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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113332
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】自動工具交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20220728BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALN20220728BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
B23Q3/157 Z
B23Q3/155 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009496
(22)【出願日】2021-01-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2020年(令和2年)11月16日~11月27日「JIMTOF2020 Online」のWebサイト上で開催された「一般社団法人日本工作機械工業会」及び「株式会社東京ビッグサイト」主催の展示会「JIMTOF2020 Online」において公開
(71)【出願人】
【識別番号】391029819
【氏名又は名称】株式会社オーエム製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】西山 晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昭博
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002AA08
3C002DD13
3C002DD14
3C002KK02
3C002KK07
(57)【要約】
【課題】工具マガジン(工具収納スペース)の大型化を抑制しつつ、多数の工具が収納可能な自動工具交換装置を提供する。
【解決手段】工具10と、工具ホルダ11と、工具10を収納する第一回転収納体1と、この第一回転収納体1の上方に配され工具ホルダ11を収納する第二回転収納体2とを有し、工具10及び工具ホルダ11は各回転体1,2の中心から放射方向に配され、第二回転収納体2には工具ホルダ11が上下方向に移動するための間隙部3が設けられ、第二回転収納体2のホルダ交換位置Aにおいて第二回転収納体2で選択された適宜な工具ホルダ11を装着し、間隙部3を介して下方移動した後、第一回転収納体1の工具交換位置Bにおいて工具ホルダ11に第一回転収納体1で選択された適宜な前記工具10を装着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する加工テーブルと工具取付台とを有する工作機械に設けられ、前記工具取付台に設けられた工具を交換するための自動工具交換装置であって、複数の前記工具と、前記工具が装着される工具装着部の位置が異なる複数の工具ホルダと、前記複数の工具が収納される第一回転収納体と、この第一回転収納体の上方に配され前記複数の工具ホルダが収納される第二回転収納体とを有し、前記工具及び前記工具ホルダは各回転体の中心から放射方向に配され、前記第二回転収納体の所定位置には前記工具ホルダが上下方向に移動するための間隙部が設けられ、前記第二回転収納体に設けられたホルダ交換位置において、前記第二回転収納体で選択された適宜な工具ホルダが装着され、さらに、前記間隙部を介して前記第一回転収納体に設けられた工具交換位置において前記工具ホルダに前記第一回転収納体で選択された適宜な前記工具が装着されるように構成されていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動工具交換装置において、前記ホルダ交換位置に位置した前記工具取付台には、前記第二回転収納体で選択された適宜な前記工具ホルダを装着され、この選択された工具ホルダが装着された前記工具取付台は前記間隙部を介して前記第一回転収納体の工具交換位置に下降移動し、この工具交換位置で前記第一回転収納体で選択された適宜な前記工具が前記選択された工具ホルダに装着され、上昇移動してこの工具取付台は前記ホルダ交換位置に戻動するように構成されていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記第一回転収納体及び前記第二回転収納体は、共通の軸に適宜な間隔を介して積層状態にして水平回転自在に設けられていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項4】
