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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113313
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】クローラ走行車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/116 20060101AFI20220728BHJP
   B62D 55/06 20060101ALI20220728BHJP
   B62D 51/02 20060101ALI20220728BHJP
   B60G 1/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B62D55/116
B62D55/06
B62D51/02
B60G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009452
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】519394768
【氏名又は名称】株式会社デザイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】青木 英明
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA09
3D301AB21
3D301BA12
3D301DA97
(57)【要約】
【課題】 最低地上高を高くしてさまざまな不整地への対応力を向上させることができるクローラ走行車両を提供する。
【解決手段】 左右のクローラユニット2a、2bは、クローラフレーム20と、クローラフレーム20に支持された駆動スプロケットと遊輪との間に掛け渡されたクローラベルト27を有し、左側クローラユニット2aは、車体フレーム10とクローラフレーム2との間に設けられるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な左クローラ支持部18aを介して揺動可能に支持され、右側のローラユニット2bは、車体フレーム10とクローラフレーム20との間に設けられれるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な右クローラ支持部18bを介して揺動可能に支持され、クローラユニット2a、2bは、車体フレーム10に連動連結機構を介して上下方向に背反揺動可能に連動連結されている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、前記車体フレームに連結された左右のクローラユニットと、を有し、
前記クローラユニットは、前記車体フレームの前後方向に延びるクローラフレームと、前記クローラフレームの後端に支持された駆動スプロケットと、前端に支持された遊輪と、前記駆動スプロケットと前記遊輪との間に掛け渡されたクローラベルトを有し、
前記車体フレームの前後方向をY軸、このY軸と直交する方向をX軸、XY平面と直交する軸をZ軸とした場合、
左側の前記クローラユニットは、前記車体フレームと前記クローラフレームとの間に設けられるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な左クローラ支持部を介して揺動可能に支持され、
右側の前記クローラユニットは、前記車体フレームと前記クローラフレームとの間に設けられれるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な右クローラ支持部を介して揺動可能に支持され、
前記左右の前記クローラユニットは、前記車体フレームに連動連結機構を介して上下方向に背反揺動可能に連動連結されている、
クローラ走行車両。
【請求項2】
前記車体フレームは、クローラ走行車両の前後方向に延びる左右のサイド部材と、左右のサイド部材の前部側に亘る第1クロス部材と、左右のサイド部材の後端部に亘る第2クロス部材とを有し、
前記左のサイド部材と左のクローラユニットとの間に前記左クローラ支持部が設けられ、前記右のサイド部材と右のクローラユニットとの間に前記右クローラ支持部が設けられ、
前記第1クロス部と前記左右のクローラユニットの間に前記連動連結機構が設けられる、
請求項1に記載のクローラ走行車両。
【請求項3】
前記連動連結機構は、前記第1クロス部材の中央部に設けられ、前記クローラ走行車体の前後方向に延びる支軸と、前記支軸にボールジョイントを介して揺動可能に支持された天秤アームと、前記天秤アームの左右の遊端部と前記左右のクローラフレームとを連結するボールジョイントとを有する、
請求項2に記載のクローラ走行車両。
【請求項4】
前記左クローラ支持部及び右クローラ支持部は、前記クローラフレームに固定された第1支持部にX軸回りに回転自在に支持される第1支軸と、この第1支軸と直交する第2支軸と、前記サイド部材に固定され前記第2支軸をZ軸回りに回転自在に支持する第2支持部とを有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のクローラ走行車両。
【請求項5】
前記左クローラ支持部及び前記右クローラ支持部は、前記クローラフレームの前後方向の中央部に設けられる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のクローラ走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クローラ走行車両に関し、山林地などの不整地での走行に適したクローラ走行車両であり、乗員が搭乗して運転操作を行う不整地走行車両、荷物を積載して走行する運搬車両などに用いて好適なクローラ走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内の森林は、持続可能な環境資源として育成、維持、管理していくことが求められている。しかし、その多くが急峻で起伏が多い山岳にある。このような急峻で起伏が多い山林などの不整地での移動手段が求められている。
【0003】
山林地などの不整地での走行に適したクローラ走行車両(不整地走行車両)が特許文献1に提案されている。上記特許文献1に開示された不整地走行車両は、車体フレームと、前記車体フレームに連結された左右のクローラと、立ち乗り可能な搭乗部と、前記車体フレームから上方に延びるハンドルとを備え、前記車体フレームは、車体フレームを貫通して左右方向に延びる第1支軸を介して前記クローラを上下揺動可能に支持するクローラ支持部と、左右の前記クローラを上下方向に背反揺動可能に連動連結する連動連結機構とを有し、左右の前記クローラは、それらのトラックフレームの後部側に備えられた第1連結部が前記第1支軸を介して前記車体フレームに連結され、かつ、前記トラックフレームの前部側に備えられた第2連結部が前記連動連結機構を介して前記車体フレームに連結されている。
