(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113341
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】茹麺装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20220728BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20220728BHJP
【FI】
A47J27/14 J
A23L7/109 K
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009513
(22)【出願日】2021-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】神野 久彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正人
(72)【発明者】
【氏名】村本 和健
【テーマコード(参考)】
4B046
4B054
【Fターム(参考)】
4B046LP44
4B054AA02
4B054AA14
4B054AA17
4B054AB02
4B054AC13
4B054BA05
4B054BA20
4B054BC03
4B054BC13
4B054CC01
4B054CC12
4B054CE13
4B054CE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より短時間で効率よく装置の立上を行うことができるとともに、沈殿物の茹槽への固着が起きにくい茹麺装置を提供する。
【解決手段】茹麺ユニットと、茹麺ユニットに加熱した水を供給する給湯機構1Bと、を備え、茹麺ユニットは、水が貯留され麺を茹で上げる茹槽11と、茹槽11に加熱された水を供給する給湯口と、茹槽11から水を排出して給湯機構1Bに送る排出口と、を含み、給湯機構1Bは、水を所望の温度に加熱する熱交換器21と、熱交換器21に水を圧送する循環ポンプ23と、を含み、麺を茹でているときは、茹槽11と給湯機構1Bとの間で常に水の循環が行われるよう構成される、茹麺装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹麺ユニットと、
前記茹麺ユニットに加熱した水を供給する給湯機構と、を備え、
前記茹麺ユニットは、
前記水が貯留され、麺を茹で上げる茹槽と、
前記茹槽に加熱された前記水を供給する給湯口と、
前記茹槽から前記水を排出して前記給湯機構に送る排出口と、を含み、
前記給湯機構は、
蒸気が供給される第1入口と前記蒸気が排出される第1出口とを有する第1経路と、前記水が供給される第2入口と前記水が排出される第2出口とを有する第2経路と、を有し、前記第1入口は前記蒸気を供給する蒸気供給源と接続され、前記第2入口は清水を供給する清水供給源および前記排出口と接続され、前記第2出口は前記給湯口に接続され、前記第2経路を流通する前記水は前記第1経路を流通する前記蒸気によって熱交換されて所望の温度に加熱される熱交換器と、
前記第2入口と前記排出口との間に設けられ、前記第2入口に前記水を圧送する循環ポンプと、を含み、
前記麺を茹でているときは、前記茹槽と前記給湯機構との間で常に前記水の循環が行われるよう構成される、茹麺装置。
【請求項2】
前記麺を茹でているときは、茹麺を行うに際して必要な1分間あたりの熱量[kcal]を前記熱交換器による温度上昇量[℃]で除した値以上の水量[L/min]で、前記茹槽と前記給湯機構との間で前記水の循環が行われるように構成される、請求項1に記載の茹麺装置。
【請求項3】
前記茹麺ユニットは、前記茹槽から所定の水位を超えて溢出した前記水を装置外に排出する溢出口をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の茹麺装置。
【請求項4】
前記給湯口は、前記茹槽内の前記麺に加熱された前記水の噴流を噴射するほぐし噴流口を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項5】
