(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113355
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】再生可能エネルギー利用による発電設備システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009543
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000227618
【氏名又は名称】日比谷総合設備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】峯田 喜次郎
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】太陽光発電設備の近傍で特高連係させる場合に、特別高圧電線路の鉄塔建設コスト等の低減を図る太陽光発電設備システムを提供する。
【解決手段】発電設備システムにおいて、太陽光発電設備10は、ソーラーパネル1で発生した直流電力をパワーコンディショナ3で交流電力(例えば、270V)に変換し、特高変圧器11で高圧線による送電可能電圧に昇圧する。第1系列n1の特高変圧器11に第1連系手段12aを接続し、第2系列n2の特高変圧器11に第2連系手段12bを接続し、第1連系手段12aと第2連系手段12b、……第n連系手段12nを接続させて各系列nをリング状に構成する。これら連系手段にスリップオン式端子を用いる。連系手段で合流させた送電可能電圧の交流電力は、継電装置13から公道15に沿って自営で配した特高線14を介して特高連系変電所20に送電される。特高連系変電所は、特高連系地点の近傍に設置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用して電力を発生させ、電力会社の特別高圧電線路に系統を連系させる再生可能エネルギー利用による発電設備システムにおいて、
第1系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、公道に沿って電柱に架設または埋設して敷設した特高線を介して送電可能な所望の電圧となる送電可能電圧まで一基の第1系列特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第1連系手段に接続させ、
第2系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の第2系列特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第2連系手段に接続させると共に、該第2連系手段に前記第1連系手段の出力側を接続させ、
第n系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の第n系列特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第n連系手段に接続させ、
前記第n連系手段は、第(n-1)系列の第(n-1)連系手段の出力側が接続すると共に、第n連系手段の出力側を第(n+1)連系手段に接続させ、
最終系列の第ni連系手段の出力側を継電装置に入力し、該継電装置から出力される送電可能電圧を、前記特別高圧電線路に系統を連系させる特高連系変電所まで送電することを特徴とする再生可能エネルギー利用による発電設備システム。
【請求項2】
再生可能エネルギーを利用して電力を発生させ、電力会社の特別高圧電線路に系統を連系させる再生可能エネルギー利用による発電設備システムにおいて、
第1系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、公道に沿って電柱に架設または埋設して敷設した特高線を介して送電可能な所望の電圧となる送電可能電圧まで一基の特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第1連系手段に接続させ、
第2系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第2連系手段に接続させると共に、該第2連系手段に前記第1連系手段の出力側を接続させ、
第n系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第n連系手段に接続させ、
前記第n連系手段は、第(n-1)系列の第(n-1)連系手段の出力側が接続すると共に、出力側を第(n+1)連系手段に接続し、
最終系列の第ni連系手段の出力を特高連系変電所内の特高フィーダー盤まで送電することを特徴とする再生可能エネルギー利用による発電設備システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、
