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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011328
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】部材固定構造及びガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/26 20110101AFI20220107BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B60R21/26
B01J7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112387
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
(72)【発明者】
【氏名】山本 紘士
【テーマコード(参考)】
3D054
4G068
【Fターム(参考)】
3D054DD11
3D054DD15
3D054DD17
3D054FF17
4G068DA08
4G068DB14
4G068DC01
4G068DD11
(57)【要約】
【課題】異なる2つの部材に対して固定対象部材を同一方向に嵌合して固定するに当たり、固定対象部材の寸法公差が大きくても容易に嵌合させることができる固定構造に関する技術を提供する。
【解決手段】異なる第1部材と第2部材にそれぞれ固定される固定対象部材の固定構造であって、固定対象部材に設けられ、第1部材の第1被嵌合部に対して嵌合される第1嵌合部と、固定対象部材に設けられ、第2部材の第2被嵌合部に対して嵌合される第2嵌合部と、固定対象部材に設けられ、第1嵌合部及び第2嵌合部に連なると共に第1被嵌合部及び第2被嵌合部の間に介在する介在部の少なくとも一部に形成される公差吸収部を備え、公差吸収部は嵌合直交方向からの外力によって変形することで第1嵌合部及び第2嵌合部同士の嵌合直交方向における相対距離を変更する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる第1部材と第2部材にそれぞれ固定される固定対象部材の固定構造であって、
前記固定対象部材に設けられ、前記第1部材の第1被嵌合部に対して嵌合される第1嵌合部と、
前記固定対象部材に設けられ、前記第2部材の第2被嵌合部に対して、前記第1被嵌合部に対する前記第1嵌合部の嵌合方向と同方向に嵌合される第2嵌合部と、
前記固定対象部材に設けられ、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部に連なると共に前記第1被嵌合部及び前記第2被嵌合部の間に介在する介在部の少なくとも一部に形成される公差吸収部であって、前記嵌合方向と直交する嵌合直交方向からの外力によって変形することで前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部同士の前記嵌合直交方向における相対距離を変更する公差吸収部と、
を備える、
部材固定構造。
【請求項2】
前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部は、前記介在部において前記嵌合方向に沿った異なる位置の第1嵌合壁部及び第2嵌合壁部に設けられており、
前記第1嵌合部は前記第1嵌合壁部における一方の面である第1嵌合面に形成されると共に、前記第1嵌合壁部における前記第1嵌合面の背面である第1嵌合背面の側に中空の第1空洞部が形成され、
前記第2嵌合部は前記第2嵌合壁部における一方の面である第2嵌合面に形成されると共に、前記第2嵌合壁部における前記第2嵌合面の背面である第2嵌合背面の側に中空状の第2空洞部が形成され、
前記公差吸収部は、前記第1嵌合部を嵌合する際に前記第1被嵌合からの反力によって撓み変形する前記嵌合壁部と、前記第2嵌合部を嵌合する際に前記第2被嵌合からの反力によって撓み変形する前記第2嵌合壁部と、を含む、
請求項1に記載の部材固定構造。
【請求項3】
前記介在部は、前記第1嵌合壁部及び前記第2嵌合壁部が前記嵌合方向に沿ってクランク状に接続されており、
前記第1嵌合面及び前記第2嵌合背面はクランク状の前記介在部における一方の面側に形成されると共に、前記第1嵌合背面及び前記第2嵌合面は前記介在部における他方の面側に形成され、
前記第1嵌合背面が前記嵌合直交方向において前記第2嵌合面よりも前記第1嵌合面の側に後退するように前記第1嵌合背面と前記第2嵌合面との間に段差が形成されることで前記第1空洞部が形成され、
前記第2嵌合背面が前記嵌合直交方向において前記第1嵌合面よりも前記第2嵌合面の側に後退するように前記第2嵌合背面と前記第1嵌合面との間に段差が形成されることで前記第2空洞部が設けられる、
請求項2に記載の部材固定構造。
【請求項4】
前記介在部は、前記第1嵌合壁部及び前記第2嵌合壁部が前記嵌合方向に沿って直線状に接続されていると共に、前記第1嵌合壁部が前記介在部における前記嵌合方向の端部を形成し、
前記第1嵌合面及び前記第2嵌合背面は前記介在部における一方の面側に形成されると共に、前記第1嵌合背面及び前記第2嵌合面は前記介在部における他方の面側に形成され、
前記第1嵌合壁部が前記第2嵌合壁部よりも部材厚さが薄く、前記第1嵌合背面が前記嵌合直交方向において前記第2嵌合面よりも前記第1嵌合面の側に後退するように前記第1嵌合背面と前記第2嵌合面との間に段差が形成されることで前記第1空洞部が設けられ
る、
請求項2に記載の部材固定構造。
【請求項5】
前記介在部は前記嵌合直交方向に延在する板状部材であり、
前記公差吸収部は、前記介在部の延在方向に沿って直線状に配置されている、
請求項1に記載の部材固定構造。
【請求項6】
前記介在部は、前記第1嵌合部を含む第1板状部と、前記第2嵌合部を含む第2板状部と、を含み、
前記第1板状部及び前記第2板状部は前記嵌合方向へ段違いに配置されるように前記公差吸収部によって接続されている、
請求項5に記載の部材固定構造。
【請求項7】
前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部はそれぞれ前記第1被嵌合部及び前記第2被嵌合部に対して圧入されている、請求項1から6の何れか一項に記載の接続部材の部材固定構造。
【請求項8】
前記固定対象部材は金属部材である、請求項1から7の何れか一項に記載の部材固定構造。
【請求項9】
前記固定対象部材は、ガス発生器の外殻容器を構成する部品、或いは、前記外殻容器内に配置される部品である、請求項1から8の何れか一項に記載の部材固定構造。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載の部材固定構造を備えるガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材固定構造及びガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員を保護する乗員保護装置としてエアバッグ装置が知られている。エアバッグ装置は、車両衝突時に瞬時にエアバッグを膨張、展開させることにより、車両衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するための装置である。
【0003】
エアバッグ装置には、作動時にエアバッグを膨張、展開させるためのガスを供給するためのガス発生器が備えられている。この種のガス発生器としては、一般に金属製のハウジング内に点火器とガス発生剤とを配置し、点火器を作動させることでガス発生剤を燃焼させ、その燃焼ガスをハウジングに形成されたガス排出口から外部へ放出するものが広く用いられている。
【0004】
ところで、ガス発生器のハウジングには、ガス発生器を構成する種々の部品が組み付けられる。その際、一方の部品を相手方の部品に嵌合する(典型的には、圧入する)ことによってハウジングを構成する部品やハウジング内に配置される部品を相互に固定する場合がある。
【0005】
また、ガス発生器の一形態として、点火器を2つ備えた所謂デュアルタイプのガス発生器がしられている。このようなデュアルタイプのガス発生器においては、各点火器を囲むように円筒状の仕切部材を点火器毎に配置することでガス発生剤を充填する燃焼室と区画し、各仕切部材の内側に点火剤を収容する場合が多い。また、このようなデュアルタイプのガス発生器として、ハウジング内における燃焼室を板状の隔壁部材によって上下に区画し、隔壁部材によって区画された各燃焼室のガス発生剤を個別に点火器によって着火可能としたマルチステージ型(多段階ガス噴出型)のガス発生器も知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、マルチステージ型のガス発生器の組み付け時に、燃焼室を仕切るための隔板を、軸線方向が平行となるように配置された一組の円筒形状を有するブースタチューブに固定する際、隔板に設けられた一組の孔を各ブースタチューブに対して同方向から嵌合し、圧入することで隔板を各ブースタチューブに固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7007971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたガス発生器のように、当該ガス発生器の組み付け時において、一組のブースタチューブに隔板を同一方向に圧入して固定する場合、隔板に形成された孔の中心間の距離と一組のブースタチューブの中心間の距離がずれていると圧入作業が困難になってしまい、孔の縁部に作用する圧入荷重が過度に大きくなる虞がある。その結果、隔板における孔の縁部の損傷を招く虞がある。また、上記に起因して、隔板における孔の縁部とブースタチューブとの間に意図しない隙間が形成されたり、ブースタチューブの壁面の変形や板厚の減少等を引き起こすことも懸念される。また、上記のような不具合を抑制するために各部材の寸法公差を小さくすると、その背反として加工コス
