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特開2022-113194セラミックグリーンシートの積層方法及び積層装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113194
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシートの積層方法及び積層装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/00 20060101AFI20220728BHJP
   B28B 11/12 20060101ALI20220728BHJP
   B28B 11/14 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B28B11/00
B28B11/12
B28B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009251
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】599100176
【氏名又は名称】TEEM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】高林 政富
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸
(72)【発明者】
【氏名】高林 武司
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA08
4G055AC01
4G055AC09
4G055BA22
4G055BA74
4G055BB14
(57)【要約】
【課題】セラミックグリーンシートの切断不良や剥離不良を防止し、製造効率の向上を図る。
【解決手段】キャリアフィルム1に搭載されたセラミックグリーンシート2を供給するシート供給ステップと、供給されたセラミックグリーンシート2を検出して、セラミックグリーンシート2から分離される積層対象であるシート片21に対応するシート領域20を設定するシート領域設定ステップと、セラミックグリーンシート2に対する光照射による切断処理によってセラミックグリーンシートに設定されたシート領域20を他の部分から分離するシート分離ステップと、シート領域20をキャリアフィルム1から剥離することにより、シート領域20に対応するシート片21を形成するシート剥離ステップと、シート片21を積層ステージ102A上で積層するシート積層ステップとを具備する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムに搭載されたセラミックグリーンシートを供給するシート供給ステップと、
供給された前記セラミックグリーンシートを検出して、前記セラミックグリーンシートから分離される積層対象であるシート片に対応するシート領域を設定するシート領域設定ステップと、
前記セラミックグリーンシートに対する光照射による切断処理によって前記セラミックグリーンシートに設定された前記シート領域を他の部分から分離するシート分離ステップと、
前記セラミックグリーンシートの前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離することにより、前記シート領域に対応するシート片を形成するシート剥離ステップと、
前記シート片を積層ステージ上で積層するシート積層ステップと、を具備する、
セラミックグリーンシートの積層方法。
【請求項2】
前記シート分離ステップでは、前記光照射による切断処理が、前記セラミックグリーンシートの前記シート領域の表面に部材を接触させることなしに行われる、
請求項1に記載のセラミックグリーンシートの積層方法。
【請求項3】
前記シート分離ステップによる前記シート領域の前記他の部分からの分離状態を検出し、前記分離状態の良否を判定する分離状態判定ステップをさらに具備する、
請求項1又は2に記載のセラミックグリーンシートの積層方法。
【請求項4】
前記シート剥離ステップでは、前記キャリアフィルムを保持する剥離ステージと、前記シート領域を保持する保持ヘッドとを相対移動させることにより、前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離する、
請求項1-3のいずれか一項に記載のセラミックグリーンシートの積層方法。
【請求項5】
前記シート領域は、前記保持ヘッドの前記保持面の外縁よりも内側に外縁部を備える態様で保持される、
請求項4に記載のセラミックグリーンシートの積層方法。
【請求項6】
前記シート剥離ステップによる前記シート片の剥離後において、前記保持ヘッドに保持された前記シート片の保持状態を検出し、前記保持状態の良否を判定する保持状態判定ステップをさらに具備する、
請求項4又は5のいずれか一項に記載のセラミックグリーンシートの積層方法。
【請求項7】
キャリアフィルム上に搭載されたセラミックグリーンシートを供給するシート供給機構と、
前記セラミックグリーンシートにおいて積層対象であるシート片に対応するように設定されたシート領域を光照射による切断処理により他の部分から分離するシート分離ユニットと、
前記キャリアフィルム上において前記他の部分から分離された前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離するシート剥離機構と、
前記シート片を積層し、前記セラミックグリーンシートの積層体を形成するシート積層ユニットと、
を具備する、
セラミックグリーンシートの積層装置。
【請求項8】
前記キャリアフィルム上の前記セラミックグリーンシートを検出するシート検出装置をさらに具備し、
前記シート分離ユニットは前記シート検出装置の検出データに基づいて前記シート領域を分離し、
前記シート検出装置と前記シート分離ユニットは相対的に固定されている、
請求項7に記載のセラミックグリーンシートの積層装置。
【請求項9】
前記シート剥離機構は、前記キャリアフィルムを保持する剥離ステージと、前記セラミックグリーンシートを保持する保持ヘッドとを有し、前記剥離ステージと前記保持ヘッドを相対移動させることで前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離し、
前記シート分離ユニットは固定されている、
