(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113388
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】食品包装用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/16 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
B65D43/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009612
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏至
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA14
3E084AA24
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA03
3E084CC03
3E084DA03
3E084DB09
3E084DB13
3E084DB18
3E084DC03
3E084FC07
3E084GA06
3E084GB06
3E084JA10
3E084KB10
3E084LD30
(57)【要約】
【課題】蓋体の安定した内嵌合が容易になり、蓋体を容器本体に装着する際の作業性を向上できる食品包装用容器を提供することを目的とする。
【解決手段】食品Fを収容する容器1であって、食品Fを出し入れするための開口Mを有する容器本体2と、開口Mを閉じる蓋体3と、容器本体2と蓋体3とを開閉可能に接続すると共に、可撓性を有するヒンジ部4と、を備え、容器本体2は、開口Mの外周に沿って設けられた開口壁5を備え、蓋体3は、開口壁5内に内嵌合される突条部7と、突条部7とヒンジ部4との間に設けられ、且つ蓋体3を閉じる際に開口壁5に干渉して突条部7の内嵌合の支点となる位置合わせ部9と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容する食品包装用容器であって、
前記食品を出し入れするための開口を有する容器本体と、
前記開口を閉じる蓋体と、
前記容器本体と前記蓋体とを開閉可能に接続すると共に、可撓性を有するヒンジ部と、を備え、
前記容器本体は、前記開口の外周に沿って設けられた開口壁を備え、
前記蓋体は、前記開口を覆うカバー部と、前記カバー部から突出すると共に、前記開口壁内に内嵌合される突条部と、前記突条部と前記ヒンジ部との間に設けられ、且つ前記蓋体を閉じる際に前記開口壁に干渉して前記突条部の内嵌合の支点となる位置合わせ部と、を備えている食品包装用容器。
【請求項2】
前記位置合わせ部は、前記突条部に接続され、且つ前記突条部と前記ヒンジ部との間に段差を形成する段差形成部を備え、
前記開口壁は、前記開口を囲む上端部と、前記ヒンジ部に接続されたヒンジ接続部と、前記ヒンジ接続部から立ち上がって前記上端部に接続され、且つ前記ヒンジ部の可撓性に追従しない形状安定性を有する突出壁部とを備えている、請求項1記載の食品包装用容器。
【請求項3】
前記開口壁は、前記上端部の内周側から下方に傾斜している凹側傾斜部と、前記凹側傾斜部に対して屈曲して接続され、且つ前記突条部が内嵌合される凹側内周部と、を備えており、
前記突条部は、前記凹側内周部に内嵌合される凸側外周部と、前記凸側外周部が前記凹側内周部に内嵌合された際に前記凹側傾斜部に重なるように、前記凸側外周部に対して屈曲して接続されている凸側傾斜部と、を備えている、請求項2記載の食品包装用容器。
【請求項4】
前記段差の高さ方向の距離は、0.5mm以上、且つ3mm以下である、請求項2または3記載の食品包装用容器。
【請求項5】
前記突条部は、前記カバー部の外周縁の全周に亘って連続的に設けられ、且つ前記開口壁に内嵌合される凸側外周部と、前記凸側外周部の外周に沿って設けられたフランジ部と、を備え、
前記開口壁は、前記開口を囲む上端部と、前記上端部の外周に沿って延在し、且つ前記フランジ部に当接するフランジ受け部を備えており、
前記フランジ部の輪郭線は、前記フランジ受け部の外周縁よりも前記開口に近い内方に後退している、請求項1~4のいずれか一項記載の食品包装用容器。
【請求項6】
前記フランジ受け部は、前記フランジ部が載置される支持座部と、前記支持座部から立設されると共に、前記支持座部に載置された前記フランジ部の輪郭線に沿うように延在している防壁部と、を備えている、請求項5記載の食品包装用容器。
【請求項7】
前記支持座部は、前記開口壁の前記上端部に揃うように設けられており、
前記ヒンジ部は、前記上端部よりも低い位置で前記開口壁に接続されている、請求項6記載の食品包装用容器。
【請求項8】
前記開口壁は凹側内周部を備えており、
前記突条部は、前記凹側内周部に内嵌合される凸側外周部を備えており、
前記凹側内周部は、前記凸側外周部に接する本体側テーパ面を備え、
前記凸側外周部は、前記本体側テーパ面に接する蓋側テーパ面を備え、
前記本体側テーパ面は、上部よりも下部の方が外方に広がるように傾斜しており、
前記蓋側テーパ面は、前記本体側テーパ面に沿うように傾斜している、請求項1~7のいずれか一項記載の食品包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、串団子や焼鳥などの食品を包装する食品包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
