(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113338
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D1/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009508
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】久保 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】長沼 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 栄作
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AE12
4D075AE17
4D075BB26Z
4D075BB89X
4D075BB92Y
4D075CA32
4D075CB13
4D075DA06
4D075DB02
4D075DB05
4D075DB07
4D075DC12
4D075EA06
4D075EA10
4D075EA43
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB35
4D075EB36
4D075EB38
4D075EB45
4D075EC02
4D075EC10
4D075EC11
4D075EC23
(57)【要約】
【課題】耐候性に優れるとともに白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された高明度の白色系複層塗膜を効率的に形成することができる、複層塗膜形成方法を提供する
【解決手段】鋼板上に形成した硬化電着塗膜上に、特定の第1中塗り塗料(P1)、第2中塗り塗料(P2)、第1水性ベース塗料(BC1)、第2水性ベース塗料(BC2)、及びクリヤーコート塗料(CC)を順次塗装して、特定の顔料組成、明度、膜厚等を備えた第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤーコート塗膜を形成することによって、生産効率に優れ、かつ、環境負荷が低減された複層塗膜形成方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)~(7):
(1)鋼板上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成せしめる工程、
(2)工程(1)で得られる硬化電着塗膜上に、バインダー成分(AP1)、二酸化チタン顔料(B)及び鱗片状アルミニウム顔料(C)を含有する第1中塗り塗料(P1)を塗装して、硬化膜厚(TP1)が15~25μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
P1)が80~90の範囲内である第1中塗り塗膜を形成せしめる工程、
(3)工程(2)で得られる第1中塗り塗膜上に、バインダー成分(AP2)及び二酸化チタン顔料(B)を含有する第2中塗り塗料(P2)をウェットオンウェットで塗装して、硬化膜厚(TP2)が15~25μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
P2)が85~93の範囲内である第2中塗り塗膜を形成せしめる工程、
(4)工程(3)で得られる第2中塗り塗膜上に、バインダー成分(ABC1)及び二酸化チタン顔料(B)を含有する第1水性ベース塗料(BC1)を塗装して、硬化膜厚(TBC1)が5~12μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
BC1)が87~95の範囲内である第1ベース塗膜を形成せしめる工程、
(5)工程(4)で得られる第1ベース塗膜上に、バインダー成分(ABC2)及び光干渉性顔料(D)を含有し、かつ前記光干渉性顔料(D)の含有量が前記バインダー成分(ABC2)の固形分100質量部を基準として3~8質量部の範囲内である第2水性ベース塗料(BC2)をウェットオンウェットで塗装して、硬化膜厚(TBC2)が5~15μmの範囲内である第2ベース塗膜を形成せしめる工程、
(6)工程(5)で得られる第2ベース塗膜上に、クリヤーコート塗料(CC)をウェットオンウェットで塗装してクリヤーコート塗膜を形成せしめる工程、並びに
(7)工程(4)~(6)で形成される第1ベース塗膜、第2ベース塗膜及びクリヤーコート塗膜を含む複層塗膜を加熱することによって、前記複層塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む、複層塗膜形成方法であって、
(ア)前記L*
P2が前記L*
P1より高く、かつ前記L*
P2と前記L*
P1の差が1~10の範囲内であり、
(イ)前記L*
BC1が前記L*
P2より高く、かつ前記L*
BC1と前記L*
P2の差が1~5の範囲内であり、
(ウ)前記TBC1と前記TBC2との比がTBC1/TBC2=1/1~1/3の範囲内である、
複層塗膜形成方法。
【請求項2】
前記工程(4)の前に、工程(2)~(3)で形成される第1中塗り塗膜及び第2中塗り塗膜を含む複層塗膜を加熱することによって、前記複層塗膜を同時に硬化させる工程をさらに含む、請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記工程(6)において、前記工程(2)~(5)で形成される第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤーコート塗膜を加熱することによって、これら5つの塗膜を含む複層塗膜を一度に硬化させる、請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜形成方法に関し、特には、耐候性に優れるとともに白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された高明度の白色系の複層塗膜を効率的に形成することができる、複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板部などの被塗物に、電着塗膜、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を含む複層塗膜を形成せしめることは公知である。このような複層塗膜の形成は、通常の塗色においては、硬化した電着塗膜上への、中塗り塗料の塗装→焼付→ベース塗料の塗装→プレヒート→クリヤー塗料の塗装→焼付の各工程を含む方法により形成することができる。
【0003】
また、自動車外板部などの被塗物に、電着塗膜、中塗り塗膜、白色系ベースコート塗膜、ホワイトパール調又はシルバーパール調の光輝性ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる白色系複層塗膜を形成せしめることも公知である(例えば特許文献1)。このような白色系複層塗膜は、光線がクリヤーコート塗膜及び光輝性ベースコート塗膜を透過することにより、白色系ベースコート塗膜の色調と光輝性ベースコート塗膜の意匠性が相まって、ホワイトパール調又はシルバーパール調の光輝感に優れた高級感のある外観を有する塗膜を形成することができる。
【0004】
ところで、高明度の白色系複層塗膜を形成する場合は、高明度と耐候ハガレ抑制を両立させるために、第1中塗り塗料の塗装→焼付→高明度第2中塗り塗料の塗装→焼付→光輝性ベース塗料の塗装→プレヒート→クリヤー塗料の塗装→焼付の各工程を含む方法を用いることができる。かかる方法によれば、第1中塗り塗料と第2中塗り塗料に異なる機能を分担させることにより、高明度と耐候ハガレ抑制の両立を図ることができるが、一方で、第1中塗り塗料の塗装→焼付→高明度第2中塗り塗料の塗装→焼付という工程を含み、したがって中塗り塗膜の焼付工程が2回必要となることから、生産効率の点で問題があり、また使用エネルギーが大きいため環境負荷の点でも問題がある。また、このような高明度の白色系複層塗膜にあっては、高い意匠性を提供するために白色ムラ及び光輝ムラ等の抑制も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑み、耐候性に優れるとともに白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された高明度の白色系複層塗膜を効率的に形成することができる、複層塗膜形成方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、下記の工程(1)~(7):
(1)鋼板上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成せしめる工程、
(2)工程(1)で得られる硬化電着塗膜上に、バインダー成分(AP1)、二酸化チタン顔料(B)及び鱗片状アルミニウム顔料(C)を含有する第1中塗り塗料(P1)を塗装して、硬化膜厚(TP1)が15~25μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
P1)が80~90の範囲内である第1中塗り塗膜を形成せしめる工程、
(3)工程(2)で得られる第1中塗り塗膜上に、バインダー成分(AP2)及び二酸化チタン顔料(B)を含有する第2中塗り塗料(P2)をウェットオンウェットで塗装して、硬化膜厚(TP2)が15~25μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
P2)が85~93の範囲内である第2中塗り塗膜を形成せしめる工程、
(4)工程(3)で得られる第2中塗り塗膜上に、バインダー成分(ABC1)及び二酸化チタン顔料(B)を含有する第1水性ベース塗料(BC1)を塗装して、硬化膜厚(TBC1)が5~12μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
BC1)が87~95の範囲内である第1ベース塗膜を形成せしめる工程、
(5)工程(4)で得られる第1ベース塗膜上に、バインダー成分(ABC2)及び光干渉性顔料(D)を含有し、かつ該光干渉性顔料(D)の含有量が該バインダー成分(ABC2)の固形分100質量部を基準として3~8質量部の範囲内である第2水性ベース塗料(BC2)をウェットオンウェットで塗装して、硬化膜厚(TBC2)が5~15μmの範囲内である第2ベース塗膜を形成せしめる工程、