【0004】
上記の構成によれば、例えば、左右いずれか一方のクローラが不整地の隆起部などに乗り上げるときは、そのときの乗り上げに応じて、その一方のクローラが車体フレームに対して第1支軸を支点にして上昇揺動するとともに、反対側の他方のクローラが車体フレームに対して第1支軸を支点にして下降揺動する。また、左右いずれか一方のクローラが不整地の沈降部などに入り込むときは、そのときの入り込みに応じて、一方のクローラが車体フレームに対して第1支軸を支点にして下降揺動するとともに、反対側の他方のクローラが車体フレームに対して第1支軸を支点にして上昇揺動する。
【0005】
このように、左右いずれか一方のクローラが隆起部などに乗り上げるときや沈降部などに入り込むときには、左右のクローラが車体フレームに対して背反的に上下揺動することから、各クローラの車体フレームに対する上下揺動を抑制しながら、一方のクローラが隆起部などに乗り上げることや沈降部などに入り込むことに起因した車体の左右傾斜を抑制することができる。
【0006】
ところで、クローラ走行車両においては、最低地上高が高くなればさまざまな不整地への対応力があがる。すなわち、車両の下に潜り込む隆起部などの高さに余裕が生まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-59416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1に記載のクローラ走行車両においては、車体フレームを貫通して左右方向に延びる第1支軸を介して前記クローラを上下揺動可能に支持している。このため、左右のクローラ間の車体フレームの下方に第1支軸が位置することになり、最低地上高が第1支軸により低くなる。
【0009】
この発明は、最低地上高を高くしてさまざまな不整地への対応力を向上させることができるクローラ走行車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、クローラ走行車両の最低地上高について検討した。本発明者は、左右のクローラを上下方向に背反揺動可能に連動連結したクローラ走行車両において、左右のクローラを上下揺動可能に支持する構造について、車体フレームを貫通する支軸に変わる構成を考えた。
【0011】
車体フレームを貫通する支軸を無くすことで、車体フレームの底部近傍まで最低地上高を上げることができる。そこで、本発明者は、車体フレームの左右にそれぞれクローラを上下揺動可能に支持するクローラ支持部を設けることを考えた。
【0012】
クローラ走行車両において、左右のクローラの駆動速度が異なるときには、クローラを上下揺動可能に支持するクローラ支持部に回転モーメントが加わる。この回転モーメントに対応するためには、クローラ支持部の強度を大きくする必要がある。このためクローラ支持部を大型化するなどの対策が必要となる。
【0013】
本発明者は、支持部に加わる回転モーメントに対してクローラ支持部を大型化することなく対応する構成について鋭意検討した。本発明者は、鋭意検討の結果、以下のような構成に想到した。
【0014】
この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両は、車体フレームと、前記車体フレームに連結された左右のクローラユニットと、を有し、前記クローラユニットは、前記車体フレームの前後方向に延びるクローラフレームと、前記クローラフレームの後端に支持された駆動スプロケットと、前端に支持された遊輪と、前記駆動スプロケットと前記遊輪との間に掛け渡されたクローラベルトを有し、前記車体フレームの前後方向をY軸、このY軸と直交する方向をX軸、XY平面と直交する軸をZ軸とした場合、左側の前記クローラユニットは、前記車体フレームと前記クローラフレームとの間に設けられるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な左クローラ支持部を介して揺動可能に支持され、右側の前記クローラユニットは、前記車体フレームと前記クローラフレームとの間に設けられれるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な右クローラ支持部を介して揺動可能に支持され、前記左右の前記クローラユニットは、前記車体フレームに連動連結機構を介して上下方向に背反揺動可能に連動連結されている。
【0015】
この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両によれば、前記クローラユニットの駆動状態により加わるZ軸回りの回転モーメントに対して左クローラ支持部または右クローラ支持部により前記クローラユニットがZ軸回りに回転することにより、前記左クローラ支持部または右クローラ支持部に加わる回転モーメントに基づく力は削減され、前記左クローラ支持部及び右クローラ支持部を大型化することなく回転モーメントに対応することができる。
【0016】
他の観点によれば、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記車体フレームは、クローラ走行車両の前後方向に延びる左右のサイド部材と、左右のサイド部材の前部側に亘る第1クロス部材と、左右のサイド部材の後端部に亘る第2クロス部材13とを有し、前記左のサイド部材と左のクローラユニットとの間に前記左クローラ支持部が設けられ、前記右のサイド部材と右のクローラユニットとの間に前記右クローラ支持部が設けられ、前記第1クロス部と前記左右のクローラユニットの間に前記連動連結機構が設けられる。
【0017】
他の観点によれば、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記連動連結機構は、前記第1クロス部材の中央部に設けられ、前記クローラ走行車体の前後方向に延びる支軸と、前記支軸にボールジョイントを介して揺動可能に支持された天秤アームと、前記天秤アームの左右の遊端部と前記左右のクローラフレームとを連結するボールジョイントとを有する。
【0018】
上記の構成によれば、前記天秤アームの左右の遊端部と前記クローラフレームとをボールジョイントを介して連結することにより、前記天秤アームにより前記クローラユニットの左右の振れを抑制している。
【0019】
他の観点によれば、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記左クローラ支持部及び右クローラ支持部は、前記クローラフレームに固定された第1支持部にX軸回りに回転自在に支持される第1支軸と、この第1支軸と直交する第2支軸と、前記サイド部材に固定され前記第2支軸をZ軸回りに回転自在に支持する第2支持部とを有する。
【0020】
他の観点によれば、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記左クローラ支持部及び前記右クローラ支持部は、前記クローラフレームの前後方向の中央部に設けられる。
【0021】
