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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113318
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】反射体
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20220728BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20220728BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G01S7/497
G01N21/49 C
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009469
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】細井 研一郎
【テーマコード(参考)】
2G059
5J084
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059DD20
2G059EE02
2G059GG01
2G059JJ25
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA58
5J084BB37
5J084BB38
5J084CA03
5J084EA08
5J084EA19
(57)【要約】
【課題】反射体の反射率を容易に変更できるようにする。
【解決手段】反射体10は反射部材110及びマスク部材120を有している。反射部材110は、測定装置20に対向する面が基準反射面となっている。基準反射面は、例えばランバート反射体面になっている。マスク部材120は、反射部材110の基準反射面の少なくとも一部の領域に重ねられ、反射体10が照射した光の少なくとも一部が基準反射面に到達することを阻害する。そしてマスク部材120は交換可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的手法で対象物までの距離を測定する測定装置の検査に用いられる反射体であって、
前記測定装置から照射された光を反射する基準反射面を有する反射部材と、
前記基準反射面の少なくとも一部の領域に重ねられ、前記光の少なくとも一部が前記基準反射面に到達することを阻害するマスク部材と、
を備え、
前記マスク部材は交換可能である反射体。
【請求項2】
請求項1に記載の反射体において、
前記マスク部材は、
透光領域と、
前記透光領域に設けられた複数の遮光領域と、
を有しており、
前記遮光領域の大きさは、前記マスク部材上における前記光の大きさよりも小さい、反射体。
【請求項3】
請求項1に記載の反射体において、
前記マスク部材は、
遮光領域と、
前記遮光領域に設けられた複数の透光領域と、
を有しており、
前記透光領域の大きさは、前記マスク部材上における前記光の大きさよりも小さい、反射体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の反射体において、
前記マスク部材は、前記光の透過率が互いに異なる複数の部分領域を有している反射体。
【請求項5】
請求項4に記載の反射体において、
前記反射部材の幅方向及び上下方向の少なくとも一方において、徐々に又は段階的に前記光の吸収率が変化している反射体。
【請求項6】
請求項4に記載の反射体において、
前記反射部材の幅方向及び上下方向の少なくとも一方において、互いに透光率が異なる2つ以上の前記部分領域が繰り返し設けられている反射体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の反射体において、
前記マスク部材は、前記測定装置から前記反射体までの距離に応じて交換される反射体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の反射体において、
前記基準反射面はランバート反射面又は再帰性反射面になっている反射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手法で対象物までの距離を測定する測定装置の検査に用いられる反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、光学的手法で対象物までの距離を測定する測定装置の用途が広がっている。このような測定装置において、距離が正常に測定できているか否かを検査することは重要である。例えば特許文献1には、測定装置の光軸のずれを測定する際に、前方板及び後方板を有する光軸調整装置を用いることが記載されている。前方板は後方板より前に位置しており、測定装置から出射された光を透過させるための孔を有している。特許文献1において、測定装置から出射された光は、前方板により遮られることなく孔を通過して後方板に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-56662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定装置の測定対象となる対象物には様々な種類がある。このため、測定対象における光の反射率も様々になる。このため、測定装置の検査において、様々な反射率を想定した検査を行う必要がある。
【0005】
本発明の目的の一例は、光学的手法で対象物までの距離を測定する測定装置の検査に用いられる反射体において、反射率を容易に変更できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、光学的手法で対象物までの距離を測定する測定装置の検査に用いられる反射体であって、
前記測定装置から照射された光を反射する基準反射面を有する反射部材と、
前記基準反射面の少なくとも一部の領域に重ねられ、前記光の少なくとも一部が前記基準反射面に到達することを阻害するマスク部材と、
