(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113205
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】柱材、仕口、建築物、柱材の製法及び建築物の工法
(51)【国際特許分類】
E04C 3/32 20060101AFI20220728BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20220728BHJP
E04B 1/35 20060101ALI20220728BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
E04C3/32
E04B1/24 L
E04B1/35 F
E04G21/14
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009267
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】511309023
【氏名又は名称】株式会社エスビーエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 武司
(72)【発明者】
【氏名】大出 真隆
【テーマコード(参考)】
2E163
2E174
【Fターム(参考)】
2E163FA02
2E163FB07
2E163FB09
2E163FB42
2E163FB50
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA02
2E174CA12
2E174DA08
2E174DA13
2E174DA33
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】梁などの部材を柱材に直接接合できるようにする。
【解決手段】本発明の柱材は、角形鋼管20、プレート30及び溶接ナット40を備えて構成される。角形鋼管20は、少なくとも1つの側面に第1孔部21を有する。プレートは30は、第1孔部21と同軸上に位置する第2孔部31を有し、第1孔部21が形成された角形鋼管20の側面の内面に密着している。溶接ナット40は、ねじ穴41が第2孔部31と同軸上に位置するようにプレート30に溶接されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの側面に第1孔部を有する角形鋼管、
前記第1孔部と同軸上に位置する第2孔部を有し、前記第1孔部が形成された前記角形鋼管の側面の内面に密着するプレート、及び
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように前記プレートに溶接される溶接ナット
を備えることを特徴とする柱材。
【請求項2】
柱材を構成する角形鋼管の少なくとも1つの側面に形成される第1孔部、
前記第1孔部と同軸上に位置するように前記第1孔部が形成された前記角形鋼管の側面の内面に密着するプレートに形成される第2孔部、
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように前記プレートに溶接される溶接ナット、
前記柱材に接合される部材に形成される第4孔部、並びに
前記第4孔部、前記第1孔部及び前記第2孔部に挿入され、かつ前記溶接ナットと螺合するボルト
を備えることを特徴とする仕口。
【請求項3】
請求項1に記載の柱材又は請求項2に記載の仕口を備えることを特徴とする建築物。
【請求項4】
第1孔部及び第3孔部を角形鋼管の少なくとも1つの側面に形成する工程、
第2孔部をプレートに形成する工程、
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように溶接ナットを前記プレートに溶接する工程、
位置決め用ボルトを前記溶接ナットに取り付ける工程、
前記プレートを前記角形鋼管の内部に挿入し、前記位置決め用ボルトを前記第1孔部に挿入する工程、
ナットを前記角形鋼管から突出する前記位置決め用ボルトに取り付ける工程、
前記ナットを締めて前記プレートを前記角形鋼管に密着させる工程、
前記第3孔部を利用して前記プレートを前記角形鋼管に栓溶接する工程、及び
前記ナット及び前記位置決め用ボルトを取り除く工程
を含むことを特徴とする柱材の製造方法。
【請求項5】
少なくとも1つの側面に第1孔部を有する角形鋼管、
前記第1孔部と同軸上に位置する第2孔部を有し、前記第1孔部が形成された前記角形鋼管の側面の内面に密着するプレート、及び
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように前記プレートに溶接される溶接ナット
を備える柱材を基礎上に設置する工程、
トラス梁を基礎上で組み立てる工程、
前記柱材をガイドとして前記トラス梁を所定の高さまで上昇させる工程、及び
ボルトと前記溶接ナットを螺合して前記トラス梁を前記柱材に接合する工程
を含むことを特徴とする建築物の工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱材、柱材と部材の仕口、柱材又は仕口を備える建築物、柱材の製法及び建築物の工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1は、柱と梁の仕口を開示している。この文献には、梁を柱に接合するために、角形鋼管からなる柱材の側面にブラケットを溶接すること、及びブラケットと梁がプレートを介してボルトで固定されることが記載されている。
【0003】
しかしながら、この文献に記載された技術では、梁を柱に直接接合することができず、ブラケットやプレートを多用しなければならないという不具合がある。また、この技術では、柱材の側面に突起物(ブラケット)があるため、柱材をガイドとして部材を移動させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、梁などの部材を柱材に直接接合できるようにすること、及び柱材の側面から突出する突起物をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、
