(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113387
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】成形装置及び成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/44 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
B29C70/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009611
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宙世
(72)【発明者】
【氏名】野間 一希
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩庸
(72)【発明者】
【氏名】金升 将征
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AB11
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG04
4F205AJ05
4F205AM28
4F205AR06
4F205HA09
4F205HA22
4F205HA32
4F205HA35
4F205HA43
4F205HB01
4F205HG01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK22
4F205HT02
4F205HT13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屈曲部を有する繊維シートを好適に成形する、成形装置及び成形方法を提供する。
【解決手段】繊維シートを、長さ方向に延在すると共に前記長さ方向に直交する幅方向に屈曲させて形成される屈曲部11cを有する形状に成形する成形装置10であって、前記繊維シートの一方側に設けられ、前記繊維シートを成形する型材となる成形型11と、前記繊維シートの他方側に設けられると共に、前記屈曲部が形成される部位に設けられ、前記繊維シートよりも剛性の高い支持部材と、前記繊維シートを覆う被覆部材と、前記被覆部材により前記成形型に前記繊維シートを押し付ける押付装置と、を備え、前記支持部材は、前記幅方向に分割された複数の支持片を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートを、長さ方向に延在すると共に前記長さ方向に直交する幅方向に屈曲させて形成される屈曲部を有する形状に成形する成形装置であって、
前記繊維シートの一方側に設けられ、前記繊維シートを成形する型材となる成形型と、
前記繊維シートの他方側に設けられると共に、前記屈曲部が形成される部位に設けられ、前記繊維シートよりも剛性の高い支持部材と、
前記繊維シートを覆う被覆部材と、
前記被覆部材により前記成形型に前記繊維シートを押し付ける押付装置と、を備え、
前記支持部材は、前記幅方向に分割された複数の支持片を有する成形装置。
【請求項2】
前記支持片は、前記長さ方向に直交する断面形状が、成形時において隣接する前記支持片と非接触となる形状である請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
複数の前記支持片は、前記成形型の形状に応じて、前記長さ方向に直交する断面形状、または分割数の少なくとも一方が異なっている請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記幅方向に隣接する前記支持片同士の間隔は、異なる間隔となっており、前記屈曲部に近いほど狭く、前記屈曲部から遠いほど広くなっている請求項1から3のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項5】
複数の前記支持片は、異なる材料となっており、前記屈曲部に近いほど硬く、前記屈曲部から遠いほど柔らかくなっている請求項1から4のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項6】
複数の前記支持片は、前記繊維シートからの突出高さが異なっており、前記屈曲部に近いほど高く、前記屈曲部から遠いほど低くなっている請求項1から5のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項7】
成形時において前記支持部材が接する前記成形型の成形面が曲面となる場合、
前記支持片は、前記成形面に倣う湾曲形状となっている請求項1から6のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項8】