串団子や焼鳥のような食品を包装するプラスチック製の食品包装用容器が知られている。食品包装用容器は、例えば、食品を出し入れするための開口を備えた容器本体と、容器本体に装着されて開口を閉じる蓋体と、容器本体と蓋体とを開閉可能に接続するヒンジ部と、を備えている。この種の包装用容器では、蓋体を閉じた状態で食品に付けられた蜜やタレ等のタレ類が漏れないように注意する必要がある。例えば、特許文献1に記載の包装用容器は、容器本体の開口壁に内嵌合する突条部を設けた蓋体を備えている。蓋体を容器本体に内嵌合させることにより、タレ類の漏出を抑え、シール性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の食品包装用容器は、取り扱い性を高めるために容器本体と蓋体とはヒンジ部によって接続されている。蓋体は、ヒンジ部を撓ませることで容器本体側に倒され、開口を閉じるようにして容器本体に装着される。この装着の際、蓋体の突条部が容器本体の開口壁に位置合わせされて内嵌合する。しかしながら、従来の食品包装用容器では、この位置合わせが不安定になり易く、その結果、蓋体の位置合わせを丁寧に行う必要が生じて付加的な工夫や配慮が必要となり、作業性を低下させる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決することを目的としており、蓋体の安定した内嵌合が容易になり、蓋体を容器本体に装着する際の作業性を向上できる食品包装用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、食品を収容する食品包装用容器であって、食品を出し入れするための開口を有する容器本体と、開口を閉じる蓋体と、容器本体と蓋体とを開閉可能に接続すると共に、可撓性を有するヒンジ部と、を備え、容器本体は、開口の外周に沿って設けられた開口壁を備え、蓋体は、開口を覆うカバー部と、カバー部から突出すると共に、開口壁内に内嵌合される突条部と、突条部とヒンジ部との間に設けられ、且つ蓋体を閉じる際に開口壁に干渉して突条部の内嵌合の支点となる位置合わせ部と、を備えている。
【0007】
蓋体を閉じるために、ヒンジ部を撓ませて蓋体を容器本体側に傾けると、突条部に優先して位置合わせ部が開口壁に干渉し、内嵌合のための突条部の位置合わせが行われる。この状態で、蓋体を容器本体に向けて押圧すると、突条部は開口壁内に適切に内嵌合される。その結果、蓋体の安定した内嵌合が容易になり、蓋体を容器本体に装着する際の作業性を向上できる。
【0008】
上記の食品包装用容器において、位置合わせ部は、突条部に接続され、且つ突条部とヒンジ部との間に段差を形成する段差形成部を備え、開口壁は、開口を囲む上端部と、ヒンジ部に接続されたヒンジ接続部と、ヒンジ接続部から立ち上がって上端部に接続され、且つヒンジ部の可撓性に追従しない形状安定性を有する突出壁部とを備えていてもよい。この段差により、蓋体を閉じた際に、突条部は、開口壁を乗り越え易くなる。また、突出壁部を備えることで位置合わせ部の移動軌跡上に開口壁を配置し易くなり、突条部に優先して位置合わせ部を開口壁に干渉させ易くなる。
【0009】
上記の食品包装用容器において、開口壁は、上端部の内周側から下方に傾斜している凹側傾斜部と、凹側傾斜部に対して屈曲して接続され、且つ突条部が内嵌合される凹側内周部と、を備えており、突条部は、凹側内周部に内嵌合される凸側外周部と、凸側外周部が凹側内周部に内嵌合された際に凹側傾斜部に重なるように、凸側外周部に対して屈曲して接続されている凸側傾斜部と、を備えていてもよい。この食品包装用容器では、凸側外周部を凹側内周部に内嵌合させた際に、凸側傾斜部が凹側傾斜部に重なることでシール性が向上する。
【0010】
上記の食品包装用容器において、段差の高さ方向の距離は、0.5mm以上、且つ3mm以下であってもよい。蓋体を容器本体に装着する際に、段差の高さ方向の距離が0.5mm以上であれば、突条部が開口壁を乗り越えて位置合わせ部が開口壁に干渉し易くなり、また、3mm以下であれば、段差の拡大に起因して生じる装着の不安定性を回避し易くなる。
【0011】
上記の食品包装用容器において、突条部は、カバー部の外周縁の全周に亘って連続的に設けられ、且つ開口壁に内嵌合される凸側外周部と、凸側外周部の外周に沿って設けられたフランジ部と、を備え、開口壁は、開口を囲む上端部と、上端部の外周に沿って延在し、且つフランジ部に当接するフランジ受け部を備えており、フランジ部の輪郭線は、フランジ受け部の外周縁よりも開口に近い内方に後退していてもよい。突条部の凸側外周部が開口壁に内嵌合された際、蓋体は、フランジ部が開口壁のフランジ受け部に当接することで所定位置に保持される。ここで、フランジ部の輪郭線は、フランジ受け部の外周縁よりも開口に近い内方に後退しており、フランジ受け部からはみ出さない。その結果、フランジ部は、フランジ受け部から引き離されるような力を外部から受け難く、意図しない蓋体の開放を防止できる。
【0012】
上記の食品包装用容器において、フランジ受け部は、フランジ部が載置される支持座部と、支持座部から立設されると共に、支持座部に載置されたフランジ部の輪郭線に沿うように延在している防壁部と、を備えていてもよい。フランジ部の輪郭線は防壁部に囲まれているので、外部から作用する様々な力の影響を受け難く、意図しない蓋体の開放を防止できる。また、タレ類などの液体が、フランジ部と支持座部との間の隙間を通過してきても防壁部によって漏出をくい止めることができる。
【0013】
上記の食品包装用容器において、支持座部は、開口壁の上端部に揃うように設けられており、ヒンジ部は、上端部よりも低い位置で開口壁に接続されていてもよい。ヒンジ部は、開口壁の上端部よりも低い位置に接続されているので蓋体を閉じた際にヒンジ部が上方に膨らみ難く、目立ち難い。その結果、意匠性の向上に有利になる。なお、支持座部が開口壁の上端部に揃うとは、高さ方向の位置が揃うことを意味している。
【0014】