前記給湯口は、前記茹槽の底面に加熱された前記水の噴流を噴射する槽底噴流口を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項6】
前記清水供給源から供給される前記清水は、前記循環ポンプと前記排出口とを接続する配管に供給される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項7】
前記給湯機構は、前記第1出口と接続され前記蒸気から発生したドレンを排出するスチームトラップをさらに含み、
前記茹麺ユニットは、前記スチームトラップから排出された前記ドレンを前記茹槽にドレンを供給するドレン供給口をさらに含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項8】
前記給湯機構は、前記茹槽と前記熱交換器間の前記水の循環経路に対して洗浄剤を供給する薬注ポンプユニットをさらに含み、
前記薬注ポンプユニットは、前記洗浄剤を貯留する洗浄液タンクと、前記洗浄液タンク内の前記洗浄剤を圧送する洗浄液ポンプと、を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項9】
前記給湯機構は、前記茹槽と前記熱交換器間の前記水の循環経路から前記水に含まれるエアおよび水蒸気を排出可能に構成された脱気経路をさらに含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茹麺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
茹麺装置は、所定の温度に加熱された水が貯留される茹槽を備え、茹槽内に投入された麺を茹で上げる。茹槽内の水を加熱するにあたっては、種々の方法が公知である。特許文献1に開示される茹麺装置では、茹槽内の水を茹槽の下方に設置したガスバーナにより加熱している。特許文献2に開示される茹麺装置では、茹槽内の水を茹槽内に設けられた電気ヒータで加熱している。特許文献3に開示される茹麺装置では、茹槽内の水に蒸気を供給して加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭62-032485号公報
【特許文献2】特公昭57-009339号公報
【特許文献3】特許第6433104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来装置においては、茹槽内に常温の水を貯留した後、その水の加熱を行っていた。そのため、装置の立上にあたり、給水と加熱という2つの段階を経なければならず、比較的時間がかかっていた。また、加熱にあたっての損失が比較的大きく、エネルギー上のロスが発生していた。
【0005】
また、麺を茹でるにあたり、麺から溶け出た澱粉質等の沈殿物が茹槽に堆積する。この沈殿物は長時間堆積すると茹槽の底面や壁面にこびり付き、麺の品質に影響を与え得る上に、清掃の手間が大きくなる。沈殿物の堆積を防ぐにあたり、茹槽に給水する水の量を増やして水の循環量を増やすことが考えられるが、水温の低下を招くので給水量の増加には限度がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より短時間で効率よく装置の立上を行うことができるとともに、沈殿物の茹槽への固着が起きにくい茹麺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、茹麺ユニットと、茹麺ユニットに加熱した水を供給する給湯機構と、を備え、茹麺ユニットは、水が貯留され、麺を茹で上げる茹槽と、茹槽に加熱された水を供給する給湯口と、茹槽から水を排出して給湯機構に送る排出口と、を含み、給湯機構は、蒸気が供給される第1入口と蒸気が排出される第1出口とを有する第1経路と、水が供給される第2入口と水が排出される第2出口とを有する第2経路と、を有し、第1入口は蒸気を供給する蒸気供給源と接続され、第2入口は清水を供給する清水供給源および排出口と接続され、第2出口は給湯口に接続され、第2経路を流通する水は第1経路を流通する蒸気によって熱交換されて所望の温度に加熱される熱交換器と、第2入口と排出口との間に設けられ、第2入口に水を圧送する循環ポンプと、を含み、麺を茹でているときは、茹槽と給湯機構との間で常に水の循環が行われるよう構成される、茹麺装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る茹麺装置においては、予め熱交換器で加熱された水が茹槽に供給される。