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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113315
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/045 20120101AFI20220728BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B60W30/045
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009459
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 大策
(72)【発明者】
【氏名】砂原 修
(72)【発明者】
【氏名】梅津 大輔
【テーマコード(参考)】
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BA51
3D241CC03
3D241CD05
3D241CD11
3D241DA04Z
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DA55Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DB27Z
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA11
5H125DD15
5H125EE41
(57)【要約】
【課題】ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作され、その後中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されるときに、ドライバに違和感を与えることなく車両の操縦性や安定性を向上させる。
【解決手段】車両の制御システムにおいて、コントローラ8は、ステアリングホイール28が一方に切り込まれた状態から切り戻し操作されているときに、ステアリングホイール28が中立位置に戻るまでは車両1に前方向加速度を付加するようにトルク増加制御を行い、その後ステアリングホイール28が中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されているときには、車両1に前方向加速度を付加しないように、トルク増加制御を終了する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御システムであって、
前記車両の駆動輪を駆動するためのトルクを発生させる駆動力源と、
ドライバにより操作されるステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールの操作に対応する操舵角を検出する操舵角センサと、
前記操舵角センサによって検出された操舵角に基づき車両姿勢を制御すべく、前記駆動力源が発生するトルクの制御を行うように構成されたコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作されているときに、前記ステアリングホイールが中立位置に戻るまでは前記車両に前方向加速度を付加し、その後前記ステアリングホイールが前記中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されているときには、前記車両に前方向加速度を付加しないように、前記駆動力源が発生するトルクの制御を行うように構成されている、ことを特徴とする車両の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作され、その後前記中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されているときには、前記車両に前方向減速度を付加するように、前記駆動力源が発生するトルクを低減させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載の車両の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作されているときに、前記ステアリングホイールが前記中立位置に戻るまでは、前記ステアリングホイールが前記中立位置に近い程前記車両に付加する前方向加速度が小さくなるように、前記駆動力源が発生するトルクの制御を行うように構成されている、請求項1又は2に記載の車両の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、少なくとも前記操舵角センサによって検出された操舵角に基づき、前記駆動力源が発生するトルクを設定するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【請求項5】