上記の構成によれば、クローラ走行車両のどちらを前方にして運転を行っても同じクローラ挙動が得られる。
【0022】
本明細書では、この発明に係るクローラ走行車両の実施形態について説明する。
【0023】
以下の説明では、この発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくてもこの発明を実施できることが明らかである。
【0024】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0025】
この発明のクローラ走行車両によれば、最低地上高を高くすることができ、さまざまな不整地への対応力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す斜視図である。
図2図2は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す平面図である。
図3図3は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す側面図である。
図4図4は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す正面図である。
図5図5は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す背面図である。
図6図6は、図2のVI-VI線断面図である。
図7図7は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラユニット支持部分を示す拡大斜視図である。
図8図8は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラユニット支持部分を示す拡大断面図である。
図9図9は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の左クローラユニットが下がっている状態を示す斜視図である。
図10図10は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の左クローラユニットが下がっている状態を示す正面図である。
図11図11は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の右クローラユニットが上がっている状態を示す斜視図である。
図12図12は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の右クローラユニットが上がっている状態を示す側面図である。
図13図13は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両を運搬車両に適用した例を示す正面図である。
図14図14は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両を運搬車両に適用した例を示す側面図である。
図15図15は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両を運搬車両に適用した他の例を示す斜視図である。
図16図16は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両を不整地走行車両に適用した例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0028】
以下、図中の矢印Fは、クローラ走行車両の前方向を示す。図中のRRは、クローラ走行車両の後方向を示す。図中の矢印Uは、クローラ走行車両の上方向を示す。図中の矢印Rは、クローラ走行車両の左方向、図中の矢印Lは右方向を示す。また、前後左右の方向は、例えば、クローラ走行車両を乗員が搭乗する不整地走行車両に適用した場合、それぞれ車両を運転する乗員から見た場合の前後左右の方向を意味する。
【0029】
以下の説明においては、クローラ走行車両のクローラ走行機構部を中心に説明する。乗員が搭乗して運転操作を行う不整地走行車両においては、クローラ走行機構部の上部に乗員が座る座席や乗員が立ち乗りするステップなどが設けられる。また、荷物を積載して走行する運搬車両においては、クローラ走行機構部の上部に荷台などが設けられる。
【0030】
図1は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す斜視図、図2は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す平面図、図3は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す側面図、図4は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す正面図、図5は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラ走行機構部を示す背面図、図6は、図2のVI-VI線断面図、図7は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラユニット支持部分を示す拡大斜視図、図8は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両のクローラユニット支持部分を示す拡大断面図である。
【0031】
図1図5に示すように、この一実施形態におけるクローラ走行車両100は、クローラ走行車体1と、左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bとを有する。図1図5は、クローラ走行車両100として不整地車両のハンドル部、座席などを省略している。不整地走行車両は、クローラ走行車体1上に、ハンドル部と座席などが設けられている。尚、運搬車両を構成する場合には、クローラ走行車体1上に搭乗部3の代わりに荷台が設けられる。
【0032】
左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bは、駆動スプロケット22により、左右独立して駆動される。左右それぞれの駆動スプロケット22は、それぞれの電動モータ21により駆動される。この実施形態においては、電動モータ21に直接駆動スプロケット22が取り付けられている。
【0033】
クローラ走行車体1は、車体フレーム10を有する。左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bは、それぞれクローラ走行車体1の車体フレーム10に対して左右クローラ支持部18bを介して回転自在に支持されている。左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bは、クローラ走行車体1前部の車体フレーム10に取り付けられた左右揺動リンク17を介して懸架されている。これにより、段差乗り越え性や不整地接地性を高くし、凹凸の激しい不整地走行性を確保している。