前記第1連系手段から第ni連系手段の連系手段は、スリップオン式端子であることを特徴とする再生可能エネルギー利用による発電設備システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、
前記発電手段が太陽光発電設備であることを特徴とする再生可能エネルギー利用による発電設備システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、
前記発電手段が風力発電設備であることを特徴とする再生可能エネルギー利用による発電設備システム。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、
前記発電手段に太陽光発電設備と風力発電設備とを利用していることを特徴とする再生可能エネルギー利用による発電設備システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光や風力、地熱その他の再生可能エネルギーを利用して発電する発電設備であって、中規模・大規模の発電設備で発電されて集電された電力を電力会社の特別高圧電線路に連系させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の発生を抑制でき安全な電源確保を企図して、太陽光や風力、地熱その他の再生可能エネルギーの利用が積極的に図られており、特に2011年3月に起きた福島第一原子力発電所の事故により再生可能エネルギーを原子力発電の代替電源とする利用が促進されている。しかも、例えば「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の開始等により、その利用の促進にさらに拍車がかけられた。特に採算面での不安が解消された太陽光発電による再生可能エネルギーが着目され、遊休地はもとより、既存建物の屋上等のように、多数基のソーラーパネルが設置できる場所を利用した、中規模あるいは大規模の太陽光発電設備、いわゆるメガソーラー設備の建設は国土全域にわたっている。
【0003】
太陽光発電設備は太陽電池(ソーラーパネル)で発生させた電力を電力会社へ売却することが目的とされているものであるから、大規模な太陽光発電設備は電力会社の特別高圧電線路に系統を連系(以下、「特高連系」と略記する。)させる必要がある。他の再生可能エネルギーによる発電設備も同様に、発生させた電力を特高連系させる必要がある。なお、以下の説明は、再生可能エネルギーによる発電設備として太陽光発電設備を例として行う。
図3は、大規模太陽発電設備の特高連系のためのシステムを説明するブロック図である。複数基のソーラーパネル1のそれぞれには接続箱2が接続されて、それぞれのソーラーパネル1で発生させた直流電力が集電される。この接続箱2にパワーコンディショナ3が接続され、供給される直流電力が交流電力に変換されて、例えば、AC270Vに変換されて出力される。
【0004】
前記パワーコンディショナ3の出力は一次昇圧変圧器4に入力されて、この一次昇圧変圧器4によってAC6600Vに昇圧されて出力され、高圧盤5を介して高圧フィーダー盤6へ供給される。高圧フィーダー盤6の出力配線は二次昇圧変圧器7に入力されて、6600Vから22000Vに昇圧された後、特高フィーダー盤8へ送られる。
【0005】
特高連系させるためには、さらに66000Vまで昇圧させる。この場合、66000Vの特高線は鉄塔送電線として鉄塔に架設することを要する。太陽光発電設備の近傍に鉄塔送電線が配されている場合には、当該太陽光発電設備内で66000Vまで昇圧させて特高連系させる。また、発電設備の近傍に鉄塔送電線が引かれていない場合には、太陽光発電設備の事業者がその近傍に鉄塔を設置して特高線を引き込むことで特高連系させる。あるいは、特高線を公道に沿って設置させた電柱に架設しまたは地下に埋設して敷設し、特高連系を行える地点まで22000Vで送電し、66000Vまで昇圧させる特高連系変電所の変電設備を介して特高連系させてある。
【0006】
前述したように、太陽光発電設備では、ソーラーパネルによって発電された電力を階層的に徐々に昇圧させて、特高連系させる電圧としている。特許文献1には、複数の家庭用分散型電源を低コストで電力系統に連系させる分散型電源システムが開示されている。この分散型電源システムは、家庭に設置され、直流電力を発電する分散型電源と、複数の前記分散型電源から直流電力を受電し、受電した直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータから交流電力を受電し、受電した交流電力を昇圧して電力系統に供給する変圧器と、を備えている構成とされたものである。
【0007】