成形時において前記支持部材が接する前記成形型の成形面が曲面となる場合、
前記支持片は、前記繊維シートに接する側の第1部位と、前記第1部位を挟んで前記繊維シートの反対側に配置される第2部位と、を含む積層構造となっている請求項1から7のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項9】
前記成形型の前記幅方向における両側に設けられ、前記被覆部材の前記幅方向の両側を保持する保持部材を、さらに備え、
前記保持部材は、前記長さ方向及び前記幅方向に直交する高さ方向において、前記被覆部材を前記成形型の高さに保持可能な高さとなっている請求項1から8のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項10】
複数の前記支持片をそれぞれ加熱する加熱部を、さらに備え、
前記加熱部は、複数の前記支持片に対する加熱温度を異ならせており、
複数の前記支持片は、前記屈曲部に近いほど温度が高く、前記屈曲部から遠いほど温度が低くなっている請求項1から9のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の成形装置を用いて、前記繊維シートを、前記屈曲部を有する形状に成形する成形方法であって、
前記成形型に対して、前記繊維シートを配置するステップと、
前記繊維シートを配置するステップに前後して、前記繊維シートを挟んで前記成形型の反対側に、前記屈曲部が形成される部位に対応して、前記支持部材を配置するステップと、
前記繊維シートを覆うように前記被覆部材を配置するステップと、
前記被覆部材により前記成形型に前記繊維シートを押し付けるステップと、を備える成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形装置及び成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複合材の成形時に生じるしわを最小限に抑えるためのシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、複合材が、型押しロッドアセンブリを覆うように、ツール上に配置される。型押しロッドアセンブリは、複合材に圧縮圧力が加えられるときに、複合材を波形状とする型押しロッドを有しており、型押しロッドにより、しわの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017-0312999号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複合材を成形型形状に成形する場合、真空バッグ等の被覆部材を複合材に覆って真空引きをしている。被覆部材を用いて、シート形状の複合材を屈曲させてコーナー等の屈曲部を有する複合材を成形する場合、屈曲部にリンクル(しわ)が発生し、成形不良となる可能性がある。特許文献1では、型押しロッドにより複合材のしわを伸ばしているものの、複合材が波形状となってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、屈曲部を有する繊維シートを好適に成形することができる成形装置及び成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の成形装置は、繊維シートを、長さ方向に延在すると共に前記長さ方向に直交する幅方向に屈曲させて形成される屈曲部を有する形状に成形する成形装置であって、前記繊維シートの一方側に設けられ、前記繊維シートを成形する型材となる成形型と、前記繊維シートの他方側に設けられると共に、前記屈曲部が形成される部位に設けられ、前記繊維シートよりも剛性の高い支持部材と、前記繊維シートを覆う被覆部材と、前記被覆部材により前記成形型に前記繊維シートを押し付ける押付装置と、を備え、前記支持部材は、前記幅方向に分割された複数の支持片を有する。
【0007】
本開示の成形方法は、上記の成形装置を用いて、前記繊維シートを、前記屈曲部を有する形状に成形する成形方法であって、前記成形型に対して、前記繊維シートを配置するステップと、前記繊維シートを配置するステップに前後して、前記繊維シートを挟んで前記成形型の反対側に、前記屈曲部が形成される部位に対応して、前記支持部材を配置するステップと、前記繊維シートを覆うように前記被覆部材を配置するステップと、前記被覆部材により前記成形型に前記繊維シートを押し付けるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、屈曲部を有する繊維シートを好適に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、繊維シートの配置に関する模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る成形方法の説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、繊維シートの配置に関する模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態3に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態4に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