上記の食品包装用容器において、開口壁は凹側内周部を備えており、突条部は、凹側内周部に内嵌合される凸側外周部を備えており、凹側内周部は、凸側外周部に接する本体側テーパ面を備え、凸側外周部は、本体側テーパ面に接する蓋側テーパ面を備え、本体側テーパ面は、上部よりも下部の方が外方に広がるように傾斜しており、蓋側テーパ面は、本体側テーパ面に沿うように傾斜していてもよい。本体側テーパ面と蓋側テーパ面とが互いに接して係合することで、蓋体は容器本体から外れ難くなり、蓋体を容器本体に内嵌合した際のシール性の向上に有利である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、蓋体の安定した内嵌合が容易になり、蓋体を容器本体に装着する際の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係り、食品包装用容器の展開状態を示す斜視図である。
【
図2】食品包装用容器の蓋体を閉じた状態を示す斜視図である。
【
図3】食品包装用容器の展開状態を示す平面図である。
【
図4】食品包装用容器の蓋体を閉じた状態を示す平面図である。
【
図6】
図5で示すヒンジ部の周辺を示す拡大断面図である。
【
図7】
図4のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図7で示すフランジ部とフランジ受け部を中心に示す拡大断面図である。
【
図9】実施形態に係る食品包装用容器において、蓋体を閉じている状態を示す説明図である。
【
図10】位置合わせ部が開口壁に干渉している状態を示す拡大断面図である。
【
図11】容器本体に内嵌合させる蓋体の位置を微調整している状態を示す説明図である。
【
図12】変形例に係る位置合わせ部を示す概略の断面図である。
【
図13】比較形態に係る食品包装用容器の断面図である。
【
図14】比較形態に係る蓋体を閉じる際において、突条部と開口壁との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る食品包装用容器について
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5を参酌しつつ説明する。なお、本発明の食品包装用容器は、この実施形態のみに限定されるものではない。
【0018】
実施形態の食品包装用容器(以下、「容器」と称する)1は、団子や焼き鳥などの食品F(
図3参照)を収容する容器である。食品Fには、例えば、蜜やタレなどのタレ類が塗られており、容器1に食品Fを収容した際に、タレ類が漏れ出ないようにするシール性は重要である。
【0019】
容器1は、食品Fを出し入れするための開口Mを有する容器本体2と、開口Mを閉じる蓋体3と、容器本体2と蓋体3とを開閉可能に接続するヒンジ部4と、を備えている。蓋体3は、容器本体2の開口Mに内嵌合するように装着され、シール性を確保している。買い物客や他の商品などの障害物に触れた際、蓋体3は、内嵌合の方が外嵌合に比べて容器本体2から外れ難く、シール性を保持する上で有利である。
【0020】
容器1は、例えば、合成樹脂製のシートを用いて製造され、容器本体2と蓋体3とがヒンジ部4を介して結合した形状となるように一体成形されている。本実施形態に係る容器1は、透明であるが、透明に限定されるものではない。
【0021】
容器1の構造について説明する。容器1の構造は、基本的に、蓋体3が外れて容器本体2の開口Mが開いている状態、つまり、展開状態を基準にして説明する。なお、以下の説明において、蓋体3が容器本体2に装着されて開口Mを閉じている状態を基準にする場合には、蓋体3が開口Mを閉じた状態であることを補足説明として加える。また、上部、下部あるいは上方、下方などの上下方向を示しながら説明する場合には、食品Fを安定して保持し得るように設置した容器本体2を基準にしており、開口Mが上となる設置状態を想定している。また、「横方向」とは、便宜的に上下方向に略直交する方向を意味している。例えば、鉛直方向が上下方向となる場合には、水平方向は横方向となる。また、「内方」とは容器本体2の内部に向けた方向、あるいは蓋体3を閉じた状態において容器1の内部に向けた方向を意味する。また、「外方」とは「内方」とは反対側となる外部に向けた方向を意味する。
【0022】
容器本体2の概略形状は、平面視で横長の略矩形状である(
図3参照)。容器本体2の上部は開放されて開口Mが形成されている。容器本体2は、開口Mとは反対側となる下部に設けられた底部21と、底部21の周縁から立設された側壁22とを備えている。底部21には、内方(上方)に向けて突出している複数の線状の突起部21aが並んで配置されている。突起部21aは、内部に収容された食品Fに当接し、食品Fを底部21から僅かに持ち上げた状態で支持する。底部21の周囲には、窪み23が形成されている。窪み23の裏側(外方側)は突き出して脚部24(
図5参照)になっている。外方から見て脚部24同士の間の凹み部分には蓋体3を閉じた状態で固定する接着用のテープなどが貼られる。窪み23には、リブとなる複数の溝が設けられている。
【0023】
図1及び
図5に示されるように、側壁22は、底部21の窪み23から立設された下段壁25と、下段壁25の上端から外方に向けて横方向に張り出し、更に屈曲して立設された中段壁26と、を備えている。下段壁25には、窪み23に設けられたリブ用の溝に連続するように形成された複数の溝25aが設けられており、全体として流線型のリブ溝を形成している。中段壁26は、下段壁25から屈曲して横方向に張り出し、さらに、上方に向けて立ち上がるように屈曲している。
【0024】
図5及び