また、特許文献2には、電力会社の特別高圧電線路に系統を連系させる太陽光発電設備システムとして、第1系列に属する前記ソーラーパネルが発生した直流電力を交流電力に変換して、交流22000Vまで一基の特高変圧器で昇圧させ、この第1系列の交流22000Vを特高盤に接続させ、第2系列に属する前記ソーラーパネルが発生した直流電力を交流電力に変換して、交流22000Vまで一基の特高変圧器で昇圧させ、この第2系列の交流22000Vを第2特高集電盤に接続させると共に、該第2特高集電盤に前記特高盤の出力側を接続させ、第n系列に属する前記ソーラーパネルが発生した直流電力を交流電力に変換して、交流22000Vまで一基の特高変圧器で昇圧させ、この第n系列の交流22000Vを第n特高集電盤に接続させ、前記第n特高集電盤は、第(n-1)系列の第(n-1)特高集電盤の出力側が接続すると共に、該第n特高集電盤の出力側を第(n+1)特高集電盤に接続し、最終系列の第ni特高集電盤の出力側を特高フィーダー盤に入力し、該特高フィーダー盤から出力される交流22000Vを、前記特別高圧電線路に系統を連系させる特高連系変電所まで送電することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-213384号公報
【特許文献2】特許第6411114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、ソーラーパネルで発生させた直流電力は交流電力に変換され、階層的に昇圧されて特高連系できる電圧まで上昇させられる。このとき、
図3に示すように、1組のソーラーパネル1で発生させた電力は、個別に昇圧されて高圧盤5から高圧フィーダー盤6に個別に送られ、該高圧フィーダー盤6で集電される。その後、二次昇圧変圧器7を介して特高フィーダー盤8から特高線に供される。
【0010】
ところで、特高連系させる場合には66000Vまで昇圧させることになるが、そのためには、前述したとおり、一次昇圧変圧器4と二次昇圧変圧器7とを設備し、ソーラーパネル1毎に高圧フィーダー盤6に送っている。他方、特高連系させる場合に、太陽光発電設備の近傍に特高線が架設された鉄塔が存しない場合には、発電事業者が鉄塔を設置して特高線を引き込むか、特高線が架設されている地点まで22000Vの高圧線で送電する必要がある。特に、22000Vで送電する場合には特高線を公道に沿って設置した電柱に架設したり、地下埋設で敷設したりすることができる。このため、太陽光発電設備で特高連系させる66000Vまで昇圧せずに、22000Vまで昇圧させた電圧で特高連系できる地点まで送電することで足りることになる。
【0011】
特許文献2に開示された太陽光発電設備システムでは、発電された電力を一基の特高変圧器により22000Vまで昇圧させているため電力損失が抑制されて高効率で特高連系できるものとされている。
この太陽光発電設備システムでは、特高変圧器の出力を特高盤または特高集電盤に接続させて、各系列の電力を合流させることとされている。これら特高盤または特高集電盤は特高変圧器のそれぞれに対応して設置されているため、設置作業が煩雑で工期を要する。このため、発電設備のコスト上昇の一因ともなっている。
【0012】
そこで、この発明は、再生可能エネルギーを利用する発電設備の特高連系のためのシステムの簡略化を図り、電力損失を極力抑制して高効率とすると共に、設置コストの低減を図った再生可能エネルギー利用による発電設備システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る再生可能エネルギー利用による発電設備システムは、再生可能エネルギーを利用して電力を発生させ、電力会社の特別高圧電線路に系統を連系させる再生可能エネルギー利用による発電設備システムにおいて、第1系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、公道に沿って電柱に架設または埋設して敷設した特高線を介して送電可能な所望の電圧となる送電可能電圧まで一基の第1系列特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第1連系手段に接続させ、第2系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の第2系列特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第2連系手段に接続させると共に、該第2連系手段に前記第1連系手段の出力側を接続させ、第n系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の第n系列特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第n連系手段に接続させ、前記第n連系手段は、第(n-1)系列の第(n-1)連系手段の出力側が接続すると共に、第n連系手段の出力側を第(n+1)連系手段に接続させ、最終系列の第ni連系手段の出力側を継電装置に入力し、該継電装置から出力される送電可能電圧を、前記特別高圧電線路に系統を連系させる特高連系変電所まで送電することを特徴としている。