前記駆動力源は、電気モータを含み、前記コントローラは、前記電気モータが発生するトルクの制御を行うように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵に応じて車両の姿勢を制御する車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバによるステアリングホイール(以下では単に「ステアリング」とも呼ぶ。)の操作に応じて車両に減速度や加速度を生じさせることにより、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性や安定感を向上させるように、車両姿勢を制御する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両が旋回動作する場合において、まず、ステアリングホイールが切り込み操作されたときに車両を減速させ、この後に、ステアリングホイールが切り戻し操作されたときに車両を加速させるような車両の運動制御が記載されている。こうすることで、コーナー進入から脱出までの車両の操縦性及び安定性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/151565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載された技術を実現するに当たって、ステアリングの切り込み操作時には、車両に減速度を付加するために、当該車両の駆動力源が発生する駆動トルクを低減させる制御(トルク低減制御)を行い、ステアリングの切り戻し操作時には、車両に加速度を付加するために、駆動力源が発生する駆動トルクを増加させる制御(トルク増加制御)を行うことが考えられる。このような制御は、電気モータ(電動機)を備える車両(例えば電気自動車)において容易に実現することができる。電気モータは、出力するトルクを速やかに増減させることができるからである。
【0006】
例えば車両がS字コーナーを走行する場合、最初に、ステアリングの切り込み操作時にトルク低減制御が実行され、その後、ステアリングの切り戻し操作時にトルク増加制御が実行され、その後、ステアリングが中立位置(即ち操舵角が0°)を跨いで切り込み操作に切り替わるとトルク増加制御は終了すると考えられる。ここで、切り戻し操作されたステアリングが中立位置を過ぎた後においても、トルクの急激な変化の制限等の理由により、トルク増加制御が直ちに終了せずしばらく継続する可能性がある。この場合、中立位置を過ぎた後のステアリングの切り込み操作中も、未終了のトルク増加制御により駆動力源が発生するトルクが増加され、車両に加速度が付加され続けてしまう。その結果、車両の操縦性や安定性の向上が得られず、ドライバに違和感を与える可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、操舵に応じて車両姿勢を制御する車両の制御システムにおいて、ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作され、その後中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されるときに、ドライバに違和感を与えることなく車両の操縦性や安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両の駆動輪を駆動するためのトルクを発生させる駆動力源と、ドライバにより操作されるステアリングホイールと、ステアリングホイールの操作に対応する操舵角を検出する操舵角センサと、操舵角センサによって検出された操舵角に基づき車両姿勢を制御すべく、駆動力源が発生するトルクの制御を行うように構成されたコントローラと、を有し、コントローラは、ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作されているときに、ステアリングホイールが中立位置に戻るまでは車両に前方向加速度を付加し、その後ステアリングホイールが中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されているときには、車両に前方向加速度を付加しないように、駆動力源が発生するトルクの制御を行うように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明によれば、ステアリングホイールが中立位置を跨いで切り込み操作されているときに、前方向加速度を付加するためのトルク制御を継続した場合と異なり、駆動力源が発生するトルクの増加により車両に前方向加速度が付加されてしまうことを防止できる。したがって、ステアリングホイールが切り戻し操作の後に中立位置を過ぎて切り込み操作されるときに、ドライバに違和感を与えることなく車両の操縦性や安定性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、コントローラは、ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作され、その後中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されているときには、車両に前方向減速度を付加するように、駆動力源が発生するトルクを低減させる制御を行うように構成されている。
このように構成された本発明によれば、ドライバに与える違和感の発生を抑制しつつ、切り戻し操作されたステアリングホイールが中立位置を跨いだ後の切り込み操作中には前方向減速度を車両に速やかに付加することができる。これにより、中立位置を跨いだ後のステアリングホイールの切り込み操作時の操縦性や安定性を向上させ、車両の挙動をスムーズにすることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、コントローラは、ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作されているときに、ステアリングホイールが中立位置に戻るまでは、ステアリングホイールが中立位置に近い程車両に付加する前方向加速度が小さくなるように、駆動力源が発生するトルクの制御を行うように構成されている。