図6に示されるように、側壁22は、中段壁26の上端から屈曲しながら立設された上段壁を備えている。上段壁は、蓋体3の突条部7を内嵌合可能に受け入れる開口壁5である。開口壁5は、中段壁26の上端から外方に張り出した拡張部51を備えている。拡張部51は、中段壁26から屈曲して横方向に延在する水平拡張部51aと、水平拡張部51aから屈曲し、斜め上方に傾斜するように延在する傾斜拡張部51bと、を備えている。
【0025】
開口壁5は、拡張部51から立設された内周部52を備えている。内周部52は、蓋体3の突条部7が内嵌合される凹側内周部の一例である。内周部52は、上部よりも下部の方が外方に広がるように傾斜している。つまり、内周部52は、逆テーパ状を呈し、内周部52の内方側の表面は、上部よりも下部の方が外方に広がるように傾斜した本体側テーパ面52aとなっている。
【0026】
開口壁5は、内周部52の上端から屈曲され、外方となる斜め上方に向けて延在する凹側傾斜部53と、凹側傾斜部53の上端から屈曲され、横方向に延在する上端部54とを備えている。上端部54は、平面視において、連続的な無端の閉環状(例えば、略矩形環状)に設けられている(
図3参照)。上端部54で囲まれた内側の領域は、実質的に開口Mとなる。換言すると、上端部54は、開口Mの周りを囲むように設けられており、上端部54の内周は開口Mに面する側の周縁である。凹側傾斜部53は、上端部54の内周に沿って設けられており、内嵌合される蓋体3の突条部7の導入部分になっている。
【0027】
図1、
図3、
図5及び
図8に示されるように、開口壁5は、上端部54の外周に沿って延在するフランジ受け部6を備えている。上端部54の外周とは、開口M側である内周とは反対側の周縁を意味する。フランジ受け部6は、上端部54から外方に張り出すように設けられており、蓋体3を閉じた際に蓋体3のフランジ部8に当接する部分である。フランジ受け部6は、上端部54に揃うように設けられている支持座部61と、上端部54から下方にずれ、ヒンジ接続部55と支持座部61とを接続する連絡部62とを備えている。支持座部61が上端部54に揃うという意味は、上下方向(高さ方向)の位置が揃うことを意味している。例えば、本実施形態の係る支持座部61は、上端部54に面一に連続するように設けられている。フランジ部8は主として支持座部61に当接して支持される。
【0028】
図6に示されるように、開口壁5は、上端部54よりも低い位置(下方の位置)に設けられたヒンジ接続部55と、ヒンジ接続部55から立ち上がって上端部54に接続されている突出壁部56と、を備えている。容器本体2は、ヒンジ接続部55でヒンジ部4に接続されている。突出壁部56は、上端部54の全周ではなく、ヒンジ接続部55を中心にした一部分に設けられている(
図1参照)。突出壁部56の配置場所について、上端部54の形状に対比させながら具体的に説明する。
【0029】
上端部54(
図3参照)は、多少の湾曲はあるものの、平面視で横長の略矩形状の開口Mを囲むように設けられた部分である。つまり、本実施形態に係る上端部54は、対向する一対の長辺部分と、対向する一対の短辺部分とを備えていると仮定できる。ここで、一対の長辺部分のうち、一方の長辺部分はヒンジ部4に接続される側の部分(以下、「接続側領域」と称する)であり、他方の長辺部分は、開口Mを挟むようにして配置された反対側の部分(以下、「反対側領域」と称する)である。突出壁部56は、主に接続側領域に沿って設けられており、反対側領域には設けられていない。
【0030】
突出壁部56(
図6参照)は、ヒンジ部4の可撓性に追従せずに立設状態を維持できる程度の形状安定性を有している。例えば、突出壁部56は、ヒンジ部4に対して、ヒンジ接続部55で屈曲して立設されており、ヒンジ部4の撓みは、ヒンジ接続部55で吸収されてしまい、突出壁部56には伝わらないような構造になっている。つまり、突出壁部56は、ヒンジ部4を撓ませても、この撓みに追従した連続的な撓みが生じるのを阻止するような構造上の強度を備えていると説明することもできる。逆に、ヒンジ接続部55と上端部54との間において、ヒンジ部4の撓みに追従しない部分は突出壁部56であると説明することもできる。なお、本実施形態では、ヒンジ接続部55を屈曲させることで突出壁部56とヒンジ部4との境界を形成しているが、突出壁部56に撓みを阻止する他の支持部材や補強リブなどを設けることによって実質的に突出壁部56とヒンジ部4との境界を形成してもよい。
【0031】
上端部54の接続側領域及び反対側領域は、対向する一対の短辺部分に接続されている(
図1及び
図3参照)。突出壁部56は、接続側領域のみならず、短辺部分にも一部延長するように設けられている。短辺部分の突出壁部56は、接続側領域側から反対側領域側にかけて漸次高さが低くなっており、最終的に上端部54に揃って消滅している。
【0032】
上述の通り、フランジ受け部6は、上端部54の外周に沿うように延在しており、平面視において上端部54の全周のうち、ヒンジ接続部55以外の領域に設けられている。また、フランジ受け部6のうち、上端部54に揃っている領域は支持座部61であり、上端部54に揃うことなく上端部54よりも低い位置となる領域は連絡部62である。換言すると、フランジ受け部6のうち、突出壁部56に沿って設けられている領域は連絡部62であり、突出壁部56に沿っていない領域は支持座部61であると説明することもできる。
【0033】
ヒンジ部4の構造について説明する。ヒンジ部4は、平面視において、容器本体2の開口壁5の一部に沿って直線状に延在している。開口壁5は上端部54を備え、上端部54は、上述の通り、接続側領域を備えている。ヒンジ部4は、接続側領域に沿うように延在している。ヒンジ部4の長手方向(延在方向)に直交する幅方向に沿った断面視において(