茹槽への給水と水の加熱が平行して行われるので、より短時間で、かつエネルギー効率よく装置の立上を行うことができる。また、麺を茹でている間も茹槽の水温低下を極力起こすことなく茹槽に水を供給することができるので、麺を茹でているときに、茹槽と給湯機構との間で常に水の循環が行われるよう構成できる。ひいては、沈殿物が茹槽に固着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】湯の循環を開始する前の立上工程時の流路を示す。
【
図6】湯の循環を開始した後の立上工程時の流路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0011】
本実施形態の茹麺装置は、麺を茹で上げる茹麺ユニット1Aと、茹麺ユニット1Aに加熱した水を供給する給湯機構1Bと、茹麺ユニット1Aおよび給湯機構1Bを制御する不図示の制御装置と、を備える。なお、本明細書における麺とは、食用粉を水等と共に練り上げて成形した食品一般をいい、うどん、蕎麦、素麺、冷麦、中華麺、パスタ類、ビーフン、春雨等が含まれる。また、本明細書において、給湯機構1Bで所定温度に加熱した水を特に湯といい、加熱前の清浄な水、より具体的には常温の上水を清水という。また、本明細書において、水蒸気を単に蒸気という。
【0012】
図1から
図3に示されるように、本実施形態の茹麺ユニット1Aは、茹槽11と、移送装置12と、給湯口13と、排出口15と、溢出口16と、ドレン供給口17と、水位計18と、を含む。
【0013】
茹槽11には湯が貯留され、湯内に投入された麺が茹で上げられる。本実施形態の茹麺ユニット1Aはいわゆる連続式であり、移送装置12により所定量の麺が移送されながら茹槽11の湯内を通過する。具体的に、移送装置12は、チェーン121と、スプロケット122と、バケット123と、不図示の給排装置を有し、バケット123内に収容された麺がチェーン121およびスプロケット122により茹槽11内を案内され、その後バケット123から排出される。なお、茹麺ユニット1Aは大量の麺を一度に茹で上げる、いわゆるバッチ式であってもよい。
【0014】
給湯口13は、茹槽11に湯を供給する1以上の配管である。本実施形態においては、給湯口は、主給湯口131、ほぐし噴流口132と、槽底噴流口133と、を有する。主給湯口131は、茹槽11の上部または上方に設けられる開口であり、給湯機構1Bから供給される湯の主たる供給口となる。ほぐし噴流口132および槽底噴流口133は、給湯機構1Bから供給される湯を噴流として噴射可能に構成されており、例えば、所定間隔で孔が形成されたパイプである。必要に応じて、パイプの孔にシャワーノズルを設けてもよい。ほぐし噴流口132は、茹槽11の麺に噴流を噴射して麺をほぐす。連続式の茹麺ユニット1Aにおいては、噴流が麺の移送経路に当たるよう、ほぐし噴流口132が茹槽11内に設けられる。槽底噴流口133は、茹槽11の下部に設けられ、茹槽11の底面に向かって噴流を噴射する。これにより、茹麺時に発生する沈殿物が茹槽11の底面に堆積して固着することを防止することができる。
【0015】
ほぐし噴流口132および槽底噴流口133の入口側にはそれぞれ開閉弁141,142が設けられている。必要に応じて、主給湯口131、ほぐし噴流口132および槽底噴流口133の全てを使用して茹槽11に湯を供給してもよいし、主給湯口131のみから茹槽11に湯を供給してもよい。
【0016】
排出口15は、茹槽11の下部に設けられる開口であり、茹槽11から湯を排出して給湯機構1Bに送る。排出口15から排出された湯は、給湯機構1Bによって再加熱され、再び茹槽11に戻される。
