(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113209
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】容器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B65B 55/24 20060101AFI20220728BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220728BHJP
B08B 9/30 20060101ALI20220728BHJP
B08B 9/34 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B65B55/24
B08B3/02 C
B08B9/30
B08B9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009271
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】古薗 智也
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 剛
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
3B116AA22
3B116AB15
3B116AB42
3B116BB22
3B116CC01
3B201AA22
3B201AB15
3B201AB42
3B201BB22
3B201BB92
3B201BB98
3B201CC01
(57)【要約】
【課題】 洗浄に用いる水の使用量削減と洗浄効果を両立できる新規な洗浄方法を提案する。
【解決手段】 倒立して搬送される容器2の内部洗浄区間において気液混合した流体の吹き出し口を容器2の口の位置と一致させて洗浄する同期洗浄工程と、流体の吹き出し口を容器2の口の位置からずらして洗浄する戻り洗浄工程と、を有し、同期洗浄工程は、気液混合した流体の吹き出し口を容器2の口の位置と一致させつつ、容器2の搬送と同期させて移動させるものであり、戻り洗浄工程は、流体の吹き出し口を基準位置に戻すように移動させるものである、容器2の洗浄方法とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立して搬送される容器の内部洗浄区間において
気液混合した流体の吹き出し口を容器の口の位置と一致させて洗浄する同期洗浄工程と、
流体の吹き出し口を容器の口の位置からずらして洗浄する戻り洗浄工程と、
を有し、
前記同期洗浄工程は、気液混合した流体の吹き出し口を容器の口の位置と一致させつつ、容器の搬送と同期させて移動させるものであり、
前記戻り洗浄工程は、流体の吹き出し口を基準位置に戻すように移動させるものである、容器の洗浄方法。
【請求項2】
前記同期洗浄工程は、容器の搬送と同期して上流側から下流側に移動するものであり、
前記戻り洗浄工程が、下流側に移動した流体の吹き出し口を上流側の基準位置に移動するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の容器の洗浄方法。
【請求項3】
前記同期洗浄工程と戻り洗浄工程が繰り返し、
連続的に搬送される容器について洗浄を行う、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器の洗浄方法。
【請求項4】
前記戻り洗浄工程において、容器と吹き出し口がずれることにより容器の外表面の洗浄が行われる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の容器の洗浄方法。
【請求項5】
前記気液混合した流体は、容器の内壁に対し多方向から吹き付けられるように放出される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の容器の洗浄方法。
【請求項6】
前記同期洗浄工程において、前記気液混合した流体は、
前記容器の底部の中心に向かう方向、及び、容器の底部であって底部の中心に対し同心円上にある複数の位置に向かう方向、に吹き出すように噴射される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の容器の洗浄方法。
【請求項7】
前記容器はホルダに収納されて搬送される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の容器の洗浄方法。
【請求項8】