(6)工程(5)で得られる第2ベース塗膜上に、クリヤーコート塗料(CC)をウェットオンウェットで塗装してクリヤーコート塗膜を形成せしめる工程、並びに
(7)工程(4)~(6)で形成される第1ベース塗膜、第2ベース塗膜及びクリヤーコート塗膜を含む複層塗膜を加熱することによって、前記複層塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む、複層塗膜形成方法であって、
(ア)前記L*
P2が前記L*
P1より高く、かつ前記L*
P2と前記L*
P1の差が1~10の範囲内であり、
(イ)前記L*
BC1が前記L*
P2より高く、かつ前記L*
BC1と前記L*
P2の差が1~5の範囲内であり、
(ウ)前記TBC1と前記TBC2との比がTBC1/TBC2=1/1~1/3の範囲内である、
複層塗膜形成方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐候性に優れるとともに白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された高明度の白色系の複層塗膜を形成する方法であって、生産効率に優れ、かつ、環境負荷が低減された方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0010】
[硬化電着塗膜の形成]
本発明では、まず鋼板上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成する(工程(1))。本明細書において、電着塗料は、被塗装物である鋼板の表面に塗装されることにより、鋼板の錆、腐食を防止するとともに、複層塗膜が形成された物品の表面の耐衝撃性を強化するために使用される塗料である。
【0011】
被塗装物である鋼板としては、例えば、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材等を用いることができる。また、これらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理を行ったものを用いてもよい。
【0012】
本工程において使用される電着塗料は、当該分野で慣用されている熱硬化性の水性塗料であることが好ましく、カチオン型電着塗料又はアニオン型電着塗料のいずれも使用することができる。かかる電着塗料は、基体樹脂及び硬化剤と、水及び/又は親水性有機溶剤からなる水性媒体とを含有する水性塗料であることが好ましい。
【0013】
耐錆性の観点から、基体樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を使用することが好ましい。なかでも、耐錆性の観点から、基体樹脂の少なくとも一種として、芳香環を有する樹脂を使用することが好ましく、なかでも芳香環を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。また硬化剤としては、例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂等を使用することが好ましい。ここで、親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等を挙げることができる。電着塗料を塗装することにより、耐錆性の高い塗膜を得ることができる。
【0014】
本工程において、電着塗料を鋼板上に塗装する手段は、当該分野で慣用されている電着塗装方法を採用することができる。この塗装方法により、予め成形処理が施された被塗装物においても、その表面のほぼ全体にわたって耐錆性の高い塗膜を形成させることができる。
【0015】
本工程において形成される電着塗膜は、同塗膜の上に形成される第1中塗り塗膜との間における混層の発生を防止し、結果として得られる複層塗膜の塗装外観を向上させるために、熱硬化性の電着塗料を塗装した後、未硬化の該塗膜を焼付処理して加熱硬化させる。なお、本明細書において「硬化電着塗膜」は、鋼板上に形成された電着塗膜を加熱硬化して得られる塗膜を意味する。
【0016】
一般に190℃を超える温度で焼付処理を行うと、塗膜が固くなりすぎて脆くなり、逆に110℃未満の温度で焼付処理を行うと、上記の成分の反応が不十分となり、いずれも好ましくない。それ故、本工程において、未硬化の電着塗膜の焼付処理の温度は一般に110~190℃、特に120~180℃の範囲内であることが好ましい。また、焼付処理の時間は通常10~60分間であることが好ましい。上記の条件下で焼付処理を行うことにより、硬化した乾燥状態の電着塗膜を得ることができる。
【0017】
また、上記の条件下で焼付処理した後の、硬化電着塗膜の乾燥膜厚は通常5~40μm、特に10~30μmの範囲内であることが好ましい。
【0018】
上記に従い電着塗膜を形成させることにより、塗装鋼板の耐錆性を向上させることができる。
【0019】
[第1中塗り塗膜の形成]
工程(1)で得られる硬化電着塗膜上に、第1中塗り塗料(P1)を塗装して、第1中塗り塗膜が形成される(工程(2))。第1中塗り塗料(P1)は、バインダー成分(AP1)、二酸化チタン顔料(B)及び鱗片状アルミニウム顔料(C)を含有する。また、第1中塗り塗料(P1)により形成される第1中塗り塗膜は、その硬化膜厚(TP1)が15~25μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
P1)が80~90の範囲内の塗膜である。なお、本明細書において明度L*値とは、L*a*b*表色系における明度L*値を意味する。また、第1中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P1)は、硬化電着塗膜上に形成された第1中塗り塗膜が硬化された状態において、第1中塗り塗膜における硬化電着塗膜と接する側とは反対側の表面から測定して得られる明度である。
【0020】
L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、日本でもJIS Z 8784-1に採用された表色系であり、明度をL*、色相と彩度を示す色度をa*及びb*で表すものである。a*は赤方向(-a*は緑方向)、b*は黄方向(-b*は青方向)を示すものである。本明細書におけるL*、a*及びb*は、多角度分光光度計CM512m3(商品名、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、塗膜表面の垂直な軸に対して25度の照射光で、塗膜表面に対して90度で受光した分光反射率から計算した数値として定義するものとする。
【0021】
第1中塗り塗料(P1)に用いられるバインダー成分(AP1)としては、中塗り塗料に通常用いられる塗膜形成性樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂組成物としては、例えば、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)等の架橋剤とを併用したものを挙げることができ、これらは有機溶剤及び/又は水等の溶媒に溶解又は分散して使用される。
【0022】
二酸化チタン顔料(B)は白色顔料であって、形成塗膜に白色を付与することができる。二酸化チタン顔料(B)の結晶型は、ルチル型、アナターゼ型のいずれであってもよいが、形成される塗膜の隠蔽性及び耐候性に優れる点から、ルチル型が好ましい。また、二酸化チタン顔料(B)は、二酸化チタンの表面を、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化珪素等の無機酸化物;アミン、アルコール等の有機化合物等で被覆処理をしたものであってもよい。
【0023】
二酸化チタン顔料(B)の配合量は、第1中塗り塗料(P1)を用いて形成される第1中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P1)が80~90の範囲内となるように適宜調整されるが、一般的にはバインダー成分(AP1)の固形分100質量部を基準として、二酸化チタン顔料(B)が50~150質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは80~140質量部の範囲であり、さらに好ましくは100~130質量部の範囲内である。
【0024】
鱗片状アルミニウム顔料(C)は、一般にアルミニウムをボールミルやアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造され、塗料用としては通常平均粒子径(D50)が1~50μm程度、特に5~25μm程度のものが、また厚さは、0.01μm~10μm、特に0.1μm~5μmの範囲内のものが、塗料中における安定性や形成される塗膜の仕上がりの点から使用される。上記平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。厚さは、該鱗片状アルミニウム顔料(C)を含む塗膜断面を顕微鏡にて観察して厚さを画像処理ソフトを使用して測定し、100個以上の測定値の平均値として定義するものとする。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0025】
鱗片状アルミニウム顔料(C)は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。リーフィングタイプは、塗料組成物に配合すると塗装して得られた塗膜の表面に配列(リーフィング)し、金属感の強い仕上がりが得られ、熱反射作用を有し、防錆力を発揮するものであるため、タンク・ダクト・配管類及び屋上ルーフィングをはじめ各種建築材料などに利用されることが多い。本発明の水性塗料組成物においては塗装して得られる塗膜の金属感や仕上がり性の点から、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
【0026】
ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料としては、表面を特に処理していないものも使用できるが、表面を樹脂で被覆せしめたもの、シリカ処理を施したもの及びリン酸やモリブデン酸、シランカップリング剤で表面を処理したものを使用することができる。以上の各種表面処理の中から一種の処理をせしめたものを使用することができるが、複数種類の処理をせしめたものを使用してもよい。また、鱗片状アルミニウム顔料表面に着色顔料を被覆してさらに樹脂被覆せしめたものや、鱗片状アルミニウム顔料表面に酸化鉄等の金属酸化物を被覆したものなどの着色アルミニウム顔料を使用してもよい。
【0027】
本発明の水性塗料組成物において、鱗片状アルミニウム顔料(C)の配合量は、第1中塗り塗料(P1)を用いて形成される第1中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P1)が80~90の範囲内となるように適宜調整されるが、塗装して得られる塗膜の金属感や仕上がり外観の点から、一般的にはバインダー成分(AP1)の固形分100質量部を基準として、鱗片状アルミニウム顔料(C)が0.01~7質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1~6質量部の範囲であり、さらに好ましくは1~4質量部の範囲内である。
【0028】
第1中塗り塗料(P1)には、さらに必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、表面調整剤等の各種添加剤、二酸化チタン顔料(B)及び鱗片状アルミニウム顔料(C)以外の着色顔料や光輝性顔料、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の体質顔料等を適宜配合することができる。
【0029】
第1中塗り塗料(P1)に用いられる二酸化チタン顔料(B)以外の着色顔料としては、形成される白色系複層塗膜の耐候性等の観点から、少なくともその1種として、カーボンブラック顔料を使用することが好ましい。第1中塗り塗料(P1)が上記カーボンブラック顔料を含有する場合、該カーボンブラック顔料の含有量は、第1中塗り塗料(P1)中のバインダー成分(AP1)の合計固形分100質量部を基準として、0.005~2質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.01~0.5質量部の範囲内である。
【0030】
第1中塗り塗料(P1)は、水性塗料であっても有機溶剤型塗料であってもよい。ここで、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、バインダー成分、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。第1中塗り塗料(P1)が水性塗料である場合、第1中塗り塗料(P1)中の水の含有量は、20~80質量%程度が好ましく、30~60質量%程度がより好ましい。
【0031】
第1中塗り塗料(P1)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。第1中塗り塗料(P1)の塗料固形分は、30~60質量%、より好ましくは40~50質量%の範囲に調整しておくことが好ましい。
【0032】
第1中塗り塗料(P1)は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で、必要に応じて印加して、塗装することがでる。
【0033】
第1中塗り塗料(P1)によって形成される第1中塗り塗膜の膜厚は、得られる複層塗膜の耐候ハガレの抑制及び塗膜のタレの抑制等の観点から、硬化塗膜(TP1)に基づいて15~25μmの範囲内であり、より好ましくは17~24μmの範囲内であり、さらに好ましくは19~23の範囲内である。本発明においては、第1中塗り塗料(P1)として、二酸化チタン顔料(B)及び鱗片状アルミニウム顔料(C)を含有する塗料を使用することにより、比較的薄い膜厚でも光線透過が少なく耐候ハガレを抑制できる。このため、本発明では、第1中塗り塗膜の膜厚を薄く設定できることから、未硬化の第1中塗り塗膜上にウェットオンウェットで第2中塗り塗膜を形成し(すなわち、第2中塗り塗膜形成前の第1中塗り塗膜の硬化工程を省略して)、その後、未硬化の第1中塗り塗膜及び未硬化の第2中塗り塗膜を含む複層塗膜を一度に加熱硬化させることにより、高明度の中塗り塗膜を形成することができる。このように、第1中塗り塗料(P1)により第1中塗り塗膜を形成し、次に、第1中塗り塗膜上にウェットオンウェットで第2中塗り塗料(P2)を塗装して第2中塗り塗膜を形成し、その後、未硬化の第1中塗り塗膜及び未硬化の第2中塗り塗膜を加熱硬化させることにより、1回の加熱硬化工程で高明度の中塗り塗膜を形成することができるので、生産効率の向上と環境負荷の低減を図ることができる。
【0034】
また、第1中塗り塗料(P1)によって形成される第1中塗り塗膜は、その硬化時の明度L*値(L*
P1)が80~90の範囲内であり、かつ後述する第2中塗り塗料(P2)により形成される第2中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P2)との関係で、前記L*
P2が前記L*
P1より高く、かつ前記L*
P2と前記L*
P1の差が1~10の範囲内であるように設定される。前記L*
P1をこのように設定することにより、後述する第2中塗り塗膜、第1ベース塗膜、及び第2ベース塗膜とあいまって、高明度でかつ白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された複層塗膜を形成することができる。第1中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P1)は、好ましくは80~89の範囲内であり、より好ましくは81~86の範囲内である。また、L*
P2とL*
P1の差は、白色ムラの抑制等の観点から、好ましくは1~10の範囲内であり、より好ましくは3~7の範囲内である。
【0035】
未硬化の第1中塗り塗膜上にウェットオンウェットで未硬化の第2中塗り塗膜を形成することにより、未硬化の複層塗膜が得られるが、この未硬化の複層塗膜は、第1水性ベース塗料(BC1)の塗装前に加熱硬化させてもよいし、未硬化のままでさらに工程(4)以降に供してもよい。未硬化のままで工程(4)以降に供する場合は、後述する工程(7)において工程(4)~(6)で形成される第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤーコート塗膜と一緒に加熱硬化させることができるので、省エネルギー面でさらに有利である。また、第1中塗り塗膜及び第2中塗り塗膜を含む複層塗膜を第1水性ベース塗料(BC1)の塗装前に加熱硬化させる場合は、硬化した第2中塗り塗膜表面を水研等の手段により研磨することによって、塗膜の平滑性を更に高めることができる。加熱硬化させる場合の加熱手段としては、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等を用いることができる。加熱温度は、80~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましい。また加熱時間は、10~60分間が好ましく、15~40分間がより好ましい。必要に応じて、前記加熱硬化を行う前に、プレヒート、エアブロー等により、約50~約110℃、好ましくは約60~約90℃の温度で1~60分間程度、直接的又は間接的に加熱を行ってもよい。
【0036】
[第2中塗り塗膜の形成]
工程(2)で得られる第1中塗り塗膜上に、第2中塗り塗料(P2)を塗装して、第2中塗り塗膜が形成される(工程(3))。第2中塗り塗料(P2)は、バインダー成分(AP2)及び二酸化チタン顔料(B)を含有する。また、第2中塗り塗料(P2)により形成される第2中塗り塗膜は、その硬化膜厚(TP2)が15~25μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
P2)が85~93の範囲内の塗膜である。ここで、第2中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P2)は、積層状態に形成された第1中塗り塗膜と第2中塗り塗膜の両塗膜が硬化された状態において、第2中塗り塗膜における第1中塗り塗膜と接する側とは反対側の表面から測定して得られる明度である。
【0037】
第2中塗り塗料(P2)に用いられるバインダー成分としては、前記第1中塗り塗料(P1)に用いられるバインダー成分と同様の基体樹脂及び架橋剤から適宜選択して使用することができる。
【0038】
また、第2中塗り塗料(P2)に配合される二酸化チタン顔料(B)は、第1中塗り塗料に用いられるものが使用できる。第2中塗り塗料(P2)における二酸化チタン顔料(B)の配合量は、第2中塗り塗料(P2)を用いて形成される第2中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P1)が85~93の範囲内となるように調整されるが、一般的にはバインダー成分(AP2)の固形分100質量部を基準として、二酸化チタン顔料(B)が50~150質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは80~140質量部の範囲であり、さらに好ましくは100~130質量部の範囲内である。
【0039】
第2中塗り塗料(P2)には、さらに必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、表面調整剤等の各種添加剤、二酸化チタン顔料(B)以外の着色顔料や光輝性顔料、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の体質顔料等を適宜配合することができる。
【0040】
第2中塗り塗料(P2)に用いられる二酸化チタン顔料(B)以外の着色顔料としては、形成される白色系複層塗膜の耐候性等の観点から、少なくともその1種として、カーボンブラック顔料を使用することが好ましい。第2中塗り塗料(P2)が上記カーボンブラック顔料を含有する場合、該カーボンブラック顔料の含有量は、第2中塗り塗料(P2)中のバインダー成分(AP1)の合計固形分100質量部を基準として、0.0050~2質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.01~0.5質量部の範囲内である。