請求項7又は8に記載のセラミックグリーンシートの積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックグリーンシートの積層方法及び積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミックグリーンシートを積層して焼成することにより、積層セラミックコンデンサなどの電子部品が製造されている。このような製造工程では、以下の特許文献1-6に示されるように、キャリアフィルムによって裏打ちされたセラミックグリーンシートを供給し、セラミックグリーンシートを吸着ヘッドで吸着保持した状態でキャリアフィルムから剥離し、積層ステージやアンダープレート上に吸着ヘッドによって加圧し、積層することで、セラミックグリーンシートの積層体が形成される。
【0003】
上記の製造工程では、ステージ上に吸着保持されたキャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートの表面に保持ヘッドを密着させ、吸着保持した状態とした後に、保持ヘッドの外周に設けられた切断刃を備えた切断機構により、セラミックグリーンシートの所定のシート領域を分断するように閉じた輪郭に沿って切断し、その後、保持ヘッドとともに上記シート領域をキャリアフィルムから剥離してシート片を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-129502号公報
【特許文献2】特開平9-115765号公報
【特許文献3】特開平10-71611号公報
【特許文献4】特開2004-358952号公報
【特許文献5】特開2010-171048号公報
【特許文献6】特開2016-46475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような各種の従来技術では、上記製造工程において、切断刃の切れが悪くなると、セラミックグリーンシートに切断不良が生じ、また、これに起因する剥離不良が生じることがある。さらに、上記のような切断不良やこれに起因する剥離不良が生ずると、製造工程に中断が生じ、切断刃の交換作業なども必要となるので、製造工程の効率化が損なわれる結果、製造効率が低下するという問題がある。
【0006】
また、従来技術では、多くの場合、図7に示すように、切断機構13が保持ヘッド11の外周に装備されていることから、保持ヘッド11と切断機構13の位置決めが一度に行われるというメリットがある反面、セラミックグリーンシート2の切断縁は保持ヘッドの外周部の外側に設定せざるを得ないため、切断されるシート領域20の範囲が限定され、保持ヘッド11の保持面11aに保持されるシート片21の大きさが限定されてしまう。このとき、保持面11aの外縁11bには吸着孔11cを設けることができない領域があるため、保持ヘッド11に保持されるシート片21の外縁部21aの吸着状態が不十分になりやすいことから、仮に、切断刃13a自体に問題がなく、セラミックグリーンシート2の切断状態に支障がない場合でも、キャリアフィルム1からのシート片21の剥離状態が悪化し、剥離不良が生ずる恐れがある。
【0007】
さらに、図8に示すように、保持ヘッド11とは別の切断機構14を形成し、保持ヘッド11による吸着保持の前にセラミックグリーンシート2のシート領域20を切断しておくことも考えられるが、近年では製品の小型化を図るためにセラミックグリーンシート2が薄型化されていることから、この場合にはセラミックグリーンシート2の切断箇所に変形が生じやすく、これによる保持ヘッド11による保持不良や剥離不良が多くなることが予想される。
【0008】
そこで、本発明は上記問題を解決するものであり、その課題は、セラミックグリーンシートの切断不良や剥離不良を防止し、製造効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のセラミックグリーンシートの積層方法は、キャリアフィルムに搭載されたセラミックグリーンシートを供給するシート供給ステップと、供給された前記セラミックグリーンシートを検出して、前記セラミックグリーンシートから分離される積層対象であるシート片に対応するシート領域を設定するシート領域設定ステップと、前記セラミックグリーンシートに対する光照射による切断処理によって前記セラミックグリーンシートに設定された前記シート領域を他の部分から分離するシート分離ステップと、前記セラミックグリーンシートの前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離することにより、前記シート領域に対応するシート片を形成するシート剥離ステップと、前記シート片を積層ステージ上で積層するシート積層ステップと、を具備する。
【0010】
本発明によれば、セラミックグリーンシートから積層対象となるシート片に対応するシート領域を分離するシート分離ステップにおいて、前記セラミックグリーンシートに対する光照射による切断処理が用いられることにより、シート領域の外縁部において、切断刃などの切断部材を用いる場合に生ずる切断不良や剥離不良を回避することができる。また、切断不良や剥離不良による中断や切断部材の交換作業などを回避できるとともに、機械的な切断機構が不要であるためにその移動や位置決め動作も不要となることから、積層過程の迅速化が可能になり、製造工程を効率化できる。さらに、切断機構の構造や寸法とは無関係にシート領域を設定可能であることから、機械的構造の変更を必要とせずに、シート片の寸法や形状を容易に変更できるため、製造すべき積層体の構造や形状の変化に対する自由度も向上できる。
【0011】
本発明において、前記シート分離ステップでは、前記光照射による切断処理が、前記セラミックグリーンシートの前記シート領域の表面に部材を接触させることなしに行われることが好ましい。この場合において、前記光照射による切断処理が、上記切断処理が行われる両側の前記セラミックグリーンシートの表面に部材を接触させることなしに行われることが望ましい。これらによれば、シート領域の変更の自由度を高めることができ、また、分離状態の検出を実施する場合には、当該検出も容易化される。ここで、前記光照射はレーザー光の照射であることがさらに望ましい。
【0012】