【0017】
茹槽11は所定の水位を保つように構成され、茹槽11から所定の水位を超えて溢出した湯は溢出口16から装置外へ排出される。茹麺中は、茹槽11からの湯の排出量および蒸発量よりも、茹槽11への湯の供給量が多い方が好ましい。換言すれば、常時溢出口16を介して茹槽11内の湯を少しずつ装置外に排出しながら茹麺を行うことが好ましい。このようにすれば、茹槽11内の沈殿物を装置外に排出できるとともに、湯の塩分濃度等も均一に保つことができる。
【0018】
ドレン供給口17は、茹槽11内部に設けられる開口であり、給湯機構1Bにて蒸気が凝縮して発生したドレンを茹槽11内に供給する。給湯機構1Bで発生したドレンを再利用することで、ドレンの熱エネルギーを無駄にすることなく湯の循環が行える。
【0019】
水位計18は、茹槽11内の湯の水位を検出する。本実施形態では、湯の循環を開始する水位と、茹槽11が満水となったときの水位とを検出可能に構成されている。
【0020】
図3に示されるように、本実施形態の給湯機構1Bは、茹槽11と熱交換器21との間で水を循環させる循環経路2と、熱交換器21に蒸気を供給する蒸気経路3と、熱交換器21に清水を供給する給水経路4と、循環経路2に洗浄液を供給する薬注ポンプユニット5と、循環経路2から脱気を行う脱気経路6と、水を装置外に排水する排水経路7と、を含む。
【0021】
循環経路2は、熱交換器21と、循環ポンプ23と、流量調整弁25と、開閉弁27と、フィルタ29と、各部を接続する配管と、を有する。排出口15および給湯口13は、熱交換器21を有する循環経路2により接続される。熱交換器21には水と蒸気が供給され、蒸気と熱交換されて加熱された水が熱交換器21から排出されて給湯口13を介して茹槽11へと送られる。循環ポンプ23は熱交換器21よりも上流に設けられ、給水経路4から供給された水および茹槽11から排出された水を圧送して熱交換器21へ送る。流量調整弁25は、循環経路2を循環する水の流量を制御する。開閉弁27は給湯口13よりも上流に設けられ、湯を茹槽11に供給する際は開かれている。フィルタ29は、排出口15から排出された水に含まれる、麺屑等の夾雑物を除去する。
【0022】
本実施形態の熱交換器21は、具体的にはプレート式熱交換器であるが、多管式熱交換器やスパイラル式熱交換器等の他の方式のものが採用されてもよい。
図3および
図4に示されるように、本実施形態の熱交換器21は、複数の伝熱プレート213を重ね合わされて構成されており、伝熱プレート213により区画され蒸気が流通する第1経路211と、伝熱プレート213により区画され水が流通する第2経路212と、を有する。第1経路211は、蒸気が供給される第1入口211aと、蒸気が排出される第1出口211bとを有する。第2経路212は、水が供給される第2入口212aと、水が排出される第2出口212bと、を有する。第2入口212aは給水経路4を介して清水供給源41と接続されるとともに、排出口15と接続される。循環ポンプ23は、第2入口212aと排出口15との間に設けられ、第2入口212aに水を圧送する。第2出口212bは給湯口13に接続される。このような構成により、第2経路212を流通する水は第1経路211を流通する蒸気によって熱交換されて所望の温度に加熱される。熱交換器21により生成される湯の温度は、例えば約99℃である。
【0023】
蒸気経路3は、第1の減圧弁33と、第2の減圧弁35と、比例弁37と、スチームトラップ39と、各部を接続する配管とを有する。蒸気経路3には、蒸気供給源31から蒸気が供給される。蒸気供給源31は、例えばボイラーであり、所定温度・圧力の水蒸気を供給可能な装置である。蒸気供給源31は、第1の減圧弁33、第2の減圧弁35および比例弁37を介して、熱交換器21の第1入口211aと接続される。熱交換器21に供給される蒸気の量、ひいては、熱交換器21から排出される湯の温度は、第1の減圧弁33、第2の減圧弁35および比例弁37により制御可能である。例えば、基本的には比例弁37により温度制御を行い、比例弁37のみでは制御が難しい場合のみ第1の減圧弁33および第2の減圧弁35を使用するように構成されてもよい。スチームトラップ39は、熱交換器21の第1出口211bと接続される。スチームトラップ39は蒸気経路3から蒸気が漏洩するのを防止するとともに、蒸気から発生したドレンを排出してウォーターハンマー現象等の不具合を防止する。スチームトラップ39から排出されたドレンは、ドレン供給口17を介して茹槽11に送られる。