【0041】
第2中塗り塗料(P2)は、水性塗料であっても有機溶剤型塗料であってもよいが、VOC削減の観点からは、水性塗料であることが好ましい。第2中塗り塗料(P2)が水性塗料である場合、第2中塗り塗料(P2)中の水の含有量は、20~80質量%程度が好ましく、30~60質量%程度がより好ましい。
【0042】
第2中塗り塗料(P2)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。第2中塗り塗料(P2)の塗料固形分は、好ましくは30~60質量%の範囲内であり、より好ましくは40~50質量%の範囲内である。
【0043】
第2中塗り塗料(P2)は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で、必要に応じて印加して、塗装することができる。第2中塗り塗料(P2)により形成される第2中塗り塗膜の膜厚は、得られる複層塗膜の白色ムラの抑制及び塗膜のタレの抑制等の観点から、硬化塗膜(TP2)に基づいて15~25μmの範囲内であり、好ましくは17~24μmの範囲内であり、より好ましくは19~23μmの範囲内である。
【0044】
第2中塗り塗料(P2)によって形成される第2中塗り塗膜は、その硬化時の明度L*値(L*
P2)が85~93の範囲内である。また、上述したとおり、第1中塗り塗料(P1)により形成される第1中塗り塗膜との関係で、前記L*
P2は第1中塗り塗膜の硬化時の明度L*
P1より高く、かつ前記L*
P2と前記L*
P1の差が1~10の範囲内であるように設定される。さらに、第2中塗り塗膜は、後述する第1水性ベース塗料(BC1)により形成される第1ベース塗膜との関係で、前記第1ベース塗膜の硬化時の明度L*
BC1が前記L*
P2より高く、かつ前記L*
BC1と前記L*
P2の差が1~5の範囲内であるように設定される。L*
P2をこのように設定することにより、その上下の塗膜である第1中塗り塗膜、第1ベース塗膜、及び第2ベース塗膜とあいまって、高明度でかつ白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された複層塗膜を形成することができる。第2中塗り塗膜の硬化時の明度L*値(L*
P2)は、好ましくは86~93の範囲内であり、より好ましくは89~92の範囲内である。また、L*
BC1とL*
P2の差は、得られる複層塗膜の白色ムラの抑制等の観点から、好ましくは1~10の範囲内であり、より好ましくは3~7の範囲内である。
【0045】
上記第2中塗り塗膜は、硬化後に次の工程(4)である第1ベース塗膜の形成に供してもよいし、未硬化のままで次の工程(4)である第1ベース塗膜の形成に供してもよい。上述したように、第1中塗り塗膜及び第2中塗り塗膜をウェットオンウェットで形成してなる未硬化の複層塗膜は、第1水性ベース塗料(BC1)の塗装前に加熱硬化させてもよいし、未硬化のままでさらに工程(4)以降に供してもよい。未硬化のままで工程(4)以降に供する場合は、すでに述べたように、後述する工程(7)において工程(4)~(6)で形成される第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤーコート塗膜と一緒に加熱硬化させることができる。
【0046】
[第1ベース塗膜の形成]
工程(4)では、工程(3)で得られる第2中塗り塗膜上に、水性塗料である第1水性ベース塗料(BC1)を塗装して、硬化膜厚(TBC1)が5~12μmの範囲内であり、かつ硬化時の明度L*値(L*
BC1)が87~95の範囲内である第1ベース塗膜を形成させる。ここで、第1ベース塗膜の硬化時の明度L*値(L*
BC1)は、積層状態に形成された第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜及び第1ベース塗膜が硬化された状態において、第1ベース塗膜における第2中塗り塗膜と接する側とは反対側の表面から測定して得られる明度である。また、第1水性ベース塗料(BC1)は、バインダー成分(ABC1)及び二酸化チタン顔料(B)を含有する。
【0047】
第1水性ベース塗料(BC1)に使用されるバインダー成分(ABC1)としては、通常塗料に用いられる塗膜形成性樹脂を含有する樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂組成物としては熱硬化性樹脂組成物を好適に用いることができ、具体的には、例えば、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)等の架橋剤とを併用したものを用いることができる。これらの樹脂組成物は有機溶剤及び/又は水等の溶媒に溶解又は分散させて使用することができる。樹脂組成物中における基体樹脂と架橋剤の割合には特に制限はないが、一般に、架橋剤は、基体樹脂固形分総量に対して、10~100質量%、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~60質量%の範囲内で使用することができる。
【0048】
第1水性ベース塗料(BC1)に使用される二酸化チタン顔料(B)は、第1中塗り塗料(P1)、第2中塗り塗料(P2)に用いられるものが使用できる。二酸化チタン顔料(B)の配合量は、第1水性ベース塗料(BC1)を用いて形成される第1ベース塗膜の硬化時の明度L*値(L*
BC1)が87~95の範囲内となるように調整されるが、一般的にはバインダー成分(ABC1)の固形分100質量部を基準として、二酸化チタン顔料(B)が50~100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60~90質量部の範囲であり、さらに好ましくは65~85質量部の範囲内である。
【0049】
第1水性ベース塗料(BC1)には、さらに必要に応じて、顔料分散剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、表面調整剤等の各種添加剤、二酸化チタン顔料(B)以外の着色顔料や光輝性顔料、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の体質顔料等を適宜配合することができる。
【0050】
第1水性ベース塗料(BC1)の塗料固形分は、15~70質量%の範囲内が適切であり、好ましくは20~60質量%の範囲内であり、さらに好ましくは30~50質量%の範囲内である。
【0051】
上記第1水性ベース塗料(BC1)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の公知の塗装方法を用いて塗装することができる。
【0052】
第1水性ベース塗料(BC1)により形成される第1ベース塗膜の膜厚は、硬化膜厚(TBC1)として5~12μmの範囲内であり、好ましくは6~11μmの範囲内であり、さらに好ましくは7~10μmの範囲内である。また、第1ベース塗膜の硬化膜厚(TBC1)は、後述する第2水性ベース塗料により形成される第2ベース塗膜の硬化膜厚との関係で、前記TBC1と前記TBC2との比がTBC1/TBC2=1/1~1/3の範囲内であるように設定される。前記TBC1と前記TBC2との比(TBC1/TBC2)は、好ましくは1/1~1/2.5の範囲であり、より好ましくは1/1~1/2の範囲である。
【0053】
第1水性ベース塗料(BC1)によって形成される第1ベース塗膜は、その硬化時の明度L*値(L*
BC1)が87~95の範囲内である。前記L*
BC1は、好ましくは88~94の範囲内であり、さらに好ましくは90~93の範囲内である。また、上述したように、前記L*
BC1は、第2中塗り塗膜の明度L*
P2との関係で、前記L*
BC1が前記L*
P2より高く、かつ前記L*
BC1と前記L*
P2の差が1~5の範囲内であるように設定される。
【0054】
第1水性ベース塗料(BC1)により形成される第1ベース塗膜の膜厚及び明度を上記のように設定することにより、その上下の塗膜である第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、及び第2ベース塗膜とあいまって、高明度でかつ白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された複層塗膜を形成することができる。特に、本発明では、前記高明度の第2中塗り塗膜よりさらに高明度の第1ベース塗膜を形成し、さらに、後述する工程(5)において、未硬化の第1ベース塗膜上にウェットオンウェットで、光干渉性顔料(D)を比較的少量含有する第2水性ベース塗料を塗布して、第1ベース塗膜よりも膜厚の大きい第2ベース塗膜を形成することにより、光干渉性第2ベース塗膜の膜厚に起因する光輝ムラを効果的に抑制することができる。
【0055】
[第2ベース塗膜の形成]
工程(5)では、工程(4)で得られる未硬化の第1ベース塗膜上に、水性塗料である第2水性ベース塗料(BC2)を塗装して、硬化膜厚(TBC2)が5~15μmの範囲内である第2ベース塗膜を形成させる。ここで、第2水性ベース塗料(BC2)は、バインダー成分(ABC2)及び光干渉性顔料(D)を含有し、かつ前記光干渉性顔料(D)の含有量は、前記バインダー成分(ABC2)の固形分100質量部を基準として3~8質量部の範囲内である。
【0056】
第2水性ベース塗料(BC2)に用いられるバインダー成分(ABC2)としては、前記第1水性ベース塗料(BC1)に用いられるバインダー成分の説明で列記した基体樹脂及び架橋剤から適宜選択して使用することができる。
【0057】
光干渉性顔料(D)は、マイカ、人工マイカ、ガラス、シリカ、酸化鉄、酸化アルミニウムや各種金属等鱗片状基材の表面に、二酸化チタンや酸化鉄等の基材とは屈折率が異なる金属酸化物が被覆された光輝性顔料である。具体的には、下記に示す金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料等を挙げることができる。
【0058】