本発明において、前記シート剥離ステップでは、前記キャリアフィルムを保持する剥離ステージと、前記シート領域を保持する保持ヘッドとを相対移動させることにより、前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離することが好ましい。この場合において、前記シート領域は、前記保持ヘッドの前記保持面の外縁よりも内側に外縁部を備える態様で保持されることが好ましい。これによれば、シート領域が保持ヘッドの保持面の外縁よりも内側に外縁部を備える態様で保持されることにより、保持面において吸引孔などにより得られる吸着機能を確保できる範囲外にシート領域が配置されることを抑制できるため、シート領域の保持状態の不良による剥離不良などを低減でき、積層体の品位を向上させることができる。この場合において、前記保持面の保持可能範囲が限定されている場合には、前記シート領域は、前記保持可能範囲内に限定されるように保持されることが望ましい。
【0013】
本発明において、前記シート分離ステップによる前記シート領域の前記他の部分からの分離状態を検出し、前記分離状態の良否を判定する分離状態判定ステップをさらに具備することが好ましい。この場合において、前記分離状態判定ステップで前記分離状態が良好でないときには、前記光照射による切断処理で前記分離状態を修復するか、或いは、新たに、前記シート供給ステップ、前記シート領域設定ステップ、及び、前記シート分離ステップを再度実施することが望ましい。
【0014】
本発明において、前記シート剥離ステップは、前記セラミックグリーンシートを保持する前記保持ヘッドに対して、前記キャリアフィルムを保持する剥離ステージを相対移動させることによって前記シート片を前記キャリアフィルムから剥離することが好ましい。ここで、前記セラミックグリーンシートを保持する前記保持ヘッドに対して、前記キャリアフィルムを保持する剥離ステージを前記シート領域に沿って相対移動させることによって前記シート片を前記キャリアフィルムから剥離することが望ましい。この場合において、前記シート供給ステップでは、前記キャリアフィルムに搭載された前記セラミックグリーンシートは前記剥離ステージ上へ供給され、前記シート領域設定ステップでは、前記剥離ステージ上の前記セラミックグリーンシートを検出し、前記シート分離ステップでは、前記剥離ステージに保持された前記キャリアフィルムに搭載された前記セラミックグリーンシートに対して行われることがさらに望ましい。このとき、前記シート剥離ステップにおいて前記剥離ステージが前記保持ヘッドに対して前記シート領域に沿って移動したことにより、上記剥離ステージの退避動作に伴って前記保持ヘッドの保持面が対面方向から露出したタイミングで、前記保持状態判定ステップにおいて、前記シート片の保持状態が検出されることがさらに望ましい。
【0015】
本発明において、前記シート剥離ステップによる前記シート片の剥離後において、前記保持ヘッドに保持された前記シート片の保持状態を検出し、前記保持状態の良否を判定する保持状態判定ステップをさらに具備することが好ましい。この場合において、前記保持状態判定ステップで前記保持状態が良好でないときには、前記保持ヘッドに保持された前記シート片を廃棄し、新たに、前記シート供給ステップ、前記シート領域設定ステップ、前記シート分離ステップ、及び、前記シート剥離ステップを再度実施することが望ましい。
【0016】
本発明に係るセラミックグリーンシートの積層装置は、キャリアフィルム上に搭載されたセラミックグリーンシートを供給するシート供給機構と、前記セラミックグリーンシートにおいて積層対象であるシート片に対応するように設定されたシート領域を光照射による切断処理により他の部分から分離するシート分離ユニットと、前記キャリアフィルム上において前記他の部分から分離された前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離するシート剥離機構と、前記シート片を積層し、前記セラミックグリーンシートの積層体を形成するシート積層ユニットと、を具備する。この場合において、前記キャリアフィルム上の前記セラミックグリーンシートを検出するシート検出装置をさらに具備し、前記シート分離ユニットは、前記シート検出装置の検出データに基づいて前記シート領域を分離し、前記シート検出装置と前記シート分離ユニットは相対的に固定されていることが好ましい。また、前記シート剥離機構は、前記キャリアフィルムを保持する剥離ステージと、前記セラミックグリーンシートを保持する保持ヘッドとを有し、前記剥離ステージと前記保持ヘッドを相対移動させることで前記シート領域を前記キャリアフィルムから剥離することが好ましい。この場合に、前記シート分離ユニットは固定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セラミックグリーンシートの切断不良や剥離不良を防止し、製造効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るセラミックグリーンシートの積層方法に用いる積層装置の実施形態の全体構成例を模式的に示す概略構成図である。
図2】同実施形態の各工程を模式的に示す工程説明図(a)―(d)である。
図3】同実施形態の図1に続く各工程を模式的に示す工程説明図(a)―(c)及び平面図(d)である。
図4】同実施形態のシート分離ステップの例の様子を模式的に示す工程説明図及び拡大断面図である。
図5】同実施形態のシート領域の分離後のセラミックグリーンシートを示す平面図(a)及びシート片を保持した保持ヘッドの様子を示す透視平面図(b)である。
図6】同実施形態の動作プログラムに対応する工程例を示す概略フローチャートである。
図7】従来の切断機構を備えた保持ヘッドを用いるシート分離ステップの前段階の様子を示す説明図(a)及び切断時の様子を示す説明図(b)である。
図8】保持ヘッドを用いることなしに切断機構によりシート領域を分離する場合の様子を示す説明図及び拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して本発明に係るセラミックグリーンシートの積層方法及び積層装置の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1を参照して、本発明に係る積層装置の概略構造について説明する。
【0020】