図6参照)、ヒンジ部4は、下方に膨らむ略U字状の湾曲形状である。ヒンジ部4の幅方向の一方の端部(一方の縁部)は開口壁5のヒンジ接続部55に接続されており、他方の端部(他方の縁部)は蓋体3の位置合わせ部9に接続されている。位置合わせ部9は、ヒンジ部4に対して屈曲して接続されており、実質的に屈曲によって生じる折れ線はヒンジ部4と位置合わせ部9との境界になる。なお、本実施形態に係るヒンジ部4は、途中で屈曲することなく滑らかに湾曲した形状であり、幅方向の中心を基準にして左右対称な形状になっている。
【0034】
ヒンジ部4は、蓋体3を容器本体2側に傾動可能となる可撓性を有している。例えば、開口壁5に沿って延在するヒンジ部4について、長手方向を延在方向とし、延在方向に直交する方向を幅方向と考える。ここで、ヒンジ部4の幅方向の中心を通り、延在方向に沿った軸線を基準軸線Sfとして仮定する。ヒンジ部4は、基準軸線Sf回りの撓みを許容するような可撓性を有する主可撓部41(
図3及び
図4参照)を備えている。また、ヒンジ部4は、主可撓部41の両方の端部に接続された絞り部42を備えている。絞り部42は、平面視で主可撓部41から離れるほど、幅が狭くなっている(
図3参照)。例えば、主可撓部41は(
図6参照)、断面視で基準軸線Sf回りに沿うような湾曲形状を呈し、基準軸線Sfとの距離(内径)が一定となる状態で、基準軸線Sfに沿って延在している。これに対し、絞り部42は、基準軸線Sfとの距離(内径)が主可撓部41から離れるほど、狭くなるように縮径している。ヒンジ部4を介して蓋体3を容器本体2側に傾動させる際に、蓋体3が左右にふらつくのを絞り部42によって防止でき、蓋体3の軌道が安定し、内嵌合のズレが生じ難くなる。
【0035】
蓋体3の構造について説明する。
図6及び
図7に示されるように、蓋体3は、容器本体2に装着された際に開口Mを覆うカバー部31と、カバー部31から突出し、カバー部31の周縁部31cに沿って設けられている突条部7と、突条部7とヒンジ部4とに接続され、且つ可撓性を有する位置合わせ部9と、を備えている。
【0036】
カバー部31は、平面視において開口Mの形状に倣った形状を有し、本実施形態では、略矩形状の開口Mに倣った略矩形状である。カバー部31は、食品Fに塗られたタレ類などが付着し難くなるような奥行き(膨らみ)を有する立体面形状に形成されている。例えば、蓋体3を閉じた状態を基準にすると(
図7参照)、カバー部31は、横方向に延在して平坦な天井部31aと、天井部31aを囲むように天井部31aの外周縁に沿って設けられ、天井部31aの外周縁から下方に向けて傾斜している側壁部31bと、側壁部31bの下端部(縁部)から外方に向けて横方向に張り出した周縁部31cとを備えている。周縁部31cは、カバー部31の外周縁に相当する。
【0037】
図6に示されるように、突条部7は、カバー部31の周縁部31cから屈曲して立ち上がり、更に複数の屈曲部を有する形状にて全体が形成されている。突条部7は、カバー部31の周縁部31cの全周にわたって連続的に設けられており、蓋体3を容器本体2に装着した際に、突条部7の全周が開口壁5内に内嵌合される(
図8参照)。
【0038】
突条部7は、カバー部31の周縁部31cに沿って設けられている。突条部7は、周縁部31cから突出するように立ち上がっている内側面部71と、内側面部71の先端から屈曲して横方向に延在している嵌入端部72とを備えている。内側面部71は、周縁部31cの全周にわたって連続的に設けられている。嵌入端部72は、突条部7を開口壁5内に内嵌合させた際、開口壁5の水平拡張部51aに重なるように配置される。
【0039】
また、突条部7は、嵌入端部72の外周に沿って設けられた面取り部73と、面取り部73の外周に沿って設けられた外側面部74とを備えている。面取り部73は、嵌入端部72の外周から屈曲し、嵌入端部72に対して傾斜して設けられた傾斜壁部である。外側面部74は、面取り部73の外周から屈曲し、内側面部71に対向するように延在している壁部である。面取り部73は、突条部7を開口壁5内に内嵌合させた際、開口壁5の傾斜拡張部51bに重なるように配置される。
【0040】
外側面部74は、実質的にカバー部31の周縁部31cの全周に亘って連続的に設けられており、容器本体2の開口壁5に内嵌合される凸側外周部の一例である。蓋体3で開口Mを閉じると、外側面部74は開口壁5の内周部52に嵌り込むようにして接する。蓋体3を閉じた状態を基準にすると、外側面部74は、本体側テーパ面52aに沿うように上部よりも下部の方が外方に広がるように傾斜している。つまり、外側面部74の外方側の表面は、本体側テーパ面52aの傾斜に倣うように傾斜している蓋側テーパ面74aである。
【0041】
外側面部74は、面取り部73側の一方の周縁(
図6において上側の周縁)と、反対側となる他方の周縁(
図6において下側の周縁)とを有する。突条部7は、外側面部74の他方の周縁に沿って設けられた凸側傾斜部75を備えている。凸側傾斜部75は、外側面部74から屈曲され、外側面部74に対して広がるように傾斜している。凸側傾斜部75は、突条部7が開口壁5に内嵌合された際に、開口壁5の凹側傾斜部53に重なるように接する(
図8参照)。
【0042】
突条部7は、外側面部74の外周に沿って連続的に延在するフランジ部8を備えている。連続的との意味は途中に欠落部分が無いことを意味する。フランジ部8は、凸側傾斜部75から横方向に張り出すように設けられている。フランジ部8は、容器本体2のフランジ受け部6に載置される主載置部81と、位置合わせ部9に接続される連絡載置部82とを備えている。主載置部81及び連絡載置部82は、同一平面上で互いに接続されて無端の閉環状(略矩形)を呈し、突条部7の周方向の全周にわたって連続的に設けられている。蓋体3を閉じた際に、主載置部81は開口壁5の上端部54及びフランジ受け部6に載置され、連絡載置部82は上端部54のみに載置される。