前記内部洗浄区間で使用される液体は、苛性ソーダを含む苛性水、又は、苛性ソーダを含まないすすぎ水である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の容器の洗浄方法
【請求項9】
吹き出し口が形成されるノズルの上面の最大径が、容器口内径より小さい、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の容器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等が充填される瓶などの容器を連続的に搬送して洗浄する容器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されるように、ホルダ(ボトルゲージとも称される)内にびんを収容し、ホルダをキャリアにて搬送し、温水や薬液への浸漬と、洗浄液による洗浄により、使用済のびんを洗浄する洗浄装置が知られている。
【0003】
この種の洗浄装置(洗びん機とも称される)においては、びんを内部洗浄する内部洗浄区間が複数設けられ、各内部洗浄区間においては、ノズルから一本の線状の流体をびん内部に向けて流出させることで、びん内部の洗浄が行われるものである。
【0004】
各内部洗浄区間では、びんの搬送方向に並ぶ複数のノズルが設けられ、各びんは各ノズルから流出される流体によって、順次洗浄されるものとなっている。例えば、びんの搬送方向に10列のノズルが配置されている場合には、10回の洗浄が行われるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した内部洗浄においては多量の水が使用されるものであり、環境面やコスト面から、使用量を削減することが求められている。
【0007】
さらに、内部洗浄のみならず、容器の外側の洗浄も効率よく実施したいというニーズも存在していた。
【0008】
本願発明は以上の問題に鑑み、洗浄に用いる水の使用量削減と洗浄効果を両立できる新規な洗浄方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
本発明の一態様によれば、
倒立して搬送される容器の内部洗浄区間において
気液混合した流体の吹き出し口を容器の口の位置と一致させて洗浄する同期洗浄工程と、
流体の吹き出し口を容器の口の位置からずらして洗浄する戻り洗浄工程と、
を有し、
前記同期洗浄工程は、気液混合した流体の吹き出し口を容器の口の位置と一致させつつ、容器の搬送と同期させて移動させるものであり、
前記戻り洗浄工程は、流体の吹き出し口を基準位置に戻すように移動させるものである、容器の洗浄方法とする。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、
前記同期洗浄工程は、容器の搬送と同期して上流側から下流側に移動するものであり、
前記戻り洗浄工程が、下流側に移動した流体の吹き出し口を上流側の基準位置に移動するものである、こととする。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、
前記同期洗浄工程と戻り洗浄工程が繰り返し、
連続的に搬送される容器について洗浄を行う、こととする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、
前記戻り洗浄工程において、容器と吹き出し口がずれることにより容器の外表面の洗浄が行われる、こととする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、前記気液混合した流体は、容器の内壁に対し多方向から吹き付けられるように放出される、こととする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、
前記同期洗浄工程において、前記気液混合した流体は、
前記容器の底部の中心に向かう方向、及び、容器の底部であって底部の中心に対し同心円上にある複数の位置に向かう方向、に吹き出すように噴射される、こととする。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、
前記容器はホルダに収納されて搬送される、こととする。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、
前記内部洗浄区間で使用される液体は、苛性ソーダを含む苛性水、又は、苛性ソーダを含まないすすぎ水である、こととする。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、
吹き出し口が形成されるノズルの上面の最大径が、容器口内径より小さい、こととする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る容器洗浄装置の一部を側方から模式的に示す図である。