【0014】
前記発電手段によって発生させた直流電力は電力変換装置によって交流電力に変換される。この交流電力を特高変圧器で、公道に沿って電柱に架設された送電線または埋設して敷設された送電線で送電可能な電圧に昇圧する。発電手段によって発生された、例えば210Vあるいは270V等の交流電圧を、送電可能なAC22000VあるいはAC33000Vの出力を得る。この送電可能な電力を、特高線で所望の地点まで送ることができる。すなわち、発電設備の近傍まで特別高圧配電線を引き込むことを要せず、送電用の鉄塔を建設する必要がなく、発電事業者が自営で特高線を設置して特高連系変電所まで送電することができる。なお、前記系列数iは、発電容量との関係で最適となる系列数とする。
また、AC33000V以上の電力を送電する場合には前記継電装置には保護継電器付特高フィーダー盤が、AC22000Vの電力を送電する場合には保護継電器内蔵型特高遮断機を用いることができる。
【0015】
また、この発明に係る再生可能エネルギー利用による発電設備システムは、再生可能エネルギーを利用して電力を発生させ、電力会社の特別高圧電線路に系統を連系させる再生可能エネルギー利用による発電設備システムにおいて、第1系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、公道に沿って電柱に架設または埋設して敷設した特高線を介して送電可能な所望の電圧となる送電可能電圧まで一基の特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第1連系手段に接続させ、第2系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第2連系手段に接続させると共に、該第2連系手段に前記第1連系手段の出力側を接続させ、第n系列に属する再生可能エネルギーを利用して発電する発電手段にて発生した直流電力を交流電力に変換して、前記送電可能電圧まで一基の特高変圧器で昇圧させ、この送電可能電圧を第n連系手段に接続させ、前記第n連系手段は、第(n-1)系列の第(n-1)連系手段の出力側が接続すると共に、出力側を第(n+1)連系手段に接続し、最終系列の第ni連系手段の出力を特高連系変電所内の特高フィーダー盤まで送電することを特徴としている。
【0016】
すなわち、AC22000Vは保護継電器内蔵型特高遮断機を介して昇圧された送電可能電圧の電力を特高連系変電所まで送電するようにして、特高連系変電所には特高フィーダー盤を設置するものである。発電設備が複数箇所に点在する場合には、それぞれの発電設備から特高連系変電所まで送電可能電圧で送電して、特高連系変電所に設置されている特高フィーダー盤に入力させる。このとき、電力計を介することにより、各発電設備から供給される電力量を把握できる。このため、各発電設備の事業者が異なる場合であっても、それぞれの事業者の設備によって発電された電力量を把握できる。そして、特高連系変電所において特高連系させる66000Vまで昇圧する。この特高連系変電所を特高連系させる地点の近傍に設置することにより、特高連系を簡便に行える。
【0017】
また、前述した再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、前記第1連系手段から第ni連系手段の連系手段は、スリップオン式端子であることを特徴としている。
【0018】
連系手段をスリップオン式端子とすることにより、特高変圧器に簡便に接続させることができる。
例えば、メガソーラー設備を適宜数の区画に分割し、それぞれの区画内にあるパワーコンディショナと特高昇圧器の組み合わせたシステムを、送電ケーブルでリング状に組み合わせ、区画ごとに送電する場合のリング状に接続する際にこのスリップオン式端子をリングメインユニットとして用いることができる。
【0019】
また、前述した再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、前記発電手段が太陽光発電設備であることを特徴としている。
【0020】
この発電設備システムに利用する再生可能エネルギーを太陽光とするもので、太陽光発電設備により発電された電力を特高連系するものである。
【0021】
また、前述した再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、前記発電手段が風力発電設備であることを特徴としている。
【0022】
この発電システムに利用する再生可能エネルギーを風力とするもので、風力発電設備により発電された電力を特高連系するものである。
【0023】
また、前述した再生可能エネルギー利用による発電設備システムであって、