請求項3記載の自動工具交換装置において、前記第一回転収納体は、前記軸を中心軸として該軸に水平回転自在に設けられる平面視円形の第一回転体と、この第一回転体の外周部に沿って設けられる複数の工具保持部とからなり、この工具保持部に前記工具が着脱自在に保持されていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項5】
請求項3,4いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記第二回転収納体は、前記軸を中心軸として該軸に水平回転自在に設けられる平面視円形に形成される第二回転体と、この第二回転体の外周部に沿って設けられる複数の工具ホルダ保持部とからなり、この工具ホルダ保持部に前記工具ホルダが着脱自在に保持されていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動工具交換装置において、前記第二回転体には、前記複数の工具ホルダ保持部と共に、前記工具保持部が前記外周部に沿って複数設けられていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項7】
請求項3~6いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記工具保持部は前記第一回転体に対し突出可能に設けられていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記工具ホルダは、圧媒により動作する工具クランプ部を備え、さらに、前記工具ホルダは、内部に前記工具クランプ部を動作させるための前記圧媒を供給する流路を備えていることを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項9】
請求項1~8いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、この自動工具交換装置は、前記工具取付台が移動自在に設けられる前記工作機械のクロスレールに、連結部材を介して連設固定されていることを特徴とする自動工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に設けられる自動工具交換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いてワークに複数の異なる加工を連続的に行う場合、工具取付台(ラム)に装着された工具を加工毎に、また、当該加工に適した工具に交換する必要がある。この工具交換を作業者が行った場合、交換作業に時間を要するうえ、作業者がその工作機械に常時付いていなくてはならなくなるため、作業性が低下してしまう。
【0003】
そこで、作業性を低下させることなく工具交換を行うことを目的とし、従来、工具交換を自動化する自動工具交換装置を備える工作機械が提案されている。
【0004】
例えば、工作機械に備えられる自動工具交換装置として、特許文献1に開示される自動工具交換装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-101916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、航空機関連のワークには耐熱合金等の難削材が用いられていることが多く、このようなワークを加工する場合、刃具(チップ等)の寿命が非常に短くなってしまう。
【0007】
したがって、大型のワークを加工する場合は、加工途中で刃具の寿命が尽き、工具交換が必要となり、工具交換回数が増加してしまう。
【0008】
そのため、このようなワークを加工する自動工具交換装置においては、加工用途の異なる工具(刃具の種類や装着向きが異なる工具)以外に、同一工具も複数備えておかなければならず、よって、多数の工具を収納することができる工具収納部が必要となるが、特許文献1に開示されるような従来の自動工具交換装置は、刃具(工具)をホルダに装着した状態で工具マガジンに収納しているため、収納する一つ一つの工具の収納にスペースを要し、多数の工具を収納する場合、工具マガジンが大型化し、それに伴い工作機械自体も大型化してしまうため、コストアップだけでなく、フロアスペース占有率も大きくなり、装置レイアウトに支障を来たすおそれがある。
【0009】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、工具マガジン(工具収納スペース)の大型化を抑制しつつ、多数の工具が収納可能な自動工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
