために利用される。本実施の形態における盛土構造体100は、複数の樹脂発泡体ブロック30、複数の連結具40、複数のコンクリート床版50、および外壁パネル60を備える。複数の樹脂発泡体ブロック30は、コンクリート床版50,50の間で積層されている。
【0018】
図2および図3は、それぞれ、実施の形態1における樹脂発泡体ブロック30および連結具40を示す、斜視図および断面斜視図である。図4は、樹脂発泡体ブロック30(30a)と別の樹脂発泡体ブロック30(30b)とが連結具40を介して連結される様子を示す断面図である。
【0019】
(本体部10)
図2図4に示すように、樹脂発泡体ブロック30は、本体部10と補強用芯材20とを備える。図2図3に示す例では、1つの本体部10に2つの補強用芯材20が設けられているが、1つの本体部10に、任意の数の補強用芯材20を設けることが可能である。本体部10は、略直方体の形状を有する。
【0020】
本体部10は、発泡体から形成され、第1表面11と、第1表面11の反対側に位置する第2表面12とを有している。第1表面11および第2表面12は互いに平行である。本体部10の成形に使用する発泡合成樹脂としては、たとえば、発泡ポリスチレン等の発泡ポリスチレン系樹脂、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の発泡ポリオレフィン系樹脂、発泡ポリ塩化ビニル、発泡フェノール樹脂、発泡ポリアミド、発泡ポリウレタン等を使用できる。
【0021】
(補強用芯材20)
補強用芯材20は、塩ビパイプや鋼管、あるいは紙管など、本体部10よりも高い剛性を有する部材から形成される。図2図3に示す例では、補強用芯材20は円筒状の形状を有しているが、補強用芯材20は、楕円筒状や多角形の筒状形状を有していてもよい。補強用芯材20は、中実の柱状の形状(たとえば円柱の形状)を有していてもよい。補強用芯材20は、軸方向における一方側に位置する第1端部21と、軸方向における他方側、すなわち第1端部21の反対側に位置する第2端部22とを有している。
【0022】
補強用芯材20は、本体部10の第1表面11側に補強用芯材20の第1端部21が露出し、本体部10の第2表面12側に補強用芯材20の第2端部22が露出するように、本体部10を貫通している。露出しているとは、たとえば、本体部10の第1表面11側から補強用芯材20の第1端部21を視認可能であることを意味する。
【0023】
本実施の形態においては、補強用芯材20の第1端部21は、本体部10の第1表面11に対して凹んだ位置に配置されており、第1端部21と第1表面11とによって凹状の段差13(図4)が本体部10の第1表面11側に形成されている。同様に、補強用芯材20の第2端部22は、本体部10の第2表面12に対して凹んだ位置に配置されており、第2端部22と第2表面12とによって凹状の段差14(図4)が本体部10の第2表面12側に形成されている。
【0024】
ここで、補強用芯材20と本体部10とは、相互に一体的に形成された一体成型品である。たとえば、本体部10を型内成形法を使用して作製する際、補強用芯材20が金型内に配置された状態で本体部10が補強用芯材20と一体的に成型される。成型により本体部10が作製された状態では、本体部10における補強用芯材20の外周面に接触している部分は、補強用芯材20の外周面を締め付けており、補強用芯材20を本体部10から取り外すことは困難であるかあるいは実質的に不可能であり、たとえば本体部10を破壊しないことには補強用芯材20を取り外すことはできない。
【0025】
(連結具40)
図2図4に示すように、連結具40は、補強用芯材20の第1端部21側の開口に挿入することが可能な第1挿入部41と、補強用芯材20の第2端部22側の開口に挿入することが可能な第2挿入部42と、第1挿入部41と第2挿入部42との間に形成され、外方に向かって突出するフランジ部43とを有する。フランジ部43は、たとえば円環状の形状を有している。
【0026】
第1挿入部41、第2挿入部42およびフランジ部43は、同軸上に配置されており、いずれも中空の筒状形状を有している。第1挿入部41および第2挿入部42はいずれも、軸方向においてフランジ部43から遠ざかるにしたがって先細りとなるテーパー形状を有している。連結具40も、補強用芯材20と同様に、塩ビパイプや鋼管、あるいは紙管など、樹脂発泡体ブロック30の本体部10よりも高い剛性を有する部材から形成することが可能である。連結具40も、中空の形状に限られず、中実の形状を有していてもよい。