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、基材表面を金属酸化物で被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材であり、人工マイカとは、SiO2、MgO、Al2O3、K2SiF6、Na2SiF6等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。具体的には、フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F2)、カリウム四ケイ素雲母(KMg25AlSi4O10F2)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg25AlSi4O10F2)、Naテニオライト(NaMg2LiSi4O10F2)、LiNaテニオライト(LiMg2LiSi4O10F2)等が知られている。被覆に用いる金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆する厚さによって、干渉色を発現することができるものである。
【0059】
上記金属酸化物被覆マイカ顔料としては、市販品を使用することができる。該金属酸化物被覆マイカ顔料の市販品としては、例えば、日本光研工業社製の「TWINCLE PEARL」シリーズ、BASF社製の「Lumina」シリーズ、「Magna Pearl」シリーズ、MERCK社製の「IRIODIN」シリーズ等が挙げられる。
【0060】
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面を金属酸化物で被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味する。酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。被覆に用いる金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆する厚さによって、干渉色を発現することができるものである。
上記金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料としては、市販品を使用することができる。該金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料の市販品としては、例えば、MERCK社製の「Xirallic」シリーズ等が挙げられる。
【0061】
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料は、鱗片状のガラス基材を金属酸化物で被覆したものであって、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じて粒子感を発現する。被覆に用いる金属酸化物としては、特に制限されるものではないが、酸化チタンや酸化鉄が知られている。
上記金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料としては、市販品を使用することができる。該金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料の市販品としては、例えば、日本板硝子社製の「メタシャイン」シリーズ等が挙げられる。
【0062】
金属酸化物被覆シリカフレーク顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを、基材とは屈折率が異なる金属酸化物で被覆したものである。
上記金属酸化物被覆シリカフレーク顔料としては、市販品を使用することができる。該金属酸化物被覆シリカフレーク顔料の市販品としては、例えば、MERCK社製の「Colorstream」シリーズ等が挙げられる。
【0063】
上記光干渉性顔料(D)は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0064】
上記光干渉性顔料(D)の大きさは、平均粒子径が5~50μmの範囲内のものを使用することが、塗装された塗膜の仕上がり性や干渉色の発現の点から好ましく、より好ましくは平均粒子径が7~35μmの範囲内のものである。厚さは0.05~7.0μmの範囲内のものを使用することが好ましい。ここでいう平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。厚さは、該光干渉性顔料(C)を含む塗膜断面を顕微鏡にて観察して厚さを画像処理ソフトを使用して測定し、100個以上の測定値の平均値として定義するものとする。
【0065】
また、第2水性ベース塗料(BC2)において、光干渉性顔料(D)の含有量は、得られる複層塗膜の光輝ムラの抑制及び光輝感等の観点から、バインダー成分(ABC2)の固形分100質量部を基準として3~8質量部の範囲内であり、好ましくは4~7質量部の範囲内である。
【0066】
第2水性ベース塗料(BC2)は、さらに必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の各種塗料用添加剤、光干渉性顔料(D)以外の着色顔料や光輝性顔料、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の体質顔料等を適宜配合することができる。
【0067】
上記第2水性ベース塗料(BC2)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の公知の塗装方法を用いて塗装することができる。
【0068】
第2水性ベース塗料(BC2)の塗料固形分は、10~50質量%の範囲内が適切であり、好ましくは15~40質量%の範囲内、さらに好ましくは20~30質量%の範囲内である。
また、第3着色水性塗料(BC2)により形成される第2ベース塗膜の膜厚は、硬化膜厚(TBC2)として5~15μmの範囲内であり、好ましくは6~14μmの範囲内、さらに好ましくは7~13μmの範囲内である。また、既述のとおり、前記TBC2は、第1ベース塗膜の硬化膜厚TBC1との関係で、TBC1/TBC2=1/1~1/3の範囲内となるように調整される。
【0069】
第2水性ベース塗料(BC2)における光干渉性顔料(D)の含有量及び第2ベース塗膜の硬化膜厚をこのように設定することにより、第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、及び第1ベース塗膜とあいまって、高明度でかつ光輝ムラ等が抑制された複層塗膜を形成することができる。特に、既述のとおり、未硬化の第1ベース塗膜上にウェットオンウェットで、光干渉性顔料(D)を比較的少量含有する第2水性ベース塗料を塗布して、第1ベース塗膜よりも膜厚の大きい第2ベース塗膜を形成するので、光干渉性第2ベース塗膜の膜厚に起因する光輝ムラを効果的に抑制することができる。
【0070】
[クリヤーコート塗膜の形成]
本発明においては、工程(5)において形成された未硬化の第2ベース塗膜上に、ウェットオンウェットでクリヤーコート塗料(CC)を塗装して、クリヤーコート塗膜を形成する(工程(6))。
【0071】
クリヤーコート塗料(CC)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができ、具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂等の架橋剤をビヒクル成分として含有する有機溶剤系熱硬化型塗料、水性熱硬化型塗料、熱硬化粉体塗料等が挙げられる。中でも、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂を含む有機溶剤系熱硬化型塗料、又は水酸基含有アクリル樹脂とブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含む熱硬化型塗料が好適である。クリヤーコート塗料は、一液型塗料であってもよく、あるいは二液型ウレタン樹脂塗料等の二液型塗料であってもよい。
【0072】
また、上記クリヤーコート塗料(CC)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料、つや消し剤等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0073】
クリヤーコート塗料(CC)は、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
【0074】
クリヤーコート塗料(CC)は、硬化膜厚で、通常10~80μm、好ましくは15~60μm、より好ましくは20~50μmの範囲内になるように塗装することができる。また、塗膜欠陥の発生を防止する等の観点から、クリヤーコート塗料(CC)の塗装後は、必要に応じて、室温で1~60分間程度のインターバルをおいたり、約40~約80℃の温度で1~60分間程度プレヒートしたりすることができる。
【0075】
[塗膜の加熱硬化]
工程(7)においては、工程(4)~(6)で形成される第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤーコート塗膜を含む複層塗膜を加熱することによって、前記複層塗膜を一度に硬化させる。
前記工程(3)において、前記第2中塗り塗料(P1)の塗装後に第1中塗り塗膜及び第2中塗り塗膜を加熱硬化しない場合は、本工程(7)において、前記工程(2)~(6)で形成される第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤーコート塗膜を加熱することによって、これら5つの塗膜を含む複層塗膜を一度に硬化させることができる。この場合は、第2中塗り塗料(P1)の塗装後に第1中塗り塗膜及び第2中塗り塗膜を加熱硬化させる場合よりも、加熱硬化を1回省略できるので、さらに省エネルギー性を向上させることができる。
加熱手段は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、80~160℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。また加熱時間は、10~60分間が好ましく、15~40分間がより好ましい。必要に応じて、前記加熱硬化を行う前に、プレヒート、エアブロー等により、約50~約110℃、好ましくは約60~約90℃の温度で1~60分間程度、直接的又は間接的に加熱を行ってもよい。
【0076】
[形成された複層塗膜]