図1に示すように、セラミックグリーンシートの積層装置100は、シート剥離部101A、101Bと、シート積層ユニット102と、シート剥離部101A,101Bとシート積層ユニット102との間を往復し、積層対象であるシート片21をシート剥離部101A,101Bでキャリアフィルム1から剥離し、シート積層ユニット102で積層する保持ヘッド110とを具備する。これらの各シート剥離部101A,101Bとシート積層ユニット102及び保持ヘッド110は、制御部100Gによって制御される。制御部100Gは、各部の制御回路に所定の制御信号を送り、全体の動作を協調させた状態になるように管理する。制御部100Gは、マイクロプロセッサユニットやコンピュータなどによって構成することができ、所定の動作プログラムを実行することによって機能する。シート剥離部101A,101Bとして、図示例では左右一対の剥離部が設けられているが、3以上の剥離部を具備していてもよく、単一の剥離部のみで構成されていても構わない。一般的には、セラミックグリーンシートの表面上に形成される電極パターンの有無や相違などにより、n(nは自然数)種類のセラミックグリーンシートを積層する場合には、n個のシート剥離部が設けられ得る。図示例の場合には、例えば、シート剥離部101Aと101Bの一方に電極パターンを印刷したセラミックグリーンシート2を供給し、他方に電極パターンを有しないセラミックグリーンシート2(カバーシート)を供給する。
【0021】
本実施形態では、シート剥離部101A,101Bに設けられた剥離ステージ101Xa,101Xbに向けて、キャリアフィルム1上に搭載されたセラミックグリーンシート2を供給するシート供給機構101Fa,101Fbが設けられる。シート供給機構101Fa,101Fbは、供給リールに取り付けられた供給ロール103からガイドローラ104a,104bを経て、テンションローラ104cによって所定の張力が付与された状態で、ガイドローラ104dの先にある駆動ローラ105により剥離ステージ101Xa、101Xbの表面である保持面101xa,101xb上にキャリアフィルム1上に搭載されたセラミックグリーンシート2が供給される。保持面101xa、101xbは、図示しない真空ポンプなどの排気装置に接続された多数の吸引孔が開口する保持可能構造などによってキャリアフィルム1を吸着保持できるように構成される。剥離ステージ101Xa、101Xbの下流端はキャリアフィルム1を小さな曲率で屈曲させるように案内する端縁部を備え、その先にキャリアフィルム1を巻き取るための巻取ローラ106と、テンションローラ107a,ガイドローラ107b,107cを経て回収リールに取り付けられた回収ロール108に巻き取られる。なお、図1にはシート剥離部101Aについてのみシート供給機構101Faの詳細を図示するが、シート剥離部101Bにおけるシート供給機構101Fbは、上記シート供給機構101Faと同様に構成できる。
【0022】
シート剥離部101A,101Bには、キャリアフィルム1上に搭載されたセラミックグリーンシート2を検出するためのシート検出装置101ADa、101ADb,101BDa,101BDbが配備される。ここで、シート検出装置101ADa、101ADb,101BDa,101BDbはカメラ等の撮像装置で構成してもよい。シート検出装置101ADa、101ADb,101BDa,101BDbは単一の検出器で構成してもよいが、図示のように、複数の検出器で構成することが好ましい。すなわち、セラミックグリーンシート2のうちの積層対象となるシート領域の外側に印刷された複数の位置決め箇所(マークや電極パターン、シート外縁など)を検出する複数の検出器が挙げられる。例えば、上記位置決め箇所は、シート領域の幅方向両側の対向位置に一つずつの合計2つ、或いは、シート領域の各角部に一つずつの合計4つ設けることが挙げられる。ただし、一つの撮像装置で撮影した画像を処理して複数の位置決め箇所を同時に検出可能であれば、そのようにしても構わない。さらには、上記のような特別な位置決め箇所を設けるのではなく、キャリアフィルム1上に搭載されたセラミックグリーンシート2の外形を検出するだけであっても構わない。シート検出装置はLED光やレーザー光を利用した各種の光センサで構成することもできる。得られた検出データは、制御部100Gによるシート領域20の設定処理に用いられる。シート領域20の設定は、制御部100Gによりシート領域20の位置座標データの導出などによって行なわれる。
【0023】
シート剥離部101A,101Bには、キャリアフィルム1上に搭載されたセラミックグリーンシート2に対して光照射による切断処理を実施し、セラミックグリーンシート2に設定された所定のシート領域20をセラミックグリーンシート2の他の部分から分離するためのシート分離ユニットを構成するレーザー照射装置101AL,101BLを備える。レーザー照射装置101AL,101BLは、例えば、レーザー光を生成するレーザー発振器と、レーザー光の照射位置や方位を設定するためのレーザー光駆動部と、レーザー発振器やレーザー光駆動部を制御するレーザー制御部とを具備する。一例としては、レーザー発振器として、YAGレーザー発振器やCOレーザー発振器などが挙げられる。また、レーザー光駆動部としては、パルスレーザーとの組み合わせにより、ガルバノメータミラーやポリゴンミラーとミラー駆動回路を用いたものが挙げられる。これは、図1図3に模式的に示す形態を想定している。さらに、レーザー光駆動部として、レーザー照射部をXY駆動機構やスカラー型駆動機構などによって移動させることで、レーザー光の照射位置を変えるものであってもよい。これは、図4に模式的に示す形態を想定している。なお、光照射による切断処理に用いるシート分離ユニットとしては、コヒーレント光やレーザー光を用いるものに限らず、任意の高強度の光照射系によって構成することも可能である。また、レーザー光照射などの光照射による切断処理は、複数の光照射部(レーザー照射部)によって並行して実施されるようにしてもよい。例えば、レーザー発振器からミラーや光分配器などを介してレーザー光を分岐し、必要に応じて光ファイバーなどを介して、複数の光照射部(レーザー照射部)を形成し、これらを用いて切断処理箇所を同時並行して走査する。例えば、図5(a)に示すようにシート領域20が矩形であれば、各辺(4つの辺)をそれぞれ別の光照射部(レーザー照射部)によって処理することも考えられる。
【0024】
シート剥離部101A,101Bには、保持ヘッド110に保持されたシート片21の保持状態を検出するシート検出装置101AEa,101AEb,101BEa,101BEbが設けられる。このシート検出装置101AEa,101AEb,101BEa,101BEbは、上記シート検出装置101ADa、101ADb,101BDa,101BDbと同様に、カメラ等の撮像装置でも構成でき、前述のように各種の光センサで構成することもできる。また、複数の検出器を設けるようにしてもよい。ただし、このシート検出装置101AEa,101AEb,101BEa,101BEbは、キャリアフィルム1から剥離され、保持ヘッド110に保持されたシート片21の外観、例えば、シート片21の保持位置(の良否)、保持状態の均一性、その外縁部21aの変形の有無、その他の損傷の有無などを検出する。