【0027】
(盛土構造体100の構築方法)
図1および図4を参照して、盛土構造体100を構築するためには、複数の樹脂発泡体ブロック30が連結具40を利用しながら積層されるとともに、コンクリート床版50が敷設される。コンクリート床版50はたとえば、樹脂発泡体ブロック30を3mの高さに積む毎に、厚さ10cm~15cm程度で敷設される。
【0028】
図4に示すように、本実施の形態の盛土構造体100は、第1の盛土用樹脂発泡体ブロックとしての樹脂発泡体ブロック30(30a)と、第2の盛土用樹脂発泡体ブロックとしての樹脂発泡体ブロック30(30b)と、連結具40とを備える。
【0029】
樹脂発泡体ブロック30(30a)は、第1表面11および第1端部21が重力方向における上側になるように配置されている。樹脂発泡体ブロック30(30a)が配置されたのちに、連結具40の第1挿入部41が、第1端部21側から補強用芯材20の内側に挿入される。
【0030】
連結具40のフランジ部43は、樹脂発泡体ブロック30(30a)側の段差13の内側に配置される。連結具40の第1挿入部41が先細りのテーパー形状を有していることによって、第1挿入部41を補強用芯材20の内側に容易に挿入することができる。また、フランジ部43の存在によって、連結具40がたとえば補強用芯材20の中に落下してしまうことが防がれる。
【0031】
その後、樹脂発泡体ブロック30(30b)が樹脂発泡体ブロック30(30a)の上に積層される。この際、連結具40の第2挿入部42が、第2端部22の側から補強用芯材20の内側に挿入される。連結具40の第2挿入部42が先細りのテーパー形状を有していることによって、第2挿入部42を補強用芯材20の内側に容易に挿入することができる。
【0032】
連結具40のフランジ部43は、樹脂発泡体ブロック30(30b)側の段差14の内側に配置される。この際、樹脂発泡体ブロック30(30a)と樹脂発泡体ブロック30(30b)とは、必要に応じて、すなわちブロック間の緊結力を向上させるといった目的にために、図示しない金具によってさらに強く一体化されてもよい。
【0033】
図5を参照して、以上のような作業を複数の樹脂発泡体ブロック30および複数の連結具40について繰り返していくことによって、図1に示すような盛土構造体100を得ることができる。盛土構造体100においては、複数の補強用芯材20が連結具40を介して連結されている。樹脂発泡体ブロック30(30b)の補強用芯材20に鉛直方向に作用した荷重は、連結具40のフランジ部43を介して樹脂発泡体ブロック30(30a)の補強用芯材20によって支持される。
【0034】
すなわち、複数の補強用芯材20および連結具40が盛土構造体100の中で支柱としての機能を発揮することができるため、鉛直方向において高い圧縮剛性が得られる。補強用芯材20の内側および連結具40の内側に、必要に応じてさらにコンクリートやモルタルを内部に打設して、耐水性の向上を図ったり、より強固な支柱構造を実現してもよい。
【0035】
また、本実施の形態の樹脂発泡体ブロック30においては、本体部10と補強用芯材20とがあらかじめ一体化されている。たとえば、工場から樹脂発泡体ブロック30が出荷される時点で、あるいは盛土構造体100の構築作業が行われる時点で、本体部10の中に補強用芯材20が既に埋め込まれている。したがって、構築作業の現場で本体部10の中に補強用芯材20を配置するという作業が不要である分、冒頭で説明した特許文献1の場合に比べて高い構築作業性を得ることが可能である。
【0036】
ここで、樹脂発泡体ブロック30の本体部10は、発泡ポリスチレン等の発泡ポリスチレン系樹脂、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の発泡ポリオレフィン系樹脂、発泡ポリ塩化ビニル、発泡フェノール樹脂、発泡ポリアミド、発泡ポリウレタン等を用いて作成される。樹脂発泡体は、たとえば重力方向の荷重を受けた場合には弾性変形し、沈下(すなわち圧縮クリープ)等の発生原因となり得る。弾性変形に限られず、樹脂発泡体は長期的に見た場合には一般的に外形寸法が不安定であり、荷重が掛からなくても徐々に自己収縮しやすい。弾性変形の程度、および自己収縮の程度は、樹脂種や発泡剤の量に応じて変動する。