【0034】
図1図5に示すように、この一実施形態に係るクローラ走行車両100は、クローラ走行車体1の骨組みを形成する車体フレーム10と、車体フレーム10に連結された左クローラユニット2a及び右クローラと2bと、立ち乗り可能な搭乗部3と、を備えている。
【0035】
図4及び図5に示すように、車体フレーム10は、クローラ走行車両100の前後方向に延びる左右のサイド部材11と、左右のサイド部材11の前部側に亘る第1クロス部材12と、左右のサイド部材11の後端部に亘る第2クロス部材13とが溶接されることで、平面視で略矩形形状に形成されている。
【0036】
図1図3に示すように、左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bは、それぞれクローラ走行車体1の前後方向に延びるクローラフレーム20、クローラフレーム20の後端部に電動モータ21を介して支持された駆動スプロケット22、クローラフレーム20の前端部にテンション機構(図示せず)を介して支持されたテンション式の遊輪23、クローラフレーム20の前後中間部にイコライザアーム24を介して支持された前後の転輪25、26、駆動スプロケット22と遊輪23と前後の転輪25,26とに掛け渡されたクローラベルト27などを有している。各電動モータ21は、駆動スプロケット22に取り付けられたインホイールモータであり、それらの内部にはインバータ(図示せず)と減速機構(図示せず)などが備えられている。
【0037】
図1図3に示すように、この実施形態においては、車体フレーム10の前後方向をY軸、このY軸と直交する方向をX軸、XY平面と直交する軸をZ軸とする。
【0038】
図6図8に示すように、車体フレーム10とクローラフレーム20との間には、X軸回り及びZ軸回りに回転自在な左クローラ支持部18a、右クローラ支持部18bが設けられている。
【0039】
左側のクローラユニット2aは、車体フレーム10の左側のサイド部材11とクローラフレーム20との間に設けられるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な左クローラ支持部18aを介して車体フレーム10に対して揺動可能に支持される。
【0040】
すなわち、クローラフレーム20が車体フレーム10に対してX軸回り及びZ軸回りに回転自在に支持されることにより、クローラユニット2aが車体フレーム10に揺動可能に支持される。これにより、クローラユニット2aは、車体フレーム10に対して、上下方向及び左右方向に移動自在に支持される。
【0041】
また、クローラユニット2aの駆動状態により加わるZ軸回りの回転モーメントに対して左クローラ支持部18aによりクローラユニット2aがZ軸回りに回転することにより、左クローラ支持部18aに加わるZ軸回りの回転モーメントに基づく力は無くなり、左クローラ支持部18aに加わる回転モーメントはY軸回りの回転モーメントのみになる。このため、左クローラ支持部18aに加わる回転モーメントは大幅に削減され、左クローラ支持部18aを大型化することなく回転モーメントに対応することができる。
【0042】
この実施形態においては、左クローラ支持部18aは、クローラフレーム20の前後方向(Y軸)の中央部に設けられる。ここで、中央部とは、クローラフレーム20のY軸方向の寸法の中央とその近傍を意味する。さらに中央部とは、機械的寸法の中央だけでなく、クローラユニット2aの全体の重量配分を考慮して重心位置を中央部としてもよい。
【0043】
左クローラ支持部18aは、クローラフレーム20の前後方向(Y軸)の中央部を貫通して車体フレーム10の左右方向、すなわち、X軸方向に延びるスリーブ183aを有する。スリーブ183aはクローラフレーム20に固定されている。スリーブ183aは、クローラフレーム20から左側にクローラベルト27の中心部近傍まで延びている。
【0044】
スリーブ183aには、一対のボールベアリング184aが嵌め込まれ、このボールベアリング184aにより、X軸方向にスリーブ183aを超えて左側のサイド部材11方向へ延びる第1支軸181aを回転自在に支持する。
【0045】
第1支軸181aのサイド部材11側の端部には、第1支軸181aと直交する方向に第2支軸182aが設けられている。この実施形態においては、第2支軸182aの基部182a1には、第1支軸181aが嵌まり込む孔部182cが設けられている。また、第1支軸の181aの先端にはねじ部が設けられており、第2支軸182aの孔部181cに第1支軸181aを嵌め込み、ねじ部にナット181dを締め付け、第1支軸181aと第2支軸182aが一体化される。この実施形態においては、第1支軸181aと第2支軸182aは別部材で構成しているが、鋳造などにより一部材で形成してもよい。
【0046】
左側のサイド部材11に、左の横外方に張り出す一対の左側ブラケット186aが設けられる。この左側ブラケット186aに下方部に鍔部を設けられたスリーブ185aが装着される。上記第2支軸182aは、段付き形状に形成され、第1支軸181aが嵌め込まれる基部182a1とその基部182a1より小径で上記スリーブ185a内に回動自在に挿入される回転部182a2とを有する。基部182a1の長さにより、最低地上高を設定することができる。すなわち、基部182a1の長さを長くすれば最低地上高が高くなる。所望とする最低地上高に対応してこの基部182a1の長さが決められる。
【0047】
基部182a1とスリーブ185aのつば部との間に滑りワッシャ187が挿入され、第2支軸182aは、スリーブ185aに対して回転自在に支持される。第2支軸182aの先端にはねじ部が設けられ、このねじ部にナット188を締め付け、スリーブ185aを介して第2支軸182aがサイド部材11に対してZ軸方向に回転自在に装着される。このようにして、左クローラ支持部18aは、車体フレーム10に対してX軸回り及びZ軸回りに回転自在にクローラフレーム20を支持する。
【0048】
同様にして、右側のクローラユニット2bは、車体フレーム10の右側のサイド部材11とクローラフレーム20との間に設けられるX軸回り及びZ軸回りに回転自在な左クローラ支持部18aを介して車体フレーム10に対して揺動可能に支持される。これにより、クローラユニット2bは、車体フレーム10に対して、上下方向及び左右方向に移動自在に支持される。
【0049】
また、クローラユニット2bの駆動状態により加わるZ軸回りの回転モーメントに対して右クローラ支持部18bによりクローラユニット2bがZ軸回りに回転することにより、右クローラ支持部18bに加わるZ軸回りの回転モーメントに基づく力は無くなり、右クローラ支持部18bに加わる回転モーメントはY軸回りの回転モーメントのみになる。このため、右クローラ支持部18bに加わる回転モーメントは大幅に削減され、右クローラ支持部18bを大型化することなく回転モーメントに対応することができる。
【0050】
