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特開2022-113312ガス排出弁を備えた封口板及びそれを用いた二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113312
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】ガス排出弁を備えた封口板及びそれを用いた二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20220728BHJP
   H01M 50/147 20210101ALI20220728BHJP
【FI】
H01M2/12 101
H01M2/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009448
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】米山 顕啓
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
(72)【発明者】
【氏名】丸林 啓則
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC06
5H011DD12
5H011KK01
5H012AA07
5H012BB02
5H012CC01
5H012DD05
5H012EE04
5H012FF01
5H012GG01
5H012JJ01
5H012JJ10
(57)【要約】
【課題】作動時の金属片の飛散を抑制できるガス排出弁を備えた封口板を提供する。
【解決手段】ここに開示される封口板1のガス排出弁10は、平板状の基部12と、基部12よりも薄い薄肉部16と、薄肉部16に形成された溝部17と、溝部17の内側に形成された弁体14とを備えている。そして、上記溝部17は、当該溝部17の他の領域(破断部17a)に比べて残肉厚が大きい領域である残存部17bを有している。そして、この溝部17の残存部17bは、ガス排出弁の中心を通り封口板の短辺方向に延びる直線と、略環状の溝部とが交差した2つの交点のうちの一方の交点を含む領域に形成されている。これによって、ガス排出弁10の作動時の弁体14の飛散を抑制した上で、当該弁体14の飛散対策のために形成した残存部17bによってガス排出弁10の動作が阻害されることを防止できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体の開口部を塞ぐ平面視において略矩形の板状部材であり、ガス排出弁が設けられた二次電池用の封口板であって、
前記ガス排出弁は、
平板状の基部と、
前記基部の厚みよりも厚みが薄い薄肉部と、
前記薄肉部の表面に形成された略環状の溝部と、
前記略環状の溝部の内側に形成された弁体と、
を備え、
前記略環状の溝部は、当該略環状の溝部の他の領域に比べて残肉厚が大きい領域である残存部を有し、
前記残存部は、前記ガス排出弁の中心を通り前記封口板の短辺方向に延びる直線と、前記略環状の溝部とが交差した2つの交点のうちの一方の交点を含む領域に形成されている、封口板。
【請求項2】
前記ガス排出弁を覆うように保護テープが貼り付けられている、請求項1に記載の封口板。
【請求項3】
前記封口板の短辺方向における前記ガス排出弁の外側の領域に貼り付けられた前記保護テープの長さLは、前記封口板の長辺方向における前記ガス排出弁の外側の領域に貼り付けられた前記保護テープの長さLよりも短い、請求項2に記載の封口板。
【請求項4】
前記薄肉部と前記保護テープとの間に高さ1mm以上の隙間が形成されている、請求項2または3に記載の封口板。
【請求項5】
周方向における前記残存部の長さは、前記略環状の溝部の全周の長さの1/8以上3/8以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の封口板。
【請求項6】
前記残存部の残肉厚は、当該残存部に隣接した薄肉部の厚みよりも厚い、請求項1~5のいずれか一項に記載の封口板。
【請求項7】
前記残存部に隣接した薄肉部の厚みは、前記溝部の他の領域に隣接した薄肉部の厚みよりも厚い、請求項6に記載の封口板。
【請求項8】
前記薄肉部の平面形状が略環状であり、前記弁体の厚みが前記薄肉部の厚み以上であり、前記弁体の断面二次モーメントが前記薄肉部の断面二次モーメントよりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の封口板。
【請求項9】
正極及び負極を含む電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、
前記外装体の前記開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、
を備え、