【0043】
蓋体3は、突条部7とヒンジ部4との間に配置された位置合わせ部9を備えている。位置合わせ部9は、突条部7とヒンジ部4とに接続されている。位置合わせ部9はヒンジ部4に対して屈曲して接続されており、実質的に屈曲部が位置合わせ部9とヒンジ部4との境界と考えることができる。本実施形態に係る位置合わせ部9は、ヒンジ部4と突条部7とを上下方向及び横方向に離間させて段差を形成する構造である。なお、位置合わせ部9は、ヒンジ部4と突条部7とを上下方向のみに離間させる構造や横方向のみに離間させる構造であってもよい。
【0044】
ヒンジ部4と突条部7との間に形成される段差について、蓋体3の内嵌合を解き、蓋体3を開いた展開状態を基準にして説明する。この展開状態とは、容器本体2に対して蓋体3が真横に並ぶように開いている状態を意図している。より具体的に説明すると、蓋体3の嵌入端部72を含む平面を仮想の基準平面と仮定し、この基準平面が容器本体2の上下方向(例えば、鉛直方向)に対して横方向に交差するように開いた状態、例えば、基準平面が水平面となるように蓋体3を開いた状態は展開状態である。
【0045】
ヒンジ部4と突条部7との間に形成される段差とは、展開状態において、突条部7とヒンジ部4とが上下方向及び横方向にずれている状態を意味する。更に、「高さ方向の距離」とは、比較する二つの対象位置を上下方向で同一の直線上に配置したと仮定した場合の対象位置間の距離を意味する。例えば、本実施形態に係る段差の高さ方向の距離Haとは、ヒンジ部4の位置合わせ部9側の上端位置と位置合わせ部9の上端位置とを上下方向で同一の直線上に配置したと仮定した場合の上端位置間の距離である。また、「高さ方向の距離」とは、比較する二つの対象位置それぞれを含み、上下方向に直交する二つの平面を仮定し、その各平面間の距離であると考えることもできる。つまり、高さ方向の距離Haとは、ヒンジ部4の位置合わせ部9側の上端位置を含む平面と位置合わせ部9の上端位置を含む平面との間の距離と説明することも可能である。
【0046】
この段差の高さ方向の距離Haとなる寸法は、例えば、0.5mm以上で、且つ3mm以下であり、1.0mm以上で、2.5mm以下であると好ましく、1.5mm以上で、2.0mm以下であると更に好ましい。なお、位置合わせ部9から開口壁5の上端部54までの高さHbは、位置合わせ部9の上端位置と上端部54とを上下方向で同一の直線上に配置したと仮定した場合の両対象位置間の距離を意味しており、この高さHbは、例えば、0.5mm以上で、且つ1.5mm以下であり、0.8mm以上で、1.2mm以下であると好ましい。なお、この高さHbは、位置合わせ部9の上端位置を含む平面と上端部54を含む平面との間の距離と説明することも可能である。
【0047】
位置合わせ部9は、突条部7の連絡載置部82に接続された段差形成部91と、段差形成部91に接続された距離延長部92と、を備えている。連絡載置部82は、展開状態において凸側傾斜部75の下方の周縁から屈曲して横方向に延在している。段差形成部91は、連絡載置部82の周縁から屈曲し、連絡載置部82の延在方向に対して斜め下方に傾斜している。つまり、段差形成部91は、突条部7とヒンジ部4とを、上下方向及び横方向の二つのベクトルに分解できる斜め方向に離間させており、従って、突条部7とヒンジ部4との間には、上下方向及び横方向に離間した段差が形成されている。なお、本実施形態に係る位置合わせ部9は連絡載置部82に接続されているが、連絡載置部82を省略し、位置合わせ部9を、突条部7の外側面部74に直接接続するようにしてもよい。
【0048】
距離延長部92は、段差形成部91の下方の周縁から屈曲して設けられている。距離延長部92は、段差形成部91の下方の周縁からヒンジ部4側である実質的に横方向に張り出すように延在している。距離延長部92を設けることにより、容器本体2よりも蓋体3の方がヒンジ部4から離れている態様を容易に実現できる。本実施形態において、距離延長部92によって形成される横方向の追加距離Wは、例えば、1.0mm以上で、且つ5.0mm以下であり、2.0mm以上で、4.0mm以下であると好ましく、2.5mm以上で、3.5mm以下であると更に好ましい。
【0049】
本実施形態に係る位置合わせ部9によれば、開口壁5の上端部54と突条部7の嵌入端部72との間に高さ方向の差を設けることができる。また、位置合わせ部9を設けることで、例えば、ヒンジ部4から開口Mの中心(開口壁5の中心)までの距離Laよりも、ヒンジ部4から突条部7の中心までの距離Lbを長くすることも可能である(
図5参照)。具体的に説明すると、ヒンジ部4の幅方向の中心、開口Mの中心及び突条部7の中心を仮定する。開口Mの中心は、開口壁5の上端部54で囲まれた内側領域の面積中心であると仮定でき、突条部7の中心は、突条部7で囲まれた内側領域の面積中心であると仮定できる。本実施の形態では、0.5mmから数mm程度ではあるが、ヒンジ部4の中心から突条部7の中心までの距離Lbの方が、ヒンジ部4の中心から開口Mの中心(開口壁5の中心)までの距離Laよりも長くなっている。
【0050】
次に、
図12を参照し、位置合わせ部の変形例について説明する。
図12の(a)の図は、第1の変形例に係る位置合わせ部9Aを模式的に示す断面図であり、(b)の図は、第2の変形例に係る位置合わせ部9Bを模式的に示す断面図である。第1の変形例に係る位置合わせ部9Aは、段差形成部91Aが延長され、突条部7の外側面部74に直接的に接続されており、主として凸側傾斜部75は省略されている。また、第2の変形例に係る位置合わせ部9Bは、段差形成部91が省略されており、距離延長部92Aが延長されて突条部7の外側面部74に直接的に接続されている。