トの増大を招く虞がある。
【0009】
また、上記のような従来の課題は、ガス発生器のハウジング内に配置される部材同士の取り付け構造に限られない。例えば、上記特許文献1には、ハウジングを構成する上側ハウジングの周壁部に下側ハウジングにおける周壁部を圧入することが開示されている。特許文献1には、燃焼室を上下に区画する隔板を上側ハウジングの周壁部及び下側ハウジングの周壁部に対して圧入することは開示されていないが、仮に、隔板の外周部、上側ハウジングの周壁部、下側ハウジングの周壁部を相互に圧入しようとすると、上記のような問題が生じ得る。例えば、ガス発生器の外周側から上側ハウジングの周壁部、下側ハウジングの周壁部、隔板の外縁部を径方向に重ね合わせて1カ所で相互に圧入しようとすると、上側ハウジング及び下側ハウジング間の圧入部位と、下側ハウジング及び隔板間の圧入部位が同一断面において互いに隣接して形成され、互いに干渉する虞がある。そのため、部材の寸法公差が大きいと(言い換えると、製造誤差が大きいと)3つの部材を1カ所で相互に圧入することが難しくなり、無理に圧入しようとすると上記のように部材の変形や損傷を招く虞がある。
【0010】
上記のような課題は、ガス発生器の組み付け時に限られず、異なる2つの部材に対して固定対象となる部材(固定対象部材)を同一方向に嵌合して固定する場合に起こり得る。本開示の技術は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる2つの部材に対して固定対象部材を同一方向に嵌合して固定するに当たり、固定対象部材の寸法公差が大きくても容易に嵌合させることができる固定構造に関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の技術は、以下の構成を採用した。即ち、本開示の技術の一態様は、異なる第1部材と第2部材にそれぞれ固定される固定対象部材の固定構造であって、前記固定対象部材に設けられ、前記第1部材の第1被嵌合部に対して嵌合される第1嵌合部と、前記固定対象部材に設けられ、前記第2部材の第2被嵌合部に対して、前記第1被嵌合部に対する前記第1嵌合部の嵌合方向と同方向に嵌合される第2嵌合部と、前記固定対象部材に設けられ、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部に連なると共に前記第1被嵌合部及び前記第2被嵌合部の間に介在する介在部の少なくとも一部に形成される公差吸収部であって、前記嵌合方向と直交する嵌合直交方向からの外力によって変形することで前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部同士の前記嵌合直交方向における相対距離を変更する公差吸収部と、を備える、部材の固定構造である。
【0012】
また、本開示の技術の一態様において、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部は、前記介在部において前記嵌合方向に沿った異なる位置の第1嵌合壁部及び第2嵌合壁部に設けられており、前記第1嵌合部は前記第1嵌合壁部における一方の面である第1嵌合面に形成されると共に、前記第1嵌合壁部における前記第1嵌合面の背面である第1嵌合背面の側に中空の第1空洞部が形成され、前記第2嵌合部は前記第2嵌合壁部における一方の面である第2嵌合面に形成されると共に、前記第2嵌合壁部における前記第2嵌合面の背面である第2嵌合背面の側に中空状の第2空洞部が形成され、前記公差吸収部は、前記第1嵌合部を嵌合する際に前記第1被嵌合からの反力によって撓み変形する前記嵌合壁部と、前記第2嵌合部を嵌合する際に前記第2被嵌合からの反力によって撓み変形する前記第2嵌合壁部と、を含んでいても良い。
【0013】
また、本開示の技術の一態様において、前記介在部は、前記第1嵌合壁部及び前記第2嵌合壁部が前記嵌合方向に沿ってクランク状に接続されており、前記第1嵌合面及び前記第2嵌合背面はクランク状の前記介在部における一方の面側に形成されると共に、前記第1嵌合背面及び前記第2嵌合面は前記介在部における他方の面側に形成され、前記第1嵌
合背面が前記嵌合直交方向において前記第2嵌合面よりも前記第1嵌合面の側に後退するように前記第1嵌合背面と前記第2嵌合面との間に段差が形成されることで前記第1空洞部が形成され、前記第2嵌合背面が前記嵌合直交方向において前記第1嵌合面よりも前記第2嵌合面の側に後退するように前記第2嵌合背面と前記第1嵌合面との間に段差が形成されることで前記第2空洞部が設けられても良い。
【0014】
また、本開示の技術の一態様において、前記介在部は、前記第1嵌合壁部及び前記第2嵌合壁部が前記嵌合方向に沿って直線状に接続されていると共に、前記第1嵌合壁部が前記介在部における前記嵌合方向の端部を形成し、前記第1嵌合面及び前記第2嵌合背面は前記介在部における一方の面側に形成されると共に、前記第1嵌合背面及び前記第2嵌合面は前記介在部における他方の面側に形成され、前記第1嵌合壁部が前記第2嵌合壁部よりも部材厚さが薄く、前記第1嵌合背面が前記嵌合直交方向において前記第2嵌合面よりも前記第1嵌合面の側に後退するように前記第1嵌合背面と前記第2嵌合面との間に段差が形成されることで前記第1空洞部が設けられても良い。
【0015】
また、本開示の技術の一態様において、前記介在部は前記嵌合直交方向に延在する板状部材であり、前記公差吸収部は、前記介在部の延在方向に沿って直線状に配置されても良い。
【0016】
また、本開示の技術の一態様において、前記介在部は、前記第1嵌合部を含む第1板状部と、前記第2嵌合部を含む第2板状部と、を含み、前記第1板状部及び前記第2板状部は前記嵌合方向へ段違いに配置されるように前記公差吸収部によって接続されていても良い。
【0017】
また、本開示の技術の一態様において、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部はそれぞれ前記第1被嵌合部及び前記第2被嵌合部に対して圧入されていても良い。
【0018】
また、本開示の技術の一態様において、前記固定対象部材は金属部材であっても良い。
【0019】
また、本開示の技術の一態様において、前記固定対象部材は、ガス発生器の外殻容器を構成する部品、或いは、前記外殻容器内に配置される部品であっても良い。
【0020】
また、本開示の技術の一態様は、上述までの何れかの部材固定構造を備えるガス発生器であっても良い。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、異なる2つの部材に対して固定対象部材を同一方向に嵌合して固定するに当たり、固定対象部材の寸法公差が大きくても容易に嵌合させることができる固定構造に関する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1に係る固定構造が適用されるガス発生器の軸方向断面図である。
図2図2は、図1に示すA領域の拡大図である。
図3図3は、周壁部の嵌合壁部に介在部の第2嵌合壁部を嵌合方向に沿って圧入した状態を概略的に示す図である。
図4図4は、実施形態1の変形例に係る固定構造を説明する図である。
図5図5は、実施形態2に係る固定構造が適用されるガス発生器の軸方向断面図である。
図6図6は、実施形態2に係る隔壁部材の平面図である。
図7図7は、実施形態2に係る第1内筒部材及び第2内筒部材に対して、隔壁部材の第1嵌合縁部及び第2嵌合縁部を圧入する状況を説明する図である。
図8図8は、実施形態2の変形例に係る隔壁部材を第1内筒部材5及び第2内筒部材7に圧入固定した状態を示す図である。
図9図9は、実施形態2の変形例に係る隔壁部材の平面図である。
図10図10は、実施形態3に係る固定構造が適用されるガス発生器の軸方向断面図である。
図11図11は、図10に示すB領域の拡大図である。
図12図12は、実施形態3に係る隔壁部材を嵌合壁部及び上部周壁部に圧入する状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本開示に係る部材固定構造及びガス発生器の実施形態について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0024】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る固定構造が適用されるガス発生器100の軸方向断面図である。ガス発生器100は、2つの点火装置を備える所謂デュアルタイプのガス発生器として構成されている。図1に示すように、ガス発生器100は、外殻容器としてのハウジング1を備え、第1点火装置10、第2点火装置20、隔壁部材4、第1内筒部材5、仕切部材6、第2内筒部材7、フィルタ9等がハウジング1の内部に配置されている。ハウジング1の内部空間は、隔壁部材4によって、第1ガス発生剤110が収容される第1燃焼室11と、第2ガス発生剤120が収容される第2燃焼室12に区画されている。図1では、ガス発生器100の作動前の状態が示されている。ガス発生器100は、例えばエアバッグを膨張、展開させるためのガスをエアバッグに供給するためのエアバッグ用ガス発生器である。