【
図8】
図8は、繊維シートの配置に関する模式的な斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態5に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1に係る成形装置10は、屈曲部Dを有する繊維シートSを成形するための装置である。繊維シートSは、長さ方向に延在しており、長さ方向に直交する方向を幅方向としている。実施形態1において、繊維シートSは長さ方向に長く、幅方向に短いものとなっているが、特に限定されず、長さ方向に短く、幅方向に長いものであってもよい。成形装置10は、繊維シートSを、幅方向に屈曲させることで、屈曲部Dを有する形状に成形する。なお、屈曲部Dを有する形状であればよいことから、例えば、幅方向に屈曲されると共に、長さ方向に変形させた形状であってもよい。つまり、成形後の繊維シートSは、二次元的に変化させた屈曲部Dを、三次元的に変化させる部位としてもよい。なお、実施形態1では、繊維シートSとして、強化繊維に樹脂を含侵させたシートを適用しており、例えば、プリプレグを適用している。実施形態1では、繊維シートSとしてプリプレグを適用したが、この構成に特に限定されず、樹脂を含まないドライ状態の強化繊維シートを適用してもよい。また、実施形態1において、繊維シートSは、複数積層した積層体となっているが、単層であってもよく、特に限定されない。
【0012】
(成形装置)
図1は、実施形態1に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
図2は、繊維シートの配置に関する模式的な斜視図である。
図3は、実施形態1に係る成形方法の説明図である。
図1から
図3に示すように、成形装置10は、成形型11と、支持部材12と、被覆部材13と、吸引装置14と、保持部材16とを備えている。
【0013】
成形型11は、基台17上に配置され、繊維シートSを成形する型材となっている。
図1から
図3に示すように、成形型11は、上方側に凸となる雄型となっており、長さ方向に長い直方体形状の成形型11となっている。成形型11は、上面部11aと、上面部11aの幅方向両側に設けられる一対の側面部11bと、上面部11aと一対の側面部11bとの間に形成される一対の屈曲部11cとを有している。屈曲部11cは、例えば、上面部11aと各側面部11bとが為す角度が直角となるような屈曲部11cとなっている。なお、屈曲部11cは、上面部11aと各側面部11bとが為す角度が直角以外の角度であってもよい。
【0014】
支持部材12は、繊維シートSを挟んで成形型11の他方側に設けられる。つまり、繊維シートSの一方側に成形型11が設けられ、繊維シートSの他方側に支持部材12が設けられる。支持部材12は、繊維シートSよりも剛性が高くなっており、例えば、金属材料、フィルムまたはシリコーンゴム等の弾性材料等が適用される。支持部材12は、繊維シートSと被覆部材13との間に設けられ、繊維シートSと一体に設けられる。具体的に、支持部材12は、粘着剤を介して、繊維シートS上に貼り付けられることにより一体となっている。なお、支持部材12は、粘着剤を省いてもよく、繊維シートSに含まれる樹脂により一体となってもよい。
【0015】
支持部材12は、繊維シートSの屈曲部Dが形成される部位に設けられる。具体的に、支持部材12は、
図2に示すように、成形型11から離れた繊維シートSの部位となる、繊維シートSの幅方向両側の部位に設けられる。なお、支持部材12は、成形型11から離れた繊維シートSの部位の全面に設けなくてもよく、少なくとも一部に配置されていればよい。
【0016】
また、支持部材12は、
図2及び
図3に示すように、繊維シートSの屈曲部Dに対して幅方向に並べて設けられる複数の支持片15を有している。具体的に、複数の支持片15は、繊維シートSの一対の側面部11bに対向する部位に対して、幅方向に並べて設けられている。複数の支持片15は、成形時に側面部11bの形状に沿うように、分割されて配置されている。また、支持片15のそれぞれは、長さ方向に延在して設けられている。
【0017】