ワークを加工する加工テーブル21と工具取付台22とを有する工作機械20に設けられ、前記工具取付台22に設けられた工具10を交換するための自動工具交換装置であって、複数の前記工具10と、前記工具10が装着される工具装着部11aの位置が異なる複数の工具ホルダ11と、前記複数の工具10が収納される第一回転収納体1と、この第一回転収納体1の上方に配され前記複数の工具ホルダ11が収納される第二回転収納体2とを有し、前記工具10及び前記工具ホルダ11は各回転体1,2の中心から放射方向に配され、前記第二回転収納体2の所定位置には前記工具ホルダ11が上下方向に移動するための間隙部3が設けられ、前記第二回転収納体2に設けられたホルダ交換位置Aにおいて、前記第二回転収納体2で選択された適宜な工具ホルダ11が装着され、さらに、前記間隙部3を介して前記第一回転収納体1に設けられた工具交換位置Bにおいて前記工具ホルダ11に前記第一回転収納体1で選択された適宜な前記工具10が装着されるように構成されていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の自動工具交換装置において、前記ホルダ交換位置Aに位置した前記工具取付台22には、前記第二回転収納体2で選択された適宜な前記工具ホルダ11を装着され、この選択された工具ホルダ11が装着された前記工具取付台22は前記間隙部3を介して前記第一回転収納体1の工具交換位置Bに下降移動し、この工具交換位置Bで前記第一回転収納体1で選択された適宜な前記工具10が前記選択された工具ホルダ11に装着され、上昇移動してこの工具取付台22は前記ホルダ交換位置Aに戻動するように構成されていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記第一回転収納体1及び前記第二回転収納体2は、共通の軸4に適宜な間隔を介して積層状態にして水平回転自在に設けられていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0014】
また、請求項3記載の自動工具交換装置において、前記第一回転収納体1は、前記軸4を中心軸として該軸4に水平回転自在に設けられる平面視円形の第一回転体1aと、この第一回転体1aの外周部に沿って設けられる複数の工具保持部5とからなり、この工具保持部5に前記工具10が着脱自在に保持されていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0015】
また、請求項3,4いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記第二回転収納体2は、前記軸4を中心軸として該軸4に水平回転自在に設けられる平面視円形に形成される第二回転体2aと、この第二回転体2aの外周部に沿って設けられる複数の工具ホルダ保持部6とからなり、この工具ホルダ保持部6に前記工具ホルダ11が着脱自在に保持されていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0016】
また、請求項5記載の自動工具交換装置において、前記第二回転体2aには、前記複数の工具ホルダ保持部6と共に、前記工具保持部5が前記外周部に沿って複数設けられていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0017】
また、請求項3~6いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記工具保持部5は前記第一回転体1aに対し突出可能に設けられていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0018】
また、請求項1~7いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、前記工具ホルダ11は、圧媒により動作する工具クランプ部を備え、さらに、前記工具ホルダ11は、内部に前記工具クランプ部を動作させるための前記圧媒を供給する流路を備えていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【0019】
また、請求項1~8いずれか1項に記載の自動工具交換装置において、この自動工具交換装置は、前記工具取付台22が移動自在に設けられる前記工作機械20のクロスレール23に、連結部材8を介して連設固定されていることを特徴とする自動工具交換装置に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のように構成したから、工具等を収納する収納体を大型化することなく、多数の工具を収納することが可能となる。