【0025】
ハウジング1はガス発生器100を構成する各部品を収容する金属製の外殻容器であり、それぞれが有底略円筒状に形成された金属製の上部シェル2及び下部シェル3が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状に形成されている。上部シェル2及び下部シェル3は、例えばステンレス鋼板をプレス加工することで成形することができる。ここで、ハウジング1の軸方向に沿う方向をガス発生器100の上下方向と定義し、上部シェル2側(即ち、図1における上側)をガス発生器100の上側とし、下部シェル3側(即ち、図1における下側)をガス発生器100の下側とする。なお、本明細書において、ガス発生器100(ハウジング1)における上下方向と各部の相対的な位置を説明するために用いられ、各部の絶対的な位置を指すものでは無い。
【0026】
上部シェル2は、円筒形状の上側周壁部21と該上側周壁部21の上端を閉塞する天板部22とを有している。上部シェル2は、天板部22が平面視において概ね円形状を有しており、上側周壁部21の下端部が開口端として形成されている。上側周壁部21は、天板部22に連なる小径部23、小径部23の下方にクランク部24を介して連なる嵌合壁部25、嵌合壁部25の下端に連なる鍔部26等を含んでいる。上側周壁部21の小径部23には、ガス排出孔13が周方向に並んで複数形成されている。ガス排出孔13は、シールテープ14により閉塞されている。このシールテープ14としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、ハウジング1の気密性が確保されている。
【0027】
上側周壁部21における嵌合壁部25は、小径部23に比べて内径及び外径が一回り大きい円筒形状を有する部位であり、その下端によって上部シェル2の開口端を形成している。クランク部24は、上側周壁部21における小径部23及び嵌合壁部25をクランク状に接続している。また、上側周壁部21の小径部23及び嵌合壁部25は、ガス発生器100(ハウジング1)の軸方向に沿って上下方向に延びている。また、鍔部26は、嵌合壁部25の下端からハウジング1の径方向外側に向かって延在している。
【0028】
下部シェル3は、円筒形状の下側周壁部31と該下側周壁部31の下端を閉塞する底板部32とを有している。下部シェル3は、底板部32が平面視において概ね円形状を有しており、下側周壁部31の上端部が開口端として形成されている。下側周壁部31は、底板部32に連なる円筒形状の小径部33、小径部33の上端側に形成される第2嵌合壁部36、第2嵌合壁部36の上方にクランク部35を介して連なる第1嵌合壁部34等を含んでいる。下側周壁部31の第1嵌合壁部34は、第2嵌合壁部36に比べて内径及び外径が一回り大きい円筒形状を有する部位であり、その上端によって下部シェル3の開口端を形成している。また、クランク部35は、下側周壁部31における第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36をクランク状に接続している。また、下側周壁部31の第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36は、ガス発生器100(ハウジング1)の軸方向に沿って上下方向に延びている。また、下側周壁部31のうち、第1嵌合壁部34、第2嵌合壁部36、及びこれらを接続するクランク部35を纏めて「介在部37」と呼ぶ。
【0029】
本実施形態においては、上側周壁部21における嵌合壁部25の内側に下側周壁部31における第1嵌合壁部34を嵌合することで上部シェル2の上側周壁部21及び下部シェル3の下側周壁部31が一体に固定されている。より詳しくは、下側周壁部31における第1嵌合壁部34の外径寸法は、上側周壁部21における嵌合壁部25の内径寸法よりも若干大きな寸法に設計されており、下側周壁部31における第1嵌合壁部34を上側周壁部21における嵌合壁部25に圧入することで上側周壁部21及び下側周壁部31が相互に固定されている。上側周壁部21における嵌合壁部25と下側周壁部31における第1嵌合壁部34の固定構造の詳細については後述する。
【0030】
隔壁部材4は、ハウジング1の内部空間を上下に区画する部材であり、概略有底円筒形状を有している。隔壁部材4は、ハウジング1の内部空間を第1燃焼室11と第2燃焼室12に隔てている。隔壁部材4は、ハウジング1の横断面方向(軸方向と直交する方向)に延在する円盤状の隔板部41と、隔板部41の外周縁に接続されると共に下側周壁部31の内周面に沿って上方に延在する筒状の周壁部42を有する。隔壁部材4の隔板部41には、第1内筒部材5を挿通する挿通孔411が形成されている。また、隔壁部材4の周壁部42は、隔板部41に連なる小径部43、小径部43の上方にクランク部44を介して連なる嵌合壁部45、嵌合壁部45の上端に連なる鍔部46等を含んでいる。周壁部42における嵌合壁部45は、小径部43に比べて内径及び外径が一回り大きい円筒形状を有する部位であり、その上端によって隔壁部材4の開口端を形成している。また、クランク部44は、周壁部42における小径部43及び嵌合壁部45をクランク状に接続している。また、周壁部42における小径部43及び嵌合壁部45は、ガス発生器100(ハウジング1)の軸方向に沿って上下方向に延びている。また、隔壁部材4の周壁部42における鍔部46は、嵌合壁部45の上端からハウジング1の径方向外側に向かって延在している。
【0031】
図1に示すように、隔壁部材4は、周壁部42における嵌合壁部45が下側周壁部31における第2嵌合壁部36の内側に嵌合されることで、下側周壁部31に固定されている。より詳しくは、隔壁部材4の周壁部42における嵌合壁部45の外径寸法は、下側周壁部31における第2嵌合壁部36の内径寸法よりも若干大きな寸法に設計されており、下
側周壁部31における第2嵌合壁部36を隔壁部材4における嵌合壁部45に圧入することで下側周壁部31及び隔壁部材4が相互に固定されている。下側周壁部31における第2嵌合壁部36及び隔壁部材4における嵌合壁部45の固定構造の詳細については後述する。
【0032】
ここで、ハウジング1における第1燃焼室11には第1ガス発生剤110が充填され、第2燃焼室12には第2ガス発生剤120が充填されている。図1に示す符号R1は、第1燃焼室11に充填されている第1ガス発生剤110を押さえるためのリテーナである。また、符号R2は、第2燃焼室12に充填されている第2ガス発生剤120を押さえるためのリテーナである。
【0033】
第1点火装置10は、下部シェル3の底板部32に形成された嵌合孔に固定されている。第1内筒部材5は、第1点火装置10を取り囲むように配置された概略円筒形状を有する部材である。第1内筒部材5は、下端が下部シェル3の底板部32に当接すると共に上方に延在する下部周壁部51、下部周壁部51に連なる接続部52、接続部52に連なると共に下部周壁部51よりも縮径して接続部52から上方に延在すると共にその上端が開口端として形成された上部周壁部53等を含んでいる。第1内筒部材5は、下部周壁部51が第1点火装置10に嵌合されることで固定されている。
【0034】
第1内筒部材5は、隔壁部材4の隔板部41に形成された挿通孔411に挿通されており、図1に示す例では上部周壁部53が挿通孔411の高さに位置付けられている。隔板部41における挿通孔411の直径は上部周壁部53の外径よりも大きく、上部周壁部53が挿通孔411に対して隙間を形成するように配置されている。そして、上部周壁部53と挿通孔411との間の隙間は、第1燃焼室11と第2燃焼室12とを連通する連通孔15として形成されている。連通孔15には、第1燃焼室11側から閉塞部材151によって閉塞されており、第1ガス発生剤110の燃焼時においては閉塞部材151によって連通孔15が閉塞された状態に維持される。一方、第2燃焼室12における第2ガス発生剤120の燃焼時においては、第2燃焼室12の内圧が上昇することによって閉塞部材151が連通孔15から離脱し、連通孔15が開放されるようになっている。なお、閉塞部材151は、例えば、第1燃焼室11側から連通孔15を閉塞するシールテープ等であってもよい。
【0035】
第1内筒部材5の内側には、第1内筒部材5の内側空間を上下に仕切る、仕切部材6が配置されている。第1内筒部材5における内側空間のうち、仕切部材6より下方の領域には伝火室111が形成され、第1伝火薬G1が充填されている。また、第1内筒部材5における内側空間のうち、仕切部材6より上方の領域には第1ガス発生剤110が充填されている。仕切部材6は、第1伝火薬G1が燃焼した際に第1ガス発生剤110の着火を妨げることがないように、第1伝火薬G1の燃焼ガスによって速やかに燃焼、溶融あるいは消滅する材料で形成されている。
【0036】
第2点火装置20は、下部シェル3の底板部32に形成された嵌合孔に固定されている。また、第2内筒部材7は、第2点火装置20を取り囲むように配置されたカップ形状を有する部材である。第2内筒部材7は、筒状の周壁部71と周壁部71の一端部を閉塞する蓋壁部72とを有し、内部に第2点火装置20を収容している。第2内筒部材7の外側には第2燃焼室12が形成され、第2ガス発生剤120が充填されている。また、第2内筒部材7の内側には、第2伝火薬G2を収容する伝火室S1が形成されている。