【0037】
以上の状況が起こり得ることに鑑みれば、連結具40を用いる場合には、1つの連結具40と1つの補強用芯材20とを組み合わせた高さが、1つの樹脂発泡体ブロック30における本体部10の厚みと同じか、あるいはそれよりも大きな値となるように設定するとよい。1つの連結具40と1つの補強用芯材20とを組み合わせた高さは、1つの樹脂発泡体ブロック30における本体部10の厚みと同じか、あるいは、当該厚みの100.5%以下となるように設定してもよい。
【0038】
たとえば、1つの樹脂発泡体ブロック30における本体部10の厚みが500mmである場合には、500×1.005(100.5%)=502.5mmであるため、1つの連結具40と1つの補強用芯材20とを組み合わせた高さが502mmになるように設定することができる。このようにすることで、樹脂発泡体から形成された本体部10の寸法が不安定な場合であっても、連結具40と補強用芯材20との合計高さに対して本体部10が飛び出る(あるいははみ出る)ことがなくなる。仮に、高さ方向において隣り合う2つの本体部10,10の間に隙間ができたとしても、盛土構造体100としての高さは連結具40と補強用芯材20とによって規定されることとなり、沈下が発生することを効果的に防止でき、地震時の水平方向の耐力を得ることが可能になる。盛土構造体100としての高さは連結具40と補強用芯材20とによって規定されることとなるため、盛土高さが精度良く仕上がるという効果も得られる。
【0039】
あるいは、連結具40を用いない場合には、1つの樹脂発泡体ブロック30において、1つの補強用芯材20の高さが、本体部10の厚みと同じか、あるいはそれよりも大きな値となるように設定するとよい。1つの補強用芯材20の高さは、本体部10の厚みと同じか、あるいは、当該厚みの100.5%以下となるように設定してもよい。
【0040】
たとえば、1つの樹脂発泡体ブロック30における本体部10の厚みが500mmである場合には、500×1.005(100.5%)=502.5mmであるため、1つの樹脂発泡体ブロック30における1つの補強用芯材20の高さが502mmになるように設定することができる。このようにすることで、上記の場合と同様に、盛土構造体100としての高さは補強用芯材20によって規定されることとなり、沈下が発生することを効果的に防止でき、地震時の水平方向の耐力を得ることが可能になる。盛土構造体100としての高さは補強用芯材20とによって規定されることとなるため、盛土高さが精度良く仕上がるという効果も得られる。
【0041】
(樹脂発泡体ブロック30の製造方法)
図6を参照して、樹脂発泡体ブロック30を作製するために、上型71および下型72が準備される。上型71および下型72から構成される金型の内側には、本体部10の形状に対応したキャビティが構成されている。上型71には、補強用芯材20の第1端部21を位置決めするための突出部73が形成されているとよい。下型72には、補強用芯材20の第2端部22を位置決めするための突出部74が形成されているとよい。
【0042】
以上のような上型71および下型72から構成される金型の内側に、補強用芯材20が配置される。上型71と下型72とを組み合わせた後に、金型のキャビティ内に、本体部10を構成する発泡体の材料を供給する。これにより、本体部10と補強用芯材20とが一体化された、樹脂発泡体ブロック30を得ることができる。
【0043】
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2における樹脂発泡体ブロック30Dを示す断面図である。樹脂発泡体ブロック30Dにおいては、補強用芯材20にフランジ部23が形成されている。フランジ部23は、補強用芯材20の径方向外側に突出する形状を有する。フランジ部23が本体部10の中に食い込むように存在していることで、本体部10と補強用芯材20とがより強固に一体化されている。フランジ部23は、補強用芯材20の外周面上に複数設けられていてもよく、この場合には複数のフランジ部23が軸方向に間隔をあけて並べられる。フランジ部23に限られず、フランジ部23の外周面に雄ネジ状のギザギザ形状が形成されていてもよい。
【0044】
[実施の形態3]