【0051】
次に、
図1~
図4及び
図8を参照して、フランジ部8とフランジ受け部6とが係り合う構造について説明する。フランジ受け部6は、支持座部61から立設された防壁部65を備えている。防壁部65は、フランジ受け部6の外周縁6aに沿って設けられているが、部分的に欠落して逃げ部65aが形成されている。
【0052】
逃げ部65aの形成場所について具体的に説明する。支持座部61は、開口Mを挟むようにしてヒンジ部4に対向して配置された部分(対向部分)を備えており、対向部分の両端である湾曲角部に逃げ部65aが形成されている。なお、逃げ部65aは、対向部分の端部ではなく、途中部位に設けてもよい。
【0053】
支持座部61は、防壁部65が欠落した逃げ部65aに対応するように外方に張り出した支持延出部61aを備えている。支持延出部61aには、載置されたフランジ部8に対して隙間を形成するための凹み61bが形成されている。
【0054】
フランジ部8は、支持座部61に載置される主載置部81と、主載置部81から張り出した摘み片85とを備えている。主載置部81は、支持座部61に載置された際に、防壁部65を避けるように防壁部65の内側に収まる。主載置部81の輪郭線は、実質的にフランジ部8の輪郭線8aに相当し、防壁部65は、フランジ部8の輪郭線8aに沿うように延在している。また、防壁部65は、フランジ受け部6の外周縁に沿って設けられており、フランジ部8の輪郭線8a(主載置部81の輪郭線)は、フランジ受け部6の外周縁6aよりも開口Mに近い内方に後退している。
【0055】
摘み片85は、フランジ部8をフランジ受け部6に載置させた際に、防壁部65が欠落している逃げ部65aに収まるように設けられている。摘み片85は、フランジ受け部6の支持延出部61aに載置される。支持延出部61aには、摘み片85を摘まみ易くするための凹み61bが設けられている。摘み片85の輪郭線は、フランジ受け部6の外周縁よりも開口Mに近い内方に後退している。
【0056】
次に容器1の製法等について説明する。容器1は、合成樹脂製シートからなり、公知のシート成形により形成されたものである。シート成形の方法としては例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、熱板成形等があり、何れにしても合成樹脂製シートを熱成形することにより形成される。容器1の素材である合成樹脂は、容器1内の内容物を目視で確認できるように、透明な合成樹脂を使用することが好ましい。透明な合成樹脂としては、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル系の合成樹脂を挙げることができる。
【0057】
また、容器1に使用する合成樹脂シートは合成樹脂の分子が配向するよう延伸加工して製造された延伸シートであることが、成形された容器1の機械的強度の面で好ましい。また延伸シートは、一軸延伸シートよりも二軸延伸シートの方が物性バランスに優れており、より好ましい。特にポリスチレン系樹脂の二軸延伸シートは、剛性、耐熱性、透明性、環境性、加工性においてバランスのとれた性能を有しており、容器1の素材として適している。
【0058】
次に、本実施形態に係る容器1の作用、効果について説明する。タレ類が付着している食品Fは、容器本体2の開口Mから出し入れされる。食品Fを容器本体2内に収容すると、ヒンジ部4を撓ませるようにして蓋体3を容器本体2側に傾動させ、開口Mを閉じるようにして容器本体2に被せる。
【0059】
ここで、容器1の優位性を説明するため、
図13、
図14を参照し、位置合わせ部9を備えていない食品包装用容器100(比較形態)について先に説明する。食品包装用容器100の場合、ヒンジ部104を撓ませるようにして蓋体103を容器本体102側に傾けると、開口壁105に突条部107が干渉したり(
図14の(a)図参照)、開口壁105を乗り越えた突条部107が開口壁105から離れ過ぎたり(
図14の(b)図参照)する可能性がある。その結果、突条部107の位置合わせが不安定になって突条部107の内嵌合が不安定になる。また、蓋体103で開口Maを閉じようとする作業者にとっては、突条部107の位置合わせを丁寧に行う必要が生じて付加的な工夫や配慮が必要となり、作業性を低下させる可能性があった。
【0060】
これに対し、本実施形態に係る容器1では、
図9に示されるように、蓋体3を容器本体2側に傾けると、突条部7に優先して位置合わせ部9が開口壁5に干渉する(
図10参照)。すると、開口壁5に干渉した位置合わせ部9が支点となり、突条部7が開口壁5を乗り越えた位置で降下する。つまり、突条部7の軌跡は、ヒンジ部4の基準軸線Sfを中心とした回転から、位置合わせ部9を中心とした回転にシフトして開口壁5内の適切な場所に誘導される。蓋体3が開口Mを覆うように被さると、突条部7を狙って上方から蓋体3を押圧し、突条部7の全周が開口壁5内に収まるようにして内嵌合させる。
【0061】
以上の通り、本実施形態に係る容器1によれば、蓋体3を閉じるために、ヒンジ部4を折り返すように撓ませて蓋体3を容器本体2側に傾けると、突条部7に優先して位置合わせ部9が開口壁5に干渉し、内嵌合のための突条部7の位置合わせが行われ、突条部7は開口壁5内に適切に内嵌合される。その結果、蓋体3の安定した内嵌合が容易になり、蓋体3を容器本体2に装着する際の作業性を向上できる。また、この作業性の向上により、蓋体3を容器本体2に内嵌合する際の確実性が増し、シール性の向上にも有利に働く。
【0062】