前記封口板が、請求項1~8のいずれか一項に記載の封口板である、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出弁を備えた封口板及びそれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、例えば、電極体と、当該電極体を収容する電池ケースとを備えている。電池ケースは、一つの面が開口部となった容器である外装体と、当該外装体の開口部を塞ぐ封口板とを備えている。この種の二次電池では、安全性の向上のために、電池ケース(典型的には封口板)にガス排出弁が設けられることがある。このガス排出弁とは、電池ケース内で大量のガスが急激に発生した場合に、予め定められた圧力で開口し、電池ケース内のガスを排出するように設計された弁を備えた二次電池部品である。例えば、特許文献1に記載の角型蓄電池は、上面を形成する基部と、基部から没する凹部を形成する周壁部と、周壁部の内周面に連接されて支持される安全弁(ガス排出弁)とが一体に形成された蓋部材(封口板)を有している。かかる特許文献1では、アルミ製の平板をプレス加工して凹部を形成し、当該凹部の底部に薄膜状の安全弁を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-252809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では二次電池の安全性への要求が益々高まっている。かかる要求に応えるために本発明者が検討した結果、上記構成を有する従来のガス排出弁は、ケース内圧の上昇によって作動(開口)した際に金属片が周囲に飛散する可能性があることが分かった。そして、当該飛散した金属片が電極端子などに接触すると、外部短絡が生じる原因になり得る。ここに開示される技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、作動時の金属片の飛散を抑制できるガス排出弁を備えた封口板および二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって以下の構成の封口板が提供される。
【0006】
ここに開示される封口板は、外装体の開口部を塞ぐ平面視において略矩形の板状部材であり、ガス排出弁が設けられた二次電池用の封口板である。かかる封口板のガス排出弁は、平板状の基部と、基部の厚みよりも厚みが薄い薄肉部と、薄肉部の表面に形成された略環状の溝部と、略環状の溝部の内側に形成された弁体とを備えている。そして、ここに開示される封口板において、略環状の溝部は、当該略環状の溝部の他の領域に比べて残肉厚が大きい領域である残存部を有している。そして、この残存部は、ガス排出弁の中心を通り封口板の短辺方向に延びる直線と、略環状の溝部とが交差した2つの交点のうちの一方の交点を含む領域に形成されている。
【0007】
上述のように、薄肉部の表面に略環状の溝部が形成されたガス排出弁では、ケース内圧が所定の圧力に達した際に、上記略環状の溝部に沿って薄肉部が破断する。このとき、ケース内圧が急激に上昇すると、略環状の溝部の全周に亘って薄肉部が一度に破断し、当該溝部の内側に存在する弁体が基部から完全に切り離される。そして、当該切り離された弁体(金属片)は、電池ケース内から噴出するガスによって周囲に飛散する可能性がある。これに対して、ここに開示される封口板では、上記略環状の溝部に、当該略環状の溝部の他の領域に比べて残肉厚が大きい残存部が設けられている。これによって、略環状の溝部の全周に亘って薄肉部が一度に破断することを抑制し、残存部を介して弁体が基部に繋がった状態を維持できる。この結果、ガス排出弁の弁体が金属片として飛散することを抑制し、二次電池の安全性向上に貢献できる。
【0008】
なお、略環状の溝部の一部に残存部を形成すると、当該溝部に沿った薄肉部の連続的な破断が残存部において停止するため、破断開始位置によってはガス排出弁が充分に開口しなくなる可能性がある。これに対して、ここに開示される封口板では、ガス排出弁の中心を通り封口板の短辺方向に延びる直線と略環状の溝部とが交差する2つの交点のうちの一方の交点を含む領域に残存部を形成している。これによって、溝部の周方向において残存部から最も遠い位置から薄肉部の破断を開始させることができる。この結果、作動後のガス排出弁において残存部のみが基部と繋がるように略環状の溝部に沿った薄肉部の破断を生じさせることができる。以上の通り、ここに開示される封口板によると、ガス排出弁の作動時の弁体の飛散を抑制できるだけでなく、当該弁体の飛散対策のために形成した残存部によってガス排出弁の作動が阻害されることも防止できる。
【0009】
また、ここに開示される封口板の好適な一態様では、ガス排出弁を覆うように保護テープが貼り付けられている。これによって、腐食性の異物等によるガス排出弁の破損や劣化を防止できる。
【0010】
ここに開示される封口板の好適な一態様では、封口板の短辺方向におけるガス排出弁の外側の領域に貼り付けられた保護テープの長さLは、封口板の長辺方向におけるガス排出弁の外側の領域に貼り付けられた保護テープの長さLよりも短い。上述の寸法関係を満たすように保護テープの貼り付け代を調節することによって、ガス排出弁が作動した際に保護テープを適切に剥離させることができる。
【0011】
ここに開示される封口板の好適な一態様では、薄肉部と保護テープとの間に高さ1mm以上の隙間が形成されている。これによって、所望のケース内圧に達する前の通常使用時のガス排出弁の膨張変形によって保護テープが剥離することを防止できる。
【0012】
ここに開示される封口板の好適な一態様では、周方向における残存部の長さは、略環状の溝部の全周の長さの1/8以上3/8以下である。これによって、ガス排出弁の作動を大きく阻害することなく、弁体の飛散を適切に抑制できる。
【0013】
ここに開示される封口板の好適な一態様では、残存部の残肉厚は、当該残存部に隣接した薄肉部の厚みよりも厚い。これによって、弁体の飛散をより適切に抑制できる。
【0014】
ここに開示される封口板の好適な一態様では、残存部に隣接した薄肉部の厚みは、溝部の他の領域に隣接した薄肉部の厚みよりも厚い。これによって、弁体の飛散をより適切に抑制することができる。
【0015】
また、ここに開示される封口板の好適な一態様では、薄肉部の平面形状が略環状であり、弁体の厚みが薄肉部の厚み以上であり、弁体の断面二次モーメントが薄肉部の断面二次モーメントよりも大きい。これによって、ケース内圧上昇時にガス排出弁に加わる応力が溝部の周囲の薄肉部に集中するため、溝部に沿った薄肉部の破断が生じやすくなる。