【0037】
フィルタ9は、例えば円筒形状を有し、ハウジング1と同心円状に配置されている。フィルタ9は上端部及び下端部が上部シェル2の天板部22と、隔壁部材4のクランク部44に当接し、これらの間に挟まれた状態で配置されている。フィルタ9は、第1燃焼室1
1及び第2燃焼室12で発生した燃焼ガスがフィルタ9を通過する際に燃焼ガスを冷却すると共に燃焼ガスの燃焼残渣を捕集する。なお、フィルタ9とハウジング1における上側周壁部21との間には、環状の間隙16が形成されている。
【0038】
上記のように構成されたガス発生器100は、第1点火装置10が作動すると、伝火室111に収容された第1伝火薬G1が燃焼することで燃焼ガスが生成される。第1伝火薬G1の燃焼ガスによって仕切部材6が燃焼し、除去されることで、第1伝火薬G1の燃焼ガスが第1ガス発生剤110と接触し、第1ガス発生剤110に着火する。順次、第1燃焼室11に充填されている第1ガス発生剤110が燃焼し、生成された燃焼ガスはフィルタ9を通過した後、間隙16を通過してガス排出孔13から外部に排出される。
【0039】
また、第2点火装置20が作動すると、伝火室S1に充填された第2伝火薬G2が燃焼する。その結果、伝火室S1内の圧力が上昇し、第2内筒部材7が上方に持ち上がることによって伝火室S1と第2燃焼室12が連通する。このようにして、第2燃焼室12に流出した第2伝火薬G2の燃焼ガスによって第2ガス発生剤120が着火され、当該第2ガス発生剤120が燃焼する。第2ガス発生剤120の燃焼によって生成された燃焼ガスは、連通孔15を経て第1燃焼室11へ移動し、フィルタ9及び間隙16を順次通過し、最終的にガス排出孔13からハウジング1の外部へと排出される。
【0040】
次に、ガス発生器100における下部シェル3の下側周壁部31を上部シェル2の上側周壁部21と隔壁部材4にそれぞれ固定する固定構造の詳細を説明する。図2は、図1に示す鎖線で囲まれたA領域の拡大図であり、下側周壁部31における介在部37及びその周辺部を概略的に示す図である。
【0041】
図2に示すように、本実施形態におけるガス発生器100は、下部シェル3の下側周壁部31が、異なる2つの部材である上部シェル2の上側周壁部21及び隔壁部材4の周壁部42に対してそれぞれ固定されている。本実施形態においては、下部シェル3の下側周壁部31が固定対象部材の一例であり、上部シェル2の上側周壁部21及び隔壁部材4の周壁部42がそれぞれ第1部材及び第2部材の一例である。
【0042】
図2に示すように、下側周壁部31は、その上端側に形成された第1嵌合壁部34が上側周壁部21の嵌合壁部25における内周側に圧入(嵌合)されている。また、下側周壁部31における第1嵌合壁部34の下方側にクランク部35を介して連なった第2嵌合壁部36が、隔壁部材4の周壁部42における嵌合壁部45の外周側に圧入(嵌合)されている。図2に示す符号D1は、下側周壁部31における第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36の嵌合方向である。上側周壁部21の嵌合壁部25に下側周壁部31の第1嵌合壁部34を嵌合するときの嵌合方向と、隔壁部材4(周壁部42)における嵌合壁部45に下側周壁部31の第2嵌合壁部36を嵌合するときの嵌合方向は同方向であり、図2に示すD1にて示される。下側周壁部31における第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36の嵌合方向は、ガス発生器100の上下方向(軸方向)と平行である。また、図2に示す符号D2は、第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36の嵌合方向D1に直交する嵌合直交方向を示している。嵌合直交方向D2は、ガス発生器100の径方向に沿って伸びている。
【0043】
ここで、図2に示す符号341は、第1嵌合壁部34の外周面(一方の面側)によって形成された第1嵌合面であり、この第1嵌合面341に第1嵌合部342が形成されている。第1嵌合壁部34の第1嵌合面341に形成された第1嵌合部342は、上側周壁部21の嵌合壁部25に対して嵌合される部位である。第1嵌合壁部34における第1嵌合部342が嵌合される上側周壁部21の嵌合壁部25は「第1被嵌合部」の一例である。第1嵌合部342は、第1嵌合面341の一部に形成されていても良いし、第1嵌合面341の全体に形成されていても良い。また、図2に示す符号343は、第1嵌合壁部34
の内周面によって形成された第1嵌合背面である。第1嵌合壁部34の第1嵌合背面343は、第1嵌合面341の背面に相当する。また、図2に示す符号81は、第1嵌合壁部34における第1嵌合背面343側に形成された中空の第1空洞部である。
【0044】
また、図2に示す符号361は、第2嵌合壁部36の内周面(一方の面側)によって形成された第2嵌合面であり、この第2嵌合面361に第2嵌合部362が形成されている。第2嵌合壁部36の第2嵌合面361に形成された第2嵌合部362は、隔壁部材4(周壁部42)における嵌合壁部45に対して嵌合される部位である。第2嵌合壁部36における第2嵌合部362が嵌合される周壁部42の嵌合壁部45は「第2被嵌合部」の一例である。第2嵌合部362は、第2嵌合面361の一部に形成されていても良いし、第2嵌合面361の全体に形成されていても良い。また、図2に示す符号363は、第2嵌合壁部36の外周面によって形成された第2嵌合背面ある。第2嵌合壁部36の第2嵌合背面363は、第2嵌合面361の背面に相当する。また、図2に示す符号82は、第2嵌合壁部36における第2嵌合背面363側に形成された中空の第2空洞部である。
【0045】
図2に示すように、下側周壁部31の介在部37は、嵌合方向D1に沿って延在しており、より詳しくは第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36がクランク部35を介して嵌合方向に沿ってクランク状に接続されている。なお、ここでいうクランク状とは、ガス発生器100の軸方向に沿って介在部37を切断した縦断面がクランク形状を有していることを意味する。下側周壁部31の介在部37は、第1嵌合部342及び第2嵌合部362に連なり、且つ、上側周壁部21の嵌合壁部25(第1被嵌合部)と周壁部42の嵌合壁部45(第2被嵌合部)の間に介在する部位に相当する。また、図2に示す符号38は、介在部37の少なくとも一部に形成される公差吸収部である。本実施形態において、公差吸収部38が、介在部37における第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36を含んで構成されている。なお、公差吸収部38は、介在部37の一部によって形成されていても良いし、全部によって形成されていても良い。下側周壁部31(固定対象部材)の公差吸収部38は、上側周壁部21の嵌合壁部25(第1被嵌合部)及び周壁部42の嵌合壁部45(第2被嵌合部)に介在部37を介在させて嵌合固定する際に、図2に示す嵌合直交方向D2からの外力によって変形することで第1嵌合部342及び第2嵌合部362同士の嵌合直交方向D2における相対距離を変更する機能を有する。
【0046】
また、図2から明らかなように、介在部37において、第1嵌合部342を含む第1嵌合壁部34と第2嵌合部362を含む第2嵌合壁部36は、嵌合方向D1(ガス発生器100の軸方向、上下方向)に沿った異なる位置に設けられている。図2に示す例では、介在部37におけるクランク部35を境に第1嵌合壁部34が上側に配置され、第2嵌合壁部36が下側に配置されている。更には、図2に示すように、介在部37における外周面(一方の面)側には、第1嵌合面341及び第2嵌合背面363がクランク部35を挟んで上下に並んで配置されている。一方、介在部37における内周面(他方の面)側には、第1嵌合背面343及び第2嵌合面361がクランク部35を挟んで上下に並んで配置されている。そして、介在部37における第1嵌合壁部34の第1嵌合背面343が、嵌合直交方向D2において第2嵌合壁部36の第2嵌合面361よりも第1嵌合面341の側(具体的には、ガス発生器100における径方向外側)に後退するように第1嵌合背面343と第2嵌合面361との間に段差が形成されることで、第1空洞部81が形成されている。また、介在部37における第2嵌合壁部36の第2嵌合背面363が、嵌合直交方向D2において第1嵌合壁部34の第1嵌合面341よりも第2嵌合面361の側(具体的には、ガス発生器100における径方向内側)に後退するように第2嵌合背面363と第1嵌合面341との間に段差が形成されることで第2空洞部82が形成されている。
【0047】
以上のように構成される下部シェル3の下側周壁部31(固定対象部材)は、上側周壁部21の嵌合壁部25(第1被嵌合部)と周壁部42の嵌合壁部45(第2被嵌合部)の
間に介在するように嵌合される介在部37に公差吸収部38を有している。
【0048】