支持片15は、長さ方向に直交する断面形状が、成形時において隣接する支持片15と非接触となる形状となっている。具体的に、支持片15は、その断面形状が、繊維シートS側を下底とする台形状となっている。また、複数の支持片15は、繊維シートSからの突出高さが同じ高さとなっている。さらに、複数の支持片15は、幅方向に隣接する支持片同士の間隔が所定の間隔となっており、等間隔であってもよいし、不等間隔であってもよい。
【0018】
ここで、複数の支持片15は、それぞれ異なる材料を用いて構成してもよい。例えば、複数の支持片15は、屈曲部Dに近いほど硬く(剛性が高く)、屈曲部Dから遠いほど柔らかい(剛性が低い)材料を用いてもよい。また、複数の支持片15は、隣接する支持片15同士の間隔が、屈曲部Dに近いほど狭く、屈曲部Dから遠いほど広くなっていてもよい。
【0019】
保持部材16は、
図3に示すように、成形型11の幅方向の両側に設けられて、被覆部材13の幅方向の両側を保持している。なお、
図3では、幅方向の片側の保持部材16を図示している。保持部材16は、基台17上に設置されており、長さ方向及び幅方向に直交する高さ方向において、被覆部材13を成形型11とほぼ同じ高さに保持可能な高さとなっている。なお、保持部材16は、成形型11と同じ高さであることが望ましいが、特に限定されず、成形型11に対して高くてもよいし、低くてもよい。また、実施形態1では、保持部材16を設けたが、保持部材16を省いた構成であってもよい。
【0020】
被覆部材13は、
図3に示すように、繊維シートSを覆って設けられる。被覆部材13は、例えば、シリコーンゴム等を用いて構成された膜体である。被覆部材13は、成形型11、成形型11に設置された繊維シートS及び保持部材16を覆うと共に、基台17との間にシール材(図示省略)が設けられることで、その内部を気密に封止している。
【0021】
吸引装置14は、成形型11と被覆部材13との間の内部雰囲気を吸引することで、被覆部材13により成形型11に繊維シートSを押し付ける。吸引装置14は、例えば、真空ポンプである。吸引装置14は、気密に封止された被覆部材13の内部雰囲気を、図示しない吸引口を介して真空引きすることで、繊維シートSを成形型11に倣った形状に成形する。なお、繊維シートSは、成形時に図示しない加熱装置により加熱を行うことで、繊維シートSに含まれる樹脂の粘度を下げて賦形性を向上させ、また、成形後に、図示しない加熱装置により加熱されることで、繊維シートSに含まれる樹脂が硬化される。なお、実施形態1では、吸引装置14を適用したが、被覆部材13により成形型11に繊維シートSを押し付ける装置であれば、いずれの装置であってもよい。
【0022】
(成形方法)
次に、
図3を参照して、成形装置10を用いた成形方法について説明する。この成形方法では、平板形状の繊維シートSを、成形型11に倣って成形することで、屈曲部Dを有する形状に成形している。
【0023】
実施形態1の成形方法では、先ず、平板形状の繊維シートS上に、複数の支持片15を事前に配置する(ステップS1)。ステップS1では、複数の支持片15を、粘着剤により繊維シートS上に粘着させることで、繊維シートSと複数の支持片15とを一体とする。また、ステップS1では、成形型11から離れた繊維シートSの部位に対して、複数の支持片15を幅方向に並べて配置する。続いて、複数の支持片15が一体となった繊維シートSを、成形型11に対して配置する(ステップS2)。ステップS2では、繊維シートSの一方側(下方側)に成形型11が位置し、繊維シートSの他方側(上方側)に支持部材12が位置する。そして、ステップS2では、屈曲部Dが形成される繊維シートSの部位に、複数の支持片15が位置するように、成形型11に対して繊維シートSが配置される。
【0024】
この後、実施形態1の成形方法では、
図3に示すように、繊維シートSを覆うように被覆部材13を配置する(ステップS3)。ステップS3では、被覆部材13と繊維シートSとの間に、支持片15が位置する。そして、ステップS3では、被覆部材13が設けられることで、被覆部材13と成形型11との間の空間が気密に封止される。次に、実施形態1の成形方法では、
図2に示すように、成形型11と被覆部材13との間の雰囲気を吸引装置14により吸引する(ステップS4)。ステップS4では、気密に封止された被覆部材13の内部雰囲気を真空引きすることで、大気圧により、繊維シートSが成形型11に倣って変形することで、被覆部材13により成形型11に繊維シートSを押し付け、屈曲部Dを有する繊維シートSに成形する。
【0025】