【0016】
また、ここに開示される技術の他の側面として二次電池が提供される。ここに開示される二次電池は、正極及び負極を含む電極体と、電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池である。かかる二次電池の電池ケースは、一つの面が開口部となった扁平な角型の容器である外装体と、外装体の開口部を塞ぐ平面矩形の封口板と、を備えている。そして、上記封口板は、上記構成の封口板である。ここに開示される二次電池によると、弁体の飛散を抑制できるだけでなく、当該弁体の飛散対策のために形成した残存部によってガス排出弁の動作が阻害されることも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る封口板を模式的に示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る封口板を模式的に示す平面図である。
図3】第1の実施形態に係る封口板を模式的に示す縦断面図である。
図4】第1の実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図5】第2の実施形態に係る封口板を模式的に示す平面図である。
図6】第2の実施形態に係る封口板を模式的に示す縦断面図である。
図7】第3の実施形態に係る封口板を模式的に示す縦断面図である。
図8】第4の実施形態に係る封口板を模式的に示す縦断面図である。
図9】第5の実施形態に係る封口板を模式的に示す縦断面図である。
図10】第5の実施形態に係る封口板を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、電極体や電解液の材料など)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。すなわち、ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
なお、以下の説明で参照する図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付している。さらに、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。そして、各図における符号Xは「幅方向」を示し、符号Yは「奥行方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示すものとする。但し、これらの方向は、説明の便宜上定めたものであり、使用中や製造中の二次電池の設置態様を限定することを意図したものではない。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0020】
<封口板>
以下、ここで開示される封口板の一実施形態について、図1図3を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係る封口板を模式的に示す斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る封口板を模式的に示す平面図である。図3は、第1の実施形態に係る封口板を模式的に示す縦断面図である。なお、本明細書では、説明の便宜上、二次電池に封口板を取り付けた際に電池ケース内の電極体と対向する面を「第1面」といい、当該電極体に向かう方向を「第1の方向」という。一方、二次電池に封口板を取り付けた際に電池ケースの外側に露出する面を「第2面」といい、電池ケースの外側に向かう方向を「第2の方向」という。そして、上記「第1の方向」は図3中の高さ方向Zの下方を指し、「第2の方向」は図3中の高さ方向Zの上方を指す。
【0021】
本実施形態に係る封口板1は、二次電池の電池ケースの側壁の1つをなす二次電池用の部品(二次電池部品)である。本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。すなわち、本実施形態に係る封口板1は、特定の種類の二次電池に限定されず、過充電等の不具合発生時にガスが発生し得る二次電池全般に特に制限なく用いることができる。
【0022】
本実施形態に係る封口板1は、平面形状が略矩形の板状部材である。詳しくは後述するが、封口板1は、二次電池の電池ケースの構成部品である外装体の開口部を塞ぐ板状部材である。封口板1には、所定の強度を有する材料を特に制限なく使用できる。かかる封口板1の素材の一例として、アルミニウムを主成分とする金属材料や、鉄を主成分とする金属材料等が挙げられる。一例として、ガス排出弁10の作動圧を考慮した設計の容易さや成形性などの観点から、封口板1は、アルミニウムを主成分とする金属材料によって構成されていると好ましい。なお、本明細書における「アルミニウムを主成分とする金属材料」とは、総重量に対して90重量%以上のアルミニウムを含有する金属材料であり、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等を包含する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る封口板1は、ガス排出弁10を備えている。本実施形態におけるガス排出弁10は、基部12と、薄肉部16と、略環状の溝部17と、弁体14と、を備えている。そして、図3に示すように、上記略環状の溝部17は、当該略環状の溝部17の他の領域(破断部17a)に比べて残肉厚が大きい領域である残存部17bを有している。さらに、図2に示すように、溝部17の残存部17bは、ガス排出弁10の中心Cを通り封口板1の短辺方向(奥行方向Y)に延びる直線Lと略環状の溝部17とが交差した2つの交点IP、IPのうちの一方の交点IPを含む領域に形成されている。上記構成の封口板1によると、ガス排出弁10作動時の金属片(弁体14)の飛散を抑制できるだけでなく、ガス排出弁10の動作阻害も防止することができる。以下、本実施形態に係る封口板1のガス排出弁10の具体的な構成について説明する。