【
図2】
図1の内部洗浄エリアにおいて、矢印Y1方向からみたキャリアの構成などを示す図である。
【
図3】第1の噴射式洗浄装置の構成について示す模式図である。
【
図4】第2の噴射式洗浄装置の構成について示す模式図である。
【
図5】第3の噴射式洗浄装置におけるノズルキャリアの動作について説明する図である。
【
図6】(A)は同期洗浄工程における様子について説明する模式図である。(B)は戻り洗浄工程における様子について説明する模式図である。
【
図7】(A)は容器口とノズルの上面の径の関係等について示す模式図である。(B)は容器の底における流体が到達する位置について説明する模式図である。
【
図8】(A)は容器の外表面の洗浄について説明する図である。(B)は容器の外表面の洗浄について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は容器洗浄装置1を側方から模式的に示す図であり、容器洗浄装置1はガラス製の瓶からなる容器2(ボトル)を搬送方向F1に連続的に搬送しながら水や薬液等の洗浄液を用いて洗浄する構成とするものである。
【0021】
なお、洗浄の対象となる容器としては、ガラス製の瓶の他、PETボトルなどのプラスチックボトルや、缶容器等も考えられる。
【0022】
図1に示すように、容器洗浄装置1は、順に、前洗いエリアA、第1槽B1~第6槽B6、内部洗浄エリアC1,C2、すすぎエリアDと、を有する構成としている。
【0023】
図2は、
図1の内部洗浄エリアC1において、矢印Y1方向からみたキャリア4の構成などを示すものであり、複数の長尺のキャリア4に対し、その長手方向に沿って複数のホルダ3が取り付けられる。各キャリア4の両端はキャリアチェーン5に接続され、キャリアチェーン5の駆動により各キャリア4が搬送方向F1に移動する。
【0024】
図2に示すように、各キャリア4の長手方向には、所定の間隔で挿入穴4aが形成されており、各挿入穴4aにホルダ3が挿入されて取り付けられている。ホルダ3は、
図6(A)にも示されるように、上下が貫通する筒状の部材であり、下部の内壁に突出されるリブ3aによって、容器口2aが支持されるようになっている。
図2においては、ホルダ3や容器2の一部を省略した状態を示している。
【0025】
図1に示すように、前洗いエリアAでは、図示せぬノズルから噴射される液体により、容器2の内側と外側の洗浄が行われる。
【0026】
第1槽B1~第6槽B6では、温水や、加熱された薬液へと容器2が浸漬され、洗浄が繰り返される。薬液としては、例えば、苛性ソーダを含む苛性水(水酸化ナトリウム水溶液)が用いられる。
【0027】
第4槽B4と第5槽B5の間の内部洗浄エリアC1には、第1の噴射式洗浄装置11が配設される。第5槽B5と第6槽B6の間の内部洗浄エリアC2には、第2の噴射式洗浄装置12が配設される。すすぎエリアDには、第3の噴射式洗浄装置13が配置される。内部洗浄エリアC1,C2では苛性ソーダを含む苛性水を用いた洗浄が行われ、すすぎエリアDでは水を用いたすすぎが行われる。
【0028】
図3は、第1の噴射式洗浄装置11の構成について示す模式図である。なお、第2の噴射式洗浄装置12(
図1)も同様の構成とすることができる。また、この模式図には、各ノズルの噴射方向を示すために、上側から見た液体の到達位置が併記される。
【0029】
噴射式洗浄装置11は、容器2の内部を洗浄するための第1噴射ノズル21~第8噴射ノズル28が設けられる。各噴射ノズル21~28は、容器2の搬送方向F1においてホルダ3の間隔と同じ間隔を開けて配置されるとともに、
図2に示すように奥行方向D(
図3の紙面と直交する方向)にホルダ3の間隔と同じ間隔を開けて配置される。
【0030】
図3に示すように、各噴射ノズル21~28は、ノズルキャリア51に取り付けられる。ノズルキャリア51は、図示せぬ駆動機構により搬送方向F1の上流側と下流側に平行移動するように構成される。
【0031】
図3に示すように、第1噴射ノズル21~第6噴射ノズル26は、その噴射方向が垂直方向から傾くように設計され、線状の液体(苛性ソーダを含む苛性水)が噴出するように設計されており、容器2の内壁に向かって液体(苛性ソーダを含む苛性水)が噴射されるようになっている。この第1噴射ノズル21~第6噴射ノズル26によって洗浄される区間が、前洗浄区間K1とされる。
【0032】
図3に示すように、第1噴射ノズル21~第6噴射ノズル26は、その噴射方向が、平面視において60度ずつずれるように構成される。具体的には、第1噴射ノズル21と第2噴射ノズル22は左回り方向に60度ずれており、第3噴射ノズル23は第2噴射ノズル22に対しさらに左回り方向に60度ずれている。同様にして、第1噴射ノズル21と第6噴射ノズル26は左回り方向に300度ずれている。