右クローラ支持部18bは、クローラフレーム20の前後方向(Y軸)の中央部に設けられる。右クローラ支持部18bは、クローラフレーム20の前後方向(Y軸)の中央部を貫通して車体フレーム10のX軸方向に延びるスリーブ183bが固定されている。スリーブ183bは、クローラフレーム20から右側にクローラベルト27の中心部近傍まで延びている。
【0051】
スリーブ183bには、一対のボールベアリング184bが嵌め込まれ、スリーブ183bは、右側のサイド部材11方向へ延びる第1支軸181bを回転自在に支持する。
【0052】
第1支軸181bのサイド部材11側の端部には、第1支軸181bと直交する方向に第2支軸182aが設けられている。第1支軸181bと第2支軸182bは、ナット182dを締め付けて一体化される。
【0053】
右側のサイド部材11の中央部に、右の横外方に張り出す一対の右側ブラケット186bが設けられる。この左側ブラケット186aに下方部に鍔部を設けられたスリーブ185bが装着される。上記第2支軸182bは、第1支軸181bが嵌め込まれる基部182b1とその基部182b1より小径で上記スリーブ185b内に回動自在に挿入される回転部182abとを有する。
【0054】
基部182b1とスリーブ185bのつば部との間に滑りワッシャ187が挿入され、第2支軸182aは、スリーブ185bに対して回転自在に支持される。第2支軸182aの先端にbねじ部が設けられ、このねじ部にナット188bを締め付け、スリーブ185bを介して第2支軸182bがサイド部材11に対してZ軸方向に回転自在に装着される。このようにして、左クローラ支持部18aは、車体フレーム10に対してX軸回り及びZ軸回りに回転自在にクローラフレーム20を支持する。
【0055】
車体フレーム10は、左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bを上下方向に背反揺動可能に連動連結する左右揺動リンク17を有している。
【0056】
図2及び図3に示すように、左右揺動リンク17は、クローラ走行車体1の前後方向に延びる支軸70と、車体フレーム10の第1クロス部材12に支軸70を介して上下方向に天秤揺動可能に支持された天秤アーム71と、天秤アーム71における左右の遊端部と、左右のクローラフレーム20と連結するボールジョイント71bとを有している。
【0057】
天秤アーム71は、左右方向の中央部が頂点となる上に凸の曲線状に形成され、天秤アーム71の中央部が第1クロス部材12に天秤揺動可能に支持される。天秤アーム71は、ボールジョイント71aを介して支軸70に支持されている。天秤アーム71は、中央部を支点として支軸70を介して車体フレーム10と連結されている。
【0058】
上記したように、クローラユニット2a、2bは、車体フレーム10に対して、X軸回り及びZ軸回りに回転自在に支持部18a、18bにより車体フレーム10に連結されている。Z軸回りの回転により、クローラユニット2a、2bは、左右に振れることになる。そこで、この実施形態においては、天秤アーム71における左右の遊端部とクローラフレーム20とをボールジョイント71bを介して直接連結している。天秤アーム71の左右の遊端部とクローラフレーム20とをボールジョイント71bを介して直接連結することにより、天秤アーム71によりクローラユニット2a、2bの左右の振れを抑制している。
【0059】
左右のクローラユニット2a、2bは、車体フレーム10に天秤アーム71などからなる連動連結機構を介して上下方向に背反揺動する。この際天秤アーム71は、水平方向から斜め上下方向に揺動する。このため左右の平面視の長さは短くなるので、左右クローラ支持部18bのZ軸回りの回転により、クローラユニット2a、2bの天秤アーム71が設けられている側が内側に若干向き、平面視の長さが短くなった分を担保している。
【0060】
図5に示すように、車体フレーム10は、各電動モータ21に電力を供給するバッテリ(図示しない)が搭載されるバッテリ搭載部80を有している。バッテリ搭載部80は、車体フレーム10における左クローラユニット2aと右クローラユニット2bの中間位置に備えられている。
【0061】
これにより、比較的重量の大きいバッテリを、車体フレーム10における左クローラユニット2aと右クローラユニット2bの中間位置、つまり、クローラ走行車両100の左右中央に搭載することができる。その結果、クローラ走行車両100の左右バランスを良好にすることができ、クローラ走行車体1の安定性を向上させることができる。
【0062】
この実施形態においては、左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bは、左右のそれぞれの電動モータ21にて独立駆動される電動式に構成されている。後述するように、リモートコントロール装置あるいはハンドルなどに設けられた運転操作部、例えばジョイスティック(図示しない)の指示により電動モータ21の駆動が制御される。これにより、クローラ走行車両100は、左クローラユニット2aのクローラベルト27及び右クローラユニット2bのクローラベルト27が正回転方向に等速駆動されることで前進方向に直進し、左クローラユニット2aのクローラベルト27及び右クローラユニット2bのクローラベルト27が逆回転方向に等速駆動されることで後進方向に直進する。
【0063】
クローラ走行車両100は、左クローラユニット2aのクローラベルト27及び右クローラユニット2bのクローラベルト27が正回転方向に不等速駆動されることにより、前進方向の左右どちらかに旋回する。左クローラユニット2aのクローラベルト27及び右クローラユニット2bのクローラベルト27が逆回転方向に不等速駆動されることにより、後進方向の左右どちらかに旋回する。クローラ走行車両100は、左クローラユニット2aのクローラベルト27及び右クローラユニット2bのクローラベルト27の一方のクローラベルト27が駆動停止された状態で他方のクローラベルト27が駆動されることでピボット旋回し、左クローラユニット2aのクローラベルト27及び右クローラユニット2bのクローラベルト27が正回転方向と逆回転方向とに等速駆動されることでスピン旋回する。
【0064】
この旋回時には、左クローラ支持部18aまたは右クローラ支持部18bに対してZ軸回りの回転モーメントが加わることになるが、左クローラ支持部18a及び右クローラ支持部18bはZ軸回りに回転可能に構成されているので、左クローラ支持部18aまたは右クローラ支持部18bに加わるZ軸回りの回転モーメントに基づく力は無くなり、左クローラ支持部18aまたは右クローラ支持部18bに加わる回転モーメントはY軸回りの回転モーメントのみになる。このため、左クローラ支持部18aまたは右クローラ支持部18bに加わる回転モーメントは大幅に削減することが可能となり、強度を確保するために左クローラ支持部18a及び右クローラ支持部18bの大型化を回避することができる。
【0065】