また、上述の容器1において、位置合わせ部9は、突条部7とヒンジ部4との間に段差を形成する段差形成部91を備えている。また、開口壁5は、ヒンジ接続部55から立ち上がって上端部54に接続される突出壁部56を備えており、突出壁部56は、ヒンジ部4の可撓性に追従しない形状安定性を有する。段差形成部91によって形成される段差により、蓋体3を閉じた際に、突条部7は、開口壁5を乗り越え易くなる。また、突出壁部56を備えることで位置合わせ部9の移動軌跡上に開口壁5を配置し易くなり、突条部7に優先して位置合わせ部9を開口壁5に干渉させ易くなる。
【0063】
上記の容器1において(
図8参照)、開口壁5は、内周部52と凹側傾斜部53とを備えており、突条部7は、内周部52に内嵌合する外側面部74と凸側傾斜部75とを備えている。突条部7の外側面部74を開口壁5の内周部52に内嵌合させた際、突条部7の凸側傾斜部75は、開口壁5の凹側傾斜部53に重なるのでシール性が向上する。
【0064】
上記の容器1において、段差の高さ方向の距離Ha(
図6参照)は、0.5mm以上、且つ3mm以下である。蓋体3を容器本体2に装着する際に、段差の高さ方向の距離Haが0.5mm以上であれば、突条部7が開口壁5を乗り越えて位置合わせ部9が開口壁5に干渉し易くなり、また、3mm以下であれば、段差の拡大に起因して生じる装着の不安定性を回避し易くなる。
【0065】
上記の容器1において、突条部7は、外側面部74の外周に沿って設けられたフランジ部8(
図8参照)を備え、開口壁5は、フランジ部8に当接するフランジ受け部6を備えており、フランジ部8の輪郭線8aは、フランジ受け部6の外周縁6aよりも開口Mに近い内方に後退している。突条部7の外側面部74が開口壁5に内嵌合された際、蓋体3は、フランジ部8が開口壁5のフランジ受け部6に当接することで所定位置に保持される。ここで、フランジ部8の輪郭線8aは、フランジ受け部6の外周縁6aよりも開口Mに近い内方に後退しており、フランジ受け部6からはみ出さない。その結果、フランジ部8は、フランジ受け部6から引き離されるような力を外部から受け難く、意図しない蓋体3の開放を防止できる。また、フランジ部8は外側面部74の外周に沿って連続的に設けられており、フランジ受け部6に当接する箇所においてシール性を向上できる。
【0066】
上記の容器1において、フランジ受け部6は防壁部65を備えている。支持座部61に載置されたフランジ部8の輪郭線8aは防壁部65に囲まれているので、外部から作用する様々な力の影響を受け難く、意図しない蓋体3の開放を防止できる。また、タレ類などの液体が、フランジ部8と支持座部61との間の隙間を通過してきても防壁部65によって漏出をくい止めることができる。
【0067】
上記の容器1において、支持座部61は、開口壁5の上端部54に揃うように設けられており、ヒンジ部4は、上端部54よりも低い位置で開口壁5に接続されている。ヒンジ部4は、開口壁5の上端部54よりも低い位置に接続されているので、蓋体3を閉じた際にヒンジ部4が上方に膨らみ難く、目立ち難い。その結果、意匠性の向上に有利になる。
【0068】
上記の容器1の内周部52は本体側テーパ面52aを備え、外側面部74は、本体側テーパ面52aに接する蓋側テーパ面74aを備えている。本体側テーパ面52aと蓋側テーパ面74aとが互いに接して係合することで、蓋体3は容器本体2から外れ難くなり、蓋体3を容器本体2に内嵌合した際のシール性の向上に有利である(
図8参照)。
【0069】
また、上記の容器1では、ヒンジ部4の中心から突条部7の中心までの距離Lbは、ヒンジ部4から開口Mの中心までの距離Laよりも長くなっている。突条部7側の距離Lbを延ばす利点について
図11を参照して説明する。ヒンジ部4を撓ませて蓋体3を容器本体2側に傾けて被せた場合、この構造によれば、ヒンジ部4に近い内側の位置の突条部7は開口壁5を乗り越え易い(
図11の(a)の図参照)。そして、内側の位置の突条部7を優先して開口壁5に内嵌合させながら蓋体3を横方向に移動させて微調整することで(
図11の(b)の図参照)、突条部7全体の内嵌合をスムーズに行い易くなる。
【0070】
また、上記の容器1のヒンジ部4は、開口壁5に沿って延在し、且つ延在方向に沿った基準軸線Sf回りの可撓性を有する主可撓部41と、主可撓部41の端部に接続され、且つ主可撓部41よりも幅が狭くなる絞り部42とを備えている(
図3及び
図4参照)。ヒンジ部4を介して蓋体3を容器本体2側に傾動させる際に、蓋体3が左右にふらつくのを絞り部42によって防止でき、蓋体3の軌道が安定し、内嵌合のズレが生じ難くなる。
【0071】
以上、実施形態及び変形例に基づいて食品包装用容器について説明したが、本発明は、上記の実施形態等のみには限定されない。例えば、本発明に係る位置合わせ部の段差形成部は、傾斜壁状の形態に限定されず、階段状の形態であってもよい。また、上記の実施形態においてフランジ部は連絡載置部を備え、位置合わせ部は連絡載置部に接続されている。しかしながら、フランジ部は連絡載置部を省略して主載置部のみにすることも可能である。連絡載置部を省略した場合、位置合わせ部は、突条部の凸側外周部に直接接続されるような形態であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…容器(食品包装用容器)、2…容器本体、3…蓋体、4…ヒンジ部、5…開口壁、6…フランジ受け部、6a…フランジ受け部の外周縁、7…突条部、8…フランジ部、8a…フランジ部の輪郭線、9,9A,9B…位置合わせ部、31…カバー部、31c…周縁部(カバー部の外周縁)、52…内周部(凹側内周部)、52a…本体側テーパ面、53…凹側傾斜部、54…上端部、55…ヒンジ接続部、56…突出壁部、61…支持座部、62…連絡部、65…防壁部、74…外側面部(凸側外周部)、74a…蓋側テーパ面、75…凸側傾斜部、91,91A…段差形成部、Ha…段差の高さ方向の距離、F…食品、M…開口。