【0033】
図3に示すように、第7噴射ノズル27及び第8噴射ノズル28は、その噴射方向が垂直方向に設計されており、容器2の底に向かって気液混合した流体(気液混合流体)が噴射されるようになっている。この第7噴射ノズル27及び第8噴射ノズル28によって洗浄される区間が、後洗浄区間K2とされる。
【0034】
ここで、気液混合流体とは、液体(苛性ソーダを含む苛性水)に気体を混合してなる気液混合の流体であり、気体の流れにより液体が微粒化して噴出されるものである。
【0035】
各噴射ノズルのノズル本体、又は、ノズル本体に通じる配管の液通路に狭窄部(オリフィス)を設け、狭窄部の下流に開口し外部に通じるエア通路を設けることにより、液通路の狭窄部を流れるときの流速負圧により周囲のエアを吸い込み液体とエアを混合した気液混合流体をつくることが好ましい。
【0036】
また、例えば、気液混合流体のうちの液体部の単位時間当たりの流量(L/分)が、0.5(L/分)~15(L/分)とする。好ましくは、1L/分以上が好ましい。好ましい上限は、10L/分以下である。
また、例えば、気液混合流体のうちの液体部の単位時間当たりの流量(L/分)が、洗浄対象である瓶の体積(L)に対して、下記の関係を有することが好ましい。
液体部の流量(L/分)÷容器体積(L)=3~55、好ましい下限5以上、好ましい上限は、50以下、45以下である。ここでいう、容器体積は容器の口部までの満注時の体積を示す。
また、例えば、同期洗浄工程の時間は、1秒以上、好ましくは、1.5秒以上、2秒以上とすることができる。また、上限として、10秒以下、さらに5秒以下、3秒以下とすることもできる。
【0037】
なお、第7噴射ノズル27及び第8噴射ノズル28は、ノズル穴を一つとする他、複数としてもよい。また、ノズル穴に角度がつけられ、その噴射方向が垂直方向から傾くように設計されてもよい。
【0038】
気液混合流体の吹き出し口の流体突出孔は、瓶底中央に向かって1孔、瓶底部の内壁部に向かう外傾する複数(例:孔2~5個)の孔を有するものでもよい。
【0039】
垂直方向から傾く角度として、3度~10度、好ましい下限は4度、よい好ましくは5度である。好ましい上限は8度さらに、6度以下である。外傾した孔は、吹き出し口の傾斜部に設けると、容器口部から流下する液体の影響を受けなくて好ましい。
【0040】
吹き出し口の孔は、孔径1~5mmとすることもできる。
【0041】
流体の吹き出し口は、容器口から、5~50mm離すことが好ましい。
【0042】
気液混合流体の吹き出し口は、容器口部内径よりも小さいものが好ましい。このようにすると、気液混合流体の吹き出し口は、容器口部から流下する液体と接触せず、気液混合液の突出の妨げにならない。
【0043】
第7噴射ノズル27及び第8噴射ノズル28において、2流体により微粒化した液体により容器2の内部が洗浄されることで、上流の第1噴射ノズル21~第6噴射ノズル26の液体による洗浄とは異なる種類の洗浄が行うことができる。つまり、洗浄の種別が異なることで、上流の第1噴射ノズル21~第6噴射ノズル26で洗浄が十分できなかった箇所の洗浄や、落とせなかった汚れを落とすことが可能となり、高い洗浄効果が期待できる。
【0044】
図4は、すすぎエリアD(
図1)に配置される第3の噴射式洗浄装置13の構成について示す模式図である。この模式図には、各ノズルの噴射方向を示すために、上側から見た液体の到達位置が併記される。
【0045】
図4に示すように、第3の噴射式洗浄装置13は、容器2の内部を洗浄するための第1噴射ノズル31~第10噴射ノズル40が設けられる。各噴射ノズル31~40は、容器2の搬送方向F1においてホルダ3の間隔と同じ間隔を開けて配置されるとともに、奥行方向(
図3の紙面と直交する方向)にホルダ3の間隔と同じ間隔を開けて配置される。各噴射ノズル31~40の構成は、上述した第1の噴射式洗浄装置12で採用されるものと同様のものを採用することができる。
【0046】
図4に示すように、各噴射ノズル31~40は、ノズルキャリア53に取り付けられる。ノズルキャリア53は、図示せぬ駆動機構により搬送方向F1の上流側と下流側に平行移動するように構成される。
【0047】
図4に示すように、第1噴射ノズル31~第6噴射ノズル36は、その噴射方向が垂直方向から傾くように設計され、線状の液体(すすぎ水)が噴出するように設計されており、容器2の内壁に向かって液体(すすぎ水)が噴射されるようになっている。
【0048】