【0024】
(1)基部
基部12は、平板状に成形された領域である。本実施形態におけるガス排出弁10は、平板状の金属部材に対してプレス加工を行うことによって成形される。このとき、後述する弁体14と薄肉部16が形成されなかった領域が基部12となる。また、この基部12は、ガス排出弁10と封口板1の他の領域との連結部となる。具体的には、本実施形態では、封口板1に対して直接プレス加工を実施することによって、ガス排出弁10の基部12と封口板1の他の領域とが継ぎ目なく一体化した封口板1を成形している。これによって、ガス排出弁10の接合部分から電解液が漏出することを確実に防止できる。また、ガス排出弁10を封口板1に接合する工程を省略できるため作業効率の向上にも貢献できる。但し、ここに開示される技術は、ガス排出弁10の基部12と封口板1とが一体化した態様に限定されない。すなわち、別途成形されたガス排出弁の基部と封口板の他の領域とが接合されていてもよい。この場合には、封口板に開口部を設けておき、当該開口部にガス排出弁を嵌め込んだ後に、ガス排出弁の基部と封口板とを溶接するという手段が挙げられる。このようにガス排出弁を別途成形する態様では、ガス排出弁の成形が比較的に容易になるという利点がある。また、成形後のガス排出弁の販売や流通が容易になるという利点もある。
【0025】
なお、基部12の厚みTは、1mm~10mmとすることができ、1mm~5mmとすることができる。基部12の厚みTが大きくなるにつれて、ケース内圧の上昇に対する基部12の耐久性が向上する傾向がある。一方、基部12の厚みTが小さくなるにつれて、弁体14や薄肉部16の成形における加工負荷が小さくなる傾向がある。但し、上記基部12の厚みTは、特に限定されず、封口板1の厚み等を考慮して適宜調節できる。
【0026】
(2)薄肉部
薄肉部16は、基部12の厚みTよりも厚みが薄い領域である(T<T)。図3に示すように、本実施形態におけるガス排出弁10では、基部12の第2面12bから窪んだ凹部18が設けられており、当該凹部18の底面に薄肉部16と弁体14が形成されている。そして、薄肉部16の外周縁から環状の周壁18aが略垂直に立ち上がっている。換言すると、本実施形態におけるガス排出弁10は、薄肉部16と弁体14と周壁18aによって囲まれた凹部18を有している。そして、図2に示すように、本実施形態における薄肉部16の平面形状は円環状である。かかる円環状の薄肉部16の厚みTは、周方向において略同一である。なお、円環状の薄肉部16の外周縁は、楕円形であってもよいが、略真円形であるとより好ましい。これによって、ガス排出弁10が開口する圧力(作動圧)のバラツキを抑制できる。なお、本明細書における「略真円形」とは、長径と短径の比率が90%以上(好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上)の円形のことをいう。また、薄肉部16は、二次電池の電池ケースの容積や使用環境などを考慮し、後述する溝部17に沿って安定的に破断するように設計されていることが好ましい。一例として、薄肉部16の厚みTは、0.1mm~0.6mmが好ましく、0.3mm~0.5mmがより好ましい。これによって、ケース内圧が所望の圧力に達した際に、略環状の溝部17に沿って薄肉部16を安定的に破断させることができる。
【0027】
(3)弁体
弁体14は、後述する略環状の溝部17の内側に形成された領域である。なお、図1および図2に示すように、ここでは、平面視における弁体14の形状が略真円形状である。すなわち、平面視が円環状の薄肉部16の径方向の内側に、略真円形状の弁体14が形成されている。また、弁体14の厚みTは、特に限定されず、適宜調節できる。但し、薄肉部16における破断を生じさせやすくするという観点から、弁体14の厚みTは、薄肉部16の厚みT以上であることが好ましい。例えば、本実施形態に係る封口板1では、薄肉部16の厚みTと弁体14の厚みTが略同一のガス排出弁10が形成されている。このように、薄肉部16の厚みTと弁体14の厚みTを略同一とした場合、ガス排出弁10の成形が比較的に容易になるため、製造効率の向上に貢献できる。
【0028】
(4)溝部
本実施形態では、薄肉部16の表面に略環状の溝部17が形成されている。かかる溝部17が形成された部分は、薄肉部16の中でも特に強度が低い脆弱部となる。このため、本実施形態では、ケース内圧が所定の圧力に達した際に、略環状の溝部17に沿うようにして薄肉部16が破断する。これによって、基部12と弁体14とが切り離され、ガス排出弁10が開口するため、電池ケース内部のガスを外部に排出できる。しかし、かかるガス排出弁10の開口において、略環状の溝部17の全周に亘って薄肉部16が一度に破断すると、弁体14が基部12から完全に切り離されるため、電池ケース内から噴出するガスによって弁体14が周囲に飛散する可能性がある。これに対して、本実施形態に係る封口板1では、略環状の溝部17に、当該略環状の溝部17の他の領域(以下「破断部17a」という)に比べて残肉厚が大きい領域である残存部17bが形成されている。これによって、略環状の溝部17の全周に亘って薄肉部16が破断することを抑制し、残存部17bを介して弁体14が基部12に繋がった状態を維持できる。この結果、弁体14が基部12から完全に切り離され、金属片として周囲に飛散することを抑制できる。また、全周に亘って薄肉部16が同時に破断することを抑制できるため、弁体14が基部12から切り離されたとしても、その飛散エネルギー(飛散速度)を抑えることができる。