図3に示すように、ステップS4において、繊維シートSが変形する場合、成形型11の上面部11aに接する繊維シートSの部位は変形せず、成形型11の側面部11bに対応する繊維シートSの部位が、側面部11bに近づくように折れ曲がって変形する。このとき、側面部11bに対応する繊維シートSの部位が、複数の支持片15によって支持されていることから、成形中の繊維シートSの剛性を保ちつつ、繊維シートSの基端側の部位から先端側の部位に向かって、繊維シートSの変形を許容しつつ成形型11に接触していく。これにより、繊維シートSに対する余剰部分の形成が抑制されることで、リンクルの発生が抑制される。
【0026】
なお、実施形態1では、成形型11が直方体形状となっていたが、成形型11によっては、高さ方向における高さが、長さ方向において変化するものがある。この場合、複数の支持片15は、成形型11の形状に応じて、長さ方向に直交する断面形状、または分割数の少なくとも一方を異ならせてもよい。つまり、成形型11の高さが、長さ方向の一方側から他方側へ向かって高くなる場合、長さ方向に亘る複数の支持片15の分割数を同じとし、各支持片15の断面形状を、長さ方向の一方側から他方側へ向かって、高さ方向における長さが長くなるように変化させてもよい。また、成形型11の高さが、長さ方向の一方側から他方側へ向かって高くなる場合、長さ方向に亘る各支持片15の断面形状を同じとし、複数の支持片15の分割数を、長さ方向の一方側から他方側へ向かって増加するように配置してもよい。
【0027】
[実施形態2]
次に、
図4を参照して、実施形態2に係る成形装置30について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図4は、実施形態2に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
図5は、繊維シートの配置に関する模式的な斜視図である。
【0028】
実施形態2の成形装置30は、成形型31が、実施形態1の成形型11と異なっている。
図4に示すように、成形型31は、一対の側面部11bのそれぞれが、段差部21を有している。段差部21は、奥行き方向の一方側(手前側)の側面部11bと、奥行き方向の他方側(奥側)の側面部11bと、両側の側面部11bの間の斜面部11dとを含んでいる。斜面部11dは、奥行き方向の一方側から他方側へ向かって幅方向に広がる斜面となっている。このように、成形型11は、屈曲部11c及び段差部21を有しており、屈曲部11c及び段差部21によって、繊維シートSに三次元的に変化した部位である形状変化部を付して成形する。
【0029】
また、複数の支持片15は、
図5に示すように、繊維シートSの形状変化部に対して複数設けられる。具体的に、各支持片15は、繊維シートSの一対の側面部11bに対向する部位に対して複数設けられている。つまり、支持片15は、幅方向だけでなく、長さ方向にも複数並べて設けられている。長さ方向に並べられた複数の支持片15は、成形時に段差部21の形状に沿うように、分割されて配置されている。具体的に、複数の支持片15は、長さ方向に並べて設けられ、奥行き方向の一方側(手前側)の側面部11bと、奥行き方向の他方側(奥側)の側面部11bと、両側の側面部11bの間の斜面部11dとに対向するように設けられる。なお、支持片15を設ける位置は、上記の位置に、特に限定されず、リンクルが発生し易い部位であれば、いずれの位置に設けてもよい。
【0030】
このため、実施形態2の成形装置30を用いた成形方法では、実施形態1におけるステップS1において、被覆部材13に対して、複数の支持部材12を事前に配置する。続いて、ステップS2において、繊維シートSを、成形型11に対して配置した後、ステップS3において、複数の支持部材12が一体となった被覆部材13を、繊維シートSを覆うように配置する。そして、ステップS4において、成形型11と被覆部材13との間の雰囲気を吸引装置14により吸引する(ステップS4)。ステップS4では、複数の支持片15が長さ方向にも並べて設けられていることから、成形型11の側面部11bの段差部21に倣って繊維シートSを成形することにより、繊維シートSに形状変化部を成形する。
【0031】
[実施形態3]
次に、
図6を参照して、実施形態3に係る成形装置40について説明する。なお、実施形態3では、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図6は、実施形態3に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
【0032】
実施形態1の成形装置10は、複数の支持片15の高さが同じ高さとなっていたが、実施形態3の成形装置40は、複数の支持片15の高さが異なる高さとなっている。具体的に、複数の支持片15は、繊維シートSからの突出高さが異なっており、屈曲部Dに近いほど高く、屈曲部Dから遠いほど低くなっている。つまり、複数の支持片15は、成形型11に対して早い時期に接触させる繊維シートSの部位に対応する支持片15の高さを高くし、成形型11に対して遅い時期に接触させる繊維シートSの部位に対応する支持片15の高さを低くする。