【0024】
給水経路4は、循環経路2の熱交換器21よりも上流側と接続され、循環経路2に清水を供給する。給水経路4には、清水供給源41から清水が供給される。清水供給源41は、例えば上水道である。本実施形態の給水経路4は必要に応じて2段階で流量を切り換え可能に構成されており、それぞれ流量が異なる清水を循環経路2に供給可能である第1の給水経路と第2の給水経路とを有する。第1の給水経路は、流量調整弁42と、逆止弁43と、開閉弁44と、を有する。第2の給水経路は、第1の給水経路の途中から分岐し、流量調整弁45と、逆止弁46と、開閉弁47と、を有する。第1の給水経路の方が、第2の給水経路よりも供給可能な流量が大きい。装置の立上時や洗浄時等、比較的多量の清水を供給したい場合は、開閉弁47を閉じて開閉弁44を開き、第1の給水経路を使用して清水を供給する。清水供給源41から供給された水は、流量調整弁42により所定の流量に調整された後に循環経路2へと送られる。茹麺中等、比較的少量の清水を供給したい場合は、開閉弁44を閉じて開閉弁47を開き、第2の給水経路を使用して清水を供給する。清水供給源41から供給された水は、流量調整弁42および流量調整弁45により所定の流量に調整された後に循環経路2へと送られる。
【0025】
給水経路4により差水を行うことで、溢出口16から湯を排出しながら湯を循環させることができ、茹槽11内を清浄に保ちながら茹麺を行うことができる。また、循環経路2を流通する水に対して循環ポンプ23による圧力に加えて清水供給源41からの水圧が加えられるので、より高速に湯を循環させることができる。さらには、排出口15から排出される水は沈殿物を含んでいるが、給水経路4から供給される清水により薄められてから熱交換器21に送られるので、熱交換器21への沈殿物の付着を抑制できる。特に、給水経路4は循環ポンプ23よりも上流側に接続されることが望ましい。すなわち、清水供給源41から供給される清水は、循環ポンプ23と排出口15とを接続する配管に供給されることが望ましい。このような構成によれば、循環ポンプ23の吸込側の水の温度を低下させることができるとともに、吸込側の水の圧力を上昇させることができるので、キャビテーションを防止することができる。
【0026】
薬注ポンプユニット5は、循環経路2の任意の位置に接続され、循環経路2に洗浄剤を供給可能に構成される。薬注ポンプユニット5は、洗浄液タンク51と、洗浄液ポンプ53と、開閉弁55と、を有する。循環経路2の洗浄時、開閉弁55が開かれ、洗浄液タンク51に貯留された洗浄液が、洗浄液ポンプ53により圧送されて循環経路2へと送られる。
【0027】
脱気経路6は、循環経路2の熱交換器21よりも下流側と接続され、水に含まれるエアおよび水蒸気を排出する。脱気経路6は、開閉弁61と、配管と、を有する。脱気経路6の配管の端部は上向きに開口しており、開口は給湯機構1Bにおいて水が流通する一番高位に設けられている。脱気経路6を通ったエアおよび水蒸気は、配管の開口を通って装置外に排出される。脱気経路6は、後述する配管洗浄工程においてのみ使用され、茹槽11からの脱気が可能である他の工程においては使用されない。
【0028】
排水経路7は、所望の経路で水を装置外に排水する。本実施形態では、排水経路7は、一端が第2出口212bと開閉弁27との間に接続され、他端が装置外と連通している配管を有し、当該配管は排出口15と第2入口212aとの間の配管に接続されている。各配管の接続点の四方には、それぞれ開閉弁71,73,75,77が設けられている。具体的に、第2出口212bと開閉弁27との間側に開閉弁71が、装置外側に開閉弁73が、排出口15側に開閉弁75が、第2入口212a側に開閉弁77が、それぞれ設けられる。