ここで、図3は、下側周壁部31(固定対象部材)における介在部37を隔壁部材4における周壁部42(第2部材)に固定する際、周壁部42の嵌合壁部45(第2被嵌合部)に介在部37の第2嵌合壁部36を嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)した状態を概略的に示す図である。上記のように、介在部37における第2嵌合壁部36の内径は嵌合壁部45の外径よりも僅かに小さい。そのため、介在部37における第2嵌合壁部36は、その第2嵌合面361(内周面)を嵌合壁部45の外周面451に当接させながら嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)される。
【0049】
ここで、第2嵌合壁部36における第2嵌合背面363側には中空の第2空洞部82が形成されている。そのため、第2嵌合壁部36の第2嵌合面361に形成された第2嵌合部362を嵌合壁部45に圧入(嵌合)する際に、嵌合壁部45からの反力によって第2嵌合壁部36を撓み変形させることができる。より詳しくは、嵌合壁部45から第2嵌合壁部36が受ける反力は、径方向外側に向かって作用する。そのため、第2嵌合壁部36は、嵌合壁部45からの反力によって径方向外側に押し広げられる方向に撓むこととなる。このように、圧入(嵌合)時における第2嵌合壁部36の撓み変形が許容されるため、下側周壁部31(固定対象部材)の寸法公差が大きくても、周壁部42(第2部材)の嵌合壁部45(第2被嵌合部)に対して下側周壁部31の第2嵌合壁部36を容易に圧入(嵌合)することができる。
【0050】
次に、下側周壁部31(固定対象部材)における介在部37を上部シェル2における上側周壁部21(第1部材)に固定するため、図2に示すように上側周壁部21の嵌合壁部25(第1被嵌合部)に対して介在部37の第1嵌合壁部34を嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)する。その際、介在部37における第1嵌合壁部34の外径は嵌合壁部25の内径と同等か僅かに大きいため、介在部37における第1嵌合壁部34は、その第1嵌合面341(外周面)を嵌合壁部25の内周面251に当接させながら嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)される。
【0051】
ここで、第1嵌合壁部34における第1嵌合背面343側には中空の第1空洞部81が形成されている。具体的には、既に下側周壁部31と固定されている周壁部42の嵌合壁部45(第2被嵌合部)の外周面451と第1嵌合壁部34における第1嵌合背面343との間には隙間(間隙部)が形成されており、この隙間(間隙部)によって第1空洞部81が形成されている。これによれば、第1嵌合壁部34の第1嵌合面341に形成された第1嵌合部342を嵌合壁部25に圧入(嵌合)する際に、嵌合壁部25からの反力によって第2嵌合壁部36を撓み変形させることができる。より詳しくは、嵌合壁部25から第1嵌合壁部34が受ける反力は、径方向内側に向かって作用する。そのため、第1嵌合壁部34は、嵌合壁部25からの反力によって径方向内側に押し狭められる方向に撓むこととなる。このように、圧入(嵌合)時における第1嵌合壁部34の撓み変形が許容されるため、下側周壁部31(固定対象部材)の寸法公差が大きくても、上側周壁部21(第1部材)の嵌合壁部25(第1被嵌合部)に対して下側周壁部31の第1嵌合壁部34を容易に圧入(嵌合)することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る下側周壁部31(固定対象部材)の固定構造によれば、下側周壁部31の介在部37に公差吸収部38(第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36)を有している。そのため、公差吸収部38における第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36を嵌合直交方向D2からの外力によって変形させることで、第1嵌合部342及び第2嵌合部362同士の嵌合直交方向D2における相対距離を変更することができる。
【0053】
より具体的には、介在部37の第1嵌合壁部34を上側周壁部21における嵌合壁部2
5から作用する反力によって径方向内側に向かって撓ませる一方、介在部37の第2嵌合壁部36を周壁部42の嵌合壁部45から作用する反力によって径方向外側に向かって撓ませる。言い換えると、介在部37のクランク部35を基準として、第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36を径方向内側と径方向外側、それぞれ相反する方向に撓ませる。このようにして、上側周壁部21における嵌合壁部25及び周壁部42における嵌合壁部45の間に介在部37を嵌合する際に、公差吸収部38における第1嵌合壁部34の第1嵌合部342と第2嵌合壁部36における第2嵌合部362同士の嵌合直交方向D2における相対距離を変更することができる。その結果、下側周壁部31における第1嵌合壁部34(第1嵌合部342)及び第2嵌合壁部36(第2嵌合部362)をそれぞれ嵌合壁部25及び嵌合壁部45に圧入(嵌合)する際に、第1嵌合壁部34(第1嵌合部342)及び第2嵌合壁部36(第2嵌合部362)の圧入荷重が過度に大きくなることを抑制できる。これにより、下側周壁部31や、当該下側周壁部31を固定する相手側の上側周壁部21及び周壁部42が、圧入荷重によって塑性変形したり、損傷することを抑制できる。また、上部シェル2、下部シェル3、及び隔壁部材4の組付けを容易に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態に係る固定構造によれば、上側周壁部21の嵌合壁部25及び周壁部42の嵌合壁部45の間に下側周壁部31の介在部37を圧入(嵌合)する際の圧入荷重を低減し、圧入時における各部の損傷等を抑制できるため、第1嵌合面341(第1嵌合部342)と嵌合壁部25との間や、第2嵌合面361(第2嵌合部362)と嵌合壁部45との間に意図しない隙間が生じることを抑制できる。そして、下側周壁部31(固定対象部材)の寸法公差が大きくても、上記のように上側周壁部21(第1部材)の嵌合壁部25(第1被嵌合部)及び周壁部42(第2部材)の嵌合壁部45(第2被嵌合部)に対して、第1空洞部81と第2空洞部82でその公差を吸収しながら第1嵌合壁部34及
び第2嵌合壁部36を容易に圧入(嵌合)することができるため、下側周壁部31の加工コストが増大することを抑制できる。さらに、本実施形態に係る固定構造によれば、上側周壁部21や下側周壁部31に含まれる寸法公差も吸収できる。
【0055】
また、本実施形態における固定構造は、介在部37における第1嵌合壁部34(第1嵌合部342)及び第2嵌合壁部36(第2嵌合部362)を、嵌合方向D1(ガス発生器100の上下方向)に沿って互いに異なる位置に配置するようにした。言い換えると、介在部37における第1嵌合壁部34(第1嵌合部342)及び第2嵌合壁部36(第2嵌合部362)を、嵌合直交方向D2(ガス発生器100の径方向)に沿った同一断面内に並ばないように配置した。これにより、下側周壁部31(固定対象部材)を上側周壁部21(第1部材)及び周壁部42(第2部材)に固定する際、第1嵌合壁部34(第1嵌合部342)及び第2嵌合壁部36(第2嵌合部362)のそれぞれにおける嵌合直交方向D2に沿った一方側(内側)と他方側(外側)への撓み変形を互いに干渉することなく行うことができる。なお、本実施形態においては、固定対象部材としての下側周壁部31を、第1部材としての上側周壁部21と第2部材としての周壁部42に対してそれぞれ圧入固定する例を説明したが、これには限られない。本開示に係る固定構造は、固定対象部材における第1嵌合部及び第2嵌合部を、第1部材の第1被嵌合部と第2部材の第2被嵌合部にそれぞれ嵌合する場合に広く適用でき、後述する実施形態及び変形例についても同様である。
【0056】
<実施形態1の変形例>
次に、実施形態1に係る変形例について説明する。図4は、実施形態1の変形例に係る固定構造を説明する図である。実施形態1に係る変形例の説明において、上述までの実施形態1のガス発生器100と共通する構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明を割愛する。図4には、ガス発生器100の軸方向断面(縦断面)のうち、下側周壁部31における介在部37A及びその周辺部を概略的に示す図である。
【0057】
図4に示すように、周壁部42の嵌合壁部45は、鍔部46と接続される上端側に設けられた凸状部452と、凸状部452の下方に連なる凹状部453とを含んでいる。そして、嵌合壁部45における凸状部452の外周面452Aと凹状部453の外周面453Aとの間には段差が形成され、凹状部453の外周面453Aは凸状部452の外周面452Aに比べて径方向内側に凹んでいる。
【0058】
下側周壁部31における介在部37Aは、第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36が嵌合方向D1に沿って直線状に接続されている。本変形例においても、下側周壁部31における介在部37Aは、上側周壁部21の嵌合壁部25(第1被嵌合部)と、隔壁部材4(周壁部42)における嵌合壁部45(第2被嵌合部)の間に圧入されることで、これらに固定されている。なお、図4に示すように、介在部37Aは第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36によって形成されている。また、本変形例において、公差吸収部38は、介在部37Aの全体によって形成されており、第1嵌合壁部34及び第2嵌合壁部36を含んでいる。