以上の構成により、このクローラ走行車両100は、その車体フレーム10に前述した左クローラ支持部8a及び右クローラ支持部18bと左右揺動リンク17とを有することから、例えば、車体右側の右クローラユニット2bが不整地の隆起部などに乗り上げるときは、そのときの乗り上げに応じて、車体右側の右クローラユニット2bが車体フレーム10に対して右クローラ支持部18bの第1支軸181bを支点にして上昇揺動するとともに、車体左側の左クローラユニット2aが車体フレーム10に対して左クローラ支持部18aの第1支軸181aを支点にして下降揺動する(図9図12参照)。
【0066】
また、例えば、車体左側の左クローラユニット2aが不整地の沈降部などに入り込むときは、そのときの入り込みに応じて、車体左側の左クローラユニット2aが車体フレーム10に対して第1支軸181aを支点にして下降揺動するとともに、車体右側の右クローラユニット2bが車体フレーム10に対して第1支軸181bを支点にして上昇揺動する。
【0067】
図9は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の左クローラユニットが下がっている状態を示す斜視図、図10は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の左クローラユニットが下がっている状態を示す正面図、図11は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の右クローラユニットが上がっている状態を示す斜視図、図12は、この発明の一実施形態に係るクローラ走行車両の右クローラユニットが上がっている状態を示す側面図である。
【0068】
図9図12に示すように、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bの一方が隆起部などに乗り上げるときや沈降部などに入り込むときには、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bが車体フレーム10に対して背反的に上下揺動することから、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bの車体フレーム10に対する上下揺動を抑制しながら、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bの一方が隆起部などに乗り上げることや沈降部などに入り込むことに起因したクローラ走行車体1の左右傾斜を抑制することができる。その結果、起伏が多い山林地などの不整地での走破性を高めることができるとともに、搭乗部3の乗員に安心感を与えることができる。また、運搬車両として用いた場合も安定性が向上する。
【0069】
上記した実施形態においては、左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bをクローラフレーム20の前後方向の中央部近傍に設けた左クローラ支持部18a及び右クローラ支持部18bで揺動自在に支持している。このため、運搬車両に適用した場合には、クローラ走行車体1のどちらを前方にして運転を行っても同じクローラ挙動が得られる。この実施形態においては、駆動スプロケット22側を後側で説明していたが、斜面に応じて駆動スプロケット22側を前方にして運転しても差し支えない。
【0070】
次に、この実施形態のクローラ走行車両100を運搬車両に適用した例を図13図15に従い説明する。
【0071】
図13図15に示すように、この一実施形態における運搬車両100aは、クローラ走行車体1と、左クローラユニット2a及び右クローラユニット2bと、荷台3aとを有する。荷台3aは支持部5を介してクローラ走行車体1に対して前後左右に移動可能に取り付けられている。
【0072】
クローラ走行車体1は、前述した構成と同じであり、同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0073】
この一実施形態における運搬車両100aは、車体フレーム10に前後左右方向に移動自在に荷台3aが支持部5によって取り付けられている。荷台3aは、前後アクチュエータ55及び左右アクチュエータ56の駆動により、斜面に対応して前後左右に移動され、荷台3aの重心が斜面の山側の位置に固定することができる。これにより、斜路走行の必要要件を満足しながら、安定性のよい走行を行うことができる。
【0074】
また、荷台3aを前後左右に支持する支持部5を、車体フレーム10に取り付けられた第1レール51と、第1レール51に摺動可能に取り付けられた第1スライダ部53と、第1レール51と直交して第1スライダ部53に取り付けられた第2レール52と、第2レール52に摺動可能に取り付けられるとともに荷台3aに取り付けられる第2スライダ部54とで構成する。
【0075】
第1レール51は、車体フレーム10の前後方向の中央部を頂点とする上に凸の曲線状に形成され、第2レール52は、車体フレーム10の左右方向の中央部を頂点とする上に凸の曲線状に形成されることにより、荷台3aは、荷物を載置する台座部30の上面の水平面が地上の水平面に対して平行若しくは山側に少し傾く位置に保つことができる。この結果、斜路走行の必要要件を満足しながら、安定性のよい走行を行うことができる。以下、この一実施形態に係る運搬車両100aを図面に従いさらに説明する。
【0076】
図13図15に示すように、この一実施形態に係る運搬車両100aは、車体1の骨組みを形成する車体フレーム10と、車体フレーム10に連結された左クローラユニット2a及び右クローラと2bと、荷台3aと、荷台3aを車体フレーム10に前後左右移動自在に支持する支持部5とを備えている。
【0077】
荷台3aは、台座部30と、台座部30の左右に取り付けられた枠パイプ31と、枠パイプ31の後部をつなぐ水平パイプ32を有する。台座部30の上面は、荷台3aの水平面を構成し、台座部30の上面に荷物が載置される。荷台3aの台座部30の下面に支持部5が取り付けられ、支持部5が車体フレーム10に取り付けられる。
【0078】
荷台3aの後方にステップを設け、操作者が荷台3aの台座部30上に乗るときの足掛けとして用いてもよい。また、このステップに操作者が乗ることも可能である。
【0079】
車体フレーム10の両端部には、前後に延びる支持部固定部材50が固定されている。この支持部固定部材50に第1レール51が固定される。第1レール51は、この実施形態においては、車体1の前後方向に延びる左側レール部材51a及び右側レール部材51bの一対のレール部材で構成される。
【0080】
左側のサイド部材11上に左側の支持部固定部材50が固定され、この支持部固定部材50に左側レール部材51aが固定される。右側のサイド部材11上に右側の支持部固定部材50が固定され、この支持部固定部材50に右側レール部材51bが固定される。
【0081】
第1レール51の左側レール部材51aに2個の第1スライダ部53が摺動可能に取り付けられている。同様に、右側レール部材51bに2個の第1スライダ部53が摺動可能に取り付けられている。
【0082】