図4に示すように、第1噴射ノズル31~第6噴射ノズル36は、その噴射方向が、平面視において60度ずつずれるように構成される。具体的には、第1噴射ノズル31と第2噴射ノズル32は左回り方向に60度ずれており、第3噴射ノズル33は第2噴射ノズル32に対しさらに左回り方向に60度ずれている。同様にして、第1噴射ノズル31と第6噴射ノズル36は左回り方向に300度ずれている。
【0049】
図4に示すように、第7噴射ノズル37及び第8噴射ノズル38は、噴射される流体が扇状に放出されるノズル穴を有し、その噴射方向が扇状に広がるように設計されており、容器2の内側の複数箇所に向かって液体(すすぎ水)が噴射されるようになっている。なお、この第7噴射ノズル37及び第8噴射ノズル38の構成を、第1の噴射式洗浄装置や第2の噴射式洗浄装置に追加的に設けてもよい。
【0050】
図4に示すように、第1噴射ノズル31~第8噴射ノズル38によって洗浄される区間が、前洗浄区間K3とされる。
【0051】
図4に示すように、第9噴射ノズル39及び第10噴射ノズル40は、その噴射方向が垂直方向に設計されており、容器2の底に向かって2流体が噴射されるようになっている。第9噴射ノズル39及び第10噴射ノズル40によって洗浄される区間が、後洗浄区間K4とされる。
【0052】
なお、第9噴射ノズル39及び第10噴射ノズル40は、ノズル穴を一つとする他、複数としてもよい。また、ノズル穴に角度がつけられ、その噴射方向が垂直方向から傾くように設計されてもよい。
【0053】
第9噴射ノズル39及び第10噴射ノズル40において、2流体により微粒化した液体(すすぎ水)により容器2の内部がすすがれることで、上流の第1噴射ノズル31~第8噴射ノズル38の液体によるすすぎ洗浄とは異なる種類のすすぎ洗浄が行うことができる。つまり、すすぎ洗浄の種別が異なることで、上流の第1噴射ノズル31~第8噴射ノズル38ですすぎ洗浄が十分できなかった箇所のすすぎ洗浄や、落とせなかった汚れを落とすことが可能となり、高いすすぎ洗浄効果が期待できる。
【0054】
図5(A)乃至(C)は、すすぎエリアD(
図1)に配置される第3の噴射式洗浄装置13におけるノズルキャリア53の動作について説明する図である。なお、このノズルキャリア53の動作は、内部洗浄エリアC1,C2(
図1)に配置される噴射式洗浄装置11,12に設けられるノズルキャリアにおいても同様である。
【0055】
図5(A)では、各噴射ノズル31~40の中心(搬送方向F1の中心位置)が、各容器2の中心(容器口の中心)と略一致するようにノズルキャリア53が位置づけられる。この場合のノズルキャリア53の位置が基準位置とされ、この基準位置においてノズルキャリア53が最も上流側に位置することとなる。
【0056】
図5(B)は、
図5(A)に示す各噴射ノズル31~40と各容器2の相対位置を保ちつつ、ノズルキャリア53が搬送方向におけるノズルピッチPの半分である半ピッチP/2だけ下流に移動した後の状態を示している。
【0057】
ノズルキャリア53は、
図5(A)に示す基準位置から搬送方向F1の下流に向かって半ピッチP/2移動し、この移動の際には、各噴射ノズル31~40が各容器2の搬送と同期して移動する。換言すれば、各噴射ノズル31~40が各容器2と相対位置を保ったまま同一速度で移動する。なお、搬送方向におけるノズルピッチPと、搬送方向における容器2の間隔は略同一である。
【0058】
そして、このように各噴射ノズル31~40が各容器2の搬送と同期して移動する際に、各噴射ノズル31~40と各容器2の中心を合わせた状態で、すすぎ水によるすすぎ洗浄が行なわれる。
【0059】
図5(C)は、
図5(B)に移動したノズルキャリア53が基準位置に戻された状態を示すものである。この状態では、例えば、最も下流の容器2(#1)が、最も下流に位置する第10噴射ノズル40を離れるとともに、容器2(#2)が第10噴射ノズル40の位置と一致した状態が示されている。また、新たにすすぎ洗浄される容器2(#11)と第1噴射ノズル31の位置が一致した状態が示されている。
【0060】
以上の繰り返しにより、各容器2は、各噴射ノズル31~40によって順次洗浄が行われるものである。つまり、
図5(A)の最も上流の瓶10(#10)においては、各噴射ノズル31~40によるすすぎ洗浄が行われるものであり、合計10回のすすぎ洗浄が行われるものである。
【0061】
また、
図5(A)~
図5(B)の過程が同期洗浄工程とされ、
図5(B)~
図5(C)の過程が戻り洗浄工程とされる。
【0062】
そして、同期洗浄工程においては、
図6(A)に示すように、噴射ノズル31と容器2の容器口2aの位置が一致した状態で同期して搬送方向F1に移動するため、噴射ノズル31から噴射されるすすぎ水Sは、容器2の内部に確実に進入する。これにより、確実に瓶の内部をすすぎ洗浄することができる。