【0021】
さらに、工具ホルダが上下移動する際のこの工具ホルダの外方側(側方側)への移動量が小さくなるから、その分、移動用スペースを小さくすることができる。
【0022】
したがって、コンパクト化が容易に可能となり、これにより、工作機械の大型化が抑制され、コストアップ、フロアスペース占有率の増大化が抑制され、低コスト化、省スペース化が実現可能な自動工具交換装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施例を備えた工作機械を示す概略斜視図である。
図2】本実施例を示す概略斜視図である。
図3】本実施例の第一回転収納体を示す概略平面図である。
図4】本実施例の第二回転収納体を示す概略平面図である。
図5】本実施例の工具保持部(ロック状態)を示す説明図である。
図6】本実施例の工具保持部(ロック解除状態)を示す説明図である。
図7】本実施例の動作説明図(工具及び工具ホルダ交換時)である。
図8】本実施例の動作説明図(工具のみ交換時)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
本発明は、第一回転収納体1に、刃具10a(例えばチップ)が設けられた複数の工具10が収納され、また、この第一回転収納体1の上方に適宜な間隔をおいて積層状態に配された第二回転収納体2に、第一回転収納体1に収納される工具10を装着する工具装着部11aの位置が異なる複数の工具ホルダ11が収納されている。
【0026】
すなわち、本発明は、刃具10aが設けられた工具10と、この工具10が装着される工具ホルダ11とが分離した状態で収納され、工具交換時は、加工に適した工具10と、その工具10に適した工具ホルダ11が適宜選択され、工具取付台22(ラム)に装着されることとなる。
【0027】
このように、工具10と工具ホルダ11とを分離し、工具交換時に工具ホルダ11に工具10を装着することで、工具ホルダ11の共有化が可能となり、収納スペースの占有率が大きい工具ホルダ11の収納数を少なくすることができ、また、比較的収納スペースの占有率が小さい工具10単体の状態で収納できるから、従来と同じ収納スペースで比較した場合、より多くの工具10を収納することが可能となる。
【0028】
しかも、本発明は、第二回転収納体2に、工具取付台22に設けられた工具ホルダ11が上下方向に移動するための間隙部3が設けられているから、工具ホルダ11が上下移動する際に第二回転収納体2の外周より外側に移動しなくても第二回転収納体2と干渉することなく上下移動することができ、これにより、この工具ホルダ11を設けた工具取付台22の外方側(側方側)への移動範囲の拡大が抑制され、それだけ装置をコンパクト化することができる。
【0029】
すなわち、本発明は、自動工具交換装置を大型化することなく、多数の工具10を収納することが可能であり、これにより、工作機械の大型化が抑制され、コストアップ、フロアスペース占有率の増大化が抑制され、低コスト化、省スペース化が実現可能な自動工具交換装置となる。
【実施例0030】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0031】
本実施例は、ワークを加工する加工テーブル21と工具取付台22(以下、本実施例では「ラム」と称す。)とを有する工作機械20に設けられ、この工作機械20のラム22に設けられるチップ等の刃具10aが設けられた工具10を交換するための自動工具交換装置である。
【0032】
以下、本実施例に係る自動工具交換装置について、図1に示すような、立旋盤に構成される工作機械20に設けられた場合で説明する。
【0033】
本実施例の自動工具交換装置は、複数の工具10と、この工具10が装着される工具装着部11aの位置が異なる複数の工具ホルダ11と、複数の工具10が収納される第一回転収納体1と、この第一回転収納体1の上方に配され複数の工具ホルダ11が収納される第二回転収納体2とを有し、図1に示すように、連結部材8を介してクロスレール23に連設固定され、加工テーブル21のラム移動方向側に並設され、この加工テーブル21と共にカバー体24内に収納配設されている。
【0034】
また、工具10及び工具ホルダ11を収納する第一回転収納体1及び第二回転収納体2は、図2に示すように、夫々、軸4を共通の中心軸として、この軸4に適宜な間隔を介して積層状態にして水平回転自在に設けられている。なお、本実施例は、第一回転収納体1及び第二回転収納体2の二段に構成した場合であるが、回転収納体数は本実施例に限定されるものではなく、三段以上としても良い。
【0035】