第1レール51と直交して第1スライダ部53に第2レール52が取り付けられる。この実施形態においては、車体1の左右方向に延びる前側レール部材52a及び後側レール部材52bの一対のレール部材で構成される。
【0083】
第2レール52の前側レール部材52aに3個の第2スライダ部54が摺動可能に取り付けられている。同様に、後側レール部材52bに3個の第2スライダ部54が摺動可能に取り付けられている。
【0084】
第2スライダ部54は取付部材を介して荷台3aの台座部30の下面に取り付けられる。これにより、荷台3aは、車体1に対して前後左右に移動自在に支持される。
【0085】
この実施形態においては、左側レール部材51a及び右側レール部材51bは、車体1の前後方向の中央部を頂点とする上に凸の曲線状、この実施形態においては円弧状に形成されている。また、前側レール部材52a及び後側レール部材52bは、車体1の左右方向の中央部を頂点とする上に凸の曲線状、この実施形態においては円弧状に形成されている。これらレール部材の円弧中心は地表より下に位置するように構成している。
【0086】
第1スライダ部53が左側レール部材51a及び右側レール部材51bに前後方向に移動することにより、第1スライダ部53に取り付けられた前側レール部材52a及び後側レール部材52bが前後方向に移動する。荷台3aは、前側レール部材52a及び後側レール部材52bに取り付けられた第2スライダ部54に取付部材52cを介して取り付けられている。このため、第1スライダ部53は前後方向の移動により、荷台3aが前後方向に移動することになる。
【0087】
また、第2スライダ部54が前側レール部材52a及び後側レール部材52bに左右方向に移動することにより、第2スライダ部54に取り付けられた荷台3aが左右方向に移動する。
【0088】
この実施形態においては、運搬車両100aは、斜面に対応して荷台3aが前後左右に移動する。例えば、降坂走行の場合には、荷台3aは、山側、すなわち後側に移動し、荷台3aの重心が斜面の山側に位置する。左側レール部材51a及び右側レール部材51bは、車体1の前後方向の中央部を頂点とする円弧状に形成されているので、荷台3aが山側に移動すると、荷台3aは、後側の移動等共に後ろ側の荷台3aが車体1側に近づくことになる。これにより、荷台3aの重心が斜面に近づくように移動して、重心位置が山側となり、運搬車両100aの安定性がより向上する。これにより、荷台3aは、荷物を載置する台座部30の上面の水平面が地上の水平面に対して平行若しくは山側に少し傾く位置に保つことができる。
【0089】
例えば、斜面横行走行の場合には、荷台3aは、斜面の山側のほうへ左または右に移動し、荷台3aの重心が斜面の山側に位置する。前側レール部材52a及び後側レール部材52bは、クローラ走行車体1の左右方向の中央部を頂点とする円弧状に形成されているので、荷台3aが山側に移動すると、荷台3aは、さらにクローラ走行車体1側に近づくことになる。これにより、荷台3aの重心が斜面に近づくように移動して、重心位置が山側となり、運搬車両100aの安定性がより向上する。そして、荷台3aの水平面と直交する軸方向Cが重力軸に沿った方向に沿って固定される。これにより、荷台3aは、荷物を載置する台座部30の上面の水平面が地上の水平面に対して平行若しくは山側に少し傾く位置に保つことができる。
【0090】
この運搬車両100aは、その車体フレーム10に前述した左右クローラ支持部18bと左右揺動リンク17とを有することから、例えば、車体左側の左クローラユニット2aが不整地の隆起部などに乗り上げるときは、そのときの乗り上げに応じて、車体左側の左クローラユニット2aが車体フレーム10に対して支軸15aを支点にして上昇揺動するとともに、車体右側の右クローラユニット2bが車体フレーム10に対して支軸15bを支点にして下降揺動する。
【0091】
また、例えば、車体左側の左クローラユニット2aが不整地の沈降部などに入り込むときは、そのときの入り込みに応じて、車体左側の左クローラユニット2aが車体フレーム10に対して支軸15aを支点にして下降揺動するとともに、車体右側の右クローラユニット2bが車体フレーム10に対して支軸15bを支点にして上昇揺動する。
【0092】
このように、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bの一方が隆起部などに乗り上げるときや沈降部などに入り込むときには、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bが車体フレーム10に対して背反的に上下揺動することから、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bの車体フレーム10に対する上下揺動を抑制しながら、左クローラユニット2aまたは右クローラユニット2bの一方が隆起部などに乗り上げることや沈降部などに入り込むことに起因した車体1の左右傾斜を抑制することができる。その結果、起伏が多い山林地などの不整地での走破性を高めることができる。
【0093】
この実施形態においては、操作装置(図示しない)に取り付けられた操作部により、荷台3aを前後または左右に移動させる指示を出す。この実施形態においては、操作部は、例えば、ジョイスティックで構成されている。ジョイスティックの操作により、制御装置(図示しない)に信号が与えられ、この指示信号に基づいて、制御装置が前後アクチュエータ55、左右アクチュエータ56の駆動を制御し、荷台3aの前後左右の移動を制御する。
【0094】
荷台3aを前後または左右方向に所定量移動させた状態で荷台3aの移動が停止する。これにより、荷台3aの重心が斜面の山側の位置に固定することができ、斜路走行の必要要件を満足しながら、安定性のよい走行を行うことができる。
【0095】
そして、荷台3aは、荷物を載置する台座部30の上面の水平面が地上の水平面に対して平行若しくは山側に少し傾く位置に保つことができる。この結果、斜路走行の必要要件を満足しながら、運搬車両100aは、斜面に対して安定性のよい走行を行うことができる。
【0096】
上述したように、この実施形態においては、操作部として、ジョイスティックで構成した場合、ジョイスティックを前後または左右に移動させた場合には、荷台3aは前後または左右に所定量移動した状態で停止させることができる。ジョイスティックを斜め方向に移動させた場合には、荷台3aを前後及び左右に所定量移動させた状態で停止させることができる。
【0097】
このように、ジョイスティックの動作により、荷台3aを前後方向または左右方向若しくは前後左右方向に所定量移動した状態で移動を停止させることができる。これにより、運搬車両100aは、どのような走行状態においても安定した走行姿勢をとることができる。
【0098】
なお、クローラ走行車体1に傾斜センサを設け、傾斜センサにより、クローラ走行車体1の前後左右の傾斜を判断し、制御装置が荷台3aを前後または左右に移動させるように制御してもよい。
【0099】