このように構成された本発明によれば、切り戻し操作されているステアリングホイールが中立位置を跨ぐときの前方向加速度の急激な変化を防止することができ、ドライバに違和感を与えることを防止できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、コントローラは、少なくとも操舵角センサによって検出された操舵角に基づき、駆動力源が発生するトルクを設定するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、ドライバのステアリング操作に対する車両挙動の応答性や安定感を向上させるように、車両姿勢を速やかに制御することができる。
【0013】
本発明において好適な例では、駆動力源は、電気モータを含み、コントローラは、電気モータが発生するトルクの制御を行うように構成されている。
このように構成された本発明によれば、高い応答性で駆動力源が発生するトルクの制御を実行することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、操舵に応じて車両姿勢を制御する車両の制御システムにおいて、ステアリングホイールが一方に切り込まれた状態から切り戻し操作され、その後中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されるときに、ドライバに違和感を与えることなく車両の操縦性や安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による車両の電気的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態による車両姿勢制御処理のフローチャートである。
図4】本発明の実施形態による付加トルク設定処理のフローチャートである。
図5】本発明の実施形態による操舵速度と付加トルクとの関係を示したマップである。
図6】本発明の実施形態による操舵角と増加トルクに対する補正ゲインとの関係を示したマップである。
図7】本発明の実施形態による車両姿勢制御を実行した場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両の制御システムについて説明する。
【0017】
<車両の構成>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態による車両の制御システムが適用された車両について説明する。図1は、本発明の実施形態による車両の全体構成を概略的に示すブロック図であり、図2は、本発明の実施形態による車両の電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、車両1の車体前部には、駆動輪である左右の前輪2を駆動する原動機(駆動力源)として、モータジェネレータ20(回転電気機械)が搭載されている。この車両1は、所謂FF車として構成されている。車両1の各車輪は、弾性部材(典型的にはスプリング)やサスペンションアームなどを含むサスペンション70を介して、車体に懸架されている。
【0019】
モータジェネレータ20は、前輪2を駆動する機能(つまり原動機(電気モータ)としての機能)と、前輪2により駆動されて回生発電を行う機能(つまり発電機としての機能)と、を有する。モータジェネレータ20は、変速機6を介して前輪2との間で力が伝達され、また、インバータ22を介してコントローラ8により制御される。さらに、モータジェネレータ20は、バッテリ24に接続されており、駆動力を発生するときにはバッテリ24から電力が供給され、回生したときにはバッテリ24に電力を供給してバッテリ24を充電する。
【0020】
また、車両1において、モータジェネレータ20の回転軸と変速機6の回転軸とは、断続可能なクラッチ62を介して連結されている。例えば、クラッチ62は、変速機6の油圧を利用して、締結と解放の切り替えが制御される。
【0021】
車両1は、ステアリングホイール(ステアリング)28やステアリングシャフト30などを含む操舵装置26と、ステアリングホイール28の回転角度やステアリングラック(不図示)の位置から操舵装置26における操舵角を検出する操舵角センサ34と、アクセルペダルの踏込量に相当するアクセル開度を検出するアクセル開度センサ36と、ブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキ踏込量センサ38と、車速を検出する車速センサ40と、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ42と、加速度を検出する加速度センサ44と、を有する。これらの各センサは、それぞれの検出値をコントローラ8に出力する。
【0022】
なお、操舵角センサ34は、ステアリングホイール28の回転角度の代わりに、操舵系における各種状態量(アシストトルクを付加するモータの回転角や、ラックアンドピニオンにおけるラックの変位等)や、前輪2の転舵角(タイヤ角)を、操舵角として検出してもよい。
【0023】