を備え、
前記マスク部材は交換可能である反射体である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る反射体の使用環境を説明するための図である。
図2】マスク部材の第1例を示す平面図である。
図3】部分領域の大きさを説明するための図である。
図4】(A)及び(B)は、部分領域における透光領域及び遮光領域の第1例を示す図である。
図5】(A)及び(B)は、部分領域における透光領域及び遮光領域の第2例を示す図である。
図6】(A)及び(B)は、部分領域における透光領域及び遮光領域の第3例を示す図である。
図7】(A)及び(B)は、部分領域における透光領域及び遮光領域の第3例を示す図である。
図8図1に示した反射体の変形例を示す図である。
図9図8に示したマスク部材の設置目的を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る反射体10の使用環境を説明するための図である。反射体10は、解析装置30と共に使用され、測定装置20の検査に用いられる。
【0010】
測定装置20は、例えばLiDARであり、光学的手法を用いて対象物までの距離を測定する。具体的には、測定装置20は、光出射部及び受光部を有しており、光出射部が光(例えばレーザ光)を出射してから、対象物によって反射された光を受光部が受光するまでの時間を用いて、対象物までの距離を測定する。測定装置20がLiDARである場合、測定装置20は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対して電磁波であるパルスレーザを出射することで、対象物までの距離を離散的に測定し、当該対象物の位置を示す3次元の計測点群情報を生成する。
【0011】
測定装置20の検査において、反射体10は、測定装置20から反射体10までの距離は、予め定められた距離Lに設定される。そしてこの状態において測定装置20は、反射体10を測定する。そして解析装置30は、この測定結果を用いて、測定装置20が正常であるか否かを判断する。
【0012】
本図に示す例において、反射体10は反射部材110及びマスク部材120を有している。
【0013】
反射部材110は、測定装置20に対向する面が反射面(以下、基準反射面と記載)となっている。基準反射面の反射率は、面内の位置によらず一定になっている。基準反射面は、例えばランバート反射体面は再帰性反射面になっている。
【0014】
マスク部材120は、反射部材110の基準反射面の少なくとも一部の領域に重ねられ、反射体10が照射した光の少なくとも一部が基準反射面に到達することを阻害する。そしてマスク部材120は交換可能である。このため、マスク部材120を変えることにより、反射体10の反射率を容易に変更できる。なお、反射部材110の基準反射面は平面であってもよいし、幅方向及び高さ方向の少なくとも一方において曲面になっていてもよい。後者の場合、反射部材110は、例えば基準反射面が凹になる向きに曲がっている。
【0015】
図2は、マスク部材120の第1例を示す平面図である。マスク部材120は、透光領域122及び遮光領域124を有している。そして透光領域122の占有率(又は遮光領域124の占有率)によって、マスク部材120の光の透過率が決定される。例えば、マスク部材120は、例えば透光性(例えば測定装置20が照射する光の透過率が90%以上、好ましくは99%以上)の板状の基材の一部に遮光性の塗料を塗布することにより、形成されている。この場合、基材のうち塗料が塗布されていない領域が透光領域122となっており、基材のうち塗料が塗布された領域が遮光領域124となっている。ただし、マスク部材120は、遮光性の基材に複数の開口を設けることにより、形成されていてもよい。この場合、基材のうち開口が設けられている領域が透光領域122となっており、基材のうち開口が設けられていない領域が遮光領域124となっている。
【0016】
また、本図に示す例において、マスク部材120は複数の部分領域126を有している。複数の部分領域126のそれぞれは、透光領域122及び遮光領域124を有している。これら複数の部分領域126の光の透過率は互いに異なっている。ただし、一つの部分領域126の内部では、光の透過率は一定である。このため、反射部材110の上に部分領域126を重ねることで、部分領域126を変えなくても複数の反射率に関する検査を行うことができる。
【0017】
本図に示す例において、複数の部分領域126の透光領域122の占有率(又は遮光領域124の占有率)は、互いに異なっている。そして反射部材110の幅方向(すなわちマスク部材120の幅方向)に、複数の部分領域126は並んでいる。そして右側にいくにつれて(又は左側にいくにつれて)、部分領域126の透光率は減少している。
【0018】
ただし、複数の部分領域126は、反射部材110の上下方向(すなわちマスク部材120の上下方向)に並んでいてもよい。また、マスク部材120の幅方向及び上限方向の少なくとも一方において、透光領域122の占有率(又は遮光領域124の占有率)は連続的に変化してもよい。
【0019】
また、マスク部材120において、互いに透光率が異なる2つ以上の部分領域126が繰り返し設けられていてもよい。例えばマスク部材120において、第1の部分領域126と第2の部分領域126とが交互に設けられていてもよい。
【0020】
図3は、部分領域126の大きさを説明するための図である。マスク部材120には、図1に示した測定装置20からの光が照射される。そして、部分領域126の幅Wは、マスク部材120上における測定装置20からの光の大きさ(以下、光領域200と記載:フットプリントに相当)W(例えばフットプリントの幅)よりも大きい。例えば図3のように、横方向のライン毎に半周期ずつずらして光を照射する場合、部分領域126の幅Wは、光の大きさWの1.5倍以上であるのが好ましい。また、それ以外の場合(例えば横方向における照射位置がいずれのラインでも同じ場合)、幅Wは、光の大きさWの2.0倍以上であるのが好ましい。このようにすると、マスク部材120の上において、測定装置20の光が複数の部分領域126に跨ることを抑制できる。