また、第一回転収納体1は、図3に示すように、軸4に水平回転自在に設けられる平面視円形の第一回転体1aと、この第一回転体1aの外周部に沿って設けられる複数の工具保持部5とからなり、この工具保持部5で工具10を着脱自在に保持するように構成されている。
【0036】
具体的には、第一回転体1aは、円板状に形成され、併設されるサーボモータ等の駆動源(図示省略)により軸4を中心として正逆回転自在に設けられている。
【0037】
また、本実施例は、この第一回転体1aに設けられる工具保持部5として、TA型工具10(工具ホルダ11の左側面に装着するタイプの工具10)を保持するように構成されたTA型用工具保持部5、TB型工具10(工具ホルダ11の右側面に装着するタイプの工具10)を保持するように構成されたTB型用工具保持部5、TC/TD型工具10(工具ホルダ11の底面に下向きで装着するタイプの工具10)を保持するように構成された工具保持部5の3タイプの工具保持部5を備え、これらの工具保持部5は、図3に示すように、第一回転体1aの外周部に全周に亘って設けられており、本実施例においては、TA型用工具保持部5、TB型用工具保持部5、TC/TD型用工具保持部5を合わせて29本の工具保持部5が設けられている。
【0038】
また、各工具保持部5は、夫々、基体5aと、この基体5aに開閉自在に設けられ工具10を挟持保持する工具挟持部5bと、この工具挟持部5bの開動作をロックするロック部材5cとからなり、所定位置に設けられたロック解除機構7によりロック部材5cによるロックが解除されることで工具挟持部5bが開動作可能となって、工具挟持部5bで挟持保持する工具10が取り出し可能な状態となるように構成されている。
【0039】
具体的には、工具挟持部5bは、一対の挟持半体からなり、夫々、基体5aに回動自在に軸着され、バネなどの付勢部材5dにより工具10を挟持する先端側が閉じ付勢され、この付勢部材5dの閉じ付勢に抗して先端側より工具10を押し込み挿入することで、先端側が開動作し、さらに、工具10が押し込み挿入されこの工具10が保持される位置に配設されることで、付勢部材5dの付勢により先端側が閉動作し、工具10を挟持保持するように構成されている。
【0040】
なお、図示するように、TA型用工具保持部5及びTB型用工具保持部5は、工具挟持部5bが基体5aに対して垂直に設けられ、また、TC/TD型用工具保持部5は、工具挟持部5bが基体5aに対して水平に設けられている。
【0041】
また、ロック部材5cは、工具挟持部5bを構成する一対の挟持半体の軸着部より下側位置で工具挟持部5bに対して挿脱自在に設けられ、ロック解除機構7に押動されることで工具挟持部5bから抜脱しロック解除位置に移動するように構成されている。
【0042】
さらに、ロック部材5cは、図示するように、自動復帰機構5e(本実施例ではバネなどの付勢部材を採用)を備え、ロック解除機構7による押動作用が解除されると、自動復帰機構5e(付勢体の付勢力)により自動的に戻り移動(自動復帰)し、工具挟持部5bに係合する(ロック状態になる)ように構成されている。
【0043】
すなわち、本実施例の工具保持部5は、図5に示すように、工具挟持部5bにロック部材5cが挿入配設されている状態では、このロック部材5cにより工具挟持部5bの下部側が閉動作不能となり、これに伴い、工具10を挟持している先端側も開動作不能となって工具10の挟持状態が保持されるロック状態となり、また、図6に示すように、ロック解除機構7が作動し(ロック部材5cを押動し)、ロック部材5cが工具挟持部5bから抜脱することでロック状態が解除され、これにより、工具挟持部5bの下部側の閉動作が可能となり、よって、工具挟持部5bの先端側も開動作可能となって、この工具保持部5から工具10の取り出しが可能な状態となるように構成されている。
【0044】
なお、工具保持部5は、工具交換位置B(ロック解除機構7の正面位置)に位置した場合にのみ、ロック解除機構7によりロック解除操作が可能となるように構成されている。
【0045】
また、工具保持部5は、第一回転体1aに対し突出可能に設けても良い。この工具保持部5を突出可能に設けることで、工具交換がし易くなり、(工具ホルダ11が隣接する他の工具保持部5に保持された工具10に干渉する心配が無くなる。)、また、工具10の着脱位置の調整が可能となり、例えば、収納(保持)する工具10が変わり、工具10を挟持する位置が変わった場合でも、容易に対応可能となる。
【0046】
また、第二回転収納体2は、図4に示すように、上述した第一回転収納体1の第一回転体1aの上方にこの第一回転体1aと共に軸4に水平回転自在に設けられる第二回転体2aと、この第二回転体2aの外周部に沿って設けられる複数の工具保持部5及び工具ホルダ保持部6とからなり、この工具保持部5及び工具ホルダ保持部6で工具10及び工具ホルダ11を着脱自在に保持するように構成されている。