【0063】
他方、戻り洗浄工程においては、
図6(B)に示すように、噴射ノズル31が搬送方向F1とは逆方向F2に移動して基準位置側に戻る一方で、容器2は搬送方向F1に移動する。この際、噴射ノズル31と容器2が行き違い、この行き違いの過程において噴射ノズル31から噴出されるすすぎ水Sが容器2の外表面2gに当てられることで、容器2の外表面2gが洗浄される。
【0064】
より具体的には、
図6(B)に示すように、ホルダ3の下端の開口部の近傍において、ホルダ3の内壁には複数のリブ3aが突設されており、リブ3aにより容器2の容器口2a部分が下側から保持される。各リブ3aの間には隙間3bが形成されており、すすぎ水Sがリブの隙間3bを通じ、容器2とホルダ3の間に隙間3sに進入し、容器2の外表面2gにすすぎ水Sが当てられて、外表面2gが洗浄される。
【0065】
<洗浄試験1>
ノズルの形状の違いや、気液混合流体による洗浄の効果を検討するための試験を行った。
洗浄対象:市販用200ml飲料充填用ガラス瓶(瓶底外径54.5mm、高さ185mm、容器口まで満注で220ml)を使用した。
汚れ:模擬的汚れ(異性化液糖10%)の液1.2mlを瓶内全面に行きわたるよう塗布し、完全に乾燥させた。
洗浄流体:実施形態1ではエア(空気)と水の気液混合流体、比較形態1では水のみを洗浄流体として使用し、2秒の噴射洗浄>1秒休止>2秒の噴射洗浄を行った。
効果測定:ノズル洗浄後、瓶内に10mlの水を投入し、瓶内に残っている汚れを完全に溶解し、残存溶解液中のBxを測定した。
その他:容器口から吹き出し口迄の距離は、15mmとした。実施形態1のエアは液通路の狭窄部を流れるときの流速負圧により、周囲の圧縮されていないエアを吸い込むことで気液混合液とした。
<実施形態1>
ノズル構造:中央1孔(容器底中央部向け1孔:穴径2.5mm)、垂直方向から外傾5度で噴出する4孔(底部の中心に対し同心円上にある複数の位置に向かう方向:1.3mm):計5孔の噴出孔を有するノズルから、気液混合流体を噴射。気液混合流体のうち液体部の流量1.2L/分とした。容器口から吹き出し口迄の距離は、15mmとした。
<比較形態1>
ノズル構造:単孔ノズル(容器底の中央部向:孔径2.5mm)で、液体部の流量2.2L/分にて液体のみを噴射した。容器口から吹き出し口迄の距離は、15mmとした。
<結果>
残存溶解液のBxは以下のようになった。
実施形態のノズルの洗浄:Bx0.2
比較形態のノズルの洗浄:Bx0.4
以上のことから、上記の実施形態による気液混合流体を利用した洗浄では、少ない液体部の流量において、水のみの洗浄によるものと同等の洗浄能力を示していることがわかった。したがって、気液混合流体を使用することで、洗浄効果を確保しつつ、大幅な節水ができることがわかった。
【0066】
<洗浄試験2>
ノズルの形状の違いや、気液混合流体による洗浄の効果を検討するための試験を行った。
洗浄対象:市販用200ml飲料充填用ガラス瓶(瓶底外径54.5mm、高さ185mm、容器口まで満注で220ml)を使用した。
汚れ:模擬的汚れ(異性化液糖10%)の液5mlを瓶内全面に行きわたるよう塗布し、完全に乾燥させた。
洗浄流体:実施形態2ではエア(空気)と水の気液混合流体、比較形態2では水のみを洗浄流体として使用し、2秒の噴射洗浄>1秒休止>2秒の噴射洗浄を行った。
効果測定:ノズル洗浄後、瓶内に100mlの水を投入し、瓶内に残っている汚れを完全に溶解し、残存溶解液中のBxを測定した。
その他:容器口から吹き出し口迄の距離は、15mmとした。エアは液通路の狭窄部を流れるときの流速負圧により、周囲の圧縮されていないエアを吸い込むことで気液混合液とした。
<実施形態2>
ノズル構造:中央1孔(容器底中央部向け1孔:孔径3mm)、垂直方向から外傾5度で噴出する4孔(容底部の中心に対し同心円上にある複数の位置に向かう方向:孔径3mm):計5孔の噴出孔を有するノズルから、気液混合流体を噴射。気液混合流体のうち液体部の流量9.6L/分とした。容器口から吹き出し口迄の距離は、15mmとした。
<比較形態2>
ノズル構造:単孔ノズル(容器底の中央部向:孔径3mm)で、液体部の流量9.6L/分にて液体のみを噴射した。容器口から吹き出し口迄の距離は、15mmとした。
<結果>
残存溶解液のBxは以下のようになった。
実施形態のノズルの洗浄:Bx0.15
比較形態のノズルの洗浄:Bx0.3
以上のことから、上記の実施形態による気液混合流体を利用した洗浄では、同じ液体部の流量を用いた水のみの洗浄によるものと同等の洗浄能力を示していることがわかった。
以上の洗浄試験1、洗浄試験2から気液混合流体を使用することで、洗浄効果を確保しつつ、大幅な節水ができること、また、洗浄能力の向上が図れることがわかった。