【0025】
シート剥離部101A,101Bでは、上記剥離ステージ101Xa,101Xb及び上記保持ヘッド110によって構成されるシート剥離機構が設けられる。このシート剥離機構は、上記剥離ステージ101Xa,101Xbによってキャリアフィルム1が保持されるとともに、上記保持ヘッド110によってセラミックグリーンシート2が保持された状態で、上記剥離ステージ101Xa,101Xbと上記保持ヘッド110を相対移動させることによって、シート片21をキャリアフィルム1から剥離する。このとき、上記シート供給機構101Fa,101Fbによって上記相対移動に整合するようにキャリアフィルム1を保持ヘッド110から離反させる(図1に二点鎖線で示すように剥離ステージ101Xaと同期して巻取ローラ106を移動させる)ことにより、シート片21からのキャリアフィルム1の剥離動作が補助される。
【0026】
シート積層ユニット102は、アンダープレート102pを支持する支持部102Aと、上記のシート片21を保持する保持ヘッド110を受け入れ、保持ヘッド110を介してシート片21を上記アンダープレート102p上で位置決めし、加圧する加圧部102Bと、加圧部102Bを支持部102Aに向けて案内するガイド部102Cとを備える。
【0027】
上記保持ヘッド110は、例えば、搬送機構111に搭載されることにより、上記シート剥離部101A,101Bとシート積層ユニット102との間に設けられた搬送経路を構成する搬送ガイド構造112のガイド方向(図示左右方向)に沿って移動可能に構成される。また、搬送機構111は、上記シート剥離部101A,101Bとシート積層ユニット102とにおいて、それぞれ、保持ヘッド110を、剥離ステージ101Xa,101Xbやアンダープレート102p(図示下方)に向けても往復移動可能(図示上下移動可能)に構成される。
【0028】
また、本実施形態では、剥離ステージ101Xaは、その表面101xa上のキャリアフィルム1及びセラミックグリーンシート2の供給方向若しくは上記搬送ガイド構造112のガイド方向に移動可能に構成されている。一方、シート検出装置101ADa、101ADb及びシート分離ユニット(レーザー照射装置101AL)は、シート剥離部101Aにおいて固定されている。ただし、シート分離ユニットにおいて、光駆動部や光照射部に可動部分がある場合には、当該可動部分の動作の基準となる固定されたフレームなどの基準部分を固定する。ここで、製造装置において「固定」とは、製造装置の固定部分(本体フレームなど)に対して相対的に固定することを言う。これにより、シート検出装置とシート分離ユニットが相互に固定されているので、シート検出装置によって検出されたセラミックグリーンシート2の位置情報に基づいて、シート分離ユニットによる光照射による切断処理を迅速かつ高精度に実施できる。また、シート検出装置が固定されていることにより、保持ヘッド110や剥離ステージ101Xaの位置決め精度や相対的な位置精度を向上させることができる。さらに、シート検出装置101AEa,101AEbも、上記シート検出装置101ADa,101ADbと相対的に固定されていることが好ましい。これにより、保持ヘッド110に保持されたシート片21の保持状態を他の基準と同じ基準で検出することができ、これによって保持ヘッド110の位置修正なども迅速かつ正確に実施できる。
【0029】
次に、図2図6を参照して、上記積層装置100を用いた本実施形態によるセラミックグリーンシート2の積層方法について説明する。なお、以下の説明では、上記シート剥離部101Aを用いた場合について述べるが、上記シート剥離部101Bについても同様であり、また、複数のシート剥離部101Aと101Bを適宜に用いることも可能であるが、それらの説明は省略する。なお、下記の説明を開始する前に、図6に示すように、アンダープレート(UDプレート)102pをシート積層ユニット102に設置する必要がある場合には、アンダープレート102pを図示しない格納場所から搬送し、シート積層ユニット102の支持部102A上に搬入しておく。図6に示す各部の動作は、上記制御部100Gによって実行される動作プログラムに基づく。
【0030】
最初に、上記シート供給機構101Faにより、キャリアフィルム1に搭載されたセラミックグリーンシート2の新たな部分を、シート供給機構101Faにより、図2(a)に示すように、剥離ステージ101Xa上に供給する。これは、図6に示すセラミックグリーンシート供給の段階(Gシート供給ステップ)である。この段階が完了すると、剥離ステージ101Xa上にあるセラミックグリーンシート2は、上記剥離ステージ101Xの保持面(吸着面)101xaにキャリアフィルム1が吸着保持されること(Cフィルム保持ステップ)によって剥離ステージ101Xa上で保持された状態、すなわち、平面方向に固定された状態とされる。このとき、保持ヘッド110は、剥離ステージ101Xa上には存在せず、例えば、図示のように、シート積層ユニット102の内部に配置されている。ここで、保持ヘッド110にセラミックグリーンシート2のシート片21が保持されていれば、シート積層ユニット102において、保持ヘッド110を介してシート片21がアンダープレート102p上に積層される。
【0031】