【0047】
具体的には、第二回転体2aは、第一回転体1aと同様、円板状に形成され、併設されるサーボモータ等の駆動源(図示省略)により軸4を中心として正逆回転自在に設けられている。
【0048】
また、この第二回転収納体2においては、工具保持部5は、TC/TD型用工具保持部5のみが設けられており、具体的には、本実施例は12本のTC/TD型用工具保持部5が設けられている。上段に位置する第二回転収納体2にこのTC/TD型用工具保持部5のみを設けることで、工具交換時のラム22の移動範囲を小さくすることができる。なお、この第二回転収納体2に設けられる工具保持部5は、第一回転収納体1に設けられる工具保持部5と同じ構成であり、また、第一回転収納体1に設けられる工具保持部5と同様、第二回転収納体2にもロック解除機構7が設けられ、このロック解除機構7によりロック解除操作が行われるように構成されている。
【0049】
また、本実施例は、工具ホルダ11として、TA型工具10が装着されるTA型用工具ホルダ11、TB型工具10が装着されるTB型用工具ホルダ11、TC型工具10が装着されるTC型用工具ホルダ11、TD型工具10が装着されるTD型用工具ホルダ11、の4本の工具ホルダ11と1本の計測用ホルダ12の計5本のホルダを備えており、本実施例では、この工具ホルダ11として、圧媒により動作する工具クランプ部を備え、さらに、内部にこの工具クランプ部を動作させるための圧媒を供給する流路が設けられている工具ホルダ11が採用されている。
【0050】
したがって、この第二回転収納体2(第二回転体2a)には、5本の工具ホルダ保持部6が設けられている。
【0051】
この工具ホルダ保持部6は、図示するように、2本の支承部材6aを有し、この2本の支承部材6aで工具ホルダ11(計測用ホルダ12)を支承する構成となっている。なお、図中6bは、工具ホルダ11をクランプする際に工具ホルダ11を位置決めガイドするガイドピン6bである。
【0052】
このように、本実施例の自動工具交換装置は、第一回転収納体1に設けられる29本の工具保持部5及び第二回転収納体2に設けられる12本の工具保持部5の計41本の工具保持部5と、5本の工具ホルダ保持部6とを備え、したがって、最大41本の工具10と5本の工具ホルダ11(計測用ホルダ12)を収納できるように構成されている。
【0053】
また、上述したように、第二回転収納体2においては、第一回転収納体1と同様、工具保持部5と工具ホルダ保持部6は、第二回転体2aの外周部に沿って設けられているが、図示するように、第二回転体2aの所定範囲に工具保持部5及び工具ホルダ保持部6を設けず間隙部3が形成されるように設けられている。
【0054】
具体的には、間隙部3は工具ホルダ11(工具取付台22)が通過可能な幅寸法に設定され、本実施例は、この間隙部3を介して工具ホルダ11(工具取付台22)が第一回転収納体1と第二回転収納体2との間を上下移動するように構成されている。
【0055】
すなわち、本実施例の自動工具交換装置は、第二回転収納体2にラム22が通過可能な間隙部3を設けることで、工具ホルダ11(ラム22)が上下移動する際の第二回転体2aに対する外方側(側方側)への移動量を小さくし、これにより、工具ホルダ11(ラム22)の移動用スペースを小さくして、装置の大型化を抑えた構成となっている。
【0056】
次に、本実施例の工具交換時の動作について説明する。なお、ここでは、第一回転収納体に収納される工具10と、第二回転収納体2に収納される工具ホルダ11の両方を交換する場合について説明する。
【0057】
まず、第一回転収納体1において、第一回転体1aが回転移動し工具ホルダ11に装着されている工具10を保持する工具保持部5が工具交換位置Bに配置され、第二回転収納体2において、第二回転体2aが回転移動し間隙部3が所定位置、具体的にはホルダ交換位置A(ロック解除機構7の正面位置にして工具交換位置Bの真上)に配置される。なお、第一回転体1a、第二回転体2aが回転移送する際、工具ホルダ11(ラム22)は所定の待機位置Cで待機している。(図7(a)参照)。
【0058】
次に、待機位置Cの工具ホルダ11(ラム22)が第二回転収納体2内に移動し、間隙部3を介して第一回転収納体1側に下降移動し工具交換位置Bに配され、工具ホルダ11に装着されている工具10が工具ホルダ11から取り外され工具保持部5に保持される(図7(b),(c)参照)。
【0059】