少なくとも1つの側面に第1孔部を有する角形鋼管、
前記第1孔部と同軸上に位置する第2孔部を有し、前記第1孔部が形成された前記角形鋼管の側面の内面に密着するプレート、及び
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように前記プレートに溶接される溶接ナット
を備えることを特徴とする柱材を提供する。
また、本発明は、
柱材を構成する角形鋼管の少なくとも1つの側面に形成される第1孔部、
前記第1孔部と同軸上に位置するように前記第1孔部が形成された前記角形鋼管の側面の内面に密着するプレートに形成される第2孔部、
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように前記プレートに溶接される溶接ナット、
前記柱材に接合される部材に形成される第4孔部、並びに
前記第4孔部、前記第1孔部及び前記第2孔部に挿入され、かつ前記溶接ナットと螺合するボルト
を備えることを特徴とする仕口を提供する。
また、本発明は、上記柱材又は上記仕口を備えることを特徴とする建築物を提供する。
また、本発明は、
第1孔部及び第3孔部を角形鋼管の少なくとも1つの側面に形成する工程、
第2孔部をプレートに形成する工程、
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように溶接ナットを前記プレートに溶接する工程、
位置決め用ボルトを前記溶接ナットに取り付ける工程、
前記プレートを前記角形鋼管の内部に挿入し、前記位置決め用ボルトを前記第1孔部に挿入する工程、
ナットを前記角形鋼管から突出する前記位置決め用ボルトに取り付ける工程、
前記ナットを締めて前記プレートを前記角形鋼管に密着させる工程、
前記第3孔部を利用して前記プレートを前記角形鋼管に栓溶接する工程、及び
前記ナット及び前記位置決め用ボルトを取り除く工程
を含むことを特徴とする柱材の製造方法を提供する。
また、本発明は、
少なくとも1つの側面に第1孔部を有する角形鋼管、
前記第1孔部と同軸上に位置する第2孔部を有し、前記第1孔部が形成された前記角形鋼管の側面の内面に密着するプレート、及び
ねじ穴が前記第2孔部と同軸上に位置するように前記プレートに溶接される溶接ナット
を備える柱材を基礎上に設置する工程、
トラス梁を基礎上で組み立てる工程、
前記柱材をガイドとして前記トラス梁を所定の高さまで上昇させる工程、及び
ボルトと前記溶接ナットを螺合して前記トラス梁を前記柱材に接合する工程
を含むことを特徴とする建築物の工法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成要素を具備することによって、梁などの部材を柱材に直接接合すること、及び柱材の側面から突出する突起物をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の柱材の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の柱材の他の例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の柱材の別の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の柱材の製法の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の柱材の製法の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の柱材の製法の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本発明の柱材の製法の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の柱材の製法の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本発明の柱材の製法の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の柱材の製法の一例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、本発明の建築物の工法の一例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、本発明の建築物の工法の一例を説明するための図である。
【
図17】
図17は、比較例2の柱材の製法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の説明の内容に限定されるものではない。
【実施例0010】
図1に示したように、本発明の柱材10は、角形鋼管20、プレート30及び溶接ナット40を備えている。
【0011】
角形鋼管20は、第1孔部21を有する。第1孔部21は、角形鋼管20の少なくとも1つの側面に形成される。第1孔部21は、建築物の構造に対応して、例えば、
図2に示したように、角形鋼管20の4つの側面に形成されてもよいし、
図3に示したように、角形鋼管20の互いに平行な2つの側面に形成されてもよい。また、第1孔部21は、角形鋼管20の1つの側面に対して、直列に複数形成されてもよいし、並列に複数形成されてもよい。第1孔部21は、溶接ナット40と螺合するボルト50を通すための貫通孔である。
【0012】
プレート30は、第1孔部21が形成された角形鋼管20の側面の内面に密着している。プレート30は、第1孔部21と同軸上に位置する第2孔部31を有する。第2孔部31は、溶接ナット40と螺合するボルト50を通すための貫通孔である。