以上の工程によって形成された複層塗膜は、硬化電着塗膜の上に形成された第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜、及びクリヤーコート塗膜の5層を備えた積層構造を有する。本発明によれば、特定の第1中塗り塗料(P1)、第2中塗り塗料(P2)、第1水性ベース塗料(BC1)、及び第2水性ベース塗料(BC2)を用いて、特定の組成、明度、膜厚等を備えた第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜を形成するので、耐候性に優れるとともに白色ムラ及び光輝ムラ等が抑制された高明度の白色系の複層塗膜を、高い生産効率と低減された環境負荷の下で形成することができる。
【実施例0077】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0078】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
製造例1
撹拌装置、温度計、反応生成水除去装置、窒素ガス導入管を備えた反応器に、イソフタル酸664部、アジピン酸496部、無水フタル酸237部、ネオペンチルグリコール788部、トリメチロールプロパン341部を入れ、窒素ガス雰囲気下において撹拌しながら160℃まで加熱した。160℃にて1時間保持した後、生成する縮合水を除去しながら5時間かけて230℃まで昇温し、同温度で保持した。酸価が7mgKOH/gになった時点で170℃まで冷却し、ε-カプロラクトン490部を入れ、同温度で1時間保持してから、加熱残分が70%となるよう「スワゾール1000」(石油系高沸点芳香族溶剤、丸善石油化学社製)にて希釈することにより、水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-1)は、水酸基価100mgKOH/g、酸価5.7mgKOH/g、数平均分子量2030、加熱残分70%であった。
【0079】
有機溶剤型第1中塗り塗料の製造
製造例2~9
表1に示す組成の各原材料(製造例1で製造した水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-1)、メラミン樹脂(MF-1)、ピラゾールブロックポリイソシアネート化合物(BNCO-1)、二酸化チタン顔料(B)、鱗片状アルミニウム顔料(C)、着色顔料及び体質顔料)を混合、攪拌し、酢酸ブチルを添加して、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の各第1中塗り塗料組成物(P1-1)~(P1-8)を得た。なお、各成分の配合量は固形分量である。
【0080】
【0081】
表1中の使用原材料は以下のとおりである。
メラミン樹脂(MF-1):重量平均分子量1200、イミノ基含有メチルブチル混合エーテル化メラミン。
ブロックポリイソシアネート化合物(BNCO-1):ヘキサメチレンジイソシアネ-トを3,5-ジメチルピラゾールでフルブロックした化合物。
「Ti-Pure R-706」:商品名、ケマーズ社製、二酸化チタン顔料。
「アルミペーストPV-H2100」:商品名、旭化成メタルズ社製、樹脂コートアルミニウム顔料、平均粒子径D50が10μm。
「アルミペーストPV-H4070」:商品名、旭化成メタルズ社製、樹脂コートアルミニウム顔料、平均粒子径D50が7μm。
「アルミペーストHR-6601」:商品名、旭化成メタルズ社製、樹脂コートアルミニウム顔料、平均粒子径D50が14μm。
「アルミペーストGX-3100」:商品名、旭化成メタルズ社製、アルミニウム顔料。平均粒子径D50が10μm。
「カーボンMA-100」:商品名、三菱ケミカル社製、カーボンブラック顔料。
「TAROX LL-XLO」:商品名、チタン工業社製、黄色酸化鉄顔料。
「トダカラー130R」:商品名、戸田工業社製、赤色酸化鉄顔料。
「「MICRO ACE S-3」:商品名、日本タルク社製、タルク顔料。
【0082】
製造例10 水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-2)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が128mgKOH/g、重量平均分子量が13000であった。
【0083】
製造例11 水酸基含有アクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート29部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル13部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
【0084】
製造例12 水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25.0部、n-ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20.0部、4-ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15.0部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10.0部、t-ブチルパーオキシオクタノエート4.0部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20.0部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間撹拌熟成して固形分50%の水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(AC-2)溶液を得た。得られた水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(AC-2)は酸価が83mgKOH/g、水酸基価が29mgKOH/g、重量平均分子量が10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41.0部を入れ、90℃まで昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間撹拌熟成した。その後、イソプロパノ-ル59.0部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
【0085】
製造例13 二酸化チタン顔料(B)分散液の製造
撹拌混合容器に、製造例10で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-2)78部(樹脂固形分35部)、「Ti-Pure R-706」(ケマーズテイカ社製、商品名、二酸化チタン顔料)125部及び脱イオン水7部を入れ、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて30分間分散して、二酸化チタン顔料(B)分散液(B-1)を得た。
【0086】
アルミニウム顔料(C)分散液の製造
製造例14
撹拌混合容器内において、「アルミペーストPV-H2100」:商品名、旭化成メタルズ社製、樹脂コートアルミニウム顔料、平均粒子径D50が10μm、樹脂コートアルミニウム含有割合が50%)6部(固形分3部)、2-エチル-1-ヘキサノール10部並びに製造例12で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(AC-2)溶液2部(固形分1部)を均一に混合して、アルミニウム顔料分散液(C-1)を得た。
【0087】
製造例15
撹拌混合容器内において、 「アルミペーストGX-3100」(商品名、旭化成メタルズ社製、アルミニウム顔料、平均粒子径D50が10μm、アルミニウム含有割合が74%)4.1部(固形分3部)、2-エチル-1-ヘキサノール10部並びに製造例12で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(AC-2)溶液2部(固形分1部)を均一に混合して、アルミニウム顔料分散液(C-2)を得た。
【0088】
製造例16 黒色顔料分散液の製造
製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)18部(樹脂固形分10部)、「カーボンMA-100」(商品名、三菱ケミカル社製、カーボンブラック顔料)10部、及び脱イオン水60部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して黒色顔料分散液(PD-1)を得た。
【0089】
製造例17 黄色顔料分散液の製造
製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)18部(樹脂固形分10部)、「TAROX LL-XLO」(商品名、チタン工業社製、黄色酸化鉄顔料)10部、及び脱イオン水60部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して黒色顔料分散液(PD-2)を得た。
【0090】
製造例18 赤色顔料分散液の製造
製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)18部(樹脂固形分10部)、「トダカラー130R」(商品名、戸田工業社製、赤色酸化鉄顔料)10部、及び脱イオン水60部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して黒色顔料分散液(PD-3)を得た。
【0091】
製造例19 体質顔料分散液の製造
製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)7.2部(樹脂固形分4部)、「MICRO ACE S-3」(商品名、日本タルク社製、タルク顔料)5部及び脱イオン水11.7部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで40分間分散してタルク顔料分散液(PD-4)を得た。
【0092】
水性第1中塗り塗料の製造
製造例20