【0059】
また、本変形例に係る介在部37Aは、第1嵌合壁部34(第1嵌合部342)を嵌合壁部45における凸状部452に圧入(嵌合)することで周壁部42と固定され、第2嵌合壁部36(第2嵌合部362)を嵌合壁部25に圧入(嵌合)することで上側周壁部21と固定されている。本変形例においては、下側周壁部31(介在部37A)における第1嵌合壁部34(第1嵌合部342)が圧入(嵌合)される嵌合壁部45が第1被嵌合部に相当し、周壁部42が第1部材に相当する。また、下側周壁部31(介在部37A)における第2嵌合壁部36(第2嵌合部362)が圧入(嵌合)される嵌合壁部25が第2被嵌合部に相当し、上側周壁部21が第2部材に相当する。
【0060】
ここで、図4に示すように、介在部37Aの第1嵌合壁部34における第1嵌合面341及び第2嵌合壁部36における第2嵌合背面363は、介在部37Aにおける一方の面(内周面)側に形成されている。一方、第1嵌合壁部34における第1嵌合背面343及び第2嵌合壁部36における第2嵌合面361は、介在部37Aにおける他方の面(外周面)側に形成されている。
【0061】
また、図4に示すように、介在部37Aは、第2嵌合壁部36に比べて第1嵌合壁部34の部材厚さが薄い。そして、第1嵌合背面343が嵌合直交方向D2において第2嵌合面361よりも第1嵌合面341の側(具体的には、ガス発生器100における径方向内側)に向かって後退しており、これによって第1嵌合背面343と第2嵌合面361との間に段差が形成されている。その結果、第1嵌合壁部34における第1嵌合背面343側には、内周面とこれに対向配置される第1嵌合背面343との間に隙間が形成され、当該隙間によって中空の第1空洞部81が形成されている。
【0062】
上記構成によれば、周壁部42の嵌合壁部45における凸状部452に対して介在部37Aの第1嵌合壁部34を嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)する際、嵌合壁部45における凸状部452からの反力によって第1嵌合壁部34を嵌合直交方向D2へと撓ませることができる。より詳しくは、嵌合壁部45の凸状部452から介在部37Aの第1嵌合壁部34が受ける反力は径方向外側に向かって作用する。そのため、介在部37Aの第1嵌合壁部34は、嵌合壁部45における凸状部452からの反力によって径方向外側に押し広げられる方向に撓むこととなる。このように、圧入(嵌合)時において第1嵌合壁部34の嵌合直交方向D2への撓み変形が許容されるため、第1嵌合壁部34を周壁部42の嵌合壁部45(凸状部452)に圧入する際の圧入荷重が過度に大きくなることを抑制できる。その結果、下側周壁部31の第1嵌合壁部34を周壁部42の嵌合壁部45(凸状部452)に対して容易に圧入することができる。
【0063】
また、下側周壁部31における介在部37Aのうち、第2嵌合壁部36における第2嵌合背面363側には、周壁部42における凹状部453の外周面453Aとこれに対向配置される第2嵌合背面363との間に隙間が形成されることで中空の第2空洞部82が形成されている。これによれば、上側周壁部21における嵌合壁部25に介在部37Aの第2嵌合壁部36を嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)する際、嵌合壁部25からの反力によって第2嵌合壁部36を嵌合直交方向D2へと撓ませることができる。より詳しくは、嵌合壁部25から第2嵌合壁部36が受ける反力は径方向内側に向かって作用する。そのため、介在部37Aの第2嵌合壁部36は、嵌合壁部25からの反力によって径方向内側に押し狭められる方向に撓むこととなる。このように、圧入(嵌合)時において第2嵌合壁部36の嵌合直交方向D2への撓み変形が許容されるため、第2嵌合壁部36を嵌合壁部25に圧入する際の圧入荷重が過度に大きくなることを抑制できる。その結果、下側周壁部31の第2嵌合壁部36を上側周壁部21の嵌合壁部25に対して容易に圧入することができる。
【0064】
<実施形態2>
次に、実施形態2について説明する。図5は、実施形態2に係る固定構造が適用されるガス発生器100Aの軸方向断面図である。本実施形態の説明において、上述までの実施形態1及び変形例のガス発生器100と共通する構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明を割愛する。
【0065】
図5に示すガス発生器100Aは、実施形態1に係るガス発生器100と同様、第1点火装置10、第2点火装置20を備えたデュアルタイプのガス発生器である。ハウジング1は、上部シェル2及び下部シェル3の開口端同士を向き合わせた状態でこれらが接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状に形成されている。本実施形態においては、上部シェル2の上側周壁部21に第1ガス排出孔13Aが設けられ、下部シェル3の下側周壁部31に第2ガス排出孔13Bが設けられている。第1ガス排出孔13A及び第2ガス排出孔13Bは図示しないシールテープにより閉塞されている。
【0066】
第1点火装置10及び第2点火装置20は、下部シェル3の底板部32に形成された嵌合孔に固定されている。第1内筒部材5は、円筒状の周壁部55と周壁部55の一端部を閉塞する蓋壁部56を有する概略カップ形状の部材であり、第1点火装置10を取り囲むように第1点火装置10に固定されている。また、第2内筒部材7は、円筒状の周壁部75と周壁部75の一端部を閉塞する蓋壁部76を有する概略カップ形状の部材であり、第2点火装置20を取り囲むように第2点火装置20に固定されている。また、第1内筒部材5及び第2内筒部材7の軸方向は、ガス発生器100Aの軸方向と平行に伸びている。
【0067】
第1内筒部材5の内部には第1伝火薬G1が充填されている。また、第1内筒部材5の周壁部55には、第1伝火薬G1の燃焼ガスを第1内筒部材5から排出する排出孔57が設けられている。また、第2内筒部材7の内部には第2伝火薬G2が充填されている。また、第2内筒部材7の周壁部75には、第2伝火薬G2の燃焼ガスを第2内筒部材7から排出する排出孔77が設けられている。上記排出孔57,77は、シールテープ等によって内側から閉塞されていても良い。
【0068】
ハウジング1には、その内部空間を上下2室に区画する隔壁部材4Aが配置されており、隔壁部材4Aによって第1燃焼室11と第2燃焼室12が隔てられている。ここで、第1燃焼室11には第1ガス発生剤110が充填され、第2燃焼室12には第2ガス発生剤120が充填されている。
【0069】
隔壁部材4Aは円盤形状を有する部材であり、周縁部が下部シェル3における下側周壁
部31の上端に形成された段部31Aに係止され且つ下側周壁部31と上部シェル2の上側周壁部21とによって挟まれている。隔壁部材4Aは、第1内筒部材5の周壁部55及び第2内筒部材7の周壁部75を挿通するための第1挿通孔411A及び第2挿通孔411Bが形成されている。各挿通孔411A,411Bには、それぞれ第1内筒部材5の周壁部55及び第2内筒部材7の周壁部75が嵌合されることで、第1内筒部材5及び第2内筒部材7に対して隔壁部材4Aが位置決め固定されている。なお、本実施形態において、隔壁部材4Aにおける第1挿通孔411Aの直径は第1内筒部材5(周壁部55)の外径よりも僅かに小さな寸法を有し、第2挿通孔411Bの直径は第2内筒部材7(周壁部75)の外径よりも僅かに小さな寸法を有している。そして、隔壁部材4Aにおける各挿通孔411A,411Bの縁部を、第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)にそれぞれ圧入することで、第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に隔壁部材4Aを固定しても良い。
【0070】
なお、図5に示す例では、第1内筒部材5の周壁部55に設けられた排出孔57は隔壁部材4Aよりも上側に配置されている。そのため、第1点火装置10の作動時において、第1伝火薬G1の燃焼ガスは排出孔57を通じて第1燃焼室11に排出され、これによって第1燃焼室11に充填されている第1ガス発生剤110が燃焼することになる。また、第2内筒部材7の周壁部75に設けられた排出孔77は隔壁部材4Aよりも下側に配置されている。そのため、第2点火装置20の作動時において、第2伝火薬G2の燃焼ガスは排出孔77を通じて第2燃焼室12に排出され、これによって第2燃焼室12に充填されている第2ガス発生剤120が燃焼することになる。
【0071】
図5に示す符号9Aは第1燃焼室11に配置された第1フィルタ、符号9Bは第2燃焼室12に配置された第2フィルタである。第1フィルタ9A及び第2フィルタ9Bは、例えば円筒形状を有し、ハウジング1と同心円状に配置されている。第1フィルタ9Aは上端部及び下端部が上部シェル2の天板部22と隔壁部材4Aに挟み込まれた状態で配置されている。また、第2フィルタ9Bは上端部及び下端部が隔壁部材4Aと下部シェル3の底板部32に挟み込まれた状態で配置されている。第1ガス発生剤110の燃焼によって生成された燃焼ガスは、第1フィルタ9Aを通過する際に冷却及び燃焼残渣の捕集がなされた後、上部シェル2の上側周壁部21に設けられた第1ガス排出孔13Aから外部に排出される。また、第2ガス発生剤120の燃焼によって生成された燃焼ガスは、第2フィルタ9Bを通過する際に冷却及び燃焼残渣の捕集がなされた後、下部シェル3の下側周壁部31に設けられた第2ガス排出孔13から外部に排出される。