【0013】
溶接ナット40は、プレート30に溶接されている。溶接ナット40のねじ穴41は、第2孔部31と同軸上に位置している。
【0014】
本発明の柱材は、以下の方法で製造される。
【0015】
すなわち、まず、
図4に示したように、第1孔部21及び第3孔部22を角形鋼管20の少なくとも1つの側面に形成する。第3孔部22は、栓溶接に利用される丸穴である。
【0016】
次に、
図5に示したように、第2孔部31をプレート30に形成する。なお、第1孔部21及び第3孔部22を角形鋼管20に形成する前に、第2孔部31をプレート30に形成してもよい。
【0017】
次に、
図6に示したように、溶接ナット40をプレート30の表面30aに溶接する。この際、溶接ナット40は、ねじ穴41が第2孔部31と同軸上に位置するように配置される。
【0018】
次に、
図7に示したように、位置決め用ボルト60を溶接ナット40に取り付ける。この例では、位置決め用ボルト60として全ねじボルトを使用している。位置決め用ボルト60は、プレート30の裏面30bから突出するように、溶接ナット40に取り付けられる。
【0019】
次に、
図8に示したように、プレート30を角形鋼管20の内部に挿入し、位置決め用ボルト60を第1孔部21に挿入する。
【0020】
次に、
図9に示したように、ナットを角形鋼管20から突出する位置決め用ボルト60に取り付ける。この例では、位置決め用ボルト60の取り外しを容易にするために、1つの位置決め用ボルト60に対して2つのナット(上ナット71及び下ナット72)を取り付けている。
【0021】
次に、プレート30の裏面30bを角形鋼管20の側面の内面に密着させるために、下ナット72を締め付ける。これにより、プレート30は、裏面30bが角形鋼管20の内面に密着した状態で角形鋼管20に仮固定される。
【0022】
次に、第3孔部22を利用してプレート30を角形鋼管20に栓溶接する。
【0023】
最後に、
図10に示したように、下ナット72を上ナット71に接触させた状態で下ナット72を緩めることにより、ナット(上ナット71及び下ナット72)及び位置決め用ボルト60を取り除いて柱材10が完成する。
【0024】
本発明の柱材は、溶接ナット40が溶接されたプレート30を角形鋼管20の側面の内面に密着させることにより、作業者の手が届かず、また、特殊な工具を用いてもナットの回転を抑えることが困難な位置に、部材の取り付けに用いられるボルト50と螺合するナット(溶接ナット40)を配置することができる。プレート30は、角形鋼管20に密着しているため、角形鋼管20の補強材として機能し得る。また、プレート30は、座金の役割を果たすこともできる。
【0025】
本発明の柱材によれば、梁などの部材を柱材10に直接接合することができる。すなわち、本発明の柱材と部材の仕口は、
図11及び
図12に示したように、柱材10を構成する角形鋼管20の少なくとも1つの側面に形成される第1孔部21と、第1孔部21と同軸上に位置するように第1孔部21が形成された角形鋼管20の側面の内面に密着するプレート30に形成される第2孔部31と、ねじ穴41が第2孔部31と同軸上に位置するようにプレート30に溶接される溶接ナット40と、柱材10に接合される部材80に形成される第4孔部81と、第4孔部81、第1孔部21及び第2孔部31に挿入され、かつ溶接ナット40と螺合するボルト50を備えて構成される。したがって、従来、柱材と部材の間に介在していたブラケットやプレートが不要である。
【0026】
本発明の柱材によれば、部材80の接合に用いられるボルト50と螺合する溶接ナット40が角形鋼管20の内部に配置されるため、柱材10の側面から突出する突起物をなくすことができる。したがって、本発明の柱材を建築物に適用した場合には、以下の工法を実現することが可能になる。
【0027】
すなわち、この工法では、まず、
図13に示したように、柱材10を基礎90の上に設置し、柱材10に接合される部材であるトラス梁82を基礎90の上で組み立てる。この例では、建築物が軽量鉄骨造であるが、本発明の柱材は、重量鉄骨造の建築物にも適用可能である。また、この例では、トラス梁82とトラス桁83が基礎90の上で矩形に組み合わされている。トラス梁82及びトラス桁83は、それぞれ、軽量形鋼からなる弦材82a,83a及び斜材82b,83bで構成されている。この例では、トラス梁82及びトラス桁83の組み立てを基礎90の上で行えるので、これらを高所で組み立てる場合と比較して、組み立てが非常に容易であり、工数も大幅に削減できる。また、資材の運搬も効率的に実施できる。さらに、基礎90以外の場所でこれらを組み立てる場合と比較して、作業スペースを大幅に削減できる。
【0028】
次に、
図14に示したように、柱材10をガイドとしてトラス梁82を所定の高さまで上昇させる。本発明の柱材は、柱材10の側面から突出する突起物がないため、トラス梁82の弦材82aを柱材10に接触させながらトラス梁82の取り付け位置までトラス梁82を移動させることができる。この例では、柱材10がガイドとして機能し、それにより、柱材10とトラス梁82との衝突を回避でき、また、移動中のトラス梁82を水平に維持し易いため、トラス梁82の吊り作業が格段に容易となる。また、昇降機を用いてトラス梁82を安全に上昇させることも可能になる。
【0029】
次に、ボルト50と溶接ナット40を螺合してトラス梁82を柱材10に接合する。ボルト50は、トラス梁82の弦材82aに形成される第4孔部81、第2孔部31及び第1孔部21に挿入され、溶接ナット40と螺合する(
図12参照)。
また、比較例2の柱材は、管材103が2本のリップ溝形鋼101,102を溶接して形成されるため、概して、角形鋼管と比較して、管材103の断面性能が低いという欠点がある。この点、本発明の柱材は、管材が角形鋼管20であるため、2つの部材を溶接して形成される管材と比較して、断面性能が高いという利点がある。