【0029】
一方で、略環状の溝部17の一部に残存部17bを形成すると、当該溝部17に沿った薄肉部16の連続的な破断が残存部17bにおいて停止する。このため、破断開始位置によっては、薄肉部の破断が残存部に阻害され、ガス排出弁が充分に開口しなくなる可能性がある。これに対して、本実施形態では、ガス排出弁10の中心Cを通り封口板1の短辺方向(図2中の奥行方向Y)に延びる直線Lと略環状の溝部17とが交差した2つの交点IP、IPのうち、一方の交点IPを含む領域に残存部17bが形成されている。これによって、残存部17bを形成したことによるガス排出弁10の動作阻害を防止できる。具体的には、略矩形の封口板1を取り付けた電池ケースの内圧が上昇すると、短辺方向Yに沿った稜線が形成されるような湾曲変形が封口板1に生じる。そして、この封口板1の湾曲変形で生じた応力がガス排出弁10に加わると、短辺方向Yに沿った直線Lと略環状の溝部17との2つの交点IP、IPの何れかの近傍が破断開始位置となりやすい。そして、上記2つの交点IP、IPのうち、一方の交点IPを含む領域に残存部17bを形成すると、他方の交点IPの近傍が破断開始位置となる可能性が非常に高くなる。換言すると、本実施形態によると、ガス排出弁10の中心Cを挟んで残存部17bと対向した位置(交点IP)から薄肉部16の破断を開始させることができる。このように、周方向において残存部17bから最も遠い位置に破断開始点を生じさせることによって、作動後のガス排出弁10において残存部17bのみが基部12と繋がるように略環状の溝部17を適切に破断させることができる。
【0030】
以上の通り、本実施形態に係る封口板1によると、ガス排出弁10作動時の金属片(弁体14)の飛散を抑制できるだけでなく、当該弁体14の飛散対策のために形成した残存部17bによってガス排出弁10の動作が阻害されることも防止できる。
【0031】
なお、溝部17の破断部17aにおける残肉厚T図3参照)は、ガス排出弁10の作動安定性を考慮して適宜調節することが好ましい。例えば、薄肉部16の厚みTに対する破断部17aの残肉厚Tの割合(T/T)は、10%~50%が好ましく、20%~40%がより好ましい。上記T/Tが小さくなる(破断部17aにおける溝が深くなる)につれて、破断部17aに沿った薄肉部16の破断が生じやすくなり、ガス排出弁10の動作安定性が向上する傾向がある。一方、上記T/Tが大きくなる(破断部17aにおける溝が浅くなる)につれて、ガス排出弁10の誤作動が生じにくくなる傾向がある。
【0032】
一方、弁体14の飛散をより適切に抑制するという観点から、薄肉部16の厚みTに対する残存部17bの残肉厚Tの割合(T/T)は、50%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。一方、残存部17bの残肉厚Tは、上記破断部17aの残肉厚Tよりも厚ければ特に限定されない。例えば、ガス排出弁10作動後のガス抜け性の向上という観点では、残存部17bにある程度の深さの溝が形成されていることが好ましい。これによって、ガス排出弁10が作動した際に、残存部17bを支点として弁体14を上方に回動させることが容易になるため、ガス排出弁10作動後の開口面積を充分に確保できる。かかる点を考慮すると、上記T/Tの上限値は、99%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下が特に好ましい。
【0033】
また、周方向における残存部17bの長さは、略環状の溝部17の全周の長さの1/8以上3/8以下であることが好ましい。これによって、ガス排出弁10の作動を大きく阻害することなく、弁体14の飛散を適切に抑制できる。具体的には、略環状の溝部17の全周に対する残存部17bの割合が大きくなるにつれて、弁体14の飛散を抑制しやすくなる傾向がある。一方、略環状の溝部17の全周に対する残存部17bの割合が小さくなるにつれて、ガス排出弁10が開口しやすくなるため、ガス排出弁10が作動した後のガス排出性が向上する傾向がある。
【0034】
なお、図3に示すように、本実施形態では、薄肉部16の第2面16b(図3中の上面)に、略環状の溝部17が形成されている。しかし、略環状の溝部が形成される面は、薄肉部16の第1面16a(図3中の下面)であってもよい。この場合であっても、略環状の溝部に沿って薄肉部を破断させることができる。但し、本実施形態に係る封口板1を二次電池に用いる場合、薄肉部16の第1面16a側がケース内部(ケース内圧上昇時の陽圧側)に配置される。この点を考慮すると、環状の溝部17は、ケース外に配置される第2面16bの方に形成されている方が好ましい。これによって、ケース内圧が上昇して第2の方向(図3中の高さ方向Zの上方)に向けて薄肉部16の第1面16aが加圧された際に、溝部17が拡がるように薄肉部16を破断させることができる。この結果、ガス排出弁10の作動安定性をさらに向上することができる。
【0035】