【0072】
次に、本実施形態におけるガス発生器100Aにおいて、隔壁部材4Aを第1内筒部材5の周壁部55及び第2内筒部材7の周壁部75にそれぞれ固定する固定構造の詳細を説明する。図5に示す符号47は、縦断面が概略U字形状を有する公差吸収部である。以下では、隔壁部材4Aを固定対象部材とし、本開示に係る固定構造を適用して隔壁部材4Aを第1内筒部材5の周壁部55(第1部材)及び第2内筒部材7の周壁部75(第2部材)にそれぞれ固定する態様を説明する。
【0073】
図6は、実施形態2に係る隔壁部材4Aの平面図である。ここで、符号412は、第1挿通孔411Aの外周に位置する第1嵌合縁部であり、符号413は、第2挿通孔411Bの外周に位置する第2嵌合縁部である。隔壁部材4Aの第1嵌合縁部412は「第1嵌合部」の一例であり、第2嵌合縁部413は「第2嵌合部」の一例である。隔壁部材4Aは、隔壁部材4Aの第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413を第1内筒部材5の周壁部55及び第2内筒部材7の周壁部75にそれぞれ圧入することで、第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)にそれぞれ固定される。本実施形態においては、第1内筒部材5の周壁部55が「第1被嵌合部」に相当し、第2内筒部材7の周壁部75が「第2被嵌合部」に相当する。
【0074】
図6において、一対の破線で挟まれた領域が隔壁部材4Aの介在部48である。介在部48は、第1嵌合縁部412(第1嵌合部)及び第2嵌合縁部413(第2嵌合部)に連なっており、第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413を第1内筒部材5の周壁部55(第1被嵌合部)及び第2内筒部材7の周壁部75(第2被嵌合部)にそれぞれ圧入する際、周壁部55及び周壁部75の間に介在する領域として形成されている。本実施形態における隔壁部材4Aは、介在部48の少なくとも一部に公差吸収部47が形成されている。図6に示す例では、介在部48の延在方向(平面方向)に沿って公差吸収部47が直線状に配置されている。ここで、図6に示す符号X1は、直線状に延伸する公差吸収部47の延伸軸である。また、符号X2は、隔壁部材4Aの平面方向において、第1挿通孔411Aの中心C1及び第2挿通孔411Bの中心C2同士を通る仮想線である。公差吸収部47は、その延伸軸X1が仮想線X2と直交するように設けられている。
【0075】
図7は、実施形態2に係る第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に対して、隔壁部材4Aの第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413をそれぞれ嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)する状況を説明する図である。嵌合方向D1は、第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)の軸方向と平行である。ここで、下部シェル3の底板部32にそれぞれ固定された周壁部55及び周壁部75の中心間距離(以下、「第1中心間距離L1」という)と、隔壁部材4Aにおける第1挿通孔411A及び第2挿通孔411Bの中心間距離(以下、「第2中心間距離L2」という)が相違する場合、圧入が困難になる虞がある。
【0076】
これに対して、本実施形態における隔壁部材4Aによれば、介在部48に公差吸収部47が設けられている。そのため、第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に対して隔壁部材4Aの第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413を同時に圧入する際、嵌合方向D1に直交する嵌合直交方向D2からの外力によって公差吸収部47を変形させ、第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413同士の嵌合直交方向D2における相対距離を変更することができる。例えば、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2よりも大きい場合、隔壁部材4Aにおける第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413の圧入時に、公差吸収部47に対して図7に示すF1方向に外力が作用することで公差吸収部47が変形し、第1中心間距離L1と一致するまで第2中心間距離L2が大きくなる。これにより、隔壁部材4Aにおける第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413の圧入荷重が過度に大きくなることが抑制され、第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413を第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に対して容易に圧入することができる。
【0077】
一方、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2より小さい場合、隔壁部材4Aにおける第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413の圧入時に、公差吸収部47に対して図7に示すF2方向に外力が作用することで公差吸収部47が変形し、第1中心間距離L1と一致するまで第2中心間距離L2が小さくなる。これにより、隔壁部材4Aにおける第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413の圧入荷重が過度に大きくなることが抑制され、第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413を第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に対して容易に圧入することができる。
【0078】
また、上記のように、隔壁部材4Aを第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に固定する際、隔壁部材4Aの第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413の圧入荷重が過度に大きくなることを抑制できるため、第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413が損傷することを抑制できる。また、隔壁部材4Aにおける第1嵌合縁部412と周壁部55との間、或いは、第2嵌合縁部413と周壁部75との間に、意図しない隙間が生じてしまうことを抑制できる。また、隔壁部材4Aの寸法公差が大きくても
、隔壁部材4Aを第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に対して容易に圧入(嵌合)できるため、隔壁部材4Aの加工コストが増大することを抑制できる。
【0079】
<実施形態2の変形例>
次に、実施形態2に係る変形例について説明する。図8は、実施形態2の変形例に係る隔壁部材4Bを第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に圧入固定した状態を示す図である。図9は、実施形態2の変形例に係る隔壁部材4Bの平面図である。本変形例において、実施形態2のガス発生器100Aと共通する構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明を割愛する。
【0080】
図8及び図9に示すように、隔壁部材4Bは、直線状に延在する公差吸収部47によって第1板状部414及び第2板状部415に区画されている。第1板状部414は第1嵌合縁部412(第1嵌合部)を含み、第2板状部415は第2嵌合縁部413(第2嵌合部)を含んでいる。そして、隔壁部材4Bは、第1板状部414及び第2板状部415が、嵌合方向D1へ段違いに配置されるように公差吸収部47によって相互に接続されている。なお、本変形例に係る隔壁部材4Bにおいても、公差吸収部47の延伸軸X1は、第1挿通孔411Aの中心C1及び第2挿通孔411Bの中心C2同士を通る仮想線X2と直交していても良い。
【0081】
本変形例においても、隔壁部材4Bの嵌合方向D1は、第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)の軸方向と平行である。本変形例における隔壁部材4Bによれば、介在部48の少なくとも一部に公差吸収部47が設けられている。そのため、第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に対して隔壁部材4Bの第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413を同時に圧入する際、嵌合方向D1に直交する嵌合直交方向D2からの外力によって公差吸収部47を変形させ、第1嵌合縁部412及び第2嵌合縁部413同士の嵌合直交方向D2における相対距離を変更することができる。これにより、隔壁部材4Bや第1、第2内筒部材5,7の間隔に寸法公差が発生しても、隔壁部材4Bを第1内筒部材5(周壁部55)及び第2内筒部材7(周壁部75)に対して容易に圧入(嵌合)することができる。