図13図15に示すように、車体フレーム10は、左側電動モータ21aと、右側電動モータ21bと左右アクチュエータ56と前後アクチュエータ55に電力を供給するバッテリ(図示しない)が搭載されるバッテリ搭載部を有している。バッテリ搭載部6は、車体フレーム10における左クローラユニット2aと右クローラユニット2bの中間位置に備えられている。
【0100】
制御装置は、マイクロプロセッサなどを備えた電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを格納したメモリなどによって構成されている。制御装置は、バッテリとともに、車体フレーム10の左右中間位置に備えられている。
【0101】
操作装置と制御装置とが無線または通信ケーブルにより接続される操作装置から運搬車両100aの動作を制御する制御指令が制御装置に与えられる。操作装置は、例えば、ジョイスティックを備え、操作者がジョイスティックを操作し、操作指令を出力する。
【0102】
制御装置は、操作装置の操作に基づく操作指令に応じて左側電動モータ21a及び右側電動モータ21bの回転方向と回転速度とを制御することで、運搬車両100aの車速制御と前後進切り替え制御とステアリング制御などを行う。さらに、制御装置は、操作装置の操作指令に基づき、左右アクチュエータ56と前後アクチュエータ55の動作を制御し、荷台3aを前後方向または左右方向に移動させる。
【0103】
上記した運搬車両100aは、遠隔操作により駆動制御を行うように構成できる。例えば、図15に示す運搬車両100aは、遠隔操作を可能にしたものである。この例においては、例えば、遠隔操作のための走行情報をタブレット装置により入手し、WiFi(登録商標)などの無線LANにより、離れた場所にいる操縦者の操作部に送るように構成することができる。
【0104】
タブレット装置は、運搬車両100aの前後の情報を得るためのカメラ、障害物を検出するためのLiDARスキャナ、3軸ジャイロ等を備えている。
【0105】
図15に示す運搬車両100aにおいては、荷台3aの前後の下部にタブレット装置を収容する収容部30bが取り付けられている。この収容部30bにタブレット装置を収容することで、運搬車両100aの制御装置にタブレット装置を介して操縦者からの操作指示を与えるように構成することができる。
【0106】
また、操作部もタブレット装置により構成し、運搬車両100aに搭載したタブレット装置により撮像した画像を表示するように構成できる。そして、表示された画像及びLiDARスキャナの情報により、運搬車両100aの動作の指示を与えることができる。
【0107】
この実施形態の運搬車両100aは、前後にタブレット装置を収容しているので、前後を逆にしても問題なく走行できる。
【0108】
次に、この実施形態のクローラ走行車両100を立ち乗り可能な不整地走行車両に適用した例を図16に従い説明する。クローラ走行車体1は、前述した構成と同じであり、同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0109】
不整地走行車両は、クローラ走行車体1上に、ハンドル部4と搭乗部3に座席3dなどが設けられている。この一実施形態においては、車体フレーム10に前後左右方向に角度自在にハンドルポスト43が支持部500によって取り付けられている。ハンドルポスト43は、ハンドルポスト移動制御手段60により、前記ハンドルポスト43を重力軸に沿った方向に沿って角度自在に固定することができる。これにより、ハンドルポスト43に取り付けられたハンドルバー44を把持する乗員の体重バランスを補助することできる。この結果、斜路走行の必要要件を満足しながら、転倒の不安を感じることがない状態で乗員Dが不整地走行車両100bに乗車することができる。
【0110】
この実施形態においては、ハンドルポスト移動制御手段60は、ハンドルポスト43を左右方向に移動させる左右アクチュエータ61と、ハンドルポスト43を前後方向に移動させる前後アクチュエータ62とにより構成される。
【0111】
この実施形態においては、ハンドルバー44に取り付けられたスイッチ手段により、ハンドルポスト43を前後または左右に移動させる指示を出す。この実施形態においては、スイッチ手段は、ジョイスティックで構成されている。ジョイスティックは、ハンドルバー44の左側のブレーキレバー(図示せず)の近傍に取り付けられ、例えば、乗員の左手の親指または人差し指などにより操作される。ジョイスティックが操作により、制御装置に信号が与えられ、この指示信号に基づいて、制御装置がアクチュエータ61、62の駆動を制御する。
【0112】
ハンドルポスト43を前後または左右方向に所定量移動した状態でハンドルポスト43の移動が停止する。例えば、前記ハンドルポスト43を重力軸に沿った方向に移動し、その状態でハンドルポスト43を停止させることにより、乗員Dがバランスを保てることができる。アクチュエータ61、62の駆動を停止させると、アクチュエータ61、62の負荷抵抗成分、例えば、台形ねじを回転させる負荷抵抗などにより、ハンドルポスト43の移動停止状態が維持される。
【0113】
ハンドルバー44は、乗員の身体の傾きをガイドするだけなので、ハンドルポスト43を移動させる左右アクチュエータ61及び前後アクチュエータ62の駆動力は僅かでも非駆動時にロック(逆駆動しない)できる構造ならば良い。これにより、アクチュエータ61、62は、出力の小さなモータなどで対応することができる。
【0114】
〔別実施形態]
この発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0115】
上記した実施形態においては、車体フレーム10を左右のサイド部材11と第1クロス部材12と第2クロス部材13により構成したが、車体フレーム10は、いわゆるモノコック型、スペースフレーム型などで構成してもよい。
【0116】
上記した運搬車両100aにおいては、荷台3aが前後左右に移動するように構成しているが、荷台が固定された運搬車両にもこの発明は適用できる。
【0117】
上記した不整地走行車両100bは、ハンドルポスト43が前後左右に移動可能に構成しているが、ハンドルポストが固定された車両にもこの発明は適用できる。
【0118】
上記した実施形態においては、クローラ走行車両100を運搬車両、立ち乗り可能な不整地走行車両に適用した例を挙げたが、種々の不整地を走行する車両に適用できる。例えば、先端に草刈りユニットを装着した草刈り車両などにも適用できる。
【符号の説明】
【0119】
1 :車体
2a :左クローラ
2b :右クローラ
3 :搭乗部
4 :ハンドル部
5a :支軸
5b :支軸
10 :車体フレーム
17 :左右揺動リンク
18a :左クローラ支持部
18b :右クローラ支持部
20 :クローラフレーム
21 :電動モータ
22 :駆動スプロケット
23 :遊輪
70 :支軸
71 :天秤アーム
71a、71b :ボールジョイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16