次に、工具10が取り外された工具ホルダ11(ラム22)が間隙部3を介して上昇し、待機位置Cに退避した後、第一回転収納体1において、第一回転体1aが回転移動し交換装着対象の工具10を保持する工具保持部5が工具交換位置Bに配置され、第二回転収納体2において、第二回転体2aが回転移動し工具取付台22に装着されている工具ホルダ11を保持する工具ホルダ保持部6がホルダ交換位置位A(間隙部3と同様、第一回転収納体1における工具交換位置Bの真上)に配置される(図7(d)参照)。
【0060】
次に、待機位置Cの工具ホルダ11が第二回転収納体2内のホルダ交換位置Aに移動し、ラム22に装着されている工具ホルダ11がラム22から取り外され工具ホルダ保持部6に保持される(図7(e)参照)。
【0061】
次に、工具ホルダ11が取り外されたラム22が上方に退避移動した後、第二回転収納体2において、第二回転体2aが回転移動し交換装着対象の工具ホルダ11を保持する工具ホルダ保持部6がホルダ交換位置Aに配置され、ラム22が下降しこの工具ホルダ保持部6に保持される工具ホルダ11がラム22に装着される(図7(f),(g)参照)。
【0062】
次に、工具ホルダ11を交換、取り付したラム22が待機位置Cに退避し、第二回転収納体2において、第二回転体2aが回転移動し間隙部3がホルダ交換位置Aに配置された後、工具ホルダ11が第二回転収納体2内に移動し、間隙部3を介して第一回転収納体1側に下降移動し工具交換位置Bに配される(図7(h),(i)参照)。
【0063】
そして、この工具交換位置Bに配置された工具ホルダ11に工具10が装着され、工具交換完了となる(図7(j)参照)。
【0064】
なお、工具10のみを交換する場合は、上述した工具10、工具ホルダ11の両方を交換する場合における工具交換動作と同様の動作が行われる(図8(a)~(f)参照)。
【0065】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0066】
本実施例は、工具10と、この工具10が装着される工具ホルダ11とが分離した状態で第一回転収納体1及び第二回転収納体2に収納され、工具交換時は、加工に適した工具10と、その工具10に適した工具ホルダ11が適宜選択され、ラム22に装着されることとなる。
【0067】
すなわち、本実施例は、自動工具交換装置に収納される工具10と工具ホルダ11とを分離した状態で収納し、工具交換時に工具ホルダ11に工具10を装着することで、工具ホルダ11の共有化が可能となり、よって、収納スペースの占有率が大きい工具ホルダ11の収納数を少なくすることができ、また、比較的収納スペースの占有率が小さい工具10単体の状態で収納できるから、従来と同じ収納スペースで比較した場合、より多くの工具10を収納することが可能となる。
【0068】
しかも、本実施例は、第二回転収納体2に間隙部3を設け、この間隙部3を介して工具ホルダ11(ラム22)が上下移動するように構成されているから、工具ホルダ11が上下移動する際に第二回転収納体2の外周より外側に移動しなくても第二回転収納体2と干渉することなく上下移動することができ、これにより、この工具ホルダ11を設けたラム22の外方側(側方側)への移動範囲を小さくすることができ、その分、装置をコンパクト化することができる。
【0069】
下表は、本実施例の自動工具交換装置を備えた立旋盤と、出願人が製造販売する従来の自動工具交換装置を備えた立旋盤(立旋盤:オーエム製作所社製 VTLex1100標準、密閉カバー仕様)との占有面積を比較したものである。
【0070】
【表1】
【0071】
この表に示すように、本実施例は、ほぼ同等の占有面積の従来機(ATC16本仕様)と比較した場合、約2.6倍の本数の工具10を収納することができ、また、ほぼ同等の工具収納本数の従来機(ATC40本仕様)と比較した場合、約33%の占有面積を小さくすることができる。
【0072】
このように、本実施例は、自動工具交換装置を大型化することなく、多数の工具10を収納することが可能であり、これにより、工作機械20の大型化が抑制され、コストアップ、フロアスペース占有率の増大化が抑制され、低コスト化、省スペース化が実現可能となる実用的な自動工具交換装置となる。
【0073】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0074】
1 第一回転収納体
1a 第一回転体
2 第二回転収納体
2a 第二回転体
3 間隙部
4 軸
5 工具保持部
6 工具ホルダ保持部
10 工具
10a 刃具
11 工具ホルダ
11a 工具装着部
20 工作機械
21 加工テーブル
22 工具取付台
23 クロスレール
A ホルダ交換位置
B 工具交換位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8