前記発電手段に太陽光発電設備と風力発電設備とを利用していることを特徴としている。
【0024】
再生可能エネルギーによって発電された電力は、電力会社の特別高圧電線路と連系させる必要がある。この発電システムを、太陽光発電設備と風力発電設備とが混在する発電設備に利用するものである。
風力発電設備では、いわゆるウィンドファームとして膨大な敷地に多数の風力発電用タワーを備えるものであるが、その敷地内に太陽光発電設備を設置することで、太陽光発電設備と風力発電設備とのそれぞれで発電された電力を合流させて特高連系変電所まで公道に沿わせた特高線で送電することができる。
なお、その他の再生可能エネルギーを利用して発電する設備、例えば、地熱発電や燃料電池による設備についても用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る再生可能エネルギー利用による発電設備システムによれば、一基の特高変圧器よって、公道に沿って電柱に架設または埋設して敷設した特高線を介して送電可能な所望の電圧となる送電可能電圧まで昇圧させることにより、変圧器の基数を減じて、電力損失が抑制されて発電設備の効率を向上させることができる。また、各特高昇圧器の出力を連系手段を介して接続させることにより、この連系手段でリングメインユニットを構成することとなり、設備コストを低減できる。特に、スリップオン式端子を用いることによって、設備の構築が簡便となって、さらにコストの低減をはかることができる。
【0026】
また、近在に分散している発電設備で発生した電力を特高連系変電所まで送電し、特高連系変電所では特高連系させる電圧まで昇圧させて特高連系させることができるので、それぞれの発電設備について設備の簡素化を図ることができる。しかも、これらの発電設備の事業者が異なる場合には、特高連系変電所の設置と管理を共同で行うことで、各事業者は個別に特高連系変電所を所有する必要がなくなり、いずれの事業者についても設備コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】この発明に係る発電設備システムの第1実施形態に係る構成を説明するブロック図であり、再生可能エネルギーに太陽光を利用する発電設備を示している。
【
図2】この発明に係る発電設備システムの第2実施形態に係る構成を説明するブロック図であり、再生可能エネルギーに太陽光を利用する発電設備を示している。
【
図3】従来の太陽光発電設備システムの構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図示した好ましい実施形態に基づいて、この発明に係る再生可能エネルギー利用による発電設備システムを、太陽光発電システムを例示して、具体的に説明する。
【0029】
図1はこの発明の第1実施形態に係る再生可能エネルギーとして太陽光を利用する発電設備システムのブロック図であり、
図3に示す構成と同様の構成は同一の符号で示してある。ソーラーパネル1で太陽光を受けて発生させた電力は、接続箱2で集電される。発生した電力は直流であるため、パワーコンディショナ3に供して交流電力に変換させて、一般の利用に供することができるようにする。変換された交流電力は、例えば210Vまたは270Vで出力され、これを特高変圧器11に送出する。この特高変圧器11では、公道に沿って電柱に架設または埋設された敷設した特高線を介して送電可能な所望の電圧、例えば、22000Vや33000Vの送電可能電圧まで昇圧する。
【0030】
図1には、ソーラーパネル1により発電される三つの系列からなる発電設備の組が設置されている状態を示している。すなわち、太陽光発電設備10の領域内に第1系列n1と第2系列n2、第3系列n3とにより一つの組が構成されている。
【0031】
第1系列n1の送電可能電圧まで昇圧した交流電力は、特高変圧器11の出力端子の第1連系手段12aに入力される。この第1連系手段12aの出力側は、後述する第2系列n2の第2連系手段12bの入力側に接続されている。
【0032】
第2系列n2においても、第1系列と同様に、ソーラーパネル1で発生させた直流電力は接続箱2で集電され、パワーコンディショナ3によって交流電力に変換された後、特高変圧器11で送電可能電圧まで昇圧される。昇圧された送電可能電圧の交流電力は第2連系手段12bに入力される。この第2連系手段12bには第1系列n1で得られた送電可能電圧の交流電力が入力されており、第2系列n2で得られた送電可能電圧の交流電力と第2連系手段12bにて合流する。この第2連系手段12bの出力側は、第3系列n3の第3連系手段12cの入力側に接続されている。
【0033】
第n系列nにおいても、第1系列n1及び第2系列n2と同様に、ソーラーパネル1で発生させた直流電力が交流電力に変換された後、送電可能電圧の交流電力まで特高変圧器11により昇圧されて、第n連系手段12nに供給される。この第n連系手段12nには、第(n-1)系列n-1で得られた送電可能電圧が供給されており、この第n系列nにおいて得られた前記送電可能電圧と合流される。