図8は、実施の形態3における樹脂発泡体ブロック30Eを示す断面図である。樹脂発泡体ブロック30Eにおいては、補強用芯材20の第1端部21が本体部10の第1表面11から飛び出している。このような構成を有する樹脂発泡体ブロック30Eを用いて盛土構造体を構築する場合には、実施の形態1で説明したような連結具40は必須ではなくなる。
【0045】
たとえば、2つの樹脂発泡体ブロック30Eを積層する際に、下側の樹脂発泡体ブロック30Eの第1端部21における飛び出した部分を、上側の樹脂発泡体ブロック30Eの第2端部22側の段差14の内側に配置することで、2つの樹脂発泡体ブロック30Eを上下方向において連結することが可能になる。
【0046】
上記のような構成とは反対に、補強用芯材20の第2端部22が本体部10の第2表面12から飛び出すようにしてもよい。この場合、本体部10の第1表面11側に段差13(図4等参照)を構成するとよい。下側の樹脂発泡体ブロックの第1表面11の段差13の内側に、上側の樹脂発泡体ブロックの第2表面12における飛び出した部分を配置する。
【0047】
必要あるいは仕様に応じて、本体部10の第1表面11から補強用芯材20の第1端部21を飛び出させるとともに、本体部10の第2表面12から補強用芯材20の第2端部22を飛び出させてもよい。この場合には、上述の実施の形態における連結具40と同様な手段を用いて、複数の樹脂発泡体ブロックを上下方向に連結するとよい。
【0048】
[実施の形態4]
図9は、実施の形態4における連結具40Mなどを示す断面図である。連結具において、上述の実施の形態1で説明した第1挿入部41および第2挿入部42は必須ではなく、第1挿入部41を適宜省略してもよいし、第2挿入部42を適宜省略してもよい。実施の形態4においては、フランジ部43に相当する部分のみから連結具40Mが形成されている。
【0049】
連結具40Mを用いる場合であっても、樹脂発泡体ブロック30(30b)の補強用芯材20に鉛直方向に作用した荷重は、連結具40Mを介して樹脂発泡体ブロック30(30a)の補強用芯材20によって支持される。
【0050】
[実施の形態5]
図10は、実施の形態5における樹脂発泡体ブロック30Nおよび連結具40N(積層前の状態)を示す断面図である。本実施の形態においては、樹脂発泡体ブロック30Nの補強用芯材20の第1端部21側の部分が、筒状の形状を有しており、この筒状の形状の内面に螺合部25が形成されている。一方で、補強用芯材20の第2端部22側の部分は、内面が平滑に形成された、筒状の形状を有している。
【0051】
連結具40Nの第1挿入部41は、螺合部25(雌ネジ)の形状に対応する雄ネジの形状を有している。連結具40Nの第2挿入部42は、補強用芯材20の第2端部22側の開口の形状に対応する外周面形状を有している。第2挿入部42は、軸方向においてフランジ部43から遠ざかるにしたがって先細りとなるテーパー形状を有しているとよい。
【0052】
図11に示すように、第1の樹脂発泡体ブロック30N(30Na)と第2の樹脂発泡体ブロック30N(30Nb)とを連結する際には、樹脂発泡体ブロック30N(30Na)の補強用芯材20にまず連結具40Nがはめ込まれる。連結具40Nの第1挿入部41は、補強用芯材20の螺合部25に螺合する。
【0053】
この際、連結具40Nを補強用芯材20に完全にはめ込む必要はなく、フランジ部43が所望の高さとなるように連結具40Nの高さ位置を設定してもよい。フランジ部43の高さによって、フランジ部43の上に配置される樹脂発泡体ブロック30N(30Na)の位置が規定されるため、第1挿入部41の雄ネジおよび補強用芯材20mの螺合部25(雌ネジ)が、高さ調節機構としての機能を発揮することが可能になる。この機能を有効に活用することで、たとえば複数の樹脂発泡体ブロックを積層していく上で、左右に並ぶブロック間の高さを水平にすることが可能になる。
【0054】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
10 本体部、11 第1表面、12 第2表面、13,14 段差、20,20m 補強用芯材、21 第1端部、22 第2端部、23,43 フランジ部、25 螺合部、30,30D,30E,30N 樹脂発泡体ブロック、40,40M,40N 連結具、41 第1挿入部、42 第2挿入部、50 コンクリート床版、60 外壁パネル、71 上型、72 下型、73,74 突出部、100 盛土構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11