【0067】
以上の構成において、以下の特徴的な技術が実現される。
まず、
図3に示すように、
倒立して搬送される同一の容器に対し、内部洗浄区間において複数回流体を流入して内部洗浄を行う容器の洗浄方法であって、
前記内部洗浄区間が、
液体のみを流入して洗浄を行う前洗浄区間と、
前洗浄区間よりも下流であって、気液混合した流体を流入して洗浄を行う最終後洗浄区間と、を有する、容器の洗浄方法とするものである。
【0068】
これにより、同一の容器2に対し2種類の異なる洗浄を実施することができ、同一の種類の洗浄を複数回繰り返すだけでは洗浄しきれない箇所が洗浄され、洗浄効果を高めることができる。また、気液混合流体を用いることにより単位時間当たりに使用する液体の使用量を削減することができる。
【0069】
前記前洗浄区間では、
線状及び/又は扇状の液体を流入して洗浄を行うこととする。
【0070】
これにより、前洗浄区間では、液体のみによる洗浄が行える。
【0071】
また、
図3に示すように、
前洗浄区間K1では同一の容器2について少なくとも2回の洗浄が行われ、
後洗浄区間K2では同一の容器2について少なくとも2回の洗浄が行われる、こととするものである。
【0072】
これにより、同一の容器2に対し2種類の異なる洗浄を複数回実施することができ、同一の種類の洗浄を複数回繰り返すだけでは洗浄しきれない箇所が洗浄され、洗浄効果の向上を図ることができる。
【0073】
また、
図3及び
図4に示すように、内部洗浄区間で使用される液体は、苛性ソーダを含む苛性水、又は、苛性ソーダを含まないすすぎ水である、こととする。
【0074】
これにより、苛性水による洗浄や、すすぎ水によるすすぎ洗浄を実施することができる。
【0075】
後洗浄区間K2では、気液混合した流体は、容器2の内壁に対し多方向から吹き付けられるように放出される、こととするものである。
【0076】
これにより、容器2の内壁の洗浄をより高めることが可能となる。具体的には、例えば、気液混合した流体を噴出させるノズルに複数のノズル穴を設け、各ノズル穴について角度を異ならせることとするものである。
【0077】
また、
図6(A)(B)に示すように、
前洗浄区間K1、及び、後洗浄区間K2では、
流体の吹き出し口を容器2の口の位置と一致させつつ、容器2の搬送と同期して上流側から下流側へ移動させる同期洗浄工程と、
下流側に移動した流体の吹き出し口を上流側の基準位置に戻す戻り洗浄工程と、が繰り返されるものであり、
前記戻り洗浄工程において、容器2の口と吹き出し口が行き違うことにより容器2の外表面の洗浄が行われる、こととするものである。
【0078】
これにより、同期洗浄工程においては、液体の吹き出し口と容器2の口の位置が一致することで、容器2の内部に液体を確実に進入させて容器2の内部の洗浄を行うことができる。また、戻り洗浄工程においては、行き違いの過程において噴射ノズル31から噴出されるすすぎ水Sが容器2の外表面2gに当てられ、容器2の外表面が洗浄される。
【0079】
また、
図5(A)乃至(C)に示すように、
倒立して搬送される容器2の内部洗浄区間において
気液混合した流体の吹き出し口を容器2の口の位置と一致させて洗浄する同期洗浄工程と、
流体の吹き出し口を容器2の口の位置からずらして洗浄する戻り洗浄工程と、
を有し、同期洗浄工程は、気液混合した流体の吹き出し口を容器2の口の位置と一致させつつ、容器2の搬送と同期させて移動させるものであり、
戻り洗浄工程は、流体の吹き出し口を基準位置に戻すように移動させるものである、容器2の洗浄方法とする。
【0080】
また、同期洗浄工程は、容器2の搬送と同期して上流側から下流側に移動するものであり、戻り洗浄工程が、下流側に移動した流体の吹き出し口を上流側の基準位置移動するものである、こととする。
【0081】
また、同期洗浄工程と戻り洗浄工程が繰り返し、
連続的に搬送される容器2について洗浄を行う、こととする。
【0082】
また、戻り洗浄工程において、容器2と吹き出し口がずれることにより容器2の外表面の洗浄が行われる、こととする。
【0083】
これにより、同期洗浄工程においては、液体の吹き出し口と容器2の口の位置が一致することで、容器2の内部に液体を確実に進入させて容器2の内部の洗浄を行うことができる。また、戻り洗浄工程においては、行き違いの過程において噴射ノズル31から噴出されるすすぎ水Sが容器2の外表面2gに当てられ、容器2の外表面が洗浄される。
【0084】
また、前記気液混合した流体は、容器2の内壁に対し多方向から吹き付けられるように放出される、こととする。
【0085】