また、ガス排出弁10は、長辺方向Xにおける封口板1の中央領域に形成されていることが好ましい。これによって、封口板1の湾曲変形による応力がガス排出弁10に効率よく加わるため、環状の溝部17と直線Lとの交点IPの近傍が薄肉部16の破断開始点になりやすくなる。なお、本明細書において「封口板の中央領域」とは、長辺方向(図2中の幅方向X)における封口板の中心点を含む領域を指す。すなわち、平面視におけるガス排出弁の形成領域が上記封口板の中心点を含んでいる場合に、「ガス排出弁は、封口板の中央領域に形成されている」ということができる。また、ここに開示される封口板のガス排出弁は、必ずしも封口板の中央領域に形成されていなくてもよい。例えば、封口板に取り付けられ得る種々の部品(電極端子や注液孔の封止栓など)の取付位置によっては、封口板の湾曲変形の発生位置が封口板の中央領域からずれることもある。このため、予備試験等を実施して封口板の湾曲変形の発生位置を特定した上で、ガス排出弁の形成領域に、封口板の湾曲変形の発生位置を含ませることが好ましい。これによって、環状の溝部17と直線Lとの交点IPの近傍が薄肉部16の破断開始点になりやすくなるため、残存部17bを設けたことによるガス排出弁10の動作阻害を確実に防止できる。
【0036】
<二次電池>
上記構成の封口板1は、二次電池の電池ケースの側壁の1つを構成する二次電池部品である。以下、上記構成の封口板1を用いた二次電池について説明する。図4は、第1の実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
【0037】
図4に示す二次電池100は、電極体(図示省略)と、電極体を収容する電池ケース20とを備えている。詳しい図示は省略するが、電極体は、正極と負極とセパレータとを有する。例えば、電極体は、帯状の正極と帯状の負極とが2枚の帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心として捲回された捲回電極体であり得る。また、電極体の構造の他の例として、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられた積層電極体が挙げられる。なお、電極体を構成する各部材(正極、負極、セパレータなど)の材料および構造は、一般的な二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)にて採用され得るものを特に制限なく採用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため、詳細な説明を省略する。また、図示は省略するが、電池ケース20には電解液も収容されている。かかる電解液についても、一般的な二次電池にて採用され得るものを特に制限なく採用できる。
【0038】
電池ケース20は、上記電極体を収容する筐体である。電池ケース20の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。例えば、電池ケース20は、所定の強度を有した金属製であることが好ましい。かかる電池ケース20の材質の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0039】
図4に示すように、電池ケース20は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。かかる電池ケース20は、上面に開口を有する外装体22と、当該外装体22の開口を塞ぐ封口板1とを備えている。外装体22は、平面形状が矩形の底壁(図示省略)と、矩形の底壁の長辺から高さ方向Zに沿って延びて相互に対向する一対の長側壁22aと、矩形の底壁の短辺から高さ方向Zに沿って延びて相互に対向する一対の短側壁22bとを備えた箱状の部材である。そして、この外装体22の上面には、一対の長側壁22aと一対の短側壁22bの各々の上辺に囲われた略矩形状の開口部(図示省略)が形成される。そして、上記構成のガス排出弁10を有した封口板1は、外装体22の上面の開口部を塞ぐように外装体22に取り付けられ、外装体22の底壁と対向する。そして、外装体22の開口部の周縁と封口板1の外周縁とを接合(例えば溶接)することによって、内部が封止(密閉)された電池ケース20が構築される。なお、封口板1と外装体22との接合には、例えばレーザ溶接等を用いることができる。
【0040】
また、この二次電池100の封口板1には、正極端子30と負極端子40が取り付けられている。正極端子30は、高さ方向Zに沿って延びる長尺な導電部材である。かかる正極端子30の下端は、電池ケース20の内部において電極体の正極と接続されている。一方、正極端子30の上端は、電池ケース20の外部に露出している。なお、正極端子30は、アルミニウムやアルミニウム合金等で構成されていることが好ましい。一方、負極端子40も、正極端子30と略同等の構造を有している。すなわち、かかる負極端子40の下端は、電池ケース20内部で負極と接続され、上端は、電池ケース20の外部に露出する。なお、負極端子40は、銅や銅合金等で構成されていることが好ましい。また、正極端子と負極端子の取付位置は、特に限定されず、封口板以外の電池ケースの側壁(外装体の側壁)に設けられていてもよい。また、図示は省略するが、封口板1には、二次電池100の製造工程において電解液を注液するための注液孔が設けられていてもよい。かかる注液孔は、通常、所定の封止栓によって封止される。この注液孔の封止栓としては、ブラインドリベット等が用いられる。
【0041】
そして、本実施形態に係る二次電池100の封口板1には、ガス排出弁10が設けられている。このとき、封口板1は、第1面(図3中の下面)が電極体と対向するように配置される。換言すると、本実施形態では、凹部18が電池ケース20の外側に配置されるように封口板1が取り付けられる。そして、上記構成の封口板1では、ガス排出弁10の略環状の溝部17の一部に残存部17bが形成されている。これによって、ガス排出弁10が作動した後も残存部17bを介して弁体14と基部12とが繋がった状態を維持できるため、金属片(弁体14)が周囲に飛散することを好適に抑制できる。さらに、ガス排出弁10の中心Cを挟んで残存部17bと破断開始位置(交点IP)とを対向させることによって、残存部17bを設けたことによるガス排出弁10の作動阻害を防止できる。