【0029】
茹麺装置には、適当な位置に、圧力計、温度計および流量計が設けられている。圧力計、温度計および流量計は各々が検出したパラメータをオペレータに表示する。必要に応じて、圧力計、温度計および流量計の少なくとも一部は、検出したパラメータを示す信号を制御装置に出力してもよい。本実施形態においては、圧力計としては、蒸気経路3の蒸気供給源31と第1の減圧弁33との間に圧力計811が、蒸気経路3の第1の減圧弁33と第2の減圧弁35との間に圧力計812が、蒸気経路3の比例弁37と第1入口211aとの間に圧力計813が、循環経路2の第2出口212bと給湯口13との間に圧力計814が、それぞれ設けられる。また、温度計としては、茹槽11に温度計831が、循環経路2の第2入口212a付近に温度計832が、循環経路2の第2出口212b付近に温度計833が、循環経路2の茹槽11付近に温度計834が、それぞれ設けられる。流量計としては、蒸気経路3の第2の減圧弁35と比例弁37との間に流量計851が、給水経路4の清水供給源41と第1の給水経路と第2の給水経路の分岐点との間に流量計852が、脱気経路6に流量計853が、それぞれ設けられる。なお、本実施形態においては、温度計831は制御装置に接続され、制御装置は温度計831で検出した茹槽11内の湯温に基づいて、比例弁37、第1の減圧弁33および第2の減圧弁35を操作して温度制御を行う。また、本実施形態においては、流量計853は制御装置に接続され、制御装置は流量計853で検出した流量に基づいて、後述する配管洗浄工程に係る制御を行う。
【0030】
制御装置は、茹麺装置を操作して種々の制御を行う。具体的に、制御装置は、オペレータによる操作と水位計18や温度計831からの信号に基づいて、移送装置12、開閉弁141、開閉弁142、循環ポンプ23、開閉弁27、第1の減圧弁33、第2の減圧弁35、比例弁37、開閉弁44、開閉弁47、洗浄液ポンプ53、開閉弁55、開閉弁61、開閉弁71、開閉弁73、開閉弁75、開閉弁77等を制御する。制御装置は、所望の制御を実現する限りにおいて、ハードウェアとソフトウェアを任意に組み合わせて構成されてよい。
【0031】
ここで、以上に説明した本実施形態の茹麺装置による茹麺方法について説明する。本実施形態の茹麺方法は、立上工程と、茹麺工程と、配管洗浄工程と、槽洗浄工程と、を備える。なお、
図5から
図9は各工程における水、蒸気等の流路を表示しており、実線は使用する流路を、点線は使用しない流路を、破線は必要に応じて使用される流路を、それぞれ示している(但し、熱交換器21内の破線は除く)。
【0032】
立上工程では、茹槽11に所定温度の湯が貯留される。換言すれば、茹槽11への給水と、水の加熱が平行して行われる。まず、
図5に示されるように、給水経路4の第1の給水経路から清水が供給される。供給された清水は循環ポンプ23により圧送されて熱交換器21へと送られ、蒸気と熱交換されて所望の温度に加熱される。このようにして生成された湯は、給湯口13の主給湯口131を介して茹槽11に貯留される。立上当初は、開閉弁75,77は閉じられ、湯の循環はまだ行われていなくてよい。水位計18により、茹槽11の湯が所定水位に達したことが検出されると、湯の循環が開始される。すなわち、
図6に示されるように、開閉弁75,77が開かれ、排出口15と熱交換器21が連通される。茹槽11から排出される湯と給水経路4の第1の給水経路から供給される清水は、共に循環ポンプ23により圧送されて熱交換器21へと送られ、加熱された後に茹槽11へと供給される。このとき、開閉弁141,142が開かれ、給湯口13の主給湯口131、ほぐし噴流口132および槽底噴流口133を介して、湯が茹槽11に供給される。湯を循環させながら湯の貯留を行うことで、立上工程中に茹槽11内の湯温が低下することを防止できる。
【0033】
水位計18により茹槽11が満水になったことが検出されると、立上工程は完了したと判断され、茹麺工程が行われる。