【0033】
[実施形態4]
次に、
図7及び
図8を参照して、実施形態4に係る成形装置50について説明する。なお、実施形態4では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から3と異なる部分について説明し、実施形態1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施形態4に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
図8は、繊維シートの配置に関する模式的な斜視図である。
【0034】
実施形態4の成形装置50は、成形型51が長さ方向において湾曲形状となっている。つまり、成形型11は、上面部11aが平面となる一方で、一対の側面部11bの一方側(左側)が外側に凸となる湾曲面となり、他方側(右側)が内側に凸となる湾曲面となっている。
【0035】
また、複数の支持片15は、各側面部11bの湾曲面に倣った形状となっている。つまり、各支持片15は、長さ方向において湾曲形状となっている。複数の支持片15は、一方側(左側)の側面部11bに対応して設けられる支持片15が、長さ方向の中央部において繊維シートSの反対側に凸となる湾曲形状となっている。また、複数の支持片15は、他方側(右側)の側面部11bに対応して設けられる支持片15が、長さ方向の中央部において繊維シートS側に凸となる湾曲形状となっている。
【0036】
なお、成形型51が長さ方向において湾曲形状となる場合、
図9に示す支持片15としてもよい。
図9は、支持片の断面図である。支持片15は、繊維シートSに接する側の第1部位56と、第1部位56を挟んで繊維シートSの反対側に配置される第2部位55と、を含む積層構造となっている。第1部位56は、側面部11bの湾曲形状を許容可能となっており、第2部位55に比して柔らかい(剛性の低い)材料を用いて構成されている。第2部位55は、繊維シートSを支持可能となっており、第1部位56に比して硬い(剛性の高い)材料を用いて構成されている。
図9に示す支持片15は、第1部位56において側面部11bの湾曲形状を許容しつつ、第2部位55において繊維シートSを支持する。
【0037】
[実施形態5]
次に、
図10を参照して、実施形態5に係る成形装置60について説明する。なお、実施形態5では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から4と異なる部分について説明し、実施形態1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図10は、実施形態5に係る成形装置の成形型に関する模式的な斜視図である。
【0038】
実施形態5の成形装置60は、実施形態1の複数の支持片15をそれぞれ加熱する加熱部61をさらに備えるものである。支持片15は、例えば、伝熱体となっており、加熱部61による加熱によって所定の温度に加熱される。加熱部61は、複数の支持片15に対する加熱温度を異ならせている。具体的に、加熱部61は、複数の支持片15が、屈曲部Dに近いほど温度が高く、屈曲部Dから遠いほど温度が低くなるように加熱する。
【0039】
このため、実施形態5の成形装置60を用いた成形方法では、実施形態1のステップS4において、屈曲部Dに近い繊維シートSの部位を加熱により軟化させることができるため、屈曲部Dに近い繊維シートSの部位を、側面部11bに倣い易いものにできる。
【0040】
以上のように、本実施形態に記載の成形装置10,30,40,50,60及び成形方法は、例えば、以下のように把握される。
【0041】
第1の態様に係る成形装置10,30,40,50,60は、繊維シートSを、長さ方向に延在すると共に前記長さ方向に直交する幅方向に屈曲させて形成される屈曲部Dを有する形状に成形する成形装置10,30,40,50,60であって、前記繊維シートSの一方側に設けられ、前記繊維シートSを成形する型材となる成形型11と、前記繊維シートSの他方側に設けられると共に、前記屈曲部Dが形成される部位に設けられ、前記繊維シートSよりも剛性の高い支持部材12と、前記繊維シートSを覆う被覆部材13と、前記被覆部材13により前記成形型11に前記繊維シートSを押し付ける押付装置(吸引装置14)と、を備え、前記支持部材12は、前記幅方向に分割された複数の支持片15を有する。
【0042】
この構成によれば、幅方向に分割された複数の支持片15により、繊維シートSの変形を許容しつつ、繊維シートSを支持しながら、繊維シートSの部位を成形型11に倣って成形することにより、屈曲部Dを有する繊維シートSを好適に成形することができる。
【0043】