また、車両1は、各車輪に設けられたブレーキ装置(制動装置)46のホイールシリンダやブレーキキャリパにブレーキ液圧を供給するブレーキ制御システム48を備えている。ブレーキ制御システム48は、各車輪に設けられたブレーキ装置46において制動力を発生させるために必要なブレーキ液圧を生成する液圧ポンプ50を備えている。液圧ポンプ50は、例えばバッテリ24から供給される電力で駆動され、ブレーキペダルが踏み込まれていないときであっても、各ブレーキ装置46において制動力を発生させるために必要なブレーキ液圧を生成することが可能となっている。
【0024】
また、ブレーキ制御システム48は、各車輪のブレーキ装置46への液圧供給ラインに設けられた、液圧ポンプ50から各車輪のブレーキ装置46へ供給される液圧を制御するためのバルブユニット52(具体的にはソレノイド弁)を備えている。例えば、バッテリ24からバルブユニット52への電力供給量を調整することによりバルブユニット52の開度が変更される。また、ブレーキ制御システム48は、液圧ポンプ50から各車輪のブレーキ装置46へ供給される液圧を検出する液圧センサ54を備えている。液圧センサ54は、例えば各バルブユニット52とその下流側の液圧供給ラインとの接続部に配置され、各バルブユニット52の下流側の液圧を検出し、検出値をコントローラ8に出力する。
【0025】
このようなブレーキ制御システム48は、コントローラ8から入力された制動力指令値や液圧センサ54の検出値に基づき、各車輪のホイールシリンダやブレーキキャリパのそれぞれに独立して供給する液圧を算出し、それらの液圧に応じて液圧ポンプ50の回転数やバルブユニット52の開度を制御する。
【0026】
図2に示すように、本実施形態によるコントローラ8は、上述したセンサ18、34、36、38、40、42、44、54の検出信号の他、車両1の運転状態を検出する各種の運転状態センサが出力した検出信号に基づいて、モータジェネレータ20、クラッチ62、及び、ブレーキ制御システム48の液圧ポンプ50及びバルブユニット52に対する制御を行うべく、制御信号を出力する。
【0027】
コントローラ8は、回路を含んで構成されており、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御器である。コントローラ8は、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)としての1以上のマイクロプロセッサと、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力を行う入出力バス等を備えている。なお、ステアリングホイール28、操舵角センサ34、及びコントローラ8を含むシステムは、本発明における車両の制御システムに相当する。
【0028】
<車両姿勢制御>
以下では、本発明の実施形態による車両姿勢制御について説明する。本実施形態においては、基本的には、コントローラ8は、操舵角センサ34によって検出された操舵角に基づき車両姿勢(車両挙動)を制御するために、以下のような制御を行う。まず、コントローラ8は、ステアリングホイール28が中立位置から離れるように切り込み操作されているとき(即ち操舵角が増大しているとき)、車両1に前方向減速度(即ち前進している車両1を減速させる減速度)を付加するように、モータジェネレータ20が発生するトルクを低減させるトルク低減制御を行う。また、コントローラ8は、ステアリングホイール28が中立位置に近づくように切り戻し操作されているとき(即ち操舵角が減少しているとき)、車両1に前方向加速度(即ち前進している車両1を加速させる加速度)を付加するように、モータジェネレータ20が発生するトルクを増加させるトルク増加制御を行う。このような車両姿勢制御を行うことで、コーナー進入から脱出までの車両1の旋回性能や操安性や回頭性などを向上させることができる。
【0029】
なお、以下では、トルク低減制御において適用するトルク、つまり車両1に前方向減速度を付加するためにモータジェネレータ20が発生するトルクに付加する負のトルクを「低減トルク」と呼ぶ。また、トルク増加制御において適用するトルク、つまり車両1に前方向加速度を付加するためにモータジェネレータ20が発生するトルクに付加する正のトルクを「増加トルク」と呼ぶ。また、これら低減トルク及び増加トルクを区別しないで用いる場合には「付加トルク」と呼ぶ。車両姿勢制御では、このような低減トルク又は増加トルクが適用される。具体的には、車両姿勢制御では、車両1の運転状態(アクセル開度など)に応じた加速度を実現するためにモータジェネレータ20が発生すべきトルク(以下では「基本トルク」と呼ぶ。)に対して、低減トルク又は増加トルクが減算又は加算される。以下では、こうして、基本トルクに対して、低減トルク又は増加トルクを減算又は加算した後のトルク、つまり最終的にモータジェネレータ20が発生すべきトルクを、「最終目標トルク」と呼ぶ。
【0030】
次に、図3を参照して、本発明の実施形態による車両姿勢制御の全体的な流れを説明する。図3は、本発明の実施形態による車両姿勢制御処理のフローチャートである。
【0031】
図3の車両姿勢制御処理は、車両1のイグニッションがオンにされ、コントローラ8に電源が投入された場合に起動され、所定周期(例えば50ms)で繰り返し実行される。車両姿勢制御処理が開始されると、ステップS1において、コントローラ8は、車両1の運転状態に関する各種センサ情報を取得する。具体的には、コントローラ8は、操舵角センサ34が検出した操舵角、アクセル開度センサ36が検出したアクセル開度、ブレーキ踏込量センサ38が検出したブレーキペダル踏込量、車速センサ40が検出した車速、ヨーレートセンサ42が検出したヨーレート、加速度センサ44が検出した加速度、液圧センサ54が検出した液圧、車両1の変速機6に現在設定されているギヤ段等を含む、上述した各種センサが出力した検出信号を運転状態に関する情報として取得する。