【0042】
<他の実施形態>
以上、ここに開示される技術の一実施形態(第1の実施形態)について説明した。なお、ここに開示される技術は、上述の実施形態に限定されず、種々の実施形態を包含する。以下、ここに開示される封口板の他の実施形態について説明する。
【0043】
(1)第2の実施形態
図5は、第2の実施形態に係る封口板を模式的に示す平面図である。図6は、第2の実施形態に係る封口板を模式的に示す縦断面図である。図5および図6に示すように、本実施形態に係る封口板1では、ガス排出弁10を覆うように保護テープ50が貼り付けられている。これによって、腐食性の異物等がガス排出弁10に付着してガス排出弁10が破損や劣化することを防止できる。具体的には、封口板1を構成する金属材料(例えば、アルミニウム)は、異種金属との接触によって腐食が促進され得る(異種金属接触腐食)。そして、上述した通り、二次電池100では、銅や銅合金で構成された負極端子40が電池ケース20の外部に露出しているため、負極端子40から剥離した銅片がガス排出弁10に付着する可能性がある。かかる銅片の付着によってガス排出弁10の弁体14や薄肉部16が腐食して孔が形成されると、電池ケース20内から電解液が流出したり、電池ケース20内へ水分が侵入したりするおそれがある。これに対して、ガス排出弁10を覆うように保護テープ50を貼り付けることによって、銅片等の付着によるガス排出弁10の腐食を防止できる。
【0044】
なお、保護テープ50は、フィルム状の基材の表面に粘着剤が塗布された構成を採用できる。保護テープ50の基材には、封口板1やガス排出弁10の腐食を促進するものでなければ、従来公知の素材を特に制限なく使用できる。例えば、保護テープ50の基材は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂材料や、封口板1と同じ金属材料(アルミニウムなど)等で構成されていることが好ましい。また、粘着剤についても同様に、封口板1やガス排出弁10を腐食させなければ、種々の粘着剤を制限なく使用できる。かかる粘着剤の一例として、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤などを使用できる。
【0045】
また、本実施形態では、図5に示すように、封口板1の短辺方向Yにおけるガス排出弁10の外側の領域に貼り付けられた保護テープ50の長さLを、封口板1の長辺方向Xにおけるガス排出弁10の外側の領域に貼り付けられた保護テープ50の長さLよりも短くすることが好ましい。これによって、ガス排出弁10が作動した際に保護テープ50を効率よく剥がすことができる。具体的には、本実施形態においてケース内圧が大きく上昇すると、溝部17の破断部17aに沿って薄肉部16が破断すると共に、電池ケース内から放出されるガスによって弁体14が押し上げられる。そして、この弁体14は、残存部17bを介して基部12と繋がっているため、残存部17bを支点として上方に向かって回動する。このとき、短辺方向Yにおける保護テープ50の貼り付け長さLを、長辺方向Xにおける保護テープ50の貼り付け長さLよりも短くしていると、上方に向かって回動した弁体14によって保護テープ50を押し上げて容易に剥がすことができるため、保護テープ50によるガス排出性の低下を防止できる。
【0046】
なお、上記構成における長さLは、「封口板1の短辺方向Yにおけるガス排出弁10の両外側の領域のうち、ガス排出弁10の中心Cを挟んで残存部17bと対向した領域(すなわち、破断開始位置(交点IP2)に近接した領域)に貼り付けられた保護テープ50の長さ」であることが好ましい。また、上記構成における長さLは、「封口板1の長辺方向Xにおけるガス排出弁10の両外側の領域のうち、保護テープ50の貼り付け代が短い領域における保護テープ50の長さ」であることが好ましい。上記保護テープ50の長さL、Lを上述のように定めることによって、ガス排出弁10が作動した際に保護テープ50をより効率よく剥がすことができる。
【0047】
また、図6に示すように、薄肉部16と保護テープ50との間には、高さ1mm以上の隙間Sが形成されていることが好ましい。これによって、所望のケース内圧に達する前の通常使用時にガス排出弁10が膨張した際に、当該膨張したガス排出弁10によって保護テープ50が押し上げられて剥離することを防止できる。一方、上記隙間Sの高さの上限は特に限定されず、5mm以下でもよいし、3mm以下でもよいし、2mm以下でもよい。
【0048】
また、保護テープ50には、スリットが形成されていてもよい。これによって、ガス排出弁10が作動した際に、上方に向かって回動する弁体14によって保護テープ50を破断させることができる。この結果、保護テープ50によるガス排出性の低下を適切に防止できる。また、平面視におけるスリットの形状は、特に限定されず、その目的に応じて種々の形状を採用できる。かかる保護テープ50のスリットの形状は、例えば、短側面に略平行に形成された破線などが好ましい。これによって、ガス排出弁10が作動した際に、保護テープ50を容易に破断させることができる。
【0049】
(2)第3の実施形態