第2の態様として、前記支持片15は、前記長さ方向に直交する断面形状が、成形時において隣接する前記支持片15と非接触となる形状である。
【0044】
この構成によれば、繊維シートSの成形時において、隣接する支持片15同士が接触することがないため、繊維シートSの変形を好適に許容することができる。
【0045】
第3の態様として、複数の前記支持片15は、前記成形型11の形状に応じて、前記長さ方向に直交する断面形状、または分割数の少なくとも一方が異なっている。
【0046】
この構成によれば、成形型11の形状に応じた複数の支持片15を設置することができる。
【0047】
第4の態様として、前記幅方向に隣接する前記支持片15同士の間隔は、異なる間隔となっており、前記屈曲部Dに近いほど狭く、前記屈曲部Dから遠いほど広くなっている。
【0048】
この構成によれば、屈曲部Dに近い繊維シートSの部位を、精度よく成形することができる。
【0049】
第5の態様として、複数の前記支持片15は、異なる材料となっており、前記屈曲部Dに近いほど硬く、前記屈曲部Dから遠いほど柔らかくなっている。
【0050】
この構成によれば、屈曲部Dに近い繊維シートSの部位を、好適に支持することができる。
【0051】
第6の態様として、複数の前記支持片15は、前記繊維シートSからの突出高さが異なっており、前記屈曲部Dに近いほど高く、前記屈曲部Dから遠いほど低くなっている。
【0052】
この構成によれば、屈曲部Dに近い繊維シートSの部位を成形型に早期に接触させることができるため、リンクルの発生を抑制することができる。
【0053】
第7の態様として、成形時において前記支持部材12が接する前記成形型11の成形面が曲面となる場合、前記支持片15は、前記成形面に倣う湾曲形状となっている。
【0054】
この構成によれば、成形型11の成形面が曲面であっても、支持片15を曲面に倣わせることができ、繊維シートSを好適に成形することができる。
【0055】
第8の態様として、成形時において前記支持部材12が接する前記成形型11の成形面が曲面となる場合、前記支持片15は、前記繊維シートSに接する側の第1部位56と、前記第1部位56を挟んで前記繊維シートSの反対側に配置される第2部位55と、を含む積層構造となっている。
【0056】
この構成によれば、第1部位56において成形型11の曲面を許容しつつ、第2部位55において繊維シートSを好適に支持することができる。
【0057】
第9の態様として、前記成形型11の前記幅方向における両側に設けられ、前記被覆部材13の前記幅方向の両側を保持する保持部材16を、さらに備え、前記保持部材16は、前記長さ方向及び前記幅方向に直交する高さ方向において、前記被覆部材13を前記成形型11の高さに保持可能な高さとなっている。
【0058】
この構成によれば、保持部材16により被覆部材13を成形型11の高さに保持することができるため、被覆部材13の自重が、繊維シートSに付加されることを抑制することができる。
【0059】
第10の態様として、複数の前記支持片15をそれぞれ加熱する加熱部61を、さらに備え、前記加熱部61は、複数の前記支持片15に対する加熱温度を異ならせており、複数の前記支持片15は、前記屈曲部Dに近いほど温度が高く、前記屈曲部Dから遠いほど温度が低くなっている。
【0060】
この構成によれば、屈曲部Dに近い繊維シートSの部位を軟化させることができるため、精度よく成形することができる。
【0061】
第11の態様に係る成形方法は、上記の成形装置を用いて、前記繊維シートを、前記屈曲部を有する形状に成形する成形方法であって、前記成形型に対して、前記繊維シートを配置するステップと、前記繊維シートを配置するステップに前後して、前記繊維シートを挟んで前記成形型の反対側に、前記屈曲部が形成される部位に対応して、前記支持部材を配置するステップと、前記繊維シートを覆うように前記被覆部材を配置するステップと、前記被覆部材により前記成形型に前記繊維シートを押し付けるステップと、を備える。
【0062】
この構成によれば、幅方向に分割された複数の支持片15により、繊維シートSの変形を許容しつつ、繊維シートSを支持しながら、繊維シートSの部位を成形型11に倣って成形することにより、屈曲部Dを有する繊維シートSを好適に成形することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 成形装置
11 成形型
11a 上面部
11b 側面部
11c 屈曲部
11d 斜面部
12 支持部材
13 被覆部材
14 吸引装置
15 支持片
16 保持部材
17 基台
21 段差部
30 成形装置(実施形態2)
31 成形型
40 成形装置(実施形態3)
50 成形装置(実施形態4)
51 成形型
55 第2部位
56 第1部位
60 成形装置(実施形態5)
61 加熱部
S 繊維シート
D 屈曲部