次に、剥離ステージ101Xa上のキャリアフィルム1に搭載されたセラミックグリーンシート2の新たな部分を上記シート検出装置101Da,101Dbにより検出し(Gシート検出ステップ)、検出された位置決め箇所若しくはシートの外形などから、剥離すべきシート領域20が設定される(シート領域設定ステップ)。このシート領域20は、図示例では矩形であるが、特に限定されない。そして、このシート領域20に基づいて、セラミックグリーンシート2の分離箇所を算出する(分離箇所算出ステップ)。そして、上記の設定されたシート領域20をセラミックグリーンシート2の他の部分から分離するために、上記の分離箇所に基づいて、図4に示すように、上記レーザー照射装置101ALによりレーザー光Laを照射し、他の部分との間の境界に沿ってセラミックグリーンシート2を切断し、シート領域20の外縁部20aを形成していく(Gシート分離ステップ)。このときのレーザー光Laの強度及び照射時間は、セラミックグリーンシート2の全厚みを完全に除去できる程度とされる必要があるが、キャリアフィルム1に対してはなるべく与える影響を小さくするように設定されることが好ましい。ここで、レーザー光の波長を、セラミックグリーンシート2に対する光吸収係数α[cmー1]が、キャリアフィルム1に対する光吸収係数α[cmー1]よりも大きい領域に設定することにより、上記の強度及び照射時間に対するセラミックグリーンシートの切断速度のばらつき等によるセラミックグリーンシート2の切断不足やキャリアフィルム1の光損傷を低減できる。このとき、αをαの1/5以下とすることが好ましく、1/10以下とすることが望ましい。この工程では、レーザー光Laをセラミックグリーンシート2の表面に照射することによって照射範囲のセラミックグリーンシート2を分解し、キャリアフィルム1の表面を露出させる。このとき、セラミックグリーンシート2の表面は露出した状態であり、特に、シート領域20の表面は、保持ヘッド110などによって保持されたり、その他の物質で覆われたり、押さえられたりしないことが好ましい。これらの保持、被覆、押圧は、セラミックグリーンシート2に余分な力を加えるので、セラミックグリーンシート2が変形したり、その表面が汚染されたり、キャリアフィルム1から部分的に剥離したり、する可能性を高めるからである。また、上記の保持、被覆、押圧は、それらを与える部材の移動、位置決め、退避を必要とするので、積層効率を低下させ、また、シート領域20の範囲に合わせる必要があるため、シート領域20の設定の自由度を阻害するからでもある。特に、光照射による切断処理が行われる切断線の両側(シート領域20の内外両側)に各種部材が接触しないことが外縁部20aの変形を防止する上でさらに望ましい。
【0032】
上記のシート分離ステップが実施されると、図5(a)に示すように、セラミックグリーンシート2は、シート領域20を他の部分から分離する態様で切断される。このとき、切断線は、シート領域20の外縁部20aに沿った形で形成される。この場合において、図6に示すように、セラミックグリーンシート2の分離箇所の分離状態をシート検出装置101Da,101Dbによって検出し(分離状態検出ステップ)、当該分離状態が良好か否かを判定すること(分離状態判定ステップ)が好ましい。このようにすると、例えば、分離箇所の一部に切断不良があったり、不要な切断部分がシート領域20内に存在するなど、分離箇所に問題があるときには、追加の切断処理を実施して正しい分離状態に修正したり、或いは、修正が不可能な場合には、問題のある分離箇所が存在するセラミックグリーンシート2の部分を下流側に移動させ、その代わりに、再びシート供給ステップを実施してセラミックグリーンシート2の新たな部分を供給し、当該新たな部分に対して再度、上記のシート領域設定やシート分離等を実施することが可能になる。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、保持ヘッド110を、剥離ステージ101Xa上に移動させ、保持面110aが剥離ステージ101Xa上のセラミックグリーンシート2と対面するように、位置決めする。このとき、保持ヘッド110は、セラミックグリーンシート2の上記シート領域20に対して所定の位置関係となるように位置制御される。保持ヘッド110は、上記搬送機構111によりシート片の剥離位置と積層位置の間をガイド構造112に沿って移動可能に構成されるとともに、上記搬送機構111は、保持ヘッド110の保持面110aの平面位置を調整可能とするX・Y・θテーブルと同等の機能を有する位置調整ユニット(図示せず)を備えている。これにより、保持ヘッド110の保持面110aは、セラミックグリーンシート2のシート領域20と整合するように対面し、図2(c)に示すように、セラミックグリーンシート2に接する。そして、保持ヘッド110の保持面110aにより、セラミックグリーンシート2のシート領域20を吸着保持する(Gシート保持ステップ)。
【0034】
図5(b)は、セラミックグリーンシート2、シート領域20又はシート片21、並びに、保持ヘッド110の保持面110aの平面的な位置関係を示す平面透視図である。保持面110aには多数の吸引孔110cが分散して開口し、これによってセラミックグリーンシート2を吸着保持可能な保持可能範囲110arが設けられる。この保持可能範囲110arの外周側には、セラミックグリーンシート2を保持しにくい外縁部110bが存在する。これは、上記吸引孔110cを保持ヘッド110の外周部に形成することが物理的に困難であるためである。一方、上記外縁部110bを除いた保持可能範囲110arでは、多数の吸引孔110cが分散して開口していることから、シート片21を均一に吸着保持することができるように設計される。上記シート領域20又はシート片21は、保持ヘッド110の保持面110aのうちの上記保持可能範囲110arの内側に全てが配置されるように、セラミックグリーンシート2のシート領域20が設定され、かつ、このシート領域20に対して保持ヘッド110が上記位置調整機構により位置決めされる。上記シート領域20又はシート片21を、保持可能範囲110arに一致する形状とし、保持可能範囲110arに一致するように保持してもよい。いずれの場合でも、シート領域20の外縁部20a又はシート片21の外縁部21aが保持面110aの外縁よりも内側に配置された状態で、シート領域20又はシート片21は保持ヘッド110に保持される。
【0035】
次に、図2(d)に示すように、セラミックグリーンシート2を吸着保持する保持ヘッド110に対して、剥離ステージ101Xaを、シート領域20の平面方向に沿って相対移動させながら、キャリアフィルム1を保持ヘッド110から離反させていくことにより、シート領域20のシート片21をキャリアフィルム1から剥離していく。図示例の場合には、図1に二点鎖線で示すように、巻取ローラ106を剥離ステージ101Xaと同期して図示左側へ移動させていく。ここで、本実施形態では、保持ヘッド110を固定し、剥離ステージ101Xaをその端縁部(キャリアフィルム1の折り返し箇所)とは反対側に向けてシート領域20に沿って移動させる。このとき、シート領域20が上記保持可能範囲110arに一致する場合だけでなく、シート領域20の外縁部20aが上記保持可能範囲110arの外縁に対して内外に多少ずれている場合でも、シート領域20に対応するシート片21がキャリアフィルム1から剥離され、それ以外のセラミックグリーンシート2の他の部分はキャリアフィルム1上に残った状態となる(Gシート剥離ステップ)。