【0032】
次いで、ステップS2において、コントローラ8は、ステップS1において取得された車両1の運転状態に基づき、目標加速度を設定する。具体的には、例えば、コントローラ8は、種々の車速及び種々のギヤ段について規定された加速度特性マップ(予め作成されてメモリなどに記憶されている)の中から、現在の車速及びギヤ段に対応する加速度特性マップを選択し、選択した加速度特性マップを参照して現在のアクセル開度に対応する目標加速度を設定する。
【0033】
次いで、ステップS3において、コントローラ8は、ステップS2において決定した目標加速度を実現するためのモータジェネレータ20の基本トルクを決定する。この場合、コントローラ8は、現在の車速、ギヤ段、路面勾配、路面μなどに基づき、モータジェネレータ20が出力可能なトルクの範囲内で、基本トルクを決定する。
【0034】
また、ステップS2及びS3の処理と並行して、ステップS4において、コントローラ8は、後述する付加トルク設定処理を実行し(図4参照)、ステアリングホイール28の操舵速度などに基づき、車両姿勢を制御するためにモータジェネレータ20が発生するトルクに適用すべき付加トルク(低減トルク又は増加トルク)を設定する。
【0035】
次いで、ステップS2~S4を実行した後、ステップS5において、コントローラ8は、ステップS3において設定した基本トルク及びステップS4において設定した付加トルクに基づき、最終目標トルクを設定する。基本的には、コントローラ8は、基本トルクから低減トルクを減算するか、或いは基本トルクに対して増加トルクを加算することにより、最終目標トルクを算出する。
【0036】
次いで、ステップS6において、コントローラ8は、ステップS5において設定した最終目標トルクを実現するためのインバータ22の指令値(インバータ指令値)を設定する。つまり、コントローラ8は、最終目標トルクをモータジェネレータ20から発生させるためのインバータ指令値(制御信号)を設定する。そして、ステップS7において、コントローラ8は、ステップS6において設定したインバータ指令値をインバータ22に出力する。このステップS7の後、コントローラ8は、車両姿勢制御処理を終了する。
【0037】
次に、図4を参照して、本発明の実施形態による付加トルク設定処理について説明する。図4は、本発明の実施形態による付加トルク設定処理のフローチャートである。この付加トルク設定処理は、図3に示した車両姿勢制御処理のステップS4において実行される。
【0038】
付加トルク設定処理が開始されると、ステップS11において、コントローラ8は、図3に示した車両姿勢制御処理のステップS1において操舵角センサ34から取得した操舵角に基づき操舵速度を取得する。次いで、ステップS12において、コントローラ8は、ステップS11において取得した操舵速度が所定値以上であるか否かを判定する。その結果、コントローラ8は、操舵速度が所定値以上であると判定された場合(ステップS12:Yes)、ステップS13に進む。
【0039】
一方、操舵速度が所定値以上であると判定されなかった場合(ステップS12:No)、コントローラ8は付加トルク設定処理を終了し、メインルーチンに戻る。この場合、付加トルクは0となり、図3に示した車両姿勢制御処理のステップS3で設定された基本トルクが最終目標トルクとなる。
【0040】
次いで、ステップS13において、コントローラ8は、ステアリングホイール28の切り込み操作中か否かを判定する。具体的には、コントローラ8は、例えば操舵角センサ34から取得した操舵角の絶対値が増加している場合(即ちステアリングホイール28の操舵角が中立位置から遠ざかっている場合)に、ステアリングホイール28の切り込み操作中であると判定する。一方、コントローラ8は、例えば操舵角センサ34から取得した操舵角の絶対値が減少している場合(即ちステアリングホイール28の操舵角が中立位置に近づいている場合)に、ステアリングホイール28の切り戻し操作中である(つまり切り込み操作中ではない)と判定する。その結果、コントローラ8は、ステアリングホイール28の切り込み操作中であると判定した場合(ステップS13:Yes)、ステップS14に進む。
【0041】
次いで、ステップS14において、コントローラ8は、操舵速度に基づき低減トルクを取得する。具体的には、コントローラ8は、低減トルクを取得する前に、まず、図5(A)のマップに示すような操舵速度と付加減速度との関係に基づき、現在の操舵速度に対応する付加減速度を設定する。この付加減速度は、ドライバによるステアリングホイール28の切り込み操作の意図に沿って車両姿勢を制御するために、ステアリング操作に応じて車両1に付加すべき前方減速度である。
図5(A)において、横軸は操舵速度を示し、縦軸は付加減速度を示す。図5(A)に示すように、操舵速度が閾値S1以下の場合、付加減速度は0である。操舵速度が閾値S1を超えると、操舵速度が増大するに従って、この操舵速度に対応する付加減速度は、所定の上限値ADmaxに漸近する。即ち、操舵速度が増大するほど付加減速度は増大し、且つ、その増大量の増加割合は小さくなる。この上限値ADmaxは、ステアリング操作に応じて車両1に減速度を付加しても、制御介入があったとドライバが感じない程度の減速度に設定される(例えば0.5m/s2≒0.05G)。さらに、操舵速度が所定値以上になると、付加減速度は上限値Dmaxに維持される。