【0021】
また、部分領域126の幅Wは、マスク部材120における光の照射間隔(例えば隣り合う2つのフットプリントの中心間距離)よりも大きい。例えば図3のように、横方向のライン毎に半周期ずつずらして光を照射する場合、幅Wは、光の照射間の1.5倍以上であるのが好ましい。また、それ以外の場合(例えば横方向における照射位置がいずれのラインでも同じ場合)、幅Wは、光の照射間の2.0倍以上であるのが好ましい。このようにすると、複数の部分領域126のそれぞれに対して、光は照射されやすくなる。
【0022】
図4(A)及び図4(B)は、部分領域126における透光領域122及び遮光領域124の第1例を示す図である。本図に示す例において、透光領域122及び遮光領域124は、いずれも同じ形状の矩形(例えば正方形)である。そして透光領域122及び遮光領域124は、いずれもマスク部材120上における光領域200よりも小さい。例えば透光領域122の幅及び遮光領域124の幅は、いずれも光領域200の幅(図3のWに相当)の25%以下である。そして、図4(A)に示す例と、図4(B)に示す例とでは、透光領域122の占有率(すなわち遮光領域124の占有率)が異なる。具体的には、図4(A)に示す例における透光領域122の占有率は50%であるが、図4(B)に示す例における透光領域122の占有率は25%である。なお、図4(A)に示す例において、透光領域122及び遮光領域124は幅方向及び高さ方向の双方において交互に配置されているが、これらのレイアウトはこの例に限定されない。
【0023】
図5(A)及び図5(B)は、部分領域126における透光領域122及び遮光領域124の第2例を示す図であり、それぞれ図4(A)及び図4(B)に対応している。本図に示す例において、透光領域122の大きさ及び遮光領域124の大きさは、図4に示す例よりも小さい。そして、[0]図5に示す例を用いたマスク部材120は、測定装置20から反射体10までの距離L図1参照)が小さい場合に用いられる。これは、距離Lが小さくなるにつれて光領域200が小さくなるためである。すなわち、透光領域122及び遮光領域124は、距離Lが小さくなるにつれて小さくなるのが好ましい。しかし、照射光の指向性が充分高い場合はその限りではない。
【0024】
図6(A)及び図6(B)は、部分領域126における透光領域122及び遮光領域124の第3例を示す図であり、それぞれ図4(A)及び図4(B)に対応している。本図に示す例において、マスク部材120の全体が遮光領域124となっている。そして、遮光領域124の中に複数の透光領域122が設けられている。本図に示す例において、透光領域122は円形(又は楕円形)である。そして図6(A)に示すように、複数の透光領域122の少なくとも一つは、他とは異なる大きさであってもよい。また、図6(B)に示すように、複数の透光領域122はすべて同じ形状であってもよい。
【0025】
なお、図6(A)に示す例において、マスク部材120の全体が透光領域122となっていてもよい。この場合、透光領域122の中に複数の遮光領域124が設けられる。
【0026】
図7(A)及び図7(B)部分領域126における透光領域122及び遮光領域124の第3例を示す図であり、それぞれ図4(A)及び図4(B)に対応している。本図に示す例において、光領域200は矩形ではなく、平行四辺形になっている。これは、例えばマスク部材120が平面である場合において、マスク部材120の端部において光領域200が歪むためである。そして透光領域122の形状及び遮光領域124の形状は、歪んだ後の光領域200の形状に相似になっている。
【0027】
図8は、図1に示した反射体10の変形例を示す図である。本図に示す例において、反射体10のマスク部材120は、一部(例えば中央部)にのみ遮光領域124を有している。言い換えると、マスク部材120は、反射部材110の一部の反射率を低下させるために設けられている。
【0028】
図9は、図8に示したマスク部材120の設置目的を説明するための図である。反射体10の反射部材110の反射率が高い場合、図9(A)に示すように、反射光のピーク強度が強すぎるため、測定装置20の受光部は、正確な受信波形を出力することができず、その結果、反射光のピーク位置(時間)を検出できない。このようになるケースとしては、反射部材110の反射面が再帰性反射面になっている場合において、光を反射部材110のうち測定装置20の正面に位置する領域に照射する場合が挙げられる。
【0029】
このような場合であっても、マスク部材120の遮光領域124を、反射部材110のうち反射率が高すぎる領域に設けると、図9(B)に示すように、測定装置20が受光した反射光のピーク位置(時間)を精度よく検出できる。
【0030】
なお、測定装置20から出射された光が反射体10に到達した時の単位面積当たりの強度は、測定装置20から反射体10までの距離Lが大きくなるにつれて低下する。このため、マスク部材120は、距離Lに応じて交換されるのが好ましい。具体的には、マスク部材120の透光率は、距離Lが大きくなるにつれて上がるのが好ましい。
【0031】
以上、本実施形態によれば、反射部材110の基準反射面の上にはマスク部材120が設けられている。マスク部材120は、取り換え可能である。このため、反射体10の反射率を容易に変更できる。
【0032】
また、図2及び図3に示すように、マスク部材120は複数の部分領域126を有している。これら複数の部分領域126の少なくとも2つは、透光率が互いに異なる。このため、一つの反射体10で複数の反射率に関する検査を行うことができる。
【0033】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 反射体
20 測定装置
30 解析装置
110 反射部材
120 マスク部材
122 透光領域
124 遮光領域
126 部分領域
200 光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9