【0034】
また、第(n+1)系列n+1においては、得られた送電可能電圧の交流電力は第(n+1)連系手段12n+1に供給され、この第(n+1)連系手段12n+1には第n系列nの第n連系手段12nの出力側が接続されて、この第(n+1)系列n+1において得られた送電可能電圧の交流電力と第n系列nの第n連系手段12nから出力された送電可能電圧の交流電力とが合流する。
そして、第(n+1)系列n+1の第(n+1)連系手段12n+1の出力側が継電装置13に接続されている。
この継電装置13は、送電可能電圧をAC22000Vとする場合には保護継電器内蔵型特高遮断機が用いられ、AC33000V以上とする場合には保護継電器付特高フィーダー盤が用いられる。
【0035】
図1に示す実施形態では、一つの組は3系列からなるため、n=2であり、第3系列n3の第3連系手段12cの出力側が前記継電装置13に接続されている。
また、他の組の系列についても同様のシステムを構築し、各組の第(n+1)系列n+1の送電可能電圧の交流電力を継電装置13に供給することが好ましい。
【0036】
前記継電装置13から出力される送電可能電圧の交流電力は、近傍に電力会社の鉄塔送電線が存在している場合には、当該太陽光発電設備内において特高変圧器を備えて、鉄塔送電線を利用できるAC66000Vまで昇圧させて特高連系させることができる。近傍に鉄塔送電線が存していない場合に、鉄塔を建設して特高線を引き込むこととすると、鉄塔の建設等の設備コストが大きくなってしまう。このため、送電可能電圧の特高線14を、公道15に沿って設置した電柱に架設したり、地下に埋設して敷設したりして、特高連系変電所20まで設置する。この特高連系変電所20は、この特高線14を特高連系させる地点の近傍に建設され、特高連系変電所20において送電可能電圧から特別高圧電圧まで特高変圧器21で昇圧して、電力会社の特別高圧電線路31と特高連系させる。
なお、特高変圧器21の入力側には開閉器22が配され、特高変圧器21の出力側にはガス絶縁開閉装置23が配され、特高受電盤24を介して特別高圧電線路31に連系される。
【0037】
前記連系手段12a、12b、12c、…、12n、12n+1には、スリップオン式端子を用いることが好ましい。
例えば、メガソーラー設備を適宜数の区画に分割し、それぞれの区画内にあるパワーコンディショナと特高昇圧器の組み合わせたシステムを、送電ケーブルでリング状に組み合わせ、区画ごとに送電する場合に、スリップオン式端子をリングメインユニットとして用いることができる。
【0038】
この
図1に示す第1実施形態に係る発電設備システムでは、太陽光発電設備10内に継電装置13を設備するものであるため、この太陽光発電設備10は単一の事業者により所有される設備の場合に適している。他方、
図2に示す第2実施形態では、別敷地に設置されている太陽光発電設備、または、複数の事業者に所有される太陽光発電設備40、50が近在している場合に適したシステムを示している。なお、
図1に示す実施形態と同一の機器装置等については同一の符号が付してある。
【0039】
例えば、
図2はA敷地内に太陽光発電設備40が設置され、B敷地内に太陽光発電設備50が設置されており、これらA、Bの敷地が近在している場合を示している。
【0040】
A敷地内に設置された太陽光設備40は、第1系列m1と第2系列m2、第3系列m3とを備えた設備を例示している。
第1系列m1では、ソーラーパネル1で発電されて接続箱2からパワーコンディショナ3に供給されて変換された交流電力は特高変圧器11に入力される。特高変圧器11では送電可能電圧まで昇圧されて、第1連系手段41aに入力される。
第2系列m2では、パワーコンディショナ3の出力が特高変圧器42に入力される。また、第3系列m3では、パワーコンディショナ3の出力が特高変圧器42に入力される。すなわち、第2系列m2と第3系列m3はいずれも、パワーコンディショナ3の出力が一基の特高変圧器42に入力される。
特高変圧器42では送電可能電圧まで昇圧されて、第2連系手段41bに入力される。
第1系列m1により出力されて第1連系手段41aに入力される送電可能電圧の交流電力と、第2系列m2および第3系列m3のそれぞれで出力されて第2連系手段41bに入力される送電可能電圧の交流電力とは、第1連系手段41aで合流されてA敷地内の継電装置13に出力される。この継電装置13から、公道15に沿って配された特高線14を介して、前述した特高連系変電所20や需要家に送電される。なお、特高連系変電所20では電力会社の特別高圧電線路31と特高連系される。
【0041】
また、B敷地内に設置された太陽光発電設備50は、第1系列k1と第2系列k2、第3系列k3とを備えた設備を例示している。