これにより、容器2の内壁の洗浄をより高めることが可能となる。具体的には、例えば、気液混合した流体を噴出させるノズルに複数のノズル穴を設け、各ノズル穴について角度を異ならせることとするものである。
【0086】
また、同期洗浄工程において、気液混合した流体は、
容器2の底部の中心に向かう方向、及び、容器の底部であって底部の中心に対し同心円上にある複数の位置に向かう方向、に吹き出すように噴射される、こととする。
【0087】
これにより、容器2の底部と内壁部とを確実に洗浄することができる。
【0088】
また、容器2はホルダ3に収納されて搬送される、こととするものである。
【0089】
これにより、容器2とホルダ3の間の隙間3sを通じて容器2の上端(底部)に至るまで液体を外表面2gに当てることができ、また、液体が外部に漏れることなく長時間隙間3sに滞留し洗浄時間を長く確保することができるため、容器2の外表面2gを全体的に効率よく洗浄することができる。
【0090】
また、
図6(A)に示すように、吹き出し口が形成されるノズル(第10噴射ノズル40)の上面の最大径d1が、容器口2aの内径d2より小さいこととする。
【0091】
これにより、容器口2aから落下してくる洗浄後の排水がノズル上面に当たらずにそのまま落下することになり、吹き出し口から新たに吹き出される気液混合した流体の吹き出しが妨げられないようにすることができる。
【0092】
なお、
図7(A)は、第10噴射ノズル40について、上述した実施形態1を採用した場合の模式図を示すものであり、ノズルの上面の最大径d1が、容器口2aの内径d2より小さいこととすることで、容器口2aから落下してくる洗浄後の排水Hがノズル上面に当たらずにそのまま落下することを表している。
【0093】
また、
図7(A)のように、ノズル孔40a,40bは、第10噴射ノズル40において容器の底部の中心に向かう方向の他、垂直方向から外側に傾いて気液混合した流体が容器底部であって底部の中心に対し同心円上にある複数の位置に向かう方向に噴出するように設けられる。
これにより、
図7(B)に示すように、容器2の底部2dにおいて、底部2dの中心Sc及び容器の底部2dにおいて内壁Nの近傍となる位置S1に気液混合した流体(すすぎ水S)を到達させることができ、より効果的に洗浄を行うことができる。
なお、「容器の底部であって底部の中心に対し同心円上にある複数の位置に向かう方向」とは、外傾したノズル孔から噴出した流体が、底部2dのうち可能なかぎり、容器の内壁に近い位置に到達する方向のことを言うものである。
図7(B)においては位置S1に、外傾したノズル孔から噴出した流体が到達するものである。このように、
図7(B)の位置S1は、「容器底部であって底部の中心に対し同心円上にある複数の位置」を例示するものである。
底部2dにおいて、位置S1を容器の内壁Nにどの程度近づけられるかは、容器の高さ、容器の底部2dの広さ、容器の容器口の広さ、容器と噴出口の距離等に基づき、適宜ノズル孔の外傾を設定することにより可能である。
【0094】
また、
図8(A)のように、ノズル孔40a,40bが設けられることによって、戻り洗浄工程における行き違いの過程の際に、第10噴射ノズル40の中心が容器口2aからずれた状況においても、角度の付けられたノズル孔40bから噴出される流体40mによる洗浄を行うことができ、容器2の外表面2gの洗浄時間を長く確保することができる。
【0095】
さらに、
図8(B)のように、第10噴射ノズル40において垂直方向から外側に傾いて気液混合流体が噴出するようにノズル孔40a,40bを設けることで、戻り洗浄工程における行き違いの過程の際に、角度の付けられたノズル孔40bから噴出される流体40mを容器2とホルダ3の隙間3Sに効率よく入り込ませることができ、流体40mを容器2の外側表面の上部にまで到達するようにして、効率よく洗浄を行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
1 容器洗浄装置
2 容器(瓶)
2a 容器口
2g 外表面
3 ホルダ
3a リブ
3b 隙間
3s 隙間
4 キャリア
4a 挿入穴
5 キャリアチェーン
11 噴射式洗浄装置
12 噴射式洗浄装置
13 噴射式洗浄装置
21 噴射ノズル
22 噴射ノズル
23 噴射ノズル
26 噴射ノズル
27 噴射ノズル
28 噴射ノズル
31 噴射ノズル
32 噴射ノズル
33 噴射ノズル
36 噴射ノズル
37 噴射ノズル
38 噴射ノズル
39 噴射ノズル
40 噴射ノズル
51 ノズルキャリア
53 ノズルキャリア
C1 内部洗浄エリア
C2 内部洗浄エリア
D すすぎエリア
d1 最大径
d2 容器口内径
F1 搬送方向
F2 逆方向
K1 前洗浄区間
K2 後洗浄区間
K3 前洗浄区間
K4 後洗浄区間
P ノズルピッチ