そして、コントローラ8は、このように設定した付加減速度に基づき、低減トルクを取得する。具体的には、コントローラ8は、基本トルクの低減により付加減速度を実現するために必要となる低減トルクを、現在の車速、ギヤ段、路面勾配等に基づき決定する。
【0042】
次いで、ステップS15において、コントローラ8は、ステップS14において取得した低減トルクと、低減トルクの変化率の上限を定める閾値(予め定められてメモリ等に記憶されている)とに基づき、低減トルクの変化率が閾値以下となるように今回の処理サイクルにおける低減トルクを設定する。ステップS15の後、コントローラ8は、付加トルク設定処理を終了し、メインルーチンに戻る。この場合、図3の車両姿勢制御処理のステップS5において、コントローラ8は、ステップS3において設定した基本トルク及びステップS15で設定された低減トルクに基づき、最終目標トルクを設定する。
【0043】
また、ステップS13において、コントローラ8がステアリングホイール28の切り込み操作中ではないと判定した場合(ステップS13:No)、具体的には例えば操舵角センサ34から取得した操舵角の絶対値が減少している場合(即ちステアリングホイール28の操舵角が中立位置に近づいている場合)、コントローラ8は、ステップS16に進む。
【0044】
次いで、ステップS16において、コントローラ8は、操舵速度に基づき増加トルクを取得する。具体的には、コントローラ8は、増加トルクを設定する前に、まず、図5(B)のマップに示す操舵速度と付加加速度との関係に基づき、現在の操舵速度に対応する付加加速度を設定する。この付加加速度は、ドライバによるステアリングホイール28の切り戻し操作の意図に沿って車両姿勢を制御するために、ステアリング操作に応じて車両1に付加すべき前方加速度である。
図5(B)において、横軸は操舵速度を示し、縦軸は付加加速度を示す。図5(B)に示すように、操舵速度が閾値S2以下の場合、付加加速度は0である。操舵速度が閾値S2を超えると、操舵速度が増大するに従って、この操舵速度に対応する付加加速度は、所定の上限値AAmaxに漸近する。即ち、操舵速度が増大するほど付加加速度は増大し、且つ、その増大量の増加割合は小さくなる。この上限値AAmaxは、ステアリング操作に応じて車両1に加速度を付加しても、制御介入があったとドライバが感じない程度の加速度に設定される(例えば0.5m/s2≒0.05G)。さらに、操舵速度が所定値以上になると、付加加速度は上限値AAmaxに維持される。
そして、コントローラ8は、このように設定した付加加速度に基づき、増加トルクを取得する。具体的には、コントローラ8は、基本トルクの増加により付加加速度を実現するために必要となる増加トルクを、現在の車速、ギヤ段、路面勾配等に基づき決定する。
【0045】
次いで、ステップS17において、コントローラ8は、操舵角センサ34から取得した操舵角が中立位置(つまり操舵角0)から所定角度以内(例えば時計回り及び反時計回りに30度以内)か否かを判定する。その結果、コントローラ8は、操舵角が中立位置から所定角度以内であると判定した場合(ステップS17:Yes)、つまり切り戻し操作されているステアリングホイールが中立位置に近い範囲に入った場合、ステップS18に進む。
【0046】
次いで、ステップS18おいて、コントローラ8は、増加トルクを補正するための補正ゲインを取得する。具体的には、コントローラ8は、図6のマップに示す操舵角と補正ゲインとの関係に基づき、現在の操舵角に対応する補正ゲインを取得する。この補正ゲインは、ステアリングホイール28が切り戻し操作されているときに、ステアリングホイール28が中立位置に近い程車両1に付加する前方向加速度が小さくなるように、増加トルクに乗算される補正ゲインである。
図6において、横軸は操舵角を示し、縦軸は補正ゲインを示す。図6に示すように、操舵角が所定角度A1(例えば30度)の場合、補正ゲインは1である。操舵角が所定角度A1より小さい場合、操舵角が0度に近づくに従って、つまりステアリングホイール28が中立位置に近い程、この操舵角に対応する補正ゲインは小さくなる。そして、操舵角が0度の場合、つまりステアリングホイール28が中立位置にある場合、補正ゲインは0となる。また、操舵角が0度及び所定角度A1に近づくほど、操舵角の変化に応じた補正ゲインの変化率(図6に示すグラフの傾き)は小さくなるように設定されている。
【0047】
次いで、ステップS19おいて、コントローラ8は、ステップS18で取得した補正ゲインにより、ステップS16で取得した増加トルクを補正する。具体的には、コントローラ8は、ステップS18で取得した補正ゲインを、ステップS16で取得した増加トルクに乗算する。このように補正することにより、ステアリングホイール28が切り戻し操作されているときに、操舵角が中立位置から所定角度A1以内にある場合、操舵角が0度に近い程増加トルクは小さくなる。そして、操舵角が0度に達すると、増加トルクは0になる。
【0048】
次いで、ステップS20において、コントローラ8は、ステップS19において補正した増加トルクと、増加トルクの変化率の上限を定める閾値(予め定められてメモリ等に記憶されている)とに基づき、増加トルクの変化率が閾値以下となるように今回の処理サイクルにおける増加トルクを設定する。
【0049】