これらの各系列k1~k3のそれぞれは、ソーラーパネル1により発電され接続箱2で集められた直流電力はパワーコンディショナ3によって交流電力に変換される。各系列k1~k3のそれぞれのパワーコンディショナ3の出力は、一基の特高変圧器51に入力されている。この特高変圧器51で送電可能電圧まで昇圧されて連系手段52に出力される。連系手段52からB敷地内の継電装置13に出力される。
B敷地内の継電装置13の出力は、前述したA敷地の前記第2連系手段41bに入力されて、この第2連系手段41bにおいて太陽光発電設備40の特高変圧器42から出力される電力と合流する。さらに、太陽光発電設備40の第1連系手段41aに入力され、太陽光発電設備40の継電装置13から特高連系変電所20に送電されることになる。
【0042】
すなわち、A敷地内とB敷地内のそれぞれに設置された大規模あるいは中規模の太陽光発電設備40、太陽光発電設備50において得られた送電可能電圧の交流電力は特高連系変電所20に供給され、電力会社の特別高圧電線路に特高連系させることができる。
また、A敷地内の太陽光発電設備40とB敷地内の太陽光発電設備50とから出力された電力のそれぞれを電力計で計測する。これにより、太陽光発電設備40、50のそれぞれで発電された電力が把握され、太陽光発電設備40と太陽光発電設備50の各事業者の発電量を区別することができる。
【0043】
この第2実施形態に係る太陽光発電システムによれば、近在に設置されている太陽光発電設備の発電事業者が異なっている場合に、各事業者が共同して特高連系変電所の建設を行うことで、各事業者の設備コストを低減できる。しかも、特高連系変電所を一箇所とすることにより、それぞれの発電設備に配されている保守管理のための主任技術者を特高連系変電所に配することで、人員を削減できて、ランニングコストを低減させることができる。しかも、それぞれの発電事業者の敷地内に特高フィーダー盤を設置しないことから、その部分にソーラーパネル1を設置することができて、敷地をより有効に活用することができる。
【0044】
ところで、前記特高変圧器11、42、51には、地球温暖化防止のための温暖化ガス(CO2)の排出削減を実効あるものにするために、化石燃料の使用の低減が図られると共に、電力損失の低減、並びに変圧器の損失の低減のためにいわゆるトップランナー変圧器が用いられている。一方、太陽光発電の場合には夜間や曇天時には発電を行わないため、無負荷損失の比率が大きく買電量が大きくなって、基本料金や使用料の支払額が大きくなり、発電コストのさらなる低減化が望まれている。そこで、前記特高変圧器11、42、52に、いわゆるアモルファス変圧器を使用する。これにより、無負荷損失が約1/3に減じられて、待機時の電力量をより減じることができる。すなわち、特高変圧器11には、状況に応じて、トップランナー変圧器とアモルファス変圧器を使い分けることが好ましい。
【0045】
また、特高変圧器11、42、52の絶縁油に、生分解性植物絶縁油、いわゆる植物油を使用することが好ましい。該特高変圧器11、42、52は屋外に設置されるため、長期間の稼働による劣化や落雷により絶縁油が漏洩した場合、従来の鉱物油系絶縁油では、土壌汚染により環境破壊の一因となるおそれがある。これに対して、植物油を使用することにより、その高い生分解性のために、漏洩時における土壌汚染を抑制して環境に影響を与えることがない。また、原料が植物由来であるため、カーボンニュートラルにも大きく寄与できる。
【0046】
この発明に係る太陽光発電設備システムによれば、中規模あるいは大規模の太陽光発電設備で得られた電力を、公道に沿って設置した電柱や地下に埋設して敷設した高圧線により特高連系する地点まで送るようにしたので、特高連系のための発電設備まで特高線を引き込むことがなく、また、特高線を架設する鉄塔を建設する必要がないから、発電設備の建設コストを低減でき、山間部にある遊休地の利用を促進して電力需要の要請に安定して対応できることに寄与する。
しかも、連系手段に特高変圧器に接続させられるスリップオン式端子を用いることで、施工工事の手間を減じて、工期の短縮、発電設備の設置コストの低減化に寄与する。
【符号の説明】
【0047】
1 ソーラーパネル
2 接続箱
3 パワーコンディショナ
4 一次昇圧変圧器
5 高圧盤
6 高圧フィーダー盤
7 二次昇圧変圧器
8 特高フィーダー盤
10 太陽光発電設備
11 特高変圧器
n1 第1系列
n2 第2系列
n3 第3系列
12a 第1連系手段
12b 第2連系手段
12c 第3連系手段
12n 第n連系手段
13 継電装置
14 特高線
15 公道
20 特高連系変電所
21 特高変圧器
22 開閉器
23 ガス絶縁開閉装置
24 特高受電盤
31 特別高圧電線路
40 太陽光発電設備
m1 第1系列
m2 第2系列
m3 第3系列
41b 第2連系手段
41a 第1連系手段
42 特高変圧器
50 太陽光発電設備
51 特高変圧器
52 連系手段