図7に示されるように、清水の供給経路が第1の給水経路から第2の給水経路に切り換えられ、立上工程時よりも少量の清水が差水として供給される。そして同様にして、茹槽11から排出される湯と給水経路4の第2の給水経路から供給される清水は、共に循環ポンプ23により圧送されて熱交換器21へと送られ、加熱された後に茹槽11へと供給される。このとき、給湯口13の主給湯口131、ほぐし噴流口132および槽底噴流口133を介して、湯が茹槽11に供給される。このようにして湯が循環している状態で、茹麺ユニット1Aにおいて茹麺が行われる。すなわち本実施形態においては移送装置12が動作され、茹槽11内において麺が連続的に移送されて茹で上げられる。このようにして、茹麺工程中は、茹槽11と給湯機構1Bとの間で常に水の循環が行われる。茹槽11内で常に水流が発生しているので、沈殿物が茹槽11に付着しにくい。
【0034】
なお、茹麺工程時において、茹槽11内の湯温を維持する上で、高速で湯を循環させることが望ましい。具体的に、必要な循環水量は、以下のように求められる。1分間あたり必要な循環水量をV[L/min]、装置外に放熱される1分間あたりの熱量をQ[kcal/min]、麺および差水に奪われる1分間あたりの熱量をW[kcal/min]、熱交換器21の水の入口温度をT1[℃]、熱交換器21の水の出口温度をT2[℃]、とする。ここで、循環水の密度を1.0[g/cm3]、循環水の比熱を1.0[cal/g・℃]とすると、熱量の公式「熱量[cal]=質量[g]×比熱[cal/g・℃]×温度差[℃]」により、以下の数式1が成り立つ。
【0035】
【0036】
換言すれば、本実施形態の茹麺装置においては、茹麺を行うに際して必要な1分間あたりの熱量[kcal]を熱交換器21による温度上昇量[℃]で除した値が必要な循環水量V[L/min]となるので、それ以上の水量で湯を循環させながら茹麺工程を行えばよい。
【0037】
なお、実験によれば、茹槽11の大きさを問わず、茹槽11が満水時の水量[L]を2で除した値以上の水量で湯を循環させれば、必要な循環水量V[L/min]以上となり、湯温を維持することが可能であると推定される。
【0038】
茹麺工程の完了後、配管洗浄工程が行われる。まず、開閉弁27,75,77が閉じられた状態で開閉弁71,73が開かれ、循環経路2内の水が排水される。次いで、
図8に示されるように、開閉弁27,73,75が閉じられた状態で開閉弁71,77が開かれ、茹槽11を介さずに水が循環可能な流路が形成される。そして、給水経路4の第2の給水経路から清水が循環経路2に供給される。このとき、開閉弁61が開かれており、水によって押し出されたエアおよび水蒸気は脱気経路6から排出される。流量計853が、水が脱気経路6まで達したことを検知すると、開閉弁61が閉じられる。これにより、循環ポンプ23にエアや水蒸気が流入することを防止できる。一方で、開閉弁55が開かれ、薬注ポンプユニット5から適宜循環経路2に洗浄液が供給される。流量計853が所定の流量を検知し、循環経路2の配管が洗浄液を含んだ水で満たされたと判断されると、開閉弁47が閉じられて給水経路4からの給水が停止される。この状態で洗浄液を含んだ水が循環ポンプ23により圧送され、配管内を循環する。洗浄液の種類に応じて、洗浄効果を高めるため、循環する水は熱交換器21により加熱されていてもよい。所定時間水を循環させた後、開閉弁77を閉じ開閉弁73を開き、装置外に水を排出する。そして、以上の手順が繰り返されて、配管の洗浄が行われる。
【0039】
配管洗浄工程の完了後、槽洗浄工程が行われる。まず、
図9に示されるように、開閉弁71,77が閉じられた状態で開閉弁73,75が開かれ、茹槽11に貯留された水が排出される。その後、任意の方法により茹槽11が洗浄される。例えば、茹槽11に加圧温水や洗浄液を噴出可能な不図示のノズルが設けられている場合は、当該ノズルを使用して茹槽11の定置洗浄が行われる。あるいは、作業者が手作業で茹槽11の洗浄を行ってもよい。なお、配管洗浄工程と槽洗浄工程は平行して行われてもよいし、先に槽洗浄工程が実施されてもよい。
【0040】
本発明は、既にいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1A 茹麺ユニット
1B 給湯機構