製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)9.1部(樹脂固形分15部)、「ユーコートUX-8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)42.9部(樹脂固形分15部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部(樹脂固形分30部)、「バイヒジュールVPLS2310」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%)26.3部(樹脂固形分10部)、製造例13で得た二酸化チタン顔料(B)分散液(B-1)210部(酸化チタン顔料125部、樹脂固形分35部)、製造例14で得た鱗片状アルミニウム顔料(C)分散液(C-1)18部(鱗片状アルミニウム顔料3部、樹脂固形分1部)、製造例16で得た黒色顔料分散液(PD-1)0.088部、製造例17で得た黄色顔料分散液(PD-2)3.6部、製造例18で得た赤色顔料分散液(PD-3)0.18部及び製造例19で得た体質顔料分散液(PD-4)23.9部(体質顔料5部、樹脂固形分4部)を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、増粘剤)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.3、塗料固形分54%、B型粘度計を用いて20℃において回転数6rpmで測定したときの粘度が1200mPa・sの水性第1中塗り塗料(P1-9)を得た。
【0093】
製造例21~22
製造例20において、配合組成を後記の表2に示すものとする以外は、製造例20と同様にして水性第1中塗り塗料(P1-10)~(P1-11)を得た。
【0094】
【0095】
有機溶剤型第2中塗り塗料の製造
製造例23~24
表3に示す組成の各原材料(製造例1で製造した水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-1)、メラミン樹脂(MF-1)、ピラゾールブロックポリイソシアネート化合物(BNCO-1)、二酸化チタン顔料(B)、鱗片状アルミニウム顔料(c)、着色顔料及び体質顔料)を混合、攪拌し、酢酸ブチルを添加して、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の各第2中塗り塗料組成物(P2-1)~(P2-2)を得た。なお、各成分の配合量は固形分量である。
【0096】
【表3】
「ダイピロキサイド ブルー9410」:商品名、大日精化工業社製、青色顔料。
【0097】
製造例25 青色顔料分散液の製造
製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)18部(樹脂固形分10部)、「ダイピロキサイド ブルー9410」(商品名、大日精化工業社製、青色顔料)10部、及び脱イオン水60部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して黒色顔料分散液(PD-5)を得た。
【0098】
水性第2中塗り塗料の製造
製造例26
製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)10.9部(樹脂固形分6部)、「ユーコートUX-8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)42.9部(樹脂固形分15部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部(樹脂固形分30部)、「バイヒジュールVPLS2310」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%)26.3部(樹脂固形分10部)、製造例13で得た二酸化チタン顔料(B)分散液(B-1)210部、製造例16で得た黒色顔料分散液(PD-1)0.088部、製造例25で得た青色顔料分散液(PD-5)2.0部及び製造例19で得た体質顔料分散液(PD-4)23.9部を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、増粘剤)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.3、塗料固形分48%、B型粘度計を用いて20℃において回転数6rpmで測定したときの粘度が1200mPa・sの水性第2中塗り塗料(P2-3)を得た。
【0099】
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(a)水分散液の製造
製造例27
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水128部、「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0100】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量、及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を、反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(AC-3)水分散液を得た。得られた水分散性水酸基含有アクリル樹脂(AC-3)は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0101】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部、及びn-ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0102】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部、及びn-ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0103】
製造例28
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6-ヘキサンジオール141部、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部、及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2-エチル-1-ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-3)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-3)は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
【0104】
第1水性ベース塗料(BC1)の製造
製造例29
製造例27で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂(AC-3)水分散液100部(固形分30部)、製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)34.5部(固形分19部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部(樹脂固形分30部)及び製造例13で得た二酸化チタン顔料(B)分散液(B-1)126部(酸化チタン顔料75部、樹脂固形分21部を含有)を均一に混合し、更に、「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、増粘剤)、2-(ジメチルアミノ)エタノール、及び脱イオン水を加えてpH8.0塗料固形分が40%、B型粘度計を用いて20℃において回転数6rpmで測定したときの粘度が4000mPa・sの水性第1ベース塗料(BC1-1)を得た。
【0105】
光干渉性顔料分散液の製造
製造例30
撹拌混合容器内において、「メタシャイン 1018RS」(商品名、日本板硝子社製、酸化チタン被覆ガラスフレーク顔料)6部、2-エチル-1-ヘキサノール35部並びに製造例12で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(AC-3)溶液6部(固形分3部)を均一に混合して、光干渉性顔料分散液(D-1)を得た。
【0106】
製造例31
撹拌混合容器内において、「Xirallic T60-10 SW Crystal Silver」(商品名、メルク社製、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料)5部、2-エチル-1-ヘキサノール35部並びに製造例12で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(AC-3)溶液6部(固形分3部)を均一に混合して、光干渉性顔料分散液(D-2)を得た。
【0107】
水性第2ベース塗料の作成
製造例32
製造例27で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂(AC-3)水分散液100部(固形分30部)、製造例11で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC-1)36.4部(固形分20部)、製造例28で得たポリエステル樹脂溶液(PE-3)28.6部(固形分20部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部(樹脂固形分30部)及び製造例31で得た光干渉性顔料分散液(D-1)47部を均一に混合し、更に、「プライマルASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2-(ジメチルアミノ)エタノール、及び脱イオン水を加えて、pH8.0、塗料固形分24%、B型粘度計を用いて20℃において回転数6rpmで測定したときの粘度が4000mPa・sの水性第2ベース塗料(BC2-1)を得た。該水性第2ベース塗料(BC2-1)における光干渉性顔料の含有量は、該水性第2ベース塗料(2-1)中のバインダー成分(ABC2)の固形分100質量部を基準として6質量部であった。
【0108】
製造例33~36