また、ステップS17において、コントローラ8は、操舵角が中立位置から所定角度以内ではないと判定した場合(ステップS17:No)、つまり切り戻し操作されているステアリングホイールが中立位置に近い範囲に入っていない場合、増加トルクの補正を行うことなくステップS20に進む。この場合、ステップS20において、コントローラ8は、ステップS16において取得した増加トルクと、増加トルクの変化率の上限を定める閾値(予め定められてメモリ等に記憶されている)とに基づき、増加トルクの変化率が閾値以下となるように今回の処理サイクルにおける増加トルクを設定する。
【0050】
ステップS20の後、コントローラ8は、付加トルク設定処理を終了し、メインルーチンに戻る。この場合、図3の車両姿勢制御処理のステップS5において、コントローラ8は、ステップS3において設定した基本トルク及びステップS20で設定された増加トルクに基づき、最終目標トルクを設定する。
【0051】
<作用及び効果>
次に、図7のタイムチャートを参照して、本発明の実施形態による車両の制御システムの作用及び効果について説明する。図7は、上述した本実施形態による車両姿勢制御を実行した場合のタイムチャートである。図7において、横軸は時間を示す。また、縦軸は、上から順に、(a)操舵角、(b)操舵速度、(c)付加トルク(低減トルク及び増加トルクを含む)及び(d)最終目標トルクを示している。また、図7(c)及び(d)において、実線は図6に示した補正ゲインを増加トルクに適用した場合の増加トルク及び最終目標トルクの変化を示し、点線は補正ゲインを増加トルクに適用しない場合の増加トルク及び最終目標トルクの変化を示している。
【0052】
図7の例は、図7(a)に示すように、まず、中立位置から時計回り(CW)にステアリングホイール28の切り込み操作が行われ、その後ステアリングホイール28の回転位置がある操舵角で保持され、その後ステアリングホイール28が中立位置に戻るまで切り戻し操作が行われ、その後連続的にステアリングホイール28が中立位置を過ぎて反時計回り(CCW)に切り込み操作され、その後ステアリングホイール28の回転位置がある操舵角で保持される場合を示している。
【0053】
中立位置から時計回り(CW)にステアリングホイール28の切り込み操作が開始されることに伴い、時計回り(CW)の操舵速度(絶対値)が増加する。時刻t1において操舵速度が閾値S1以上になると、コントローラ8は、車両1に前方向減速度を付加するように、操舵速度に基づき低減トルクを設定して、モータジェネレータ20が発生するトルクを低減させるトルク低減制御を行う。そして、コントローラ8は、操舵速度が増加している間、操舵速度に応じて低減トルク(絶対値)を増加させ、そして、操舵速度が一定になると、低減トルクを一定に維持する。さらに、操舵速度が減少すると、それに応じて低減トルク(絶対値)を減少させる。
【0054】
その後、ステアリングホイール28が切り込まれた状態で保持されることにより、時刻t2において操舵速度が閾値S1未満になると、コントローラ8は、トルク低減制御を終了し、付加トルクが0となる。すなわち、車両1に付加される前方減速度は0になる。
【0055】
その後、ステアリングホイール28が切り込まれた状態から中立位置に向かって反時計回り(CCW)に切り戻し操作されることに伴い、反時計回り(CCW)の操舵速度(絶対値)が増加する。時刻t3において操舵速度が閾値S2以上になると、コントローラ8は、車両1に前方向加速度を付加するように、操舵速度に基づき増加トルクを設定して、モータジェネレータ20が発生するトルクを増加させるトルク増加制御を行う。そして、コントローラ8は、操舵速度が増加している間、操舵速度に応じて増加トルク(絶対値)を増加させ、そして、操舵速度が一定になると、増加トルクを一定に維持する。
【0056】
その後、切り戻し操作されているステアリングホイール28が中立位置に近づき、時刻t4において操舵角(絶対値)がA1以下になると、コントローラ8は、増加トルクに補正ゲインを適用し、補正後の増加トルクによりトルク増加制御を行う。上述したように、操舵角が0度に近づくに従って、この操舵角に対応する補正ゲインは小さくなり、操舵角が0度のときに補正ゲインが0になるように設定されている。したがって、コントローラ8は、操舵角が小さくなるほど増加トルク(絶対値)を減少させ、時刻t5において操舵角が0度になったときに増加トルクを0にする。これにより、ステアリングホイール28が切り戻し操作されているとき、操舵角がA1より小さくなるほど車両1に付加される前方向加速度が小さくなり、時刻t5において操舵角が0度になったとき、車両1に付加される前方向加速度は0になる。
【0057】
その後、時刻t5においてステアリングホイール28が中立位置を過ぎてそのまま反時計回り(CCW)に切り込み操作されると、コントローラ8は、車両1に前方向減速度を付加するように、操舵速度に基づき低減トルクを設定して、モータジェネレータ20が発生するトルクを低減させるトルク低減制御を行う。ここで、時刻t5においてステアリングホイール28が中立位置を跨ぐことにより、ステアリングホイール28の操作が切り戻し操作から切り込み操作へと切り替わった時点で、操舵速度(絶対値)は閾値S1以上で一定になっている。したがって、コントローラ8は、時刻t5において切り込み操作が開始されると、低減トルクの変化率を所定の閾値以下に制限しつつ、直ちに操舵速度に応じて低減トルク(絶対値)を増加させる。そして、コントローラ8は、操舵速度に対応する値となるまで低減トルク(絶対値)を増加させる。さらに、操舵速度が減少すると、それに応じて低減トルク(絶対値)を減少させる。その後、時刻t6において操舵速度が閾値S1未満になると、コントローラ8は、トルク低減制御を終了し、付加トルクが0となる。すなわち、車両1に付加される前方減速度は0になる。