2 循環経路
5 薬注ポンプユニット
6 脱気経路
11 茹槽
13 給湯口
15 排出口
16 溢出口
17 ドレン供給口
23 循環ポンプ
21 熱交換器
39 スチームトラップ
51 洗浄液タンク
53 洗浄液ポンプ
132 ほぐし噴流口
133 槽底噴流口
211 第1経路
211a 第1入口
211b 第1出口
212 第2経路
212a 第2入口
212b 第2出口
【手続補正書】
【提出日】2021-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹麺ユニットと、
前記茹麺ユニットに加熱した水を供給する給湯機構と、を備え、
前記茹麺ユニットは、
前記水が貯留され、麺を茹で上げる茹槽と、
前記茹槽に加熱された前記水を供給する給湯口と、
前記茹槽から前記水を排出して前記給湯機構に送る排出口と、を含み、
前記給湯機構は、
蒸気が供給される第1入口と前記蒸気が排出される第1出口とを有する第1経路と、前記水が供給される第2入口と前記水が排出される第2出口とを有する第2経路と、を有し、前記第1入口は前記蒸気を供給する蒸気供給源と接続され、前記第2入口は清水を供給する清水供給源および前記排出口と接続され、前記第2出口は前記給湯口に接続され、前記第2経路を流通する前記水は前記第1経路を流通する前記蒸気によって熱交換されて所望の温度に加熱される熱交換器と、
前記第2入口と前記排出口との間に設けられ、前記第2入口に前記水を圧送する循環ポンプと、
前記熱交換器の前記第2入口及び前記第2出口と接続され、前記給湯口と前記排出口を介して前記茹槽と前記熱交換器との間で水を循環させる循環経路と、を含み、
前記麺を茹でているときは、前記茹槽と前記給湯機構との間で常に前記水の循環が行われるよう構成される、茹麺装置。
【請求項2】
前記麺を茹でているときは、茹麺を行うに際して必要な1分間あたりの熱量[kcal]を前記熱交換器による温度上昇量[℃]で除した値以上の水量[L/min]で、前記茹槽と前記給湯機構との間で前記水の循環が行われるように構成される、請求項1に記載の茹麺装置。
【請求項3】
前記茹麺ユニットは、前記茹槽から所定の水位を超えて溢出した前記水を装置外に排出する溢出口をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の茹麺装置。
【請求項4】
前記給湯口は、前記茹槽内の前記麺に加熱された前記水の噴流を噴射するほぐし噴流口を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項5】
前記給湯口は、前記茹槽の底面に加熱された前記水の噴流を噴射する槽底噴流口を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項6】
前記清水供給源から供給される前記清水は、前記循環ポンプと前記排出口とを接続する配管に供給される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項7】
前記給湯機構は、前記第1出口と接続され前記蒸気から発生したドレンを排出するスチームトラップをさらに含み、
前記茹麺ユニットは、前記スチームトラップから排出された前記ドレンを前記茹槽にドレンを供給するドレン供給口をさらに含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項8】
前記給湯機構は、前記茹槽と前記熱交換器間の前記水の循環経路に対して洗浄剤を供給する薬注ポンプユニットをさらに含み、
前記薬注ポンプユニットは、前記洗浄剤を貯留する洗浄液タンクと、前記洗浄液タンク内の前記洗浄剤を圧送する洗浄液ポンプと、を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の茹麺装置。
【請求項9】
前記給湯機構は、前記茹槽と前記熱交換器間の前記水の循環経路から前記水に含まれるエアおよび水蒸気を排出可能に構成された脱気経路をさらに含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の茹麺装置。