【0036】
上記のGシート剥離ステップが終わると、図3(a)に示すように、シート検出装置101AEa,101AEbを用いて、保持ヘッド110の保持面110aに保持されたシート片21の保持状態を検出し(保持状態検出ステップ)、当該保持状態を判定すること(保持状態判定ステップ)が好ましい。このステップでは、保持面110a上のシート片21の保持状態、すなわち、シート片21の平滑性の良否、平面的位置ずれの有無、外縁部21aの変形の有無などに応じて、保持状態の判定を行い、その判定結果が良好でない場合には、保持ヘッド110の位置修正により対処できるとき(例えば、問題がシート片21の保持位置のずれのみであるとき)を除き、シート片21を破棄し、新たなシート供給、シート領域設定、シート分離、シート剥離の各ステップを再度実施する。なお、本実施形態では、前述のように、シート剥離ステップの終了時において剥離ステージ101Xaがシート検出装置101AEa,101AEbと保持ヘッド110に保持されたシート片21との間から退避しているため、そのまま上記の検出が可能である。
【0037】
保持状態が良好であるという上記判定結果が得られた場合には、図3(b)に示すように、搬送機構111により保持ヘッド110を上昇させ、その後、保持されたシート片21をそのままシート積層ユニット102へ移動させる。ここで、保持ヘッド110の上昇後に上記の保持状態の検出や判定を行ってもよい。そして、図3(c)に示すように、シート積層ユニット102へ移動した保持ヘッド110は、図1に示す加圧部102Bから受ける加圧力によりアンダープレート102p上にシート片21を積層する。ここで、既にアンダープレート102p上に先に配置されたシート片21が配置されているときには、新たなシート片21をその上に配置し、加圧して積層する。以上のような手順は、シート積層ユニット102内のシート片21の積層数が既定値に到達するまで繰り返し実施される。次の積層工程を継続して実施する場合には、剥離ステージ101Xaは当初の位置に復帰し、再び、図2(a)に示すステップに戻り、前述と同様の処理が繰り返される。最終的に、既定値の積層数を備えるセラミックグリーンシートの積層体が形成されると、この積層体は、アンダープレート102pとともにシート積層ユニット102から搬出される。
【0038】
以上説明した本実施形態では、セラミックグリーンシート2から積層対象となるシート片21に対応するシート領域20を分離するシート分離ステップにおいて、セラミックグリーンシート2に対する光照射による切断処理が用いられることにより、シート領域20の外縁部20aにおける切断不良やシート片21の剥離不良を回避することができる。また、切断不良や剥離不良による中断や切断部材の交換作業などを回避できるとともに、機械的な切断機構が不要であるためにその移動や位置決め動作も不要となることから、積層過程の迅速化が可能になり、製造工程を効率化できる。さらに、シート剥離ステップに用いる保持ヘッド110の保持面110aの外形寸法とは無関係に、シート領域20の形状や寸法を設定可能であるため、機械的構造の変更を必要とせずに、シート片21の寸法や形状を容易に変更できるため、製造すべき積層体の構造や形状の変化に対する自由度も向上できる。また、保持ヘッド110によるシート片21の保持状態や剥離状態を容易に最適化できることから、保持ヘッド110によるシート片21の保持状態、特に、シート片21の外縁部21aの変形に起因するシート積層ステップへの悪影響を低減できる。
【0039】
特に、本実施形態のシート分離ステップでは、光照射による切断処理が、セラミックグリーンシート2のシート領域20の表面に切断刃や保持ヘッドなどの部材を接触させることなしに行われるため、シート片21の表面の変形や汚染、損傷を回避できるために積層体の高品位化を図ることができるとともに、部材の位置決めや排除のための駆動機構や駆動や位置決めの工程を省くことができるため、セラミックグリーンシートを迅速かつ効率的に積層することができる。この場合において、光照射による切断処理が、上記切断処理が行われる両側のセラミックグリーンシート2の表面に部材を接触させることなしに行われることから、切断箇所の変形などをさらに回避できるため、積層体のさらなる高品位化を図ることができる。また、前記光照射はレーザー光の照射であることから、高精度かつ短時間でシート分離ステップを完了できるため、製造工程のさらなる効率化と積層体のさらなる高品位化を図ることができる。
【0040】
上記実施形態では、シート検出ステップやシート分離ステップにおいて、保持ヘッド110がシート領域20が配置されるシート剥離部101Aから退避しているため、検出処理や分離処理に際して妨げとなることがない。また、上述のように、光照射による切断処理はセラミックグリーンシート2のシート領域20の表面に部材を接触させることなしに行われる。しかしながら、別の実施形態としては、保持ヘッド110によってシート領域20が保持された状態で、光照射による切断処理が実施されるようにしても構わない。例えば、シート検出ステップが終了した後に保持ヘッド110がシート剥離部101Aに配置され、制御部100Gによって設定されたシート領域20に相当する範囲を保持ヘッド110が保持してから、シート分離ステップが実施される。この場合には、保持ヘッド110の外縁に沿ってシート分離ユニットであるレーザー照射装置101ALによる光照射が行われるため、シート領域20を保持ヘッドの保持範囲とは無関係に設定することはできない。ただし、保持ヘッド110の外縁部分をシート分離ユニットの光を透過する透光性素材によって構成した透光性部分とすれば、或いはまた、シート分離ユニットの光照射部(レーザー照射部)を保持ヘッド110内に組み込み、保持面110aの範囲内から光照射できるように構成することにより、本実施形態のように保持ヘッド110の外縁部110bよりも内側に外縁部20aを備える態様で設定されたシート領域20を分離可能であり、実際に当該態様のシート片21を剥離することが可能になる。
【0041】