【0082】
<実施形態3>
次に、実施形態3について説明する。図10は、実施形態3に係る固定構造が適用されるガス発生器100Bの軸方向断面図である。本実施形態の説明において、上述までの各実施形態及び変形例と共通する構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明を割愛する。
【0083】
図10に示すガス発生器100Bにおいて、上部シェル2の構造は実施形態1のガス発生器100と同一構造である。また、下部シェル3の下側周壁部31の上端には嵌合壁部39が形成されており、上側周壁部21の嵌合壁部25における内側に嵌合壁部39が圧入されている。また、ハウジング1の内部空間は、隔壁部材4Cによって第1燃焼室11と第2燃焼室12とに区画されている。
【0084】
本実施形態3に係る隔壁部材4Cは、実施形態1の隔壁部材4と同様、ハウジング1の横断面方向(軸方向と直交する方向)に延在する円盤状の隔板部41と、隔板部41から上方に延在する筒状の周壁部42を有する。隔壁部材4Cにおける周壁部42の構造は実施形態1における隔壁部材4の周壁部42と同様である。また、隔壁部材4Cにおける周壁部42の嵌合壁部45は、下側周壁部31の嵌合壁部39における内側に圧入(嵌合)されている。
【0085】
また、隔壁部材4Cは、挿通孔411の縁部から上方に向かって延在する円筒形状の第2嵌合壁部49を有している。隔壁部材4Cの第2嵌合壁部49は、第1内筒部材5の上部周壁部53の外周面に圧入(嵌合)されている。すなわち、本実施形態におけるガス発生器100Bは、隔壁部材4Cの嵌合壁部45が下側周壁部31の嵌合壁部39に圧入(嵌合)され、第2嵌合壁部49が第1内筒部材5の上部周壁部53に圧入(嵌合)されることで、下側周壁部31及び上部周壁部53に対して固定されている。以下では、隔壁部材4Cを固定対象部材とし、本開示に係る固定構造を適用して隔壁部材4Cを下側周壁部31(第1部材)及び第1内筒部材5(第2部材)にそれぞれ固定する態様を説明する。
【0086】
図11は、図10に示す鎖線で囲まれたB領域の拡大図であり、本実施形態に係る隔壁部材4Cの固定構造を説明する図である。図11においてフィルタ9の図示を省略している。図11に示すように、隔壁部材4Cは、下側周壁部31の嵌合壁部39に圧入される嵌合壁部45から第1内筒部材5の上部周壁部53に圧入される第2嵌合壁部49まで連なる介在部48Aを有している。介在部48Aは、ガス発生器100Bの軸方向断面において、略U字形状を有している。
【0087】
ここで、図11に示す符号454は、嵌合壁部45の外周面によって形成された第1嵌合面であり、この第1嵌合面454に第1嵌合部455が形成されている。嵌合壁部45の第1嵌合面454に形成された第1嵌合部455は、下側周壁部31の嵌合壁部39に対して嵌合される部位である。嵌合壁部45における第1嵌合部455が嵌合される下側周壁部31の嵌合壁部39は「第1被嵌合部」の一例である。第1嵌合部455は、第1嵌合面454の一部に形成されていても良いし、第1嵌合面454の全体に形成されていても良い。また、図11に示す符号456は、嵌合壁部45の内周面によって形成された第1嵌合背面である。嵌合壁部45の第1嵌合背面456は、第1嵌合面454の背面に相当する。
【0088】
また、図11に示す符号491は、第2嵌合壁部49の内周面によって形成された第2嵌合面であり、この第2嵌合面491に第2嵌合部492が形成されている。第2嵌合壁部49の第2嵌合面491に形成された第2嵌合部492は、第1内筒部材5の上部周壁部53に対して嵌合される部位である。第2嵌合壁部49における第2嵌合部492が嵌合される第1内筒部材5の上部周壁部53は「第2被嵌合部」の一例である。第2嵌合部492は、第2嵌合面491の一部に形成されていても良いし、第2嵌合面491の全体に形成されていても良い。また、図11に示す符号493は、第2嵌合壁部49の外周面によって形成された第2嵌合背面ある。第2嵌合壁部49の第2嵌合背面493は、第2嵌合面491の背面に相当する。
【0089】
隔壁部材4Cの介在部48Aは、第1嵌合部455及び第2嵌合部492に連なり、隔壁部材4Cを下側周壁部31(第1部材)及び第1内筒部材5(第2部材)にそれぞれ固定した状態で、嵌合壁部39(第1被嵌合部)と上部周壁部53(第2被嵌合部)の間に介在する部位に相当する。隔壁部材4Cにおける介在部48Aのうち、嵌合壁部45及び第2嵌合壁部49を第1公差吸収部47Aと呼び、それ以外の部位を第2公差吸収部47Bと呼ぶ。第2公差吸収部47Bは、隔壁部材4Cにおける隔板部41、小径部43、クランク部44を含んでいる。
【0090】
図12は、実施形態3に係る隔壁部材4Cの介在部48Aにおける嵌合壁部45及び第2嵌合壁部49を嵌合壁部39及び上部周壁部53に対して嵌合方向D1に沿って圧入する状況を説明する図である。本実施形態において、嵌合方向D1は、ガス発生器100Bの上下方向(軸方向)と平行である。図12から明らかなように、介在部48Aにおいて、第1嵌合部455を含む第1嵌合壁部45と第2嵌合部492を含む第2嵌合壁部49は、嵌合方向D1(ガス発生器100の上下方向)において異なる位置に設けられている
【0091】
ここで、介在部48Aにおける嵌合壁部45の外径は、嵌合壁部39の内径と同等かそれよりも僅かに大きい。そのため、嵌合壁部45は、第1嵌合面454(外周面)を嵌合壁部39の内周面391に当接させながら嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)される。その際、嵌合壁部45の第1嵌合背面456側には、中空の第1空洞部81が形成されている。そのため、嵌合壁部45の第1嵌合面454に形成された第1嵌合部455を嵌合壁部39に圧入(嵌合)する際に、嵌合壁部39からの反力によって嵌合壁部45を撓み変形させることができる。より詳しくは、嵌合壁部39から嵌合壁部45が受ける反力は、径方向内側に向かって作用する。そのため、嵌合壁部45は、嵌合壁部39からの反力によって径方向内側に押し狭められる方向に撓む。
【0092】
また、介在部48Aにおける第2嵌合壁部49の内径は、上部周壁部53の外径と同等かそれよりも僅かに小さい。そのため、第2嵌合壁部49は、第2嵌合面491(内周面)を上部周壁部53の外周面531に当接させながら嵌合方向D1に沿って圧入(嵌合)される。その際、第2嵌合壁部49の第2嵌合背面493側には、中空の第2空洞部82が形成されている。そのため、第2嵌合壁部49の第1嵌合面491に形成された第1嵌合部492を上部周壁部53に圧入(嵌合)する際に、上部周壁部53からの反力によって第2嵌合壁部49を撓み変形させることができる。より詳しくは、上部周壁部53から第2嵌合壁部49が受ける反力は、径方向外側に向かって作用する。そのため、第2嵌合壁部49は、上部周壁部53からの反力によって径方向外側に押し広げられる方向に撓む。
【0093】
以上のように、隔壁部材4Cの介在部48Aは、当該介在部48Aの圧入時に嵌合直交方向D2から受ける外力によって撓み変形が可能な嵌合壁部45及び第2嵌合壁部49を含む第1公差吸収部47Aを有しているため、圧入荷重を低減することができ、隔壁部材4Cの寸法公差が大きくても容易に圧入することができる。
【0094】
更に、隔壁部材4Cの介在部48Aは、嵌合壁部45及び第2嵌合壁部49の間に形成された第2公差吸収部47Bを有し、嵌合壁部45及び第2嵌合壁部49を嵌合壁部39及び上部周壁部53に圧入する際に第2公差吸収部47Bを変形させることができる。これにより、嵌合壁部45及び第2嵌合壁部49の圧入荷重をより一層低減することができる。
【0095】
以上、本開示に係る部材固定構造及びガス発生器の実施形態及び変形例について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0096】
また、本開示に係る部材固定構造をガス発生器に適用するに際して、固定対象部材及び当該固定対象部材を固定する第1部材及び第2部材の組み合わせは特に限定されず、また、これら各部材の形状、大きさ等についても特に限定されない。また、本開示に係る部材固定構造の適用対象はガス発生器に限られず、種々の製品に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1・・・ハウジング
2・・・上部シェル
3・・・下部シェル
4・・・隔壁部材
5・・・第1内筒部材
6・・・仕切部材
7・・・第2内筒部材
9・・・フィルタ
10・・・第1点火装置
20・・・第2点火装置
25・・・嵌合壁部
33・・・小径部
34・・・第1嵌合壁部
35・・・クランク部
36・・・第2嵌合壁部
37・・・介在部
38・・・公差吸収部
45・・・嵌合壁部
81・・・第1空洞部
82・・・第2空洞部
93・・・脆弱部
100・・・ガス発生器
341・・・第1嵌合面
342・・・第1嵌合部
343・・・第1嵌合背面
361・・・第2嵌合面
362・・・第2嵌合部
363・・・第2嵌合背面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12