製造例32において、配合組成及び塗料固形分を後記の表4に示すものとする以外は、実施例32と同様にして、pH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒の水性第2ベース塗料(BC2-2)~(BC2-5)を得た。また、各水性第2ベース塗料における光干渉性顔料(D)の含有量を、該第2ベース塗料中のバインダー成分(ABC2)の固形分100質量部を基準とする光干渉性顔料(D)の質量部として、表4に併せて示す。
【0109】
【0110】
試験用被塗装物の作製
リン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT-10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させて、試験用被塗装物とした。
【0111】
実施例1
(試験用塗装板の作製)
上記試験用被塗装物4枚に、製造例2で得た第1中塗り塗料(P1-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装して未硬化の第1中塗り塗膜を形成し、1分間放置した。該試験用被塗装物4枚のうち1枚を取り出し、140℃で30分間加熱して、該未硬化の第1中塗り塗膜を硬化させて試験用被塗装板Aを得た。次いで、それ以外の3枚の試験用被塗装物について、該未硬化の第1中塗り塗膜上に、製造例23で得た第2中塗り塗料(P2-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて硬化膜厚20μmとなるように静電塗装して未硬化の第2中塗り塗膜を形成し、7分間放置後、140℃で30分間加熱して、上記未硬化の第1中塗り塗膜及び第2中塗り塗膜を硬化させた。そのうちの1枚を試験用被塗装板Bとした。
【0112】
次いで、それ以外の2枚の試験用被塗装物について、上記第2中塗り塗膜上に、製造例29で得た第1水性ベース塗料(BC1-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて硬化膜厚8μmとなるように静電塗装して未硬化の第1ベース塗膜を形成し、1分間放置した。該試験用被塗装物2枚のうち1枚を取り出し、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して、該未硬化の第1ベース塗膜を硬化させて試験用被塗装板Cを得た。残りの1枚の試験用被塗装物については、該未硬化の第1ベース塗膜上に、製造例33で得た第2水性ベース塗料(BC2-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて硬化膜厚10μmとなるように静電塗装して未硬化の第2ベース塗膜を形成し、3分間放置した。次いで、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化の第2ベース塗膜上に熱硬化性のアクリル樹脂系有機溶剤型クリヤーコート塗料(商品名「マジクロンKINO-1210TW」、関西ペイント社製)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、クリヤーコート塗膜を形成した。7分間放置後、140℃で30分間加熱して、上記未硬化の第1ベース塗膜、未硬化の第2ベース塗膜及びクリヤーコート塗膜を硬化させることにより試験用塗装板Dを作製した。
【0113】
実施例2~18、比較例1~3
実施例1において、第1中塗り塗料(P1-1)、第2中塗り塗料(P2-1)、第1水性ベース塗料(BC1-1)及び第2水性ベース塗料(BC2-1)の種類と硬化膜厚を下記表5-1~表5-4に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして試験用塗装板A~Dを作製した。
【0114】
実施例19
前記試験用被塗装物4枚に、製造例20で得た第1中塗り塗料(P1-9)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装して未硬化の第1中塗り塗膜を形成し、1分間放置した。該試験用被塗装物4枚のうち1枚を取り出し、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して、該未硬化の第1中塗り塗膜を硬化させて試験用被塗装板Aを得た。次いで、それ以外の3枚の試験用被塗装物について、該未硬化の第1中塗り塗膜上に、製造例26で得た第2中塗り塗料(P2-3)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて硬化膜厚20μmとなるように静電塗装して未硬化の第2中塗り塗膜を形成した。このうちの1枚の試験用被塗装物については、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して、上記未硬化の第1中塗り塗膜及び第2中塗り塗膜を硬化させて、試験用被塗装板Bを得た。また、残りの2枚の試験用被塗装物については、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
【0115】
次いで、2枚の試験用被塗装物について、上記未硬化の第2中塗り塗膜上に、製造例29で得た第1水性ベース塗料(BC1-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて硬化膜厚8μmとなるように静電塗装して未硬化の第1ベース塗膜を形成し、1分間放置した。該試験用被塗装物2枚のうち1枚を取り出し、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して、上記未硬化の第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜及び第1ベース塗膜を硬化させて試験用被塗装板Cを得た。残りの1枚の試験用被塗装物については、該未硬化の第1ベース塗膜上に、製造例33で得た第2水性ベース塗料(BC2-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて硬化膜厚10μmとなるように静電塗装して未硬化の第2ベース塗膜を形成し、3分間放置した。次いで、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化の第2ベース塗膜上に熱硬化性のアクリル樹脂系有機溶剤型クリヤーコート塗料(商品名「マジクロンKINO-1210TW」、関西ペイント社製)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、クリヤーコート塗膜を形成した。7分間放置後、140℃で30分間加熱して、上記未硬化の第1中塗り塗膜、第2中塗り塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜及びクリヤーコート塗膜を硬化させることにより試験用塗装板Dを作製した。
【0116】
実施例20、比較例4
実施例19において、第1中塗り塗料(P1-9)、第2中塗り塗料(P2-3)、第1水性ベース塗料(BC1-1)及び第2水性ベース塗料(BC2-1)の種類と硬化膜厚を下記表5-3~表5-4に示す通りとする以外は、実施例19と同様にして試験用塗装板A~Dを作製した。
【0117】
評価試験
上記実施例1~20及び比較例1~4で得られた各試験用塗装板A~Dを使用して、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表5-1~表5-4に示す。
【0118】
(試験方法)
明度L*値:第1中塗り塗料(P1)の硬化時の明度L*値(L*
P1)、第2中塗り塗料(P2)の硬化時の明度L*値(L*
P2)、及び第1水性ベース塗料(BC1)の硬化時の明度L*値(L*
BC1)は、上記試験用塗装板A~CのL*値を測定した。具体的には、マルチアングル分光測色計「CM-512m3」(コニカミノルタ社製)を用いて、塗膜面に垂直な軸に対し25°の角度から光を照射し、反射した光のうち塗膜面に垂直な方向の光のL*値を測定した。
【0119】
耐候性:各試験用塗装板Dについて、JIS K 5600-7-7に準じ、「スーパーキセノンウエザーメーター」(スガ試験機社製、耐候性試験機)を用いて、放射照度:180W/m2(300~400nm)、試験片ぬれサイクル:18分/2時間、ブラックパネル温度:61~65℃の条件で、促進耐候性試験を行った。次に、ランプの照射時間が1,000時間、2,000時間及び3,000時間に達した時点で、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作った。次いで、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、そのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
△:ゴバン目塗膜が90~99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0120】
白色ムラ:前記試験用塗装板Dを肉眼で観察し、白色ムラの発生程度を下記基準で評価した。
◎:白色ムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する、
○:白色ムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する、
△:白色ムラが認められ、塗膜外観がやや劣る、
×:白色ムラが多く認められ、塗膜外観が劣る。
【0121】
光輝ムラ:前記試験用塗装板Dを肉眼で観察し、光輝ムラの発生程度を下記基準で評価した。
◎:光輝ムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する、
○:光輝ムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する、
△:光輝ムラが認められ、塗膜外観がやや劣る、
×:光輝ムラが多く認められ、塗膜外観が劣る。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値等を用いてもよい。また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。