また、本実施形態では、シート剥離ステップにおいて、シート領域20又はシート片21は、保持ヘッド110の保持面110aの外縁110bよりも内側に外縁部20a又は21aを備える態様で保持されることにより、吸引孔110c等の形成できない外縁部110bによってシート領域20又はシート片21の外縁部21aが十分な保持力を与えられないことに起因して生ずる保持不良の状態で剥離されることによる剥離不良や、同状態で積層されることによる積層体の品位の低下を抑制できる。この場合において、図示例のように、保持面110aの保持可能範囲110arが限定されている場合には、シート領域20又はシート片21は、保持可能範囲110arの外縁に近い位置に外縁部を備える態様で配置され、好ましくは保持可能範囲110ar内に限定して配置されるようにすれば、保持不良の発生を防止できるため、剥離不良や積層体の品位の低下を回避できる。なお、セラミックグリーンシート2と保持ヘッド110の間の正確な位置決めが可能であれば、シート領域20又はシート片21の外縁を吸引孔110cの直上に正確に位置合わせすることにより、保持強度をさらに向上できる。
【0042】
さらに、シート分離ステップによるシート領域20の他の部分からの分離状態を検出し、分離状態の良否を判定する分離状態判定ステップをさらに具備することにより、シート片21の剥離不良、保持ヘッド110に対する保持不良、さらには、これらの不良に起因するシート片21の外縁部21aの変形を防止できるので、積層体のさらなる高品位化を図ることができる。この場合において、分離状態判定ステップでシート領域20の分離状態が良好でないときには、光照射による切断処理で分離状態を修復するか、或いは、新たに、シート供給ステップ、シート領域設定ステップ、及び、シート分離ステップを再度実施することにより、上述の問題を回避できる。
【0043】
また、シート剥離ステップによるシート片21の剥離後において、保持ヘッド110に保持されたシート片21の保持状態を検出し、保持状態の良否を判定する保持状態判定ステップをさらに具備することにより、積層体の高品位化をさらに図ることが可能になる。この場合において、前記保持状態判定ステップで保持状態が良好でないときには、保持ヘッド110に保持されたシート片21を廃棄し、新たに、シート供給ステップ、シート領域設定ステップ、シート分離ステップ、及び、シート剥離ステップを再度実施することにより、上述の問題を回避できる。
【0044】
さらに、シート剥離ステップは、セラミックグリーンシート2を保持する保持ヘッド110に対して、キャリアフィルム1を保持する剥離ステージ101Xa、101Xbを相対移動させることによってシート片21をキャリアフィルム1から剥離することにより、正確かつ確実にシート片21を剥離できる。ここで、セラミックグリーンシート2を保持する保持ヘッド110に対して、キャリアフィルム1を保持する剥離ステージ101Xa,101Xbをシート領域20に沿って相対移動させることによってシート片21をキャリアフィルム1から剥離することにより、セラミックグリーンシート2に対するダメージをさらに回避しつつ、さらに確実で正確な剥離を実現できる。この場合において、シート供給ステップでは、キャリアフィルム1に搭載されたセラミックグリーンシート2が剥離ステージ101Xa,101Xb上へ供給され、シート領域設定ステップでは、剥離ステージ101Xa,101Xb上のセラミックグリーンシート2が検出され、シート分離ステップでは、剥離ステージ101Xa,101Xbに保持されたキャリアフィルム1に搭載されたセラミックグリーンシート2に対して光照射による切断処理が行われることにより、シート片21の高精度かつ確実な形成が可能になる。このとき、シート剥離ステップにおいて剥離ステージ101Xa,101Xbが保持ヘッド110に対してシート領域20に沿って退避したことにより、保持ヘッド110の保持面110a上のシート片21が対面方向から露出したタイミングで、保持状態判定ステップにおいてシート片21の保持状態が検出可能になることにより、製造工程のさらなる迅速化や効率化を図ることができる。
【0045】
なお、本発明のセラミックグリーンシートの積層方法及び積層装置は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、剥離ステージ101Xaを保持ヘッド110に対してシート領域20に沿って相対移動させながら、シート領域20のキャリアフィルム1からの剥離を行っているが、相対移動の態様は上記のような態様に限定されるものではない。また、上記実施形態では、剥離ステージ101Xaの端縁部でキャリアフィルム1を折り返した状態で剥離するように構成されているが、剥離ローラを用いたシート剥離機構(シート供給機構の一部を兼用した構成)としてもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では、シート検出装置101ADa,101Ab、レーザー照射装置101AL、及び、シート検出装置101AEa,101AEbをそれぞれ積層装置100の基準位置(構造フレームなど)に対して固定しているが、例えば、シート検出装置101ADa,101Ab及びレーザー照射装置101ALを、保持ヘッド110に対してガイド構造112のガイド方向に連動するようにしたり、或いは、剥離ステージ101Xaに対してシート供給方向に連動するようにしたりしてもよい。また、シート検出装置101AEa,101AEbを、保持ヘッド110に対してガイド構造112のガイド方向に連動するようにしたり、或いは、保持ヘッド110に対して相対的に固定するようにしたりしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…キャリアフィルム、2…セラミックグリーンシート、20…シート領域、20a…外縁部、21…シート片、100…セラミックグリーンシートの積層装置、100G…制御部、101A,101B…シート剥離部、101Fa,101Fb…シート供給機構、101Xa,101Xb…剥離ステージ、101ADa,101ADb,101AEa,101AEb,101BDa,101BDb,101BEa,101BEb…シート検出装置、101AL,101BL…レーザー照射装置、102…シート積層ユニット、102p…アンダープレート、102A…支持部、102B…加圧部、102C…ガイド部、103…供給ロール、104a,104b,104d…ガイドローラ、104c,107a…テンションローラ、105…駆動ローラ、106…巻取ローラ、107b、107c…ガイドローラ、108…回収ロール、110…保持ヘッド、110a…保持面、110ar…保持可能範囲、110b…外縁部、110c…吸引孔、111…搬送機構、112…ガイド構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8