【0058】
このように、本実施形態では、コントローラ8は、ステアリングホイール28が一方に切り込まれた状態から切り戻し操作されているときに、ステアリングホイール28が中立位置に戻るまで(時刻t3からt5まで)は車両1に前方向加速度を付加するようにトルク増加制御を行い、その後ステアリングホイール28が中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されているとき(時刻t5以降)には、車両1に前方向加速度を付加しないように、トルク増加制御を終了する。これにより、ステアリングホイール28が中立位置を跨いで切り込み操作されているときに、図7(c)、(d)に点線で示したようにトルク増加制御を継続した場合と異なり、モータジェネレータ20が発生するトルクの増加により車両1に前方向加速度が付加されてしまうことを防止できる。したがって、ステアリングホイール28が切り戻し操作の後に中立位置を過ぎて切り込み操作されるときに、ドライバに違和感を与えることなく車両1の操縦性や安定性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、コントローラ8は、ステアリングホイール28が一方に切り込まれた状態から切り戻し操作され、その後中立位置を過ぎて他方に切り込み操作されているときには、車両1に前方向減速度を付加するように、トルク低減制御を行う。これにより、ドライバに与える違和感の発生を抑制しつつ、中立位置を跨いだ後の切り込み操作中には前方向減速度を車両1に速やかに付加することができ、中立位置を跨いだ後のステアリングホイール28の切り込み操作時の操縦性や安定性を向上させ、車両1の挙動をスムーズにすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、コントローラ8は、ステアリングホイール28が一方に切り込まれた状態から切り戻し操作されているときに、ステアリングホイール28が中立位置に戻るまでは、ステアリングホイール28が中立位置に近い程車両1に付加する前方向加速度が小さくなるように、増加トルクを補正する。これにより、切り戻し操作されているステアリングホイール28が中立位置を跨ぐときの付加トルクの急激な変化を防止することができ、ドライバに違和感を与えることを防止できる。
【0061】
また、本実施形態では、コントローラ8は、少なくとも操舵角センサ34によって検出された操舵角に基づき、付加トルクを設定するので、ドライバのステアリング操作に対する車両挙動の応答性や安定感を向上させるように、車両姿勢を速やかに制御することができる。
【0062】
また、本実施形態では、コントローラ8は、モータジェネレータ20が発生するトルクを制御するので、高い応答性でトルク低減制御及びトルク増加制御を実行することができる。
【0063】
<変形例>
上記では、本発明を、モータジェネレータ20を原動機(駆動力源)として有する車両1に適用する実施形態を示したが、本発明は、エンジンを原動機として有する車両にも適用することができる。この場合、車両姿勢制御において付加トルクを実現するために、例えばエンジンの点火時期を制御すればよい。すなわち、トルク低減制御を実行する場合には、エンジンの点火時期を、基準となる点火時期(基本トルクに応じた点火時期)から遅角させればよく、トルク増加制御を実行する場合には、エンジンの点火時期を基準となる点火時期から進角させればよい。
【0064】
また、上記した実施形態では、車両姿勢制御において付加トルクを実現するために、モータジェネレータ20が出力するトルク(駆動トルク)を変化させていたが、他の例では、モータジェネレータ20の駆動トルクの代わりに、モータジェネレータ20に入力される回生トルクを変化させることで、車両姿勢制御による付加トルクを実現してもよい。例えば、モータジェネレータ20が回生しているとき(アクセル開度が0のときなど)に車両姿勢制御を実行する場合に、車両1を制動させるためにモータジェネレータ20に入力される回生トルクを、車両姿勢制御による低減トルク及び増加トルクが実現されるように増減させればよい。すなわち、トルク低減制御を実行する場合には、回生トルク(絶対値)を増加すればよく、トルク増加制御を実行する場合には、回生トルク(絶対値)を減少すればよい。
【0065】
また、上記した実施形態では、コントローラ8は、少なくとも操舵角センサ34によって検出された操舵角に基づき、付加トルクを取得するが、操舵角に代えて、あるいは操舵角と共に、アクセルペダルの操作以外の車両1の運転状態(横加速度、ヨーレート、スリップ率等)に基づき付加トルクを取得するようにしてもよい。例えば、コントローラ8は、加速度センサ44から入力された横加速度や、横加速度を時間微分することにより得られる横ジャークに基づき付加加速度又は付加減速度を設定して、付加トルクを取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
2 車輪
8 コントローラ
20 モータジェネレータ
22 インバータ
24 バッテリ
26 操舵装置
28 ステアリングホイール
34 操舵角センサ
36 アクセル開度センサ
40 車速センサ
46 ブレーキ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7