図7は、第3の実施形態に係る封口板を模式的に示す断面図である。第1の実施形態では、薄肉部16の厚みTと弁体14の厚みTが略同一のガス排出弁10が形成されている(図3参照)。しかし、図7に示すように、弁体14の厚みTは、薄肉部16の厚みT以上であってもよい。これによって、弁体14の断面二次モーメントが薄肉部16の断面二次モーメントよりも大きくなり、ケース内圧上昇時にガス排出弁10に加わる応力が溝部17の周囲の薄肉部16に集中するため、溝部17に沿って薄肉部16が破断しやすくなる。なお、本実施形態における薄肉部16の厚みTに対する弁体14の厚みTの割合(T/T)は、100%以上が好ましく、500%以上がより好ましく、900%以上が特に好ましい。これによって、薄肉部16に応力をさらに集中させやすくなる。一方、上記T/Tの上限値は、特に限定されず、3000%以下でもよく、1500%以下でもよい。
【0050】
(3)第4の実施形態
図8は、第4の実施形態に係る封口板を模式的に示す断面図である。第1の実施形態では、厚みTが周方向において略同一な薄肉部16が形成されている(図3参照)。しかし、図8に示すように、周方向における薄肉部16の厚みは一定でなくてもよい。具体的には、本実施形態におけるガス排出弁10は、残存部17bに隣接した薄肉部16bの厚みTT1が、溝部17の他の領域(破断部17a)に隣接した薄肉部16bの厚みTT2よりも厚くなるように成形されている。これによって、溝部17の破断部17aに沿った薄肉部16bの破断が生じやすくなる一方で、残存部17b近傍の薄肉部16bが破断しにくくなる。この結果、ガス排出弁10の作動安定性と弁体14の飛散抑制をより高いレベルで両立できる。
【0051】
なお、残存部17bに隣接する薄肉部16bの厚みTT1に対する破断部17aに隣接する薄肉部16bの厚みTT2の割合(TT2/TT1)は、20%~100%が好ましく、25%~50%がより好ましい。これによって、ガス排出弁10の作動安定性と弁体14の飛散抑制をさらに高いレベルで両立できる。また、相対的に厚い残存部17b近傍の薄肉部16bと、相対的に薄い破断部17a近傍の薄肉部16bとの境界における形状は特に限定されない。例えば、これらの厚みの異なる薄肉部16bの境界には段差が形成されていてもよいし、傾斜面が形成されていてもよい。
【0052】
(4)第5の実施形態
図9は、第5の実施形態に係る封口板を模式的に示す断面図である。また、図10は、第5の実施形態に係る封口板を模式的に示す平面図である。第1の実施形態に係る封口板1は、残存部17bの残肉厚Tが、当該残存部17bに隣接した薄肉部16の厚みTよりも薄くなるように構成されている(図2参照)。しかしながら、残存部17bの残肉厚Tは、破断部17aの残肉厚Tよりも厚ければ、特に限定されない。例えば、図9に示すように、残存部17bの残肉厚Tは、当該残存部17bに隣接した薄肉部16の厚みTと同一(T/T=100%)でもよい。これによって、薄肉部16が全周に亘って破断して弁体14が飛散することをより適切に抑制できる。また、弁体14の飛散をさらに適切に抑制するという観点から、残存部17bの残肉厚Tを薄肉部16の厚みTよりも厚くしてもよい。すなわち、上記T/Tの上限値は、120%以下でもよく、110%以下でもよく、100%以下でもよい。
【0053】
なお、本実施形態のように、残存部17bの厚みTを薄肉部16の厚みTの同等以上にすると、図10に示すように、当該残存部17bが形成された領域において略環状の溝部17が途切れたガス排出弁10が形成される。本明細書において、上記一部が途切れた溝部17の外形は、当該溝部17の残りの部分(破断部17a)の形状に応じて上記途切れた領域を補完するように引いた補助線L図9中の点線)によって決定されるものとする。すなわち、図10に示すように、上部が途切れており、残りの破断部17aが略円環状である場合には、当該略円環状の破断部17aに沿った円形の補助線Lを引くことで溝部17の外形が決定される。そして、この補助線Lと前記封口板の短辺方向に延びる直線Lとの交点IPを、破断開始点となり得る2つの交点のうちの1つとすることができる。
【0054】
(5)その他の形態
また、上述した第1~第5の実施形態の各々におけるガス排出弁10の平面形状は、略真円形である。しかし、ガス排出弁10の平面形状は、特に限定されず、種々の形状を特に制限なく採用できる。例えば、ガス排出弁10の平面形状は、楕円形であってもよいし、角型(例えば四角形、五角形など)であってもよい。また、ガス排出弁10を形成する各構成の平面形状も特に限定されない。例えば、上述した各実施形態では、円環状の薄肉部16の表面に略円環状の溝部17が形成され、当該略円環状の溝部17の内側に略真円形の弁体14が形成されている。しかし、四角環状の薄肉部の表面に略円環状の溝部が形成され、当該略円環状の溝部の内側に略真円形の弁体が形成されていてもよい。また、円環状の薄肉部の表面に四角環状の溝部が形成され、当該四角環状の溝部の内側に略四角形の弁体が形成されていてもよい。但し、上述した通り、ガス排出弁の作動圧のバラツキを抑制するという観点では、上述した各実施形態のように、各々の構成の平面形状が略真円形であることが好ましい。
【0055】
以上、ここに開示される技術の実施形態について説明した。しかし、上述の説明は例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、上述の説明にて例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 封口板
10 ガス排出弁
12 基部
14 弁体
16 薄肉部
17 溝部
17a 破断部
17b 残存部
18 凹部
20 電池ケース
22 外装体
22a 長側壁
22b 短側壁
30 正極端子
40 負極端子
50 保護テープ
100 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10